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阿見町環境調査だより 第 4 号

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阿見町環境調査だより 第 4 号
阿見町環境調査だより
第4号
平成 25 年 2 月 22 日発行
最終報告会のお知らせ
2 年間にわたって町民調査員を中心に、多くの町民の皆さんのご協力をいただいて進めて
きた「阿見町自然環境調査」がまとまりました。その結果を多くの皆さんにお知らせする
最終報告会を開催します。これからの阿見町の望ましい環境を考える上で、動物や植物の
生息状況など、貴重な調査結果が出ています。ぜひお誘いあわせの上、ご参加ください。
日時:平成 25 年 3 月 30 日(土)
13:00-16:00
(開場 12:30)
場所:阿見町本郷ふれあいセンター多目的ホール
主催・問い合わせ:阿見町役場環境政策課
(電話:029-888-1111 内線 116)
阿見町環境調査では、町民調査員がていねいに町内各地で自然環境調査を行いました。
その中で、自然観察の適地としてオススメのスポットを紹介していただきました。
ふ
れ
あ
い
の
森
大森はるみ
ヤマモモ、など8種類ほどの果樹が植えら
れた果樹園、その中央に「スーペリアの森」
若栗運動公園とさくらクリーンセンター
があります。1997 年 4 月 11 日に阿見町と
に隣接した南北に細長い 12ha がふれあい
米国のスーペリア市と姉妹都市となった記
の森です。平成 16 年に県の「市町村ふれあ
念として北米の樹木が植樹されています。
いの森整備費補助金」制度により、町民の
サトウカエデも植えられていたが、気候が
森として整備されました。公園内には遊歩
合わなかったのか、樹液が甘いこともあっ
道が巡らされ、東側は運動公園に、西側は
て虫が木を食い荒らし、残念なことに枯れ
さくらクリーンセンターの散策路へとつな
てしまいました。園内は東屋のある芝生の
がっています。公園内はほぼ平坦で、南側
広場と南側の駐車場の近くはバーベキュー
の端は斜面で、その下には水田が広がって
コーナー、グランドゴルフのできる芝生広
います。
場になっています。周辺の林はクヌギ、コ
ナラ、ムクノキ等と植樹されたスギ、ヒノ
キが混在した高木の森と草地から構成され
ています。
春、コブシの白い花が咲き、コナラ、ム
クノキの若草色、クヌギのオリーブ色の若
芽が芽吹く。ウグイスの声が聞こえる中、
林床にはタチツボスミレが群れて咲きはじ
ふれあいの森の芝生地
め、明るい森の中が春植物の舞台となりま
北端の駐車場の南側にはビワ、イチジク、
す。ジュウニヒトエ、ワニグチソウ、アマ
ドコロ、マムシグサなどが見られます。ヤ
見せて鳥を誘っています。コナラやムクノ
マザクラの花が散るとウワミズザクラ、イ
キ等の落葉樹が葉を落とすと森は明るくな
ヌザクラが咲き、ハムシの仲間やハナバチ
り、木から木へ移動する野鳥の姿が見つけ
の仲間、ベニシジミなどの蝶も花を訪れま
易くなるのもこの頃です。
す。コジュケイの特徴のある鳴き声も頻繁
に聞こえます。
ふれあいの森での動物はタヌキ、野ネズ
ミ類、イタチ、ハクビシン等が町民目撃情
夏、ホトトギスがやって来る頃は、森の
報で得られています。巣穴の確認はされて
中は薄暗くなっています。林床の植物は背
いないがキツネの目撃情報が届いていると
を伸ばし、オオバノトンボソウがひっそり
のことです。この森はコナラ、クヌギ等が
と咲きチダケサシ、ヤマユリが香ると夏本
伐採されずに年を経たので太くなり過ぎて
番。コナラやクヌギの樹液を吸いにカブト
おり、徹底した下草刈りが低木や実生の苗
ムシ、コガネムシの仲間が集まり、オオス
を育たなくしています。また、小鳥の餌と
ズメバチも仲間入りしています。ニイニイ
なる実のなる木々がとても少ないので野鳥
ゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラ
が集まりにくい環境になっていると思われ
シなど鳴き声が騒がしくなると森の中は生
ます。自然あふれるふれあいの森の訪問者
命にあふれている気がします。草地では蝶
は思い思いに自然とのふれあいを楽しんで
のツマグロヒョウモンのつがいが舞い、シ
いますが、悲しいことに絶滅危惧のキンラ
オカラトンボ、ナツアカネ、オオアオイト
ン、ギンランや花の美しいヤマユリなどが
トンボなどのトンボ類が飛ぶ姿がみられま
盗掘されています。みんなが楽しむべく森
す。コナラやクヌギのドングリを付けた枝
の利用と森の保全・貴重な植物の保護をど
が落ちているのに気づきます。ゾウムシの
うすべきかみんなで考えていく課題になっ
仲間のハイイロチョッキリの仕業です。草
ています。
地では絶滅危惧のノジトラノオがブラシの
ような白い花を咲かせ、イガホオズキは小
神 田 池 の 貴 重 な 自 然
さな金平糖を思わせる実をつけ始めます。
青山利彦
暗い林内で朱色のキツネノカミソリが数か
神田池(じんでんいけ)は飯倉地区に位
所で群れて咲く時は其のあたりが明るく感
置し、池面積 2.24ha、貯水面積 1.8ha、流
じられます。シダ植物ではゼンマイ、シケ
域面積 14ha の溜池です。江戸時代の新田
シダ、珍しいイヌガンソクやヘビノネゴザ
開発の際、灌漑用水として、また安定した
等が生育しています。姿は見えないがシジ
水の供給が必要なことから、この地の谷津
ュウカラの声はよく耳にします。
に堤防を造り、周辺林からの湧水を貯めた
秋、群生しているイヌタデやハナタデ、
造成池です。神田池の堤防は長さ 80m、堤
ノハラアザミ、ヒヨドリバナ、オトコエシ、
体上部の幅が 2m で、堤防中央部の水田か
ワレモコウ、ツクバトリカブトが咲きます。
らの高さが約 4m という、当時の事業とし
赤い実をつけるヒヨドリジョウゴとカラス
てはかなり大がかりなものです。周辺林か
ウリやアケビの実が口を開けて甘い果肉を
らの豊富な湧水によって貯水量は多く、長
年水田灌漑に使われてきましたが、昭和 60
ら見て池の両端は湿地状態か半乾き状態で
年に行なわれた耕地整理と深井戸設置事業
した。そこには、ジュズダマ、ジュズスゲ、
によって、その後は灌漑用水としては使わ
ジョウロウスゲ、クログワイ、サンカクイ、
れなくなりました。
カヤツリグサ、アギナシ、オモダカ、コナ
ギなどの湿性植物が繁茂していました。
「神田池を保全する会」は、有志の呼び
かけで、平成 12 年に設立されました。会の
目的は、
「阿見町で最も豊かな自然が残され
ている神田池の保全を図り、併せて阿見町
の自然環境の保全に寄与する」ものです。
設立総会では活動方針として、次の 4 項目
が確認されました。1 神田池の水量と水質
自然豊かな神田池
の確保および動植物を保護するための活動
2
神田池の周辺環境を整備するための活
て、コイの養殖場として使われました。そ
動
3 地域・行政とともに阿見町の自然環
の後も、池にはコイやフナなどの小魚が多
境保全に関する学習・研究および啓発活動
く生息していたので、地域の住民は小魚を
を行う
獲るため、3 年に 1 回は池の水門を開けて
こと
神田池は、明治後期から大正初期にかけ
4
その他神田池の保全に関する
水を落とす「池ながし」を行なっていまし
これまでに実践した主な活動内容は、1
た。そのことが池の泥などの堆積物を処理
神田池の所有関係の調査(国有地であるこ
することにつながり、安定した深さと水量
とが判明)2 保全活動を推進するため、池
を保持することができたのでしょう。池に
周辺の飯倉地区住民に会の活動趣旨を説明
は多種類の淡水魚のほかに、
「モク」と呼ば
し、協力を要請することが重要なので、地
れる水生植物も多く生育していました。地
区 の区長や役 員と話し合 いを行なう
域の高齢者によると、近年茨城県の湖沼で
池の水量を確保するために、堤防の漏水防
見られなくなった浮葉植物のジュンサイも
止対策を講じ、堤防の土嚢積み作業を行な
採取して食べていたということです。また、
う
地域の子どもたちの遊び場でもあり、この
よび池周辺に生息する生物調査
池で水泳を覚え、釣りをした思い出を語る
を覆い、池を浅くしているヒメガマとヨシ
中年層も多いのです。昭和 54 年の調査記録
などの植物を筏やボートを用いて刈り取る
によると、地域住民による「池ながし」が
6
廃れた状況下で、池で繁茂していたヒメガ
係諸機関との連携と助成申請
8
活動を
マやヨシなどの大型抽水植物の遺体や周辺
推進するための学習会の開催
9
池の歴
林からの落葉が堆積し、底に泥がたまって
史の継続調査
浅くなる湿性遷移が進んでいました。堤防
道作りなどの環境整備
の水漏れも激しく、水位は下がり、水門か
3
4 池の水質(pH、COD)調査や池お
5
町へ堤防漏水防止の工事を申請
10
水面
7
関
池周辺の草刈り、遊歩
自然観察、自然体験の場として神田池の
価値はとても大きいものです。自然は、破
です。平成 21 年に農林水産省で募集した日
壊することなく過去から未来へ伝えるべき
本のため池百選に神田池が選定されました
です。それには、自然体験や自然観察が最
神田池は、江戸時代からの歴史を有し、農
も有効で適切な方法です。自然は人間に
業用水の水源として利用され、周辺の里山
様々なことを知らせてくれます。また、人
と一体となって多様な生物の生息の場とな
間が自然とどのようにつきあうべきかを教
っています。また、豊かな自然環境と触れ
えてくれます。神田池は、高度経済成長時
合う環境教育の場としての役割も果たして
代の開発の波に影響されずに、昔のままの
います。今後も地域振興の核になるよう保
手付かずの自然が残っており、阿見町の宝
全活動を進めたいと考えています。
といえる場所です。桑畑、ヒノキやスギの
人工林、自然林に囲まれていて、車の出入
ワッカクル里山の森
りができない、奥まった位置にあるために
佐藤征男
自然が保護されてきたと考えられます。
「ワックル里山の森」は、阿見町若栗北
神田池および周辺の動植物を調査してみ
の三菱化学の裏山にあります。「ワッカク
ると、魚類では、平成 4 年にはコイ、フナ、
ル」とは、この地域の地名「若栗」からき
タモロコ、クチボソ(モツゴ)、メダカ、タ
ています。縄文時代、
「ワカグリ」とは「水
イリクバラタナゴ、ドジョウなどの淡水魚
の湧くところ」の意味で、現在まで地名と
が多数生息していましたが、現在では残念
して残ってきたと考えています。
なことに、放流されたブラックバスによっ
十年ほど前までは、この山林に次から次
て、ほとんど姿を見ることができなくなっ
へ と ゴ ミ が捨 て ら れ 、「 捨 て ら れて は 拾
てしまいました。堤防下の用水路には、マ
う・・」のイタチごっこかモグラたたきの
シジミ、カラスガイ、カワニナなどの貝類
ような繰り返しでした。そのうちに、この
が多く生息していて、ヘイケボタルが夏場
里山の管理は地主だけでは手に負えないの
に飛び交う姿が見られます。タイコウチ、
で、数人の有志でここを借りて、地域の里
ミズカマキリ、テナガエビ、アメリカザリ
山公園のようなものを目指して、清掃、整
ガニなどの姿も観察できます。初夏から晩
備、管理をすることにしました。
夏にかけて周辺林を探索すると、多様なセ
それから「阿見・里山ワンダーランドの
ミの声を聞きながら、樹液に群がるカブト
会」を作り、荒れ果てていた山から粗大ゴ
ムシ、カナブンのなかまを観察できます。
ミや弁当ゴミなどを撤去し、背丈ほどもあ
トンボ類は、池面を飛び回っているコシア
る藪を刈り、様々な樹木を間伐すると、風
キトンボ、オニヤンマなど多種類生息し、
通しが良くなり、陽射しが入る小さな森ら
チョウ類も種類が多いのです。鳥類も、サ
しくなってきました。遊歩道や溜池などを
ギのなかまをはじめ、多種類確認できます。
作り、小川に小魚が上ってきて、宝石のよ
子どもたちの心を豊かに育むためにも、
うな美しいカワセミも飛来し、子どもたち
生きる力を育てるためにも、諸機関と連携
も夢中になって小魚を追いかけ、釣りもや
して、この地を自然体験の場としたいもの
れるようになりました。
したのかと感心しました。真っ暗な土中で
は、目が退化して小さく、突き出した鼻の
嗅覚と耳の聴覚が良く発達し、前足はグロ
ーブのように大きく、穴を掘る爪が鋭く発
達していました。その奇妙な容姿にたいへ
ん感動しました。
ミミズが多いワッカクル里山の森でも、
モグラ塚はよく身近に見られますが、阿見
町に残された自然豊かな環境がさらに少な
カワセミ
くなり、地中で暮らす野生のモグラが生き
ワッカクル里山の森は、あまり大きな森
ていけなくなることがないように、願って
林ではありませんが、市街地に近く、富士
います。ぜひ、ここで、モグラの生態に関
団地や阿見小・中学校にも近いので、地域
心を持つ子どもたちと、本物の生きたモグ
の人たちもよく犬の散歩やウオーキングで
ラを観察したいと思っています。
やってきます。この森では、香りがいいス
ギやヒノキも多く、森林浴に適していて、
南 東 部 の 丘 陵 地 域 の 自 然
久留島
癒しの森、憩いの森にもなっています。最
昭彦
近は紅葉が美しいカエデ類を移植し、イイ
阿見町の南東部の石川、君島、大形など
ギリ、コナラ、シラカシなどの巨木もあっ
の地域は、標高が 20~30 メートルの丘陵地
て、
「混交林」の森づくりを目指しています。
で、比較的深い谷津田が複雑に入り込んで
それで様々な野鳥やセミ類が集まり、盛ん
おり、自然環境も、平坦で開発の進んだ他
に鳴き声を競っています。かつて、この森
の地域とは少し違った様相を示しています。
でオカリナのコンサートをした時は、音色
谷津田はところどころ耕作されずに放置さ
が森に広がり鳥たちも集まってきて、一緒
れ、ススキ、ガマ、セイタカアワダチソウ
に合奏しているような雰囲気になったこと
などが生い茂ったり、あるいは深い藪にな
がありました。当初の頃、この里山のそば
ってツル性の植物に覆われたりしたところ
の小川の岸辺で、半分土に埋もれていたダ
があります。また、谷津田の斜面や尾根筋
ンボール箱を掘り起こしたところ、突然飛
は、スギやヒノキ、クヌギ、コナラ、シラ
び出した小さな動物を捕まえたことがあり
カシなどの深い森におおわれていたり、シ
ました。それはモグラでした。モグラを捕
ノダケが密生しているところが多く見られ
って、まじかで見るのは初めてでした。き
ます。
っと、モグラも驚いたことでしょう。ゴミ
交通の頻繁な道路からも離れていて、普
や土の中ではいずり廻っているにもかかわ
段は人の気配もほとんどない静かな地域で
らず、モグラの毛並みに艶があり、清潔で
す。このためか、絶滅危惧種などに指定さ
あることに、野生を感じました。そしてモ
れているサシバやオオタカが鋭い声を上げ
グラの体が土の中の生活に、ここまで適応
ながら、上空を飛び回っている姿をよく見
かけます。また普通はもっと標高の高い所
ないサンコウチョウの囀りも聞くことがで
で生息しているキビタキ、オオルリ、サン
きました。
コウチョウなどの山地の鳥も確認されたの
です。
さらに、7月下旬には、ソウシチョウの
家族群に出会い、この地域で繁殖したこと
が確認できました。ちなみに、ソウシチョ
ウは、茨城県では、筑波山系の頂上付近で
繁殖しているだけで、このような低地での
繁殖が確認できたのは、今回が初めてと思
われます。
このように、この地域は、普通なら標高
の高い山地に生息する野鳥が少なからず生
息していることが分かったのです。これは、
南東部地区の谷津田
昨年の4月下旬のこと。とある尾根筋に
拡がるスギやヒノキ、クヌギやシラカシの
地形や植生が、山地のような環境を作り上
げているためでしょうか。あるいは人の気
配が少ないためでしょうか。
混淆林のなかで、思いもかけずキビタキの
この地域には、今では見かけることも少
囀りを聞きました。このときは、渡りの途
なくなったキンランやギンランが群生して
中の偶然の出会いと考えていましたが、そ
花をつけているところもあります。また、
の後も引き続き、黄色の目立つ美しい姿が
昆虫でも、近年、生息地域を関東にも広げ
見られたのです。
てきた南方系のナガサキアゲハなども生息
さらに5月上旬のある日、あたりはヒヨ
していて、町内の他の地域とは一味違う特
ドリをはじめ、ホオジロなど、様々な鳥の
徴のある自然が残されています。これから
声に満ちていて、特にウグイスと、それを
も継続して注目していきたい地域です。
凌ぐほど賑やかな外来種のソウシチョウの
囀りがあちこちで聞かれる中、今度はヒー
ヘイヘイヘイジュクジュクと囀るオオルリ
小
池
城
趾
公
園
稲川雅信
にも出会ったのです。それも1羽だけでは
平成 11 年に、いばらき森林クラブと阿見
なく、複数羽のキビタキとオオルリが、木
町と茨城県が三者協定「阿見町小池城趾公
の間をあちこち移動しながら美しい声で鳴
園森林整備協定書」を結び、史跡と里山の
き競い、まるで、どこかの深い山に居るよ
復活を目指して荒廃していた雑木の平地林
うな気がしました。
4ha の整備が開始されました。当初 5 年の
その後、オオルリは6月中旬まで、キビ
契約でしたが、この期間では整備が達成で
タキは6月下旬まで姿を見せてくれました
きず、その後もいばらき森林クラブが中心
が、繁殖までは確認できませんでした。ま
となって、阿見町および地域住民も参加し
た、このころ、少し離れた場所の杉林では、
て整備が続けられました。ようやくこの頃、
最近、生息地が局限されてなかなか出会え
誰もが公園を散策でき、みどりや虫、鳥た
ちのいとなみを見て楽しめる豊かな自然が
っています。叢(くさむら)には、早春の
甦ってきました。この間、特に、北側の傾
妖精、アマナが見られ、その奥には、黄色
斜地一体に繁茂し、人の侵入を強く妨げて
い小花をつけたセンダイタイゲキの群落が、
いたマダケ林の整備には多大の時間と労力
スミレやマルバスミレやアカネスミレのス
が費やされました。ここの整備が一段落し
ミレ類もあちこちで花を咲かせています。
たころ同じ北側の谷津斜面に湧き水が発見
シュンラン、エビネ、ギンラン、キンラン
され、この湧き水を利用して沢と池がつく
などのラン科植物も次々と花を咲かせ、高
られ、水生昆虫や湿地性植物などが観察で
木類の葉を茂らせるまでのつかの間の春を
きるようになりました。雑木林の間伐材は
謳歌します。また、鮮やかな赤紫のノアザ
薪やキノコ栽培の原木に、落ち葉を集めて
ミの花は夏まで咲き続けます。
堆肥がつくられました。この堆肥は周りの
クヌギ、コナラ林と相まって、多くのカブ
トムシやクワガタムシを発生させ、付近の
子供たちの夏休みの楽しみの場になるとと
もに宿題の材料を提供する場ともなりまし
た。また、早くから炭窯がつくられ、上記
のマダケや付近の竹林の整備によって生じ
た竹材や間伐材を使って竹炭や木炭が焼か
れ、多様に用立てられ多くの人々に喜ばれ
ています。
春の小池城趾公園
夏になると、 ヒメヤブランやカナビキソ
平成 19 年から枯損木や間伐材をチップ
ウやクルマバヒメハギの可憐な花が、明る
にして遊歩道に敷き詰める整備が始まり、
い林床には、チダケサシ、オオバノトンボ
公園の訪問者が歩きやすくなり、また、草
ソウの花々、地味なコヒロハハナヤスリも
刈り作業も軽減できました。こうして、藪
胞子葉を精一杯伸ばしています。奥の方に
が開かれ、下草が光を受けて甦り、同じ平
は、トモエソウの大きなねじれた黄色の花
成 19 年春、茨城県では、絶滅したと信じら
弁が、風にそよぎます。道端には、ウツボ
れていたセンダイタイゲキが発見されまし
グサの青紫の空穂の花も。そして、夏も盛
た。当初は、ナツトウダイかと見られてい
りを過ぎると、ピンクのキセワタ、真っ赤
たが、花の形が異なり、幻のセンダイタイ
なキツネノカミソリの花が咲き出します。
ゲキであることがわかりました。その後も
負けじと、シダ植物も葉をいっぱいに広げ
いばらき森林クラブの手入れによって、今
ます。
や、大きな群落に育ってきています。
秋には、ガマズミが赤い実を、サワフタ
春は、フデリンドウ、ニオイタチツボス
ギがルリ色の実をたわわにつけ、ツリガネ
ミレなどの紫の花、キジムシロ、ミツバツ
ニンジンのかわいい風鈴状の花、ツルニン
チグリなどの黄色の花々が咲き乱れ、サワ
ジンのラッパ状の花も咲き出し、オケラの
フタギの真っ白な小花が咲き良い香りを放
多くの魚骨状の苞を擁した花、そして、ツ
クバトリカブトの蒼烏帽子の花で花のシー
ズンを終えます。
しかし、町内では、私たちの身近で、こ
れらのタカやハヤブサの仲間を見かけるこ
最後にもう 1 つ、マヤランの妖艶な赤花。
とが意外に多いのです。その機会は、誰で
マヤランは腐生植物ですので、葉もつけず
も知っているトビよりも、むしろ多いくら
花期も定まらない。まるで忍者のようです。
いです。
このように小池城址公園は、城址の土塁
少し注意していれば、夏ではサシバが、
なども残されているので、歴史と自然が同
冬ではノスリやチョウゲンボウが、田畑の
時に学習できる貴重な場といえます。今後
杭や道路わきの電柱に止まっていたり、平
も、里山の姿を残す公園として町民に親し
地林や耕作地は勿論、団地の上空でさえ輪
んでもらいたいと思っています。
を描いて飛んでいたりする姿をよく見るこ
とができます。
阿見町の猛禽類
久留島
昭彦
霞ヶ浦湖岸では、魚を餌とするミサゴが
沖の杭の上で休んだり、捕った魚を食べた
生態系の頂点に位置する猛禽類のタカや
りしている姿が年中よく見られ、運が良け
ハヤブサの仲間は、自然環境の変化により、
れば空中でホバリングをしながら魚に狙い
近年、その数が減少し、多くの種類が絶滅
をつけて、水中にダイビングする豪快な狩
のおそれがある鳥に指定されています。
りの様子を見ることもできます。
阿見町ではこれまで、タカの仲間のミサ
また、オオタカが湖岸の木に止まって辺
ゴ、トビ、オオタカ、ツミ、ハイタカ、ノ
りをにらみまわしていたり、ハヤブサが高
スリ、サシバ、チュウヒの 8 種と、ハヤブ
速で獲物めがけて突っ込んだり、チョウゲ
サの仲間のハヤブサ、コチョウゲンボウ、
ンボウがホバリングをしながら獲物を狙っ
チョウゲンボウの3種との合計 11 種の生
ている姿を見ることもあります。
息が確認されています。
阿見町で、生態系の頂点に位置するタカ
やハヤブサの仲間が沢山生息しているとい
うことは、その餌となる生物が豊かという
ことで、それを育む霞ヶ浦や谷津田、耕作
地、平地林が散在する里山の自然がまだま
だ残っている証といえるでしょう。
このように狭い地域で、このように多く
のタカやハヤブサの仲間を簡単に見ること
ができるところは、他にはそんなにないと
ハヤブサ
このうちミサゴ、オオタカ、ハイタカ、
サシバ、チュウヒ、ハヤブサの 5 種が絶滅
のおそれがある鳥として、環境省の絶滅危
惧種や茨城県の危急種に指定されています。
思います。たまにはちょっと目線を変えて、
この豊かな自然を堪能してみてはいかがで
しょうか。
阿見町環境調査だより第 4 号
発行:阿見町環境政策課(電話 029-888-1111)
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