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MuuMuu - 地球市民ACTかながわ
タイ国アントン県 世界最大級の孤児院 ワットサーキャオにおける調査・交流プロジェクト Muu−Muu 2003 現状調査報告書 (チョークディー・・・日本語で「幸運を」の意。Good luck!) −目次― ◆はじめに ・ はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 ・ メンバー紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 ・ 全スケジュール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 ・ タイ概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 ・ タイ山岳民族・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 ◆前半スケジュール ・ ワットサーキャオ孤児院概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 ・ ワットサーキャオ学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 ・ ワットサーキャオ孤児院 ①寮:男子寮、女子寮、子ども達の生活・・・・・・・・・・・・・・17 ②食事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 ・ Muu−Muuアクティビティ・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 ・ 前半の日記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 ◆後半スケジュール ・ メートー学校概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 ・寮、子ども達の生活・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 ・ ミットカンタノン概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 ・フィールド調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 ・ バーンロムサイ概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 ・ 後半の日記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 ◆アンケート調査結果と考察 ・ アンケート調査結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51 ・ アンケート内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53 ・ 先生(ワットサーキャオ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78 ◆おわりに ・ 感想・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81 ・ スペシャルサンクス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・92 ・ 樋口智亮さんより・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93 ・ おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95 1 は じ め に この報告書は 、 大学生を主体とするボランティアグループ“Muu−Muu”(タイ語 で「手と手」)が、2003年1月31日から2月28日にかけて、タイ国アントン県にあ る世界最大級の孤児院“ワットサーキャオ”、北部チェンマイ県山岳部の山岳民族の子ど もたちが通う“メートー学校”、ミャンマーとの国境の町メーサイにあるストリートチル ドレンのシェルター“ミットカンタノン”、チェンマイ市郊外のHIV感染孤児施設“バ ーンロムサイ”を訪れた際の、調査結果報告である。 “Muu−Muu”とは、神奈 川県横浜市に事務局を置くNGO 団体「地球市民の会かながわ/T PAK」の大学生インターンを主 体としたボランティアグループで あり、今回の2003年度Muu− Muuプロジェクトは 、 昨年 2002年度に引き続き2度目の継 続プロジェクトとして実施され た。主な活動内容は 、 タイの子ど ワットサーキャオ 体育の先生と ワ ッ ト サーキ ャ オ もたちとの交流と生活実態の調 体育 の先生 と 査、それらの調査結果を社会に発 信すること、そして、ワットサーキャオの子どもたちへの生活改善・就学支援を1993年 より行っている「地球市民の会かながわ」の、将来の支援に活用していくことである。 また、プロジェクトの中心を支えるものは、“ワットサーキャオにおける調査・交流ボ ランティア”なのだが、私たちはプロジェクトを進めていく過程の中で、ワットサーキャ オの子どもたちは山岳民族出身が多いということを知った。様々な視点からワットサーキ ャオを見つめたいと考えたメンバーは、Muu−Muuプロジェクトの後半、子どもたち のルーツを探るべく実際にタイ山岳部に足を伸ばすことになった。 今回、私たちは実際に4つの訪問先を訪れ、先生方や子どもたちに対するインタビュー やアンケートを通して実状調査を行った。また、子どもたちと寝食を共にすることで、厳 しい現状に置かれている子どもたちの生の声を聞くことができた。しかし、私たちは調査 という面だけではなく、子どもたちとの交流を通してたくさんの人々と出会い、人と人と 2 のつながりを考える上で素晴らしい経験ときっかけをもらった。 今後、実際に自分たちの目で見て感じてきたことや今回の調査結果を、報告会や報告書 などを通して広く公表し、それらを少しでも多くの方々に国際協力を考えるきっかけとし てもらいたい。そして、この貴重な経験を自分たち自身の今後の国際協力の活動にも役立 てていきたいと考えている。 Muu−Muuプロジェクト代表 飯山 元気いっぱい!ワットサーキャオ幼稚園の子どもたち 3 菜穂 メ ン バ ー 紹 介 ワ ッ ト サ ー キ ャ オに て : バ レ ン タ イ ン デ ー に中央の中学校 3 年生の彼が メ ン バ ー に バラを プ レ ゼ ン ト し て く れた 。 彼は卒業後 、 専門学校に入学す る 4 飯山 菜穂:代表 (右上) −明治学院大学― ・アーティスト ( 現地でも報告書でもイラスト担当 ) ・タイ語習得度 No.1 ! 伊吾田 善行:副代表(右上2人目) ★Muu−Muuに命かけました! ―地球市民の会かながわスタッフー ・積極性 No. 1! ・先生にもてもて 片岡 創:会計 ★ 「 チューリップ 」 に振り付けを付け (右下) て踊った! ―法政大学― ・行動力あるムードメーカー ・現地で記者に変身 新谷 ★形容詞先輩:あつい!からい!おい しい! 早世:会計 (左上2人目) ―東洋英和女学院大学― ・書道で大活躍 ・4次元トランクの持ち主 若林 明奈:書記 (左上) ★犬にかまれた! ―専修大学― ・子ども好き No. 1! ・いつも全力で子どもと接していた ★涙先輩:体内に巨大涙タンクを持つ 現地サポ ー タ ー 樋口 智亮 (左下) ―熊本学園大学― 高橋 香奈 ・WSKですでに3ヶ月 (報告書編集長) タイ語留学をしていた大学生 ―慶應義塾大学― ・メンバーの日本とタイの橋渡し担当 ・強力サポーターとなって ・メンバー 1 役職が多い ( 気がする ) くれました ★報告書作成でメンバーを牽引 5 スケジュール 前半 ワットサーキャオ 日付 活動内容 1月31日 金 夕:成田発 夜:バンコク着 2月1日 2日 宿泊 ホテル 土 ジャナロンさんとのミーティング、買出し ホテル 日 午前:買出し WSK 午後:WSK到着 先生方と夕食 3日 月 午前:小・中学校の朝礼で挨拶 WSK職員とのミーティング WSK 午後:WSK内施設見学 寺院の大僧正に挨拶 タイ語教室 4日 火 午前:幼稚園 日本語授業について中田さんからのレクチャー WSK 午後:日本語授業 タイ芸能 5日 水 午前:幼稚園 日本語授業 WSK 午後:タイ芸能 タイ語教室 6日 木 午前:幼稚園 WSK 午後:婦人会のお菓子作り見学 日本語クラブ(縄跳び) 7日 金 午前:幼稚園 体育(バスケットボール) WSK 午後:タイ語教室 8日 土 午前:ビーズ教室 WSK 午後:ビーズ教室 9日 10日 日 アユタヤへ買出し WSK 月 午前:幼稚園 体育(実技試験の見学) WSK 午後:日本語授業 タイ語教室 11日 火 午前:幼稚園/アユタヤへ買出し 午後:日本語授業見学 WSK 12日 水 午前:幼稚園 日本語授業 午後:タイ芸能 タイ語教室 WSK 13日 木 午前:幼稚園 体育(バスケットボール、バトミントン) WSK 午後:家庭科(お菓子作り見学)日本語クラブ(習字) 伝統音楽クラブ 14日 金 午前:幼稚園 体育(見学) WSK 午後:家庭科(うどん作り) タイ語教室 タイ舞踊クラブ見学 女子寮にてうどんを配る 15日 土 アユタヤへ買出し お礼作りの作業 WSK 16日 日 午前:先生方にアンケート調査 WSK 午後:女子寮中心にアンケート調査 お世話になった先生方にお礼めぐり 子どもたちとお寺にお参りへ 17日 月 午前:子どもたちにお別れの寮めぐり 午後:バンコクへ 森田夕紀さん、ジャナロンさんと夕食 6 ホテル スケジュール 後半 メートー 日付 活動内容 18日 火 午前:ジャナロンさんとのミーティング 午後:伊吾田帰国 19日 水 午前:自由 午後:寝台列車に乗ってバンコクからチェンマイへ 20日 木 午前:チェンマイ着 ソンテウでメートーへ 宿泊 ホテル 車中 メートー寮 午後:メートー着 メートー学校内見学 校長先生とミーティング 21日 金 午前:メートー村のお寺へ(お坊さんのお話を聞く) 授業見学 メートー学校 午後:歌の交流会 アンケート調査 子どもたちとメートー村見学へ ミットカンタノン 日付 活動内容 宿泊 22日 土 午前:ソンテウでチェンマイへ 午後:バスでメーサイへ ゲストハウス 23日 日 午前:ミットカンタノンへ スタッフのお話を聞く ゲストハウス 子どもたちと施設見学 午後:ビーズ作り ミャンマーへ 24日 月 午前:ミットカンタノンへ ビーズ作り 午後:バスでチェンマイへ チェンマイ 事務局 バーンロムサイ 日付 25日 活動内容 火 午前:バーンロムサイへ 施設見学 スタッフのお話を聞く 午後:ミットカンタノンのチェンマイドロップインセンターへ 宿泊 チェンマイ 事務局 出羽さんとスタッフのお話を聞く 夜のフィールド調査へ同行 26日 水 ミーティング 自由 27日 木 午前:電車でチェンマイからドンムアン空港へ 28日 金 早朝:バンコク発 午前:成田着 チェン事務局 7 空港 タ イ 概 要 色:(上から) 赤、白、青、白、赤 色の意味: 赤:国民、国家 白:仏教(白象) 青:王室 国名:タイ王国 (首都:バンコク) 人口: 6,235 万人 面積: 51 万 4,000km2 (日本の面積の約 1.4 倍) 言語:タイ語 ( 公用語 ) 宗教:仏教 95 %、イスラム教 3.8 %、キリスト教 0.5 %、その他 0.7 % 民族:タイ族 75 %、華僑 14 %、その他(マレー族、山岳民族) 11 % ※参考文献:CIA The World Factbook 2002 8 タ イ 山 岳 民 族 ◆山岳民族とは タイ国内では主として北部の山地に居住する約30万人の山岳民族の人を指すのが一般 的である。タイ北部には主にリス族、ラフ族、アカ族、モン族、カレン族、ヤオ族がい る。これらの民族の人たちは独自の文化や社会を持ち、それぞれの民族衣装は多様だ。ま た、それぞれ漢民族などに迫害を受けるなどしてタイまで逃れてきたという歴史を持つ。 近年ではタイ全土に近代化が進み、それと同時に昔ながらの文化を持つ山岳民族の人の 生活が貧しくなってきている。 ◆タイ山岳民族が貧しくなった理由 ① 現金収入の主な手段であった麻薬栽培が、タイ政府によって厳重に禁止されたため。 ② タイの森林の多くが伐採され、タイ政府が森林保護の目的で山岳民族の日常的な農法 である焼き畑農業を禁止したため。 ③ 山岳民族の人びとは独自の言語を持ち、タイ語の読み書きができないため、出稼ぎに 行っても就職が困難であり、就職できても賃金の安い肉体労働しかできないため。 ◆各民族の紹介 ※人口:1998年の統計結果 カレン族 ・ 人口:35万2295人 ⇒山岳民族の約47% ・ 住居:標高500m程の所に住む ・ 分派:スゴウ・カレン、ポーカレン、ブエ、トンスー、パダウン族(首が長くて 有名な首長族)など。 ・ 民族衣装:1婦1夫制で未婚者と既婚者で衣装が違い、未婚者は白い服を着る。 ・ 核家族が主で、他の山岳民族と違って母系社会であり、婿入りの形を取る。 モン族 ・ 人口:11万8779人 ⇒山岳民族の約16% ・ 分派・民族衣装:白いスカートを晴れ着とするホワイトモンと、藍色の布に赤や ピンクの鮮やかな色で装飾したスカートをはくブルーモン。 ・ 手先が器用。仕事は主に農業で、ケシ栽培は山岳民族で1番秀でていた。 9 ラフ族 ・ 人口:8万4414人 ⇒山岳民族の約11% ・ 住居:800m∼1200mの高地に多く、高床式の家。家の下には豚や鶏が放 し飼いにされている。 ・ 分派・民族衣装:黒を基調とした衣装を着るラフ・ナ族(ブラック・ラフ)と 赤、緑、青などのカラフルな民族衣装を着るラフ・ニ族(レッド・ラフ) ・ ラフ語は発音しやすく雲南方言とともにタイ少数民族の共通言語となっている。 アカ族 ・ 人口:5万6061人 ⇒山岳民族の約7.5% ・ 住居:1000m∼1500mの山の頂上付近の斜面に家を建てる。 ・ 民族衣装:黒を基調とした生地に華美な装飾をあしらった衣装。女性の頭にかぶ る兜は、悪霊が入ることを防ぐためで、寝るときもはずさないという。 ヤオ族 ・ 人口:4万2132人 ⇒山岳民族の約5.5% ・ 住居:中国風の土間式で、壁は木や竹で編んでいる。土間の一隅の高くなってい る場所にゴザをひき寝る。 ・ 民族衣装:黒地に厚手のマフラーを襟につけたような上着、刺繍の入ったズボ ン、そしてターバンのような黒い帽子。ヤオ族の男は、刺繍の技術やセンスか ら、女の伴侶としての素質や個性を読み取るという。 リス族 ・ 人口:3万1046人 ⇒山岳民族の約4% ・ 住居:800m∼1500mの渓流沿いに住む。 ・ 民族衣装:山岳民族の中では1番地味。緑を基調とした生地に黒い帯のようなも のを絞める。 ・ 名前は生まれる順番によって名前が決まっている。(長女がアマミ、次女がアル マ、三女はアサマ) ※参考文献: 「 タイ・黄金の三角地帯 」 、三輪隆、巡遊社 1989 年 : 「 黄金の四角地帯 」 、羽田令子、社会評論者 1999 年 10 訪問先 ワットサーキャオ孤児院 (2月2日∼2月17日) 11 ワ ッ ト サ ー キ ャ オ 孤 児 院 ◆ワットサーキャオ概要 所在地:タイ王国アントン県ワットサーキャオ孤児院 施設:寮、学校(幼稚園・小学校・中学校) 入寮数:男子 約600名 女子 約500名 主な年齢層:3歳∼16歳 世界最大級の孤児院といわれる、ワットサーキャオ(以後WSK)孤児院は、タイ王 国、仏教遺跡で世界的に有名な、アユタヤから車で30分ほどの、アントン県パモック市 内にある。地球市民の会かながわ(TPAK)が、1993年より10年に亘って、奨学 金制度、緊急支援、文具支援などの活動を行っている。 WSK(サーキャオ寺)は、1942年カンタヤーピワット住職によって設立され、当 初、住職が10人の孤児を集めたことから始まった。そして、1987年WSK内に、寮 (男子寮5棟 女子寮11棟)が設立され、1991年には小学校・中学校が、1997 年には幼稚園が設立された。現在、これらの学校へ通っている子どもたちは、全部で13 95人(幼稚園256人 小学校820人 中学校319人)、そのうちの約1100人 は、寮で暮らしている。 子どもたちは、両親を亡くしてしまった・両親の離婚による家庭崩壊・片親が覚醒剤の 所持により、刑務所に入っている・親の再婚によって祖父母に育てられたが、祖父母が亡 くなってしまった・家計が貧しく教育を受ける機会が乏しいというような理由で来てい る。 子どもたちの約80%は、山岳民族出身で、特にモン族が多く、アカ族、リス族、シャ ン族、ヤオ族もいる。 サーキャオ寺 ↓ 孤児院 孤児院と 学校 しての機能 ↓ 幼稚園 食事 モ ニ ュ メ ン ト : ワ ッ ト サ ー キ ャ オ孤児院は タ イ で は有名 12 寮 組織図 小・中学校