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十六アジアレポート 2016 年 1 月号
十六アジアレポート 2016 年 1 月号 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 2016 年 1 月 4 日 十六銀行 海外サポート部 《 目 次 》 <駐在員レポート> 1.バンコク: 「バンコクの不動産事情」 バンコク駐在員事務所 2.上海: 「『愛知フェアー in 上海アピタ』を開催」 3.香港: 「地銀合同ビジネス商談会@広州 2015」 4.シンガポール: 「日本食激戦区の最前線」 上海駐在員事務所 香港駐在員事務所 シンガポール駐在員事務所 5.ベトナム: 「世界第 2 位のコーヒー生産大国」 十六銀行 海外サポート部 (ベトナム投資開発銀行ジャパンデスク) 中村 敦 6.為替相場情報 本書中の情報は情報提供のみを目的として作成されたものであり、何らかの行動を勧誘するものではあ りません。ご利用に関しては全てお客様御自身でご判断くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当行及び執筆者はその正確性を保 証するものではありません。また、本書中の情報は、法律上、会計上、税務上の助言を含むものではあ りません。法律上、会計上、税務上の助言を必要とされる場合は、それぞれの専門家にご相談ください。 1 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 1.バンコク:「バンコクの不動産事情」 バンコク駐在員事務所 景気が低迷し、好転の兆しが見えないタイ経済ですが、バンコクの街中には、至る所で建設途上の 高層ビルを見ることができます。今月は、バンコクの不動産事情についてレポートします。 ■オフィス物件 バンコク市内のオフィススペースは、2015 年 はトータルで約 850 万㎡に達したと見られてい ます。2001 年には約 700 万㎡でしたので、年平 均で 10 万㎡ずつオフィススペースが供給され 続けた計算になります。30∼40 階建の大型物件 (オフィススペース 4∼6 万㎡)が毎年 2 物件づ つ、新規にオープンしていったイメージです。 一方で、オフィス需要サイドに目を向けます と、バーツ危機の傷も癒え好景気に沸いた 2000 年台前半には、毎年およそ 30 万㎡のオフィス需 要が続いたため、2001 年に 30%近くあった空室 <オフィス需給は逼迫、賃料は上昇> 率は、2005 年には 15%程度まで低下しています。その後は需給が均衡していましたが、リーマンショ ック後の景気回復の過程で再びオフィス需要が増加し、2015 年の空室率は約 10%となっています。 今後の見通しとしては、2017 年まで、向こう 2 年間のオフィスペース供給はプロジェクトから試算 して約 25 万㎡といわれており、これまでの年平均 10 万㎡に比べてやや高い供給量となる見通しです が、バンコクは、アセアン中心国の首都として、今後ますます世界各国の企業からの関心が高まり、 オフィス需要も堅調に推移する見通しであることから、2017 年には、空室率は 6%程度まで低下する と予想されています。 こうしたオフィススペース需給の逼迫を背景に、オフィス賃料は軒並み上昇しています。バンコク 市内の CBD(Central Business District)において、ハイグレード物件の平均オフィス賃料は、2014 年には約 840 バーツ/㎡(9.7 千円/坪)といわれていましたが、2015 年には約 870 バーツ/㎡(10.0 千 円/坪)に上昇しています(上昇したとはいえ、東京やシンガポールと比較すれば、3 分の 1∼4 分の 1 程度の賃料にとどまっています)。また、バンコク市内の CBD 以外において、グレードがそれほど高く ないオフィス物件についても、2014 年の平均賃料約 550 バーツ/㎡(6.4 千円/坪)であったのに対し、 2015 年は約 600 バーツ/㎡(7.0 千円/坪)と、こちらも上昇しています。 ■コンドミニアム 2014 年のコンドミニアムの供給は、約 55,000 ユニット(都心部 5,000、郊外 50,000)であったと見 られています。2005 年以降、都心部の供給は年間 5,000∼10,000 ユニットで安定的に推移しておりま すが、郊外の供給については、2011 年には約 20,000 ユニットであったものが、2014 年には 50,000 ユ ニットへ急拡大しています。背景には、地下鉄や都市鉄道のバンコク郊外への延伸計画が相次いで公 表されたため、沿線予定地域でのコンドミニアム供給が増加したことが要因であると考えられます。 2 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 バンコクで供給されるコンドミニアムの特徴として、 供給全体の 8∼9 割が 1 ベッドルームタイプ(日 本の 1LDK に相当)かスタジオタイプ(日本のワンルームに相当)であることがあげられます。単身者 向け、あるいは夫婦のみの世帯向けが主流であり、日本の 3LDK、4LDK に相当するタイプの供給は、未 だ一般的ではありません。 また、物件の価格帯は、低価格物件であれば 5 万バーツ/㎡(約 60 万円/坪)前後、価格 200 万 バーツ(約 700 万円)前後であり、高級物件にな ると 30 万バーツ/㎡(約 350 万円/坪)超、価格 1,500 万バーツ(約 5,000 万円)超になってきま す。地域別では、バンコク郊外の都市鉄道延伸予 定地域では 300 万バーツ前後の物件もあります が、バンコク市内においては、500 万バーツ以上 になってしまいます。 需要サイドでは、低価格∼中価格帯のコンドミ <至る所で高層ビルが建設工事中> ニアムの購入者層としては、まず第一に、バンコク市内で働く独身の若い勤労者があげられます。日 本人は、いざという時の出費に備えるため、預貯金の割合が高めの資産形成をする傾向がありますが、 一般的にタイ人は、不動産、車、貴金属、投資信託など、現預金よりも現物資産を持ちたがる性向が 強いようです。家賃を払って居住するよりは、住宅ローンを組んだり、購入代金を分割払いにするな どして、物件を購入してしまったほうが得だとの発想から、単身用のコンドミニアムであっても、割 と気軽に購入に踏み切ってしまうようです。また、タイ人は夫婦共働きが一般的であり、子育ては自 分たちの親にサポートしてもらうことが多いため、独身の時には購入したコンドミニアムに居住しま すが、結婚して家族が増えてからは親元に転居するケースが多いようです。不要となったコンドミニ アムは、他の単身者や学生などに貸して賃貸収入を得たり、あるいは、価格次第ですが売却して処分 します。 一方で、当初から賃貸収入を当てにする投資対象としてコンドミニアムを購入する顧客も多数いる ようです。タイでは、原則、外国人は土地を購入することはできませんが、コンドミニアムは購入す ることが可能です。ただし、コンドミニアム 1 棟の総床面積のうち、外国人は 49%までしか購入でき ないとの規制があります。中価格帯∼高価格帯のコンドミニアムのディベロッパーは、当初から外国 人投資家をターゲットとし、発売と同時にシンガポール、マレーシア、香港等で外国人が購入可能な 面積分を売り切ってしまう事業者もいます。また、バンコクの中古コンドミニアムの平均再販価格が、 過去 10 年にわたって上昇し続けていることもあり、当初から値上がり益を期待して購入する顧客もい ます。募集と同時に購入し、完成前に売り抜ける投機的な取引も横行しているようです。 このように、これまで「バブル」気味に活況を呈していたコンドミニアム市場ですが、やや潮目が 変わってきたようです。2015 年は当初 70,000∼80,000 ユニットの供給、4 年連続の対前年比プラス供 給が見込まれておりましたが、7 月以降、急減速し、50,000 ユニット未満にとどまる見通しです。家 計債務の増加を背景に、銀行借入のリジェクト率が増加し、販売が鈍化してきたことと、それを見越 してディベロッパーが募集時期を先延ばししたことが要因と考えられています。一方で、富裕層を対 象とした高級物件は依然として堅調です。ディベロッパーの大型倒産といったニュースは今のところ ありませんが、今後の行方が気になるところです。 3 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 2.上海:「『愛知フェアー in 上海アピタ』を開催」 上海駐在員事務所 11 月 4 日(水)∼11 月 17 日(火)に「愛知フェアーin 上海 APITA」と題し、中国上海市の APITA 金虹橋店にて、愛知県、名古屋銀行、当行が協賛し、愛知県の食品会社が商品紹介および即売会を行い ました。今回は、この愛知フェアーの様子をご紹介します。 ■ 上海 APITA 金虹橋店(以下、上海 APITA)のイベントスペースにて開催 平成 26 年 9 月に上海 APITA が、上海市長寧区 にオープンしました。日本式スーパーを再現し、 場所は日本人が比較的多く住んでいる地域に位 置し、地下鉄の駅と直結する商業施設内にあるこ とから利便性も良く、日本人の駐在員及びその家 族はもちろんのこと、現地の中国の方の来店も多 く、休日になると多くの買い物客で賑わっていま す。 今回の「愛知フェアー」は、上海 APITA の本社 が地元愛知ということで、全面的な協力を受け、 イベントスペースを利用し盛大に開催されました。 ■ 愛知県の食品会社 8 社が出展 愛知県を地元に持つ食品会社が、愛知の食を世界に発信することを目的に発足した食品輸出研究会に 所属する企業 8 社が、今回の「愛知フェアー」に出展されました。出展企業は、地元で永年愛され日本 国内で有名な老舗が多く、二週間の開催期間で前半 4 社、後半 4 社に分かれ、試食ができる即売会に臨 まれました。 中国の方に食品を説明するのに、中国語で調理方法を簡単に解説したものを掲示したり、食べ方の説 明書が添えてあったり、商品の魅力を伝える工夫をされていました。土日は来店客も多く、日本からの 出張者が自らフライパンや鍋を手に取って試食 品の調理をしながら、その匂いに惹かれ、試食を された中国の方の一人一人の反応を確かめてい らっしゃいました。日本の和食には欠かせない調 味料でも、食文化の違いにより、中国の方にとっ ては料理に使う習慣がない場合もあるため、試食 により料理の美味しさを伝え、そして自社製品を アピールするという地道な啓蒙活動をされてい ました。また、愛知県出身の日本人も来店され、 4 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 「上海でこの商品が買えるなんて嬉しい!」と、喜んで買っていかれる方もみえました。 ■ 愛知フェアー期間中に「あいち戦国姫隊」が登場 フェアー期間中の 11 月 7 日(土)、11 月 8 日(日)に、愛知の魅力を伝えるために、「あいち戦国 姫隊」を招き入れ、イベントスペースの隣でステージが計 4 回行われました。「あいち戦国姫隊」は 2011 年に 5 人で結成され、愛知の魅力を PR する活動を行っています。今回来海したのは、5 人の姫隊 のうち、織田信長の側室「吉乃」と信長の妹「市」の2人。愛知県事務所の所長が司会を務め、「愛知 の歴史や文化を広めるため4百年の昔からよみが えってきました」と二人を紹介し、日本の舞とテ クノポップを融合したパフォーマンスで、観客を わかせました。その後、愛知に因んだクイズコー ナーでは、正解者に今回出展された会社の商品を 姫が説明をしながら手渡ししました。記念撮影会 も開催され、小さなお子さんを中心に多くの方々 が参加されました。 ■ 愛知フェアーを通じて感じたこと 中国の中でも上海は、日本食レストランも多く、日本食は中国の多くの方に浸透しています。昨年上 海 APITA がオープンしたように、日本式スーパーも上海だけでなく、地方都市でも大手スーパーが出店 しており、日本人に馴染みのある食品が中国でも手に入るようになっています。しかし、東日本大震災 による原発事故以降、日本食品に対する輸入規制がされており、福島や宮城、東京など 10 都県の食品 は原則として中国に輸出ができない状況となっています。食の安全性を PR するイベントなども開催さ れているのですが、規制がなくなる気配は今のところありません。 一方で、中国人の訪日観光客が増加し、爆買いなどの現象のように、改善されつつある日中関係を背 景に、多くの方々が日本の良さ、食べ物の美味しさに触れる機会が多くなり、関心が高まっているのも まぎれもない事実であります。 こうした環境下で、県と民間が協力して「愛知フェアー」が開かれ、出展された企業が、自社食品を 中国の方々に PR されたことは、非常に良いタイミングであったと感じました。出展された方々は、こ ちらへ来て売ってみて、肌で感じることが多くあるとおっしゃってみえました。地元の老舗で名だたる 企業ばかりですが、それでも将来を見据え、日本国内の市場だけでは限界があるため、海外の市場への 挑戦することの大切さを感じてみえるのだと思いました。 今回会場を提供された愛知県のスーパー上海 APITA が、日本のスーパーとして中国市場に挑戦してい ることも、地元にとっては、とても心強いことだと思います。食品のバイヤー担当の方も、日本から中々 入ってこない食材・食品は積極的に取り入れたいご希望を持ってみえます。 当事務所としても自社商品の中国販売をご検討されてみえる企業が、中国に対しアプローチできる 機会を提供できるように、今後も努力していきたいと思います。 5 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 3.香港:「地銀合同ビジネス商談会@広州 2015」 香港駐在員事務所 当行は、中国・華南地区(広州市・中山市・佛山市・深圳市・東莞市等)に拠点のある取引先をサポ ートするため、他の地方銀行と協力し、「地銀合同ビジネス商談会@広州」を開催しました。香港に拠点を有 する地方銀行 15 行(十六銀行、足利銀行、伊予銀行、 大分銀行、大垣共立銀行、京都銀行、群馬銀行、滋賀 銀行、千葉銀行、中国銀行、南都銀行、西日本シティ 銀行、八十二銀行、福岡銀行、横浜銀行)と協力し、香 港、中国・華南地区等に進出している取引先を対象に参 加を募り、113 社、167 名の参加を得ました。 広州市・深圳市を中心とする広東省は、製造業を中 心に当行のお取引先さまが 100 社以上進出するなど、 中国・華南地区における日系企業の進出拠点であり、 進出企業間の情報交換の場や販路開拓、調達先拡大 のニーズが高い地域です。 当行では昨年 12 月に広東省広州市で初めての地銀合 同セミナー・交流会を開催しました。昨年はコンサルティン グ会社の講師を招いたセミナーと、出席者全員での懇親 会のプログラムでしたが、「せっかくの機会なので出席者 同士のビジネスマッチングの機会を設けて欲しい」という声 が多く、今年は「第一部」としてビジネス商談会を、「第二 部」として交流会を実施いたしました。 【第一部:ビジネス商談会】 会の開催に先立ち、本商談会への申込段階で「第一部 のビジネス商談会に参加」「第二部の懇親会に参加」を区分した上で、「ビジネス商談会に参加したい」という意 向のある企業のリストを作成し、参加各企業へそのリストを 配布し、事前に商談の相手先・時間を決定した上での商 談会といたしました。事前に配布したリストには、企業名、 日本本社名、業種、商品・製品・サービス、簡単な企業の 紹介の記載の他、「販売先を開拓したい」「調達先の幅を 広げたい」といったニーズを記載し、双方のニーズに合致 するように配慮いたしました。商談をしたい企業は配布さ れたリストから、自身のニーズと合致する企業を探し、「商 談の申込み」をします。主催者側はこの商談の申込を取り 纏め、商談のスケジュールの調整をします。指名された企 業に対しては指名リストを送付し、各企業と商談するか、しないかの判断をいただくとともに、商談の申込が集中 した企業については、指名された企業より優先順位をいただき、その順で商談スケジュールを策定しました。指 6 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 名された企業のニーズを極力配慮いたしました。 今回の商談会では 2 時間で 4 コマ(1 コマ 30 分)の商談をセットいたしました。1社最大で 4 コマの商談となり ます。また、同時に 25 席を用意し、全部で 100 コマまでの商談に対応いたしました。主催者各行においては、 十分な時間とコマ数を準備したつもりでありましたが、実際 に商談を募集したところ、全部で 155 件の応募があり、やむ を得ず相当数をカットした上で、最終的に 95 コマの商談を 実施することになりました。 なお、商談の実施まで至らなかった企業についても、第 二部の懇親会で名刺交換などの機会を設けたほか、取引 銀行を通じて後日に面談の機会を設けるように、もしくはメ ール等での連絡が取れるように極力配慮いたしました。 スケジュールによっては、商談会の空き時間が発生する お客さまもあることから、JETRO 広州事務所の他、広州市 に進出する日系のコンサルティング会社、保険会社、人材 派遣会社など 11 社の協力を得て、「相談ブース」として 11 ブースを設置し、今回の出席企業すべてが無料で 各種の相談を行えるようにしました。商談会会場と同じスペ ースに設置したブースを、商談会の合間に各企業に利用 いただき、中国での企業経営についての悩みなどを相談 できるようにいたしました。また、同ブースで JETRO 広州が、 現在展開中の「中小企業海外展開現地支援プラットフォー ム(香港&広州)」の紹介を行い、プラットフォーム支援企業 として興味のある多くの企業が話を聞いていました。 【第二部:懇親会】 商談会の終了後、隣の会場で立食形式の交流会を開催 いたしました。交流会では都合によりやむなく、先の商談会 での面談の機会が得られなかった取引先などとの名刺交 換を銀行がサポートいたしました。それ以外にも、業種別で テーブルを用意したことにより、同業種間での名刺交換、 意見交換が積極的に行われていました。 これまで「世界の工場」として発展してきた中国経済は今 転換期を迎えております。広東省は中国 No.1 の GDP を 誇る省ですが、早くに加工貿易で発展してきたこともあり、 構造転換の影響を大きく受けています。製造拠点の東南 アジアシフトにともない、中国国内での受注が減少している 状況は否めず、日系の下請け企業においても、これまでの納入先に加え、新たな納入先を開拓するニーズが 大変強くなっているように感じます。 こういったニーズに応えるために、十六銀行では他の地方銀行と連携しお客さまの中国国内でのビジネスの 支援をしていきたいと思います。 7 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 4.シンガポール:「日本食激戦区の最前線」 シンガポール駐在員事務所 一昨年、 「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことにより、一層拍車のかかった感のある世 界的な日本食ブーム。ここシンガポールでもご他聞に漏れず、日本食レストランが急増しています。 その人気は衰えることを知らず、約 6,700 件の全飲食店のうち約 1,100 件、率にして実に約 16%が日 本食レストランだと言われています。今回はそんな「日本食激戦区」 、シンガポールにおける日本食ビ ジネスの現況について報告したいと思います。 1.シンガポールと日本食 シンガポールでは、女性の社会進出が進んでいることもあり、共働きの家庭が多いと言われています。 よって必然的に世帯可処分所得は高まり、外食中心の食文化が育まれてきました。確かに、街にはホー カーセンターと呼ばれる、いわゆる「屋台村」やレストランが多数軒を連ねています。加えて、中華系、 マレー系、インド系などが共存する「多民族国家」であることから、元来多彩な食文化が存在しており、 多様性を受け入れる素地があるのでしょう。それまでも、徐々に人気が高まっていた日本食でしたが、 本格的にブレイクしたのは 2010 年前後だったそうです。大手外食チェーンの進出が相次ぎ、これに健 康志向の高まりが追い討ちをかけました。 「日本食=健康、安全、安心」というイメージが定着し、 「ヘ ルシーフード」としても受けられているようです。業界関係者の中には、 「ローカルフードを除けば、 シンガポール人にとって一番身近で人気のある料理は日本食だ」という声もあるほどで、その浸透度は 高いと言えるでしょう。 2.最近の傾向 浸透度が高いからこそ、シンガポールの消費者が求める日本食は、より本物志向になってきているよ うです。日本食レストランが広まり始めた当初は、寿司や天ぷら、とんかつやラーメン、うどんといっ たように、多くのメニューを揃えた総合的日本食店が多かったと言います。ところが近時はシンガポー ル人の日本食に対する「経験値」が上がり、年々専門店志向が強くなっているらしいのです。それを裏 づけるように、ラーメン屋、とんかつ屋、鉄板焼き屋など、本 当に日本と変わらないと言えるほど、様々な専門店が出来てき ています。 またもうひとつの傾向としては、大型ショッピングモールに 日本食専門店街を設けるのがひとつのブームとなっているよう です。その取り組みのひとつとして、クールジャパン機構(海 外需要開拓支援機構)が出資する「ジャパンフードタウン事業」 が、繁華街オーチャードにある日系百貨店内に多数の中小外食 企業が出店する「ジャパンフードタウン」 (仮称)をオープンさ せる計画も進行中のようです。 日本食専門店街 3.販路開拓への足掛かり そんなシンガポール市場ではありますが、いざこれから販路を開拓しようと考えた際、現地のバイヤ ー、輸入・卸売業者と巡り合うきっかけづくりや、自社製品のマーケティングの場として有効な手段の ひとつが、見本市への出展でしょう。「ASEAN のショーケース」と呼ばれ、周辺各国からも人の目を引 8 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 きつけやすいシンガポールでは、多くの見本市が開催されてい ます。そのひとつであり、日本食に特化した ASEAN 最大の見本 市が「Oishii JAPAN」です。2012 年から年に一度開催されてい るこの見本市ですが、今回より、当行もシンガポールに拠点を 有する地方銀行 11 行とともに、協力銀行として名を連ねること となりました。10 月 22∼24 日の 3 日間開催された「Oishii JAPAN 2015」ですが、今回は 42 都道府県から 294 団体が出展、入場者 数も 3 日間合計で 10,910 人と過去最大の規模となりました。 3 日間の開催期間のうち、最初の 2 日間はバイヤー、輸入・ Oishii JAPAN 2015 会場 卸売業者などの食品関係者のみが入場可能、最終日は一般消費 者も入場可能となっているため、業者との商談だけでなく、一般消費者の反応を直接確認できる場とし ても活用できるというわけです。実際、岐阜県や愛知県の企業様も数多くご出展されており、皆様がこ のシンガポールの地において熱心に営業をされている姿を拝見して、大変頼もしく感じると同時に、筆 者まで胸が熱くなるのを感じた次第です。 ちなみに、シンガポールにおける次なる食品見本市としては、「Food and Hotel Asia 2016」の開催 が 2016 年 4 月 12∼15 日に予定されています。 また、見本市以外にも日系企業の販路開拓を支援する動きも 出てきています。多くの集客が見込めるショッピングモール内 に設けられた、日本の食品等を紹介するための常設イベントス ペースや、日系企業から委託を受けた食品をメニューとして提 供しながら、併設の展示スペースで商品を陳列・販売する飲食 店などが代表的な取り組みです。これらを利用すれば、比較的 低コスト・低リスクで、現地でのマーケティングや、場合によ ってはバイヤーや輸入・卸売業者との接点を持つことも可能と なることから、販路開拓の入口としては一考に値するのではな いかと思います。 常設イベントスペース 4.激戦区ならではの魅力 これまで述べてきました通り、シンガポールには既に多くの日本食が入ってきており、一般的なもの はほぼ何でも食べられると言っても過言ではないでしょう。ですから、目新しさを感じられないもので は、これからの市場参入は少々厳しいものがあるかもしれません。 ただ逆に言えば、そんな激戦区だからこそ、シンガポールの消費者には日本食を受け入れる土壌はし っかりとできていると言えます。加えてシンガポールは、一世帯あたりの家計所得が 1 ヶ月につき 12,000 シンガポールドル(約 100 万円)以上という、いわゆる富裕層が国民の約 28%を占める所得水 準の極めて高い国です。人口そのものは多くありませんが、購買力の高い層が厚いのは間違いありませ ん。彼らは、もちろん「美味しい」ことは大前提ですが、それ以外に「独自性がある」 「健康に良い」 といった何らかの付加価値のあるものであれば、我々日本人が考える以上に惜しみなくお金を払う傾向 にあるようです。さらにシンガポールは「ASEAN の情報ハブ」でもありますので、周辺諸国への波及効 果も期待できます。例えば、当地で高まりを見せている「健康志向」は、今後発展していく周辺諸国に も確実に広まっていくことが予想されますし、そうなれば「ヘルシーな食品」はより訴求力が高いもの と思われます。 シンガポールに日本食があふれていると言いましても、日本食文化の懐は深いですから、開拓の余地 は十分にあると思います。是非一度、 「激戦区への販路開拓」をご検討されてみてはいかがでしょうか。 9 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 5.ベトナム:「世界第 2 位のコーヒー生産大国」 海外サポート部 (ベトナム投資開発銀行ジャパンデスク) 中村 敦 コーヒーの生産地といえば、ブラジルやコロンビアな ど中南米諸国をイメージしがちですが、実はベトナム 【世界のコーヒー生産量】 順位 国名 2014年∼2015年(単位:千袋) 1 ブラジル 54,300 は世界第 2 位のコーヒー生産大国です。コーヒーはベ 2 ベトナム 27,400 トナム人の生活の中で、欠かすことの出来ないものとな 3 コロンビア 13,300 4 インドネシア 8,800 5 エチオピア 6,475 6 インド 5,440 7 ホンジュラス 5,000 8 ウガンダ 3,550 9 グアテマラ 3,365 10 メキシコ 3,300 っており、筆者が住んでいるハノイの町にも至る所にカ フェがあります。 ベトナムのコーヒーは濃厚で苦みが強いため、練乳 を入れたり、中に入った氷を溶かしたりしながら、時間 をかけて飲むことが特徴です。コーヒー1 杯の価格は、 USDA(米国農務省)公表資料を基に筆者が作成 簡素な椅子とテーブルだけのローカルカフェで 50 円 ∼150 円程度、外国人やベトナムの若者をターゲットにしたお洒落なカフェでも 300 円程です。ベトナムの大衆 食堂では1食 100 円∼200 円程で食事ができますので、現地の人にとっては一概に安い価格とも言えませんが、 市内のカフェは朝から晩まで一日中多くの市民で賑わっています。 初めてベトナムにコーヒーが持ち込まれたのは、19世紀中頃のフランス植民地時代と言われています。もとも とコーヒーはベトナムに住むフランス人向けに生産されていましたが、徐々にベトナム人にもコーヒーを飲む文 化が浸透し、コーヒーの生産量も増加していきました。 近年、ベトナム政府はコーヒーを重要な輸出品と位置づけ、コーヒー産業の育成に力を入れており、ここ 10 年で生産量は約 2 倍になっています。またスイスの世界的コーヒーメーカーによる技術指導なども行われており、 品質改善やブランド力の強化に取り組んでいます。 日本ではまだそれほど馴染みのないベトナムのコーヒーですが、日本のカフェで飲めるようになる日も遠くな いかもしれません。 <平日の午後、多くの市民で賑わうローカルカフェ> <ローカルカフェのアイスコーヒー 1杯 110円程> 10 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 6.為替相場情報 (1)人民元−円為替相場(中国人民銀行公表仲値) (月) (単位:1人民元当たりの日本円) (火) (水) (木) (金) 11月23日 19.23632 11月24日 19.23484 11月25日 19.17619 11月26日 19.19238 11月27日 19.18760 11月30日 19.19128 12月1日 19.25892 12月2日 19.21968 19.24631 12月4日 19.20750 12月7日 19.24150 12月8日 19.23447 12月9日 19.17178 12月10日 18.94226 12月11日 18.91969 18.75434 12月16日 18.82885 12月17日 18.90323 12月18日 18.88146 12月14日 18.74660 12月15日 12月3日 22.00 過去1年間の人民元−円相場推移 21.00 20.00 19.00 18.00 17.00 16.00 /1 14 0 2/ 9 1 12 4/ 1 /3 1 01 5/ 2 /2 /0 15 1 2/ 3 1 03 5/ 7 /0 /0 15 2 3/ 9 1 04 5/ 0 /2 /0 15 1 5/ 2 1 06 5/ 3 /0 1 06 5/ 5 /2 7 8 0 1 3 4 6 8 /1 /3 /0 /0 /1 /2 /1 /2 07 08 08 09 10 11 11 12 / / / / / / / / 15 15 15 15 15 15 15 15 上記表、及びグラフはこの公表仲値を便宜的に1人民元当たりの日本円へ換算し直した相場です。 そのため、正式な人民元相場が必要な場合は、中国人民銀行にお問い合わせ下さい。 (2)ドル−円為替相場(当行公表仲値) (単位:1ドル当たりの日本円) (月) 11月23日 (火) - 11月24日 (水) (木) (金) 122.87 11月25日 122.43 11月26日 122.62 11月27日 122.74 11月30日 122.82 12月1日 123.11 12月2日 122.88 12月3日 123.28 12月4日 122.71 12月7日 123.24 12月8日 123.27 12月9日 122.95 12月10日 121.50 12月11日 121.93 12月14日 120.80 12月15日 121.16 12月16日 121.76 12月17日 122.51 12月18日 122.49 135.00 過去1年間の米ドル−円相場推移 130.00 125.00 120.00 115.00 110.00 14 /1 2/ 09 14 /1 2/ 31 15 /0 1/ 22 15 /0 2/ 13 15 /0 3/ 07 15 /0 3/ 29 15 /0 4/ 20 15 /0 5/ 12 15 /0 6/ 03 15 /0 6/ 25 15 /0 7/ 17 15 /0 8/ 08 15 /0 8/ 30 15 /0 9/ 21 15 /1 0/ 13 15 /1 1/ 04 15 /1 1/ 26 15 /1 2/ 18 105.00 11 十六アジアレポート 2016 年 1 月号 (3)タイバーツ−円為替相場(当行公表仲値) (単位:1バーツ当たりの日本円) (月) 11月23日 11月30日 (火) − 11月24日 3.4200 12月1日 (水) (木) (金) 3.4300 11月25日 3.4300 11月26日 3.4300 11月27日 3.4300 3.4400 12月2日 3.4400 12月3日 3.4400 12月4日 3.4400 12月7日 3.4400 12月8日 3.4400 12月9日 3.4300 12月10日 3.3800 12月11日 3.3900 12月14日 3.3400 12月15日 3.3500 12月16日 3.3800 12月17日 3.4100 12月18日 3.3800 過去1年間のタイバーツ−円相場推移 3.8 3.6 3.4 3.2 3 14 /1 2/ 09 14 /1 2/ 31 15 /0 1/ 22 15 /0 2/ 13 15 /0 3/ 07 15 /0 3/ 29 15 /0 4/ 20 15 /0 5/ 12 15 /0 6/ 03 15 /0 6/ 25 15 /0 7/ 17 15 /0 8/ 08 15 /0 8/ 30 15 /0 9/ 21 15 /1 0/ 13 15 /1 1/ 04 15 /1 1/ 26 15 /1 2/ 18 2.8 (4)インドネシアルピア−円為替相場(参考値) (単位:100ルピア当たりの日本円) (月) 11月23日 (火) − 11月24日 (水) (木) (金) 0.9000 11月25日 0.9000 11月26日 0.9000 11月27日 0.9000 11月30日 0.8900 12月1日 0.8900 12月2日 0.8900 12月3日 0.9000 12月4日 0.8900 12月7日 0.8900 12月8日 0.8900 12月9日 0.8900 12月10日 0.8800 12月11日 0.8800 12月14日 0.8700 12月15日 0.8600 12月16日 0.8700 12月17日 0.8700 12月18日 0.8800 過去1年間のインドネシアルピア−円相場推移 1.1 1.05 1 0.95 0.9 0.85 14 /1 2/ 09 14 /1 2/ 31 15 /0 1/ 22 15 /0 2/ 13 15 /0 3/ 07 15 /0 3/ 29 15 /0 4/ 20 15 /0 5/ 12 15 /0 6/ 03 15 /0 6/ 25 15 /0 7/ 17 15 /0 8/ 08 15 /0 8/ 30 15 /0 9/ 21 15 /1 0/ 13 15 /1 1/ 04 15 /1 1/ 26 15 /1 2/ 18 0.8 12