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国内ITサービス市場動向と富士通の取組み
国内ITサービス市場動向と富士通の取組み Trends in Domestic IT Service Market and Related Fujitsu Activities あらまし 国内経済は緩やかな回復基調にあるものの,グローバルな競争の激化,商品のライフサ イクル短期化・低価格化など,経営環境は依然として厳しい状況である。こうした中,環境 変化に迅速に対応し企業が成長するために,ITに対しても,「安定運用」「内部統制対応」 など,経営基盤を盤石にするという役割と, 「新規事業の創出」 「営業力強化」など,戦略的 な役割の両方が求められている。限られたリソースでこの要件に対応するため,企業は社外 リソース活用を含むIT投資の最適化を進めている。 こうした背景により,ITサービスへのお客様ニーズ,すなわちITサービス市場は拡大を 続けており,とくにITアウトソーシングの伸びが顕著である。また,SaaS(Software as a Service)などの新しいサービスも生まれてきている。 本稿では,ITサービス市場の動向について述べ,最後に富士通の取組みを紹介する。 Abstract Though the domestic economy has enjoyed a moderate recovery, enterprises continue to face a difficult situation relative to intensifying global competition, prolonged product life cycles, and declining prices. In order to respond promptly to a changing environment and ensure steady growth, enterprises need IT to satisfy two roles: strengthening management infrastructure with “stable operation” and “reinforcing internal control.” Moreover, enterprises need IT in support of business strategy that includes “creating new business” and “strengthening sales power.” In order for IT to meet those requirements, enterprises are optimizing investments in IT both inside and outside the company. Against this background, there are growing needs for IT service among enterprises. In particular, there has been a significant increase in IT outsourcing, along with the development of such new services as SaaS (Software as a Service). This paper describes the trends in the IT service market and introduces related Fujitsu’s activities. 大塚尚子(おおつか なおこ) マーケティング本部企画部 所属 現在,国内ソリューションビジネス 戦略の策定,および新規事業の企 画・立上げに従事。 2 FUJITSU.59, 1, p.2-8 (01,2008) 国内ITサービス市場動向と富士通の取組み ま え が き すことができない。企業はこれまで以上にステーク ホルダ(株主・お客様・取引先・従業員など)との ITサービス分野への投資の2006~2011年の年間 対話を増やし,変化の激しい市場に対し迅速かつ的 平均成長率(1)は,IT投資全体の1.7%に対し,3.4% 確な経営判断を行うことにより,彼らの要求に応え が見込まれ,セグメント(ITサービス,ハード ることが求められている。 ウェア,ソフトウェア)間で比較した場合,2007 こうした背景が,アウトソーシングをはじめとす 年度中にハードウェアの投資規模を上回り,最も大 る利用型契約へのシフトを加速する一要因になって きなセグメントになると予想されている。とくに, いる。すなわち,「自社システム構築にかかわる運 ITサービスの中に分類されるITアウトソーシング 用要員確保・維持の負担を軽減」 , 「システムを経営 は,5.6%の成長率でお客様の期待が非常に高いこ 環境変化に合わせ柔軟に変更可能」 , 「資産の低減に とがうかがえる。また,ITへのニーズ変化と技術 よる資本効率向上に寄与」という特徴が多くの企業 の 進 歩 が 組 み 合 わ さ り , SaaS ( Software as a の経営ニーズにマッチしていると考えられる。 Service)と呼ばれる新しいサービス提供形態の出 ( 注 ) 3Dインターネットを活用する企業 現や,CGM, の出現が見られる。 情報システムの課題と期待される役割 企業が経営環境の変化に迅速に対応し,企業の成 本稿では,昨今のお客様の経営環境の変化,それ 長を通じてステークホルダの要求に応えていくため に伴うITの課題と期待される役割について考察し, に,経営を支える情報システムには,「経営基盤の 今後のお客様ニーズ変化に伴うITサービス市場の 強化{安定した運用の実現,内部統制強化,BCP 変化と富士通の取組みについて紹介する。 経営環境の変化 国内経済は緩やかな回復基調にあるものの,世界 (Business Continuity Planning)策定,セキュリ ティ対策など}」と,「攻めのIT投資(経営環境変 化に即応した新規事業創造への貢献)」の両方が求 められている。 経済や国際金融市場の不確実性に加え,国内景気も しかし実際には,基幹業務システムの老朽化やブ 住宅投資の落ち込みなどから減速しており,多くの ラックボックス化,システム維持運用負荷(要員・ 経営者にとって,経営環境は依然厳しい状況である。 コストなど)増大への対応が優先し,戦略的IT投 内閣府の調査(2)によると,日本企業が競争環境とし 資の実施が困難という状況に直面している企業も少 て重要視する動向として「コスト競争の激化 なくない。富士通のお客様アンケート調査によると, (84.1%) 」 , 「主要製品・サービスの需要変動の拡大 情報システム部門の考える今後3年間の情報化投資 (74.1%) 」 , 「事業・技術に関する不確実性の高まり の重点分野の1位は「情報システム積極活用に向け (39.2%) 」 , 「主要製品・サービスのライフサイクル たITインフラ整備(65.5%)」であり,過去3年間 の短期化(33.3%)」の4項目が上位を占めている を振り返っても1位の項目である。重点投資分野の (複数項目中,3項目選択形式)。また,法制度改正 過去3年間と今後3年間を比較してみると,その差 (2006年会社法施行,改正商権取引法施行など)の 分の高い分野として「管理会計の精度向上(的確な 影響もあり,増加するM&Aへの対応や内部統制対 コスト把握)(+19.1)」,「グループ経営の効率化 応なども,重要な課題になっている。さらに,ネッ (+18.2) 」があり,経営基盤整備への堅実な対応を トワークの普及と個人のITリテラシー向上に伴う, 継続する様子がうかがえる。一方,「攻めのIT投 消費者の情報受発信力の拡大という環境変化も見逃 資」という観点で調査結果を見てみると,2位に顧 客対応力の向上(64.5%) ,3位に営業力・販売力の 強化(60.0%)と,事業拡大に向けた項目が挙げら (注) Consumer Generated Mediaの略。インターネットなど を活用して消費者が情報を発信し,内容を生成していく メディアの総称。情報交換のサイトや,ブログ,クチコ ミサイトから,Q&Aコミュニティ,SNS,動画投稿サ イトなどもこれに当たる。近年,その数が急増するとと もに消費者の購買行動に影響を与えるメディアとして注 目されている。 FUJITSU.59, 1, (01,2008) れている。また,過去3年間と今後3年間の比較で も,「経営意思決定の迅速化(+19.1)」,「マーケ ティング力の強化(+18.2)」,「事業のグローバル 化への対応強化(+17.3)」など事業活動に直結す 3 国内ITサービス市場動向と富士通の取組み 表-1 過去3年間・今後3年間の情報化投資の目的(110会員 複数回答) 過去3年間・今後3年間の情報化投資の目的 過去3年間(%) 今後3年間(%) 差分(%) 情報システム積極活用に向けたITインフラ整備 80.9 65.5 -15.4 顧客対応力の向上 54.5 64.5 +10.0 営業力・販売力の強化 47.3 60.0 +12.7 グループ経営の効率化 40.0 58.2 +18.2 管理会計の精度向上(的確なコスト把握) 37.3 56.4 +19.1 製品・サービスの品質の向上 46.4 55.5 +9.1 部門間での情報共有の円滑化 53.6 54.5 +0.9 社員の情報活用能力の向上 40.9 50.9 +1.0 経営意思決定の迅速化 31.8 50.9 +19.1 社内コミュニケーションの円滑化 50.9 47.3 -3.6 既存事業の拡大 47.3 46.4 -0.9 取引先・企業間ビジネス連携 42.7 46.4 +3.7 事業のグローバル化への対応強化 28.2 45.5 +17.3 顧客ニーズの把握 32.7 42.7 +10.0 ワークスタイルの変革 26.4 42.7 +16.3 ステークホルダーに対する情報開示 25.5 37.3 +11.8 マーケティング力の強化 17.3 35.5 +18.2 現場での意思決定の迅速化 21.8 34.5 +12.7 新規事業の展開 14.5 29.1 +14.6 出典:LS研IT白書2007年度版 る項目が多く挙げられている(表-1)。さらに,同 調査では,「情報システム部門の重要課題」という 観点でもアンケートを実施しており,回答数が最も 多かった項目が「内部統制の強化・監査の充実 いくこととする。 サービス市場の動向 ● システム運用サービス・アウトソーシング (79.1%)」で,つぎに「情報セキュリティ対策 システム運用サービス・アウトソーシングへの (64.5%)」が続いている(110会員,複数回答10項 ニーズは依然高く,IDCによると,2006年の国内 目まで) 。 ITアウトソーシング市場は,金融業を中心とした これらの調査結果から,多くの企業が,早急に解 アプリケーションマネジメントの普及,インター 決すべき課題として経営基盤の強化,すなわち現状 ネット関連需要の増加によるホスティングサービス の基幹システムインフラの整備,内部統制強化やセ の拡大,サーバ/ストレージなどの増設に伴う契約 キュリティ対策などに取り組む一方,今後は戦略的 範囲の拡大などを要因として,前年比6.9%増の1兆 分野への情報化投資に積極的に取り組もうとしてい 8848億円規模となった。また,2007年以降も企業 ることがうかがえる。 の情報システム運用管理コストの削減ニーズに加え, では,企業の課題解決の方策として示されている システム可用性/柔軟性強化(業務量の変化に合わ システム運用サービス(既存システムの運用品質・ せたシステムリソースの柔軟な拡大などのこと)に 効率向上),アウトソーシングサービス/SaaS(迅 対するニーズから市場は拡大し,2011年には2兆 速・柔軟なIT導入と運用負荷削減),さらには,ス 4861億円規模の市場になると予測している。しか テークホルダとの対話強化に向けた,CGM解析や し,図-1に示すように,ITアウトソーシングのニー Second LifeなどのWeb2.0時代の新たな取組み,そ ズ自体は拡大し続けているが,一方でサービス価格 して,これらサービスを支えるセキュリティといっ の下落により,市場の伸びは鈍化している。IDCは, た需要が今後どのように変化するのか,次章で見て この状況について,ITアウトソーシングの普及に 4 FUJITSU.59, 1, (01,2008) 国内ITサービス市場動向と富士通の取組み (億円) (%) 30,000 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 (百万円) 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 市場規模 前年比成長率 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 出典:IDCJapan,2006年2月(J6100101,TABLE5) 出典:IDCJapan, 2007年9月(#J7250106) 図-1 国内ITアウトソーシング市場規模と成長率 Fig.1-Japan IT Outsourcing Market Forecast and Growth Rate, 2006-2011. 図-2 SaaS市場規模 Fig.2-Japan Software as a Service Market Forecast, 2005-2010. よってベンダ間の競争が激化し,技術の発展によっ 入と運用負荷の軽減への期待が最も高い,というこ てサービスの多様化やコモディティ化が起こってい とである。さらにこの調査では,「経費扱いでの利 る上,短縮化したITライフサイクルに応じてITア 用」という点にもお客様は期待しており,いわゆる ウトソーシングの契約を見直す機会が増えているこ 「固定費の変動費化」が経営上のニーズとして高い (3) とが,原因であると分析している。 ことも確認された。 こうした流れの中で,米国の調査会社ガートナー こうしたメリットはアウトソーシングへのニーズ でも同様に,今後の国内ITアウトソーシング市場 と重複する部分も多く,アウトソーシング市場が拡 は,規模を拡大するも,サービス価格の下落により, 大基調にある中,新しいサービス形態として大きな (4) 低い成長率で推移すると予測している。 成長が期待される理由の一つである。しかし, ● SaaS SaaSサービスがIDCの予測のような急拡大を遂げ SaaSが新しいサービスとして注目されている。 るには,魅力的なアプリケーションが豊富に提供さ SaaSとは,アプリケーション機能を,ネットワー れることが不可欠である。そのために,まずは クを通じてサービスとして提供するモデルのことで SaaSアプリケーション開発者に対して魅力的な開 ある。SaaSベンダとして有名なセールスフォー 発環境および運用環境が提供されることが重要で ス・ドットコムが2007年4月,当時の日本郵政公社 ある。 で大型受注をしたニュース (5) が記憶に新しい。 SaaS市場には,セールスフォース・ドットコムや そして,上記条件が満たされたとしても,さらに 解決すべき課題がある。 オラクル,SAP,ネットスイートといったアプリ IDCの調査では,現状で国内ユーザ企業における ケーションベンダが参入しているほか,IBMも SaaS/ASPの利用率は全体の6%足らずと限定的な 2007年5月にデータセンタのリソースをSaaSで提 利用にとどまっており,マーケティング/カスタマ 供するアプリケーションズ・オンデマンドの提供を サポートシステムや学校業務支援システム/eラーニ 開始した。富士通も2007年度よりSaaS型サービス ング,ECサイトなどに限定されている。現状で, の提供を一部開始している。 利用が進まない理由としては,お客様企業がシステ IDCの調査によると,2006年の市場規模は280億 ムのセキュリティ面での強い不安を抱いていること, 円で,2007年には360億円となり,2010年には600 通常のシステム同様の柔軟なカスタマイズはできな (6) 。 億円を超えると推定している(図-2) (7) い点を懸念していることにあるとしている。 また,SaaS導入のメリットとしては,図-3に示 このお客様の懸念を払しょくするためのベンダの すとおり「一から新規にシステムを構築せずにす 取組みとして,第一に,お客様システムとの連携を む」 , 「システムの運用などのメンテナンスをしなく 図るべくSOAをベースとしたアプリケーションを (7) つまり,迅速な導 て良い」などが挙げられている。 提供し,さらに,お客様自身による簡便なカスタマ FUJITSU.59, 1, (01,2008) 5 国内ITサービス市場動向と富士通の取組み 49% 一から新規にシステムを構築せずに すむ システムの運用などのメンテナンスを しなくて良い 39% 導入しても「使えない」と判断された 場合に解約・遺棄が可能 31% 定額(月額/年額)料金や従量課金方 式なので経費扱いで利用することが 出来る 29% アプリケーションのバージョンアップ をしなくて良い 27% 「いつでもどこでも」インターネットと ブラウザがあれば利用可能 26% ライセンスを購入しないのでIT資産 の計上をしなくて済む 17% 14% 検討から立上げまでが素早い 0 10 20 30 40 50 60 % 出典:2007国内SaaS市場の需要動向分析-ユーザーニーズ把握調査- IDC Japan September 2007 図-3 SaaS/ASPのメリットとしての重要項目 Fig.3-Reasons for introducing SaaS/ASP. イズを可能とするツールを提供することが重要とな 法と,情報漏えい事件に伴う消費者のセキュリティ る。実際に富士通を含め,多くのベンダが取組みを に対する意識の高まりも企業のセキュリティ強化を 強化しており,一部提供も始まっている。もう一つ 促す一要因となっている。 のポイントであるセキュリティ面の強化については, IDCの予測では,国内セキュリティサービス市場 SaaSに限らず今までもお客様要望の高い項目であ は2006年に5000億円を突破し,2006年から2011年 り,遠隔地でお客様のデータを預かりネットワーク までは年平均成長率12%で成長する見込みである。 経由で利用していただくという形態を取る上で,一 その詳細内容を見ると,現在,市場の50%以上を 層の充実が喫緊の課題である。 構成しているのは,セキュリティシステム構築であ ● セキュリティ るが,今後,最も需要が高まるのは,セキュリティ では,そのセキュリティについてのお客様の要望 を考察する。 システム運用管理の分野で,その規模は2011年に はセキュリティシステム構築と同程度まで拡大する お客様のシステム内に保持されるデータ,ネット (8) セキュリティシステム運用管理市 と予測している。 ワークを介して送受信されるデータ,そして,ベン 場へのニーズが高まっている要因の一つとして,企 ダがお客様から預かるデータをいかにセキュアに保 業の情報セキュリティ担当の人材不足により,自社 つことができるか,という命題は,ITの活用範囲 セキュリティシステムを持たずにアウトソーシング の広がり,社会生活への影響度が増すに従って,ま を選択する企業が増えることを指摘している。 すますその必要性が強く認識されている。また, こうした企業の動きをとらえて,ウイルス対策ソ 2008年に施行予定の改正商権取引法施行に伴う内 フトウェアベンダであるマカフィーは更新などの一 部統制強化や,2005年に施行された個人情報保護 部機能をSaaSで提供し始めた。また,2006年10月 6 FUJITSU.59, 1, (01,2008) 国内ITサービス市場動向と富士通の取組み にIBMがインターネットセキュリティシステムズ 富士通の取組み (ISS)を買収したのを皮切りに,ヒューレット パッカードやシスコシステムズなどのグローバルベ 富士通では,「経営基盤の強化」というお客様の ンダが立て続けにセキュリティソフトウェアベンダ 要望に対応して,2007年5月にITシステムの運用・ を買収しセキュリティサービスプロバイダとしての 保守を支援するサービス・作業体系を業界で初めて 機能を強化している動きがある。富士通は,IDCの 確立し,豊富な実績とノウハウをベースに安定稼働 調査で国内セキュリティサービス市場におけるリー とコスト最適化,運用の見える化を実現する取組み (9) 拡大す ディングカンパニーとして評価されており, を始めた。また,運用品質の向上とお客様負荷の軽 るお客様ニーズに先駆けて一層の取組み強化を進め 減を目指したトラブル多発予兆監視,運用・保守の ている。 可視化,運用改善のための人材育成などに取り組ん ● 新たなサービスの台頭 でいる。アウトソーシングサービスにおいては仮想 本節では,Web2.0という言葉に代表される消費 化技術を利用して「リソースオンデマンド」という 者(個人)を基点とする市場の変化について述べる。 サービス提供形態を用意し,お客様の業務量の季節 「経営環境の変化」の章でも触れたように,ネット ワークの普及と個人のITリテラシー向上に伴い, 変動などに対し,柔軟なシステムリソースの拡大・ 縮小を実現している。 消費者の情報受発信力が拡大している。ヤフーや 「攻めのIT投資」という要望に対しては,ネッ Googleの出現により,個人の情報検索能力は飛躍 トワーク経由での様々なサービス提供の充実に向け, 的に高まった。また,mixiなどに代表されるSNS 従来のアウトソーシングサービスに加え,新 (Social Networking Service)の出現で,インター FENICSの提供やSaaS利用に向けたサービス商品 ネット上で個人が発言の場を得た。ちなみに, ラインナップの強化を実施するとともに,CGM解 2006年の国内ブログ人口は621万人で,2007年に 析サービス,SNS製品提供にも力を入れている。 (10) この結果, は782万人に拡大すると見込まれている。 さらに,上述のSecond Lifeへも参画し,3Dイン これまでの企業から消費者への一方向の情報発信が ターネットの有用性・可能性について検討を行って 双方向に変わり,消費者同士,あるいは消費者と企 いる。セキュリティに関しては,より多様なお客様 業が,ネット上で新サービスを共同で創造する動き 要望に応えるため,従来の取組みに加え,例えば が起こっている。また,企業がブログの内容を分析 「監視映像の長期保存サービス」をはじめとする新 することで,これまでとらえきれなかった消費者 たな技術を用いたサービスの提供に努めている。 ニーズをとらえようという試みも始まっており,こ む れに呼応してCGM解析サービスの提供も行われて す び 本稿では,企業の経営/ITへの課題と,企業が求 いる。 さらに,3Dインターネットも注目を集めている。 めるITへの期待についてとりまとめ,ITサービス 米国Linden Lab社が運営するSecond Lifeというイ の今後の動向について述べ,また本分野にかかわる ンターネット上の仮想空間には,2007年10月現在, 富士通の取組みの一部を紹介した。ITサービスは 1000万人を超えるユーザが登録をしている。参加 今後ますます拡大・発展を続ける分野であり,富士 企業も日々増え続け,テストマーケティングや,宣 通も一層の強化拡充を通じてお客様に貢献していく 伝広報活動,e-コマース連携などの活用が見込まれ 所存である。具体的な取組み内容については,本誌 ている。本サービスの大きな特徴の一つは,ユーザ 掲載の論文をご参照いただきたい。 同士がネット上でリアルタイムにコミュニケーショ ンを実現できる点である。また,Second Life内で 流通している仮想通貨の米ドルへの換金も可能で, ネット上の仮想世界と現実世界との境界が緩やかに なっている。未知の可能性を持った世界であり,今 ゆえん 後の動向が注目される所以である。 FUJITSU.59, 1, (01,2008) 参 考 文 献 (1) IDC Japan:国内産業分野別IT市場 2006年下半 期分析と2007年~2011年の予測.May 2007. (2) 内閣府:平成19年度年次経済財政報告.2007年8月 7日. 7 国内ITサービス市場動向と富士通の取組み http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je07/07p00000.html (3) IDC Japan:国内ITアウトソーシング市場2006年 の分析と2007年~2011年の予測:2007年上半期アッ プデート.September 2007. (4) ガートナー:2007年上期版 (7) IDC Japan:2007年国内SaaS市場の需要動向分 析:ユーザニーズ把握調査.August 2007. (8) IDC Japan:国内セキュリティ市場2007年~2011 日本のアウトソーシ ング,ビジネス・プロセス・アウトソーシング市場規 模予測.July 2007. (5) セールスフォース・ドッドコム公表記事. http://www.salesforce.com/jp/company/news-press/ press-releases/2007/04/070419_1.jsp (6) IDC Japan:国内ITアウトソーシング市場2005年 8 の推定と2006年~2010年の予測.March 2006. 年の予測:ソフトウェア,ハードウェア,サービス. March 2007. (9) IDC Japan:2006年セキュリティサービス市場動 向:セキュリティ運用管理サービスのアウトソーシン グ.December 2006. (10)IT・ネット業界地図2006年版.東洋経済新報社, p.23,2006. FUJITSU.59, 1, (01,2008)