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超軽量小型モビリティULV (Ultra Light-weight Vehicle)
早稲田大学環境総合研究センター 2016 年 4 月 22 日 最終更新日時: 環境配慮型生産・運用システムに関する研究 題目 超軽量小型モビリティ ULV (Ultra Light-weight Vehicle)の開発 著者 1. 小野田弘士 概要 根本圭祐 松浦加奈 空調用に利用できる付加価値も有する。図 4 に示す回転バランス型 超軽量小型モビリティ ULV は、省エネルギー性を追究した競技用 シリンダの原理を応用した空気エンジンの搭載を前提とし、図 5 に 車両をベースに、早稲田大学の永田勝也・小野田弘士研究室で開 示す性能試験装置による性能評価とそれに基づく ULV⁻A の開発を 発された一人乗りのコンセプトカーである。「自転車以上自動車未 行った。具体的には、エアー配管における圧力損失を削減すること 満」をコンセプトに、必要最低限の機能を付加するという考え方で開 を目的としたボンベの配置の最適化、ギア比の検討等を行った。シ 発を行ってきた。主な特徴としては、以下の点が挙げられる。 ャシーダイナモによる走行試験を行い、ULV-A の走行性能を把握し 車体の構成材料として、CFRP を採用すること等により、軽量化 た。その他、圧縮空気の製造段階も考慮した総合効率の評価、ULV を追究していること。 の導入が検討されている長野県の観光テーマパーク「かぶちゃん 競技用車両の開発で培った省エネ性能を車両設計に最大限活 村」の木質バイオマス発電所を核とした小規模 CAES (Compressed 用していること。 Air Energy Storage)のコンセプトを提案した。 バッテリーのみならず、さまざまな原動機(燃料電池、ガスエン ジン発電機等)に対応した Multi PM(Prime Mover)の設計コン セプトを導入していること。 地域の中小企業等と連携した生産体制を構築し、その地域の モビリティとして活用する「地産地活型」の普及モデルを目指し ていること。 2. (a)ULV-Ⅰ (b)ULV‐Ⅱ 図 1 ULV の外観 (c)ULV‐Ⅲ 超軽量小型モビリティ ULV の概要 (1)ULV の開発の経緯 これまでに製作した ULV の代表的なモデル外観を図 1 に示す。こ の 3 つのモデルのシャシーは、共通の構造を有しており、公道走行 における走行性能の向上や各種の原動機に対応するための改良 を重ねてきた.ULV-Ⅰは、燃料電池(120W)を主たる原動機として 図 2 ULV のデザインの多様化 初めて、公道で走行可能なナンバーを取得したモデルである。 図 3 ULV‐Ⅳ ULV-Ⅱは、埼玉県本庄早稲田周辺地域における水素社会の構築 のための実証事業において、水素の利用側のアプリケーションとし て開発したモデルであり、登板性能の向上等を図るために燃料電 池の出力を 300W に向上させる等の改良を行った。ULV-Ⅲは、墨田 区との連携事業の一環として、墨田区内の中小企業との連携によ り、「地産地活」を実現した最初のモデルである。このモデルでは、 図 4 空気エンジンの外観 原動機としてリチウムイオンポリマー電池を採用している。ULV-Ⅲ 図 5 空気エンジンの性能 評価試験装置 の車体重量は、72.6kg と極めて軽量な車両となっており、平地での 30km/h の定速走行時の消費電力は、約 350W に抑えられている。 (2)地産地活型の生産体制の構築に向けた検討 地産地活型の生産体制を構築するための基本情報の整備を行う とともに、その活用に向けたビジネスモデルを構築することを主たる 目的とした。具体的には、図 2 に示すように、各種の用途に対応す るために ULV のデザインの多様化を図り、地産地活の実現に向け た基本情報の整備、実用化に向けた走行シミュレーション等を実施 した。併せて、公道走行を可能とするナンバー取得(ミニカー)のた めのマニュアルも作成した。図 3 は、最新モデルである ULV‐Ⅳの外 観である。 3. 2015 年度の研究成果 図6 シャシーダイナモによるULV-Aの走行試験 4. 次年度の研究計画 ULV‐A の走行試験等による性能評価(継続) 空気エンジンを搭載することにより、原動機のコスト低減、車体の軽 圧縮空気製造・貯蔵・利用を含めた総合プロセスの構築 量化が期待できる。また、空気エンジンから排出される冷気を車内 地産地活型生産システムの構築に向けた検討 Multi‐PM の拡張の一環として、空気エンジンの搭載を検討した。 本研究は、株式会社早稲田環境研究所からの委託研究「圧縮空気エンジン駆動型小型モビリティの性能評価」の成果の一部を報告するものである。関 係者の皆様に御礼申し上げる。