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∆Σ型 D/A 変換器における DAC 素子誤差の抽出手法
平成 25 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会 講演番号: 9 ∆Σ型 D/A 変換器における DAC 素子誤差の抽出手法 A-1 An extraction method of element error in delta-sigma digital to analog converter 石川 諒 松谷 康之 Ryo ISHIKAWA Yasuyuki MATSUYA 青山学院大学 理工学部 College of Science and Engineering, Aoyama Gakuin University 1.はじめに 近年、高精度 D/A 変換を行うための∆Σ型 D/A 変換器が 盛んに研究されている。∆Σ型 D/A 変換器は論理回路で構 成される∆Σモジュレータとモジュレータ出力をアナログ電圧 に変換する DAC(局部 D/A 変換回路)により構成される[1]。 この回路の問題点として DAC を構成する抵抗の素子誤差 のミスマッチによる変換精度の劣化が挙げられる。そこで本 研究では精度補正に用いる補正値を求めるために、実測 により IC 内の素子誤差を求める方法を提案する。 2.提案手法 ∆Σモジュレータ内の帰還部に DAC の素子誤差量を加算 し、素子誤差量にもシェーピング特性を負荷することによる SNR 向上手法が提案されている。これに応用するため、 D/A 変換器のスイッチ制御と出力電圧の直流測定のみで 素子誤差を求める。 3.素子誤差の判別方法 図 1 に DAC の基本回路構成を示す。この回路の R1、R2 の相対素子誤差を求める。スイッチに対する実測の直流出 力値を表 1 に示す。表 1 のパラメータを用いた、R1、R2 の 関係は式(1)となる。 Vo2 Vo1 Vo3 Vo4− R1 = Vo2 Vo3 Vo4−Vo1 R2 (1) 表 2 に示す。R2 を 1[kΩ]としたときの素子誤差は表 2 より ΔR = |R1 − R2| = 10.43[Ω]となった。3 章で求めた素子誤 差との差異は0.02[Ω]であり、1[kΩ]からの誤差は 0.002%で あった。これは測定精度として十分な値である。 5.まとめ ブレッドボード実測により、アンプがオフセット電圧を有し ていても提案測定法により素子誤差が求められることを明ら かにした。 参考文献 [1] 和保孝夫・安田彰(監訳) : “∆Σ型アナログ/デジタル 変換器入門”,丸善株式会社(2007) 図 1 素子誤差の判別回路 表 1 スイッチに対する出力 抵抗の設定値は 1[kΩ]である。このときの相対的な誤差を 表 1 から求める。測定結果がVo1 = 2.5246[V] Vo2 = 1.5165[V] Vo3 = 1.506[V] Vo4 = 0.4975[V]であった ので、R2 を 1[kΩ]としたときΔR = |R1 − R2| = 10.41[Ω]と なった。直接に抵抗値を測定した結果、R1=1.0119[kΩ]、 R2 = 1.0015[kΩ]であり、ΔR = 10.4[Ω]であった。これより この手法で素子誤差を 0.001%で検出できることがわかっ た。 4.電流加算型 DAC ∆Σ型 D/A 変換器の回路構成を図 2 に示す。∆Σ型 D/A 変換器の電流加算型 DAC における素子相対誤差を前述 の判別方法を応用して求める。電流加算型 DAC は図 1 の 回路にアンプを付けたものである。R1 の電圧をVR1 、R2 の 電圧をVR2 としたときの出力 Vout は式(2)より算出することが できる。 Vout = −R1RfVR2 −R2RfVR1 +(R1R2+R1Rf+R2Rf)V3 R1R2 (2) 図 2 ∆Σ型 D/A 変換器 この出力は理想的なものであり、実際の測定結果にはアン プにオフセット電圧がある。オフセット電圧を αとしたとき Vout = Vout + α と な る 。 出 力 を 表 1 の よ う に 表 す と Vo4 − Vo3 = (V1−V2)R2Rf R1R2 、 Vo4 − Vo2 = (V1−V2)R1Rf R1R2 表 2 電流加算型 DAC の測定結果 となり、 オフセット電圧αを消去することができる。これより R1、R2 の関係は式(3)と簡単な式となる。 Vo4−Vo2 R1 = Vo4−Vo3 R2 (3) 式(3)より抵抗を出力の結果のみで求められることがわかる。 ブレッドボードで作成した電流加算型 DAC の測定結果を -9- Copyright © 2014 IEICE