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Title グラッベの悲劇「ドン・ファンとファウスト」

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Title グラッベの悲劇「ドン・ファンとファウスト」
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グラッベの悲劇「ドン・ファンとファウスト」
杉山, さんしち
独逸文學研究 (1954), 3: 64-84
1954-12-10
http://hdl.handle.net/2433/186242
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
ー
占
ー
ノ、
四
さんしち
- フ ァ ン ミ フ ァ ウ スト﹂
山
グ ラ ヅ ペ の 悲 劇 ﹁ ド ン ・ フ T Yと 7 7ウ 見 ト
グラッベの悲劇﹁ド
杉
て紹介し党い。
ては刷乱暴や無作法を働いたので人えから好かれ歩、同総評を受けるととが多かった。
軽たあやつり人形の舞蓋を作って人形芝居を試みた・りしたととが倖えられている。グラッベはしかし酔つばらつ
な話のよろに、グラッペも亦ある酒場に遁い、そとに集まる友人と時勢を論じ、自作の詩や戯曲を朗讃し、叉手
つ党、後年郷里で公職に就いた時も常に執務の卓上にのっていた。ホフマンがベル F Yで毎晩酒場に遁つ党有名
ら・なかった。そして少年の頃に覚えた飲酒は拳生時代にたっていっそろ烈しく友った。酒盃は一生彼を離さ・なか
かった。皐業に闘むよりは、むしろグ 1テ
、 シラ!、特にシェイクスピアの戯曲を愛讃し、芝居の見物だけは怠
生に希望と興味を感ぜゃに悶々と生き・ながら、 しかも突如として興奮し、劇乱暴を働︿といろ内攻的危性質が著し
笑的危傍観者。如くに人々から思われた。長じてライプチヒとベルリン大拳で法律を修めたが、修挙時代にも人
はグラッベの一生をつきまとった。グラッペは少年時代から明るい性質を持党示、孤濁を好んで人と交ら歩、冷
我グラッペは一八O 一年十二月ドイツ中部のリッベ園デトモルト市
ι生れ、父はそ乙の刑務所長を勤め、貧困
料としてハィ、不に吹いで、いわゆる青年ドイツ蓮動の一惑星とも構すべき戯曲作家グラッベのフアウストについ
前観でハイネの作ったパレIの腹案﹁フアウスト﹂について患い解説を試み党が、フアウスト文拳研究の一資
ン
彼は自身俳優となるととを熱望し、叉それが賓現せねば劇評家たらん乙とを願つ売。ライプチヒ市にル l ドウ
ィヒ・ティ l クを訪ねたが、彼の希笠は寅現せや、淋しく郷里に蹄った。彼はととで宿願を棄て去り、役人とな
ることに決心し、軍法曾議官といろ職に就いた、名前はいかめしいが大した省職ではたかった。元来病弱た彼は
神経衰弱が重く怒った。世間は彼左病的危種人のよろに言いふらした。
一八一一一一一一年彼は結婚し党。新婦は伎を幼時から保護後援した恩人のむすめであったが、 との結婚は最初から深
刻な夫婦げんかの蓮績で捗る運命を持ってい究。妻はグラッペの母と合わ・なかった。
心弱いグラッベはひとり家を逃れてデュッセルドルフに住むイマ!?シを頼って生活の更新を計つ売が、
ーマンとの友情も長く績かたかっ党。
の方がもっと好ましい
ζとだろう。﹂
グ一フッベの悲劇﹁ドン・ファンとフアウスト﹂(ドン・ファンは、ドイツ語風危諌み方をすれば、
受けたことであるろが、その頃活動していた音柴家で歌劇左十尚も作クたスポールの歌劇﹁フアウスト﹂(一八一
アの﹁フアウスト﹂から
年二十二歳)から二三年に起稿されて一八二八年に完成を見党。執筆の刺戟は蛍然グ l-
ンとするか、 叉はドン・ホア l yとすべきであるうが、 乙乙では我が閣の呼名に従う)は一八二二年(彼の数え
vy ・ュ l ア
彼の言葉にこん友一何がある││﹁私が死んだら、私には好ましいととだるう。私が生きてい・なかったら、そ
自宅へ入らや宿屋で暮した。が周年九月自宅で脊髄結核で永眠した。
一八三六年五月彼は失望と病策とのために疲れをつ党身を自分の家のある郷里に運んだが、妻君を恐れて長︿
イ
六五
六年プラ 1ク市初演)から直接影響があるうと云われる。更に叉バイロンの﹁マンフ νッド﹂、﹁ドン・ファン﹂
グ ラ ヅ ベ の 悲 劇 ﹁ ド ン ・ フ ァ ン と 7 7ウスト﹂
マ
ー
r ン・ 7 7 yと 7 7ウスト﹂
グラヅペの悲劇﹁
の二作品の影響。著しいととは、人々の認めるととろである。
占
ノ、
~
ーツアルト白歌劇の終末は、グラッベの作の終末と金︿同一である。
歌劇である。
戯曲的た頂射を作
フアウストはドン・ファンと結ぼれグラッべによりドイツ文拳に出現し党が、吠に述べる筋の
の人聞が裏打ちさ
ンを愛ずるけれども彼女の
レ1ナ ウ は 乙 の ふ 売 り の 主 人 公 を 別 々 に し て ﹁ フ ア ウ ス ト ﹂ と
グラッペの悲劇﹁ドン・ファンとフアウスト﹂の筋はだいたい次の如きものである。
﹁ドン・ファン﹂ D 二作品を作つ党。決披には ν 1ナウの作品について紹介を試み党い。
グラッペのとの悲劇が作られて後数年して、
苦悩は深くない。フアウストに射しては初めから気味悪さを感じて相手にしたいのである。
れていない賄が大きい訣黙と成っている。アナは夫となるべき男を嫌ってドン・ファ
に落ちて行︿││即ちふたりが生命を賭けるだけの債値あるよろにその轡人であるドナ・アナ
性がそれぞれ地獄
肉の解放と自由とを賓行し、制度を破壊し、因習を冷笑するドン・ファンと、 と の ふ た り の 男
能の喜びを求めて
りえ-なかった。特に北方の浪晶史的理想左代表し無限の憧慢に燃えて努力するフアウストと、官
のととばで分るように、残念たがらグラッベのとの悲劇はふたりの結びつきの必然性を依き、
紹介や、批評家
アン歌劇と同名と成っている。
改慢を勧めるそ
ドナ・アナの父が殺されて後、 石の死霊と・なってドン・ファンの晩餐に招かれて出現し、彼の
・フアジはとれら
モーツァルトの此曲は一七八七年の秋にプラ!ク市で初演された。グラッペの悲劇の中のドン
僕たどはず y ・フ
に撮る-ものであクて、彼の劇中の人物、ドナ・アナ、ドシ・オクググィォ、 ドン・フアシの従
ドン・ファンを宝人公とした、世聞に一番知られた歌劇は云ろまでも友︿モーツァルトの同名の
/
、
主友人物
知事ドン・グスマンのむずめ。
ドン・グスマ ν ヌベイシ園セグィ Fャの知事、 スペイン公使とたってロ 1 7市に駐在している。
下ナ・アナ
知事のいとと、 ドナ・アナの婿。
スベイシ貴族。
下ン・オク夕、グィオ
ドン・ファン
悪魔の僚の姿。黒衣をまとう。
ドクトル・フアウスト
士
グラヅベの悲劇﹁ドシ・
7 7 ンと 7 7ウスト﹂
、
,
七
を言いくるめる。フアウストがあ友党の女の身のまわりに魔術の輸を引いている。呪交を唱えてバルコシへ彼女
むすめ
フアウストであるが、魔術よりは鎮と男子の勇気の方がカまさり、私の創が彼を遁梯ったのだ、と邸前の立廻り
ドイツむ氷の荒野からロ!?の都へ来党大魔術師を御存知ないかと問う。今夜乙こへ忍んで来たのはドクトル・
ン・ファンの計査が失敗する。 しかしアナの父の知事とアナの堵太クググィ Xと商識を得て、 知 事 に 向 づ て 北
ナの培、ドシ・オクググィオを伴って邸から出て来るが、ドナ・アナは階上の窓に顔を見せただけで引込み、ド
むと
騒ぎによってアナを外へ呼出してアナと舎う機舎を作る計壷をめぐらす。ふたりの立魁りを聞付けて知事が、ア
して、従僕のレボレロ沈としめし合わせ、知事のむすめ下ナ・アナの窓下で剣左抜合って喧嘩をよそ沿い、その
第一景。 ロ!?都内。スベイシ庚場の附近。夜。知事グスマシの邸前である。幕が明︿とドン・ファンが登場
第一幕。
ローマの都とモシプラン山︿アルプス最高の峯)。
。
その他ドン・フアシの従僕、 ロ!?の奉行(箸腕組監)、 地精・なE
騎
所
グ ラ ツ ペ の 悲 劇 ﹁ r y・7 7 yと 7 7ウ ス ト ﹂
六八
を誘い出そうとたくらんだのだ、と説く。ドン・ファシは明晩あげるととになっているドナとオクグヴィ太との
結婚式に、父から招待を受け、出席を約束して別れる。
そのあと彼の従僕νポν ロオは、態仲と怒っているアナの女中リゼッテからアナの明日外出ずる時刻を、聞出
す
。
第二景。同じくロ i マ。七丘の一つのアグェンティシ山上のフアウスト邸内の室。夜。ラシプが一つだけとぽ
る
。
フアウストの長い猫白!││二百七十行を越す怒濡の如き彼の心中の長い、強い吐露が始まる。仕事をしたい、
ふみ
研究をしたいという命左倒るようた彼の渇望は輔されゑい。わ党しの如く努力し党煮は他にあろろか。わたしの
いhお
踏まなんだ事術、皐聞の小径がどとにある。汝、聖書、大い怒る書よ││異文と二軍の意味を含み、知悪とふし
ぎな教を党党え、信仰の岩と人人から構えられているが、汝の一枚一枚は、乙の暗い嵐の中で悩んでいるわたし
を守って安全な屋根をふいてくれお。聖書の紙は秋の木の葉の如くに朽ちて、ひとひらづっ散って行く。ああ、
との謎を解かんとして歎か友んだ者
わ売しの頭の中には何という火の文字が燃えるととか。!ー﹁それを知らざる限り、 汝 は 何 物 を も 信 や る 能 わ
十。それを信ぜざる限り、汝は何物をも知る能わや口﹂と。との謎を知り、
&?なこ
はない。だがその解答を殻見した者はたい。 ll仮象に限くらんで仮象左光と信守るほどの弱虫どもは幸幅であ
る。彼等は盲目的に希望するから、盲目的に信やる人々、夢に酔う魂である。愚かな究めに幸踊であるよりも、
わ売しは苦悩を受けて血まみれにたり究いのだ。
次にフアウストは風園ドイツをのがれ世界の古都ロ 1 マに来究理由を述べる。
﹁ドイツょ、組園よ!llしかしわたしは血園のために戟死が出来友んだ身だl l、ドイツ、汝はヨーロッパ
の心臓であるllしかしかつて党めしなさほどに、きれぎれに引き裂かれ究心臓なのである。
﹁全人類を我身に
ζのバルバライの中から、
一瞬の聞に数千年の時聞が溶けこんでいる都である。汝の創が一
ロ!?ょ。汝は最も庚汎な過去の破れた鏡である。園民と土着の市民たちの血の光に輝きながら、 乙の鏡の破
れの中から弐々に英雄の姿が浮び上って来る。
切を獲得した時、汝も亦一切のものと共にふたたび夜と野費の中に落ちたのだ。だが
新しい血が、新しい光が湧き上る、ーーと彼は信じ、希墜してとの都へやって来たのである、
と叫ぶ。たとえ炎の中をくぐら・ねばならむとも、彼にはもヲと歩いてゆく力がある。突進す
う
受取るために﹂11﹁廃嘘と過去の目的は、敬訓を輿えるためのな話にあるのではたい。ドシ・ファンの如金者だ
けが破壊の溶岩の下で数百寓の花を見て紫しむ力を持っている。しかしドン・ブアシは一切の花がはかなく、
つらい易いものであるととを考えることが出来ぬ illl彼には気晴らしは見つかろうが、唯一の君、 不朽の者の柴
ζととたった、
えないととるに、 安心と平和とを見つけ出すととは出来ね口﹂ フアウストは神を求めつづけて今や地獄の門前に
立つ
る力がある。目的を彼は詮げねばならん。天園に濯する小径があるもの怒らぽ、その遣は、少くとも彼に、とって
ζで悪魔を呼び出す明文の本をひらく。卓上の燭が消える。
は地獄を遁らざるを得ない道友のである。
フアウストはそ
﹁民撃の日が常に暗くなるかの穴から、別の永久の光を、我が叫闘いιらしめんキめに呼び出そう。ーーのぼり来
ょ、来て、我を照らしてくれ。﹂
﹁わたしは目を畳
燭の消えたととるに赤熱の火炎が燃え上る。とれが地獄の閃光喝なのである。彼は本を棄てて立上り、虚空を見
守る。地獄の門が見えるように思われる。彼はと D世に告別し、 との世の夢を投げ棄て党い。
L
九
まし党いのだ。 わたしの目が醒めていることを知り党いのだ。﹂ーーやがて十二時の鏡が鳴る。 扉 を 三 度 ノ ッ ク
グ ラ ツ ベ の 悲 劇 ﹁ ド y - フ T Yとフ 7 ウ ス ト
、
,
グ ラ ヴ ペ の 悲 劇 ﹁ r y - 7 7 yと フ ア ウ ス ト ﹂
する菅が聞とえる。一二度とも強い雷鳴を伴って、 フアウストが失神して椅子に伏す聞に騎士が出現する。
﹁汝の強い翼をもって知識の境界た超えて、信
Mざめ、第十六世紀風の扮装だが、思怖い服を着ている。地獄の使者、悪魔が
K
b
騎士は中年のねんばいで、顔色 騎士の姿をしているのである。
騎士とフアウストとの封話となり、 フアウストは騎士に向い、
ζとの出来る遣を、たとえ炎の光に照らされても、わたしに敬えるよろ
仰の園へわたしを運ぶよう努めてくれ。﹂﹁宇宙と人間と、彼等の存在と彼等白目的の謎を解︿究めに力主借して
くれ。﹂﹁bたしが安心と幸福とを見出す
に努めてくれ。﹂と要求する。フアウストは手を傷けて滴る血汐で契約書に署名を終る。
ζうたどともがかない謙虚さである。幸一隅とはドン・ファン
ζとで あ る、不幸とは現世の健康な料理を消化するためにフアウ
騎士は幸一隅とは、虫けらが己の力以上に伺ってい
の如く常住に享柴して、 しかも胃袋をこわさね
ストの頭が弱すぎる乙とに存ずるのだ、それゆえ架空の幻影にあこがれ、それを求めるととだ。ヲアウストが信
じた・ぃ、愛し党いと一式ろなら、 ローマ第一の美女下ナ・アナを癒して、 うつつを抜かすがよい。制畑にろっつを抜
かす者は、溜息をし、望みを抱き、信じ、敬喜するからである、などと趨ベ立てて、 フアウスト友そそのかす。
第二幕。第一景。
ロ 1 7 0 知事ドン・グスマンむ庭園。午後、夕方泣い。
ドンファンが従僕とふたりでアナ・ドナが邸から出て来るのを待伏している。やがて彼女は白い服を着て予場
するが、結婚式を目前に控えて悩んでいるのは、 ドン・ファンを愛して、極唱のオクググィオを愛していないから
である。彼女の父の知事は名替を重んじ、制岨儀を盤守する頑固た人間であるが、 との父親に育てられ、 しつけら
れたむすめアナも亦、父と家との名を汚さんととを恐れ、未来の夫への義理にそむ︿まじ、貞節を破るまじ、
と
。
七
﹁ドン・ファンが、たとえ地獄 D紳 で あ ろ う と も 、 オ ク グ グ ィ 方 さ ま 、 あ た 売 に は 操 を 破 り
の知性と、ドン・ファンへのほんとうの愛情、自己の幸一繭を求める感情との争いに苦しむ如くに見える。しかし
アナは単純である、
ませぬ。わたしはあなたにた約束をい党しました。わ党しはあな党を愛したいのです、あたたを愛さねばなら危
いのです。﹂と決意している。
ド ン ・ フ ア シ は 隠 れ て 彼 女 の 歎 き を 聞 い て 言 う 、 離 す る 者 に は 徳 は何 す る も の ぞ 、 勇 を 鼓 し て 攻 撃 を 行 ろ と さ
コケトリイの一つに
は、徳はもう地べ党へ投げ飛ばすもの、!ー女の身には、徳はわれらの勝利の味を甘くする 一
過ぎまい。無邪気の最善は、徳なぞをなくすることさ。
ア ナ は 始 め て 下 ン ・ フ ァ ン に 気 づ き 、 彼 を 恐 れ て 彼 の 退 去 を 求 め る が 、 彼 は 平 気 で 彼 女 の美 し さ と 轡 の 甘 さ と
をも作たえると共に、彼女の堵オクグヴィオを殺して自分の時間をきっと成就させて見せると言う。アナは彼を憎む
モL
が、彼を愛する心は鑓らぬ。彼に謝して愛を告白するが、しかしオククグイ沈む妻に成る決心はゆるが・ない。
﹁組処をわたしは阻止できませぬ、とはいえ、わたしは名を救います。﹂﹁夫に誠をつくすのは永遠のとと、
﹁あなたの百商人の同胞のふだんしているよろにするがよかろう、
ll眠って、食って、飲んで柴しむがよい。﹂
︿ら
示す以上のものを究明しようという熱撃を感ゃるのは、 フアウストがわざと熱望を刺戟するからだ、
て、言葉の 一
話
l!フアウストはふたたび宇宙の謎を究明し党いという抑えがたい自分の熱墜を騎士に打明ける。騎士は答え
ふ・売りが退場したのち、すぐドン・ファンも立去り、そのあとへ騎士とフアウストが登場する。とのふ党りの封
オクタヴィ中 Aが出て来てアナと語る。彼は結婚の喜びに酔うて、アナへの愛を語り、自分の幸隔を党たえる。
﹂
ろつろい易いもの。勝利は永遠に授けられますよろに o
は司
愛
7 7ウスト﹂
e
と説︿。フアウストは承服出来ぬ。悪魔を僕ベとして自由に駆使しても、瀦足は得られ友い。自然の、 最 も 深 い 脈
グラツベの悲劇﹁ドン・ファンと
七
グラッペの悲劇﹁ド y・7 7 Yと 7 7ウスト﹂
捕はどこで打っているのか、 その脈捧を示してくれ。 それが不可能ならば悪魔も人間以上には知慧がないよう
だ、と迫る。
騎士は答える ll幸踊を亨けむと努力する意志を抱いているたら、先づ自ら生長してE人の精と成るがよい。
この精こそは、千年の火焔に包まれても、あらゆる疑を抱いても、││夫園の上から落下するそのも・なかにも、
-な沿いささかも挫ける乙とたく、己の力を事件のみ、勝利を期待し・ながら、永遠に憎み、鞍ろのです。
ζそは成るが、人閣のほまれとなるととのない精だ。わたしは治まえを
フアウストはそれに答える││疑を解くととたく、同鮮に屈服し、愛の真髄を究める乙と放く、憎悪で満足して
いるような精は││それは熊のほまれと
誤算した。
騎士は、あたたが人閣でいらっしゃるととが残念です怒。あなたの本質の中にはひとりの民E友榊が住む。ぁ
念売の渇望た鎮めるにはわたしの力が弱すぎるのが︿やしい、 と答え、 フアウストの前に鏡を差出し、鏡をのぞ
いて見ょ、とすすめる。鏡の中にはドナ・アナの美しい姿が映っている。
フアウストはすでに﹁女には接吻もし、希望も、憧僚も注いだが、世界は小く、憧憶は大きい。紳の木僅が明
ζとは、彼も知っている。
l l﹁しかし、
らかにならなかった時に、女をどうして愛しえたろうか﹂、 と趨ぺた直後であったが、鏡を眺めると、たちまちア
ナの美しさに引き付けられる。しかし乙れは悪魔のはかりごとである
まやかしは民賞よりも債値がある。 我 々はなんにも知らぬ乙とを知るよりは債値がある。﹂女の姿にこのように
夢中になるのは愚かたわざじゃーーその原因がわからねゎ。理性はこのように教えるけれども、感情に負けて糟
を知りそめる。紋は哲撃も数撃も天文撃も、愛する組園も忘却して、騎士に向い、 ドナ・アナの許へ案内し、
の老人のしわづらを若返らしてくれと命中る。騎士から今夜がアナの結婚式があげられる晩であること、しかし
ζ
七
Xはドン・ファンに殺されて、 アナはドン・フアシの手に闘するだるろと告げられると、 アナをド
オククグイ -
知事邸の犬庚問。放たほかに婚臨む晩らしく照明された庚聞が多数見え、 そ れ ら の 中 に は 客 が 集 ま
ン・ファンの手に渡さ守、 乙のわたしが奪い取ってみせると越べて、 ふ党りが退場する。
第二景。
ロ170
り、ダンスが行われている。奏柴。
Xが出て来る。知事
ドン・ファンが従僕と共に登場し、つづいてすぐ知事、ドナ一・アナ、その花堵方クグヴィ -
は娘の幸一耐を思って父親らし︿涙ぐみ、娘は己の苦悩を歎いて心沈む。彼女はドン・ファンの姿を見、悲 Lみを
抑えるために太クググィオと踊る。ドン・フアシも亦ダンスの群にまぎれこむ。
騎士とフアウストが登場。フアウストはある伯簡と自稽し、は危やか念服装で、顔は若返っている。ドナ・ア
ナに紹介される。しかしとのふたりのまわりには売だ怒らぬ異様た気分が漂ろ。室内に恐怖のけはいが濃く友
り、不士口放感情が人人を襲う。それはフアウストの出席のためであるととは人々も感づく。ふ党りは地獄、死を
思わせる表情を具えてい るのだ 。
ブアウストはドナ・アナ左下ン・ファンの手からさらって行って彼女を住まわしむべき宵肢をアルプスの最高
峯モシプランの上に建造せよ、 と騎士に命やる。騎士は御希望ど沿りに宮殴はもう出来ました・、 と答えると乙る
へ、ドン・ファン、ドナ・アナ、ドン・オクググィオが、客と共に康問へ入って衆る。ドシ・ファ ンはかねて計つ
て命じてい究遁り従僕をして沈クタヴィオの足を踏みつけさせ、それをロ賓にして従僕の代りに自ら喧嘩を買っ
て出て、忽ち太ククグイ太を相手に創を抜いて鞍ろが、オクタヴィオは刺されて床に倒れ、はか友︿死んでゆく。
花堵の死を知らね知事は別室で容と腕盃をあげて、教呼の撃を高らかにひびかせている。
グ ラ ツ ベ の 悲 劇 ﹁ ド ン ・ 7 7 yと 7 7 ウ ス ト ﹂
七
vy
グラッ 4 の悲劇﹁
7 7 ンとフ 7 ウ ス ト ﹂
をひそかに誓い・ながら、アナの父の命を断。創を抜くつもりたのである。
第三幕。第一景。
ζとをとっそり告げ、
フアウストと共
k従僕ひとりを伴ってま場する。ふたりはすぐ鞘を梯って創を合わせる。三
ロ 1 7 0 北方の都門のひとつの外の庚場。夜ではあゐが、まつくらではない。
知事、 ドン・ファンが各
ドン・ファン││あた売の御教訓には感謝します。だがドナ・アナをわたしはきっと探し出します。あたたが
メラダイスに行って榊の姿をごらんなさるよりももっと幸一臓にあふれて、わたしはアナの腕に抱かれましよろ。
一
を知らぬ少女を奪う野墜を抱いて、父の死を明笑したいでくれ。
知事11快柴よりももっと意味の深いまじめがある。徳ほ不朽、死は激紫にも、生命にもまさるもの。けがれ
わがものにする、 と答える。
てくれ、と頼むが、ドン・ファンはアナは美しい、アナをいたゃらに蓑えさせるととは許せぬ、あくまでアナを
れ
知事が刺される。瀕死の知事はドン・ファ yに向い、むすめをフアウストの手許から救い出して、修道院へ入
度合せて
く容を巧みに抑え、知事ひとりを相手の決闘に臆十る。彼はフアウストから必やアナを奪い、彼女を愛するとと
それから知事その他の客が饗事を知って駆けつける。ドシ・フアシは彼の殺人のはかりごと左見破っていきま
にアナを引いて去る。
る。騎士はドン・ファンに、 ドナ・アナはモンブラシ峯む上 に引かれゆく
も。﹂ とひややかに断言す
は成れ山刷、 オククグイオのむくるを指して﹁乙の方があたしの夫放のです。いつまで
お っと
近
さてドン,ファンはアナに向い、 乙れで花嫁はわ売しのものだと勝ちほとった時、 フアウストは彼の背後に
にも、 わたし
づき、彼の屑左党党いて、アナはわたしのものだ、 と宣言する。アナは、治ふたりのどちらむもの
七
回
そう言棄てて彼は去る。
私のむかし聞いたとと、 私のむかし設い事件ことは、
むなしいととぽに過ぎなかっ党か?
知事は紳の恩寵を近く受ける身の喜びを知るが、ドン・ファンに劃する復讐の執念は棄℃切れぬ。組園スペイ
ンとアナの名を呼び、
と撰い・ながら死んでいく。彼の従僕と牧師とが知事の死骸を運び去る。
第二景。
モシプラン山の頂上。フアウストの魔法の城の中の華美な一室。アルプスと下界の眺望。
騎士の魔法で築きあげられた・豪世華麗友城が、ドナ・アナに劃するフアウストの限り忽い愛にふさわしく友︿
貧弱であるから、もっと美しくりつぼに飾り立てよ、と騎士を前にして、 フアウストが友じっているろちに、茸日
柴がきとえ、日光が輝き、ドナ・アナが現れる。フアウストは始めて自分の名を告げ、素性を明かして熱心に彼
女の愛を求めるが、アナは彼に・なびかね、冷静に﹁フアウストであれ、紳であれ、愛を強請できると治思いに友
﹂と答える。
るのかしら o
ζとが出来れば、世界のすべてを彼女に捧岨りるのみ危らやノ、彼の
フアウストは盆々激して、﹁あなたの自の中にのみ、私の生命が生きているのです。愛は唯一の創造力ですo﹂
と説き、 アナの愛を得、アナを己のものにする
orナ・アナll ﹁あな党の奥さんのととを考えてください。あ友党の涙がわ
涙もまた注ぎましょう、と訴える
党しの心を動かす力がありましょうか。﹂
kに ア ナ の 眼 前 に 現 わ し 、 彼 女 む 故 郷 セ グ ィ リ ャ の 都
フアウストは世界を自由に統御する遇力を持っていることを一示すため、 アルプス山、肱からロ!ヌの谷、プロヴ
アンスの卒野、ピレ、不 1山肱のかた党のスペインまでを吠
七五
をも見せる。そしてとの力をもって彼は紳に反抗してみせる、悪魔に反抗してみせる、己自身にも反抗する左言
グラツペの悲劇﹁ド y ・ファンとフアウスト﹂
﹂
7 7 yと フ ア ウ λト
七
第四幕。
一
ζと が で き る の だ 。 ア ナ は 叉 フ ア ウ ス ト の 口 か ら 、 父 が ド ン ・
││フアウストの疑と苦悶は蓋さない。
ファンの究めに決闘を
のである。彼は
ふらち友人策的危
。悪魔であれ、
は人聞なのだ。
党めにアナの心臓
知っている。
と友る。わ党しの
張︿惜んでいるのだろうか?
愛を退ける女、ドナ・アナ。彼女をわ売しは果してより強︿愛しているのか、 よ り
いたって信心深くあった者だけが、悪魔にたることが出来る。悪魔だった者だけが、震の信若
ただひとり残った山中のフウストの猫白││愛したととのある者だけが、惜しみを知り、怒りを
を引裂くと脅かす。ドン・ファンと従僕はフアウストのムロ闘によっ℃嵐の中をさらわれて行く。
彼が人間として女性を愛し、アナの愛左確信しているのを知つ党フアウストは、恐れと怒りの
天使であれ、超人には、女性の愛は、人間以下の生物と同様に縁なきものである。ドシ・フアシ
む。フアウストょ、君がいつまでも人間たらんとするならば、何故に超人たらんことを望むのか
固にそれを桓
そこへフアウストが姿を現わし、登るふ党りを制して蹄るように劉めるが、 ド ン ・ フ ァ ン は 頑
試み、慣脅とたりえや叉たるを許されぬ熱情をいやしめて、卒凡・卑俗に化すととだ、友
E と言う。
結婚を噌笑して、結婚とは、最も自由な、紳えしい感覚を、世界から家庭の都屋へ会びきとむ
ドシ・ファンは従僕を伴って、アナの沿しこめられている魔法の城をめ吉じて登山する中途な
第三景。モンプラン山中の荒原。
挑まれ、悲惨な最期を途げたことを聞かされ、講さと悲しみのあまり椅子のょに倒れる。
加ど
もアナのためには彼は殺す
党委の部屋をもアナに眺めさせる。彼の手が動いて招くようにすると妻はそのまま死んで行︿
後に郷塁に時間し
ぅ。更に彼は胞一閣ドイツに時じ℃エルペ荷畔を歩くマルティーン・ルッグーの姿を出現させ、最
。妻も園王も人民
グラッベの悲劇﹁ドン・
.
.
.
.
,
、
第 一 策 。 ロ ! ? 市 外 の 墓 地 。 知 事 の 大 理 石 の 立 像 が 立 っ て い る o 日暮れはじめる。
ドンファンと従僕とは前幕で、知事の墓場へ投げとばされ、 こ こ で 死 墜 を 見 て 懐 え 上 る よ う に フ ア ウ ス ト か ら
ζ ζ に眠り、復雌曹は彼の殺害者左待っている。﹂と刻んである。
月のぼる。
宣言され、 フ ア ウ ス ト の 通 力 に よ ヲ て 空 中 を 飛 行 し て と と へ 到 来 し 究 の で あ る 。 墓 地 に 立 っ て い る 知 事 の 記 念 像
の蓋座には﹁知事ドン・グスマン
従僕は小石を拾って像に投げつけて後、
もそれをいぶかしみ自分でも大理石像に話しかけて、改めて晩饗に招待の酔を繰返す。立像がう友づいて、
知した。﹂と一耳う時、雷鳴と閃電が起る。ふ究りは立ち去りぎわに、
け去る。
第二景。モンプラシ山地下の洞穴。
グラッベの悲劇﹁ドン・ファンとフアウスト﹂
七七
沸 か し て 作 つ 究 乙 の 涙 を 飲 み 、 杯 を 投 棄 ℃ て ﹁ 私 の 恐 れ て い るE人 は 私 自 身 の 中 に 住 ん で い る ﹂ 乙 と を 悟 る と 共
ませ℃くれと命守る。との飲物は苦痛をたたえ飲料であるが、他の苦痛を鎮める殻がある。フアウストは彼等が
々が王座から℃んぷくする時に彼等の流し党涙を、 地精党中りの胸の中に住む永遠の復讐││熱い焔と混合して飲
狭い世界の柴しさを植歌する。ブアウストはそれには耳を傾けやに、葵が死ぬ時に流しかん涙や、 王 位 を 奪 っ た 人
地精と彼との聞に心臓についての封話があり、 地精党ちは彼を地下に引留めよろとして、 地 下 の き ゅ う く つ 危
気晴しをするつもりらしい。
地精(年寄の顔をした小人で、人閣の苦情を見て喜ぶ)が数人出て来る。フアウストは暗い洞穴の中でしぼらく
フ ア ウ ス ト 登 場 し て 槌 を も っ て 岩 を 打 っ て い る 。 フ ア ウ ス ト の 呼 出 す 撃 に 臆 じ て グ ノ 1 ムと名づけられている
ー寸
しかけて、今夜主人の催す晩餐舎に出席するよろ招待する。石像はろ友づいて承諾の返酎析をする。下ン・フアシ
たりの謝話のうちにとの立像が動き出し、顔を動かす。従一僕 νポ ν ロオは主人の命令に従い、 とわごわ石像に話
.
s
承
臨
グ ラ ヅ ペ の 悲 劇 ﹁ ド ン ・ 7 7 ンと 7 7ウス十﹂
に、いっそう張く自分の心がアナに引かれているととを知る。
第三景。モンプラ y山。フアウストの魔法の城の一室。
七八
E人は我身の中にのみ住むことを知ったフアウストは、その言葉込雄大と怒り、登場すると共に、 わたしの望
むと乙ろむものは、かたらやノわが物にしてくれん、しから歩んばそれを粉砕せん、 と叫ぶ。つづいてドナ・アナ
の美しさを讃美し、彼女への思慕の断ちがたい胸中の苦悩を吐露し、重ねて彼女の愛を求める決意を闇︿する。
ドナ・アナ登場。彼女はドシ・フアシを愛しているととをふたたび断言する。そう一言われても彼女を断念すると
から
との出来ないフアウストは死をもっ℃彼女を脅迫する。彼は紳の前にも頭をさげ、煽びるととは出来ない。アナ
に屈し、追従することはいっそろ不可能である。﹁やさしさ、親切除殻に過ぎや。虞賓が按である﹂から。アナ
もいさぎよく死を覚悟し℃﹁貞節の黄金の花ょ、 わ党しの頭を巻いてくれ。汝の犠牲としてわたしを死たせてく
れ。﹂とさっぽり言う。フアウストは迭に彼女の死を宣告する。彼女はフアウストをにくむと言い放ちたがら死
。
第四景。
ファンにアナの死を告げてむち、自ら悪魔に身を渡す
ζとを誓う。
命十るが、騎士にもその力は校い。フアウストは後悔の涙に暮れ、アナのむ︿ろに向って己の罪を詫び、ドシ・
目を醒ましてくれ!﹂と叫ぶが、彼には死者をよみがえらすカはない。騎士を呼び出して彼女を蘇生さすことを
ストはそう悟り、アナをはじめて見党時に胡%を地獄 K賛。ていたかっ究ら幸稿だったるろと歎︿││﹁アナょ、
のは直接に人聞には達したい。人聞にはふかしぎた梯子が必要である。アナの冷い死顔を見つめ・ながら、フアウ
愛一といえども愛する封象がなくては、無危のである。人聞はみじめである。宗救であれ、愛であれ、偉大訟も
ね
ロ1 7。ドン・ファンの館の華やかな康問。月の光と星の光が窓から射しとんでいる。
騎士が登場し、すでにフアウストは我手に蹄したが、今度はドン・ファンを地獄に落とすことが出来るのを喜
ぷ調自の中詮に月と星の光が薄れ、大室の雲行があわも凡だし︿怒り、騎士は黒服を脆ぎ仮商を外すと、赤い衣裳
に費り、憤怒に燃え立つ顔をして舞蚕後方に退いて歩きまわるが、登場するドン・ファンと従僕とには彼の姿は
見えない。従僕は質問の中のただならぬ気配を感じ、雷雨が起りそろ放のわ色恐れるが、 ドン・ファシは少しも策
にかけお。 ローマ奉行が部下をひきい℃殺人の罪によりドシ・ファンを捕えて拘引しよろとて訪ねて来るが、彼
ド
等は外へ投げ出され、部下と共に遣い携われる。
MEりかかるのを制し、
フアウストは顔色蒼白、恐るしげた形相をして入ってくる。背後にいた騎士が彼にK
ン・ファンとひととと話す間だけ待って︿れと頼む。彼は重ねてドン・フアシにドナ・アナを愛したかと尋ね、
アナはもち死んだ、私と共に絶笠せよ、 と告げる。
ドン・ファン││絶望せよと云わるるか。苦痛と悲嘆とが、不幸と心臓の血との大波が我等が上に押寄せる時
生命のマストにはためく旗を上げることとそ、大切なのである。破滅の淵に臨む時まで、アナの名のために、ブ
ナのほまれの究めに職うとととそ肝心である。 llアナの死は彼の心を動かした。 iーしかし私は帆をふたたび
張り、新しい風と共に走ろう。美しい娘は千人もほかにいるではたいか。娘ひとりを失って私は悲しむだろろ
ilかo
彼は更にアナを殺したのはフアウストであるろ、汝は己自身の天園を破壊したのだと責め、彼に決闘を迫る。
フアウストはその言葉に胸刺される思がし、アナへの切々たる思慕の情を繰り返すが、永久にわたしはアナを
7 ウスト﹂
九
忘れまい。か︿思う乙とがすでに地獄の貸在左破誠さすだろう、と叫ぶ。騎士、被を捕えてその首を絞める。
とフ
グ-一ヲツベの悲劇﹁ドシ・ファン 一
七
1
ζとは、 ド ン ・ファンらには騎士の姿が見
クタグィオと、 ドナ・アナは幸一帽に暮し、私をとと へ惑ってド
+A
ドン・ファ ンの舘が焼けると、
合うまい、と一耳い棄てて舞蔓の下へ沈む。
騎士は赤の外套を高︿投げて、
抗 う。 火掛川⋮ 上り、 火の雨の降注 ぐ中をドン・
度とはもう
は、地獄 の硫黄にまみれた誕のドン・ファ ンの方が好ましいと言放つ。立像は二
れ・
党翠着たらんより 一
れね。天上の業園の光に遍照さ
るのだ、 と詮く。ド ン ・ファ ンは昂然として、私はドン・ファン以外の者には成
立像は悪魔がフアウストの女に彼を殺す究めに待伏しているととを告げ
ひとつ行わない。私の行
ン・ファンの悔悟と改慢とを勤めるのだと一式う。ドン・ファ ンは悔いるようた事を私は
。ドン・ファシは担絶する。我身に起る
鴛は一切私の満足するととるだと答える。石像は重ねて改慢乞う訟がす
向ろが、 よろめき退︿。
一切の事に反抗、叛誕せ十ば、人生は無意味だ、 と臆じ、 乙首をもって立像に立
、悔悟すれば私が彼を救うととが出来
知事 の立像はロを開いて、 天閣にいるドン・
の音柴。
じ首を抜いてふりかざす。雷鳴、紫電。宴 のために呼び寄せ 党柴人党ち
ンはフアウストが自ら悶 死 したも の と思う。
れる。ドン・ファ ンは盛んに食ぺ、ぷ
彼のむくろを片づけてから、食卓の支度が出来、料理とぷどろ酒が運ば
づくのを知り、 ドン・ファンは創を抜
どう酒を飲むうちに、電光、雷鳴が女第にはげしくなる。知事の立像が近
斬りつけるが、創はかえって折れる。
いてこれを迎える。立像は彼に招かれたので訪ね究のである。彼は立像に
フアウストが騎士 の手によって殺害された
り るまで居残っている。
彼左殺した騎士は後へ引込むが、ド ン ・ファンを見守 り たがら幕の会
えたいの で、ry ・フア
ろう。
一度あっ党ようにふたたび汝を足下に踏まえて、私が勝つ日を迎えるであ
永遠に汝と︿騎士を指す﹀守わん。
プアウストの断末魔の絶叫i!私が永濯のものならば、私もまた氷遠から
グ ラ ッ ペ の 悲 劇 1 r y・ 7 7 yと 7 7 ヴ ス ト ﹂
0
A
ファンを技し舞菱の下へ淡ずる。騎士の最後の言││汝らふたりは同一の目標に向って努力しているが、ちがつ
たふたつの車に乗って進んでいるのだ。
ドン・ファンの最後のせりふ││此世に言残す最後の言葉として私は今でも叫ぶ│11﹃闘王とほまれ、 組園と
愛と。﹄ll火焔と雷鳴と紫電のうちに幕沿りる。
マクス・ヘツセ版のグラッベ全集の編者、オットオ・=1テ yの 本 曲 に つ い て の 解 説 を 紹 介 し て た ︿ と と に す
。
グラッベの悲劇﹁ドン・
kしいものが念に目醒めて衆る盤化は、
7 7 yとフアウスト﹂
フアウストの宿願が単にものを知り
、
¥
i
抑えがたい憧慣が燃え上る限り、今やフアウストは愛に近づいて愛を知るようになるととがよく分ってくる。
長的・な憧憶によって準備されている。叉フアウストが天の階調に耳を傾けて聞くことにより、叉伎の胸中に到底
たいという欲望だけに限られるととなく、それ以上に深大なるもの、宇宙を抱括して捕え党いという無限む、浪
後になってフアウストの胸中に紳
て最後の数景でフアウストがその胸を破られる悲劇的な葛藤が暗示されている。
いう、悟りだけで満足しよろとするのは、純粋な、冷巌な知識欲の極致と一耳うべきであるろ。叉との悟りでもっ
つづけるととを示すのである。彼が﹁幸踊友人にたる﹂代りに、 いかにすれば﹁幸幅な人にたb 得 た ろ ろ か ﹂ と
酔 O党 時 代 の 趣 が 著 し い 。 彼 が 悪 魔 と た め ら わ ? に 契 約 を 結 ぶ の は 、 最 後 ま で 自 分 の 自 主 性 を 悪 魔 に 劃 し て 持 ち
叉彼は﹁秩序﹂を憎む。フアウストにはカントによって翫格を受けた深刻た懐疑とフィヒテの個人の神化の設に
フ ア ウ ス ト は 無 限 の 憧 憶 を 抑 え る こ と が 出 来 十 、 ド y ・ファンの哲拳は浪憂的無目的を唱道するものである。
る
グ ラ ヅ ベ の 悲 劇1 r y
・7 7 yと 7 7ウスト﹂
ζの掛照的事件
ン・ファンとフアウスト二人のりっぱ危良い性質を一身に具えているようた、ひとりの男があったとしても、と
彼女の性格を暗示しようと努めてはいるが、戯曲の統一的左中心を作るだけの力を持ってい・ない。何故友らぼド
走り去るのだ。最後に品問中ただひとりの女性ドナ・アナも、血の遜わぬ幻のよろた性質を除いて、作者が慎重に
血と肉が訣けていて、葛藤が、深い興味を唆るだけの力がない。人物は比倫のように生命危く、ぷきみに舞牽を
グラッペのこの作品は機智に富む障かしい戯曲である。また作者。思想が豊かに表明されているが、主題には
封ずるドン・ファンがまじめに槻客から受容られないとすれば、戯曲の緊張がいったいどとにあろうか。
結からすれぽ古いドン・ファン侮設の債値の費更をグラッベが行つ党ととに怒る。しかし・ながら、 フアウストに
に封躍する諸人物が弱々しかっ党り、儒善的だっ党り、あるいは滑稽だっ党り、という風に描かれている。との
ドン・ファンは祭にもかけぬ。彼は最後までどんな事にも敬意を梯いえ・ない恐ろしい人物である。叉フアウスト
な印象を興える人物││殺し、信心深い知事と貞淑念アナを咽奔する。知事の石像が復讐のために近づいても、
悲祉な印象を識者に興ぇ、ドン・ファンの場は瓢刺的危要素が盛んに瑳揮される。彼は知事を、││治化のよう
との後ドン・ファンとフア・ウストは再び舎うけれど、 とのふたりの行動は一千行的に進行してゆ︿。フアウストは
を惹起すべき緊筏な必然性は認②られぬ。むしろ奇怪な気分。戯れがあっけ友い結末を結ぶと一苫うべきである。
といろ自己の目的に到達し、 叉騎士は彼を地獄の獲物として我手に治さめる目的を謹成したが、
を求め、すたわち人間党るととを求めて救左得んとする。作者の解決がととにあるろ。さてフアウストは、知る
んばかりに謹ベられている。冷静な暴聞のある、カのある人間む運命がことに明らかにされる。彼は最後に愛情
を一示すもの芯ある。手のと Yく近さに彼を呼ぶまア帽を昼しく失い放がら、救われざる人聞の苦痛がととには狂わ
フアウストがドナ・アナをモンプラン絶頂の宮殿にとじとめ、 とこで彼女をくどく場は、作者の濁特注偉大さ
.
¥
i
の男がアナの共鳴を得るだゐうと、感ぜられるように作者が暗示するととらもないからだ。
ひ と り は ゲ ル マ シ 的 理 性 と 意 志 と で 頭 脳 を よ ろ い 、 理 想 を 求 め て 永 遠 に 屈 せ ぬ フ ア ウ ス ト 、 ひとりはラテシ的
感情と官能とで肉髄を包み、人生の歎喜を追求して永久にさまようドン・ファン。めざめた自己、自己の隼童、
ζのふたつの人閣の典型に沿いて護見される。二十二歳の若↑いグラッベがその才能を揮って
感受の解放と肉の復権、更に一進んで超人へ D信念二切か、さもなくんば無党らんとする伺人の冒険など、近代文
拳の好ましい題闘は
はたん
ζの好題同に取り組み、その考えを奔流 D如くに観客の前に流露した熱情と力量とを思う時、しかもそれが完成さ
れた作品に盛られ歩、破綻の多いかたわの悲劇に沿いて働かされた時、彼の不遇な一生を思い合わせて、悲恰・な
感じがひしひしと胸を打つのである。彼が三十六年。生涯の犬部分は、貧乏と失意と病苦と、そして夫婦げんか
ぶらい
J
とで終り、世聞が彼に奥えた・レッテルは無職ののんだくれ、瞳儀知らや 、饗人、病人、貧乏文士などであっ党。
ζとに濯し売と評したが、
グラッベのカは何ひとつ俗世の幸一耐を産むカを持究なかった。生活を整頓し、世
νク一フム版グラッベ全集の編者プットシャルはフアウストの最後の悟りは﹁カは、 幸一踊を作らやんぽ無であ
る
﹂
﹁ドン・
聞と調和するととが出来たかっ、たと同じように、 あふれる彼のカと熱とは、あまりに烈しくて、作品をも押し流
した Dである。しかしながら力はそれだけでも隼い。
のろい
フライリヒラ l トがグラッペの死をとむらった詩の一節で
﹁詩の焔はいつも呪である。﹂
と嘆息しているが、 グラッペ乙そこの詩の火焔のために燃え上り、火焔に焼けて滅んだ詩人であった。
k燃 え 上 る 気 味 悪 い 、 赤 い 地 獄 白 劫 火 が 作 君 の 人 生 を 暗 示 し て い 党 よ ろ に 息 わ
7 7 yとフアウスト﹂
ファンとフアウスト﹂全曲中に度
グラヴペの悲劇﹁ドシ・
A
れる。
グラッペの悲劇﹁ドン・
7 7 Y と ア Tウスト﹂
四
ずることが出来たかっ党。
あるいはこの英園詩人の天才的た諸説的友叙事詩むよう念、世界的危作品白域に、我我のドイツ詩人は到底到達
れ党パイロ ンの つ p y・ファン﹂によって光を奪われているけれども。ゲ lテの悲劇﹁フアウスト﹂のような、
曲の中のドン・ファンのシ i yだけが熱い生命の息を呼吸している、勿論そのシ l yさえ、時を閉じくして作ら
ら何が残るか。影との戯れだけに過ぎない。意味深長な文伺のびらを口の中から垂らしているが停に過ぎーない。
わる。フアウストがド ン ・ファ ンの 轡 敵 と な っ て ド ナ ・ ア ナ の 愛 情 を 受 け 守 に 担 ま れ る と し た ら、フアウストか
可能な彼の戯曲にすぎたい。ふた・つの停語界の混和には無理友、不自然なと乙ろがあって、始終それがついてま
成 し 党 戯 曲 で あ る と 見 る 人 人 の制断に我我は礎成することが出来危い。乙れはむし ろ舞 菱 で上演すること の最も
ll ﹁ドν ・ファンとフアウスト﹂左グラッペの作品の中で最も完
フラ Yツ・メーリ ングも共のように許し党
九
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