...

ダウンロード - スーパー連携大学院コンソーシアム

by user

on
Category: Documents
3

views

Report

Comments

Transcript

ダウンロード - スーパー連携大学院コンソーシアム
日本版 Industrial PhD(仮称)制度の創設について
~産学官連携によるイノベーティブ人材育成と地方創生~
<中間報告>
平成 27 年 7 月 31 日
日本版 Industrial PhD 制度検討委員会
〇文部科学省
大学間連携共同教育推進事業「産学官協働ネットワークによる
イノベーション博士養成と地域再生」
〇一般社団法人
スーパー連携大学院コンソーシアム
合同委員会
目
次
1.はじめに
2.日本版 Industrial PhD(仮称)制度の概要
(1) 本制度の目的
(2) 本制度を構成する 2 つのサブ制度
(3) 本制度創設により期待される効果
3.Industrial PhD(仮称)認定制度の創設
(1) 認定制度の必要性と目的
(2) 想定される称号授与の形態(例)
(3) 制度創設の課題と提言
4.産学官連携型 Industrial PhD 学位研究の財政支援制度の創設
(1) 財政支援制度の必要性と目的
(2) 制度創設の課題と提言
5.本制度の想定される利用類型
6.おわりに
〇参考資料
ア.日本版 Industrial PhD(仮称)制度の概要
イ.諸外国における類似制度について
ウ.スーパー連携大学院の概要
エ.文部科学省
大学間連携共同教育推進事業
「産学官協働ネットワークによるイノベーション博士養成と地域再生」
1
1.はじめに
〇我が国における大学院教育、とりわけ博士人材育成の改革の必要性が指摘されて久しい。
〇例えば、最近では平成 23 年1月に中央教育審議会から「グローバル化社会の大学院教育~
世界の多様な分野で大学院修了者が活躍するために~」が答申されている。
その中で、博士課程については次のような大きな課題、問題点があると指摘されている。
①
博士の学位が如何なる能力を保証するものかの共通認識が未確立
②
博士後期課程の教育が個々の担当教員それぞれの研究室等で行う研究活動を通
じたものにとどまること
③
大学院が養成する人材像と産業界等の評価や期待に関する認識の共有が十分でな
く、修了者の多様なキャリアパスが十分に開かれていないこと
④
学生が博士号取得までのプロセスや経済的負担、キャリアパスに関する十分な見
通しを描くことができないこと
また、世界の研究・ビジネスの場では、博士号を保有していることが高度な専門性に裏付
けられた資質能力の証しとして必須要件になりつつあり、専門分化した膨大な知識の全体
を俯瞰しながら、イノベーションにより社会に新たな価値を創造し、人類社会が直面する
課題を解決に導くために,国際社会でリーダーシップを発揮する高度な人材が不可欠だと
している。しかし、世界各国の状況との比較においても、我が国の人口 100 万人当たりの
博士号取得者は、米英独のみならず韓国よりも少なく、さらに企業研究者に占める博士号
取得者の割合も先進国中最低の水準にあることを示している。
〇このような状況は、さらに以前から指摘されており、産業界でも危機意識を持ち、例えば
経団連から平成 19 年には「イノベーション創出を担う理工系博士の育成と活用を目指して」
という意見書が公表されている。にもかかわらず、大学側と企業側及び国の政策のコミュ
ニケーションが十分とは言えず、前述のように相変わらず事態の進展は見られていない。
〇全国的な産学官の連携組織として平成 16 年に設立された(一般社団法人)コラボ産学官は、
産学官連携を研究開発活動の連携に閉じ込めず、人材育成の面での連携活動とのシナジー
効果を活かすことが、産学官連携の質を高め、一層の効果を期待できるとの理念の下に活
動している。その流れの中で、コラボ産学官では、我が国の高等教育の最大のウイークポ
イントである博士人材における産学官連携の在り方を産学官の有志が集って議論した。そ
の結果を平成 19 年9月に、「スーパー連携大学院(仮称)の設置の提言~産学官のスーパ
ー連携によるベンチャー精神旺盛な博士の養成~」として公表した。
2
〇上記提言のスーパー連携大学院(参考資料ウ参照)の骨子の概要は以下の通りである。
① 産学官がイコールパートナーとして連携・参画し、教育プログラムの構築、授業の
担当から受講者の受け入れ審査、学位の審査等に至るまでを協働して運営する。
② 当該博士に求める 7 つの志を明示し、併せて博士号取得後はアカデミア以外の社会
の多様な分野で活躍する意思を確認して、養成する博士像を明確にした。
③ 博士論文研究は、産学官の共同研究に参画して実施することを必須とする。
④ 本大学院は専門分野(専攻)を限定せず、既存の専門分野(専攻)の教育プログラ
ムの上にスーパー連携大学院プログラムを付加する形の修士・博士一貫の教育プロ
グラムである。
⑤ 本大学院は、北海道から九州までに広がるそれぞれの地域で連携する企業と大学が
さらに全国的に連携する広域産学官連携によって新たな地方創生のモデルとなるこ
とを目指している。
〇上記提言に賛同する全国の大学、産業界等の協力を得て、平成 20 年度に文部科学省の「戦
略的大学連携支援事業」に「スーパー連携大学院構想:産学官の広域連携を通じたイノベ
ーション博士人材の育成」というテーマで応募し採択された。この事業で、スーパー連携
大学院の具体的な教育プログラム等の制度設計を実施し、平成 22 年 10 月に、これを支え
る産学官の連携組織「スーパー連携大学院コンソーシアム」を設立した。
〇以上の準備を経て、平成 23 年4月からスーパー連携大学院プログラムを開講し、5 人の受
講者を博士前期課程1年生として受け入れてスタートした。
〇平成 24 年度には、文部科学省の「大学間連携共同教育推進事業」にスーパー連携大学院コ
ンソーシアムに参加する大学の共同で「産学官協働ネットワークによるイノベーション博
士養成と地域再生」
(参考資料エ参照)というテーマで応募し採択され、地域産業の活性化
と地域に貢献するイノベーティブ人材の育成をセットで達成できる仕組みの構築を進めて
いる。
○上記のような特徴を有するスーパー連携大学院の仕組みによってどのような効果が期待さ
れるか、その主な例を下記に示す。
①
アカデミア以外の多様な社会で活躍できるという明確な人材像を示し、それを実
現する教育の質を保証することによって、産業界等での博士取得者に対する期待
が高まり、博士の活躍の場が広がる。
②
博士学生は、個々の指導教員の研究室内に限定された研究活動ではなく、実社会
で必要とされる課題の解決を目指して、企業の実務者と協働しての研究活動を経
験するため、企業等の実社会が求める実践力に優れたリーダー人材としての資質
を身につけることができる。
3
③
地域企業等と大学の共同研究を促進し、地域産業のイノベーションの創出を牽引
するとともに、共同研究に従事した博士学生が地域のリーダーとして活躍する可
能性が高まり、地方創生に貢献できる。
④
博士学生が、企業等の共同研究に従事し研究成果を産み出すため、当該企業にと
って必要不可欠な人材となる可能性が高く、キャリアパスを見通しやすいため、
いわゆる就職問題はほぼ払拭される。また、研究成果等を基にベンチャーを起業
するなど博士の新しいキャリア展開が期待される。
〇以上の経緯で現にスーパー連携大学院で試行しているイノベーティブ博士人材育成の経験
に基づき、日本における新たな博士像を確立し、社会に広く認知させ、その育成を推進す
るために必須となる国家的制度として、
日本版 Industrial PhD(仮称)制度
の創設を提言する。
2.日本版 Industrial PhD(仮称)制度の概要(参考資料ア参照)
(1) 本制度の目的
〇アカデミア以外の広く多様な場で活躍する博士レベルの高度リーダー人材の育成を促
進する必要があり、日本版 Industrial PhD(仮称)として育成することを目指す。
〇Industrial PhD(仮称)は社会の様々な場面でイノベーションを牽引するリーダーとし
て今後の我が国の発展に不可欠な人材であることから、Industrial PhD(仮称)の育成
プログラムの魅力を高め、このプログラムに優秀な若者の参画を促す必要があり、そ
のインセンティブとなる制度を国として用意する。
〇本制度は、産学官の連携をプラットフォームとし、
① Industrial PhD(仮称)の質保証と公的権威を付与する認定制度
② Industrial PhD(仮称)プログラムに必須の産学共同研究を支援する財政支援制度
を設けることによって、Industrial PhD(仮称)の育成基盤を確立する。
(2)本制度を構成する 2 つのサブ制度
日本版 Industrial PhD(仮称)制度は、前述したように次の 2 つのサブ制度から構成さ
れる。この 2 つの制度は、独立な制度としても機能するが、これらを 1 つのパッケージ
とすることよって日本の博士育成の環境に画期的な変革をもたらし、本制度が育成を目
指す産業指向の博士のみならず、従来からのアカデミア指向の博士育成にも良き刺激を
与え、我が国の高等教育の活性化に繋がることが期待される。
4
1)Industrial PhD(仮称)の認定制度
・Industrial PhD(仮称)プログラムを受講して所定の要件を満たし、厳しい
審査に合格したことを公的に保証するための称号を授与できる制度
2)産学官連携型 Industrial PhD 学位研究の財政支援制度
・産学共同研究プロジェクトに基づく学位研究を促進するため、プロジェクト
実施に必要な費用の一部を公的資金で支援する制度
(3) 本制度創設により期待される効果
〇Industrial PhD(仮称)の養成が加速され、高度リーダー人材、イノベーティブ人材を
安定的に輩出できる。
〇従来アカデミア界に偏っていた博士人材が企業や行政機関等社会の多様な分野で活躍
することとなり、社会全体のイノベーションマインドが高まり活性化を促進する。
〇地方創生の中核となる人材育成と産業活性化のシーズ発掘を同時に促進する。
〇国の根幹を支えるのは人材であるとする国の政策の象徴となり、社会全体として人材
育成への関心が高まり人への投資を促進し、社会・経済の発展を促す。
3.Industrial PhD(仮称)認定制度の創設
(1) 認定制度の必要性と目的
〇現在、スーパー連携大学院が試行しているイノベーティブ博士人材育成制度は、スー
パー連携大学院に参加する大学と企業が自主的に運営し、既存の各大学院の学位カリ
キュラムの上にスーパー連携大学院のカリキュラムを付加した教育プログラムとなっ
ている。スーパー連携大学院のプログラムを修了した者は、その前提として既存の大
学院の課程を修了しているので、それぞれの大学から既存の博士の学位を授与される。
しかし、併せてスーパー連携大学院の課程も修了しているにもかかわらず、それを証
する公的な称号などを授与することができず、社会的な認知度が高まらない。
〇従来の我が国のアカデミア指向に偏っていた博士育成を、実社会で活躍してイノベー
ションを先導する博士の育成にも力を入れるよう軌道修正するためには、日本版
Industrial PhD(仮称)制度を普及・定着させる必要がある。
〇日本版 Industrial PhD(仮称)制度の魅力と認知度を高め、広く社会の支援を得て、
Industrial PhD(仮称)を取得しようとする優秀な人材を集めるためには、国が保証す
る認定制度の創設が必須である。
〇そこで、新たな博士の認定制度を導入することで、産業界では新しいタイプの博士人
材への期待と雇用が拡大し、同時に新たなタイプの博士を目指す学生が増加する。
5
(2) 想定される称号授与の形態(例)
(A)現行の学位制度のもとで新たな種類の博士の学位を新設
例)博士(産業)、博士(イノベーション)
(B)従来の博士の学位に付加してサーティフィケート等を授与
(B-1)Industrial PhD の教育プログラムを修了したことを認める称号(例えば、イノベ
ーション博士)を新設し、既存の博士の学位「博士(分野)」に加えて授与する。
(B-2)現行の履修証明制度を活用して Industrial PhD の教育プログラムを修了したこ
とを証明する履修証明書を既存の博士の学位「博士(分野)」に加えて授与する。
(3)認定制度創設の課題と提言
〇欧米では、以前から'professional doctorates', 'work-based doctorates', 'professional
practice doctorates', 'industrial PhD'などと呼ばれるアカデミア博士とは異なる博士育
成が進められているが(参考資料イ参照)、日本は大幅に遅れをとっており、わずかに
スーパー連携大学院で試行が始まったばかりであり、早急に検討を開始すべきである。
〇上記の称号授与の形態の(A)は検討にかなりの時間を必要と思われ、当面の検討対象
としては困難が多い。まず、上記(B)について具体化の検討を開始するのが至当と考
える。
〇Industrial PhD の教育プログラムの内容、それを国として質保証するための要件等につ
いては、我が国ではスーパー連携大学院の試みがあるのみであることから、認定制度
を設計するにあたっては、産学官の有識者からなる検討会を設けて十分な議論に基づ
く成案を得るべきと考える。
〇参考に、スーパー連携大学院における Industrial PhD 教育プログラムの必須要件を示
す。
A)産学官イコールパートナーシップによる運営と育成体制
B)産学官連携型 Industrial PhD 学位研究
C)専門分野を横断した幅広い視野を醸成するための産学官協働による総合教育
プログラム
4.産学官連携型 Industrial PhD 学位研究の財政支援制度の創設
(1)財政支援制度の必要性と目的
〇Industrial PhD(仮称)制度では、博士の学位研究は産学共同研究プロジェクトで実施
することを条件としている。これは、アカデミア以外の企業等での活躍を期待するイ
ノベーティブ博士の育成には、博士研究のテーマはもとより研究活動も産学共同で実
施する OJT 型育成システムが最も効果的であると考えるからである。
〇Industrial PhD 学位研究は企業等の将来の事業発展に必要な課題に対する挑戦である
ことから、研究成果は当該企業の発展に貢献するだけなく、その地域・産業のイノベ
6
ーションを喚起するシーズ(コア技術)となり、地方創生の核となり得る。
〇地域・産業を支える活力は、たゆまずイノベーションを先導するコア人材の存在によ
ってもたらされる。最終的には地域の活性化、国力の向上に結びつく。
〇このように、Industrial PhD 学位研究を条件とする博士育成は、単に博士の人材育成を
目指しているだけではなく、産業育成、地方創生への貢献の意義も極めて大きい。
〇一方、Industrial PhD 学位研究の実施には、産業界の積極的な参画が不可欠であるが、
企業等にかかる経済的負担も少なからず存在するため、そのリスクを軽減することが、
共同研究の促進に効果的である。
〇また、共同研究に参加する博士学生が安心して研究活動に専念・集中できるためには、
学生の生活上の経済的リスクを軽減する必要がある。
〇そこで、Industrial PhD 学位研究のための産学共同研究を推奨し、広く全国での実施を
促進するために、参加企業や学生及び大学の経済的な負担(リスク)を軽減する公的
支援制度の導入が必須である。
(2)支援制度の課題と提言
〇早くから同様な支援制度を導入している欧州等(参考資料イ参照)においては、省庁
横断的に国全体で支援を行うケースが多い。
〇欧州における典型的な支援制度の例を参考に示す。
この制度の適用を受けるためには、企業(大企業から中小企業まで)が研究テーマを
公開し、興味を持った学生が教員・企業と組んで研究計画などをまとめて申請する。
審査に合格すると、例えば以下のような支援が受けられる。
学生:企業に、3 年間正規雇用され、数十万円/月支給される。1/2 の時間を企業、
1/2 の時間を大学で学位研究に取り組む。学位取得後、当該企業に就職す
る場合が多い。
企業:学生を雇用する人件費の 1/2 の補助を国から受ける。共同研究費の半額の
補助を受ける。減税も受ける。
大学:研究費の補助を受ける。
この制度の適用を受けると、学生、企業、大学ともに、公的資金の補助を受けられる
ため、この制度を利用する産学共同研究件数は年々増加している。
〇我が国おける支援の具体的な内容については様々な方策が考え得る。例えば、学生の
雇用の代わりに、給付型の奨学金を用意する方法もあり得よう。財源あるいは支援元
は、国に限らず地方自治体が地方創生を目的にこの制度を適用することも効果的と思
われる。また、産官による基金の創設も有効かもしれない。
〇いずれにせよ、本制度は省庁横断的な検討が必要と思われ、産業界の全面的なバック
アップも欠かせないことから、制度設計にあたっては、産学官の有識者からなる検討
会を設けて十分な議論に基づく成案を得るべきと考える。
7
5.本制度の想定される利用類型
○提案する日本版 Industrial PhD(仮称)制度は、制度自体は極めて柔軟に設計可能であ
り、各大学等はそれぞれの工夫によって様々な形態での利用が可能と思われる。
考え得る若干の例を下記に示す。
【個別大学で実施】
*個々の大学、個々の大学院で、前述の二つのサブシステムの両方あるいは一方を
満たす人材育成プログラムを開発し、運用することができれば、特色ある新しい
人材の輩出が可能になる。
【特定分野・特定地域を対象に複数大学で実施】
*特定分野や特定地域に関係する複数の大学が連携し実施することにより、特徴ある
分野や地域に焦点を絞った人材の育成に貢献できる。特に、地域のリーダー人材育
成を目指せば地方創成を牽引することになろう。このためには、複数の大学が産業
界等と連携した教育プログラムを実施しやすい制度上の改善が望まれる。
【広分野・広域連携を目指した複数産学官連携で実施】
*分野や地域を特定せず、広分野や広域連携を目指し様々な産学官がコンソーシアム
などの組織を作り、我が国全体として分野、地域融合の新しいイノベーション創出
のプラットフォームとなることを目指す。
スーパー連携大学院はこのカテゴリーに属している。
6.おわりに
我が国における高等教育人材、とりわけ博士人材育成に危機感を持った有志による
議論を進めるにしたがい、大学や産業界の多くの人々が同じような危機意識をもって
いることが明らかになってきた。にもかかわらず、現状は改善の動きが遅々としてい
ることは否めず、さらなる危機を募らせることとなった。もはや猶予はなく、自ら行
動を起こし、小さいことでもできることから取りかかるしかないと始まったのがスー
パー連携大学院の試みである。
このわずかな灯火を消さず、この貴重な経験を活かすために、国をあげてわれわれ
の提言に耳を傾けてほしい。博士人材の多様性が増すことにより、我が国全体の人材
育成の活性化、人材の厚みの増大が期待でき、それがあってこそ、我が国の持続可能
なイノベーションの基盤が不動のものになると信じる。我々は、この提案による博士
人材の育成のみを主張するものではない。従来タイプのアカデミア指向の博士人材も
必要である。これまでのあまりに偏ったタイプの人材育成に風穴をあけ、多様性に富
んだ人材育成を促進したいのである。どのような活動でも人材が要であり、とりわけ
リーダー人材の育成を怠ることは社会を滅ぼすことに他ならないことを肝に銘じたい。
8
日本版 Industrial PhD 制度検討委員会
委員名簿
〇梶谷
誠
(一社)スーパー連携大学院コンソーシアム
小林
淳一
秋田県立大学
理事・副学長
田野
俊一
電気通信大学
教授
福田
喬
電気通信大学長
堀田
裕弘
富山大学
教授
学長補佐
工学部長
〇:座長
9
会長
(五十音順)
*文科省は新たな認定制度を設ける
各大学の従来の学位 +
Industrial PhD Certification
サーティフィケート授与型
*国は新たな財政支援制度を設ける
博士課程学生へ:企業は社員として雇用
給与を支給
企業へ:国は学生の雇用人件費を半額補助
共同研究費の半額の補助・減税
大学へ:国は研究費を補助
支援の例
博士課程学生が所定の審査で採択され
た産学共同研究プロジェクトのメンバーと
して実施した研究成果を博士論文とする
産学共同研究に基づく博士論文の審査
及び所定の教育プログラムの修了審査
に合格した者にIndustrial PhD(仮称)
の称号等を授与する
称号の例
財政支援
称号授与
日本版 Industrial PhD
IPSCAI制度
Industrial PhD Supported by Collaboration between Academic Institutions and Industry
日本版 Industrial PhD(仮称) 制度の概要
[参考資料ア]
諸外国における類似制度について
[参考資料イ]
1
仕組み
学生:3年間雇用される(数十万円/月支給)
1/2の時間を企業で学位研究
企業:学生人件費の1/2の補助を受けられる
多くの場合、学位取得後、学生が就職
大学:共同研究費を受領
採択されると
興味を持った学生が教員・企業と組んで申請書
大中小企業が学位レベルの研究テーマを公開
●国の組織(Danish Agency for Science, Technology and Innovation)が助成
学生給与の半額+共同研究費を国庫補助
制度の概要:40年の歴史
1.デンマークのIndustrial PhD
2
0
50
100
150
200
250
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
(dkr≒18円)
2002
25
25
38
2002
28.23
2003
33
31
24
2003
2005
2004
23
47
19
2005
30
53
32
応募者数
2004
28.667
2006
33
52
44
2007
51
58
65
33.591
2008
41
78
73
2008
32.806
2007
31.072
2006
29.702
1ヵ月の給料
29.423
学生に関して
2008
2007
2006
9.5
9.1
9.5
9.5
2005
認可:男性
認可:女性
9.5
9.6
2003
2004
9.7
2002
否認
成績の平均点
年
成績(13point)
日本円で約60万円
3
0
20
40
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
0
Construction, architectural and
trade
IT‐and telecommunication
20
建築・貿易
IT・通信
農業・漁業・食品
Agriculture, fishery and food
industry
60
40
社会保障・教育
医療・バイオ
Public and welfare institutions,
organizations and education
金融・保険
技術
小規模(50人未満)
中規模(50-250人)
大規模(250人以上)
Finance and insurance, service
and consultance, incl.GTS
Technical industry
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
規模
Medical, bio and health‐industry
80
100
120
140
業種
0
20
40
島
首都圏
60
80
100
120
140
南デンマーク
中央デンマーク
80
60
北デンマーク
100
120
140
所在地
企業に関して
4
23
22
23
32
36
29
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
年
Health/
Natural Science
32
医療・自然科学
技術
55
34
39
36
30
15
9
人文
10
11
10
7
6
6
3
12
12
3
7
8
3
0
Social Science Humanities
社会科学
分野ごとのプロジェクト数
Technical
大学に関して
商業
5
5
2
4
2
13
3
8
11
5
6
2
4
3
Agriculture/ Mercantile
Vet
農業
5
フランスの若手研究者育成策と日本の若手究者育成策の提案, JST-CRDS, 2010-1
Doctoral fellowships program in France for foreign students(2013)
●国家として大規模に実施(急速に拡大)
・2008年の新規学生=1300名(2008年までに1万人のCIFREドクターを輩出)
・企業は博士課程の学生を雇用(例外的に3年雇用を政府として認める)
・学生は企業と大学から指導を受ける
(実際に研究する場所は、企業中心・大学中心など柔軟)
・資金:高等教育研究省→研究技術全国協会→企業→学生、大学
(企業は税額控除を受けることができる)
・学生は1年に€28,000(2012年の平均:約377万円)
●デンマークのIndustrial PhDとほぼ同じ
特徴
CIFRE=Convention Industrielles Formation par la Recherche
(英語:Industrial Agreements for Training through Research)
2.フランスのCIFRE
6
●多くの学問分野が対象
●多様な企業が対象
対象となる学問分野および企業
7
地域イノベーションに関する英国と米国の事例,地域イノベーション研究会事務局, 2008-2-5
●2000年度1,612件
(雇用ではなく、奨学金的な支援)
● Industrial CASE:
・プログラムの運営、内容に対しての企業のイニシアティブが強い
・資金は企業に対して支給され、企業がニーズに合ったプロジェクトや
パートナーとなる大学を選び、資金を支出する
・企業は学生に最低年間£3,000(54万円)、大学側に£1,500(27万円)支払う
● 財政支援は大部分をリサーチ・カウンシル(英国の研究資金提供機関)
追加的に企業も負担する
特徴
CASE=Cooperative Awards in Science and Engineering
学生は大学と企業のスーパーバイザーの下で研究し博士号を得る
3.イギリスのCASE、Industrial CASE
8
9
●Industrial PhD は1971年から約40年間デンマークで実施されてきたもの ●中小企業の
高技術化
●企業が雇用し、同時にPhD学生として入学(半分の時間を大学と企業)
●地域ひいては
●企業・大学・PhD学生に補助金が支給される
国の活性化
●EUがIndustrial PhD(EID)を2012より試験的に開始
Marie Curie ITN(Initial Training Networks) scheme の中の取組
初年度 総額 20Mユーロ
対象 100 researchers
募集締切 12 January 2012
特徴
ヨーロッパにおける企業・学生・大学の個別連携による博士育成
出典 University World News, Issue No. 163, 20 March 2011
EU:EID(European Industrial Doctorate)
4.European Industrial Doctorate:EID
月5万円の
日本
× 奨学金。会
スーパー連携大学院
費で運営
補助
×
補助
月5万円程
△ 度の奨学 ○ 国からの
補助
金。国から
の補助
イギリス
CASE
○ EUからの
○ 税控除
月給約30
○ 万円。国か
らの補助
フランス
CIFRE
○ EUからの
国からの
○ 補助
月給約60
○ 万円。国か
らの補助
デンマーク
Industrial PhD
EU
EID
企業
学生
財政支援
大学
企業から
の研究費
×
補助
○ EUからの
企業・国か
△ らの補助
(少額)
△
国からの
○ 補助
5.比較表
×
×
×
×
私的なサー
ティフィケート
国認定の
△ サーティフィ
ケート
称号授与
毎年D1学生が1300名加入
(総数で4500名程度支援)
希望者はほぼ受け入れら
れる(リジェクト率=数%)
外国人が25%
•
10
独自の全国広域産学官の
運営組織を持つ
5年一貫教育プログラムを
持つ
•
•
2012年より試験運用中
•
CASEは大学主体、
Industrial CASEは企業主体
• 補助金はそれぞれ、大学、
企業に入る
•
•
•
申請者の成績基準あり
選抜あり
•
•
備考
基礎教育
の 充実
(行政)
官
★ 技術移転
★ インキュベーション
全国地方大学と
産業界の連携による
地方の活性化
教育に参加
7つの志を持つ博士の養成
スーパー連携大学院
コンソーシアム
遠隔教育
①ベンチャー精神旺盛で自立を目指す
②アカデミア以外の分野で活躍する
③専門分野への深い造詣の上にマネジメント力を兼ね備える
④未来志向の先見性と革新性を有する
⑤質の高いコミュニケーション力を発揮する
⑥リーダーとして尊敬される深い教養を備える
⑦国際感覚を備え世界で活躍できる
産
学
地方大学の連携
スーパー連携大学院の概要
教育に参加
★ 卒業生の再教育機会
★ 地域の社会人教育
ニーズへの対応
★ 広域産学官連携活動
アカデミア以外の分野で
活躍する博士の養成
[参考資料ウ]
共同研究プロ
ジェクト
室蘭工業大学, 北見工業大学, 電気通信大学
富山大学, 大分大学, 秋田県立大学
(社)コラボ産学官, 江戸川区,
秋田県産業技術センター
「産学官協働ネットワークによる
イノベーション博士養成と地域再生」
文部科学省
大学間連携共同教育推進事業(H24-28)
[参考資料エ]
1
私立大学
電気通信大学
富山大学
出資・寄付等
公的機関
企
業
全国のステークホルダーが集結
室蘭工業大学
北見工業大学
人材輩出+
イノベーション
大分大学
秋田県立大学
(b-4) 共同設置型大学院の拠点確保、建築、財政的な基盤強化
海外拠点
地域
コア1
地域
コア2
・
・
・
・
・・
・
地域
コア3
・
・
・
・・
・
・・
・
・
海外拠点
・
・
・
(52)
・・
・ 深?虚擬大学園ネットワーク
・ 連携海外支社、出先機関等(約
600)
・
・
● 日本(共同実施6大学)
・ 連携海外大学(約
300 )
海外拠点
連携産学官を介した
グローバルネットワーク
・
地域のステークホルダー
(秋田精工、 中央化工機商事 、秋田県産業技術センターなど)
Industrial PhD
グローカル人材育成
(a-3) 全国ネットワーク型地域コアを生かした地域人材育成の複線化
(a-4)全国ネットワーク型地域コアの海外リソースを生かした地域に特化した
(a-2)全国ネットワーク型地域コアを推進する
Industrial PhD制度の創設と実施
(a-1)全国ネットワーク型地域コアの体制・機能の設計、実現、運営
博
士
教
養
応
用
科
目
類
志
教
育
科
目
群
【 リサーチワーク】
専
門
展
開
科
目
類
地
域
学
科
目
群
博
士
教
養
基
礎
科
目
類
【 リサーチワーク】
自由な相互訪問+集合教育+ICT対話
… …
信州大学
熊本大学
中央大学
福岡工業大学
崇城大学
…
清水建設
セイコーエプソン
中央化工機商事
野村證券
秋田精工
【ステークホルダー 】
コンソーシアム
コラボ産学官
秋田県産業技術センター
江戸川区
電子情報技術産業 協会
産業 技術総合研究所
スーパー連携大学院
6拠点大学9研究科 約1,100名
【国公私立大学 】
室蘭工業大学
北見工業大学
電気通信大学
富山大学
大分大学
秋田県立大学
リサーチプロ
ポーザル
・短期インターンシップ
・海外研修(短期)
受講資格審査(12名選抜)
志
教
育
科
目
群
Qualifying Exam
・リサーチプロポーザル審査
【 コースワーク 】
専
門
基
礎
科
目
類
・国際共同研究
・国際・長期インターンシップ
・海外研修(長期 )
産学官が連携した共同研究
プロジェクトによる学位研究
自由な相互訪問+集合教育+ICT対話
【 コースワーク 】
専
門
展
開
科
目
類
「イノベーション博士(サーティフィケイト)」
スーパー連携大学院 (2011 年より実施中 )
統合
(b-2)共同設置型大学院のコースワーク、リサーチワークの事前試行・評価・改善に基づく設計
(b-3)共同設置型大学院の事前準備としての共同科目運営と大学院サーティフィケート発行 【現行システム】
【 本事業の目的1 】
実施事項A:
全国ネットワーク型地域コアの体制整備
と地域問題解決による多面的人材育成
統合
(b-1)産学官共同出資型教育研究組織の設置と共同大学院の運営
【 本事業の目的2 】
実施事項B:
国公私立大学・公的機関・企業等の共同出資型教育研究組織設置による共同大学院運営
スーパー連携大学院共同教育研究機構(仮称)
出資・寄付等
公立大学
全国の国公私立大が集結
出資・寄付等
国立大学
地域の大学(6大学)
教育・研究の
共同実施
産学官協働ネットワークによるイノベーション博士養成と地域再生
本事業の実施事項:
2
海外拠点
地域
コア2
Industrial PhD
地域
コア1
・
・・
・
・ ・・
地域
コア3
・
・ ・
・・
・
・ ・
・
・
海外拠点
・
・・
・
●日本(共同実施6大学)
・ 連携海外大学(約 300)
・ 連携海外支社、出先機関等(約 600)
・ 深?虚擬大学園ネットワーク (52)
海外拠点
連携産学官を介した
グローバルネットワーク
・
・ ・
・
(a-1)全国ネットワーク型地域コアの体制・機能の設計、実現、運営
(a-2)全国ネットワーク型地域コアを推進する Industrial PhD 制度の創設と実施
(a-3)全国ネットワーク型地域コアを生かした地域人材育成の複線化
(a-4)全国ネットワーク型地域コアの海外リソースを生かした地域に特化した
グローカル人材育成
【 本事業の目的1 】
実施事項A:
全国ネットワーク型地域コアの体制整備
と地域問題解決による多面的人材育成
本事業(A)全国レベルの地域コア連携での博士養成
3
⑦地域の課題をグローバルな視点で解決
することができる「グローカル人材」育成
⑥ネットワークの活用により、新たな
問題解決手法と人材育成手法を開発
⑤地域コアの全国ネットワークを構築
④地域課題解決を題材とした教育を行い、
地域活性化を担う人材を育成
③地域コア専任のスタッフが丁寧に対応
学 官
産
②地域の産業を活かす、技術相談・共同研究等
産学官連携活動を企画・推進
産
学 官
①地域の課題を抽出し、産学官の力を結集して解決
地域コアの特徴
学 官
産
課題解決
人材育成
学 官
産
地域コア
産
学 官
4
学 官
産
地域コアとは?
地域経済活性化のため、地域の企業・自治体・大学等
教育機関が連携して地域課題を抽出し、解決する機関
Fly UP