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送電線と樹木の離隔計測への小型無人飛行機 の適用性評価
電力中央研究所報告 電 力 輸 送 送電線と樹木の離隔計測への小型無人飛行機 の適用性評価 キーワード:送電設備,離隔距離,樹木,SfM マッピング,小型 UAV 背 報告書番号:V15004 景 送電線と接近樹木の離隔評価は保安伐採の時期や箇所を特定するために欠かせない。 離隔評価は、航空機レーザー測量(航空機 LiDAR 注 1)による高精度な計測が行われて いるものの高コストのため頻繁に実施することが難しく、目測に頼らざるを得ない場合 がある[1]。近年、小型無人飛行機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle、ドローン)を用いて撮影 した写真画像から空中三角測量によって推定した 3 次元形状に画像を張り付ける技術(以 降、SfM マッピング)注 2 が発達している。その適用により離隔評価を簡便かつ正確に行 うことができれば、 設備巡視の効率化および電気事故リスクの低減に有効と考えられる。 目 的 小型 UAV によって撮影した空中写真画像から送電線および地表を含む 3 次元の位置 計測に必要な条件を確認し、 小型 UAV を用いた離隔評価における精度を明らかにする。 主な成果 2015 年 7 月に、無課電の送電設備 2 箇所(塔高約 60 m および 30 m)の径間上空を飛 行する小型 UAV(図 1)を用いて SfM マッピングを実施するとともに、電線地上高を指 標とした地上からのレーザー測量との比較を通して精度検証を行った。 1. 送電線および樹冠の 3 次元モデルの作成 小型 UAV を用いて上空から鉛直下向きに撮影した一連の写真画像(分解能 19 mm お よび 13 mm / 画素、図 2)から SfM マッピングを行った結果、画像間の視野が 80%以上 重複するように撮影することで、電線(地上高約 23 m と 14 m)および近傍の樹冠を 3 次元の点群として良好にモデル化することができた(図 3)。 2. SfM マッピングによる離隔評価精度の確認 傾斜計を備えたレーザー距離計によって測量[2]した電線地上高を真の値とした場合、 送電設備上空から撮影された写真画像の解析(図 4)における計測誤差は 0.14~0.36 m 程度、設備干渉のリスクに配慮して斜め上空を飛行させた場合は 0.15~0.53 m 程度とな った。航空機 LiDAR による樹冠高の測量誤差は 0.20~0.30 m 程度と言われている。地 上からの見通し等の制約を受けにくい本手法は、 特別高圧架空電線で必要な離隔距離を、 航空機 LiDAR と同程度の精度で簡便に評価できると考えられる。 今後の展開 樹高評価における葉の有無の影響や、複雑地形での小型 UAV の運用手法等の検討を 行い、SfM マッピングによる離隔評価の実用化を進める。 図 1 設備の地上高と小型 UAV 飛行高度 図中の丸数字は導体数を表す。500 kV / 275 kV 設備 の径間は 180 m、66 kV / 154 kV 設備の径間は 130 m。 小型 UAV は Phantom2 vision+(DJI, CN)を用い、GPS に基づいた自動操縦で飛行させた。 図2 小型 UAV から撮影された地表の写真画像(500 kV / 275 kV 設備) 鉛直下向きに撮影し、進行方向および側方に約 80% 程度視野が重複するよう飛行速度に応じてインター バル撮影した。図中の数字は撮影順を示す。500 kV / 275 kV 設備の下層電線位置での分解能は 19 mm /画 素、66 kV / 154 kV 設備では 13 mm /画素。 図 3 500kV / 275kV 設備の点群 図 4 500kV/275kV 設備電線の点群横断図 写真画像から生成されているため、各点には 3 次元 横軸は、UTM 座標(ゾーン 54)/ 測地系 WGS84 の 情報に加え色情報が含まれており、視認性に優れる。 X 座標を表す。地表面、樹冠(左端) 、電線に相当す 赤枠は図 4 の横断面位置を示す。 る点群が表示されている。複導体は一体となって復 元されている。地上の基準点(GCP)で補正。 注1 注2 パルス状に発光するレーザーを照射し、対象からの反射光が到達する時間で距離を計測する方法。 航空機に搭載することで、地形や構造物等を詳細に測量することができる(Laser Imaging Detection and Ranging)。 被写体の一部が重複するように撮影された複数の静止画内で同一の対象(特徴点)を見出し、特徴 点間の位置関係からカメラの撮影位置と対象形状を推定する SfM(Structure from Motion)と、対象 形状表面に合わせて画像を張り付けるマッピングによって点群を高密度補間する一連の処理。 関連研究報告書 [1] V14001「送電線下の植生管理に関する現状と合理化に向けた技術的課題の抽出」 (2014.12) [2] H14005「レーザー距離計を用いた電線地上高連続計測システムの開発」 (2015.5) 研究担当者 中屋 耕(環境科学研究所 生物環境領域) 問い合わせ先 電力中央研究所 環境科学研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected] 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] © 2016 CRIEPI 平成28年2月発行