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介護人材QA201203

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介護人材QA201203
介護人材Q&A第9巻第89号2{)¥2年3月Id日発行(毎月10日発行)平成17年5月18日第3種郵便物認可
介護の質・サービスの質向上で利用者の「こころ」箸弓弱、む
●経営管理●施設運営●管理実務●介護実務●サービス
●人材育成●接遇教育●人事労務●事例報告●介護行政
│医療法入愛礼会松前内科医院グノレーブ
高齢者の安心を築く
医療・介護・住まいの
コラボレーション
③弄鶏簾是の概要
合研究所
平成別年度介護報酬改定で
実践事例
介護現場の医行為はどう変わるのか
精神科訪問診療サービス
開園特別養護老人ホームにおける
胃ろう等による経管栄養に関する実態調査
悶副曙疲吸引等の制度からみる介護の役割
認知症の人を支える
2012年B月号
認知症の人を支える
神
問診療サービス
の-.=皇‘ら考え屋
・認知機能障害→知的障害
⑪認知症の問題
・精神症状・行動障害の出現の可能性→精
神障害
日本では急速に人口の高齢化が進んでお
り、高齢化が一番の危険因子である認知症
の問題を避けて通ることができません。
ということで、従来の分類による三障害全
てが出現する可能‘性があるのです。
認知症は、これから国民の誰もが身近に
私は、認知症の問題は、日本が国全体と
経験する可能‘性がある三障害ということに
して障害の問題に取り組む良い契機になる
なります。身近に障害を経験することで、
のではないかと考えています。これまで、
この社会がいかに障害のある方に対して冷
いわゆる三障害、身体障害、知的障害、精
たいか、障害のある方にとって暮らしにく
〆
神障害の問題はありましたが、国民の多く
いかを理解することができるようになり、
は、「特別な人の問題」として目を向けず、
障害のある人にも優しい社会の実現を、皆
正面から考えることなく済ませることがで
が自分の問題として捉える契機になるので
きていました。しかし、認知症は特別な人
はないかと考えています。
がかかるわけではなく、誰がかかってもお
かしくない病気です。自分がかかるかもし
れない、家族の誰かが、もしくは自分の親
しい人がかかるかもしれない、極めて身近
な「障害」なのです。
認知症では、
・高齢化による身体機能低下→身体障害
22−−介護人材QGlA
②議漂舎宏問題
日本には、約35万床と極めて多くの精神
科病床があり、現在、認知症の人の精神科
への入院が問題になっています。その実態
を見てみましょう。
2012年3月号Vol.9No.89
認知症の人を支える
精神科訪問診療サービス
図1認知症の人の精神科入院
精神病床入院患者の疾病別内訳
350
(千人)
ハブ
脇
300
329.4320.9324.7306.1
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一
二
6.9
■てんかん
園その他の精神および行動の
障喜
国神経症性障害、ストレス関連
障害および身体表現性障喜
■気分[感情]障害(操うつ
病を含む
口統合失調症、統合失調症雪
障害および妄想性障言
図精神作用物質使用によそ
精神および行動の障善
ロアルツハイマー病
函血管性および詳細不明0
認知猫
口精神遅静
□その組
I O I U U p U I 1 1 。 。 □ 0 1 ' 五
平成8平成11平成14平成17平成20
厚生労働省によると、認知症による精神
科病床への入院患者数は増加傾向にあり、
資料:患者調査
とが分かります。
認知症の人の精神科入院についての議論
平成8年から平成20年の間に約2万人増加
が、かみ合わないことがよくあります。例
して、5.2万人となっています(図1)。
えば、ある人が、「認知症の人にとって精
また、認知症の人が精神科病院に入院し
神科への入院は良くないので、減らすべき
た場合の入院期間の長期化も問題になって
だ」と主張し、それに対して「それでは、
います。平成22年の厚生労働省「新たな地
入院しか方法がなくて、どうしても入院を
域精神保健医療体制の構築に向けた検討チ
希望してくるご家族をどうするんだ!」と
ーム第2R」で行われた「精神病棟におけ
いうように。
る認知症入院患者に関する調査」では、精
神科病床に入院した認知症の人の平均在院
日数が944.3日という結果が出ています。
日本の精神科医療は、収容型で入院期間が
認知症の人の精神科病院の入院の問題は、
A.現状、認知症の人の精神科入院のニー
ズが極めて多いこと
B.精神科病院の環境が認知症の人の精神
長いことが国際的に批判されていますが、
症状・行動障害の治療にふさわしくない
それでも入院期間は300日前後です。認知
こと
症の人の入院期間の長期化傾向が著しいこ
2012年3月号Vol.9No.89
c.入院の長期化の問題
介護人材Q&A−23
「認知症の人にとって精神科への入院は
良くないので、減らすべきだ」というのは、
Bの問題のことになります。それに対して
「それでは、入院しか方法がなくて、どう
〆藍感
一一
一戦
毒へ
るんだノ」は、Aの問題なのです。議論が
蓑鯨
一雲
しても入院を希望してくるご家族をどうす
図2認知症
正常知的機能異常
の3つに分けて考える必要があります。
年齢
かみ合わないわけです。
以下、順番に検討してみましょう。
副勢認溌蹴科入院①
などの認知機能障害です。現在のところ、
認知機能障害に対する医学的治療法は乏し
私は、平成16年から3年間、東京都立松
いため、認知症の人に対しては、生活モデ
沢病院で認知症精神科専門病棟を担当して
ルを適用して、その生活を支えていくこと
いました。その3年間で、約180人弱の認
が基本になります。
知症の人を入院加療しました。東京都立松
生活を支えていく中で、認知症の人が身
沢病院は、東京都の精神科医療の最後の砦
体疾患にかかったり、精神症状・行動障害
のような病院で、認知症に関しても重い身
が認められたりすることがあります。こう
体合併症があったり、精神症状・行動障害
した場合には、医療モデルを適用し、治療
が激しかったり、いろいろな条件が悪かっ
を行うことになります。
たりして、民間精神科病院で入院を断られ
た人がたくさん来院されました。そこで分
認知症の人に医療が必要な場面というの
は、以下の2つに限定されます。
かったのは、現在の日本では、認知症の人
の精神科入院のニーズが極めて多いことで
1.診断の場面
す
。
・最初に認知症が疑われたときに、「治療
なぜなのでしょうか。認知症と医療の関
係から考えてみます。
認知症は医学的な定義としては、いった
ん正常に発達した知的機能が持続的に低下
可能な認知症」を鑑別診断し、もし、「治
療可能な認知症」の場合には適切な治療
を行うこと
・その後の診断の場面
し、複数の認知障害があるために社会生活
に支障を来すようになった状態のことをい
2.治療の場面
います(図2)。
・認知症の人の生活を支えていく中で、身
認知症の基本症状は、記‘億障害、見当識
障害、理解・判断力の低下、実行機能障害
24−一介護人材Q&A
体疾患に催患した場合に、身体疾患の診
断・治療を行うこと
2012年3月号Vol.9N0.8S
認知症の人を支える
箱神科訪問診療サービス
・精神症状・行動障害が認められた場合に、
精神症状・行動障害の治療を行うこと
ここでは、治療の場面に関して検討しま
5 ' 己
K
唾
、
、
公
〆
i
認知症の人が身体疾患に
かかったときの医療
また、認知症の精神症状・行動障害は、
したりすることも少なくありません。当院
に受診される精神症状・行動障害が問題に
認知症の人が身体疾患にかかったときに
なっている認知症の人の中にも、内服中の
は、当然、内科、外科等の一般科が対応し
薬物療法の内容を調整しただけで改善する
ます。同様に、身体疾患で入院医療が必要
方もかなりいます。こちらの問題に対して
になった場合も、一般科病床が基本となる
は、高齢者に対する正しい薬物療法のやり
べきであると考えます。
問題は、環境の変化などで認知症の人に
I
啓発活動により改善を図ることができます‘
不適切な薬物療法によって生じたり、増悪
す。
( −
題に関しては、認知症に関する知識の普及
:;方を普及啓発することで改善を図ることが
できるでしょう。
精神症状・行動障害が生じやすいことです。
身体疾患の治療中、特に入院加療が必要と
②発生した場合の対応認知症の精神症
なったときなどに精神症状・行動障害が生
状・行動障害が生じたときの考え方
じてしまうことがあります。こうした場合
まず、大切なのは、全ての認知症の人に
に、一般科では対応ができずに問題となり
精神症状・行動障害が認められるわけでは
ます。このように認知症の身体疾患の治療
ないということです。そして、その対応を
で問題となるのは、精神症状・行動障害が
考える場合には、なぜ認知症の人に精神症
生じた場合の医療なのです。
状・行動障害が生じるのかを理解すること
延慨懲舎藤症状行動障割
が必要です。
認知症の人の精神症状・行動障害は適切
認知症の人は、もの忘れや理解・判断力
の低下などの認知機能障害があるために、
な対応などで、その発生を防ぐことができ
ちょっとした環境の変化に適応できなかっ
ます。発生の予防と、発生した場合の対応
たり、自分の思いや希望を言葉で伝えるこ
に分けて考えます。
とが困難になっています。
例えば、周囲の環境の変化にうまく適応
①発生の予防認知症の精神症状・行動障
できないと混乱してしまい、今までできて
害が生じるのを防ぐために
いたこともできなくなったり、パニック状
認知症の精神症状・行動障害は、家族、
態になることがあります。また、何か希望
介護者の認知症に対する理解の不足から来
や伝えたいこと、困っていることがあって
る不適切な対応によって生じたり、増悪し
も言葉でうまく表現することができずに、
たりすることが少なくありません。この問
いらいらしたり、叫び声を上げてしまった
2012年3月号Vol、9No.89
介護人材Q&A−25
り、さらには暴力を振るってしまうことも
ここで、内科や外科などの一般科医療に
あります。身体的異常があって、それを言
比較した、精神科医療の特徴を考えてみま
葉で訴えることができずに精神症状・行動
しょう。内科や外科で医療の必要性が高ま
障害が出てくることもあります。例えば、
ったとき、例えば内科的疾患で昏睡状態に
便秘でおなかが張って苦しいことを言葉に
あるとか、大けがをしているとかの場合に
できず、イライラしたり、周囲に対して暴
は、医療機関に搬送することができれば、
力的となっていることがあります。
医療へのアクセスは容易です。しかし、精
こうした認知症の人の精神症状・行動障
神障害においては、医療の必要‘性が高まる
害は、周囲の人からは困った「問題行動」
といわゆる病識、すなわち自分が精神的な
として、そして「医療で治療すべき対象」
疾患にかかっていて治療が必要であるとい
として捉えられがちですが、認知症の人か
う認識が失われ、医療機関の受診を拒否す
らの「言葉にならないメッセージ」である
ることが多いのです。このように、精神科
可能』性が高いのです。そのメッセージを読
医療では医療の必要性が高まれば高まるほ
み取り、認知症の人が混乱しないような良
ど、医療機関への通常の受診が困難になる
い環境と、認知症の人の人間としての尊厳
という特徴があります。これは、認知症の
を満たし、その生きがいを満足させること
人の精神症状・行動障害の治療の場面でも
ができるような良いケアが提供されるとき、
同じです。
多くの精神症状・行動障害は改善していく
ケアや対応を工夫しても精神症状・行動
障害が改善せず、精神科を受診させること
のです。
また、内科薬や精神科薬の不適切な処方
で精神症状・行動障害を生じている場合も
あります。ケアや対応の工夫と同時に、こ
.:
もできず、周囲の方が困っている間にどん
どん症状が悪化してしまうのです。
こうして、精神症状・行動障害が激しく
ういった身体的異常や内服している薬物め
なって、在宅でケアすることができなくな
内容の検討も重要です。
った場合、2つの選択枝があります。
しかし、精神症状や行動障害が、ケアや
対応方法を工夫しても改善しない場合もあ
①施設への入所
②精神科病院への入院
ります。そのような場合には、最後の手段
残念ながら、現状、認知症の精神症状・
として、かつ、なるべく避けるべき手段と
行動障害に対する施設の対応能力は高いも
して精神科医療が適応になります。精神科
のではありません。少しでも精神症状・行
医療を適切に利用すれば、ケアや対応方法
動障害がある認知症の人は、「他の利用者
を工夫しても改善しない精神症状・行動障
の迷惑になるから」という理由で受け入れ
害をコントロールすることが可能になりま
を断られてしまうことが多いのです。施設
す
。
の利用を断られてしまうために、精神科病
26−−介護人材Q&A
2012年3月号Vol.9No.89
認知症の人を支える
綱神科訪問診療サービス
図3精神科病院入院中の認知症の人の入院前の状況
(N=453)
66
宛一一一・一一笹一・一■一■一■一■一■一■一■一■■。
59
34
単身
配偶者と同居
子または孫と同居
自宅
(
4
7
%
)
配偶者および子または孫と同居
その他の親族と同居
12
他の精神科に入院
特養に入所
グループホームに入所
i
その他の介護施設に入所
lll
唖唖函鋼
老健に入所
il
他の病院・診療所に入院
52
104
42
精神科のない
医療機関
介護施設
(
4
1
%
)
その他
i
0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 0 0 1 2 C
i
厚労省調査結果を一部改変
院入院しか対応する方法がないのが現状な
ら入院したかを示すデータがあります(図
のです。
3)。これを見ると、自宅から入院された
施設に入所している方が、精神症状・行
人が約47%、精神科のない医療機関や施設
動障害を生じるようになったとき、やはり
から入院された方が約41%を占めることが
精神科外来を受診させることは簡単ではあ
分かります。
りません。ここでも、悪化していく精神症
こうした認知症の人の精神科入院ニーズ
状・行動障害に対応する方法として、精神
の多さを解決する方法があるのでしょうか。
科病院への入院しか方法がないのが現状な
その鍵は、「認知症で精神症状・行動障害
のです。
があると通常の精神科外来受診が難しい」
また、認知症の人の身体疾患を一般科病
ということです。通常の形での精神科外来
院で入院治療中に精神症状・行動障害が認
の受診が難しいために、ケアや対応方法を
められるようになった場合にも、精神科が
工夫しても改善できない精神症状・行動障
ない場合には適切な対応が難しく、精神科
害に対する適切な対応ができないのです。
病院への転院が必要になってしまいます。
これを解決するのが、「手軽に利用できる
このように、在宅から、施設から、精神
精神科訪問診療サービスの普及」です。認
科のない医療機関から、精神症状・行動障
知症の人が精神科医療機関に受診できない
害を理由とした精神科入院のニーズが多い
のであれば、医療機関側から認知症の人の
のが現状です。
もとへと出向いていけばいいということで
精神科病院入院中の認知症の人がどこか
2012年3月号Vol.9N0.8S
す
。
介謹人材Q&A−−27
当院では、平成21年11月よりこのサービ
とは異なり、精神保健福祉法によってその
スを始めて、これまでに600人以上の方を
医療内容が規定されています。病識が乏し
診療しました。当院では、個人宅への訪問
く、治療上強制力が必要なケースがあるた
診療以外にも、施設や精神科のない医療機
め、強制的な入院制度が定められています。
関への訪問診療も行っていますが、「精神
認知症の人を精神科に入院させる場合、
科病院」なので、「入院させてほしい」と
ほぼ全例、医療保護入院の形をとります。
いうご家族も受診されます。いろいろ診療
都道府県知事の行政処分である措置入院の
方法を工夫したところ、精神科病院への入
方もいますが、これはまれです。医療保護
院が必要になったケースは十数例にしか過
入院では、精神保健指定医1人の診断と保
ぎず、精神科入院のニーズを減らすために
護者(9割以上のケースでご家族)の同意
は、極めて有効な方法であることが分かり
に基づき、本人の意思とは無関係に入院さ
せることになります。医療の内容でも、本
次に、Bについて検討しましょう。
割
識
擬
装
=
重
動
障
割
まず、医療に内在する問題があります。
精神科医療を含めて、医療は治療が目的
人の思いや意思は無視される傾向がありま
す。そもそも強制的な入院医療においては、
退院などの問題でご家族と本人の利害が事
実上対立することも多く、保護者制度の問
題点の一つとされています。
そもそも認知症の人の精神症状・行動障
です。医療に内在する特徴として、次の2
害は、「本人からの言葉にならないメッセ
点を挙げることができます。
ージ」の可能‘性があり、本人の思いを大切
・管理的であること→生活の質よりも安全
管理が優先される
にして、そのメッセージを読み取る努力を
する必要があるのですが、まず、精神科へ
・医師を頂点とした指揮命令系統がはっ'き
の入院自体が本人の意思とは無関係に行わ
りしていて、患者さんは治療のために行
れてしまうのです(これは、施設への入所
動を制限され、管理される対象であるこ
でも同じかもしれません)。
さらに、精神保健福祉法に規定されてい
認知症の人は、周囲の環境に反応して精
る強制的な入院医療は、極めてパターナリ
神症状・行動障害を生じることが多いので、
ステイックな医療モデルに基づいています。
安全管理が優先され、生活上の制限が多い
私たち、精神科医療に携わる者は、精神保
病院環境では精神症状・行動障害がかえっ
健福祉法に則って精神科医療を提供するよ
て悪化してしまう可能性があるのです。
うに訓練され、知らず知らずのうちに、パ
次に、精神科医療固有の問題があります。
ターナリステイックな考え方が身に付いて
精神科医療は、内科・外科などの一般科
しまっています。
28−介謹人材Q&/S
2012年3月号Vol、9No.89
認知症の人を支える
精神科訪問診療サービス
精神科医療に関する、一つのエピソード
をご紹介します。
ビス」が普及すれば、通常の受診ができな
い人にも薬物療法を行うことができます。
平成22年4月から5月にかけて、今後の
そうすれば、ケアや対応方法を工夫しても
精神保健医療改革ビジョンを検討するため
改善しないような精神症状.行動障害を効
に、東京都立松沢病院の岡崎祐士院長を座
果的に治療することができるようになると
長として、「こころの健康政策構想会議」
考えられます。
が開かれました。この会議の特徴は、構成
それでは、精神科入院は全く不要なので
員の3分の1が当事者・家族であったこと
しょうか。そんなことはありません。施設
です。傍聴した精神科医療関係者からは、
と精神科病院の違いは、治療のために強制
「目から鱗」の会議という評判でした。私
力が使えるかどうかです。
も1回傍聴して、確かに「目から鱗」とい
う思いがしました。
考えてみるとあの会議では、当事者・家
族の立場から必要とされる精神科医療の制
度を検討していました。何のことはない、
「目から鱗」などと言っていた精神科医療
関係者は私も含めて、当事者・家族の立場
から精神科医療の在り方を考えたことがな
かっただけなのです。
認知症の精神症状・行動障害に対応する
;治療のために強制力が必要な場合には精
神科入院が適応になるのです。
ここで強制力が必要なケースとは、
・暴力が激しく、強制力を利用しなければ
コントロールできない場合
、精神症状に基づく拒食(ex.被毒妄想な
ど)があり、生命に危険が及ぶ場合
・精神症状に基づく拒薬があり、薬物療法
が不可能な場合
などで、少数例に限定されることにはなり
ためには、本人の言葉にならないメッセー
ます。
ジを読み取る努力が必要になります。本人
翻
董
綱
舎
墨
精
神
科
病
院
順
の意思を無視した精神科の強制入院制度、
規制や制限の多い病棟環境、パターナリス
現在、精神科に入院した認知症の人の入
テイックな医療モデルのもとでは、効果的
院期間の長期化が問題になっています。認
な治療は難しいのです。それでも入院加療
知症の人の精神科病院入院期間を決定して
で症状が改善する人は多くいます。それは
いる最大の要因は、病院側の意思です。
薬物療法の効果によるものと考えられます。
例えば、病棟担当医が、「認知症の人が
ということは、入院をさせなくても、何ら
精神科病棟で生活していてもかまわない」、
かの形で適切な薬物療法が可能であれば、
「認知症の人が精神科病棟に死ぬまで生活
精神症状・行動障害の改善が期待できると
していてもかまわない」という考えを持っ
いうことです。
ていると入院期間は長期化し、逆に早く退
「手軽に利用できる精神科訪問診療サー
2012年3月号Vol.9No.8
院すべきであるという考えを持っていると
介鍾人材Q&A−29
入院期間は短期化する傾向があります。
病院側に、「入院期間を短期化する」と
それでは、誰が精神科訪問診療サービス
を提供すればいいのでしょうか。
いう意思を持っていただく方策で有効なの
純粋な認知症のケースでは、比較的単純
は、診療報酬による入院期間短期化への誘
な薬物療法でほとんど副作用なく改善しま
導です。
す。これらは認知症に関するきちんとした
退院後の受け入れ先がないのも、入院期
訓練を受けたかかりつけ医で十分に対応可
間長期化の原因の一つです。ご家族や施設
能であると思います。精神科医師の診療が
は、精神症状・行動障害の既往がある方の
必要になるのは、もともと医療が必要ない
受け入れを嫌がる傾向があります。それは、
軽度の精神科疾患があって、認知症が合併
症状が再燃したときに困る可能‘性があるか
したようなケースです。例えば、医療にか
らです。そこで、「手軽に利用できる精神
かる必要もなく生活されていた軽度の統合
科訪問診療サービス」があれば、退院後の
失調症の方が、認知機能障害を合併するよ
支援にもなります。
うになり、理性のコントロールが失われて
しまったために、その精神症状が前面に出
⑬終わりに
てきてしまったケースなどです。
現在の限られた医療資源のもとでも、工
認知症の人の医療の問題は、精神症状・
夫すれば必要十分な認知症の人に対する、
行動障害への対応の問題になります。これ
手軽に利用できる精神科医療サービスを供
を解決する方法が「手軽に利用できる精神
給することが可能だと考えています。
科訪問診療サービス」の普及です。
『介護人材Q&AJ既刊付録などのご案内
2007年第4版
胃4版2007年4月号付録2010年3月号付録
………,紗
介謹用語
ハンドブック
基礎講座
麺”煙。
︾一
犀 今 一
察護職員
一章
園
、一三ママ‐‐‐,‐‐‐・一寺酉
灘謬
読者の皆さまで、本冊子を介護施設でご利用いただく際は、各400円でお分け致します。
編集部(電話03-3237-1624FAX03−3237-2997)までご連絡ください。
30一一介護人材Q&A
2012年3月号Vol.9No.89
怪一
一
Fly UP