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研究発表会スライド

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研究発表会スライド
グローバルCOEプログラム(2007-2011年度)を中心とした研究成果
乾燥地におけるリサイクル資材を
用いた野菜栽培のための省力型
定水位節水技術
Water-saving technique with constant head for vegetable cultivation
using recycled materials in drylands
乾燥地研究センター 井上光弘
Mitsuhiro Inoue
(Arid Land Research Center, Tottori University)
研究の背景
西暦
人口
1960
30.4億
1970
36.1億
1980
44.5億
1990
52.8億
2000
60.8億
2010
68.7億
世界人口は2011年10月に70億人になった。
1960年と2010年を比較すると,この50年に
人口は30.4億から68.7億人に,2.26倍に増
加し,一方,コメとコムギの生産量は,それぞ
れ,1.51から4.51億tonに3倍,2.33から6.81
億tonに2.9倍,増加し,2010年の自給率は
101.3%, 101.5%である。
下図の単位収量の増加は,品種改良,化
学肥料の投入,灌漑の導入による。
西暦 (年)
西暦
コメの生産量
1960
1.51 億 ton
1970
2.13
1980
2.70
1990
3.51
2000
3.99
2010
4.51
西暦 (年)
(伊東正一:「世界の食料統計」より)
西暦 コムギの生産量
1960
2.33 億 ton
1970
3.07
1980
4.36
1990
5.89
2000
5.83
2010
6.81
西暦 (年)
食糧と飢餓
1960年から2010年の50年間に,人口は約2.3倍に増加,穀類は生産と消費がともに3倍に
増加した結果,自給率は100%を超え,食糧は全体としては不足していないが,飢餓に直
面している地域が多い。
インド,中国,パキスタン,アフリカ諸国の人口増加は著しく,中国は2005年に穀類の輸入
国になったことに注目したい。特に,アフリカは飢餓におびやかされている国が多い。
タジギスタン
モンゴル
朝鮮民主主義
人民共和国
ニジェール
セナガル
バングラデシュ
シェラレオネ
イエーメン
リベリア
エチオピア
カンボジア
エリトリア
ケニア
ベナントーゴ
タンザニア
チャド
エルトリア
中央アフリカ
マラウイ
コンゴ
ジンバブエ
アンゴラ
世界102国の発展途上国における全人口に対する
栄養不足の割合を表した分布図 (2004-2006年の
統計データに基づく)
(出展: The State of Food Insecurity in the World, FAO , 2009 )
ボツワナ
ザンビア
マダガスカル
2011年10月15日発行
先進国の余剰がうみだす飢餓という名の人災
灌漑面積と水需要の急激な増加傾向
灌漑による作物収量の効果
種
類
灌漑地(A)
非灌漑地(B)
収量比(A/B)
482
508
459
672
957
1,187
512
2.45
2.27
3.06
1.61
1.18
2.35
1.14
1,182
1,153
1,404
1,080
1,133
2,784
586
コムギ
オオムギ
ミレット
ソルガム
ワタ
アルファルファ
豆類
(kg/ha)
灌漑の導入によって,作物の収量は
2倍程度,期待され,今世紀になって,
世界の灌漑面積は急激に増加した。
世界の灌漑面積は,耕地面積の
17%を占め,世界の食糧の約40%に
相当する生産量を確保している。
1900年からこの100年間に,世界の
水需要は9倍に増加し,その70%が農
業用水が占めている。
(出展: 「乾燥地における作物生産」 )
全世界の水需要 km3/年
6000
5000
総量
農業用水
工業用水
生活用水
4800
4000
3600
3000
2400
2000
1200
1000
00
1900
1920
1940
1960
1980
2000
西暦
(出展
乾燥地・半乾燥地の節水灌漑)
(出展: 家の光協会 「水不足が世界を脅かす」)
エジプトの事例
JST-JICA地球規模課題対応科学技術事業
ナイル川上流にアスワンハイダムが完成し,従来発生したナイル川の氾濫
を抑え,80万haの農地を開発し,年間常時,灌漑農業が可能になった。
砂質土壌の農地開発
バイオ燃料ジャト
ロファ栽培の開始
人口が8000万人を超え,さらに農地が必要で,砂質土壌ま
でも農地が開発されている。また,ナイルデルタ地帯では,
伝統的なサキアが消滅し,揚水ポンプが活躍している。
(出展
世界の灌漑と排水)
液体燃料の消費動向と石油寿命の予測
(出展: 図解バイオディゼル最前線)
畜力水車灌漑 (サキヤによる揚水)
灌漑設備にディゼルエンジン
を使用し,エネルギーの確保
が重要な課題になっている。
液体燃料の消費動向と石油
寿命の予測から,液体燃料
の高騰,燃料作物の増大の
必要性が理解できよう。節水
が重要なポイントになる。
動力エンジン付サキアによる揚水
移動式揚水ポンプ
(写真:
杉田倫明
写真:
井上光弘)
食糧と水
ヴァーチャルウォータの概念を導入すると,日本は世界でも有数の水輸入国である。
日本の食糧自給率はカロリーベースで40%,飼料用の穀類を含むと穀類全体の自給率は
約28%である。つまり,カロリベースで60%,穀類は70%以上を海外に依存している。輸入
農作物に必要な水に換算すると,年間640億トンの水を輸入し,国内の灌漑用水の590億
トンを超えている。
アメリカ389億トンの水
Stockholm Environment Institute,Comprehensive
Assessment of the Fresh-water Resources of the World,1997
2011年3月22日にオタワで開催されたCanada Water Network (CWN)の国際会議では,
今後20年以内に世界の水需要が供給を40%上昇し,世界人口の1/3が,必要水量の半分
を確保できなくなると予想し,生産に必要な水量を節約することが提案された。
例えば,国民が肉を多く食べるように食生活が変化した。牛が牧草を食べる。その牧草
を育てるために水が必要だと考えると,牛肉1kgを生産するために,30000リットルの水が
必要になる。これがヴァーチャルウォータの概念である。
これらの有効な解決法は,節食,節水である,あらゆる資源の節約がポイントである。
砂質土壌の特徴
エジプトの事例でも,デルタ地帯の周辺で,砂質土壌の農地化が進んでいる。
農業開発に適した土地が少なくなり,未熟土の
砂質土壌も農地として利用されてきた。
圃場容水量と生長阻害水分点との間にある
有効水分量は,根群域内に保たれるので,
植物にとって利用しやすい。
土壌水分圧力水頭 h [cm]
100
(出展: 「いい環境」をハイテクでつくる ③ ゆたかな森をつくりだせ)
90
80
マサ土
砂丘砂
70
60
50
40
30
20
10
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
土壌水分量 
砂丘砂とマサ土の土壌水分保持曲線
砂質土壌は保水性と保肥力が乏しい。
砂質土壌は他の土壌と比較すると,有効水分量
が少なく,土壌水の乾燥過程と排水過程との間
に大きなヒステリシスがあり,栽培期間の土壌水
分管理は容易ではない。
点滴灌漑と土壌条件
土壌面
粘土
土壌面
ローム
砂
粘土,ローム,砂の場合,点滴灌漑による浸潤パターンが
異なり,砂は土壌深部への浸透損失が大きい。
( Picture from ‘FAO Development Series 2’ )
砂質土壌で作物
栽培を行う場合,
灌漑直後の水が
根群域から降下
浸透するので,多
くの灌漑用水が
必要になり,養分
の流亡もある。そ
こで,シルトや粘
土の客土が有効
な土壌改良法と
なる。
鳥取県淀江で採取され
た土壌モノリス,海岸に
近い砂質土壌にベントナ
イトによる漏水防止対策
が実施され,水田として
使用されている。
(写真:
降水量
53.4mm/81d
日平均灌漑水量
3.8 mm/day
蒸発散量
1.2mm/day
砂区
井上光弘)
蒸発散量
4.3mm/day
シルト客土区
日平均排水量 日平均排水量
3 mm/day
0.2mm/day
ベントナイト
の客土層
農業環境技術研究所農業環境インベントリー
センター(鳥取農試,鳥取大学)
収量 93 kg/10a 収量 195 kg/10a
水適用効率 32.7%
95.5%
種々の灌漑法と水利用効率
灌漑法には,種々の方法が
あり,ボーダー灌漑,畦間
灌漑,センターピポット灌漑,
スプリンクラー灌漑,点滴灌
漑の順に,水利用効率は高
くなり,その反面,施設経費
は高くなる。
サイホンを用いた畦間灌漑
散水(スプリンクラー)灌漑
センターピポット灌漑
過剰な灌漑による地下水の枯渇
地表(ボーダー)灌漑
(出展
世界の灌漑と排水)
野菜畑の点滴灌漑
センターピポット灌漑は直径が約
800mの円形移動式の散水装置
で。地下水を汲み上げて灌漑す
る。近年,米国中央部のオガララ
帯水層の地下水が枯渇して,問
題になっている。
砂質土壌では,点滴灌漑や地中灌漑が節水灌漑として重要となる。
究極の節水節肥型灌漑法の確立
これまで,節水栽培技術として,土壌水分計と自動灌漑システムの開発,砂ベッド栽培,保水剤の混
入効果,地中灌漑の適用の研究を行ってきた。 野菜栽培に適した壌土と比較して,砂質土壌は,灌
漑後の透水性が高いことから,保水性や保肥力に乏しく,栽培に多くの水や肥料が必要とされてきた。
しかし,点滴灌漑による水管理や施肥管理を適切に行うことによって,逆に砂の排水性が高いという
特徴を生かすことができた。
水切りなどによる糖度の増加,
リーチングによる連作の可能性,
水分制御による収量と品質の増加
などの事象がその良い例である。
(写真:
井上光弘)
砂ベッド栽培および砂地の野菜栽培で,自動灌漑のために埋設型感圧センサーを採用し,
これまで困難であるとされてきた砂の土壌水分状態を正確に制御できるようになったこと,
定水位毛管給水による野菜栽培システムの構築など新しい技術パッケージの開発がポ
イントである。
作物が消費する水と養分だけを,地中から供給する究極の節水節肥型灌漑法の確立は,
地下水への汚染問題も少なく,持続的農業技術の開発のために,ひとつの新しい知恵
井上光弘:土壌水分制御による高品質化をめざした砂地野菜栽培技術, 日本砂丘学会誌55(2):103-108 (2008)
リサイクル資材の節水灌漑への利用
商品名は
リーキーパイプ
シーパーホース
養殖用エアーホース
車の廃タイヤは再利用できないのか?
ポーラスチューブ
など多く市販されている。
原型利用(ベンチ,ブランコ,境界材など)
熱利用(発電用燃料,大型ボイラの燃料)
加工利用(歩道舗装材,ゴムシートなど)
ゴルフ場のチューブ自動埋設器
(写真:
井上光弘)
ゴム製多孔質浸潤型
地中灌漑ホース
(出展:ユニホース)
リサイクル資材の節水灌漑への利用
地中灌漑として,アメリカのカリフォルニアで1991年に24ha,1993
年に81ha(トマト栽培),埋設間隔152cm,埋設深さ46cmで,潅水
と液肥に利用。散水灌漑737mm/y に対して 445mm/y の灌水量
で節水効果あり。
(出展:The Furrow Southern Edition Summer 1993)
秋田県の農家で 200m2(ホーレンソウ),埋設間隔90cm,埋設深
25-30cm,潅水と液肥に利用。生育初期に欠株率が低く収量が
46%増加,生育が揃いすべてA品質,液肥で葉色向上効果あり。
(出展:野菜園芸技術 1993.4)
長野県の農家で,4600m2(カーネーション),埋設間隔50cm,埋設
深5cm,潅水と液肥に利用。従来の手潅水と比較して液肥も可能
で労働時間が短縮,土壌が固くならず,病気も少ない。
(出展:全国カーネーション大会 1994)
埼玉県の農家で,2700m2(トマト),埋設間隔90cm,埋設深20cm,
潅水と液肥に利用。潅水作業が大幅に省力化され,生育が均一。
(出展:現代農業 1993.9)
1990年代にゴム製浸潤型地中灌漑の技術は日本でも普及した。省力化と地中灌漑の特
(出展:日本酸素との共同研究報告書, 1995)
徴である病害が少ないという共通した利点を有する。
リサイクル資材の節水灌漑への利用
飲料用ガラスは再利用できないのか?
(写真:
井上光弘)
ガラス発泡体の用途:
水質浄化材,屋上緑化材,軽量盛土材
排水地盤改良材,防犯ジャリなど
原型利用(ビール瓶,酒一升瓶など)
加工利用(ガラス,建材など)
(写真:
井上光弘)
リサイクル資材の節水灌漑への利用
家庭から廃棄された飲料用ガラスをリサイクルした浸透抑制土壌改良材(商品名:ポーラス
α)と,廃タイヤのリサイクルから生まれたゴム製多孔質浸潤型地中灌漑ホース(商品名:
ポーラスチューブ)を再資源化資材として用い,将来の環境にやさしい生態保全型の持続的
農業のために,砂質土壌における節水型野菜栽培技術の開発研究を紹介する。
商品名:ポーラスα
飲料用ガラス瓶
ガラスカレット
発泡ガラス
浸透抑制
土壌改良材
商品名:ポーラスチューブ
廃棄されたタイヤ
ゴム製多孔質管
ハウス内実験
地中灌漑システム
アフリカの実験
(写真:
井上光弘)
節水灌漑の実証試験 (点滴灌漑と浸透抑制層)
ビニルハウス内の砂地圃場で,塩ビ製の円筒に,深さ20cmに,ポーラスαの厚さ2cm埋設
区,厚さ5cm埋設区,浸透抑制層のない対照区を設け,フダンソウ(ホウレンソウ科)を栽
培した。同一灌漑水量,同一施肥量の条件で,厚さ2cmのポーラスαを埋設した場合,対照
10.0
区の約3倍の収量があった。
16.0
b
8.0
6.0
8.0
4.0
a
4.0
2.0
0.0
0.0
Control Control
対照区
PorousAlpha(2cm)
 (2cm)
Porous
PorousAlpha(5cm)
 (5cm)
Porous
透水抑制層(2cm)
透水抑制層(5cm)
各試験区のフダンソウの収量(新鮮重)
対照区
2008年4月20日に播種
(乾燥地研究センター・
ビニルハウス)
(写真:
井上光弘)
水利用効率
bc
12.0
-1
新鮮重(Mg/ha)
Fresh yield (Mg ha )
Fresh yield
砂区
透水抑制層(2cm)
透水抑制層(5cm)
対照区
0.14
播種後1ヶ月の状況
3
-3
Water content (cm cm )
土壌水分量
0.12
100mL 土壌採集
WC
0.10
0.08
圃場容水量(0.078)
0.06
0.04
0.02
0.00
Control
対照区
PorousAlpha(2cm)
透水抑制層(2cm)
PorousAlpha(5cm)
透水抑制層(5cm)
収穫後,各処理区の深さ15cmにおける土壌水分量
(写真:
井上光弘)
究極の節水灌漑法の確立
(点滴から地中灌漑へ)
目詰まりの問題
点滴灌漑は潅水後に土壌面が湿り,
蒸発による損失と,塩類集積が問題
ゴム製浸潤型地中ホースは,多
孔質で目詰まりが少ない
土壌面
粘土
地中灌漑は点滴灌漑よ
りも,土壌面からの蒸発
が少ないが,砂の場合,
深部浸透損失が生じる。
土壌面
ローム
砂
粘土,ローム,砂の場合,点滴灌漑による浸潤パターンが
異なり,砂が深部への浸透損失が大きい。
( Picture from ‘FAO Development Series 2’ )
地中灌漑ホースの下方
へ浸透抑制層を設置す
れば,深部への浸透損
失を軽減でき,根群域
の保水性を高めること
ができる。
節水灌漑の実証試験 (散水 / 地中灌漑と浸透抑制層)
砂質土壌の上に,粉末状のポーラスαを敷いて,ジョロで散水すると,ポーラスαは,容易に
固まるという特徴がある。砂よりも透水性が低いので浸透抑制効果があり,散水後の水が
根群域に貯留され,土層全体の保水性を高める効果がある。地中灌漑と散水灌漑の比較
を行い,野菜栽培試験と,土壌中の水分量をモニタリングする。
厚さ10cm礫埋設区
厚さ2cmポーラスα埋設区
礫珪砂1号の飽和透水係数
3.7×10-0 cm/s
ポーラスαの飽和透水係数
2.1×10-3 cm/s
幅70cm長さ360cm深さ30cmの試験区
砂の飽和透水係数
2.0×10-2 cm/s
珪砂は花崗岩や珪岩が風化し粒状になったもの
(写真:
井上光弘)
地中灌漑区
節水灌漑の実証試験 (散水 / 地中灌漑と浸透抑制層)
体積含水率(cm3/cm3)
深 さ 20cm に 厚 さ
2cmのポーラスα,厚
さ 10cm の 礫 を 埋 設
し た 。 深 さ 5cm に ゴ
ム製浸潤型地中灌
漑ホースを埋設し,
2008年9月26日にミ
ズナ(商品名:京み
ぞ れ ) を 播 種 し , 10
月21日に間引き,11
月2日に収穫した。
0
0.05
0.1
0.15
収量(kg/m2 )
5
深さ(cm)
10
15
0.00
砂のみの区
20
礫埋設区
砂のみの区
30
P区
0
2008/9/27
5cm
ポーラスアルファ層2cm
0.1
0.08
P-5
P-10
P-15
P-24
0.02
地中灌漑区
20cm
0.12
0.04
24cm
S区
土壌水分量
ポーラスアルファ層2cm
礫埋設区
0.14
0.06
15cm
ポーラスα埋設区
ポーラスα埋設区の収量と礫
埋設区の収量は、砂のみの
区に比べ
ポーラスα埋設区
25
0.08
10cm
0.30
0.10
土壌水分量
水分センサー
埋設深
0.40
0.20
0.1
5cm
0.60
0.50
0.12
20cm
0.2
0
0.14
散水区
0.70
2008/9/29
2008/10/1
2008/10/3
時間 (日)
2008/10/5
S-5
S-10
S-15
S-24
0.06
0.04
0.02
0
2008/9/27
2008/9/29
2008/10/1
2008/10/3
2008/10/5
時間 (日)
散水区で比較した結果,ポーラスα埋設区は,ポーラスα上部の根群域土
壌水分量(深さ5, 10cm)が高くなった。(生育促進効果)
(写真:
井上光弘)
節水灌漑の実証試験 (地中灌漑と浸透抑制層)
(写真:
各区の深さ15cmに土壌水分計
(SM200, Delta-T) を埋設し,トマト栽
培期間中の土壌水分量の変化を自動
記録し,2009年8月15日に収穫した。
0.83 kg m-2
1.54 kg m-2
2.0
1.5
1.0
5cm
30cm
0.20
15cm
水分計
0.18
体積含水率(cm3 /cm3 )
2
-2
トマトの収量
(kg/m
Tomato yield (kg
m )) )
2.5
井上光弘)
地表面
砂のみの区
0.16
ポーラスα埋設区
0.14
礫埋設区
0.12
0.10
0.08
0.06
0.04
0.02
0.5
0.00
4月10日
0.0
Control
対照区
Porousa
ポーラスα区
4月30日
5月20日
月日
6月9日
深さ15cmの土壌水分量の推移
海外での実証試験 (地中灌漑と浸透抑制層)
研究の背景と方向
モーリタニアの食事
モーリタニアの砂地地中灌漑圃場
新鮮な野菜が
食事に必要だ。
モーリタニアのトマト栽培試験圃場
ポーラスαの有無
で生育量は異な
るか?
チェニジアの食事
ポーラスαの施工は
簡単か?
地中灌漑
シリアの食事
ポーラスαの上部と下部で,土壌水分量の経時
変化を測定することによって、ポーラスアルファ
による浸透抑制効果があったか?
ポーラスαを通過した
灌漑水の水質は問題
ないか?
乾燥地では節水は
重要なキーポイント
(写真:
井上光弘)
次世代・地域資源産業育成事業
海外実証試験
Islamic Republic of Mauritania
Landscape and
precipitation in
Mauritania
次世代・地域資源産業育成事業
海外事例
モーリタニア科学技術研究所の6m×5mの実験区に,深さ30cmに厚さ2cm
のポーラスαを埋設した試験区と未処理試験区を設け,トマトを2008年11月7
日に移植した。ポーラスαの上下,つまり深さ25cmと深さ35cmにデルタT社
の土壌水分センサーSM200を埋設し,灌漑期間の水分変化を記録した。
深さ25cm
0.100
土壌水分量
0.080
深さ35cm
ポーラスα試験区
0.060
0.040
未処理試験区
ポーラスα上下の土壌水分測定
00
0.020
27-Jan
1-Feb
6-Feb
11-Feb
時間 (日)
16-Feb
深さ25cmの土壌水分量の推移
ポーラスαの粉末を無風時に
散布して、シャワーで散水する
と固化する。
SM200,GP1の校正試験
未処理区
ポーラス区
ポーラスα上部の深度25cm土壌水分量は,未処理区より多く,生育も良かった。
(写真:
井上光弘)
21-Feb
テレビ廃ガラス
の利用
リサイクル資材に,飲料用ガラスの他に,テレビのブラウン管ガラス,
薄型テレビ用プラズマガラス,液晶ガラスを使用する実験を開始した。
その背景に,2009年に家電リサイクル法 (再商品化率が50%) が改正されて,薄型テレビ品目
が追加され,2014年には再商品化率が 60%になる予定で,電子情報技術産業協会は薄型テ
レビの廃棄台数を下図のように予測し、再資源化の必要性がますます増している。
国内薄型テレビの廃棄台数の予測
薄型テレビに占める物質の割合
8,000,000
2011年に,アナログ
からデジタルにテレビ
受信形態が変化
6,000,000
5,000,000
4,000,000
重量%
年間の廃棄台数
7,000,000
3,000,000
2,000,000
1,000,000
0
1995
2000
2005
2010 2015
年(西暦)
2020
2025
液晶テレビは2012年に50万台,2014年
に100万台を,また,プラズマデスプレイ
は2008年に1.3万台,2015年に50万台
を超える台数が廃棄されると予想される。
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
その他
その他のプラスチック
汎用プラスチック
プリント基板
ガラス
金属
プラズマテレビ
1
39kg / 台
液晶テレビ
2
12.8 kg / 台
わが国では2011年に,アナログからデジタル
にテレビ受信形態が変化し,これに伴って多く
の廃棄が予想されることも重要な要因である。
資源の有効利用が重要で,リサイクル資材が砂質土壌の野菜栽培に利用できるか
が研究テーマで,乾燥地の実証試験に入っていて,一部,効果が認められている。
海外での実証試験 (地中灌漑と浸透抑制層)
次世代・地域資源産業育成事業
モーリタニア科学技術研究所の16m×16mの実験区に厚さ2cmの3種類の
ポーラスαを深さ30cmに埋設し,オクラを2009年6月14日に播種した。
プラズマガラス
16m
P3
ブラウン管ガラス
α3
飲料用ガラス
α2
P2
α3
0.120
4m
α1
P1
Control
Alph1
Alph2
Alph3
W2P3
W3P3
W4P3
W1P2
W2P2
W3P2
W4P2
W1P1
W2P1
W3P1
W4P1
W1Sand
W2Sand
W3Sand
W4Sand
16 m
土壌水分量
W1P3
W ater co n te n t (cm3 c m - 3 )
0.100
0.080
0.060
0.040
0.020
地中灌漑ホースの埋設
とオクラの播種作業
0.000
14-Jun
17-Jun
20-Jun
23-Jun
26-Jun
29-Jun
2-Jul
時間
(日)
Time (day)
6月14日から30日の深さ15cmの土壌水分量の推移
収穫は9月14日で,土壌水分量をモニタリングした。同じ灌漑水量の条件で、6月に測定
した深さ15cmの土壌水分量の推移をみると、これまでの実験と同様に未処理区よりも
ポーラスα区の方が,水分量が高い傾向が認められた。
(写真:
井上光弘)
海外での実証試験 (地中灌漑と浸透抑制層)
次世代・地域資源産業育成事業
乾燥地のオクラ生産量は世界平均(6400kg/ha),
ナイジェリア生産量2600kg/haよりも少ない。異な
るポーラスα区の生産量の差はなく,未処理と比
べて,わずかに収量は増加した。
2009年7月15日のオクラの生育状況
ポーラスα区の収量
未処理区の収量
606g / (4m x 0.4m
x 3 lines) = 1262.5
kg / ha
349g / (4m x 0.4m
x 3 lines) = 727.08
kg / ha
Until 12 Sep.2009
Until 12 Sep. 2009
(写真:
収量は植栽間隔,気候,栽培技術によって異なるが,土壌浸透抑制
層によって,1.7倍の生産量の増加を確認した。
井上光弘)
農業生産の基本は: 安心,安全,安価,安定
農業は人類が生きるために必要で,将来の生態環境に安心,食の安全,
購入する農業資材の安価,生産物売値の安定が重要である。
土壌改良材は安全か?
廃ガラスのリサイクル資材の試験から
1. ポーラスαは,土壌表面に散布してジョロで散
水すると固化するので、施工が容易である。
樹皮,人工ゼオライ
トなどの保水材は
均等に混合するこ
とが困難
2. 種々の栽培条件(フダンソウ、トマト、オクラな
ど)の下で灌漑実験を行った結果,ポーラスα
の存在は,根群域内の土壌水をより多く保つ
機能があり,生育状況も良好である。
(写真:
井上光弘)
ワラマルチが有効
3. この方法は,将来的に乾燥地でも持続可能な
節水型野菜栽培技術で,廃ガラスと廃タイヤ
のリサイクルを可能としたもので,新しい方法
として期待できる。
地中灌漑は少量
頻繁灌漑が有効
ポーラスαは設置が
簡単で,土壌浸透抑
制効果あり。
すべてのリサイクル資材を農業に使用する場合には,化学
的に有害なものがないことを確認することが重要
砂とポーラスαの理化学的基礎データ
厚さ2cmと5cmの溶出実験
1回目の実験
電気伝導度 (dS m -1)
対照区
厚さ2cm区
厚さ5cm区
ポーラスαを105度の乾燥器
に48時間,乾燥後に2回目
の溶出実験を行った。
pH
乾燥と湿潤
2回目の実験
ポーラスαの溶出液は,厚さが
大きいほど,新しいほど,電気
伝導度が高いが,時間ととも
に低くなる。pHも中性に近づく。
時間(日)
図
時間(日)
溶出液の電気伝導度とpH値の推移(写真:
井上光弘)
Saving water using sub-irrigation water
in sandy soil by barrier of porous  layer
The International Conference on Water Conservation in Arid
From Oct. 11 to Oct. 14, 2009, Jeddah Saudi Arabia
Inoue, M. and Ould Ahmed, B.A.
究極の節水灌漑法の確立
農業生産の基本は: 安心,安全,安価,安定
新鮮な野菜が
食事に必要だ。
モーリタニアのトマト栽培試験圃場
モーリタニアの食事
モーリタニアの砂地地中灌漑圃場
農業は人類が生きるために必要で,将来の生態環境に
安心,食の安全,購入する農業資材の安価,生産物売値
の安定が重要である。
今後の展望
チェニジアの食事
1. リサイクル資材は,耐久性があり,安全。
2. 砂質圃場に適用する場合,施工が容易で,できるだけ
均等に施用できること。
3. 長期的にみて,経済的に安価。
4. リサイクルの原料は,その地域で入手でき安価。
シリアの食事
乾燥地では節水は
重要なキーポイント
5. 栽培する野菜は,その地域で必要とされ,安全。
などが重要であると考える。
(写真:
井上光弘)
JST-JICA地球規模課題対応科学技術事業
プロジェクト「ナイル流域における食糧・燃料の持続的生産」に参加
プロジェクトの目的:
1) アスワンハイダムが水資源を制御してから,水の収支,効率,
持続性の立場から,ナイルデルタの灌漑農業を評価する。
2) 水資源を砂漠の新開拓地に割り当てる場合,ナイルデルタ
の農業用水の減少による影響を推定する。
3) デルタ内の効率的,持続的な農業のために,集約的な方法
と政策を展開し推奨すること。
規定の灌漑水使用の条件で,土壌の肥沃度の変化,塩と汚染
の集積に関して,数値解析に基づいて,適切な灌漑管理法と肥
培管理法を提案する。
Nile Delta
アスワンハイダムによって洪水を排除する
ようになった後のエジプト農業の持続性を
評価するとともに、農民参加型用水管理、
水消費の節減、塩類集積の防止に取り組
み,デルタ地域と周辺砂漠を含めた効率
的で持続可能な食糧・バイオ燃料生産シ
ステムの構築を提言する。
(10 Dec. 2009)
海外調査
JST-JICA地球規模課題対応科学技術事業
Soil Sampling
(写真:
井上光弘)
23 Nov. 2008
EC=0.96 dS/m
Volumetric water content = 0.57 cm3/cm3
End of Bahr Tira irrigation canal
用水路よりも排水路の方が,塩分濃度が高く,
水質は悪い。ナイルデルタはシルト質土壌。
EC=1.6 dS/m
EC=4.6 dS/m
Soil Sampling
(写真:
井上光弘)
海外調査
点滴灌漑下のトウモロコシ畑の土壌採取
JST-JICA地球規模課題対応科学技術事業
Ismailia farmer’s field
エジプト,イスマイリア付近で,点滴灌漑下
の砂質土壌に塩類集積が認められる。
Drainage canal
(写真:
井上光弘)
Strawberry field under drip irrigation with vinyl mulching
(nice production using Ismailia canal water)
Drainage water
Irrigation pump
(19 Nov. 2009)
Irrigation water quality (EC=2.5 dS/m)
Irrigation water
廃水や農業排水を灌漑水に,
液体燃料作物として,ヤトロ
ファ,ヒマなどを栽培する。
海外調査
JST-JICA地球規模課題対応科学技術事業
砂質土壌で,ヤトロファ,グアバ,ナツメヤシの比較栽培
26Nov2008
Jetropha under three irrigation types (3 dS/m)
Guava tree under drip irrigation (0.8 dS/m)
Irrigation pump using Diesel electric power
(写真:
井上光弘)
Irrigation pump using solar energy
Wadi EL Natroun experimental station
太陽光発電を活用して,灌漑制御システムを稼働
(写真:
井上光弘)
ものづくり中小企業製品開発等支援(実証等支援事業)
海外調査
Morocco 29March-6April 2010
By Train
(9.5 hr)
By Car
(6 hr)
By Train
(5.5hr)
By Bus
(5.5 hr)
By Car
(12 hr)
ものづくり中小企業製品開発等支援(実証等支援事業)
海外調査
海外での実証試験 (地中灌漑と浸透抑制層) モロッコ
点滴灌漑と地中灌漑の比較
サボテン栽培,椰子栽培への地中灌漑の適用
施設園芸
パッドアンドファン方式による冷却ハウス
(写真:
井上光弘)
海外実証試験
ものづくり中小企業製品開発等支援(実証等支援事業)
Republic of Kenya
ナイロビ
実験は,ケニア共和国ナイロビから南東へ77km,
ケニア農業研究所カトマニ研究センターで行った。
SE direction 77km from Nirobi (KARI
Jiro Nozaka
Katumani Research Center, Machakos)
気象ステーション
(写真:
井上光弘)
Africa 21ST Century Dev. Organization
Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology
Kenya Agricultural Research Institute
Arid Land Research Center, Tottori University
水源の確保(貯水タンク)
(写真:
井上光弘)
Project members of Tottori University visited in
dry season on 7-10 July, 20-31 July, and 20-26
Sep., 2010. for field experiments.
海外実証試験
Seeding on 8 July 2010
ものづくり中小企業製品開発等支援(実証等支援事業)
Republic of Kenya
KARI Katumani Research Center
2010年7月8日に200穴セルトレーにフダンソウ(品
種:Spinach Fordhook Giant)を播種し,7月27日に長
さ5.4m,幅60cmの5つの試験区にそれぞれ10aあた
りN,P,Kを15kg,15kg,10kgおよび山羊糞,藁を混
合した堆肥を20L施用し7月31日に移植した。
On 22 July, two weeks after seeding
地中灌漑は内径18mm外径25mmの
ゴム製ポーラスチューブを深さ5cmに
30cm間隔に埋設した。定水位装置は
ボールタップ方式を採用して,土壌面
から9cmの高さに水位を設定した。
土壌は砂78%,シルト
18%,粘土4%のロー
ム質砂に分類された。
5つの試験区は,(1) バケット地中灌漑,(2) 定水位地中灌漑,(3) ジョロによる手灌水,
(4)浸透抑制層を有する定水位地中灌漑,(5) ケニア式バケット点滴灌漑である。
08 July 2010
(写真:
井上光弘)
海外実証試験
ものづくり中小企業製品開発等支援(実証等支援事業)
Republic of Kenya
手灌水では市販の容積9Lのジョロを用いた。浸透抑制層は鳥取
再資源化研究所製のポーラスmを8袋(容積10L,重量5.5kg),
防草シート上に厚さ3cmに敷設した。
バケット点滴灌漑(エミッタ間隔30cm,ラテラルライン長5.4m間
隔30cm)は,容積19Lのバケツを高さ1.15mに設置した。地下
10cmの深さにデルタT社のSM200水分センサーを埋設した。
定水位装置
Harvest (20 Sep. 2010)
(写真:
井上光弘)
1バケット地中灌漑
Republic of Kenya
2定水位地中灌漑
3 ジョロによる
手灌水
4浸透抑制層を有す
る定水位地中灌漑
9月21日の収量調査の結果,地上部乾物重は,
(1)区23.5g/株,(2)区34.8g/株,(3)区8.6g/株,(4)
区36.6g/株,(5)区17.5g/株であった。乾物重を比
較した結果,同一施肥条件下で,ゴム製ポーラス
チューブを用いた地中灌漑試験区(2)区と再資源
化資材のポーラスmとゴム製ポーラスチューブを
用いた地中灌漑(4)区の収量が多いことがわかる。
Harvest on 21 September 2010
5ケニア式バケット
点滴灌漑
(写真:
45
井上光弘)
40
35
DW(g/plant)
海外実証試験
ものづくり中小企業製品開発等支援(実証等支援事業)
30
25
20
15
10
5
0
1
2
3
処理区
4
5
ものづくり中小企業製品開発等支援(実証等支援事業)
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
irrigation (mm/day)
irrigation (mm/day)
海外実証試験
40
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
Republic of Kenya
Plot (1),(5)
plot (2)
Plot (3)
plot (4)
40 50
60
70
day after seeding
Porous tube
Root
zone
Porous layer
定水位地中灌漑は半自動灌漑でタンクの毎日
の水位変化から灌漑水量を計算した。播種後60
日後ごろから半自動灌漑水量が増加傾向に
あった。これは草丈が少しずつ大きくなり,根に
よる吸水が大きくなり,それに伴って地中灌漑
チューブから多くの水が供給された結果である。
つまり,土壌の乾燥状況,植物の根の吸引に応
じて,半自動的に灌漑されることが本システムの
特徴である。
80
播種後45日目から9月21日の収穫(播種後75
日目)までの30日間を対象に,その間に供給し
た灌漑水量と乾物重を用いて,水利用効率を推
定した。30日間の総灌漑水量は(1)区181.7mm,
(2)区131.7mm,(3)区86.2mm,(4)区111.7mm,
(5)区181.7mmで,これが540cm×60cmの試
験区の根圏に均等に供給されたと想定し,さら
に試験区は測定した10サンプルの平均乾物重
のケニアホウレンソウが均一に35本生育してい
るとすると,水利用効率が計算できる。
海外実証試験
Republic of Kenya
ものづくり中小企業製品開発等支援(実証等支援事業)
水利用効率は,(1)区1.40 g/L,(2)区2.85 g/L,
(3)区1.08 g/L,(4)区3.54 g/L,(5)区1.04 g/L
であった。水利用効率を比較した結果,同一
施肥条件下で,ゴム製ポーラスチューブを用
いた地中灌漑試験区(2)は収量が多かった。
同じバケット灌漑の条件で比較すると,バケッ
ト地中灌漑(1)区が1.40 g/L,ケニア式バケット
点滴灌漑(5)区の1.04 g/Lであることから,地
中灌漑区が水利用効率が高かった。
同じ地中灌漑で定水位で半自動的に灌漑した(2)区と(4)区を比較すると,再資源化資材の
ポーラスmとゴム製ポーラスチューブを用いた地中灌漑(4)区3.54 g/Lが,ゴム製ポーラス
チューブを用いた地中灌漑(2)区2.85 g/Lよりも大きく節水効果が認められた。すなわち,土
壌浸透制御層が節水に大きな役割を示したことを確認できた。バケット方式の(1)区と(5)区,
ならびに点滴灌漑の(5)区よりも地中灌漑の(1)区の方が乾物重,水利用効率ともに大きく,
ゴム製ポーラスチューブの地中灌漑の効果を確認した。
海外実証試験
Republic of Kenya
ものづくり中小企業製品開発等支援(実証等支援事業)
ケニアの試験土壌はローム質砂土で砂質土壌である。バケット方式を用いた場合,点滴灌漑よりも
地中灌漑の方が節水になり,ゴム製ポーラスチューブの地中灌漑がさらに節水灌漑として有効であ
り,今後の活用の道を開いた。この方法は乾燥地で持続可能な節水型野菜栽培技術でリサイクル
資材を採用した灌漑システムの有効性を評価したもので新しい野菜栽培技術として期待できよう。
ポーラスチューブ
ポーラスレイヤの必要性
根群域
ポーラスレイヤによって,浸潤フ
ラックスを減少させる効果
ポーラスレイヤ上部の根群域内
への集水(Water harvest)効果
塩分を含む地下水の上昇流を制
御するキャピラリバリアの役割
ポーラスレイヤ
役割
地下水
リサイクル資材を用いた砂質土壌の節水型持続灌漑システムの構築
廃棄された飲料用瓶からリサイク
ルされた防犯ジャリを,砂地の土
壌浸透抑制層として利用する。
廃棄された古タイヤからリサイク
ルされた養殖用散気ホースを,
クーゼ灌漑の素焼きのように地
中灌漑に応用する。
水位一定装置
古代クーゼ灌漑
水源
素焼き貯水
槽の役割
養殖用散気ホース
根群域
維持費のかからないボールタップ方式で水位を
一定に保つ。低い水頭(10cm程度)の状態で作
物の根による吸引力と土壌の吸引力に応じて,
自動的に灌漑水が供給される。自分で灌漑水
量を決める必要がなく,水やりが簡単で,より節
水になる水管理システムで,収量も多い。
ケニヤの実証試験で有効性を証明した。
土壌浸透抑制層
塩分上昇遮断層
砂質土壌
地下水
古代古墳の知恵
キャピラリバ
リアの役割
鳥取砂丘で生まれた先端環境技術で砂漠を緑に − 廃ガラス瓶と廃タイヤを用いた節水栽培技術が砂漠を救う −
発砲ガラス層と素焼き貯水槽の役割
Kuzeh irrigation
foam glass
control
with the foam glass layer
(写真:
井上光弘)
素焼き貯水槽(クーゼ)の下に,発泡ガラス(ポーラスm)を2cm埋設した。野菜栽培の生育調査から,
浸透抑制層の効果を確認した。また,素焼き貯水槽(クーゼ)に近いほど,生育が良いことがわかった。
キャピラリバリヤ(廃ガラス層)の役割
雨季の集水と地下水涵養,排水不良地の改良
乾燥地・半乾燥地は雨季と乾季があり,雨季の水を根群
域に集める降雨集水層として利用できる。豪雨などの過
剰な浸透水は廃ガラス層を通過して地下水涵養になる。
本システムに仮にバキューム装置を付随させると、排水
不良地や汚染地帯の地盤改良が可能になる。
特徴:雨季の水を根群域に集め,余分な水は地下水を涵
養し,適切な土壌水分環境を保つ土壌浸透抑制層
が重要な役割を果たす。
塩水の毛管上昇遮断による塩類集積防止
廃ガラスの層は,塩分を含む地下水の上昇を遮断する役
割を果たしている。
(写真:
井上光弘)
科学研究基盤(B):キャピラリーバリヤの効果
キャピラリバリヤによる根群域の保水性向上
体積含水率(cm3/cm3)
0
0.05
0.1
0.15
0
0.2
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0h
1h
2h
3h
4h
5h
6h
7h
8h
9h
10h
0
0
5
5
深さ(cm)
10
土壌浸透抑制層
10
15
20
25
15
礫埋設区
ポーラスα埋設区
20
砂のみの区
砂質土壌
30
25
体積含水率(cm3 /cm3 )
0.20
実験:
0.18
砂のみの区
0.16
ポーラスα埋設区
0.14
礫埋設区
0.12
0.10
0.08
0.06
0.04
0.02
2011年6月3日
0.00
4月10日
礫が砂質土壌の間にあると,キャピラリーバリヤーの
効果によって,上層の土壌水分が上昇し,小松菜の
有意な生育差が認められた。対照区の収穫は50%
以下であり,キャピラリバリヤによる根群域の保水性
向上が認められた。
4月30日
5月20日
月日
6月9日
2011年4月14日 小松菜播種 2011年5月19日 小松菜 移植
科学研究基盤(B):キャピラリーバリヤの効果
キャピラリバリヤによる塩水侵入防止
礫 と 廃ガラス粒
砂質土壌
毛管上昇高
毛管上昇
地下水
NaCl 3%
溶液
毛管遮断
実験:
2011年8月10日に「てごろ菜」を
播種し,NaCl3%の塩分を含む地
下水を深さ20cmに一定に維持し,
キャピラリバリヤとして,粒径6mm 2011年8月10日播種 2011年9月3日
の礫と廃ガラス粒を厚さ5cm層に
設置して,8月29日に移植した。そ
の結果,対照区は生育せず,廃ガ
ラス粒の区は収穫があり,キャピラ
リーバリヤによる塩水侵入防止の
2011年8月29日 移植 2011年9月15日
効果が認められた。
2011年9月15日
2011年9月27日収穫
てごろ菜
科学研究基盤(B):キャピラリーバリヤの効果
数値計算によるキャピラリバリアの評価
Plant
Drip tube
Sand
Glass bead
2012 土曜物理学会発表
乾燥地における節水灌漑,塩類集積の軽減に効果が
あるキャピラリバリア(毛管遮断層)の役割,つまり,
根群域の保水性向上と地下水からの塩水侵入阻止
について,室内実験の結果に基づいて現象を把握し,
これに対して数値計算によって土壌水分の挙動を再
現してキャピラリバリアの役割を評価した。
HYDRUS-1Dに使用した砂と礫のパラメータ
Sand
Material
(Unit)
θs
θr
cm3/cm3 cm3/cm3
α
n
cm-1
-
-
cm/nmin

Ks
Sand
0.4
0.002
0.076
4.5
2.2
3.12
Gravel
0.4
0.001
2.5
2.6
-0.1
204
Volumetric water content (cm3/cm3)
灌漑後のキャピラリバリアによる根群域の水分増加
キャピラリバリアによる毛管上昇遮断効果
2011年度 乾燥地研究センター共同研究(一般)
省力型定水位栽培技術(砂ベッド栽培)
従来の砂ベッド栽培に,廃棄された古タイヤからリサイ
クルした養殖地・設備用散気ホースをクーゼ灌漑の素
焼き瓶のように使用して地中灌漑の資材として使用した。
さらに,ひも灌漑に使用される不織布と防根シートを組
み合わせて,安定した野菜栽培を試みた。
気温と灌水量の日変化
40.0 気温と自動給水量(灌漑水量)の日変化
25.0 相関係数=0.52
60cm
平均気温
30.0 20.0 25.0 20.0 15.0 15.0 10.0 10.0 気温(℃)
気温(℃)
灌漑水量(L/d)
灌水量(L/日)
35.0 5.0 0.0 5.0 時間(日)
時間(日)
2010年
60cm
ひも灌漑の間隔が60cmの場合,ベッド内の
土壌水分分布は均等で,コマツナの生育は
良好であった。
(写真:井上光弘,2011.Nov.4)
学長裁量経費(教育・研究プロジェクト)「再資源化資材の利用と究極の節水栽培技術の開発」
省力型定水位栽培技術(養液栽培)
水位一定装置
給水タンク
特徴:
植物工場などの野菜栽培で、養液を循環させるエネル
ギーを節約できること。
水耕栽培への応用が確立されれば、培養液の使用量が極
端に少なくなり廃液処理問題が解決する。
維持費のかからないボールタップ
方式で水位を一定に保つ。作物
の根による吸引力に応じて,半自
動的に自分で灌漑水量を決める
必要がなく,水やりが簡単で,より
節水になる水管理システムで,収
量も多い。(完全無農薬栽培)
(写真:井上光弘,2011.Nov.4)
学長裁量経費(教育・研究プロジェクト)「再資源化資材の利用と究極の節水栽培技術の開発」
省力型定水位栽培技術(育苗)
防虫ネット
不織布
水源
水位一定装置
2011年10月17日に
サニーレタスを播種
2011年11月4日のサニーレタスの生育状況
種々の不織布毛管上昇実験
省力型定水位栽培技術(毛管給水砂ベッド栽培)
養液は毛管上昇で供給される。
2011年6月2日トマト
の生育状態
実験:
2011年5月24日にトマトを播種し,
6月27日に長さ120cm,幅60cm,
高さ7cmの砂ベッドに移植した。養
液は不織布による毛管作用で,気
象条件と作物の根の吸引力によっ
て自動的に給水される省力的定水
位栽培である。今回の実験では土
壌表面から10cmの位置に水位を
定めて,トマトの収穫を行った。
2011年10月25日トマト生育状況
2011年6月10日トマト
生育状態
2011年9月27日トマト収穫2個
乾燥地における持続可能な食糧生産を実現する自然エネルギー発電と節水灌漑
を融合した省資源型作物栽培技術パッケージの開発
○既設設備
P
・垂直軸風車
・太陽光発電
・気象観測装置(風向風速計、日射量計)
海水ポンプ
貯水タンク
バッテリー
電力供給の流れ
海水・灌漑水供給の流れ
○節水灌漑栽培システム
・地中灌漑
・点滴灌漑
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○灌漑水生成システム
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○小水力発電機
技術パッケージの概略図
本研究では、砂漠地域で農作物を持続的に生産する省資源型栽培システムの開発を
目的として、風力・太陽光などの自然エネルギーを活用した電力を供給する工学的手
法と、低塩分濃度の灌漑水による点滴灌漑や地中灌漑を利用して耐塩性の野菜や樹
木を栽培する農学的手法を融合した、節水灌漑栽培の技術パッケージを開発する。
食糧確保
乾燥地の経済的・持続的農業技術の発展
過剰な放牧
灌漑農業
過剰な開墾
過剰な耕作
地力の低下 土壌改良
塩類集積 脱塩処理
過剰な伐採
造林技術
土壌侵食
環境破壊
耐乾性作物の作出
地下水汚染
排水処理
連作障害
土壌管理
水資源の枯渇
人工造水
対策
生態系の環境保全,バランス(収支)の考え方
水管理
緑の革命
食糧増産
肥料の施用
農薬の投与
品種改良
灌漑の導入
栽培技術
節水農業
林業
飼育技術
灌漑技術
集水技術
自然エネルギの利用
過剰な灌漑
植被率の低下
天水農業
水食
風食
住民参加
牧畜農業
貧困と飢餓
緑化保全
砂漠化
人口増加
遊牧民の定住化
水資源の確保
国際的技術支援
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