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レーザー加工の物理 2

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レーザー加工の物理 2
解 説
レーザー加工技術と物理
レーザー加工の物理 2
光波長と加工
杉
岡 幸 次
Physics of Laser Materials Processing 2:Wavelength Dependence
Koji SUGIOKA
The wavelength of laser used for materials processing is one of the most important parameters
for high-qualityand high efficiencyfabrication.Reflectivityand absorption coefficient ofmaterials
are a function of wavelength, that strongly affects the fabrication results. In principle, shorter
wavelength achieves not only higher spatial resolution but also higher fabrication quality with
less thermal effect due to higher photon energy. In this article, laser-matter interaction and the
spatial resolution in laser processing are reviewed from a point of view of the wavelength. In
addition,some topics in recent studies of laser materials processing related to the wavelength are
introduced.
Key words: laser materials processing, wavelength, vacuum ultraviolet laser, soft X-ray laser,
free electron laser
レーザー加工は,溶接,切断, あけから薄膜形成,改
質,造形など多様なプロセスを行うことができる.行うプ
れに関しては次稿「レーザー加工の物理 3―光パルス幅と
加工―」で解説される.
ロセスの種類に応じて,用いるレーザーを選定することが
きわめて重要であることはいうまでもない.例えば厚い鋼
1. 光の吸収と反射
板の溶接や切断を行うのであれば,大出力の赤外 CW レ
強度 I のレーザー光を物質に照射した場合,物質中の
ーザー(おもに炭酸ガスレーザー)が用いられる.一方,
表面からの深さ d におけるレーザー光の強度は,ランベ
半導体集積回路形成のためのリソグラフィーでは,紫外ナ
ルト・ベールの法則により
ノ秒レーザー(おもにエキシマーレーザー)が利用され
る.選定においては,まず波長を決定する必要がある.波
I =I (1−R )exp(−αd)
(1)
長が異なれば,加工対象材料に対する反射率や吸収係数が
で与えられる.ここで,R はレーザー光の表面反射率,α
異なってくる.また,レーザー光が吸収された後に生じる
は吸収係数である.αは式 (1)からもわかるように,表
過程も波長により異なる.さらには,加工解像度も波長に
面反射されずに入射されたレーザー光の強度が 1/e にな
依存する.本稿では,レーザー加工におけるレーザー光の
る深さの逆数で通常 cm の単位で表される.すなわち,
波長に焦点を り,光と物質の相互作用およびそれによっ
αの逆数はレーザー光のエネルギーが注入される深さに
て行えるプロセスと波長のかかわり,さらには波長と加工
相当し,レーザー加工を行ううえで大変重要なパラメータ
解像度の関係に関して解説を行う.また,最近のレーザー
ーである.特にアブレーション加工において高品質な加工
プロセッシング研究の中で,レーザー波長に関連したいく
を実現するためには,1 ∼1 cm 程度以上の大きい α
つかの注目すべき話題を紹介する.なお,レーザーの発振
を加工対象材料が有することが要求される.ただし,ここ
形態(CW ,パルス幅)も重要なパラメーターであり,こ
で注意してほしいのは,特にアブレーションの場合加工品
理化学研究所レーザー物理工学研究室(〒3 1-0 9 和光市広沢 2-1) E-mail:ksugioka@riken.jp
454 (28 )
光
学
(a)
(b)
図 1 レーザー光の固体内部での吸収.(a) 1光子吸収 (αが
小さい場合),(b)多光子吸収 (パルス幅が短い場合).
質に影響を与えるのは,実効的な吸収係数であるというこ
図 2 半導体中の光吸収過程.
とである.すなわち,実効的な吸収係数は,多光子吸収や
吸収によって生じた自由電子の影響でしばしば定常的な吸
ザー光は波長によらず自由電子によって強く吸収される.
収係数 αよりはるかに大きくなる.一方,αが 1 ∼1
吸収長は 1 nm 程度であり,ほとんど表面の浅い領域で
cm 程度に小さければレーザー光は深くまで侵入できる
吸収される.
ため,加工品質を問わなければ深い加工を高速で行うには
半導体はそのバンドギャップがおおむね 0.5∼4eV 程
有利である.また,図 1(a)に示すように,αがさらに小
度であり,レーザー光の光子エネルギーがバンドギャップ
さくなりおおむね 1 ∼1 cm 程度の場合,レーザー光
より大きい場合,強い吸収をもつ.光子エネルギー E は
を固体内部で集光するよう調整すれば集光点で最も大きい
E =hν=hc/λ
照射強度を得ることができる.このとき,集光点近傍の大
(2)
きい照射強度でのみ加工が行えるよう(あるいは反応が生
で与えられる.ここで,h はプランク定数,νはレーザー
じるよう)レーザー光のエネルギーを調整すれば,固体内
光の振動数,c は光速,λはレーザー光の波長である.式
部(レーザー光の集光点)の改質・加工も可能となる .
(2)から明らかなように,波長が短いほど光子エネルギ
例えば,波長 1 7nm の F レーザー光の石英ガラスに対
ーは大きくなる.半導体では,吸収端はバンドギャップと
する αは 1 cm 程度であり,これにより石英ガラス内
等しい光子エネルギーの波長に一致し,それより短い波長
部の屈折率を 1
程度増加させ光導波路を埋め込むこと
の光の吸収係数は大きい.一方,半導体ではキャリヤーを
に成功している .一方,αが極端に小さい(レーザーの
発生させるために不純物がドーピングされており,不純物
波長が材料に対してほぼ透明)場合,フェムト秒レーザー
準位やキャリヤー(自由電子)による弱い吸収も存在す
などの極短パルスレーザーを用いれば,図 1(b)に示すよ
る.半導体は,赤外領域には一般的には透明であるが,キ
うに集光点でのみ多光子吸収を誘起することができ,より
ャリヤーによる弱い吸収が問題となる場合がある.これら
容易に固体内部の加工が行える.ここでは,レーザーの波
吸収過程を図 2にまとめる.
長が加工対象材料に対してほぼ透明であることが重要であ
絶縁物はバンドギャップが半導体よりも大きく,おおむ
る.フェムト秒レーザーによる固体内部の改質・加工は,
ね 7eV 以上である.また,自由電子は存在しない.した
今日広く研究が行われている .
がって,バンドギャップ以上の光子エネルギーのレーザー
反射率 R も加工を行う場合留意しなくてはならない.
光のみによって吸収が生じるが,その吸収端は真空紫外域
すなわち,式( 1)からもわかかるように,R が大きいと
になる(図 2中のバンド間遷移に対応)
.また,欠陥等が
ほとんどのレーザーエネルギーは物質に投与できなくな
ある場合は欠陥準位による弱い吸収も存在し,吸収係数は
り,加工効率が大幅に減少する.金属では可視域の R が
波長により 1
大きく,加工には赤外レーザー,あるいは微細な加工が要
位への遷移に対応)
.
求される場合には紫外レーザーが用いられる.
∼1 cm と変化する(図 2中の欠陥準
なお,図 2の右端に示したように,光子エネルギーがバ
ンドギャップより小さくても,レーザー光の強度が強い
2. 固体の光吸収
と,あたかも仮想準位を介したように,複数の光子により
2.1 無機物質の光吸収
電子が価電子帯より伝導帯に励起され吸収が生じる場合が
無機固体の光吸収は,金属,半導体,絶縁物によって異
ある(多光子吸収)
.このような多光子吸収を生じさせる
なる.金属中には価電子帯に自由電子が多数存在し,レー
高強度レーザー光は,フェムト秒レーザーなどの極短パル
36巻 8号(2 07)
455 (29 )
れる.
τ≪ τ では,励起電子は基底状態(価電子帯)に緩
和してしまい,その際レーザー光から受け取ったエネ
ルギーを熱として放出する.したがって,この条件で
は加工は熱過程で進行する.レーザーアニールなどが
その例である.
τ≫ τ では,励起された電子は さ ら に も う ひ と つ
(a)
(b)
(あるいは複数)の光子エネルギーを受け取り,非熱
図3
子性固体中の光吸収過程.(a) 基底状態から励起状
態への吸収,(b)振動回転順位による共鳴吸収.
的な結合解離やイオン化へと進展する.その結果,熱
過程を排除した低温プロセスが実現できる.光脱離や
リソグラフィーがこれに 類される.
スレーザーによって実現される.
2.2
τ
子性固体の光吸収
ポリマーなどの
τ では,熱および光化学過程の両方が生じる.
アブレーションなどがその例である.
子性固体における光吸収では,2章 1
節で述べた半導体や絶縁体のバンド間遷移に相当する基底
状態から励起状態への電子励起に加えて,
4. 加 工 解 像 度
子の振動回転
レーザー加工の利点のひとつは,レーザー光を集光照射
準位による共鳴吸収が存在する.この 2つの光吸収の様子
し走査(直描)するか,フォトマスクを介して縮小投影露
を図 3に示す.電子励起は紫外から可視光領域で生じる
光することにより,レジストレスで直接微細パターン加工
が,振動励起は光子エネルギーの小さい(波長の長い)赤
が行えることである.このとき,加工解像度 R は以下の
外領域で発生する.振動回転準位に起因する赤外吸収スペ
式で与えられる.
クトルは各 子に特有であり,特定の赤外波長の光のみに
共鳴吸収を起こす.
( 3)
ここで,k はプロセス定数,λはレーザー波長,NA は集
光レンズ(あるいは縮小投影レンズ)の開口数である.な
3. 光吸収後の過程
物質中の原子・ 子の結合エネルギー(解離エネルギー
に同じ)以上の光子エネルギーのレーザー光を入射すれ
ば,1光子により原子・
子の結合は切断される.これは
光化学過程であり,熱過程はともなわない.したがって,
非熱的プロセスを実現するためには,できるだけ光子エネ
ルギーの大きい,すなわち波長の短いレーザー光を用いる
必要がある.
一方,光吸収は,解離エネルギーよりも小さい光子エネ
ルギーの光でも生じる.金属の場合は波長によらず自由電
子で吸収が生じ,吸収されたレーザー光のエネルギーは熱
に変わる. 子性固体の振動回転準位による赤外吸収の場
合も,原子間の化学結合を切断して 子を
解するという
段階には至らず,熱振動を励起して物質を加熱することに
なる.
半導体,絶縁体,
R =kλ/NA
子性固体では,紫外から可視域にお
いてバンド間遷移や基底状態から励起状態への電子励起に
よる吸収が生じるが,その後に引き続き起こる過程は励起
お,直描の場合は式( 3)で k=1.2 ・M とおけば,集光
径 ωとなる.ここで M は,ガウスビームからのずれを
定量的に評価したレーザー光の集光性を表す数値である.
式( 3)より,波長が短いレーザーのほうがより高い解像
度が得られることは明白である.一方,極短パルスレーザ
ーによる透明材料の多光子吸収を利用すれば,非線形吸収
過程によりさらに解像度を向上することができるが ,こ
れはあくまで同じ波長で比較した場合である.例えば,ソ
ーダガラスを波長 2 6nm と 8 0nm のガウスビームのフ
ェムト秒レーザーを用い,同じ NA のレンズで集光して
加工した場合を
える.8 0nm の集光径を ω
と,2 6nm の 集 光 径 ω
は波長が 3
とする
の 1の た め,式
( 3)より ω /3となる.一方,ソーダガラスの吸収端は
紫外域にあり,2 6nm が 1光子吸収なのに対し,8 0nm
は 3光子吸収となる.n 光子吸収では実効的な吸収係数は
レーザー強度の n 乗に比例するため,集光径 ω のガウス
ビームにおける実効的な集光径 ωは
された電子の寿命(緩和時間)τ によって決定される.
ω=ω / n
励起された電子に対してさらなる光吸収や反応が生じるの
となる.式( 4)より,8 0nm の実効的な集光径は ω / 3
に要する時間を τ とすると,以下の 3つの過程が
となり,2 6nm の ω =ω /3より大きい.したがって,
456 (30 )
えら
( 4)
光
学
図 5 レーザー生成プラズマ軟 X 線による石英ガラスのアブ
レーション加工.
F レーザーを用いて石英ガラスなどの透明材料の微細加
図 4 F レーザーアブレーションによる CYTOP の加工例.
工が試みられており,高品質加工が実現されている .図
4に,F レーザーアブレーションにより,1 0nm∼2μm
の波長域においてすぐれた光学透過特性を有する紫外透明
8 0nm の波長で多光子吸収を用いるより,2 6nm の 1光
ポリマー (CYTOP)の高品質加工を実現した結果を示す.
子吸収のほうがより高い加工解像度を実現できる.すなわ
CYTOP は光学透過特性以外にも,耐薬品性にすぐれ,ま
ち,より高い加工解像度を得るためには,より短い波長の
た超撥水性の特徴を有する.したがって,これまで CYTOP
レーザー光を用いることが最も有効である.
を高効率に精密微細加工する手法は確立されていなかっ
た.本加工法を DNA
5. レーザー波長に関連した最近の話題
析用の電気泳動チップ作製に応用
し,実際に遺伝子操作したマウスの DNA を 離
今日,鉄鋼業や自動車産業などの重工業領域で広く実用
ことに成功した .DNA の
析する
析には紫外光を照射するた
化されている鋼板の溶接,切断には,炭酸ガスレーザーが
め,チップの材料が紫外光に透明であることが必須であ
利用されている.鋼板は金属であるので,レーザーエネル
り,紫外光に透明な材料を加工する技術は重要である.
ギーは自由電子で吸収され熱作用によって加工が行われ
また近年,レーザー生成プラズマから得られる軟 X 線
る.したがって,波長は 9∼1 μm と長いが,高出力で比
も加工プロセスに十
較的効率のよい炭酸ガスレーザーが用いられてきた.しか
た .図 5に,Nd :YAG レーザーの四次高調波を Ta タ
し,今日では,微細な溶接,切断, あけには,炭酸ガス
ーゲットに照射し,それによって発生したプラズマから得
レーザーより波長の短い固体レーザー(Nd :YAG,半導体
られる軟 X 線を利用して,石英ガラスをアブレーション
レーザー,ファイバーレーザーなど)が用いられている.
した結果を示す.加工深さは 10パルス照射で 4 0nm で
携帯電話などの三次元回路基板の あけには,現在やは
あるが,注目すべきは加工面の表面粗さで 3 nm 以下で
り炭酸ガスレーザーが利用されている.炭酸ガスレーザー
ある.このような平坦性にきわめてすぐれた加工面は,軟
では 5 μm
X 線の光子エネルギーが非常に大きいために,非熱的な
径程度までは対応できるが,回路をさらに
高集積化させるためには,さらに小さい
径が要求され
る.したがって,数年後には,5 μm 以下の
利用できることが明らかにされ
加工が実現できたことによるものと思われる.さらに,ア
径を実現
ブレーション閾値は 1 mJ/cm 程度であり,F レーザー
するために,波長の短い Nd :YAG レーザーの三次高調
のそれと比較すると 2桁程度小さい.このような小さい閾
波(3 5nm)が取って代わるといわれている .
値も,光子エネルギーの大きさに起因すると
えられる.
高品質な加工という観点からは,極力熱影響を排除した
一方,微細加工あるいはナノ加工ということに目を転じ
加工が望まれており,光励起さらには光解離を利用したプ
れば,やはり波長が短いほど有利である.最近,4 .9nm
ロセスが注目を集めている.そのためには,高い光子エネ
の波長の軟 X 線レーザーを用いて PMMA のナノアブレ
ルギーを有するレーザー光を用いる必要があり,加工用レ
ーションが実施された .X 線レーザー光を Ni 箔で作製
ーザーの短波長化がひとつのトレンドとなっている.
したフレネルゾーンプレートにより集光することにより,
現在市販されているレーザーで最短波長のレーザーは
F レーザーであり,波長 1 7nm の真空紫外光を発する.
36巻 8号(2 07)
図 6に示すように 8 nm の加工寸法を実現している.
非熱加工あるいは微細加工という観点からは,レーザー
457 (31 )
励起を利用したプロセスは,有機物質のレーザー加工に新
たな展開をもたらした.極短波長光源および自由電子レー
ザープロセスのさらなる進展のためには,実用化にむけた
光源の開発が必要であることはいうまでもない.
文
献
を利用した加工の報告が目立つようになってきた.他方,
1)P.D.Fuqua,D.P.Taylor,H.Helvajian,W.W.Hansen and
M. H. Abraham: A UV direct-write approach for formation of embedded structures in photostructurable glassceramics, M ater. Res. Soc. Symp. Proc.,624 (2 0 )7 -8 .
2)X.M.Wei,K.P.Chen,D.Coric,P.R.Herman and J.Li: F
laser microfabrication of buried waveguide structures in
transparent glasses, Proc. SPIE, 4637 (2 0 )2 1-2 7.
3)例えば K. Sugioka, Y. Cheng and K. M idorikawa: Threedimensional micromachining of glass using femtosecond
laser for lab-on-a-chip device manufacture, Appl.Phys.A,
81 (2 0 )1-1 .
4)H.-B.Sun,K.Tanaka,M .-S.Kim,K.-S.Lee and S.Kawata:
Scaling laws of voxels in two-photon photopolymerization
nanofabrication, Appl. Phys. Lett., 83 (2 0 )1 0 -1 0 .
5)K.Sugioka,B.Gu and A.Holmes: The state of the art and
future perspective of laser-direct writing for industrial and
commercial applications, MRS Bull., 32 (2 0 )4 -5 .
6) P. R. Herman, B. Chen, M. Wei, J. Zhang, J. Ihlemann, D.
Schafer, G. Marowsky, P. Oesterlin and B. Burghardt:
F -lasers: High-resolution optical processing systems for
shaping photonic components, Proc. SPIE, 4274 (2 0 )
1 9-1 7.
7) K. Obata, K. Sugioka, N. Shimazawa and K. Midorikawa:
Fabrication of microchip based on UV transparent polymer for DNA electrophoresis by F laser ablation, Appl.
Phys. A, 84 (2 0 )2 1-2 5.
8) T. Makimura, S. Uchida, K. Murakami and H. Niino:
Silica nanomachining using laser plasma soft x rays,
Appl. Phys. Lett., 89 (2 0 )1 1 1 .
9)G.Vaschenko,A.Garcia Etxarri,C.S.Menoni,J.J.Rocca,
O. Hemberg, S. Bloom, W. Chao, E. H. Anderson, D. T.
Attwood, Y. Lu and B. Parkinson: Nanometer-scale ablation with a table-top soft x-ray laser, Opt.Lett.,31 (2 0 )
3 1 -3 1 .
1 )D.M .Bubb,S.L.Johnson,R.Belmont,K.E.Schriver,R.F.
Haglund,Jr.,C.Antonacci and L.-S.Yeung: Mode-specific
effects in resonant infrared ablation and deposition of
polystyrene, Appl. Phys. A, 83 (2 0 )1 7-1 1.
1 ) 深見裕子,鈴木-吉橋幸子,粟津邦男:“動脈 化部位コレス
テロールの中赤外自由電子レーザーによる選択除去”
,レーザ
ー研究,31 (2 0 )8 1-8 8.
自由電子レーザーを用いた振動回転準位の吸収による選択
(2007 年 3 月 16 日受理)
図 6 波長 4 .9nm の軟 X 線レーザーによる PMMA のナノ
アブレーション加工.
波長の短波長化ということがトレンドであるが,近赤外・
赤外レーザーのプロセシングも新しい展開を迎えている.
前述のように, 子性固体であるポリマーは,赤外域に共
鳴の吸収スペクトルが存在する.この共鳴波長に波長を合
わせたレーザー光を照射し,任意の 子振動のみを選択的
に励起することにより,いくつか興味深い実験結果が報告
されている.これらの実験では,波長を合わせる必要があ
るため,波長可変の自由電子レーザーが用いられている.
例えば,パルスレーザー堆積(PLD)によるポリマー材
料の薄膜形成では,レーザー波長をポリマーの 子振動に
合わせた場合に良好な薄膜の形成が確認されている .ま
た,レーザー波長を適切に調製することにより,タンパク
試料中のコレステロールの選択的除去が行えることが示さ
れている .
レーザーの波長は,加工を行ううえで最も重要なパラメ
ーターのひとつである.熱影響を排除した高品質な加工,
さらにはより高い空間解像度の加工を行うためには,でき
るだけ波長の短いレーザーを用いることが有利であり,極
短波長レーザープロセスが今日の研究のトレンドになって
いる.特に最近,真空紫外レーザーはもとより,軟 X 線
458 (32 )
光
学
Fly UP