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(A充てん/高圧注入ポンプの損傷)(PDF形式:31KB)
INES2003−007 九州電力㈱川内原子力発電所1号機の運転中に発生したトラブルについて (A充てん/高圧注入ポンプの損傷) INES評価小委員会 平成21年2月5日 原子力施設のトラブルの評価について 1.発電所 川内原子力発電所1号機(加圧水型:定格電気出力89万キロワット) 2.発生年月日 平成20年4月18日 3.件名 「A充てん/高圧注入ポンプの損傷」 4.事象内容 通常運転中の1号機において、4月15日、1A充てん/高圧注入ポンプの軸端側 軸受部の温度が通常より低いことが確認された。このため予備機に切り替え、当該ポ ンプの分解点検を実施したところ、4月18日、ポンプの主軸が折れていることを確 認し、当該ポンプが必要な機能を有していないと判断した。 点検調査の結果、1A充てん/高圧注入ポンプの損傷の原因については、以下のと おりと推定された。なお1B、1C充てん/高圧注入ポンプについて、調査を実施し た結果、当該部には欠陥が見られなかった。 ・小流量運転時のポンプ内の不均一な流れに起因して、主軸の割りリング溝部に比 較的大きな曲げ応力が付加された ・当該ポンプの製作時の割りリング溝部の加工方法により、コーナ部に不連続部が 生じ応力が集中した これらの要因が重畳することによって、主軸材料の疲労限を超え、初期き裂が発生 し、その後のポンプ運転時の応力により、き裂が進展し、折損に至ったものと推定し た。 本事象は、充てん/高圧注入ポンプ内の不均一な流れにより、ポンプの主軸割りリ ング溝部に大きな曲げ応力が付加され、その応力がコーナ部の不連続部に集中したこ とにより、応力が疲労限を超え初期き裂が発生、ポンプ運転時の応力によりき裂が進 展してポンプの主軸が折損したものである。 なお、発電所外及び発電所内における放射性物質の影響はなかった。 5.評価結果及び判断根拠 (1) 基準1:− (判断根拠:発電所外における放射性物質の影響はなく、評価に関係しない。) (2) 基準2:− (判断根拠:発電所内における放射性物質の影響はなく、評価に関係しない。) (3) 基準3:レベル0− (判断根拠:本事象は、充てん/高圧注入ポンプ内の不均一な流れにより、ポンプの 主軸割りリング溝部の不連続部に大きな曲げ応力が集中し、ポンプの主 軸が損傷したものであるが、原子炉施設の安全性に影響を与えない事象 であるので、レベル0−と評価される。 ) (4) 評価結果 [基準1:−、基準2:−、基準3:レベル0−]の結果として、レベル0− シート4 深層防護の劣化基準による評価手順 E N N 潜在的な故障(構造欠陥を含む) はあるか(Ⅳ−3.2.3 へ) Y 欠陥はルーチン・サーベイランス で見つかったか、しかも許容基準 内にあるか Y レベル0 N ルーチン・サーベイランスで 見つかった潜在的故障が安全機能を劣化させる か、または安全機能の作動を要求 (起因事象)する可能性はあったか N レベル0 Y 潜在的故障が実際の故障に至ると仮定して安全機能への 影響、及び/又は安全機能の作動を要求するか決定する 明らかに安全上重要でない事象 (Ⅳ−3.2.4) Y レベル0 N G Y 本事象は出力運転中の 原子炉に影響するか 起因事象による評価 N I 安全防護層による評価 シート5へ シート6へ H J 潜在的故障については、実際の故障に至る 可能性に基づいて評価を微調整する (Ⅳ−3.2.3) D.I.D.基本評価 理由があるなら評価を1レベル上げる 考慮すべき点は ・共通要因故障 ・不適切な手順書 ・安全文化の欠如 −運転制限条件遵守違反 −QA プロセスの欠落 −ヒューマンエラーの繰り返し −放射性物質または個人被ばく線量の不適切な管理 −過去の事象の水平展開の欠如 評価レベル全体図(図2)と 比較し、評価の一貫性の検証 D.I.D.からみたレベル最大 F シート5 起因事象による評価 G 起因事象が 発生したか N Y 安全機能が劣化したか (災害防護のためのシ ステムの故障を含む) 基本評価レベルの決定 安全機能の劣化 起因事象発生 起因事象を伴う深層防護の 劣化に対する事象レベル評価基準 起因事象 発生頻度 予期される 起り得る 起 り そ う にない (1) 安全機能の 作動性(2) 起因事象により作動が要求され る安全機能の作動性の決定(2) ・A:正常 ・B:運転制限条件内 ・C:適切 ・D:不適切 レベル0 Y 基本評価レベルの決定 起因事象発生頻度区分の決定(1) ・予期される ・起り得る ・起りそうにない N A 正常 0 1 2 B 運転制限条件内 1/2 2/3 2/3 C 適切 2/3 2/3 2/3 D 不適切 3+ 3+ 3+ 劣化安全機能の作動性の決定(2) ・A:正常 ・B:運転制限条件内 ・C:適切 ・D:不適切 起因事象を伴なわない深層防護の 劣化に対する事象レベル評価基準 起因事象 発生頻度 予期される 起り得る 起 り そ う にない (1) 安全機能の 作動性(2) 安全機能の作動を要求する起因 事象の発生頻度の決定(1) ・予期される ・起り得る ・起りそうにない A 正常 0 0 0 B 運転制限条件内 0 0 0 C 適切 1/2 1 1 3 2 1 D 不適切 安全機能の不作動時間が試験間 隔に比べて極めて短時間の場合、 レベルを1下げる 起因事象による評価 H 評価根拠表(案) 川内1(H20.4.18)A充てん/高圧注入ポンプの損傷 項目 事象の状況 適用箇所 I N E Sへ の 適 原子炉施設の安全機能(原子炉の冷却機能,未臨界維 I-1.3 用性 持機能)に係る可能性があった事象であり、評価の適 用対象となる。 潜 在 的 故障 が あ 通常運転中に A 充てん/高圧注入ポンプの軸端側軸受 IV.3.2.3 ったか? 部の温度が低いことを巡視点検で確認、予備機に切替 潜在的故障ではない え分解点検を実施したところ、ポンプの主軸が折れて いることを確認した。 → ポンプの主軸が折れたた め、潜在的な故障ではない。 ルーチンサーベラ ンスで発見?か つ、許容基準内? 安全機能を劣化、 または安全機能の 作動要求に発展す る可能性は? 潜在的故障が実際 の故障に至ると仮 定し、安全機能の 影響を決定 安全上、重要な事 非常用炉心冷却設備である充てん/高圧注入ポンプの 損傷であるため、安全機能(冷却機能)に影響する事象 象? であり、安全上重要な事象と考える。 未臨界維持機能の安全機能を有する充てん/高圧注入 ポンプでもある。 本 事 象 は出 力 運 通常運転中(定格熱出力運転中)における事象であり、 転 中 の 原子 炉 に 安全機能(原子炉の冷却機能,未臨界維持機能)に係わ る事象であるため、出力運転中の原子炉に影響を与え 影響するか? る。 0の微調整 起因事象「小 LOCA」、「原子炉の自動停止」を伴わず、 0− 安全機能の劣化に至らない軽微な故障 →原子炉施設の安全性に影響を与えない事象 0→0− 付加的要因 なし 全 体 評 価レ ベ ル 図との整合 評価レベル 0− IV.3.3 格上げ要因なし 起因事象による評価(シート5) 実際の起因事象を伴う事象 起因事象が発生? 起因事象発生頻度 区分を決定 作動が要求された 安全機能の作動性 を決定 評価レベルを決定 潜在的故障の起因 事象への発展度合 を考慮 実際の起因事象を伴わない事象 起因事象が発生? 安全機能の作動が要求される起因事象として、冷却 機能としては「小 LOCA」、未臨界維持機能としては 「原子炉の自動停止」を想定しているが、本事象では 「小 LOCA」も「原子炉の自動停止」も発生していな い。 安全機能が劣化し 安全機能を有する充てん/高圧注入ポンプが1台故 たか 障したため、安全機能の劣化と考える。 → 安全機能は劣化 劣化した安全機能 冷却機能に対する保安規定上の充てん/高圧注入ポ の作動性を決定 ンプへの要求事項は、「2系統が動作可能であるこ と」である。このため残りの2台の充てん/高圧注入 ポンプで2系統の動作は確保できるため、冷却機能 の作動性としては、「正常」と考える。 また未臨界維持機能に対する保安規定上の充てんポ ンプへの要求事項は、「1系統以上が動作可能である こと」である。このため残りの2台の充てん/高圧注 入ポンプで1系統以上の動作は確保できるため、未 臨界維持機能の作動性としても「正常」と考える。 起因事象発生頻度 充てん/高圧注入ポンプの冷却機能に対する作動を (仮定)を決定 要求する事象は、「小 LOCA」 → 起り得る起因事象 また充てん/高圧注入ポンプの未臨界維持機能に対 し運転を要求する事象は、「原子炉の自動停止」 → 予期される起因事象 INES 評価上厳しくなる事象を選択 → 予期される 起因事象(「原子炉の自動停止」を選択) 評価レベルを決定 0 安全機能の試験間 隔と不動作時間の 比較 潜在的故障の起因 事象への発展度合 を考慮 起因事象は発生し ていない 安全機能の劣化 「正常」 予期される起因事 象