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Vol. 4 No. 8 2013

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Vol. 4 No. 8 2013
COMPLEX ADAPTIVE TRAITS
Newsletter
新学術領域研究
「複合適応形質進化の遺伝子基盤解明」
第6回若手ワークショップ
「ゲノムからみた昆虫の複合適応形質の進化」報告
Vol. 4 No. 8 2013
表紙写真:産卵刺激物質水溶液を塗布したプラスチック製の模造葉に産卵行動を
とるナミアゲハ Papilio xuthus の雌成虫(JT生命誌研究館 尾崎克久)。 新学術領域研究「複合適応形質進化の遺伝子基盤解明」 第6回若手ワークショップ開催報告 「ゲノムからみた昆虫の複合適応形質の進化」 新学術領域「複合適応形質進化」では、総括班の活動の一環として、若手研究
者の活性化を目的とした「若手ワークショップ」を毎年開催しています。今年度
は、高知大学で開催された第58回日本応用動物昆虫学会大会において、嶋田透さ
んと私がオーガナイザーとして小集会「ゲノムからみた昆虫の複合適応形質の進
化」を開催しました。一昨年、昨年の同学会大会においても同様の小集会を企画
しましたが、今回は領域内の公募班の気鋭の若手研究者2名(松尾隆嗣、前川清
人)に加えて、アゲハチョウの食草選択について素晴らしい研究を展開中の生命
誌研究館の尾崎克久さんを領域外からゲストスピーカーに迎え、大会2日目の
2014年3月27日に15:15〜18:45の90分間の枠を学会から割り当てていただきました。
同じ時間帯で実に13もの小集会が並行して開催されましたが、私たちの会場は満
員で多数の立ち見が出る盛況で、昆虫に関わる面白い生物現象にゲノムレベルの
アプローチを駆使して取り組むという本領域への強い関心が感じられました。そ
の期待に違わずサイエンスとしてもプレゼンテーションとしても高いレベルの講
演の連続にきわめて活発な質疑が飛び交い、司会の私としては盛り上がる議論を
なるべく止めないように差配した結果、予定時間を30分以上超過する展開となり
ました。来場者の方々には楽しみ、満足していただけたものと確信しています。
末筆ながら、快く講演をお引き受けいただいた演者の皆さんと、小集会の場を提
供していただいた第58回応動昆大会の関係者へ感謝申し上げます。 平成26年3月28日 新学術領域研究「複合適応形質進化の遺伝子基盤解明」 深津 武馬 1
テナガショウジョウバエにおける性的二型と 闘争・求愛行動の進化 ○松尾隆嗣(東大・農)
動物のオスでは、体の一部が著しく発達するとともにその部位を用いた儀礼的
な闘争行動や求愛行動を示す例がしばしば観察される。このような形態と行動の
密接な関係は複合適応形質を構成しており、その進化には形態形成と神経機能と
いう2つの異なる分子メカニズムが関与している。テナガショウジョウバエ
Drosophila prolongataは遺伝学のモデル生物であるキイロショウジョウバエの近縁
種であるが、様々な興味深い形態と行動を備えている。たとえば前脚の形態に著
しい性的二型があり、オスではメスの二倍以上の大きさになる。我々はこの前脚
が、交尾直前に観察される"leg vibration" と名付けた動作に用いられることを確認
した。Leg vibrationは他のショウジョウバエではこれまでに報告されたことの無い
行動であり、テナガショウジョウバエにおいて前脚の形態と協調して進化したと
推測される。また、テナガショウジョウバエはオス間で激しい闘争を行い、なわ
ばり様の行動を示す。これらの形態と行動の進化に関わる分子メカニズムを解明
すべく、さまざまな手法を用いて解析を行っている。
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シロアリが示す高度な社会システムの発生遺伝学的な背景を探る ○前川清人(富山大院・理工)
・重信秀治(基生研)
・三浦徹(北大院・地球環境)
社会性昆虫がもつゲノム(=ソシオゲノム)には,複数の表現型(カースト)
を形作るための情報のみならず,カースト間の協調と分業を調節するための情報
をも含んでいる。特にシロアリの場合には,各カーストの役割や形態が著しく特
殊化し,コロニーから各カーストを切り離して維持することは不可能である。し
たがって,コロニー全体を複合適応形質として捉えることができると考えられる
が,現時点でゲノム解読が論文発表された例はなく,進化の過程で如何なる遺伝
的・発生的な変革が必要だったのかは明らかではない。不完全変態昆虫であるシ
ロアリの場合には,カースト分化は必ず脱皮を経ることになるため,この変革の
全貌を理解するためには,各脱皮前後の発生遺伝学的なデータが重要になると考
えられる。我々の研究グループは,これまで主に日本産の複数種を用いて,各カ
ースト(特に兵隊)への脱皮過程のトランスクリプトーム解析や遺伝子発現・機
能解析をすすめ,特異的な形態形成や行動変化に関与するいくつかの遺伝子を見
出してきた。本講演では,これらの最新知見を紹介し,今後の展望について議論
したい。
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アゲハチョウ食性進化の仕組み ○尾崎克久(JT生命誌研究館)・龍田勝輔(佐賀大)・武藤愛(奈良先端大)・
小寺正明(東工大)・吉澤靖貴・吉川寛(JT生命誌研究館)
植食性昆虫の多くは、特定の植物のみを餌として利用する。アゲハチョウの仲
間も狭い範囲の植物種のみを食草とするが、食性の変化が種分化の出発点になっ
たと考えられている。食草選択は化学感覚によって支えられているが、アゲハチ
ョウの場合はメス成虫が前脚ふ節で認識する味覚情報を手がかりとして食草を選
択している。この味を感じる仕組みに変化が生じた場合、産卵場所として選択す
る植物が変わり、食性進化の原動力となるだろう。
我々はこれまでに、ナミアゲハの産卵行動を誘発する刺激物質のひとつである
シネフリンを特異的に認識し、食草の認識に関与する味覚受容体遺伝子と、産卵
行動が起きる必須条件となる神経プロファイルを同定している。また、化学感覚
に何らかの関与があるのではないかと考えられているChemosensory Protein遺伝子
ファミリーが、ゲノム上の特定領域に高密度のクラスターを形成し、異種間で
Syntenyがあることを確認している。
食性進化には産卵・摂食・配偶行動などが複合的に関与するが、その出発点と
なり、かつ大きな影響があると思われる産卵場所の選択について考察する。
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COMPLEX ADAPTIVE TRAITS Newsletter Vol. 4 No. 8
発 行:2014年3月28日 発行者:新学術研究領域「複合適応形質進化の遺伝子基盤解明」(領域代表者 長谷部光泰) 編 集:COMPLEX ADAPTIVE TRAITS Newsletter 編集委員会(編集責任者 深津武馬) 領域URL:http://staff.aist.go.jp/t-fukatsu/SGJHome.html
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