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PHITS 研究会 概要集

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PHITS 研究会 概要集
PHITS 研究会
概要集
平成 27 年 9 月 5 日(土)
いばらき量子ビーム研究センター 2 階多目的ホール
茨城県那珂郡東海村
PHITS 研究会プログラム
9 月 5 日(土)10:30 開始(10:00 開場)
■10:30 - 10:35 開会挨拶 高橋 史明(日本原子力研究開発機構)
■10:35 - 11:00
PHITS 開発の現状
■11:00 - 12:00
午前の部
佐藤
座長:橋本
達彦(日本原子力研究開発機構)
慎太郎(日本原子力研究開発機構)
11:00 - 11:20 小川 達彦(日本原子力研究開発機構)
「PHITS における JQMD モデルの改良」
11:20 - 11:40 安部 晋一郎(日本原子力研究開発機構)
「ミューオンと物質との相互作用の計算機能の PHITS への実装」
11:40 - 12:00 田儀 和浩(東京大学)
「PHITS による X バンドライナック中性子源用ターゲットの設計」
■12:00 - 13:00
お昼休み
■13:00 - 14:20 午後の部1 座長:仁井田浩二(高度情報科学技術研究機構)
13:00 - 13:20 後神 進史(原子力規制庁)
「PHITS の核燃料輸送物に対する遮蔽検証解析」
13:20 - 13:40 手塚 英昭(東京電力株式会社)
「PHITS の除染分野への応用について」
13:40 - 14:00 阪間 稔(徳島大学)
「医用機器開発における CAD データから SuperMC/MCAM ソフトウェアを
用いた体系記述の実例」
14:00 - 14:20 藤本 憲市(香川大学)
「ヨウ素シード品質管理測定システムにおける実測プロファイルの数
値的検討」
■14:20 - 14:30
休憩
■14:30 - 16:10 午後の部2 座長:岩元 洋介(日本原子力研究開発機構)
14:30 - 14:50 太田 真緒(東京工業大学)
「Ir-192 密封小線源を用いたケロイド治療における被ばく線量の評価」
14:50 - 15:10 田村 健太郎(熊本大学)
「モンテカルロコード PHITS を用いた I-125 密封小線源の線量計算」
15:10 - 15:30 豊田 高稔(九州大学)
「NaI シンチレーション検出器と CdZnTe 半導体検出器の検出効率の
PHITS での検証」
15:30 - 15:50 楊 叶(九州大学)
「PHITS simulation for COMET experiment」
15:50 - 16:10 仁井田 浩二(高度情報科学技術研究機構)
「PHITS を用いた J-PARC 中性子散乱施設の遮蔽評価」
■16:10 - 16:25
総合討論
座長:橋本
■16:25 - 16:30
閉会挨拶
仁井田
慎太郎(日本原子力研究開発機構)
浩二(高度情報科学技術研究機構)
PHITS における JQMD モデルの改良
小川達彦 1, 橋本慎太郎 1, 佐藤達彦 1, 仁井田浩二 2
1 日本原子力研究開発機構, 2 高度情報科学技術研究機構
1.緒言
重イオン入射による核反応は、宇宙や炭素線が
ん治療などの線量評価にとって重要である。
PHITS は、重イオン入射による反応を JQMD に
より計算するが、原子核の周辺同士が擦れる反応
(周辺衝突反応)が扱えなかったため、破砕片生成断
面積の再現精度に問題があったそこで本研究では、
JQMD を改良して重イオン入射反応の計算精度を
改善した。
図1
700MeV/u における 56Fe (C,x)反応
の破砕片生成断面積。
2.方法
JQMD に対して主に (1)核子間の相互作用を相対論普遍な形式に変更、(2) 周辺衝突反応の場
合、核媒質効果による核子間の相互作用の抑制が弱まる効果を反映するという改良を施した。従
来の JQMD において核は座標系のローレンツ変
換により不安定になり、核と衝突しなくても崩壊
するため、他の核と衝突した場合が判別できなか
った。そこで(1)により核を安定に記述し崩壊を抑
止することで、周辺衝突を含め反応した場合を明
確に識別して再現できるようにした。さらに(2)に
より周辺衝突反応における核子間の散乱が強まる
効果を反映し、反応を従来より高精度に再現でき
るようにした。
図2
100MeV/u 入射 12C(NatC,x)X 反応の 15°方
向における中性子生成二重微分断面積。
3.結果・考察
改良後の JQMD2.0 を PHITS に実装し、実験値を用いて検証を行った。700 MeV/u におけ
る 56Fe(NatC,x)X 反応の破砕片生成断面積を図 1 に示す。Cr や Mn など電荷が入射粒子の Fe(26)
に近付くほど破砕片の生成が増える実験値の傾向は従来の JQMD は再現できていないが、
JQMD2.0 はその傾向をほぼ正確に再現している。また、100 MeV/u の
12C(NatC,x)X
12C
入射に対する
反応の中性子生成二重微分断面積を図 2 に示す。本改良では核破砕片生成の過程だ
けでなく、反応機構全体を改良したが、改良前後で中性子生成断面積に大きな変化はなく、どち
らも実験値を同等に良く再現する。
JQMD2.0 は PHITS Ver.2.76 以降に実装されており、[Parameters] セクションに irqmd=1
と書くことで利用できる。また、JQMD は今後数年にわたり継続的に改良を進める予定である。
ミューオンと物質との相互作用の計算機能の PHITS への実装
安部晋一郎 1, 佐藤達彦 1
1 日本原子力研究開発機構
高エネルギーの宇宙線ミューオンを用いた火山や原子炉などのラジオグラフィや、低エ
ネルギー負ミューオンを用いた非破壊元素分析や超寿命核分裂生成物(LLFP)の核変換な
ど、様々なミューオン応用研究が進められている。このようなミューオン応用に関して
PHITS を用いたシミュレーションを行うには、ミューオンと物質との相互作用の計算機能
が必要となる。本研究では、ミューオンの制動放射、電子・陽電子対生成、仮想光子を介
した核反応および負ミューオン捕獲反応の計算機能を新たに PHITS に実装した。
実装した計算機能を用いた例として、地中
2
験値との比較を図 1 に示す。ミューオンの電
Vertical intensity [/cm /sr/s]
での環境ミューオンの透過割合の計算値と実
離のみ考慮した計算値は実験値を過大評価す
る。一方、ミューオンと物質との相互作用と
して制動放射、電子・陽電子対生成、仮想光
子を介した核反応を考慮することで、計算値
と実験値との良好な一致が得られた。
10
-5
10
-6
10
-7
10
-8
10
-9
0.5
次に、LLFP のうち中性子による核変換が
困難な核種の一つである
90Sr
を標的として、
only ionization
with muon interaction
M.Crouch,1987 [1]
M.Aglietta, 1998 [2]
normalized
1
1.5
2
Depth [km]
2.5
3
図 1.地中における環境ミューオン強度
負ミューオン捕獲反応による二次核種生成量
を計算した結果を図 2 に示す。標的に入射し
た負ミューオンのうち 94%が原子核に捕獲さ
90Sr
が安定核または半減期 20 日
以下の核種に変換されることを明らかにした。
研究会では、PHITS に実装した計算機能の
概要に関しても述べる。
【参考文献】
[1] M. Crouch, in Proc. of the 20th Int. Cosmic Ray
Conf., Moscow, 1987, vol. 6, pp. 165-168, 1987.
[2] M. Aglietta et al., Phys. Rev. D, vol. 58, 092005,
1998.
Products [1/negative muon]
れ、67%の
10
stable
return to 90Sr
0
-1
Rb
short half-life < 20 day
long half-life > 20 day
Kr
Br
10
-2
10
-3
10
-4
10
-5
10
-6
10
83
90
83
89 82
Mass number
88
図 2. 90Sr による負ミューオン捕獲反応からの
二次核種生成量
PHITS による X バンドライナック中性子源用ターゲットの設計
田儀和浩 1, 上坂充 1
1 東京大学工学系研究科
東京大学では、廃炉後の弥生炉を核燃料使用可能施設として利用できることから、廃炉
後のスペースで溶融燃料の非破壊的手法による定量化のための技術開発を行うことを目指
している。そのために、パルス中性子源を開発する必要があり、廃炉後のスペースが限ら
れていることから装置の小型化が要求されるため、X バンドライナックを用いた中性子源の
開発を進めている。本研究では、X バンドライナック中性子源の中でも、タングステンを用
いた光核反応ターゲットならびに減速材のシミュレーションを PHITS で行った。
PHITS の核燃料輸送物に対する遮蔽検証解析
後神進史
原子力規制委員会原子力規制庁長官官房技術基盤グループ,
原子力規制庁長官官房技術基盤グループ(以下、当グループという。
)では、原子力安全
を継続的に改善していくため、課題に対応した安全研究を実施している。核燃料輸送物の
安全規制に係る分野においては、各種申請の妥当性評価に用いるツールの1つとして用い
るために、PHITS の核燃料輸送物遮蔽解析への適用のためのコード改良を行い、規制に用
いるツールとしての整備を進めている。本研究では、これまでに明らかにした課題を基に
コード改良を施した PHITS を用いて、核燃料輸送物の検証解析を行い、実測データ及び
MCNP による解析結果[1]との比較を行った。
図1に検証解析に使用した TN-12 型核燃料輸送物の計算モデル
( [T-3Dhow]出力結果)
、
図2に輸送容器外部における中性子束の PHITS 及び MCNP での解析結果比較の例をそれ
ぞれ示す。比較した結果、今回の改良により MCNP と同等の解析性能を持つことが分かっ
た。
研究会では、当グループにおける PHITS コード改良の進捗状況、検証解析における線量
当量率の比較結果及び今後の計画について報告する。
図1 TN-12 型核燃料輸送物の計算モデル
図2 輸送容器側部中央の表面から 1m にお
ける中性子束の解析結果比較
参考文献
[1]浅見光史ほか、
「放射性物質輸送容器のモンテカルロ法による遮蔽安全評価手法ガイド
ライン原案」
、海上技術安全研究所報告第 13 巻第 1 号
PHITS の除染分野への応用について
手塚 英昭 1
1 東京電力㈱
福島復興本社 除染推進室
東日本大震災の際に福島第一原子力発電所から放出された放射性物質(主にCs137,
Cs134)は,広大なエリアにフォールアウトし,その放射性物質をとり除く作業(除染作
業)が行われている.このためPHITSの除染分野への応用する場合,広い地面を想定した
平面状の汚染面を対象とする必要がある.
広い地面を想定した大規模な放射線場についての解析事例を紹介する.土中の線源を
Cs137 (photon:0.662MeV) 単色とし,PHITS2.77に含まれるEGS5の電磁カスケード
挙動解析エンジンを使用して解析を行った.
【解析事例1:地面中心高さ 1m で受ける放射線のエネルギースペクトル】
図 1-1 解析体系(ケース 1-1 領域小)
図 1-3 解析結果(ケース 1-1)
図 1-2 解析体系(ケース 1-2 領域大)
図 1-4 解析結果(ケース 1-2)
解析諸元(解析事例 1,2 共通)
空気:密度 0.0012g/m3 組成 H0.064%,C0.014%,N75.1%,O23.6%,Ar1.28%
土壌:密度 1.6g/m3 組成 H2.1%,C1.6%,O57.7%,Al5%,Si27.1%,K1.3%,Ca4.1%,Fe1.1%
線源は土壌中深さ 3.125mm 位置に,鉛直上向き半球状に放射設定(dir=1.0 dom=90°)
【解析事例2:地面中心高さ 1m における周辺線量当量 H*(10)(線源 1kBq/m2 当たり)】
図 2-1 解析体系(ケース 2-1 線源小)
図 2-2 解析体系(ケース 2-2 線源大)
解析結果[周辺線量当量 H*(10)]
ケース 2-1:2.22×10-3(μSv/h)/(kBq/m2) [相対誤差 1.20×10-2]
ケース 2-2:2.25×10-3(μSv/h)/(kBq/m2) [相対誤差 5.74×10-2]
(参考)IAEA TECDOC1162 2.1×10-3(μSv/h)/(kBq/m2)
医用機器開発における CAD データから SuperMC/MCAM ソフトウェアを用いた体系記述の実例
阪間稔 1, * , 武田晋作 2 , 松本絵里佳 2 , 春國知貴 2 , 藤本憲市 3 , 生島仁史 1 , 古谷俊介 4 ,
市樂輝義 5 , 高井久司 5 , 山田隆治 5 , 北島孝弘 6 , 桑原明伸 6 , 安野卓 6 ,嵯峨山和美 7
1) 徳島大学大学院医歯薬学研究部,2) 徳島大学大学院保健科学教育部,3) 香川大学大学連携
e-Learning 教育支援セン
ター四国,4) 徳島大学病院放射線科,5) 株式会社 大隆精機,6) 徳島大学大学院 STS 研究部,7) 徳島大学研究支援・産官
学連携センター
【緒言】本発表者は,現在,初級 ∼ 中級レベルの使用経験であるが,このレベルのユーザー視点から今回,MCAM ソフ
トウェアの概要と,これまでの医用機器開発における PHITS 利用を支援する MCAM の使用開始からその運用にわたる
実経験を紹介し,他の PHITS ユーザーが利用するときの参考になればと考えている。
【MCAM の概要】このプログラムは,一般的な CAD ソフトウェア(AutoCAD や IRONCAD など)の CAD データ(sat,
stp, igs など)で描かれた単純から複雑,微細から大型装置の体系図を,MCNP(ここでは PHITS に相当)や TRIPOLI,
最近では FLUKA や Geant4 へまで拡張し,各々の入力体系記述(PHITS でいうところの,cell セクションや surface セ
クションの記述)に従って,自動的かつ短時間に入力データを出力してくれる支援ソフトウェアである。また,void の記
述を付加する機能や,Professional 版のみになってしまうが,各セルの material 記述や source,tally の設定,cell 数の上
限拡大までの多要素にわたる体系記述を支援してくれる。(本発表者は,今のところ cell や surface に関する体系記述の
みを実践している。)当然ながら,その逆記述も可能である。
ここで述べる MCAM ソフトウェアの正式名は,SuperMC/MCAM (M ONTE C ARLO A UTOMATIC M ODELING SYS TEM / INTERFACE PROGRAM ) であり,現時点では
version 5.2P (Professional version) がリリースされている。このプロ
グラムの開発及び管理は,2011 年に先進的な核エネルギー研究開発を担うチームを母体とする中国科学院の核能安全
技術研究所(INEST/FDS Team [1],以降 FDS Team と呼ぶ,
【http://www.fds.org.cn/en/index.asp】,上海と武漢の中間に
位置する都市,合肥 Anhui にある研究施設)に帰属し,Demo version から Standard, Professional までが整備されてい
る。この利用に際しては,基本的に Demo 版を除く,Standard 版及び Professional 版については,Licence Agreement と
Application Form 、User Survey Form の書類を FDS Team 事務局への提出が必須であり,その書類提出後,当該機関で
の書類審査を経て許可が下りると,MCAM に付随しているライセンスマネージャープログラムより,リクエストファ
イル (*.req) を生成し,そのファイルを再度,FDS Team へ送信する。しばらくするとライセンスキーファイル (*.lic) が
送られ,それをさきほどのライセンスマネージャープログラムにインポートすることで,どうにか使用することができ
る。これまでの経験から FDS Team からの対応は,やや遅延気味である。その理由として,世界各国からの研究施設よ
り,利用に関わる申請依頼が多数あるために,その事務処理にかなりの時間を要してしまうとのこと。この点に関して
は,Professional 版の利用においても基本的には無料であるので,涵養とならざる終えない。
【医用機器開発での利用実践:前立腺癌治療用ヨウ素 (125I) シード放射線強度品質管理測定システム BSQAS BS-2000 [2]】
図 1 は,MCAM を利用して IRONCAD で作成した CAD データ元 (stp 形式) の画面と読み込んだ後の画面を示してい
る。この MCAM 画面から,“Write MCNP” とすることで,BSQAS の主要部にあたる可動型シングルスリットコリメー
タ部について,PHITS 入力への体系記述では,surface セクションで 311 行分,cell セクションで 33 行分を,多少の手動
での修正を施しつつも,自動かつ短時間(数分程度)で生成することができた。
図 1 BSQAS の可動型シングルスリットコリメータ部分の IRONCAD による CAD 画面(左側)と,そのデータを
取り込んだ MCAM 画面(右側)
References
[1] Y. Wu and FDS Team, CAD-based interface programs for fusion neutron transport simulation., F USION E NGINEERING
AND D ESIGN 84, 1987-1992 (2009).
[2] 阪間稔,安野卓,山田隆治,嵯峨山和美,前立腺癌治療用ヨウ素 (125I) シード放射線強度品質管理測定システムの開
発と製品, I SOTOPE N EWS 8(736), 18-21 (2015).
*
Corresponding author, e-mail: [email protected]
ヨウ素シード品質管理測定システムにおける
実測プロファイルの数値的検討
藤本憲市 1, 阪間稔 2, 武田晋作 2, 森口史奈 2, 松本絵里佳 2
1 香川大学, 2 徳島大学
1. はじめに
ヨウ素 I-125 シード永久挿入密封小線源
はセンサー出力の A/D 変換値である。
一方,
図 2 は,
PHITS による数値実験結果であり,
療法において,治療計画どおりの線量を患
縦軸は photon の flux 値を示している。実
部に照射するために線源の品質管理は重要
測結果及び数値実験結果ともに,中央部分
である[1]。著者の一部は,移動型シングル
が凹んだ形状となることが示された。
スリット検出部を有するヨウ素シード品質
管 理 測 定 シ ス テ ム ( BSQAS: Brachytherapy Seeds Quality Assurance System)を開発し,品質検査の更なる高精度
化を検討している。本発表では,BSQAS
で得られる 1 シードあたりの放射線強度プ
ロファイルの形状と PHITS シミュレーシ
ョン結果とを比較検討する。
2. ヨウ素シード品質管理測定システム
図 1: 放射線強度プロファイルの実測値
銀製の短線に化学的に I-125 を結合させ
た線源を純チタン製カプセル(大きさ:長
さ 4.55 mm, 外径 0.97 mm の円柱単管)に
封入し,その放射線強度(公称値)は 13.1
MBq である。BSQAS は,固定した線源に
対して,シングルスリット検出部を移動さ
せることにより線源の放射線強度プロファ
イルを測定し,所定の放射線強度が得られ
るかどうかを検査する。
図 2: PHITS による数値実験結果
3. 数値実験及び考察
5 本のシードを BSQAS で 3 回測定し,
参考文献
平均した放射線強度プロファイルを図 1 に
[1] 日本放射線腫瘍学会 QA 委員会,125I
示す。横軸はヨウ素シードに対するシング
永久挿入治療の物理的品質管理保証に関す
ルスリット検出部の相対位置を表し,縦軸
るガイドライン,14–15 (2010)
Ir-192 密封小線源を用いたケロイド治療における被ばく線量の評価
太田真緒 1,5,林崎規託 2,栗林茂彦 3,中尾徳晶 4,茂松直之 5,宮下次廣 3
1 東京工業大学大学院
2 東京工業大学
理工学研究科
原子炉工学研究所
3 日本医科大学付属病院
放射線治療科
4 清水建設(株)技術研究所
5 慶應義塾大学
医学部 放射線科学教室
ケロイドとは、外傷や手術等の傷が治る過程において、炎症が持続することにより線維
形成が終息せず皮膚の線維成分が過剰に増殖する病変である。ケロイドそのものは良性疾
患であるが、醜形、疼痛、痒みを伴うことから、保存的療法、外科的療法、放射線療法が
単独または併用して行われている。日本医科大学付属病院放射線治療科では、術後電子線
照射を中心としたケロイド治療を行ってきたが、2008 年に線量集中性に優れ、複雑な形態
の患部にも順応して治療できるという利点を持つ、Ir-192 密封小線源による表在照射治療
を開始した。この治療法は既に臨床実績をあげているものの、高エネルギーγ線を使用す
るため患部近傍のリスク臓器への被ばくが懸念されることから、本研究では放射線輸送計
算コード PHITS により乳腺と甲状腺への被ばく線量を評価した。
PHITS による被ばく線量シミュレーションでは人体臓器および組織の形状を数式で表現
した MIRD ファントムを使用した。日本医科大学附属病院のケロイド小線源治療では、皮
下 2 mm の線量評価点に対して 18 Gy/3 回を標準的な処方線量としている。そこで胸部正
中の術創を摸擬するために、MIRD ファントム体軸方向に対して、表在照射用の Freiburg
flap applicator(Nucletron 製,φ10mm 球×9 連、全長 90 mm)と、その両側に厚さ 4 mm
×高さ 55 mm×長さ 150 mm の鉛の遮蔽板を配置し、アプリケータ内空を線源が移動する
照射体系を構築した。本研究会では、アプリケータのライン上の照射野範囲を、1 回の照射
につき均一に 6 Gy 照射する場合に受ける、乳腺および甲状腺への被ばく線量を評価した結
果を報告する。
モンテカルロコード PHITS を用いた I-125 密封小線源の線量計算
田村健太郎 1, 荒木不次男 2, 大野剛 2 , 鬼塚亮太 1
1
熊本大学大学院保健学教育学部, 2 熊本大学大学院生命科学研究部
[目的]
I-125 密封小線源を用いた前立腺治療における高精度な線量分布計算を目的に,I-125 小線
源のモデリングをモンテカルロコード PHITS によって行い,放射線治療計画装置(Treatment
Planning system, TPS)の線量分布を比較検証する.
[方法]
I-125 密封小線源(Source Tech Medical Model STM 1251)のモデリングは,Kirov らの線源
構造を参考にして行った.モデリングの精度検証は,30 cm 立方体の水ファントム中心に線
源を配置し,I-125 線源の放射状線量関数と非等方性関数を求め,AAPM TG-43 及び Taylor
らの EGS の計算値と比較で行った.PHITS での計算条件は,PCUT=1 keV,ECUT=100MeV
で,カーマ近似計算で行った.
さらに,TPS を用いて水ファントム内に 27 本の I-125 線源を配置し線量分布計算を行っ
た.PHITS では,TPS と同様に 27 本の I-125 線源を同時に配置した場合と,1 本の I-125 線
源を同一条件で移動した場合で計算した.これは,TPS と PHITS の線量分布差から,I-125
線源カプセルによる吸収散乱が,線量分布に与える影響を調べるためである.両者の線量
分布差は,線量体積ヒストグラム(Dose volume histogram, DVH)から定量的に分析した.
[結果]
I-125 線源モデリングの精度において,放射状線量関数は TG-43,Taylor らの計算値と 1.5%
以内で一致した.また,非等方性関数では 2%以内の一致であった.次に,TPS と PHITS の
線量分布計算では,27 本の I-125 線源を同時配置した場合に TPS は PHITS に比べ約 6%の
線量増加であった.これは,TPS は他の線源からのカブセル(金属)の吸収・散乱を考慮せ
ず,水として計算し,PHITS ではすべての線源カプセルの吸収・散乱の影響を考慮してい
るためである.一方,1 本の I-125 線源を同一条件で移動した場合は TPS と PHITS の線量分
布はほぼ一致した。この場合は,他の線源からのカブセル(金属)の吸収・散乱が影響し
ないためである.
[結論]
PHITS による I-125 線源モデリングの精度は,TG-43 及び Taylor らの EGS の計算値と 2%
以内の一致であった.I-125 線源の線量分布計算では,PHITS との DVH 比較において TPS
は,I-125 線源カプセルの吸収・散乱を考慮していないため線量を過大評価する.
NaI シンチレーション検出器と CdZnTe 半導体検出器の検出効率の PHITS での検証
豊田高稔 1,藤淵俊王 2
1 九州大学大学院医学系学府保健学専攻医用量子線科学,
2 九州大学大学院医学研究院保健学部門医用量子線科学分野
【目的】放射能の定量評価は、放射性同位元素を取り扱う上で放射線管理や診療上重要で
ある。放射性物質の放射能の定量評価を行うため、NaI シンチレーション検出器と CdZnTe
半導体検出器の検出効率を実測およびモンテカルロコード(PHITS,ver2.77)で比較した。
【方法】NaI シンチレーション検出器(EMF211、EMF ジャパン社製)と CdZnTe 半導体検
出器(GR-1、kromek 社製)で 3 つの標準線源(60Co、137Cs、133Ba)を測定し、検出器と線源
が 0 cm、5 cm の時にそれぞれの光電ピークのエネルギー部分での検出効率を求めた。また、
PHITS を用い標準線源、及び各検出器の形状、位置を再現し、NaI シンチレーション検出
器、CdZnTe の半導体検出器での各検出器に対する光電ピーク部分での光子によって発生し
た電子のカウントを[t-deposit]セクションで計算し求めた。
【結果】CdZnTe 半導体検出器では実測値の検出効率と PHITS での計算結果は良く一致し
たが、NaI シンチレーション検出器では実測値と計算結果が約 1.6 倍の差が生じた。
【結論】NaI シンチレーション検出器の実測値と PHITS での計算結果を一致させるため、
[t-deposit]セクションでのカウントの求め方の工夫が必要である。
実測値と計算値の比較(0cm)
実測値と計算値の比較(5cm)
20
20
実測値
PHITS
10
実測値
15
相対値
相対値
15
5
PHITS
10
5
0
0
0
500
1000
エネルギー(keV)
(a)
1500
0
500
1000
エネルギー(keV)
(b)
図(a)、(b)GR-1 での検出効率の 0cm、5cm での実測値と PHITS での計算との比較
1500
PHITS simulation for COMET experiment
Ye, YANG 1,2
1 Department
of Applied Quantum Physics and Nuclear Engineering, Kyushu University
2 Cryogenics Science Center, KEK
Abstract
The Coherent Muon Electron Transition (COMET) experiment is aiming to search the Charged Lepton Flavor Violation (CLFV) and the new physics beyond the Standard Model. Two steps are included into COMET experiment, Phase-I
and Phase-II, respectively. The simulation for COMET experiment is implemented by the software, ICEDUST, which is
developed by the COMET collaboration software group. It was decided to base on the framework used by T2K near detector, ND280. All of the GEANT4, FLUKA, MARS and PHITS are used to generate pion with different physics model,
then inputed into GEANT4 as the primary particles to simulate the physics. The status of PHITS code development in
ICEDUST will be reported in here.
PHITS を用いた J-PARC 中性子散乱施設の遮蔽評価
仁井田浩二, 武田和雄
(一財)高度情報科学技術研究機構
高エネルギー加速器を中心とした総合実験施設 J-PARC の放射線挙動解析や遮蔽評価を
効率的に行うために、PHITS コードは、多くの新しい機能、より信頼できるモデルや核デ
ータを導入し発展してきた。その中で、J-PARC の MLF(物質・生命科学実験施設)の中
性子散乱施設では、広いエネルギー範囲の粒子輸送を扱う必要があると共に、低エネルギ
ーの中性子に関する特殊な光学的デバイスや機械的デバイス、磁場や重力といった外場等
の記述が必要で、また、統計精度上げるための特殊な手法も要求された。これらの機能を
開発、実装することにより、中性子散乱施設の設計、特に遮蔽設計は非常に効率よく実施
されてきた。本報告では、建設開始から 10 数年を経て、中性子散乱施設の 23 本のビーム
ラインのほとんどが建設され、実験が行われている現在、これらの施設への適用のために
PHITS に導入された新しい機能を解説し、実験値との比較も含めてその応用実績を示す。
Figure 1 3D view of Experimental Hall No.1 by PHITS
Figure 2 3D view of Experimental Hall No.2 by PHITS
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