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原石山における電気探査比抵抗法の開発と評価
原石山における電気探査比抵抗法の開発と評価 ○松 尾 達 也 1 ・ 野 中 樹 夫2 ・ 山 下 雅 樹 3 ・ 石 橋 一 恭 4 概要: 大山ダムは平成 22 年 12 月末のコンクリート打設完了に向け、原石山の骨材採取を行っている。骨 材は堅硬で多亀裂性岩盤の安山岩を使用しており、原石山は安山岩と自破砕安山岩の互層構造となっ ている。浅部の安山岩の掘削開始後、当初想定よりも材質が良好でないことが明らかとなったため、 調査ボーリングおよびボーリング孔を利用した電気探査比抵抗トモグラフィーを実施し、地質状況、 材料の賦存量、および材質について調査を実施した。 電気探査比抵抗トモグラフィーはボーリング孔内の電極から電流を流すため、孔内に通電性のある 媒体が必要である。孔内水が無い場合はセメンテーションによる止水や連続注水などで対応すること が多いが、それでも溜まらない場合は圧着式の電極を使用することがある。大山ダムの原石山では地 下水が確認されず、先述の方法では時間と費用を要することから、新たな技術的な試みとしてボーリ ング孔内に気泡ボーリングの泡を通電媒体とした比抵抗トモグラフィーを実施した(特許出願中) 。 本論では、ボーリング孔内に泡を使用した比抵抗トモグラフィーの開発および調査結果と現状の掘 削状況を比較し、比抵抗トモグラフィー探査結果について評価を行うものである。 キーワード: 電気探査比抵抗トモグラフィー、泡、多亀裂性岩盤、無水 1. はじめに 大山ダムでは、平成 22 年 12 月末のコンクリー 2. 原石山の地質 図1 に当初設計時の原石山地質平面図、図2に ト打設完了に向け、原石山の骨材採取を行っている。 原石山地質断面図(主測線) 、図3 に原石山材料区 原石採取は、安山岩を対象とし、切羽の地質状況に 分断面図(主測線)を示す。 応じて骨材原石、廃棄岩の選別採取がしやすいベン チカット工法により施工を行っている。 原石山では平成 19 年 12 月に骨材採取を開始し、 原石山の基盤岩は、ダムサイトと同様に主として 新第三紀鮮新世(410∼300 万年前)に噴出した釈 迦岳火山岩類の安山岩並びに自破砕安山岩から構 翌年 4 月に骨材採取予定の安山岩 5 層(以下、An5 成される。地質構造は、大規模溶岩流の中央連続部 層)の上面付近に到達したものの、骨材として使用 である多亀裂性岩盤の安山岩とその周辺の自破砕 できる良好な岩盤が採取できない状況であった。 安山岩との互層構造となっており、原石山からダム さらに、An5 層の上面付近は様々な材料(不良材 サイト方向である東∼北東に傾斜している。 を含む)が一つの切羽面に対して複雑に出現する状 既往調査ボーリングにより層厚 10m 以上の安山 況であり、複雑な地質構造となっていることが想定 岩層を 5 層確認しており、この 5 層の安山岩層を下 された。このような複雑な地質構造をボーリング調 位から An1 層、An2 層・・・An5 層と呼んでいる。 査だけ把握するためには非常に密な調査を必要と 骨材として使用する最上位の An5 層は調査時点 する。そのため、ボーリング調査と比抵抗トモグラ において、概ね骨材として使用可能な B1 材および フィー探査を併用し、調査費用や期間を縮減するた B2 材(材料区分については次章参照)が分布する めの効率的な調査を実施することとした。 と想定していた。 1.大山ダム建設所 調査設計課 2.大山ダム建設所 調査設計課 主幹 3.大山ダム建設所 工事課 主幹 4.大山ダム建設所 調査設計課 課長 N 地 質 凡 例 Au dt 完 新 世 dt Au Au 更 新 世 Yb rd 現河床堆積物 tr 段丘堆積物 Aso 阿蘇火砕流堆積物 odt 旧期崖錐堆積物 Yt 耶馬渓火砕流堆積物 dt 日田層 Tb 凝灰角礫岩 Au 自破砕安山岩 Au1 自破砕安山岩タイプ1 An 安山岩 dt 40 60 地質境界 80m 図1 原石山地質平面図(当初設計時) 地 質 凡 例 当初掘削計画線 H20.6時点掘削線 完 新 世 Au 崖錐堆積物 現河床堆積物 tr 更 新 世 Au Yb Yb Au dt rd Au 鮮 新 世 段丘堆積物 ASo 阿蘇火砕流堆積物 odt 旧期崖錐堆積物 Yt 耶馬渓火砕流堆積物 Hi 日田層 Tb 凝灰角礫岩 Au 自破砕安山岩 An 釈 迦 岳 自破砕安山岩タイプ1 火 山 岩 安山岩 類 Lt 火山礫凝灰岩 Au1 地質境界 図2 原石山地質断面図 G5 測線(当初設計時) 材料区分凡例 当初掘削計画線 H20.6時点掘削線 D D D B2 B2 D [D] D 級 [CⅡ] CⅡ級 [CⅠb] CⅠb級 [CⅠa] CⅠa級 [B4] B4級 [B3] B3級 [B2] B2級 [B1] B1級 D D B2 図3 原石山材料区分断面図 G5 測線(当初設計時) 材料区分境界 釈 迦岳火 山岩 類 鮮 新 世 Au 20 崖錐堆積物 Yb Hi Au 0 dt 表1 原石山材料区分表(比重・吸水率は平均値) 材料区分 特 徴 表乾比重 B1 安山岩で硬軟区分B以上、割れ目間隔20cm以上。 2.64 B2 安山岩で硬軟区分B以上、割れ目間隔10∼20cm程度。 安山岩で硬軟区分B程度、割れ目間隔5∼20cm程度。岩片自体は堅硬であるが割れ目 B2' 沿いに土砂又は薄い粘土分を狭在する。少量の不良材を含む 安山岩で割れ目に粘土を厚く含む箇所。岩片自体は堅硬であるが割れ目沿いは劣化し B3 2.46 ている。ゾーンとしてほとんど分布しない。 安山岩が赤色化した部分。密度・吸水率は企画のボ-ダ-付近である。品質のばらつきは CⅠa 2.46 大きい。赤色化が進んだものほど低品質。 安山岩の多孔質・空隙質部。密度・吸水率は規格のボ-ダ-付近である。品質のばらつき CⅠb 2.46 は大きい。 CⅡ 自破砕安山岩タイプ1で硬軟区分B∼D。中硬質部と軟質部が混在している。 D 骨材原石として利用できない。 - 3. 材料区分 大山ダムの原石山は安山岩が骨材採取対象であり、安 山岩について骨材原石としての材料区分を行っている。 吸水率 1.61 - 原石適否 原石○ 原石○ 原石○ ※1 1.36 △ 3.20 原石○ 2.79 × - × × ※2 区分 B C D 硬軟 概ね堅硬。ハンマーの強打で割れる。 中硬質。ハンマーの軽打で割れる。 軟質。ハンマーのピックで崩れる。 ※1 当初は、粘土分の除去が困難であ ることから全量廃棄としていたが、骨材採 取率向上を図る上で自走式篩い機やスケ ルトンバケットを使用し粘土分を除去する ことで一部を原石として使用している。 ※2 CⅠa材は単独材としては骨材品質を 満足しないため、CⅠa材とB材を混合して 使用する予定。 5.1 追加調査について An5 層の上端付近の掘削後、様々な材料(不良材を含 む) が一つの切羽面に対して複雑に出現する状況であり、 原石山の材料区分を表1 に示す。 複雑な地質構造となっていることが想定された。このこ 材料区分の要点は、骨材原石として良好な B 材、若干 とから追加の調査ボーリングを実施することをまず想定 品質が劣り B 材との混合により骨材原石として利用可能 したが、軟質部が高角度に分布している。これらの高角 な CⅠa 材、骨材原石として利用不可能な CⅠb 材および 度の地質的構造を把握するためには、斜めボーリングも D 材に大別される。 しくは電気探査等により、面的に骨材の分布状況を把握 B 材の安山岩は、割れ目のある程度発達した B2 材を主 することが考えられ、本調査においては、調査ボーリン 体とし、その中で高角度割れ目が発達し、割れ目沿いに グ 10 孔(計 598m)、およびボーリング孔間を利用した 軟質かつ流入粘土が狭在する箇所を B2’材とした。これら 比抵抗トモグラフィー10 測線(総延長 1,593m)の追加調 は風化の影響により、局所的に劣化したもので、変質に 査を実施した。 伴い不規則な割れ目沿いに黄褐色粘土が認められるもの を B3 材として区別した。 図4 に調査ボーリングおよび比抵抗トモグラフィー 探査測線位置図を示す。 C 材は CⅠa、CⅠb 材および CⅡ材に区分され、CⅠa 材 (B 材との混合)以外は室内試験の結果より骨材として 使用できない。 D 材は表土や崖錐堆積物、および自破砕安山岩で骨材 として使用できない。 なお、これらの材料区分は掘削の進捗に伴い、切羽で の観察に基づき、再度設定した材料区分である。 4. 掘削後の An5 層の状況 平成 20 年 5 月に An5 層より上部の廃棄岩の掘削が進 み、図2 中に示すように、An5 層の原石採取予定箇所に 達した。しかし、An5 層が出現すると予想した標高に達 写真1 An5 層上端付近の掘削状況 しても、骨材原石となるような堅岩(B 材の安山岩)が連 続して出現しない状況であった(写真1) 。An5 層の上部 付近は調査ボーリングを実施していたものの、横坑調査 は実施していない。 5.2 比抵抗トモグラフィー 比抵抗トモグラフィーとは、物理探査手法の一つで地 盤に直流電流を流し、電流の流れにくい部分の分布状況 掘削面状況の観察の結果、堅岩が分布すると予想した (電位差)から地盤性状を把握する比抵抗探査の一種で 箇所について、写真1 に示すように、風化の影響等に伴 ある。広義では、コンピューターを使った逆解析によっ い高角度に軟質部が認められ、堅硬な岩塊と軟質部が高 て、測定された抵抗値から地盤の比抵抗分布を求める手 角度に交互に出現するような状況が観察された。 法として知られ、 狭義ではボーリング孔や横坑を使って、 対象領域を取り囲んで探査する手法とされている。 5. 追加調査 凡 例 ◎ 追加調査ボーリング 既往調査ボーリング 比抵抗トモグラフィー探査測線 GD-G5 G-5 GD+20-G5 ◎ ◎ ⑥測線 GF+20-G5 GE+20-G5 ⑤測線 ◎ ④測線 ◎ GG+20-G5 ◎ ③測線 GH-G5 GI-G5 ◎ ②測線 ◎ ①測線 ⑨ 測 線 ⑩ 測 線 ◎ G-6 GG-G6 ⑧測線 ◎ GH-G6 ⑦測線 ◎ GI-G6 図4 追加調査位置平面図 比抵抗トモグラフィーでは、表2 に示すように風化や 変質の要因となる間隙状態や体積含水率および粘土鉱物 含有量などを把握することが可能である。 ができれば、より少ない費用・期間で複雑な地質構造を 把握することができると考えた。 2)は、既往検討により吸水率が B2 材で 0.65∼2.80、C Ⅰa 材で 2.61∼8.45 であり、差が認められるとともに廃 表2 地盤の比抵抗に影響を及ぼす要因 地盤の比抵抗の高低 低い 高い 飽和状態 大きい 小さい 間隙率 乾燥状態 小さい 大きい 要因 地盤の関連現象 風化、破砕帯 棄岩の自破砕安山岩では 5.04∼14.93、同じく廃棄岩の 凝灰角礫岩では 12.77∼17.36 と大きな違いが認められ た。当然良質な骨材では吸水率は小さく、不良材では吸 水率は大きくなる。各材料区分で吸水率に差があるとい 飽和度 (間隙率一定) 大きい 小さい 地下水位 体積含水率 (間隙率×飽和度) 大きい 小さい 風化、破砕帯 粘土鉱物含有量 (導電性鉱物) 多い 少ない 風化、変質 地下水の比抵抗 温度(地温) 低い 高い 高い 低い 塩水など 地熱、温水 うことは含水比にも違いがあるということなので電気的 な比抵抗値にも違いを生じるはずである。よって、特に 吸水率の差が大きい B2 材と廃棄岩の CⅡ材、D 材、およ び自破砕安山岩は高い確率で分離することが可能と考え られ、地質構造や材料分布の把握に有効と考えた。 本調査では調査ボーリングとトモグラフィーを併用 5.3 比抵抗トモグラフィー調査手法と新たな取り組み した調査を実施したがその理由は以下の 2 点挙げられ 図5 に比抵抗トモグラフィー測定の模式図を示す。 る。 比抵抗トモグラフィーの測定は、まず調査箇所から約 1) 地質構造が単調な層構造でなく、複雑なものである ことが想定されたため 2) 地質や風化状態などにより吸水率に差が認められる ため 1)は、地質構造が単調な層構造である場合には、ある 1km 離れた 2 点に遠電極を設置し、遠電極と測定器を電 線で接続した。次に孔内用電極ケーブルと地表電極を設 置して、測定器と接続し、電極間隔は 2m ピッチとした。 孔内に設置した電極から電気を地盤内に流すには、孔内 に通電性のある媒体を充填させる必要がある。 程度の間隔を持ったボーリング調査だけでも十分な精度 通常地下水や孔内水が無い場合はセメンテーション が期待できる。しかし、掘削後の切羽の岩盤状況は当初 による止水や連続注水などで対応することが多いが、そ 想定と大きな相違が認められるとともに高角度の構造が れでも溜まらない場合は圧着式の電極を使用することが 認められ、複雑な地質構造となっていることが想定され ある。大山ダムの原石山では地下水が確認されず、前述 た。 これをボーリング調査のみで把握しようとした場合、 の方法では時間と費用を要することから、新たな技術的 非常に密な調査を必要とし、調査ボーリングとトモグラ な試みとしてボーリング孔内に気泡ボーリングの泡(テ フィーを組合せることによって層の流れを把握すること ルナイト社のテルフォーマー)を通電媒体とした比抵抗 トモグラフィーを実施した(特許出願中) 。 図5 比抵抗トモグラフィー測定模式図 図6 に孔内の測定方法概念図を示す。 原石山ではダイナマイトによる発破を週に 2 回のペー 写真2 使用した泡と開口した塩ビ管の写真 スで実施しており、 その衝撃で孔壁が崩壊してしまうと、 測定用の電極を挿入することが不可能となる。 そのため、 追跡できる。An5 層中の B2 材と B3 材との境界はアンジ VP50・開口率 10%の塩ビ管を挿入し孔壁保護を行った。 ュレーションに富み複雑である。An5 層中には高角度の 次に、孔口からホースを挿入して孔底まで下ろし、孔 自破砕安山岩 D 材、An4 層中にも B3 材相当の比抵抗を示 底から泡を噴出させて、孔口まで戻ってくるのを待ち、 電極コードを挿入し試験を開始したが、電極が泡で充填 す高角度の構造が認められた。 以下に G5 測線の調査結果から特徴を述べる。 された孔内に入っていく際に、泡を押し広げてしまい、 1)GE+20G5 孔と GF+20G5 孔間(標高 495∼510m)に分 部分的にしか通電することができなかった。そこで、電 布する低比抵抗領域:A 領域(写真3) 極が着いたコードの先端に泡を送るホースを接続して, この低比抵抗領域の上位に位置する掘削面では吸水率 電極コードと泡ホースを同時に挿入し、泡を噴出させな の高い(すなわち低比抵抗)自破砕安山岩が分布してい がら孔底まで下ろすとうまく通電することができた。 る。このことからこの低比抵抗領域は地表から自破砕安 山岩 D 材まで高角度に連続しているものと想定される。 また、この自破砕安山岩の幅は掘削面や比抵抗断面図の VP-50 開口率10%の塩ビ管 VP-50 開口率10%の塩ビ管 情報から 15∼20m と想定される。なお、GE20G5 孔と GF+20G5 孔との間の表層付近で水平に広がる高比抵抗 領域は、地表の砕石盛土の影響を受け、高比抵抗となっ ていると考えられる。砕石盛土は、間隙が大きく、概ね 乾燥しているため、比抵抗は高くなると考えられる。 図6 孔内の測定方法概念図 写真2 に今回使用した泡と開口した塩ビ管の写真を 示す。測定中のポイントとしては、測定中も常に泡を噴 射し続けること。また、長時間放置しても消えない細粒 な泡を作成することである。 5.4 調査ボーリングと比抵抗トモグラフィー測定結果 図7 に G5 測線における比抵抗トモグラフィー断面図 を示す。G5 測線の測定範囲は調査ボーリング GDG5 孔 ∼GIG5 孔間の標高 530∼430m の範囲である。 An4 層は An5 層よりも側方連続性が良く高比抵抗部を 写真3 A 領域に分布する自破砕安山岩 自破砕安山岩の両隣には安山岩(B3 材)が分布する GD GE GF GG GH GI 520m An5層 480m ボーリング凡例 D(Au) An4層 440m 図7 G5 測線における比抵抗トモグラフィー断面図 2)GG+20G5 孔の孔口付近の低比抵抗領域:B領域 なかった。また、B3 材(写真5)は An5 層上部に広く分 GG+20G5 孔周辺の地表部は降雨後の水はけが悪く、 布し、B2 材(写真6)は An5 層の下部に主として分布す GG+20G5 孔のボーリング結果においても自破砕安山岩 ることが想定できた。B1 材は、高比抵抗値を示す部分が が地表から 7.5m 程度まで連続しており(写真4)、 比抵抗 少ないことから、 その分布は少ないと想定される。 なお、 トモグラフィー結果とも整合的である。 An5 層の比抵抗値は An4 層に比べ全般的に低い値を示す が、これは An4 層に比べボーリングコアの観察結果から 岩盤内の割れ目が多く、割れ目内に粘土を狭在すること により含水比が An4 層より多くなっているためと想定さ れる。 写真5 B3 材(GF+20G5 孔 10∼15m) 写真4 GG+20G5 孔の孔口付近の自破砕安山岩 割れ目には褐色化した粘土が狭在するが、岩片は堅硬 3)An5 層の B2 材と B3 材について An5 層の B2 材と B3 材との境界は比抵抗分布と調査ボ ーリング結果から区分した。比較的低比抵抗の部分が不 規則に認められ、B2 材と B3 材の境界は起伏を伴って複 雑に分布すると想定される。 特に GF∼GI 間では起伏の激 しい箇所が認められ、調査ボーリングのみでは想定でき 写真6 B2 材(GF+20G5 孔 15∼20m) 4)An4 層と An5 層間の自破砕安山岩 比抵抗分布と調査ボーリング結果により、 An4 層と An5 層間の自破砕安山岩 D 材(写真7)の層厚は 10∼15m 程 度で側方への連続性は良いと想定される。 比抵抗値としては 200∼600Ω・m 程度の低い比抵抗値 が得られた。 検討結果を以下に示す。 1)An4 層には B1 材と B2 材が主体的に分布する。 2)An5 層に比べ An4 層の方が高比抵抗箇所の連続性が 良く、良質な骨材が連続的に採取可能である。 3)An4 層と An5 層間の自破砕安山岩 D 材の層厚は 10∼ 15m 程度と推定される。 5)An4 層の B1 および B2 材 4)GE+20G5 孔∼GF+20G5 孔間の標高 495∼510m 付近 An4 層には CⅠb 及び B3 材が局所的に認められるもの の、 ボーリングコアの性状及び比抵抗分布から B1 および に分布する低比抵抗領域は地表から自破砕安山岩 D 材まで高角度で連続する。 B2 材が主として分布すると想定される。また、概ね An5 5)An5 層の B2 材と B3 材の境界は起伏を伴い複雑な構 層よりも An4 層の方が高比抵抗値を示す部分の割合が高 造となっている。また、B3 材は An5 層上部、B2 材 く、良質な材料の占める割合が多いと想定される(写真 は An5 層の下部を中心に分布する。 8)。比抵抗値としては 500∼1000Ω・m 以上の高い比抵 抗値が得られた。 6)原石山の地質構造は全体的には層構造を示すが、表 層に近い An5 層では自破砕安山岩が高角度に複雑に 入り込んだ複雑な地質構造を示す。 写真7 自破砕安山岩 D 材(GF+20G5 孔 30∼35m) 写真8 An4 層内の B1 材(GHG5 孔 60∼63.5m) 5.5 三次元的な材料区分の検討 調査ボーリングと比抵抗トモグラフィーの調査結果か ら、G5(前節参照)、G6、GH および GI の 4 測線にお いて、比抵抗トモグラフィー断面図を作成し、それらを 基にパネルダイアグラム(図8)を作成し、調査地点の 図8 比抵抗トモグラフィーパネルダイヤグラム 三次元的な材料区分の検討を行った。 図9 G5 測線における材料区分断面図(平成 22 年 6 月時点) 6. 追加調査結果と調査実施後の掘削状況 り込んだ複雑な地質構造を示すことが確認できた。 3)比抵抗トモグラフィーにより、An4 層の B1 および B2 図9 に現時点(平成 22 年 6 月)での G5 測線の材料 区分断面図を示す。 現時点の掘削状況と追加調査ボーリングおよび比抵抗 トモグラフィー測定から想定した材料区分を比較する 分布範囲では 500∼1000Ω・m 以上の高比抵抗、An5 層 と An4 層の間の自破砕安山岩 D 材では 200∼600Ω・m 程度の低比抵抗の比抵抗値が得られた。 4)調査ボーリングと比抵抗トモグラフィーを併用した と、以下の通りである。 解析結果と実際の切羽の材料区分は概ね一致し、原石 1)An4 層と An5 層間の自破砕安山岩 D 材の層厚は概ね 山全体の材料分布を把握することができ、本調査は有 想定通りであった。 効であった。 2)GE+20G5 孔∼GF+20G5 孔間の標高 495∼510m 付近 に分布する低比抵抗領域は地表から自破砕安山岩 D 8. おわりに 材まで高角度で連続せず、想定と異なった。 3)An5 層の上端部の B2 材と B3 材の境界は起伏に富み、 本論での検討結果を基に、An5 層のみでは骨材必要量 複雑な構造となっており、B3 材を主体とし、想定通 を満足しないことが想定されたため、その下位の An4 層 りであった。 まで掘削する採取計画とした。 本検討にあたって新たな技術的な試みとして、多亀裂 GE+20G5 孔∼GF+20G5 孔間の標高 495∼510m 付近に 性岩盤の安山岩で地下水の認められない岩盤領域におい 分布する低比抵抗領域が地表から自破砕安山岩 D 材まで て泡を用いた比抵抗探査は有効であることが確かめられ 高角度で連続せず、想定と異なった点については、An5 た。今後、このような条件下で地質構造を調査する場合 層の上端付近には、自破砕安山岩が深く落ち込んでいる の有効的な調査手法の一環となれば幸いである。なお、 状況が現地で実際に確認され(写真3)、解析上その低 泡を用いた比抵抗トモグラフィー手法については、(独) 比抵抗の箇所を下方に外挿し、実際よりも深く低比抵抗 水資源機構、(株)熊谷組、ダイヤコンサルタント(株) 領域を想定してしまったと考えられる。ただし、さらに および(株)ジオフィールの 4 社で共同特許申請中であ その下部の An4 層内にも比較的低比抗の領域が高角度で る。 連続するため、今後その範囲での岩盤性状を詳細に把握 し、検証する必要がある。 また、An5 層の上端付近の起伏の富んだ状況や An5 層 と An4 層間の自破砕安山岩 D 材については概ね想定通り の材料区分の骨材が採取できており、本論での調査検討 は有効であったと考えられる。 7. まとめ 本論では、地下水の認められない箇所で実施したボー リング孔内に泡を使用した比抵抗トモグラフィーの開発 および調査結果と現状の掘削状況を比較し、比抵抗トモ グラフィー探査結果について評価を行った。 以下に本論のまとめを示す。 1)地下水の認められない多亀裂性岩盤である安山岩分 布領域において、ボーリング孔内に泡(テルナイト社 テルフォーマー)を使用することで孔間比抵抗トモグ ラフィーが実施可能であった。 2)原石山の地質構造は全体的には層構造を示すが、表 層に近い An5 層では自破砕安山岩が高角度に複雑に入