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生き方が深まる日に (ごあいさつ)

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生き方が深まる日に (ごあいさつ)
生き方が深まる日に (ごあいさつ)
本 田 恭 子 (アースデイとやま 2016 実行委員長) 東日本大震災の深い傷跡が癒えない中、昨年秋には鬼怒川決壊による茨城県常陸市の浸水被害、さらに今
もなお余震が収束しない九州熊本の地震災害と、追い討ちをかけるように次々と災害がつづきます。被害に遭
われた多くの方々に、心からお見舞いを申し上げます。
○世界中が認識した、地球環境の危機的状況 地震と地球温暖化とは、その原因において無関係といわれます。しかし一旦地震が起こった地域では、宅
地開発や都市化による被害拡大、集中豪雨などの激しい気象による二次災害、そして原発事故による放射能被
害など、私たちが求め、築いてきた文明社会であるが故の、複雑な被害状況を引き起こしています。
開発、発展、成長を求め続ける現代社会を、私たちはこのまま進め続けていいものでしょうか。
昨年 12 月、ようやく合意に至った COP21「パリ協定」では、先進国だけでなく発展途上国にも、CO2 削
減への努力が求められることになりました。これまで被害国であることを主張してきた国々にも、地球環境が
取り返しのつかないことになる瀬戸際であることが認識されてきたのです。さらには、再生可能エネルギーの
利用促進など、排出削減への対策を進めることが経済的効果をもたらすことも明らかになり、合意へと背中を
押したといわれています。
しかしながら、パリ合意が実現したとはいえ、日本をはじめ各国が掲げる CO2 削減目標は、温暖化を止め
るために必須とされる気温上昇 2℃以内という目標値には、ほど遠いものといわざるを得ません。各国の思惑
が交錯する中で、世界中の市民の生活や子どもたちの未来が、脅かされています。
○持続可能な未来へ、1 人の選択が社会を変える 国の施策が厳しく問われる中、市民社会には「ライフスタイル・シフト」が求められますが、どのような移
行(シフト)が望ましいのでしょうか。
たとえば自然に恵まれた日本の地方都市「富山」に住み、無理のない範囲で節電節水を心掛け、ごみの分別
や電車通勤にも慣れて、休日には時々森づくりボランティアの活動にも参加するといった、個々の生活スタイ
ルを継続させていくだけで、果たしてほんとうに、地球の温暖化は止められるでしょうか。節電した先の発電
所が、石炭火力による CO2 排出を増やしているのでは、節電効果など無きに等しいものですし、電車の電気
についても同じことがいえます。つまり、CO2 を排出せず、持続的に使用できる再生可能エネルギーへの移
行を、市民としてどう選択し、推し進めていくかを含めて、「ライフスタイル・シフト」を組み立てていく必
要があるのではないでしょうか。
私たち市民が取り組むべきことは何か? 大切にしたいことは? 変えたいことは? その方法は? プロセ
スは? G7 環境大臣会合の開催を機に、今一度、市民の生き方や社会での役割を考えてみたいと思います。
答えは一つではありません。私たちを取り巻くさまざまな問題は、その多くが互いに関連を持ち、影響し合
っています。今日は4つのフォーラムによって、それぞれの観点から学びを深め、「足もとから、ちきゅう未
来」につながる解決への糸口を、参加者みなさんの手でたぐり寄せていただきたいと願っています。
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作画:谷内博史(特定
非営利活動法人
NPO 政策研究所)
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草刈り十字軍運動 42 年
足 立 原 貫 (NPO 法人 農業開発技術者協会・農道館 理事長)
天然の森林ではなく、人手によって育てられた苗木を植えて森林を育成する人工造林は、適切な時期に
人手をかけねばなりません。その一つが「下刈り」「下草刈り」と言われる作業です。
全国各地の造林地で労働力が不足してきた 1970 年代、下草刈りの作業に代え、ヘリコプターによる除草
剤の空中散布が実施されるようになり、富山県下でも例外ではなかったのです。
その除草剤空中散布に反対した私たちが、対案として人手による草刈りを提示し、全国の若者たちへ参
加を呼びかけて開始したのが、草刈り十字軍運動です。
『草刈り十字軍』という名称は、当時の若者たちに
人気のあった「ザ・フォーク・クルセダーズ」にヒントを得てつけられました。
○発端と展開 運動開始の発端は、廃村で起こった“事件”です。“事件”は人がいなければ起こりませんし、“廃村”
は住人がいなくなった村です。なぜ、廃村で事件がおこって運動が開始されたのか。そのとき、廃村に私
たちがいたのです。
お は ら
その廃村は、富山県上新川郡大山町小原(平成の市町村大合併で現在、富山市小原)。標高 550m、冬季
は 3m余の雪に埋もれるところ。代々19 戸の家を守って暮らしてきた人たちは、高度経済成長期に離村し、
1964 年の東京オリンピック景気にわいた年の秋に、最後の 3 戸が離村して廃村となっていました。
1967 年早春、私は若い仲間たちと「いつか誰かがやらねばな
らないことなら、いま俺たちがやろう」という“コト”を起こ
す者の信条と情熱だけを支えに小原への道を登りました。世襲
的な農業から脱皮して、社会における“農”の機能の一端を担
い続けていく営農体の確立をねらい「地球を耕そう」を合言葉
に「農業開発技術者協会」という気負った任意チームを結成し
て活動を開始するためでした。
廃村は「一つの社会、一つの文化、一つの価値」の死を示し
ますが、土から遠ざかってしまった文明の回生へ向けての“宝
庫”でもあるととらえた私たちは、土と直結した生存条件と生
活価値の探求をめざす学び合いと活動の拠点にしようと、全国
から参加者を募る「人と土の大学」の開講(写真 1)など、田
畑を耕作する営農活動の枠を越える諸活動を展開しました。
その小原に突然、「除草剤の大量空中散布・入山禁止の告示
版」が立てられました。私たちは猛反対運動をおこしましたが、
“反対”だけで済むことではありません。森林育成は遂行され
写真 1.廃村・小原を教場に
ねばならない天下の大事です。不可欠な下草刈り作業をどうす
「人と土の大学」を開講
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るかという対案がなければ、反対運動は森林育成に無頼な妨害をしただけということになってしまいます。
私は「夏休み中の学生たちの手による下草刈り」を提案しました。
「チエをかしたらチカラもかそう」と
の実践者の信条に基づく「きみ、青春の一夏、山へ入って草を刈ろう」という呼びかけに全国各地の同志
たちが立ち上がり、「草刈り十字軍」の運動となったのです。
「山林業務の実状を知らない教授の空論だ」
「いまどきの若者がきびしい労働に耐えられるものか」とい
う町役場や森林組合の嘲笑を吹きとばすように、
大学生、高校生、予備校生、サラリーマン、自由
業者、等々、日常生活はもとより、年齢も立場も
考え方もさまざまな人たちが続々と富山へやって
来ました。その中には「何か自分にできることで
お手伝いしたい」という全盲の青年もいました。
200 人をはるかに超えた参加者たちは過酷な現
場でそれぞれ所定の日数の激務に耐え抜き、県下
4 ヵ町にわたる 200ha 余の下草刈りを達成しまし
た(写真 2)。
写真 2.刈り終わると昔も今もかわらぬ歓声 ○込める思い こうして始まった草刈り十字軍運動は、昨年(2015 年) の夏で 42 年目を迎え、参加者の延べ人数 33,170
人を超え、作業延べ面積は 1,864ha。林業への貢献度は大きくはないでしょう。しかし住民運動の流れを
変え、森林行政に多面的見直しをせまり、各種森林ボランティア活動の先駆となったことを思えば、多方
面へのさまざまな改革の起爆剤の役を果たした効果は小さくないでしょう。
運動の第 2 年目から、草刈り十字軍を受け入れる森林組合に県が助成するという形で、県行政と民間活
動を結ぶ事業になりました。
世紀を越えて継続してきて 42 年。環境問題に寄せる人々の意識の高揚とともに参加者の年齢の幅が広が
り、若者だけでなく 50~70 歳代が少なくありません。
その状況に込められる思いは、世代も生活スタイルも考え方も異なる人たちが、それぞれの日常性を脱
し、力を寄せ合い、励まし合い、助け合って厳しい作業に汗を流す合宿が、互いの心の底にある善意や良
心をめざめさせ、他者のためにも力を尽くそうとする人物をはぐくむ場となります。文明の大転換期にあ
る現代、傍観者でいられず、
「何かしなければ」との思いを抱く人物像を映しとりつつ、手ごたえのある“文
明批評の実践”であり続けることを願っています。
講演者略歴:1930 年東京都出身。東京大学農学部卒、同大学院を経て東京大学助手、大分県農業試験場技 師。1963 年に富山県立大谷技術短期大学へ助教授として赴任。1972 年富山県立技術短期大学教授、 1990 年富山県立大学短期大学部教授、1994 年同学部長、1996 年定年退職。 その間、
「農業開発技術者協会」の活動を基軸に、
「人と土の大学」「草刈り十字軍」「山崎賞奨学会」「中
国への技術協力」「日本学研究会」など幅広い活動をつづけている。 5
基 調 講 演 “『ホットケーキできあがり!』絵本の向こうに日本が見える”の
ご 案 内 アースデイとやま実行委員会 本フォーラムでは、詩人のアーサー・ビナードさんに基調講演をいただきます。ここではビナードさんが翻
訳され、ご講演の題材となった絵本、「ホットケーキできあがり!」(原作:エリック・カール、偕成社 刊、
2009 年、原題:Pancakes!Pancakes!)のあらすじをご紹介させていただきます。 ○「ホットケーキできあがり!」あらすじ 少年ジャックは大きなホットケーキが食べたくて、お母さんにおねだ りをします。するとお母さんはジャックに、一つずつ順番に言いました。 「まず、こむぎこをよういしなくちゃ。」 「たまごがなければできないわ。」 「ぎゅうにゅうがないとできないわ。」 「バターがなかったらだめでしょ。」 「でも、火をたかないと。」 「なにかわすれてるでしょ。ホットケーキの上にかけるあまいもの。」 お母さんに言われるままに、ジャックはその都度麦畑へ、牧場へ、た きぎのとれる森へと出かけていき、最後はいちごジャムの瓶をしまって おいた地下室へ降りていきます。農作物や、家畜や、お百姓さんや森の 木々に出会いながら、果たしてジャックは必要なすべての材料を集めて、 「ホットケーキできあがり!」表紙 おいしいホットケーキを食べることができるでしょうか… 講演者略歴:1967 年米国ミシガン州生まれ。広島在住。’90 年ニューヨーク州のコルゲート大学英米文学
部を卒業。卒論研究の際、日本語に出会い、 魅惑されて来日。日本語での詩作を始める。エッセイスト、
ラジオパーソナリティ(文化放送、他)としても活躍。 原爆原発・環境・平和など、幅広く社会を論じ、
共感を呼んでいる。 2012 年、第 33 回広島文化賞を受賞。 ・詩集:
『釣り上げては』
(思潮社、中原中也賞受賞 2001 年)、詩集『左右の安全』
(集英社、山本 健吉文学
賞 2008 年)、『ゴミの日』(理論社)、『日本の名詩、英語でおどる』(みすず書房)。 ・絵本:
『ここが家だ―ベン・シャーンの第五福竜丸』
(集英社、日本絵本賞受賞 2007 年)、
『探しています』
(童心社、講談社出版文化賞絵本賞受賞 2012 年、産経児童出版文化賞・ニッポン放送賞受賞) ・エッセイ集:『日本語ぽこりぽこり』(小学館、講談社エッセイ賞受賞 2005 年)、『空からきた魚』『出世
ミミズ』(ともに集英社文庫)、『日々の非常口』(新潮文庫)、『亜米利加ニモ負ケズ』(日本経済新聞社)、
『泥沼はどこだ―言葉を疑い、言葉でたたかう』(かもがわ出版) ・翻訳絵本:『ダンデライオン』『どんなきぶん?』(ともに福音館書店)、『あつまるアニマル』『ふしぎの国
のアリス』(ともに講談社)、『はじまりの日』(岩崎書店) ・翻訳詩集:『ひとのあかし』(清流出版) 6
汚染フォーラム ―イタイイタイ病を経験した富山。沖縄の環境汚染、放射能汚染、廃棄物汚染など、
止まらない公害に、私たちはどう向き合い、何を伝えていくのか。
日本国内で起きた四大公害病(水俣病・第二水俣病・四日市ぜんそく・イタイイタイ病)は、過去の高度経
済成長によってもたらされた健康被害であって、「環境の世紀」と称される 21 世紀にはそのような公害病は
起こらないと私たちは確信を持って言えるでしょうか?
確信が持てない理由はいくつかあります。通常、自然環境内に存在しない有害化学物質は、基準値以下であ
ることをよしとして使用され、自然環境中に放出され続けています。さらに福島第一原発の苛酷事故によって
排出され続けている放射性物質は、すでに生態系のなかに深く入り込み、循環し始めています。また 1990 年
代後半に騒がれたダイオキシン類などがもたらす健康被害は、焼却炉の大型化によって解決したものと考えら
れていますが、それは本当でしょうか?
もしも、有害物質に毒々しい色があれば、人々は脅威を感じて日常的に避けようとするでしょう。健康被害
が出る前に有害物質を排除する予防対策が可能です。しかし、それらはたいてい無色・無臭で、健康被害が出
たら手遅れということになるので、それを排出する汚染源の撤去は早期の予防対策として不可欠です。しかし
それが困難で時間がかかる場合には、いきおい排出規制強化を求めることになりますが、それだけでは十分で
はありません。なぜなら規制値というものは有害物質の排出を認めた上で、許容量として算出決定される場合
が多いからです。たとえそれが晩発性の健康被害をもたらす可能性があっても、ただちに起きる健康被害でな
ければ大丈夫ということになります。
この汚染フォーラムでは、キーノート講演者によって汚染源から排出される有害物質を市民の目で監視・測
定・告発する活動がいかに重要であるかが語られます。このような市民の主体的な活動は、過去の公害被害者
の轍を踏まないためにも、これからますます重要になるでしょう。私たち市民は汚染問題の解決策を行政や専
門家に任せっぱなしにしないで、彼らと対等な立場で議論しながらよりよい予防対策に積極的に関与しなけれ
ばなりません。
それにしても、いったん放出された有害物質の早期回収は非常に困難です。長い年月をわたって「空気」
「水」
「大地」を汚染し、「大気汚染」「水質汚染」「土壌汚染」というかたちで残り、直接摂取や食物連鎖によって
人体に入り、世代を越えて蓄積されることになります。汚染された「空気」
「水」
「大地」は、生命活動を根本
から支えてくれる地球の贈物であることを、私たちは決して忘れてはなりません。最終的に汚染問題において
は、地球に住む人間の作法が問われているのです。
13:00 趣旨説明 宮崎さゆり
13:05 キーノート講演1. イタイイタイ病から考える食の安全
雨宮洋美(富山大学経済学部准教授)
13:35 キーノート講演2.沖縄における環境汚染
桜井国俊(沖縄環境ネットワーク世話人、沖縄大学名誉教授)
14:05 キーノート講演3.市民放射能測定で見えてきた現実
石丸偉丈(みんなのデータサイト事務局長、こどもみらい測定所代表) 14:35 キーノート講演4.活世界の非常識!環境汚染をもたらす廃棄物の焼却処理
青木 泰(環境ジャーナリスト)
15:05 キーノート講演5.ネオニコチノイド農薬による人体・環境汚染
中下裕子(ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議事務局長、弁護士)
15:35 (休 憩)
15:45 ワークショップ、まとめ(17:00 終了)
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イタイイタイ病から考える食の安全
雨 宮 洋 美 (富山大学経済学部准教授)
誰もが小学校で「四大公害病の一つ」と習ったことのあるカドミウムによる被害「イタイイタイ病」。骨が
ポキポキと折れる奇病という強烈な印象を植え付けられた人も少なくないのでは?しかしその病気の本態は
誰もがかかりうるといえる腎臓の疾患である、ということを知っている人はあまり多くありません。
今日は、イタイイタイ病とカドミウム・腎臓の関係、カドミウムと米を主食とする日本人の関係を順番にお
話しします。最後には、イタイイタイ病の現代的課題として、食の安全をどう担保するのかという問題につい
て皆さんと考えていければと思います。
○イタイイタイ病と腎臓疾患について イタイイタイ病と認定されているのは、骨折が見られる重症の末期症状であり、慢性カドミ中毒のピラミッドの頂点に
過ぎません。実は、腎再吸収障害による骨代謝異常を呈している患者、高度のカドミ腎症でもあってもいわゆるイタイイ
タイ病とは認定されません。
○米のカドミウム安全基準 国際基準としては 0.1 ppm/kg 以下が推奨されていたころ(2002 年頃)、日本のカドミウムの安全基準はその十倍も高
い 1.0ppm/kg でした。 他国は EU 0.2、韓国 0.2、豪州 0.1、タイ 0.1、台湾 0.5、中国 0.2ppm/kg という状況でした(毎
日新聞 2002.5.22, 畑 明郎.2002.177)。
現在、「カドミウムに非暴露の人を対象とした解剖データに基づくと、恐らく過去の高いカドミウム摂取の影響により日
本以外の世界中の国と比較して(日本人の腎臓への蓄積量は)他国よりも高い傾向にある」」(Chieko HAYASHI et
al.2012.10)と述べられるほど、日本人は腎臓蓄積のカドミ濃度は平均的に高い国民となっています。
2010 年 4 月に厚労省は米中カドミウムの安全基準を国際基準に従い 0.4ppm に引き下げましたが、2010 年まで世界
的にみても格段に高いレベルのカドミウム濃度を許容量とする米が流通していた、といえます。また、国際機関が提示
する 0.4ppm という数値は閾値であり、決して安全基準とは言えないとするデータも存在しています。
○潜在的な米のカドミウム汚染の問題 2008 年に、流通するはずのない汚染米が加工され食用として出回っていたというショッキングな事件が新
聞等を賑わせました。その後汚染米はすべて焼却処分されるという対処が取られましたが、様々な要因で汚染
土壌でありながら汚染土壌に指定されなかったり復元工事をされていない可能性のあるところは日本の各所
に点在しています。また、2010 年には、旧生野鉱山近くの兵庫県神河町において、給食用にカドミウム米が使用さ
れていたことが報道されました(朝日新聞 2010.2.13)。 ○誰が食の安全を守るのか 給食用のお米ですらカドミ米が使われうる現実を私たちは知っておくべきです。そして 2010 年まで全国的
なカドミウム調査を実施していた国、国の委託で行っていた県ともにすでに米のカドミウム検査から完全撤退
し、農業における民営化の名の下に生産側の責任へと移管されています。 イタイイタイ病の現代的課題として、食の安全の問題を皆さんと一緒に考えることができればと思います。 講演者略歴:東京生まれ富山育ち。JICA 国際協力総合研修所、在タンザニア日本国大使館、UNOPS 東京
事務所勤務を経て、2005 年から富山大学経済学部専任講師、2007 年から現職。 8
沖縄における環境汚染
桜 井 国 俊 (沖縄環境ネットワーク世話人)
沖縄には製造業らしい製造業はありません。環境汚染源となる主たる施設および活動は、軍事基地であり、
軍事活動です。汚染者は米軍ですが、日米地位協定によって米軍基地には日本の法規制は環境法を含め適用さ
れず、また基地の返還に際しても米国には原状回復の義務がありません。このことが沖縄における環境汚染問
題の最大の原因であり、解決にあたっての最大の阻害要因です。
○米軍起源の多様な環境問題
米軍起源の環境問題には、航空機による騒音・低周波音の問題、PCB 等有害廃棄物による土壌汚染・水質
汚染の問題、実弾演習による赤土流出問題、原子力軍艦・潜水艦の寄港による放射能汚染の問題、ベトナム戦
争時に持ち込まれた枯葉剤による土壌汚染の問題、劣化ウラン弾誤使用による大気・水質・土壌の汚染問題、
クレー射撃跡地周辺の鉛汚染問題等多種多様です。最近では、辺野古新基地建設に伴う大浦湾の貴重な生態系
破壊の問題、世界自然遺産登録に値するやんばるの貴重な生物に対するオスプレイの飛行がもたらす影響、そ
して嘉手納基地から流出したと思われる消火剤 PFOS(日本では未規制の有機フッ素化合物)による沖縄県民
の飲料水水源の汚染問題などが県民の大きな関心事になっています。
○行政の監視役としての環境 NGO の役割(沖縄・生物多様性市民ネットワークの事例) 米軍起源の汚染に対しては、国並びに地元自治体による適切な取り組みが求められますが、そのためには環
境 NGO と行政の協働や行政の監視が不可欠です。沖縄はベトナム戦
争の後方支援基地であったため、枯葉剤(ダイオキシン等を含む)に
よる土壌汚染の可能性が極めて高いにもかかわらず、日米両政府はそ
の可能性を否定し続けています。沖縄市のサッカー場(かつての嘉手
納基地の一部)のダイオキシン汚染問題(写真 1)を例にとり、行政
との協働、行政の監視の面で環境 NGO の沖縄・生物多様性ネットワ
ークが果たしている役割について紹介します。 ○民衆の国際連帯の重要性(沖韓民衆連帯の意義) 写真
1.ブルーシートに覆われた沖縄市 世界には、米軍基地がもたらす環境問題に正面から取り組んでいる
サッカー場
人々がいます。沖縄が直面する環境汚染問題の解決には、そうした人々との連帯、知識経験の共有が極めて重
要です。そうした観点から、沖縄の環境 NGO は世界の環境 NGO との連携を深めて来ました。米国の環境
NGO との協働で米国の国家歴史保存法を活用してサンフランシスコ連邦地裁で争ったジュゴン訴訟はその一
例です。沖縄にとって取り分け重要なのは、隣国韓国の環境 NGO(グリーンコリア等)との国際連帯です。
沖韓民衆連帯の意義について紹介します。
講演者略歴:沖縄大学名誉教授。1943 年静岡県出身、専門は環境アセスメント、廃棄物問題、途上国環境問
題。WHO アメリカ地域事務所環境専門官、JICA 国際協力専門員、東京大学客員教授等を経て沖縄大学教
授、沖縄大学学長。沖縄県の翁長知事の依頼で仲井眞前知事が行った辺野古埋立承認の法的瑕疵の有無を検
証する第三者委員会の委員を務める。
9
市民放射能測定で見えてきた現実」 石 丸 偉 丈 (みんなのデータサイト事務局長/こどもみらい測定所代表) ○原発事故後、全国で市民が測定に
立ち上がった。
2011 年 3 月の原子力発電所事故で、未 曾有の原子力災害が起きました。広範囲 に汚染され、環境・食品汚染、健康被害 などが懸念されるも、情報は錯綜し、事 実を見極めることが困難でした。そこで ニーズが高まり、全国各地で市民放射能 測定所が立ち上げられ、その数 100 を超 えました。切磋琢磨し、事実を見極める 取り組みをネットワーク化。「みんなの データサイト」で 30 測定室のデータ結 合もしています。 ○食品の汚染傾向。
食品の汚染は、当初こそ大変心配され ましたが、日本の粘土質を豊富に含んだ土壌に助けられ、作物はチェルノブイリのケースと比して低めのもの
が多いことが測定から見えてきています。検出されやすい種類の食品はかなり絞り込まれ、キノコ類や山菜、
淡水魚など右上の表のような原因と傾向が見えてきています(http://www.minnanods.net/)。
○土壌の汚染。続く悩ましさ。
食品汚染は当初の懸念より下回るものが多かったのですが、 土壌汚染は悩ましさが続きます。みんなのデータサイトでは「東 日本土壌ベクレル測定プロジェクト」を進めており、17 都県に わたる広範囲な土壌汚染測定マップを作成中ですが(左図)、放 射線管理区域である「4 万 Bq/㎡」を超える汚染、またチェルノ ブイリでは移住の権利・強制移住ゾーン並の土壌汚染も広がっ ていることが見えてきています(下図)。生活空間に広範囲に 広がった環境汚染をどうするかが今後も大きな課題です(http: //www. minnanods.net/soil/pref17_colored/zone_diff.html)。 ○市民測定の意義。事実を見極める目を養うこと。
放射能は五感では感じられず、測らないとわかりません。まだまだ 広範囲に生活環境・ 子どもたちの遊ぶ場 所などに放射性物質 は定着してしまって います。国や行政が 十分に取り組めない 以上、市民力で進め ることの意義はこれ からも続きます。 講演者略歴:1972年神戸生まれ。早大一文卒。障害を持つ
家族と生き兼業主夫10数年、フリースクール運営、Web
クリエイターを経て、2011年より市民放射能測定所「こ
どもみらい測定所」代表。2013年より、市民測定データ
結合プロジェクト「みんなのデータサイト」事務局
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世界の非常識!環境汚染をもたらす廃棄物の焼却処理
青 木 泰 (環境ジャーナリスト)
熊本地震で取材に来た海外メディアの記者が、被災地や避難所の取材の中で、避難者がこのような緊急事
態でも、ごみの分別を欠かさない姿に、助け合いや細やかな配慮に驚き、発信すると好意的な反応が返ってき
たとの掲載記事がありました(東京新聞「こちら特報部」2016 年 4 月 20 日)。
一方、ごみを焼却処理して、焼却によって大気汚染をもたらすことには配慮することなく、焼却炉を造り続
け、今も世界の 3 分の 2 の焼却施設が日本にあります。どちらが日本の本当の姿であり、なぜこのような背
反する事態が起きているのかを、今回は皆さんとご一緒に考えていきたいと思います。
○ごみ処理の基本―「ごみは燃やさず、埋め立てずー資源に」 「ごみは宝だ」「混ぜればごみ、分ければ資源」「ごみは集めにくく、資源は集めやすく」(ボックス収集→
週 3→週 2)「ごみの減量化は、排出源での分別リサイクル」などの標語の下に、各市町村で、資源化の取り
組みがなされてきました。現在焼却処理されている「生ごみ」「廃プラ」「紙ごみ」「剪定枝」なども、資源化
が可能であり、これらを実現すれば、可燃ごみの量は、約 10 分の1に減らすことができます。 ○日本のごみ処理の仕組みの特徴 家庭から出たごみ(一般廃棄物)の処理は、国や都道府県でなく、市町村が行い、ごみの収集運搬や焼却や
破砕処理、埋め立て処理も市町村が計画を立て、進めます。市民も参加したごみ減量審議会が中心になって、
ごみの資源化や減量策を作ることも可能です。ところが、日本のごみ処理は、焼却が中心で、設置焼却炉数は、
世界の 2/3 を占める焼却炉 1700 基(米国 150 基、ドイツ 50 基)もあります。 焼却による排熱利用として温水プールや発電利用(サーマルリサイクル)なども行われていますが、利用効
率は悪く、熱のエネルギーは、実質大気環境を捨て場として捨てられているのが実情です。 ○放棄される焼却の危険性のチェック 廃棄プラスチックを焼却することによって、究極の有害物質と言われるダイオキシンが発生します。また最
近では、焼却によって、PM2.5(2.5 ミクロン程度の微細粒子)が発生し、焼却場周辺に住む子どもたちの喘息
などの原因になっています。水銀など重金属汚染についても各所で発生しています。これらがチェックされな
いのは、目に見えず、臭いもせずまた汚染による影響は、個人によって違いがあるため、影響を受けた当事者
しかわからず、自分の住む街に焼却炉が建設されることがないと他人ごとに済ませてしまう風潮もチェックで
きない要因と言えます。 ○なぜ日本は焼却主義か -焼却炉シンジケートの存在― 公害から国民を守る組織として作られた環境省が市町村の清掃工場の焼却炉建設への補助金事業を担い、
国や自治体の職員が焼却炉メーカを天下り先にするなどの政官業の密接な関係ができ、焼却炉メーカは巨大な
業界に膨れ上がりました。放射能汚染物さえ焼却する日本の焼却主義がはびこり始めました。現実に巨大焼却
炉メーカ 6 社(これらのメーカのことを焼却炉シンジケートと呼びます)による建設談合事件があり、公正取
委員会から出された「談合排除勧告」が最高裁で確定しました。 ○何から始めるか? 水分が 85~90%近くある生ごみ。焼却炉で燃やすためには、助燃材が必要になり、助燃材としてプラスチ
ックを燃やすために、大気が汚染される悪循環になっています。私たち、住民や国民が、ごみを燃やさない計
画を作り、実践し、焼却大国日本を次世代に渡さないことが求められています。 講演者略歴:環境ジャーナリスト、廃棄物資源循環学会会員、NPO ごみ問題 5 市連絡会、環境行政改革フォー
ラム(青山貞一主宰)、「放射性廃棄物拡散阻止!政府交渉ネットワーク」の幹事。著書:「プラスチックご
みは燃やしてよいのか」
(リサイクル文化社)、
「引き裂かれた絆―環境省との攻防 1000 日」
(鹿砦社)など。
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ネオニコチノイド農薬による人体・環境汚染
中 下 裕 子 (NPO 法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、グリーン連合)
いま、世界中で、ミツバチの大量死・大量失踪が起きています。日本でもミツバチ被害が全国的に報告さ
れています。その原因としてクローズアップされているのが、ネオニコチノイド農薬です。ネオニコチノイド
は、ミツバチだけでなく、生態系や人間の子どもにも重大な影響を及ぼすことがわかってきました。欧米では
予防原則に基づく暫定措置が導入されていますが、日本では規制がなく、汚染の深刻化が懸念されます。
○ネオニコチノイド農薬とは? 「ネオニコチノイド」は、タバコの有害成分のニコチンに似た農薬で、有機リン農薬に代わるものとして、
1990 年頃から開発・使用されるようになりました。水溶性で、根から吸収すると植物内部全体に浸透するう
え、効果が長く続くことから、減農薬栽培に推奨され、最近使用量が急増しています。
○ネオニコチノイド農薬の毒性 ネオニコチノイドは、「虫にはよく効くが人には安全」と宣伝されています。ネオニコチノイドは、サリン
などの有機リンと同じく、アセチルコリンという神経伝達物質の正常な働きをかく乱して昆虫の神経を狂わせ、
やがて死に至らしめます。しかし、アセチルコリンは、人間の脳内にも存在しているので、昆虫だけでなく、
人間の神経も狂わせてしまいます。特に心配されるのは子どもの脳内における神経の発達への影響です。
また、ネオニコチノイドは、害虫だけではなく、ミツバチなどの益虫にも、ただの虫にも、強い殺虫能力を
発揮します。このため、田園の風物詩であった赤トンボなどの昆虫類や鳥類を激減させ、農村生態系に壊滅的
影響を及ぼしています。
○生活にあふれるネオニコチノイド ネオニコチノイド農薬は、農業用のみならず、松枯れ防止やガーデニング用農薬、家庭用殺虫剤、シロア
リ駆除剤、ペット用殺虫剤(ノミとり粉)にも広く使用されています。
また、野菜や果物などの食品にも、残留農薬として含まれています。日本の残留基準値は欧米に比べて数倍
~数百倍も高いので、これらの食品摂取により日常的にネオニコチノイドを体内に取り込んでいます。特にホ
ウレン草は、クロチアニジンについて 3ppm から 40ppm へと大幅に緩和され、発達期の子ども達への影響が
心配です。
○日本の対策の遅れ 欧米では予防原則に基づいた規制の導入が進められています。EU では、2013 年 12 月に 3 種のネオニコチ
ノイドについての 2 年間の使用禁止が導入され、アメリカの EPA でも新規ネオニコチノイドの登録が保留さ
れるようになりました。しかし、日本ではこのような規制の動きはなく、逆に残留基準値が大幅に緩和されて
いる状況です。どうすればよいのか、ご一緒に考えていきましょう。
講演者略歴:1953 年大阪府出身。1977 年京都大学法学部卒。1979 年弁護士登録(第二東京弁護士会)。1995
年コスモス法律事務所開設-現在に至る。1998 年よりダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長。
2004 年より中央大学法科大学院客員教授。2015 年より「グリーン連合」共同代表。
12
気候変動とエネルギーフォーラム ―深刻化する気候変動と COP21 合意、
地球規模の課題に向けて、私たちに何ができるのか?
地域発、エネルギーシフト最前線に学ぶ
COP21(国連気候変動枠組条約・パリ協定)は、今までになく踏み込んだ具体的な内容となりました。一
方富山でも、冬季の寒ブリの不漁など、地球温暖化の影響とされるさまざまな現象が私たちの身の回りにも起
こり始めています。毎年のように世界各地の最高気温、真夏日の日数などが更新され、生活に直接影響を与え
始めた昨今、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスによる地球上の気温上昇や、その影響も指摘される災害
の頻発に、私たちは指をくわえて見ていていいのでしょうか。また、3.11 の原発事故以来、従来の原子力や
化石燃料に過度に依存したエネルギー供給のあり方を見直し、自然エネルギーや再生可能エネルギーを取り入
れた新たな枠組みを作り出す、エネルギーシフトの必要性が高まっています。複雑に絡み合う自然界や社会の
さまざまな現象や要因を、私たちはもう一度改めて問い直し、学び直す必要があるでしょう。
このフォーラムでは、まず近年の富山県の気象がどのように変化してきたのか、具体的な数字によって報告
していただきます。次に、昨年の COP21 の具体的提言とは何だったのか、日本の政策とそれを捉える市民の
眼、近年失われているとされる伝統的な里山の生態系の機能を活かしたエネルギー利用のあり方の再評価につ
いてそれぞれご講演があります。最後に富山県を例として、地域で実践されているエネルギーシフトの取り組
みについてのお話をいただき、後半の討論ではまさに Think Globally, Act Locally な観点から、議論を行っ
ていきましょう。
13:00 事例報告.富山県の気候変化 嶋川寿美男(富山地方気象台)
13:15 キーノート講演1.パリ協定から考える 100%自然エネルギーへの取組み
松原弘直(認定 NPO 法人・環境エネルギー政策研究所)
13:40 キーノート講演2.市民版環境白書・ グリーン・ウォッチと日本の環境政策の課題について 藤村コノヱ(NPO 法人・環境文明 21、グリーン連合)
14:10 キーノート講演3.里山の熱エネルギーコミュニティ
三浦秀一(東北芸術工科大学・建築環境デザイン学科)
14:35 キーノート講演4.富山におけるエネルギーシフトの近未来
上坂博亨(富山国際大学・現代社会学部)
15:00 (休 憩)
15:15 ワークショップ(ワールド・カフェ等)~まとめ、
17:00 終了
13
富山県の気候変化
嶋 川 寿 美 男 (富山地方気象台 調査官)
近年、地球温暖化による自然および人間社会への影響が顕在化しつつあり、農業・漁業への影響や過去に
例のない暑夏や大雨などの異常気象と地球温暖化との関係に人々の関心が高まっています。気候変動に関する
政府間パネル (IPCC) の第 5 次評価報告書は、「気候システムの温暖化には疑う余地がなく」、今後は「ほと
んどの陸域で極端な高温がより頻繁になることはほぼ確実であり」、
「中緯度の陸域のほとんどにおいて、今世
紀末までに極端な降水がより強く、より頻繁になる可能性が非常に高い」と報告しています。
地球温暖化問題については、地
方公共団体のみならず住民・市民
レベルでの取り組みも重要です。
各地の実情に応じた対策を検討・
実施する上では、地域ごとの影響
の把握が不可欠となります。
では富山県での気候はどのよう
に変化しているのでしょうか。折
り良く東京管区気象台が地域に焦
点を絞った「気候変化レポート
2015 -関東甲信・北陸・東海地
方-」を刊行しました(2016 年
図 1 富山地方気象台における年平均気温の経年変化
3 月)。このレポートでは各県の気
候変化等が取りまとめられており、
富山県での一例として図 1 のよう
な気温の経年変化や図 2 のような
さくらの開花日の経年変化などが
あります。気候やその変化を正し
く知っていただき地球温暖化問題
を考えていただこうとおもいます。
講演者略歴:1960 年長野県出身。
関東、甲信、東海の気象官署を
図 2 富山地方気象台におけるさくらの開花日の経年変化
経験し、平成 24 年 4 月から富山地方気象台にて現職。主に気象防災に係る調査取りまとめ等を担当してい
ます。
富山地方気象台のプロフィール:前身である中央気象台富山測候所は、昭和 12 年 10 月 28 日に創立されまし
た。以来、今日までの 77 年間、気象の観測、警報・注意報の作成と発表などを主な業務としてきた国の機
関です。
14
パリ協定から考える 100%自然エネルギーへの取組み
松 原 弘 直 (認定 NPO 法人 環境エネルギー政策研究所)
COP21「パリ協定」の採択を受けて、エネルギー大量消費社会を低エネルギー社会へと根本的に改革する
と同時に、化石燃料や原発に依存したエネルギーの供給構造から、「脱炭素」社会を実現するため 100%自然
エネルギーに転換していくことが求められています。環境エネルギー政策研究所(ISEP)では、破局的な気候変
動を回避し、100%自然エネルギーを実現するための提言をしています。
○100%自然エネルギーへ向かう世界 COP21 で表明された数々の団体、自治体や企業などのイニシアチブにより、100%自然エネルギーへの動
きは世界中で大きなうねりとなっています。世界各地から 1000 人近く集まったパリ市を含む自治体のリーダ
ーが、2050 年までに 80%の CO2 排出削減や長期目標として 100%自然エネルギーを目指すことを宣言しまし
た。さらに、グーグルや IKEA を始め 53 もの国際企業も自然エネルギー100%の実現をすでに目指していま
す。自然エネルギー先進国のみならず途上国を含めて、世界各国はこれまでの化石燃料に依存した社会を根本
的に転換するため、自然エネルギーを主役にして、この困難な気候変動問題に立ち向かおうとしています。日
本は、いまこそ立ち遅れたエネルギー政策を見直し、自然エネルギー100%の「持続可能なエネルギー」への
転換の先頭に立ち、この世界規模の気候変動問題の解決に向けて進むべきです。
○地域主導・市民参加のボトムアップで自然エネルギー100%を目指す 長期的な気候変動対策として、唯一持続可能なエネルギー源である自然エネルギーについて様々な地域で
100%を目指す取組みが進みつつあります。これらの取組みを国際的に展開するために「自然エネルギー100%
世界キャンペーン」をはじめ、様々な取組みが世界各地で進んでいます。日本国内でも市町村毎に 100%自然
エネルギー地域がエネルギー永続地帯として毎年評価されていますが、地域主導・市民参加によるボトムアッ
プが重要であると考えられており、すでに県レベルで自然エネルギー100%を目指している福島県や長野県や、
全国各地で地域が主体となった自然エネルギーへの取組み、
「コミュニティパワー」が広がりを見せています。
○自然エネルギーを主役に 太陽エネルギーや風力、バイオマスなどを源とする自然エネルギーは、世界中で公平に利用できること、
民主的に誰もが普及に参加出来ること、地域や国のエネルギー自立や経済の自立に資すること、現実に飛躍的
に導入拡大が進んでいること、永続可能でクリーンな資源であり、唯一の持続可能エネルギーです。自然エネ
ルギーを主役として、長期的な取組みとして 100%自然エネルギーを目指すことが期待されています。
講演者略歴:認定 NPO 法人 環境エネルギー政策研究所 理事、主席研究員。工学博士。ちば里山・バイオ
マス協議会共同代表、グリーンエネルギー認証センター運営委員。環境プランナーER。千葉県出身。東京
工業大学においてエネルギー変換工学の研究で学位取得後、製鉄会社研究員などを経て、持続可能なエネル
ギー社会の実現に向けて取り組む研究者として日本初の自然エネルギー白書の編纂やエネルギー永続地帯
研究などと共に、全国各地の地域主導の地域エネルギー事業の支援にも取り組む。
15
www.isep.or.jp
NPO
2015 12
14
COP21
2015 11
)
30
12
12
(
)
COP21(
2020
COP21
196
21
[1]
21
2
1.5
21
2
5
100%
COP21
100%
2050
80% CO2
IKEA
1000
100%
53
[2]
[3]
100%
[4]
36
100%
COP21
(ISEP)
100%
4
(1)
(2)
CCS
16
www.isep.or.jp
NPO
(
)
3.11
(CCS)
(3)
100%
100%
(ISEP)
100%
[5]
100%
100%
[6]
(4)
IPCC
5
2050
80%
26.0%(2030
2
(
1990
40%
)
2015
)
2013
1.5
7
(INDC)
[7]
2020
[1] UNFCCC(
)COP21
http://unfccc.int/2860.php
[2] World Future Council “Despite a weak outcome: Paris was first “renewables COP””
http://www.power-to-the-people.net/2015/12/despite-a-weak-outcome-paris-was-first-renewables-cop
/
[3] RE100, 2014 http://there100.org/companies
[4] Global Geothermal Alliance, 2015
http://www.irena.org/EventDocs/GGA%20Joint%20Communique_COP21.pdf
[5]
100%
http://go100re.net/?lang=ja
[6]
+ISEP
,2014 11
[7] CAN-Japan
http://www.can-japan.org/advocacy/1795
NPO
ISEP
:
https://www.isep.or.jp/about_contact
TEL: 03-5942-8937, FAX:03-5942-8938
17
市民版環境白書 「グリーン・ウォッチ」と日本の環境政策の課題について
藤 村 コ ノ ヱ (NPO 法人環境文明 21 共同代表、グリーン連合共同代表)
グリーン連合は昨年 6 月 5 日環境の日に設立された環境 NPO/NGO の連合組織です。設立の目的は、国内
での環境への取組みがなかなか進まない中、様々な環境問題を克服し、「環境」を基軸とした民主的で公正な
持続可能な市民社会を築くために、環境 NPO/NGO が互いにつながり、結集して、強く政治や社会に働きか
けることです。その活動の一環として、今春、市民版環境白書「グリーン・ウォッチ」を発行しました。その
主な目的は、政府とは異なる視点から日本の環境問題の現状や環境政策・対策の問題点を分析し多くの人に知
ってもらうことです。
日本の環境政策の歪みや遅れの要因は色々あります。例えば、気候変動政策では、短期的経済が最優先され
ていることなどが挙げられますが、政策形成の過程で市民の参加が少なく市民の意見が反映されにくいことも
一つの要因です。ここでは、グリーン・ウォッチの紹介と、環境政策全般に通じる課題、特に政策形成の歪み
とその原因について、気候変動を例に考えます。
○グリーン・ウォッチの概要 第1章は「主要な環境政策のレビュー」として、気候変動とエネルギー、再生可能エネルギー、原発、化
学物質問題を取り上げ、テーマごとに環境の現状や政府の対策の問題点と解決の方向性について述べています。
第2章では「福島原発事故の被害と政府の対応」として、あまり知られていない福島の現状について、また第
3章では「なぜ環境政策がうまく進まないのか」として、日本の環境政策に係る問題点を指摘し解決の方向性
について私たちの考えを述べています。またトピックスとして、国内外の先進的事例を紹介しています。今回
は特に、政府との見解や評価の異なる問題、環境政策全般に関わる課題を中心に取り上げています。
○日本の環境政策の課題と市民参加の大切さ 「環境」は、全ての生命の基盤であり、私たちの日々の暮らしや社会・経済活動の基盤となる「共有財産」
です。そして、環境問題は現世代だけでなく次世代に、国内だけでなく世界にもつながります。そのため環境
政策には、政治家や官僚だけでなく、国民各層の意見が反映されることが大切ですが、現在は、経済界など一
部業界に有利な政策が目立ち、有効な環境政策が生まれにくい状況です。原因としては、短期的経済優先の考
え方が政権や国民全体に浸透しており、長期的視点が求められる環境政策は後回しにされる、目指すべき持続
可能な社会像が明確でなく政策の戦略性に欠ける、予防原則が欠落している等が挙げられますが、環境政策作
成段階にも大きな課題があります。例えば、気候変動政策として環境省が高い目標を提案しても、経産省など
関係省庁との調整の間に政治家や利害関係者などの介入で目標が下げられてしまう、あるいはそうした政策を
審議する委員に偏りがあり、パブリックコメントも形骸化しているなどの課題です。今後より良い環境政策を
生み出すには、これら課題を解決すると同時に、私たち市民が、環境政策と暮らし・経済活動との関わりを認
識し、政治家や官僚に任せるだけでなく、しっかりと動向をウォッチし積極的に声を上げ動くことが大切です。 講演者略歴:大分県出身。東京工業大学大学院博士課程修了。学術博士。小学校教師、環境コンサル等を経て 会社設立。環境教育のパイオニアとして、環境庁等の委託事業を行う他、市民や企業向け講演やワークショ ップを行う。一方、環境文明21の設立に関わり、特に環境教育等促進法の立法化と改正に向け先頭に立って 活動。最近は「グリーン連合」の設立を呼び掛け、「グリーン・ウォッチ」の編集責任を担う。このほか、 大学非常勤講師、日本環境協会理事等も務める。 18
里山の熱エネルギーコミュニティ
三 浦 秀 一 (東北芸術工科大学 建築・環境デザイン学科)
日本が世界有数の森林面積率を誇ることは意外に知られていません。そして、世界で最も多く使われてい
る再生可能エネルギーが木であることも知られていません。伐っても植えれば再生する、まさに再生可能エネ
ルギーです。薪や炭はもちろんですが、最近は木のエネルギー技術も大きく進化しています。しかし、森林資
源をエネルギーに利用するには地域の様々な関係者が協力し合うエネルギーコミュニティが必要なのです。
○エネルギーは「電気」だけではない。「熱」が大事。 私たちは長く木を煮炊きや暖を採るエネルギーに使ってきました。それがどんどん姿を消していったのは
まだ 50 年ほどの話です。そして今はエネルギーと言えばとにかく電気。暖房や風呂まで電気になってきまし
た。実はこれら熱のエネルギーは照明やパソコン以上に大きな量になります。風力や水力は電気の再生可能エ
ネルギーとして大事ですが、電気を熱にするのはもったいない。熱の再生可能エネルギーとして最強なのが木
なのです。備蓄できることを考えれば、バッテリー不要な再生可能エネルギーでもあります。
○進化する木のエネルギー技術 木のエネルギーというと、薪のようにどうしても手間のかかる不
便なイメージがあるでしょう。しかし、今は燃料も進化して、チッ
プやペレットで自動供給が基本になっています。燃焼も電子制御で
非常に高い効率で、燃料もあまりたくさんいらなくなっています。
ヨーロッパで木のエネルギー利用を画期的に変えたのは地域熱供給
という方法です(図 1)。地域に木のエネルギープラントをつくって、
そこから温水用の配管を通して地域全体に熱を供給するという方法
です。熱のインフラを温水配管として張り巡らすことによって、利
用者は電気や水道と同じように木のエネルギーを共同で快適に使う
図 1.地域熱供給の概念図 ことができるようになるのです。日本でもようやくこの方法を導入するところが出てきました。
○自然エネルギーは地域の共有財産 里山は薪炭林として長く地域のエネルギー源となってきた歴史があります。個人の所有物というよりは、
地域の共有財産でした。また、山間地域で暮らす人々の貴重な経済資源でもありました。それが活かされなく
なって山間地域の過疎化が進み、里山も荒廃していきました。里山をエネルギー資源として活かすには、山仕
事はもちろん、運搬、燃料への加工、エネルギー設備の導入、メンテナンスなど様々な仕事が地域に生まれて
きます。今まで地域から流出していたエネルギーの支出は、地域で循環するようになります。これを実現する
には、地域の様々な関係者が主体になって、森のエネルギーコミュニティをつくっていかなければなりません。
講演者略歴:1963 年兵庫県出身。1992 年東北芸術工科大学講師、その後助教授などを経て、2014 年
より教授。やまがた自然エネルギーネットワーク代表。著書、コミュニティ・エネルギー(農文協)、木質 資源とことん活用読本(農文協)など。
19
富山におけるエネルギーシフトの近未来
上 坂 博 亨 (富山国際大学 現代社会学部)
全国の県別の再生可能エネルギーの分布をみると、富山県は非常にまれな条件をそなえた県と言えます。
特に水力と地熱の資源に関しては日本でもトップクラスのポテンシャル(可能性)を秘めています。ここでは
富山県のエネルギーシフトの可能性について 3 つの事例を見ながら考えてみたいと思います。
○電気自動車 100%でエネルギー自立を達成した町 ~ツェルマット~
スイス南部の人口約 5000 人の街「ツェルマット」は、背後にマッター
ホルンを擁する風光明媚な世界的リゾート地です。しかしこの街の魅力は
風景だけではありません。街中を走る車は自家用車からバスまで 100%電
気自動車です(図 1)。しかも電気自動車の動力は、ツェルマット内にあ
る水力発電所で作られる電気です。そして電気自動車を制作しているのは
ツェルマット街内の小さな自動車工場。つまり、ツェルマットの交通はす
べて街中でまかなわれているのです。この自立循環型のしくみはいったい
何を意味するのでしょうか?
図 1.街中を走る電気自動車 ○ツェルマットをお手本にエネルギーシフトに取り組む ~宇奈月温泉~
ツェルマットの仕組みをお手本にして、宇奈月温泉では小水力発電と
電気自動車による、低炭素型の新しい温泉地づくりに取り組んでいます。
この 3 月には新しい電気バス(図 2)が 2 台導入され、温泉街を遊覧して
います。このバスが使用する電力は宇奈月谷から取水した防火用水を使っ
た小水力発電で賄われています。また温泉熱も有効に活用して駐車場の融
雪や社屋の暖房の取り組みも行われています。そして最近では黒部川の流
木を木質ボイラーで活用する新しい取り組みも始まりました。着実にエネ
図 2.街中を走る電気バス
ルギーシフトに向かっています。
○小水力発電で地域の重要な建築物を守る ~南砺市上平~
南砺市上平地区に点在する合掌作り家屋は重要な文化財として知ら
れています。しかしこれを維持するには屋根の葺き替えなどに費用が
かかる上、高齢化によって人手も足りず厳しい状況です。そこで上平
の小瀬集落の人たちが立ち上がり、地域住民による会社を設立して小
水力発電を始めることとなりました。庄川支流の小瀬谷川(図 3)を
利用した 160kW の発電所が現在建設中です。今年の 11 月からは売電
売り上げによって地域に利益がもたらされる見込みです。
図 3.小瀬谷川の流れ
○エネルギーシフトのかなめは地域の幸せ向上
地球環境問題というと CO2 排出削減、脱化石燃料、電力消費の節約などを考えますが、我慢すること、不
便になることがエネルギーシフトではありません。現代の科学技術を利用することで生活の豊かさを失うこと
なく化石燃料の消費を減らして海外への経済流出をおさえ、使われていない地域の資源を賢く使ってついでに
仕事も作り、仕事で得たノウハウを子や孫に伝えていくという「資源と知恵とお金」の循環を生み出すものが
エネルギーシフトです。富山県は全国でもまれな、そういう可能性を持った地域です。
講演者略歴:1957 年福井県出身、2004 年富山国際大学教授、小水力発電を中心に再エネ利用の研究に従事。
20
生物多様性フォーラム ―生物多様性は,私たちの命そのものを支えている。その保護と保全の
ために必要なこと、活用しながら守るこれからの農林漁業について
日本列島の大半の地域は、大陸から最後に分離して 45~60 万年を経て、その長い固有の歴史と温暖で湿潤
な気候、複雑な地形や地史の影響を受けながら、全世界でも類を見ない貴重な生物多様性のホットスポットに
なっています。富山県には、森林率の高さや積雪等の固有の自然環境の影響によってライチョウやイヌワシ、
ホクリクサンショウウオ、イタセンパラ(写真 1)に代表されるさまざまな野生生物がみられます。
これらの生物は、昔から乱獲や各種の開発事業などの脅威に曝されてき
ましたが、最近ではさらに地球温暖化、外来種の増加、シカやイノシシ
の侵入などの新たな脅威が加わっています。それらの生物を守るための
努力も専門家、アマチュア、一般市民などの多くの人々によって進んで
いて、最近は学生や地域住民などの市民も参加して、全国でも富山県内
でも、多くの活動が進められています。特に人と自然が昔から深い関係
を保つことで維持されてきた里山や里海では、自然のめぐみを持続的に 写真 1.氷見のイタセンパラ
利用しながら共存をはかる活動が各地で定着し、成果を挙げています。
この「生物多様性フォーラム」では、キーノート講演1で北陸地域でのいくつかの例とともに、一般市民を
含む多様な人々が保全活動に参加することの意義をお話しし、事例報告1、2では天然記念物や絶滅危惧種を
守るための、富山県内での先進的な事例を当事者の口から述べていただきます。キーノート講演2では、自然
のめぐみの持続的な活用の中で生物多様性を守る活動についての説明がなされます。事例報告3〜5では、さ
まざまな産業の営みの中で繰り広げられている、活用による保全の実例を紹介していただきます。また、これ
らの講演や報告の中で、絶滅危惧種や天然記念物に限らない、普通種を含む幅広い生物の保全の意義について
触れることによって、より多様な人々のより健全な保全活動への参加の機会を探りたいと思います。みんなで
自然や生物多様性の保護や保全の活動の輪をひろげていきましょう!
13:00 趣旨説明 横畑泰志
13:05 キーノート講演1.みんなで守る生物多様性
横畑泰志(NPO 法人立山自然保護ネットワーク理事長、富山大学教授)
13:35 事例報告1.農の営みが支える希少魚イタセンパラ 西尾正輝(氷見市教育委員会主任学芸員)
13:50 事例報告2.高校生によるホクリクサンショウウオの研究・保護活動 中薮俊二(高岡龍谷高校教諭)
14:05 (休 憩 1)
14:10 キーノート講演2.生物多様性を活かして生きる 坂田昌子(国連生物多様性の 10 年市民ネットワーク代表)
14:40 事例報告3.生物多様性に支えられて営む、「持続的有畜循環型有機農業の実践」 橋本順子(土遊野農場)
14:55 事例報告4.守って、活かし、育てる!~「生態系保全型林業」と、「森の大学校」
江尻 裕(Moribio 森の暮らし研究所)
15:10 事例報告5.世界へ広がる日本の定置網(仮題)
川向正明(定置網エバンジェリスト、TED×Himi)
15:25 (休 憩 2)
15:30 ワークショップ、まとめ(17:00 終了)
21
みんなで守る生物多様性
横 畑 泰 志 (NPO 法人 立山自然保護ネットワーク)
地球上には数多くの生物種が知られていて、同じ種の中にもさまざまな違いがみられます(生物多様性)。
しかし今、全世界の生き物は少なくとも 1 日に 50〜100 種の速さで失われていると考えられています。その
ほとんどは人知れず暮らしている名もない生き物ですが、そのほとんどが、生態系の中で多様な役割を担って
います。それらを守るには、専門家も一般市民も含めて、多くの人の協力が必要です。
○未知の種はどこにでもいる ―例えば、魚津の遊園地の芝生だったり 熱帯林や深海から未知の生物種が見つかったというニュースがたまに
流れてきます。でも、数十万年の長い間大陸から独立し続けている日本
の大半の地域には固有の生物がとても多く、ヨーロッパなどと違って昔
からの自然が身近に多く残っているために、しばしば非常に身近な環境
から新種の生物が見つかることがあります。今回は、南砺市の里山や魚
津市の遊園地の芝生のモグラの巣から次々に見つかったワラジムシの 3 写真 1.トヤマハヤシワラジムシ
さいがわしち
つの新種の例(写真 1)をご紹介します。残っている小さな自然を大切に (南砺市 才 川 七 産、体長約 6 mm)
することが、地球上の生物多様性の保全に結びついています。
○不要な種はいないか、いても他と区別できない ―ぼくらはみんな「で」生きている 人目につく大型の美しい生物が、優れた自然のシンボルとして優占的に保護の対象になることが増えてい
ます。そのことに大きな価値があるのは間違いありません。しかし一方で、生態系を支えている地球上の生物
種の大半は名もない生き物で、それらが果たしている役割はよく考えないと気づかない、意外なものが多いで
す。デング熱やジカ熱の病原体を運ぶ嫌われ者の蚊が、生態系の中でどんな大事な役割を果たしているか想像
できますか?仮に役割のない種がいたとしても、私達には区別できないでしょう。絶滅のおそれのある寄生虫
をレッドデータブックに載せようとする活動などに触れながら、すべての生物を守る必要性について考えます。
○誰でも守れる生物多様性 ―悶々としてる人、いませんか? 例えばライチョウの卵を動物園で孵して育てようとかすると、関われるのは一握りの専門家に限られてし
まいます。しかし、野生生物や生物多様性の保全に貢献したいけど、自分には専門的な知識も能力もなくて悶々
としている人は増えているのではないでしょうか。身近な生物がどこにどのように分布しているかといった調
査なら、わりと多くの人が貢献できると思われます。石川県と富山県の海岸生物の分布情報を集めて分析した
研究から、生物の分布の地道な調査の必要性について考えます。また、幸か不幸か多くの問題が私達の周囲に
満ちあふれているので、直接自然環境の保全に結びつく活動の中にも、一般市民が参加できるものが増えてい
ます。立山連峰での外来植物の除去作業を例に、誰でも参加・貢献できる自然保護活動について紹介します。
講演者略歴:1960 年大阪府出身。1991 年富山大学教養部講師、その後教育学部助教授などを経て、2013 年
より大学院理工学研究部教授。同年から NPO 法人立山自然保護ネットワーク理事長。その他に日本哺乳類
学会・哺乳類保護管理専門委員会委員、センカクモグラを守る会発起人、アースデイとやま実行委員など。
22
農の営みが支える希少魚イタセンパラ
西 尾 正 輝
(氷見市教育委員会)
私たち人間の活動により、地球上のさまざまな場所で自然のバランスが崩れ、生物多様性が脅かされる状
況になっています。日本に生息する淡水魚を例にとると、40%近くの種が、環境省によって絶滅危惧種に指定
されています。
○イタセンパラとは?―貝に卵を産む魚 イタセンパラ(写真 1)は、コイ科タナゴ亜科タナゴ属の日
本固有の淡水魚です。本種は、大阪の淀川水系や愛知県や岐阜
県にまたがる木曽川、そして氷見市に生息していますが、全国
的に数が著しく減少していることから、国指定天然記念物およ
び国内希少野生動植物種に指定されています。本種が子孫を残
すためには、卵を産みつける「生きた二枚貝(イシガイ)」や
二枚貝が繁殖するために必要な淡水魚「ヨシノボリ」や「オイ
カワ」などが生息できる環境が必要となります。残念ながら、
イタセンパラが卵を産むために必要な二枚貝も河川改修などの 写真 1. イタセンパラの産卵行動 も お
影響を受け、全国的に減少しています。 (万尾川にて撮影 左メス 右オス)
○水田耕作がイタセンパラの減少に歯止めをかけている 全国的に数が著しく減少しているイタセンパラですが、氷見市の万尾川では、毎年多くのイタセンパラの生
息が確認されています。その理由として、
(1)水田耕作により、5 月から 6 月の灌漑期には万尾川周辺部の水
田から万尾川へイタセンパラの餌となるミジンコなどの動物プランクトンが流入し、水田がイタセンパラの分
布や成長に良い影響を与えていること。
(2)イタセンパラの産卵期である 9 月から 10 月の非灌漑期には、万
尾川の水位が大きく低下し、そこに形成された浅場(25-33cm)や岸際の豊富な植生により、イタセンパラ
がサギやオオクチバスに捕食されることなく、安全に産卵を完結させることを可能にしていること。これらの
2 点があげられます。このように、人間の農事活動が、希少種であるイタセンパラの保全に有効であることが
最新の研究から明らかになってきました。
○希少すぎることは良いことなのか?―イタセンパラを県民・市民が育てる制度の構築へ
氷見市ではイタセンパラを希少種として扱うだけでなく、「市民の宝」であると位置づけて、みんなの手で
イタセンパラを育てていくために、環境保護の担い手である子ども達や市民の方々に「イタセンパラ守り人」
として登録していただく制度を設けました。イタセンパラ守り人の方々には、イタセンパラの観察会や野外調
査を通じて、イタセンパラの保護に加えて、広く生物多様性について理解してもらうことを目的にしています。
氷見市民に限らず、県内外からも「イタセンパラ守り人」を募ることで、次世代へイタセンパラを引き継ぐ活
動を広げていきたいと考えています。
講演者略歴:1980 年大阪府出身。2005 年より氷見市教育委員会の学芸員として勤務。専門は天然記念物保護
管理および魚類生態学。淡水魚が「食」としての身近な存在から、「希少種」としての保全的位置づけが大
きくなったことに危機感を覚え「氷見淡水魚食文化研究会」を設立。富山県希少野生動植物保護監視員。
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高校生によるホクリクサンショウウオの研究・保護活動
中 薮 俊 二 (高岡龍谷高等学校 理科部顧問)
高校生が取り組む自然科学部の探究活動の一環として、石川県中北部から富山県西部にのみみられる両生類
の絶滅危惧種ホクリクサンショウウオの繁殖地を守るため、地元自治会が用水路を江浚えする直前に卵を採取
し、江浚えの後で現地に戻すことで保護を続けています。地元でも繁殖環境の保全への理解が進み、本種の分
布の南限地でありながら、富山県内では野生最大の繁殖地になっています。 ○こんなところにホクリクサンショウウオが 2006 年 4 月、南砺市内で環境アセスメント報告のために両生類の生息調査を行っていた中で、水路内にホ
クリクサンショウウオの卵のうを発見し、近くに雄 2 匹も確認しました。調べると、これまでの南限より約 4
㎞南に位置する新発見の繁殖地であることがわかりました。 ○調べてわからないことは自分たちの手で なぜ、農業用水路でこのような絶滅危惧種が繁殖し続けてこられたのでしょうか。これからも生き残ってい
けるのでしょうか。そのためには、どの環境要因が守られ続ければよいのでしょうか。書物やネットで調べ、
他の繁殖地を見学しても答えが見つかりません。そこで、現地調査を中心に自分たちの手でホクリクサンショ
ウウオの生態と環境を探ることにしました。水源と水系調査から始まり、水質や土壌、生息生物、成体の陸上
での行動範囲と移動時の行動、冬眠からの目覚めと繁殖に向かう気象要因などをつぶさに調べ上げていきまし
た。 その結果、天敵はもちろん、競合種のクロサンショウウオ幼生さえ存続の脅威となっていて、流れがある浅
い素掘りの水路だからこそ繁殖を続けられた仕組みが見えてきました。また、長く続く水路の中で、枯れない
で水を保ついくつかの場所に集まって産卵し繁殖しています。さらに、池水が引き込まれる水系と湧水から始
まる水系とがつながっていたこともわかりました。 この複数の繁殖地点が水路でつながりをもつ状態は「メタ個体群」と呼ばれます。いずれかの地点で繁殖の
難しい多積雪や暖冬の年でも、地点間で補い合って繁殖しています。また、水環境が変化しても新たな産卵場
所ができるなど、野生最大の繁殖地になっている要因が見えてきました。 ○保全に配慮しつつ成果を幅広く 水路利用の地元自治会はもちろん、富山県の砺波農林振興 センターや自然保護課、富山市科学博物館などへ報告して生 息地保護への理解を図っています。また、高校生による部活 動での共同研究なので、日本学生科学賞や全国高校総合文化 祭などでも発表して研究交流を続けています。特に、降雨の ある夜間に直線的な大移動を行うことから、上陸した方向の 記憶があると予想され、頭部に見つかった生体磁石などとの 関係を探っています。一方、今年の産卵調査では、新たに 400 m南の別の水路中に雌雄(写真 1)が見つかり、旺盛な繁殖 力を備えた成体による新たな産卵地が誕生しそうな気配です。 写真 1.今年さらに南の水路に現れた雌雄 報告者略歴:1958 年富山県出身。1984 年より高岡龍谷高等学校理科教諭。理科部の顧問として部員生徒へ助
言を続ける。小矢部川の水質と生息生物などの研究により、1998 年第1回日本水大賞で国務大臣環境庁長
官賞を受賞。南限のホクリクサンショウウオの研究や保護活動により、平成 24 年度地域環境保全功労者表
彰を受賞。 24
活用することで守られる生物多様性 坂 田 昌 子 (国連生物多様性の 10 年市民ネットワーク)
○人も含めた生物多様性 直接的、間接的にお互い関わり合いながら生きている多様な生き物がいることを生物多様性と呼びます。こ
れには種の多様性、生態系の多様性、遺伝子(種内)の多様性の三つの段階があります。かつては、人と自然を
分けて考え、生物間のつながりを重視せず、希少種を天然記念物に指定するなど様々な取組みが行われました
が、生き物たちの絶滅のスピードはいっこうに減少しません。たとえば今、野生復帰の取組みが行われている
トキが生きていくためには、田んぼ等に彼らの餌となるドジョウやカエル、小魚がいなければなりません。し
かしこれらの生き物は農薬のためにすっかり減少してしまいました。トキはトキだけで生きているわけではあ
りません。トキを守りたければ、希少でも何でもない餌となる多様な生き物が必要であり、これらの生き物た
ちが暮らせる田んぼを復活させなければなりません。新潟県佐渡島では、多くの農家が無農薬、減農薬の田ん
ぼに転換したことによってトキの野生復帰は実現することができたのです。つまり、わたしたちの暮らし方と
生き物の絶滅は密接につながっているということです。生物多様性の保全には、自然と人間を対立的に考える
のではなく、人の営みとの調和が必要な場合が数多くあります。
○生物多様性を失うことは文化の多様性も失うこと 生物多様性の保全という言葉を聞くと「絶滅危惧種の話ですか?」とよく言われます。もちろんそれも含ま
れますが、生物多様性は人間以外の生き物だけの話ではありません。ある生き物が絶滅してしまえば、それを
食べたり使ったりする文化も消えます。場所によってことなる生き物、ことなる風土の中で育まれた地域の特
徴は消え、全国どこに行っても同じ食べ物、同じ風景になってしまいます。職業の多様性も失われます。大正
時代の職種は約 35000 種でしたが、現在の職種は 2167 種までに減ってしまいました。言語の多様性も失われ
つつあります。山菜を食べなくなった今の子どもたちは「えぐい」という言葉が理解できません。このように、
生き物がわたしたちの周りから消えていくことは、人の暮らしの多様性が失われていくことにつながります。
○自然の恵みを「活かして生きる」 地球が 6 度目の大絶滅時代に突入しているいま、世界中が危機感を持ち、1992 年に生物多様性条約が締結
されました。2010 年の COP10 では、2050 年までに生き物と人が共生する世界になることを目指して、2020
年までに達成すべき 20 の目標を締約国 194 か国が合意しました。これを愛知ターゲットと呼びます。この目
標の中には、絶滅危惧種や希少種の生息域の話だけではなく、生産と消費、農林水産業、伝統的な知恵の保全
など人の暮らしに関わる内容が多く盛り込まれています。
田舎に行くと自然が豊かであるにもかかわらず「こんな何もないところによく来たね」とよく言われます。
また、川の水を飲まなくなったとたん、平気でゴミが捨てられるようになり、薪や山菜など山の幸を獲らなく
なったとたん、山が荒れても誰も関心をもたなくなります。生活とは、自然を「活かして生きる」ことです。
どんな暮らし方や産業のあり方が「いきもの暮らし」につながるのか、様々な事例から学びながら具体的に提
案していきましょう。
講演者略歴:1960 年兵庫県神戸市出身。明治大学文学部東洋史学科卒業。東京都八王子市高尾山の圏央道ト
ンネル問題を契機に環境 NGO 虔十の会を立ち上げる。生物多様性条約締約国会議には COP10 以降継続的
に参加、国連持続可能な開発会議(リオ+20)にも参加し提言活動を行う。現在、国連生物多様性の 10 年
市民ネットワーク代表。
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生物多様性に支えられて営む
「持続的有畜循環型有機農業」の実践
橋 本 順 子
(土遊野農場)
Ⅰ.土遊野 持続可能な有畜循環型有機農業、暮らしの概要
里山の棚田と生物多様性を守り、かつ活用している。
① 有畜:鶏 1500 羽、やぎ 5 頭、あいがもの活用、犬、猫も仕事を。
② 循環型:自農場の鶏糞やもみがら、米ぬかを有機肥料に。田畑からでるクズ米やクズ野菜、あぜ草な
どを家畜のえさに。
③ 複合経営:人間や家畜の食糧自給を高めるとこうなる。 有機稲作(JAS 認証)、飼料イネ、平飼養鶏、有機野菜 40 種、小麦、そば、果樹シフ
ォンケ~キ、天然酵母パン、鶏肉、あいがも肉など ④ 有機農業:環境負荷をかけず、生物多様性を保全し、かつ活用する技術!
⑤ 小水力発電と太陽光発電と電気自動車 2 台の活用
⑥ 山の出水で人も家畜も暮らしている。
Ⅱ.微生物の活用と発酵の世界に支えられて。
① 土に生息する土着菌を活用し、甘酸っぱく、熱く発酵させた自家産の発酵飼料を鶏のエサに。自前
で、発酵鶏糞という有機肥料ができる。
② 有機の田んぼは、ビオトープ!ヤゴ、おたまじゃくし、ヒル、ゲンゴロウ等々
③ 竹林の整備ででる、竹チップの発酵力の活用~肥料にも、飼料にも活用できる。 ④ 味噌づくり、つけものづくり、塩こうじの活用は、伝統的日本の食文化
⑤ 森が土をつくり、水をつくり、田んぼは貯水池でもあり、多様な生物の生息地
森も里山も宝の山。それを活かすも、殺すも人次第。その人が里山に暮らさなくなったことは、緊急
の課題。土の集落では、今私たち家族4人とスタッフや研修生も含めて、10 代、20 代、30 代の若者
が 6 人、計 10 人が暮らしながら、森づくりや有機農業にとりくんでいる。
Ⅲ.先住種族(野生動物、絶滅危惧種の昆虫や動植物)との共生は日々の暮らしや有機農業の営農の重要課題 ① 太陽光活用のバッテリーによる電気柵の活用:イノシシなどとの共生に必須
② 道刈り、畔草刈りの大切さ~人と先住種族との住み分け
講演者略歴:茨城県出身。お茶の水女子大学卒。33 年前に東京出身の夫と共に富山の過疎の里山に入植し 循
環型有機農業を展開。きっかけは、足立原先生が提唱した草刈り十字軍と人と土の大学に参加したこと。現
在、
(有)土遊野農場にて小水力発電と太陽光発電も試み 環境教育、食育、いのちのぬくもり体験などを実
践している。
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守って、活かし、育てる! -「生態系保全型林業」と「森の大学校」
江 尻 裕 ・ 江 尻 美 佐 子 (一般社団法人 moribio 森の暮らし研究所)
〇森に寄り添った山村の暮らしを末永く伝えるために生態系を保全する 富山県南砺市利賀村では、ここ 10 年ほどの間に、急激に過疎化が進み、受け継がれてきた文化や、伝統的
な技術・知恵が失われようとしています。私たちが取り組もうとしている「生態系保全型林業」とは、健全な
生態系を維持すると同時に、「利賀村」という森に寄り添った山村の暮らしと文化を、末永く伝えようとする
取り組みでもあります。
○積雪3m超?建築材を育てる林業から多様な広葉樹資源 の活用へ 森林率 97%の利賀村は、イヌワシやクマタカが飛翔する豊かな 森林生態系に恵まれ、森林資源の適切な活用が、持続可能な地域 づくりの鍵といえます。しかし、積雪が 3 m を超える利賀村では、 育てたスギが雪の重みで曲がってしまい(写真1)、柱材生産中心 の、従来型の林業では、収益が上がらないのが実情でした。そこ で私たちは、自生している多様な広葉樹資源の活用を考えました。 ○「クロモジ」・・・森林資源の持続的利用のモデル構築 のために たとえば「オオバクロモジ」。クスノキ科の低木で、芳香があり、 爪楊枝の原料としても有名。某薬用酒メーカーが、クロモジの調達 先を探しているという話があり、様々な人の協力を経て原料出荷に 写真1.雪の重みで曲がったスギ 漕ぎつけました。出荷して分かったのは、原料として販売する場合の“価格の安さ”。収穫のコストを考える
と持続的な利用は無理。あれこれ考えて辿り着いたのが地域で付加価値を付ける「クロモジ茶」。この他、ク
ロモジアイスにアロマオイル、入浴剤や和紙など、部位ごとに余さず使い切るよう工夫、また収穫後の資源の
回復状況をモニタリングして、資源量の回復可能な範囲での持続可能な利用の仕組みづくりを目指しています。 ○森のソコヂカラを発揮する「生態系保全型林業」とそれを支える人材育成「森の大学校」 利賀村では、戦中・戦後の薪炭利用やその後の復興期需要で、長い年月をかけて蓄積されてきた天然林の
多くが一度伐採されました。その後、70~80 年かけて、現在私たちの眼前にある広葉樹二次林が再生してい
ます。これこそ、地域の森林の本来持っている可能性、即ち「ソコヂカラ」です。私たちは、本来の自然植生
など、生物多様性を維持しつつ、そこから生まれる多様な生態系サービスの持続的な利用を目指す「生態系保
全型林業」に取り組み始めました。同時に、新しい林業を支える人材の必要性を痛切に感じ、植物資源を見分
ける力や、それを活かした事業の創出とコミュニケーション能力、目標となる森林を思い描き、誘導するため
の知識と想像力を兼ね備えた技術者を育成する、
「森の大学校」の設立に向けて動き始めました。こうした「生
態系保全型林業」による、森と人との新しい関係性の構築は、全国の山村において、「喰いっぱぐれない」地
域づくりにつながると信じています。 講演者略歴 江尻 裕 :1967 年富山市生。1999 年静岡県職員を退職し、林業を志して利賀村へ移住。 江尻美佐子:1969 年相模原市生。1999 年、“田舎暮らし”にワクワクしながら家族と共に移住。 以来 2 人で、山村生活の荒波?に揉まれながら、
“利賀魂”と“山で生きる力”を徐々に習得。2014 年「森
に寄り添った持続可能な暮らし方の提案」をテーマに一般社団法人 moribio 森の暮らし研究所を設立。
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「クロモジ」森林資源利用のモデル
使う資源は使い切る!
その他の部分
蒸留してアロマオイル
その他の部分2
浴溶剤・足湯剤に
細い枝(φ5mm以下)
クロモジ茶に
幹(φ2cm以下)
薬用酒原料に
太い幹
和紙・たとう紙
クロモジ扇子に
付加価値をつける
少ない収量で収益アップ
原材料出荷から
地域で商品化へ
円/kg が 100 倍!!
つまり・・・
環境への インパクト/円が
1/100 に!!
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⽣生態系の保全に配慮した、⽣生態系保全型林林業=「環境林林業」の実践
1.「環境林林業」の検討・実践・修正
2016 年年より、南砺市及び南砺市利利賀村地域のご協⼒力力を頂き、南砺市有林林や地域の共有林林をにおいて、2015
年年度度にとりまとめた、⽣生態系の保全に配慮した「環境林林業」の⼿手法を実践・試⾏行行し、各プロセスにおける成果や
課題を検証・フィードバック、これを専⾨門家による「環境林林業」検討チームで検討・修正し、より実践的で効果
的な⼿手法の確⽴立立を⽬目指す。
2.順応的なアプローチ
私たちが⽬目指す、⽣生態系の保全に配慮した「環境林林業」は多様な要素による複雑で動的な関係性の上に成⽴立立す
る⽣生態系を対象とするが故に、データと仮説に基づく計画の⽴立立案とその実施というプロセスには必ず不不確実性が
伴う。このため、「環境林林業」の実施に当たっては、実践によって得られた結果をフィードバックして修正する
⼿手順を組み込んだ、順応的なアプローチが求められる。
3.”⽣生きたマニュアル“
私たちの最終的な⽬目標は、本活動のフィールドである利利賀村地域に限らず、様々な地域の森林林を対象に敷衍で
きる⽣生態系に配慮した森林林管理理のための⼿手順を開発・提供することにある。それは同時に、提供された⼿手法に基
づく森林林管理理が実践される現場から、新しく得られた知⾒見見・データに基づいて⽇日々アップ・デートされていくと
いった、順応的管理理の⼿手法に基づく”⽣生きたマニュアル“でなければならない、と考えている。
4.効果の検証・・・保全効果をHEP等により検証
「環境林林業」における⽣生態系の保全は、主に「⽣生物多様性」という指標を基準に測ることを想定している。本
活動では、その効果を客観的に検証するために(公財)⽇日本⽣生態系協会が開発した「C-HEP」を活⽤用したい、と考
えている。HEPとは、特定の⽣生物を対象に、その⽣生息空間としてどの程度度適しているか評価する⼿手法であるが、
前述の「C-HEP」は、事業活動の実施者が、⼯工事の中で実施した⽣生物多様性保全の措置によってどの程度度、⽣生物
多様性が保全されたかを評価することを⽬目的に開発された⼿手法である。実践された「環境林林業」による⽣生物多様
性の保全効果を客観的に評価することで、その妥当性を検証、課題を抽出し、「環境林林業」という⽣生態系に配慮
した森林林管理理の枠組みをより実効性の⾼高いものに修正していくことを⽬目指す。
5.費⽤用負担の仕組みの検討・・・“国内版 REDD+”を⽬目指して
⽇日本の森林林⾯面積は 248,609 ㎢、このうち、いわゆる「過疎地域」に所在する森林林の⾯面積は 158,467 ㎢、実に
63.7%に達する。⼀一⽅方で、この「過疎地域」の⼈人⼝口は、2010 年年の国勢調査の時点で 11,355 千⼈人、全⼈人⼝口の
「過疎地域」には、平野部の農村・漁村も含まれ
8.9%に過ぎず、その減少傾向はさらに加速している感がある。
ていることを思えば、その偏りはさらに著しいものと想像できる。
森林林における⽣生態系保全の脆弱性の重要な要因の⼀一つが、
森林林の、過疎化の進⾏行行する⼭山村地域への偏在であり、
⽣生態系から得られる多様なサービスの受益者である都市の住⺠民も含めた、より広域で森林林を⽀支える仕組みづくり
が求められている。国内版 REDD+ともいうべき新しい枠組みによって、これを達成したい。
⼀一般社団法⼈人 moribio 森の暮らし研究所の取り組み
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生物多様性とエコで持続可能な越中式定置網
川 向 正 明 (TEDxHimi ファウンダー、HAPPY PROJECT LLC)
みなさんが日ごろ食べているお魚は、どこでどうやって獲られているかご存じですか?富山湾では、主に
定置網漁法と呼ばれる漁法で獲られています。今日は、定置網についてお話ししたいと思います。
○400 年の歴史を誇る越中式定置網 前田のお殿様が秀吉に仕えていたとき、灘浦(現在
ぶり
の氷見市)から 鰤 を塩鰤にして京都に送りなさいとい
う書状が残っています。ここに初めて「鰤」という字が
登場しています。当時から氷見の寒鰤は時の将軍も食べ
ていたぐらい、すでにブランドになっていました。また
交通手段が発達していないので、京都まで持たせるよう
に塩鰤にしています。武士の文化なので背中に包丁を入
れて、そこから塩を入れていたのも興味深いです。この
寒鰤で有名な越中式定置網(写真 1)、実は環境保全に
とても貢献しています。
写真 1.定置網空撮(氷見市観光協会提供) ○網に入った魚の8割は逃げる なんて非効率だと思いませんか?でも、海の魚も限りある資源です。昔は魚の少なくなる夏には1~2ヶ
月ほど漁を休んでた時期もありました。そうやって自然と共存してきました。定置網は、構造上入口が開いた
ままなので、網に入った魚の7~8割は逃げることができます。そうすることによって逃げた魚が産卵し、ま
た次の世代として戻ってくることができます。 ○生物多様性と持続可能性 日本海には約 800 種の魚が生存していると言われます。そのうち食べられる種類が約 500 種類。 富山湾
では、そのうち 200 種類、人によっては 400 種類獲れるといわれています。富山湾では、主に定置網漁法と
呼ばれる漁法で獲られています。いまの漁網はナイロン製ですが、昔は自然の素材で作られていました。ロー
プはわら縄、漁網は麻縄で。浮きは木片や竹で作られていました。海につけるので柿渋でコーティングをして
いました。それでも3ヶ月から半年で寿命になるので、漁網は切って海に落としていました。それはそのまま
漁礁になり小魚の住処になったり産卵場所になったりしました。落とした網はプランクトンが分解し豊かな海
になっていきました。また魚の内臓などは田畑の肥料になって陸に戻っていきます。こうして陸のものが海に
入り、また海から陸に還って循環していたのです。
講演者略歴:1967 年京都府出身。1991 年単身渡米。MBA 取得後、リベラルアーツカレッジにて会計学講師、
5 大会計事務所勤務、シリコンバレーの IT ベンチャーでアカウンティングマネージャを歴任したのち 2003
年帰国。日本では外資系企業でホテル運営のファイナンスディレクターなどを経て、氷見の観光プロモーシ
ョンのため 2012 年より氷見で活動を行う。2014 年はカナダで開催された TEDActive に参加、富山の越中
式定置網を参加者に紹介。2016 年 TEDxHimi 開催。その他に Code for Himi 主宰。
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開発と暮らしフォーラム 開発問題に対するアグロエコロジー運動。ラオスに見た真の豊さ。
里山里海と共に生きる伝統知から、未来のライフスタイルを考える。
特に産業革命以降において、人類は急速に開発の速度を早め、規模を拡大してきましたが、20 世紀後半に
は、その歪みともいえる環境破壊による問題が明らかになってきました。日本ではまず公害として認知され、
国内の公害が少しずつ改善されるに従って、グローバル社会による世界全体、中でも政治的経済的に弱い立場
にある国々に、開発の負の部分が押しつけられることが顕著になってきたのです。自国の利益だけを求める政
治体質と、国よりも自社の利益を求める多国籍企業によって、近年の開発はどこかにしわ寄せを押しつけるも
のとなっているのですが、これをどうすれば解決できるのかは、必ずしも明確ではありません。
昨年国連の「持続可能な開発サミット」で、193 の加盟国が「我々の世界を変革する;持続可能な開発のた
めの 2030 アジェンダ」を全会一致で採択していますが、私たち
はこれを検証しつつ、実際に何ができるか、何をすべきかを考え
て、実践する手掛かりとしたいのです。そこ
でアジェンダの SDGs を理解することから始めて、世界の動向を
学び、ラオスから具体的なヒントを得ながら、私たちはどう関わ
ればいいのかを考えます。そして後半では国内に目を向け、実際
に能登半島で始まっている「懐かしい未来の暮らし方」を学ぶこ
とで、私たち生活者の可能性を考え、今何が問題でどうあればい
いのかを捉え直してみたいと考えます。
13:00 趣旨説明&進行 磯辺文雄
13:05 事例報告1.次のゴール、「持続可能な開発目標」(SDGs)に向かって 星野智子(環境パートナーシップ会議 副代表理事)
13:10 キーノート講演1.気候変動、食料主権、生態系による危機と 対抗策としてのアグロエコロジー いんやく
印 鑰 智哉(オルター・トレード・ジャパン政策室長)
13:35 キーノート講演2.ラオスに見る“懐かしい未来”と教育(ESD)の可能性
河内かおり(ソーシャルワーカー)
13:50 事例報告2.フェアトレードという支援を越えて支え合う関係へ
吉岡知一(pray to nam~水の祈り~)
14:00 (休 憩 1)
14:05 キーノート講演3.里山里海(Satoyama Satoumi)と持続可能な社会
中村浩二(金沢大学里山里海プロジェクト代表、金沢大学客員教授)
14:30 事例報告3.奥能登の伝統的な暮らしに学び、買う生活から創る生活へ
小林貴顕(自然農ガットポンポコ、石川県珠洲市在住)
14:40 キーノート講演4.生態系の中に自分を位置づけて暮らすということ
加藤大吾(都留環境フォーラム代表理事)
15:00 キーノート講演5.ワールドシフト/都市生活者の意識改革(パラダイムシフト) 谷崎テトラ(放送作家、ワールドシフトネットワークジャパン代表理事)
15:25 (休 憩 2)
15:35 ワークショップ、まとめ(17:00 終了)
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次のゴール、「持続可能な開発目標」(SDGs)に向かって
星 野 智 子 (一般社団法人 環境パートナーシップ会議)
2015 年 9 月、国連で 2030 年までの未来に向けた国際目標「SDGs(Sustainable Development Goals、持
続可能な開発目標)」が採択されました。この目標の正式名称には「私たちの世界を変革する」という、強い
言葉が添えられています。気候変動、生物多様性の損失、貧困や格差、平和や人権など、地球上のさまざまな
課題に対し、世界の誰もがこの新しい目標に向かって、各地で力を合わせてこれらに取り組むことが求められ
ています。
○SDGs の特徴 SDGs は、2012 年にブラジルで開催された国連持続可能な開発会議において策定することが合意されまし
た。2015 年まで掲げられていた「ミレニアム開発目標(MDGs)」と違い、途上国の貧困や保健衛生について
取り組むだけではなく、私たちのライフスタイルや経済活動を見直すなど、先進国も対象国となっていること
や、
「誰一人取り残さない:Leave no one behind」というメッセージを含み、社会的に弱い立場の人にもしっ
かりと目を配ることを目指しています。策定プロセスには国連機関や政府だけでなく、多くの NGO、市民社
会組織も参加しました。そのため多様な意見、視点が盛り込まれ、目標の数は 17 になりました。持続可能な
社会をつくるために大切な要素として5つの P(People:人間、Planet:地球、Prosperity:繁栄、Peace:
平和、Partnership:パートナーシップ)が示されています。
○私たちの暮らし、社会
を見直すきっかけに。 国際目標なので、日本の社
会にそのままあてはまらな
い項目もあります。この目標
を参考にして、自分たちの社
会に目を向け、地域も地球も
健全であり続けるためのヒ
ントを得てもらえたらと思
います。そのためにそれぞれ
の個人や組織が力を合わせ、
パートナーシップで課題解
決に取り組むことができるように呼びかけます。
講演者略歴:
「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の 10 年」の推進、2008 年洞爺湖サミットにおける環境 NGO 活動をサポート。現在は地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)の運営を行う環境パートナーシップ 会議(EPC)の副代表理事として、対話の場づくりなどパートナーシップ推進を行う。(特活)アフリカ日本協 議会、(特活)国際協力 NGO センターの理事や SDGs 市民社会ネットワーク世話人を務める。
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気候変動、食料主権、生態系による危機と 対抗策としてのアグロエコロジー 印 鑰 智 哉 (オルター・トレード・ジャパン政策室) 現在の世界はさまざまな危機に直面しています。気候変動は猛威を振るい、それは毎年、悪化の一途を辿り、
干ばつなどの異常気象で飢餓に直面する人びとの数も増えています。現在の世界の農業生産は世界の人口の3
倍を養える量に達しているにも関わらず、飢餓人口はなくなりませんが、この気候変動の結果、その数は今後
増えてしまうことが危惧されています。 また、世界各国で糖尿病や肥満がますます大きな問題となっています。飢餓と栄養失調と糖尿病や肥満が同
時進行し始めています。 さらに以前は考えられなかったようなアレルギーや自己免疫疾患などで苦しむ人が増え、ガンはますます多
くの人が関わる病気となり、薬の効かない伝染病の脅威も大きくなっています。 さらに土壌がどんどん失われ、水資源が枯渇し始めています。ハチや蝶などをはじめ、さまざまな生物が死
に絶えようとしています。そして社会の貧富の格差はますます拡大する一方です。 生態系、人びとの健康、社会の破壊、こうしたまずい悪循環はどのように反転させていくことができるでし
ょうか? 今、世界でアグロエコロジーが注目されています。この動きは特にラテンアメリカで 1980 年代から始まり
ましたが、現在では北米、ヨーロッパ、アフリカ、アジアへと世界中に広がり、ラテンアメリカの諸国の政策
に採用されたばかりではなく、フランスやインド政府の政策でも取りこまれ、2014 年には世界食料農業機構
(FAO)もその重要性を認め、世界的に推進するに至っています。 このアグロエコロジーがいかに、現在の世界が抱える諸問題への解決の鍵となるのか、諸問題を作り出す工
業型農業への対抗軸として、アグロエコロジー運動が育ってきた背景を見ながら、考えたいと思います。そし
て、日本やアジアでの可能性を考えます。 講演者略歴:ブラジル社会経済分析研究所(IBASE、リオデジャネイロ)、Greenpeace などで活動し、 2011 年から現職、オルター・トレード・ジャパン政策室長。 33
「ラオスに見る“懐かしい未来”と教育(ESD)の可能性」 河 内 か お り ソムバット・ソムポーン氏は、ラオスにおける貧困削減や次世代の教育と地域開発の分野における生
涯に渡る貢献が評価され、社会指導部門において 2005 年にアジアのノーベル賞とも呼ばれる、ラモン・
マグサイサイ賞を受賞した教育者/社会活動家です。「物質的な幸せだけが真の幸せではない」。最貧国
と知られるラオスですが、自然と共生する暮らしが営まれ、自然の恵みの恩恵を受けるため知恵が伝承
され、精神的に豊かであることに焦点をあて、ラオス人自らが再認識し、自分たちで価値を見いだすこ
とを教育に盛り込んだ、参加型開発訓練センター(PADEC)を設立し、教育を通した持続可能な開発の
道を模索してきた 30 年の取り組みを紹介します。
○「真の国民の幸福(Genuine National Happiness: GNH)」を開発すること
持続可能な開発モデルは、教育が中心となって①環境の調和(森林の劣化を抑え、水資源を守るなど
環境や自然資源の保全、保護)、②経済開発(自給的な経済の強化を中心にすえた家計と地元経済の活性
化)、③文化の推進と保護、④こころと知性の発達(内面、精神の発達)の4つのバランスがとれてい
るものを基本とします。そして、ラオス人は幸福や満足を、持続する開発や持続する生計手段だと考え
ますので、ブータン王国が提唱する「国民総幸福」
(Gross National Happiness)からさらに、数値化す
る必要のない「真の国民の幸福論」への道を進むことを望みます。
○ “意識やものの見方(マインドセット)”の変換に働きかける“統合教育” 不平等・地球温暖化・生物多様性の破壊などの問題が山積みの状況に対して、意識やものの見方、思
考の転換がない限り、根本的な解決策は生まれません。既存の学校という枠を越えた“統合教育”は、
生活し、生計をたてること、生きていくスキルを身につけることに根ざしたものであり、地域に暮らす
人たちとの交流を含めた学びを通して、自ら経験し、学んだことから子どもたちが「自分で価値を見い
だす」ことに重点を置いています。すでにある持続可能で循環する暮らしや、受け継がれる知恵に豊か
さを見いだします。 ○教育の開発プロセスに若者たちを参加させるモデルと早期教育の取り組み 年齢の低い小学校や中学校、大学レベルでの課外活動を中心に行い、リーダーシップスキルを育成し、
育成した人たちを教育や学校システムそのものの向上に協力させるモデルができ上がりました。若者に
焦点をしぼる理由は、長年開発教育に取り組んで来た結果、自分の考えやものの見方を転換する柔軟性
は年齢に関係しているという結論に至ったからです。若者たちは過去の成功と失敗を大人たちから学ぶ
ためにも、開発計画の段階から参加することが必要です。 ○ 大きく立ちはだかる課題:人権問題をどう解決していくのか 現在ラオスでは著しい経済成長の陰で、土地収奪に関わる問題が急増しています。2012年10月にラオ
ス・ビエンチャンにて開催された「アジア欧州市民フォーラム」では、土地を奪われ生活ができなくな
ったという市民からの訴えがあった。「経済を発展させ、投資を促進することで人びとの土地の所有権
を脅かしてはならない」と発言したソムバット氏は、その2ヶ月後に誘拐事件/強制失踪に巻き込まれ、
未だに消息が不明で、人権問題として国際的に大きく取り上げられています。
講演者略歴:東京都出身。米国ネブラスカ州立大大学院ソーシャルワーク修士(MSW)。貧困地区にある学童に 演劇を取り入れたピア・ラーニング・プログラムを考案。サンディエゴにて主に終末医療の現場/ホスピス で、ソーシャルワーカーとして就業。「死」という最期を、尊厳を持ちながら、その人が望むように最後ま で生きられるよう支援にあたる。帰国後、東京にてカウンセリング業務に従事するが、東日本大震災を契機 に夫の郷里である富山県魚津市に移住。自然農で自給する中、教育の自給を模索している。2015 年にラオ スを訪れた際にソムバット・ソムポーン氏の取り組みに出逢う。 34
フェアトレードという支援を越えて支え合う関係へ
吉 岡 知 一 ・ 栄 子 (pray to nam~水の祈り~)
私達の住む日本には、この星のいろいろな国でつくられた物で溢れています。経済的に"貧しい"と言われる
国々からの物も沢山あります。車もなかなか持てない所からの原料や製品が、買い叩かれてしまうこともあり
ます。そんな不公平な取引を止めるために作られた貿易の仕組みが、フェアトレードです。
○フェアトレードは基本 私達は今迄、成長と言う一方向の時間軸の中を歩い
て来ました。
その時の中では"公平"というより"勝者"のみが成長
を続けることが出来る図式があるように感じます。
本当にそれでよいのでしょうか?
誰かだけが成長し、生き残る…
この世界は、その様な世界なのでしょうか?
私達は"私"以外の存在なしには生きていけません。
全てはかけがえのない存在です。
私達は、作る人、売る人、買う人、全てにフェアで 写真 1.種から布へつむぐ未来
あることを基本と考えています。
○めぐる時間の中を生きる 私達の住む水の惑星地球。この美しい星の上で全ては巡っています。
その巡りの中で、"経済的に先に発展した人々の価値観"を一方的に押し付けてよいのでしょうか?
"豊かさ"とは、"貧しさ"とは何を意味するのでしょうか?
私達は物質的には恵まれ、便利な生活を享受していますが、大切な知恵や文化などを沢山失ってきました。
今この瞬間にも、大切な知恵や部族、生きもの達でさえ失われています。
くい止める事は出来ないのでしょうか?
大切な知恵を繋いで暮らす人々の、伝統的な暮らしを支える事は出来ないのでしょうか?
お互いの存在に、思いやりと尊敬の気持ちを持って、お互いのよい所を生かし合う関係を築いていく事が出
来たら、そこから新しい、輝く未来が見えてくる氣がします。
講演者略歴:二人共に 1973 年生まれ。アパレル業界を経て 2003 年に自然農に出逢う。2011 年の震災後、ラ
オスの布と出逢い、水を汚さずに生きる知恵を学ぶ旅を家族 5 人で続けている。ラオスにある saoban とい
うフェアトレード団体の力を借りて、タイルー族の人々と在来種の綿と、伝統的な暮らしの中から生まれる
布作りの知恵を繋ぐ活動を続ける。
35
里山里海(Satoyama Satoumi)と持続可能な社会
中 村 浩 二 (金沢大学里山里海プロジェクト)
地球規模では、いまも人口爆発、大規模な乱開発、資源とエネルギーの大量消費による環境破壊が進んでいます
が、日本の里山里海は、自然と共生した持続的資源利用のモデルとして国際的に注目されており、生物多様性条約
や世界農業遺産の国際会議では "Satoyama Satoumi" がキーワードとして通用しています。いっぽう、北陸はじめ
日本各地の里山里海は、厳しい過疎化と高齢化にさらされており、「集落崩壊」、「地域消滅」が危惧されています。
いま地域の力を取りもどし、元気な日本をつくるには、どうすればよいのか。里山里海資源の活用、人材育成、国
際連携をキーワードにして考えます。 ○里山里海とは? なぜ重要か 里山は、農林業により長年にわたり形成されてきた農村生態系です。集落とその周りにある2次林、農地、ため
池、草原などからできており、国土の 40-50%,石川県では 70%を占めます。里山は、食料、木材を生産し、水田
は水害を防ぎ、林は空気を浄化し、集落には伝統文化が伝えられています。この機能を、最近の用語では「生態系
サービス」といい、それぞれ供給サービス、調節サービス、文化サービスといいます。里山は、そこにすむ住民だ
けでなく、都市住民にも利益をもたらしています(農林業の多面的・公益的機能)。 里海は、漁業、水産養殖などの人の活動により形成・維持されている沿岸生態系です。食料をもたらし、伝統文
化とレクリエーションの場であるとともに、気候緩和、炭酸ガス吸収をおこなっています。森(里山)から沿岸(里
海)までが、人の活動と水循環によりつながっており、一体的に総合管理する必要があります。 ○里山里海の国際化〜Satoyama Satoumi コンセプトが定着 2010 年に名古屋で開催された生物多様性条約第 10 回締約国会議(COP10)では、「国際里山イニシャティブ・パ
ートナーシップ」(IPSI)が発足しました。2011 年に「能登の里山里海」が、佐渡の「トキと共生する佐渡の里山」
とともに「世界農業遺産」(Globally Important Agricultural Heritage Systems、GIAHS)に、日本ではじめて(先
進国としてもはじめて)認定されました。その後、日本からはさらに6地域が認定されていますが、すべて地域の
個性ゆたかな里山環境です。今年3月にはユネスコにより、「白山エコパーク」が認定(正確には拡張認定)され
ましたが、これには環白山4県にまたがる広大な里山域が追加されています。 ○人材育成と国際連携 金沢大学では、里山里海資源を活用して能登を活性化する若手人材「里山里海マイスター」の養成事業を 2007
年から実施しており、これまで 128 名(大都会からの I・U ターンを含む)が修了しました。2013 年度からは、
フィリピンのイフガオ棚田(世界文化遺産、世界農業遺産に認定)との連携事業「イフガオ里山マイスター養成プ
ログラム」を実施中です(JICA 事業)。近年、イフガオでは若者が都市部へ流出して耕作放棄地が増加しており、
棚田の維持が危ぶまれまれています。イフガオでの人材養成事業との連携は、能登の国際化をもたらし、活性化に
つながることでしょう。 講演者略歴:1947 年兵庫県生。1970 年京都大学農学部卒、金沢大学理学部教授(生態学担当)、同・環日本
海域環境研究センター長等をへて 2013 年定年退職。現在、客員教授。金沢大学里山里海プロジェクト代表
として「能登里山里海マイスター育成プログラム」、フィリピンにおいて「イフガオ里山マイスター養成プ
ログラム」などを運営。能登半島と石川県の里山里海の保全、総合活用、地域再生に取り組んでいる。 36
里山里海とは?
2
○
cf
�
�
1998 �
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○
�
中山間地域�
�
○昔は、農家の生活に密着(薪・炭,落葉,緑肥・・)�
○日本の
SATOUMI
いま、人は自然から切り離されている�!
������������→�「里山ノスタルジー、ユートピア」�
○
cf.
�
世界農業遺産(GIAHS)�
�
「能登の里山・里海」(七尾市を含む8自治体)�
グローバル・アセスメント�
�
ミレニアム生態系評価�
Millennium Ecosystem�
Assessment (MA)�
生態系サービス�
(Ecosystem Service)�
評価�(Assessment)�
�
�
情報に付加価値�
2011.6.11�GIAHS北京フォーラムで、�
佐渡市の「朱鷺と暮らす郷づくり」と同時認証�
�
「ユーザー」=�関係者�
��������������(Stakeholder)�
サブグローバル・アセスメント�
�
日本の里山・里海評価�
Japan Satoyama Satoumi �
Assessment�
(JSSA)�
�
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里山の全体像、�処方箋�
里山の国際評価�
�
国際視点からの定義�
SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)�
評価手法の確立�
(環境省、国連大学等)�国連・生物多様性条約局�
将来に向けてのシナリオ分析�
�
0k
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世界農業遺産(GIAHS)�
能登の里山・里海(石川県七尾市、輪島市、珠洲市等の8自治体)�
FA0
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里山里海の荒廃!
Deterioration of Satoyama Satoumi�
Serious depopulation and aged
populatio in Noto!
!
面積:東京都とほぼ同じ Area : Same�
PopulaBon.in.OkuDNoto.
人口:東京都 Tokyo Population (1200万人)�
能
15!
登半島 Noto (23万人)�
����
15
13!
⇒2030年には10万人�
Noto Peninsula!
Trend.
11!
7
9!
5!
Tokyo!
集落崩壊�
生態系の崩壊,伝統文化の断絶�
(Takeuchi,.et.al.).
Ecological.resilience.
New.Commons.
New.business.models≈≈
Collapse of ecosystems and local culture!
可能性と「強み」�
Rich local resources!
! 豊かな里山里海!
! 伝統産業・食品加工技術!
�トキの舞う自然環境への可能性����
37
2000!
1800!
1600!
1400!
1200!
1000!
800!
600!
400!
200!
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S35!
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S50!
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Age.distribuBon.
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70!
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90!
95!
100
Collapes of!
villages!
7!
Number!
Marginal ! 限界集落�
villages!
Age!
地域再生人材創出拠点の形成�
能登里山マイスター」養成プログラム�
Noto Satoyama Meister Program !
!
●
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→
Many!years!
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●
Apr.!2010
160km
JICA
GIAHS
!
!
JICA Technical Cooperation for Grassroots Project (Special Program)�
Human Resources Development Program for the Sustainable Development of Globally Important
Heritage Systems (GIAHS) Designated Site “ Ifugao Rice Terraces” in the Philippines�
Staffs!
「能登の里山里海」�
健康、福祉、教育に活かす�
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能登に学んだ「作る」暮らし
小 林 貴 顕 (自然農 ガットポンポコ)
能登半島の最奥地、私の住む珠洲市では、身近な資源を利用した地域循環型の日々の暮らしが、
今も生きています。集落は海と山に囲まれ、暖かい地域と寒い地域両方の魚介や植物が採れると
いわれる場所です。豊富な天然資源を背景に、地域の住民同士のつながりを大切にする文化に育
まれた、「作る」暮らしの実例を紹介します。
○身近な資源を利用して必要なものを作る 豆腐を作るには、大豆から搾った豆乳に「にがり」 と呼ばれる塩化マグネシウムを主成分とした液体を混 ぜて、固めるのが一般的です。私の住む地域では、に がりの代わりに集落の海で汲んで来た海水を使います。 豆腐を海水で作ると、とても豊かな味になります(写 真1)。 その他、塩、甘味料、酢、出汁、油、水、建築、ス
トーブなど、地域で昔から行われてきたことや、そこ
にヒントを得て私が始めたことを紹介します。
写真 1.海水で固めたよせ豆腐
○豊かな自然利用~集落と山や海との関係について~ 私の地域の区長さんがことあるごとに「前に手を伸ばせば海があって、後ろに手を回せば山が
ある。ここいらは生きるのにお金のいらない、いいところです。」と言います。日本全国、田舎
と呼ばれるようなところで暮らすということは、そういうことなのかなと思います。集落の人々
が、日常どのように自然環境とかかわり、食材を得ているか。山菜や、シタダミと呼ばれる貝類、
タコ、海苔を例に紹介します。
○お裾分けという文化 私の住む地域には、お裾分け交流の文化があります。山菜や魚介などが沢山採れた人や、季節
の料理を沢山作った人が、親類や友達、ご近所に配って回るお裾分け。そこには金銭のやり取り
や貸し借りのからまない、純粋な気持ちの繋がりがあります。人から頂いた分の気持ちは、また
別の機会に別の形で、別の人へ渡していくということが日常的に行われています。お裾分け文化
がなぜ成立しているのか。集落でのお裾分けの日常を例に紹介します。
講演者略歴:1974 年石川県出身。カメラマン、IT 職などを経て、2010 年に同県珠洲市へ移住。屋号を「自
然農 ガットポンポコ」とし、農を中心とした作る暮らしを実践する。金沢大学「能登里山マイスター」、
横山振興会理事など
39
生態系の中に自分を位置づけて暮らすということ
加 藤 大 吾 (NPO 法人 都留環境フォーラム)
○家畜とともに暮らす循環する仕組み うちの家畜が食べるものは割れてしまったお米、小麦、大豆はもちろん、同じ畑から穫れるけれど、私たちが食
べることのできない部分、藁や大豆の莢、野菜の蔓や茎の部分を食べています。羊は大豆の莢が大好きで、大豆の
収穫が終わってトラックいっぱい大豆殻を持ってくると、「メーメー」「ベーベー」鳴きまくって、ねだる。かな
り美味しいらしい。羊もニワトリも庭に放したり、裏山に散歩に出かけてそれだけでは不足する栄養素を、生態系
が育んでくれた裏山や耕作放棄地から自分で探し出して食べるのです。 僕が作ったうちの羊小屋は臭くない。誰がきてもみんな不思議がる。それは床を発酵させるように作ったからで
す。当たり前だけど、家畜達は毎日、糞と尿をします。これが混ざってドロドロになると汚すし、臭いし、どうに
も都合が悪いのです。だから、充分に水気を吸えるように最初から未完熟の腐葉土を大量に入れておいたのです。
その上に糞や尿がたっぷりされても、きちんと吸収してくれるし、更に発酵がはじまります。この上に家畜が食べ
残した藁の先っ穂などが乗っかって、また発酵の材料になっていきます。こうして菌の餌となっていく。この小屋
さえうまくデザインできれば、快適で清潔に家畜と暮らすことができ、この生態系が更に活発に働いていきます。
つまり、作物が使うことのできる肥料が増えていくのです。もしも、農薬や化学肥料をいれるとどうなるか?この
菌の働きを極端に鈍くしてしまうでしょう。何とももったいないことなのでしょう。この後、家畜小屋の床は時間
をかけて良質の自家製有機肥料になって、また田畑を通して野菜や穀物という形になって、この循環の仕組みに戻
ってきます。菌が食べるものからはじまる循環の中から僕たちが食べるものを少しずつ分けてもらうのです。それ
を上手につないでくれるのが家畜や菌で、彼らは毎日卵を、時々お肉を、毛を、肥料を分けてくれるのです。 ○全体としての幸せ 毎年、海外からの視察を受入れています。南太平洋や東南アジア諸国からの20名~30名の若者たちは日本に到着
後の数日はハイテクノロジーの世界を視察します。そして僕の家に来るのです。自分で開拓して家を建てたこと、
家畜を飼育していること、一通り説明していく。大抵、一言目は「ここはお祖父ちゃんの家と一緒だ」と言います。
そして「本当に幸せなのか?だって東京に住んでたのに、しかもテレビもない」「もちろん幸せだよ、僕はここを
選んで来たんだ」そんな話をしながら、ベジタリアン食を一緒に食べます。その後のワークショップが面白いので
す。「幸せになりたいですよねー」「いぇーーい」「どんなものを大切にしたら幸せになれると思う?」万国共通
でこう答えます「家族、伝統、自然、手作りの何か」そして次の質問は「じゃあ幸せになるにはどんな国作りが大
切なの?」この質問の後は全員が激論になるのです。「やっぱり開発が必要だ」「自然と伝統は残さないと意味が
ない」会場がかとうさんちだし、あえてこういう暮らしぶりを選択している日本人が目の前にいるから効いてきま
す。この時、僕は「海外に何かやることがある」と確信したのです。コンクリートジャングルではない日本の文化
や自然、そして自然とともに生きる豊かさ、幸せ感。そういった日本が持っている素晴らしいものを伝えるのだと。 講演者略歴:1973年生まれ。幼少から青年期を東京で暮らす。2001年NPO職員を退職して独立し、環境教
育事業所「アースコンシャス」を設立。事業の挫折などを経て東京に帰るが、東京の暮らしに疑問を感じ、やる
べき事と居るべき場所を求めて家族で土地を探しはじめる。2005年山梨県都留市に山林を購入し友人たちと開拓、
セルフビルドの国産丸太小屋に移住。環境教育者、企業研修講師、農家、大学非常勤講師など多彩な分野を持ち
ながら妻と4人の子どもと40羽のニワトリと4頭の綿羊と農耕馬に囲まれ、田んぼや畑を耕作し、生態系の中に自
分を位置づけて暮らし、現在に至る。2010年「NPO法人都留環境フォーラム」設立、以降代表理事を務める。環
境配慮した地域作りを開始。在来野菜のタネの保存活動、馬で田畑を耕す技術の伝承活動など多肢に渡る社会問
題への活動を展開する。著書:「地球に暮らそう 〜生態系の中に生きるという選択肢〜」旅と冒険社 40
ワールドシフト/都市生活者の意識改革( パラダイムシフト)
谷 崎 テ ト ラ (放送作家、ワールドシフトネットワークジャパン代表理事)
◎ワールドシフト(英: WorldShift)=持続可能で平和で幸福な世界への変革。文明の転換。
◎パラダイムシフト(英: paradigm shift)=その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思
想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化すること
○ワールドシフト〜持続可能な社会への転換 ワールドシフトとは持続可能で平和な世界へのシフト(図 1)。いま生態系、経済、社会が危機的な状態を
むかえています。世界が成長の限界をむかえ(図 2)、気候変動、人口問題、資源枯渇が現実のものとなって
きました。 2009 年、アーヴィンラズロ博士の提唱によって世界的な文明転換のムーブメントがはじまりました。ワー
ルドシフトの運動は、経済・環境・平和・政治・文化・ライフスタイルなどあらゆる領域で必要とされていま
す。一人ひとりがワールドシフトを自らの責任で考え、宣言・行動していくことで、社会変革の種をうみだし
ていこうというムーブメント。そして、そのような一人ひとりが共感でつながり、協調していくことで大きな
潮流となり、文明の発展の方向性そのものを変える力になるものと考えます。
図 1.ワールドシフトの持続可能性 図 2. コンピュータシミュレーションによる今後 40 年のグローバル
ワークショップ用のワークシート
予測(ヨルゲン・ランダース「2052 年」より)
○都市生活者の意識改革( パラダイムシフト) 2050 年には世界の人口の7割が都市で生活します。持続可能な社会へのシフトのためには都市生活者の意
識改革(パラダイムシフト)が急務です。講演ではトランジションタウン運動やアーバンパーマカルチャー、
コンパクトシティなど、都市での変化の事例を紹介します。
講演者略歴:1964 年、静岡生まれ。放送作家。メディア&音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワー
クジャパン代表理事。愛知県立芸術大学非常勤講師。環境・平和・社会課題などの TV、ラジオ、出版、イ
ベントの企画・構成を通じて、新しい価値観 (パラダイムシフト) や、持続可能な社会の転換 (ワールドシ
フト)の 発信者&キュレーターとして活動中。国連 地球サミット(RIO+20)など国際会議の NGO 参加・
社会提言、環境省「つなげよう森里川海」映像など、社会提言のメディア発信、企業・市民セクターとの連
携などを数多くてがける。
41
アースデイとやま 2016 アースデイ・フェスティバルについて 日時:2016 年 5 月 15 日(日)10:00~17:00
テーマ:足もとから、ちきゅう未来 14 日の環境市民フォーラムで、 場所:富山県庁前公園 見て、聴いて、学んで話して考えた次の日は、
会場で使う箸や食器などは、できるだけ
公園の芝生の上で一日のんびり楽しく ご持参ください。飲食店舗でのレンタル 過ごしてみませんか? もあります。 市民団体の展示アピール ウッドスタジオ:薪ストーブ展示、ピザ窯実演 エコアクション富山:エコアクションポイント制度の普及 コーポラティブハウス木の実応援団:
「かえことしませんか」 立山自然保護ネットワーク:富山県下の外来植物 とやま環境財団:地球温暖化防止活動推進員の活動報告 まわれ水車の会&富山市民放射能測定室“はかるっちゃ”:写真展 etc.… トーク ステージ マルシェ (飲食・物品販売)
会場外での企画・電気バス試乗
・ノルディックウォーク体験
本部 42
キッズ コーナー 竹・森林 コーナー ライブ ステージ 
Fly UP