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第3節 社会参加と社会関係

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第3節 社会参加と社会関係
第3節
出現が若い世代と高齢世代の心を一層分離するこ
社会参加と社会関係
とになったといわれているが、道民は世代間交流
についてどのようにとらえているのであろうか。
「世代間交流の機会があったら参加したいと思
1 本道における地域活動
うか」について聞いたところ(表2−27)
、
生きがいとしての活動の中には、自己実現のた
めと地域貢献のためという目的がある。自己実現
の代表は様々な生涯学習であり、地域貢献の代表
は地域活動、地域づくりなどであるといえる。
〝生きがい 〟というと 〝高齢者のため 〟とつい想
定しがちであるが、これは高齢者に限ったことで
はない。どの年代にも必要である。
道内で、どのような活動が行われているのか。
「道民意識調査」に、地域活動に関する次の4項
目を設定した。そこで、この調査結果を中心に、
その傾向と課題等を述べていく。
(1) 世代間交流への参加の有無と参加したいと
思う交流の内容
(2) この1年間に参加した活動の有無とその活
動内容
(3) 活動に参加しなかった理由と今後参加して
みたい活動内容
(4) 高齢期になっても活動に参加し続けるため
に、何が必要か
・積極的に参加したい
11.2%
・できるだけ参加したい
58.3%
と、69.5%が参加の意向を示している。一方、
・あまり参加したくない
・全く参加したくない
と、30.6%は参加を望んでいないことになる。
「積極的」と「できる限り」を合わせた「参加
したい」を年代別に見ると、
・20代
61.3%
・30代
69.5%
・40代
68.0%
・50代
73.7%
・60歳以上
75.9%
となっており、若年層と高年齢層との間に大きな
開きはなかった。工夫次第でより充実した世代間
交流ができる可能性がある。
参加の意向を示した69.5%の回答者に、参加し
たい活動内容を聞いたところ、全体で最も高かっ
たのは、
「異世代と一緒に参加し、楽しめる活動」
学びたい」で21.3%。1位の半分以下である。活
核家族化やパソコンなどの高度情報メデイアの
表2− 27
積極的 に参加したい
動内容を年代別に見ると、どの年代も「異世代
世 代 間交 流への参加
できる限り参加したい
あまり参加したくない
58.3%
11.2%
参加したくない
69.5%
30.6%
ê
80
%
75
73.7
69.5
60
75.9
68.0
61.3
55
20代
30代
40代
全く参加したくない
28.2%
参加したい
65
2.4%
で53.1%である。2位は「異世代の特技や経験を
(1)キーワードは「楽しさ」
70
28.2%
50代
60歳以上
2.4%
と一緒に参加し、楽しめる活動」が1位で、年代
の順となっている。
が高くなるほど割合が高くなる。20代、30代、40
これを年代別に見ると、20代、30代、40代はと
代の2位はともに「異世代の特技や経験を学びた
もに1位2位3位の順序が全体と同じであるのに
い」(31.9%、28.6%、20.8%)で、50代の2位
対して、50代は、
は「新しい文化や技術などを学びたい 」、60以上
・1位
地域行事の世話
の2位は「地域の伝統や文化を学びたい」となっ
・2位
健康、スポーツを通じたクラブやグループ゚活動
ている。
・3位
趣味を通じたクラブやグループ活動
総じて 、「教えるとか学ぶといった堅苦しいこ
60歳以上は、
とはさておき、まずは楽しく過ごそう。その結果、
・1位
趣味を通じたクラブやグループ活動
お互いに学ぶことができる 。」との傾向がうかが
・2位
地域行事の世話
える。このことから、異世代交流はもとより、地
・3位
健康、スポーツを通じたクラブやグループ゚活動
域づくりの様々な行事を考える際には、この「楽
となっている。
しさ」が企画のキーワードになるであろう。
以上のとおり活動内容は、総じて健康やスポー
ツ、趣味に人気が集まっている。ここでいう「趣
(2)人気は健康やスポーツ、趣味の活動
味」は、一般的にいわれる美術、園芸、華道、書
この1年間に、地域のグル−プ活動に参加した
道などである。人気の集まっているこれらは、比
ことがある人は、全体で64.3%である。これを男
較的、個人的に満足感を得るものや資質の向上に
女別に見ると(表2−28 )、男性(68.8%)の方
寄与するものなので、こうして得た技術や能力が
が女性(58.0%)より10.8ポイントも多くなって
地域に還元されるなら、もっと豊かな地域づくり
いる。参加した活動内容を見ると、全体で最も高
ができるのではないかと思われる。
かったのは、
(3)活動内容が知られていない
・健康、スポーツを通じたクラブやグループ活動
45.6%
「この1年間に地域のグル−プ活動に参加した
・地域行事の世話(祭りなど催し物の世話役等)
ことがあるか」の質問で「参加していない」と答
41.9%
えた35.7%の人にその理由を10項目の中から選ん
・趣味を通じたクラブやグループ活動
でもらうと(表2−29 )、全体では「どのような
36.8%
活動が行われているか知らなかった」が1位で、
表2−28
男
地域のグループ活動への参加
68.8%
女
58.0%
男 31.2%
参加した
64.3%
ê
女 42.0%
参加していない
35.7%
55
50
51.3
47.6
45
43.4
40.2
40
35
47.2
36.4
36.3
33.8
31.7
30
42
39.8
48
45.9
42.9
33
25
20代
30代
40代
50代
60歳以上
スポ ー ツ等 のグル ー プ活 動
地域 行事 の世 話
趣 味 を通じたグル ー プ活 動
38.6%である。これを年代別に見ると、
い」と答えた人に「今後活動してみたい内容」を
・20代
64.7%
たずねると、1位が「趣味を通じたクラブやグル
・30代
35.1%
ープ活動」で56.7%、2位が「健康、スポーツを
・40代
30.8%
通じたクラブやグループ活動」
で47.1%であった。
・50代
27.3%
・60歳以上
18.4%
(4)仲間は継続の力なり
となっており、20代と60代の開きは、46.3ポイン
「高齢期になっても活動に参加し続けるために
トにもなっている。また、この傾向から、年齢が
は、何が必要か」について見ると(表2−30 )、
低いほど地域活動に対して関心が低い、あるいは
・1位
一緒に参加する仲間がいること
68.1%
若い年代に対して発信される情報が少ないという
・2位
身近に活動の場があること
41.9%
ことがよみとれ、今後情報発信の方法が課題とな
・3位
時間や期間にあまり拘束されないこと
ろう。
28.5%
全体での2位は「家庭の事情(病人,家事、仕
・4位
参加するのにあまり費用がかからないこと
事)があったから」で34.1%である。これを男女
26.2%
別で見ると、女性(39.1%)の方が男性(28.9%)
の順となっている。
より10.2ポイント多く、年代別で見ると、50代が
男女別に見ても、年代別に見ても1位は「一緒
52.3%で1番多くなっている。総じて、50代の女
に参加する仲間がいること」で、高い割合となっ
性に病人の世話や家事、仕事がのしかかっている
ている。活動を継続するためには、仲間が大きな
という現代社会の傾向がうかがえる。
力となっていることを示している。
なお、この1年間に「地域活動に参加していな
表2− 29
地域 のグル ー プ活 動 等 に参加しない理 由
38.6
どのような活 動 が行わ れ ているか知らなかった
34.1
家庭 の事 情 (病人 、家事 、仕事 )があったから
24.0
22.0
同好の友人 や
気軽に参加できる活 動 が少なかったから
12.2
11.8
グル ー プや 団体活 動
活 動 する場 所 が近 くになかったから
健 康や 体力に自信がなかったから
9.3
活 動 に必要な技能や 経験がなかったから
9.3
4.5
過 去 に参加したが期 待はずれ だったから
費 用がかかるから
0
表2− 30
2.4
5
10
15
20
25
30
35
40
%
45
高 齢 期 に地域 活 動 に参加するため には
68.1
一緒
41.9
身近 に活 動 の場 が あること
28.5
26.2
23.9
20.8
19.8
19
14.9
11.6
時 間や 期 間にあまり拘束され ないこと
参加するのにあまり費 用がかからないこと
家族など周 囲の理
解
が
得
よき指導者がいること
参加を呼びかける団体、世 話役 がいること
活 動 などについての情 報 提 供 が あること
自分の経験や 技術が生かせること
活 動 のため の施 設が 整 備 され ていること
0
10
20
30
40
50
60
70
%
80
2
サラリーマンシニア支援事業
表2−31
「サラリーマ ンOB活動支援事業」のあらまし
(1)調査概要
高齢化が急速に進展する過程で、高齢者の社会
1 事業の概要
退職勤労者( サラリーマ ンOB等) を対象に、都
参加活動の推進が叫ばれているが 、1994年に(財 )
長寿社会開発センターが「サラリーマンOB活動
道府 県の「明るい長寿社会づくり推進 機構」が実施
支援事業 」(表2−31)をスタートさせたのを受
する『高齢者の健康・生きがいづくり活動等の社会
けて、宮崎県の(財)みやざき長寿社会推進機構
参加活動を支援する事業』のこと。財団法人 長寿社
が、県内有力企業の協力を得て同事業をスタート
会開発センターの助成金を活用して実施 されてい
させた。
る。
道内においても、就業人口の約8割はサラリー
2 事業の特徴
マンであり、当研究会は、活力ある高齢社会を創
るためには、サラリーマンOB支援対策は必須の
ものであると考え、宮崎県の事業を現地調査する
ことにした。
サラリーマ ンシニ アが自ら企画立案し、実行する
という「参加型の事業」となっている。現在実施 し
ている各推進 機構は、概ねこうした手法を取り入れ
ており、この事業を先駆的 に実施 している社団法人
ここでは、現地調査の結果から、同事業の現状
や課題をまとめ、そこから北海道におけるサラリ
日本 セカンドライフ協会( J A SS) の協力支援の
もとに事業を実施 している。
ーマンOB支援対策の可能性等を探ってみる。
3 実施 状況
16府 県( 秋田、福島、茨城、富山、大阪、岡
(2 )「サラリーマンOB活動支援事業」の概要
ア
山、広島、香川、 宮 崎
、 和歌山
、 徳島
、 山、
形
事業の準備経過
○1994年
企業訪問による協力依頼(対象∼宮崎
長野
、
静岡、京都、高知)
県内の主要3市)
・宮崎市(県央部)
、都城市(県南部)
、
・運営委員会は同事業の要になるもので、主たる
延岡市(県北部)
企業OB会の代表者で構成している。月1回の
表2−32
例会で企 画・立案を行う。
3市の状況
総人口
就業人口比率
高齢化
(千人) 率(%)
1次産業
2次産業
%)
3次産業
・事務局事務は財団が担っている。専用の事務局
(室)はなく、委員会業務は財団職員が担当し
ている。
宮崎市
300
14.0
4.8
18.0
77.2
都城市
133
18.5
10.9
28.8
60.3
・イベント等の参加者は、主に、運営委員が所属
延岡市
128
17.7
4.8
35.9
59.3
する企業OB会を対象にして募集している。
宮崎県
1,189
18.3
15.0
26.6
58.4
・イベント内容は、バスハイク、男の料理教室、
施設見学、ゴルフコンペなどが主体であった。
○1995年
宮崎市地区
説明会・研修会の開催、運営委員会の開催
○1997年
・メンバーの多くは男性であるが、活動が活発な
地区では女性委員の活躍が目立っていた。
都城・延岡地区
説明会・研修会の開催、運営委員会の開催
(イ)
活動資金
・運営委員への手当は交通費のみ。
イ
事業運営の内容
(ア) 運営委員会によるイベントの企画・立案
〈イベントの実施〉
・運営経費は年間10万円の推進費が財団から交付
される。
(県からの補助金)
・イベント参加費は参加者の自己負担。
・事務的な経費は財団が負担している。
(3)調査のまとめ
わが国の就業人口は、その8割が被雇用者、つ
ウ
(ア)
運営上の課題
まり「サラリーマン」であり、多くの人が「定年
運営委員会の自主性
退職」という大きな節目を迎える 。(財)シニア
・運営委員会は毎月開催されているが、事務局業
プラン開発機構が1991年にサラリーマンOBを対
務は全て財団に任されており、財団への依存性
象に行った調査によると、
「定年退職のイメージ」
が極めて強い。
(表2−33)については、これまで属していた組
・設立の経緯からやむを得ない面があるが、福島
織における人間関係や責任から解放され、自分の
県の場合は、運営委員会が事務的な処理を含め
時間ができたり、新たな人生が開けるという、プ
た自主的な運営を行っている。こうした運営へ
ラス思考の項目を選択する人の割合が多く、一見、
の切り替えが必要である。
退職後の問題はないようにも思われる。その一方
で、帰属先や肩書きがなくなること、人や情報さ
〔役割分担〕
事務所や設備等の提供
∼
財団
らには社会から遠ざかることへの不安も少なくな
運営や事務局業務
∼
運営委員会
いことがわかる。
高齢者の8割がいわゆる「元気老人」ともいわ
(イ)
事業の運営形態
れている中で、退職後も健康で生きがいを持って
・現状では、事業展開の範囲が地域の有力企業に
暮らし続けることができるよう、官民がその役割
限定されており、また、イベントへの参加者も
に応じた条件整備をしていくことが必要である。
限られているように思われる。
10年後には、団塊の世代(1947年∼1949年生ま
・大手企業だけではなく、サラリーマンOBに広
れ)が退職年齢に達する時期が到来する。いわゆ
く働きかけるため、会員制を導入して個人的レ
る「濡れ落ち葉」とならないためには、個々人の
ベルでも積極的に参加できるような運営形態が
意識と退職前からの準備が必要である。
必要と思われる。和歌山県の場合は、運営委員
今回視察した、宮崎県におけるサラリーマンO
を新聞等で公募したところ、数多くの応募があ
B支援事業の実施状況から、今後の取り組みに当
ったという。
たって留意すべきことは、概ね次のようにまとめ
られる。
(ウ)
事業(イベント)内容の工夫
・1996年の「宮崎ねんりんピック」開催に当たり、
図 2-3-2-1
定年退職のイメージ
多数のボランティアが必要であったこともあ
り、財団としてこの事業(サラリーマンOB支
煩わしい人間関係から解放される
31.4
援事業)に取り組み、これまで3地域で委員会
所属する組織や肩書きがなくなる
18.4
を組織化できたが、その後ボランティア的な活
家庭サービスができる
18.8
動は見られず、イベントの大半が趣味、娯楽、
経済的に苦しくなる
健康管理などに止まっている。
・県社会福祉協議会から、具体的にボランティア
活動への参画依頼があったが、委員会としては
消極的な反応であった。
・当初はメンバーの横のつながりを図るために、
趣味や娯楽などの一般的なイベントも必要であ
るが 、「前期高齢者が後期高齢者を支える」と
いう事業目的に近づけるための創意工夫が必要
である。
32.1
自由な時間が増え、自分を取り戻す
44.7
生活目標や気持ちの張りがなくなる
14.9
接触する人や情報が経る
19.4
新しい人生が開ける
社会から取り残される
30.7
5.5
決まった行動パターンから解放される
自己実現の場や機会がなくなる
精神的に楽になる
17.8
3.8
37.6
0 10 20 30 40 50
資料:( 財)シニアプラン開発機構「サラリーマンの生きが
いに関する調査」(1991年,対象:35∼74歳の厚生年金基金加
入者及び受給者3,051名)
①
事業運営は当事者(サラリーマンOB等)
など、個人参加を含めたオープンなものとす
が主体的に行うこと。行政は条件整備に努め
ること。
ること。
②
④
事業運営メンバーは、
男性ばかりではなく、
どに止まりがちであることから、地域におけ
女性の参加も必要であること。
③
事業内容の大半が趣味、娯楽、健康管理な
る様々な活動(ボランティア活動、社協活動
事業展開の範囲は、地域の有力企業に限定
など)にも目を向けること。
することなく、一般公募や会員制を導入する
(参考1)
サ
1
ラ
リ
ー
マ
ン
シ
ニ
ア
支
援
事
業
の
意
義
サラリーマンシニア支援事業の意義
近年、就業者の約4分の3がサラリーマンで占められているが、その退職者の中には、生きがいを喪
失し、趣味も仲間もなく閉じこもりがちとなる人が見られ、『濡れ落ち葉』ともいわれるように一種の社
会問題となってきた。また、今後も超高齢社会の到来とソフト経済化の進展に伴い、サラリーマン退職
者の一層の増加が見込まれ、その対応は緊急の課題となっている。
これに対して、国では公的介護保険をはじめとする要介護対策とともに、元気な高齢者を対象とした
健康増進施策を推進している。生きがいづくり支援や健康増進は、要介護の予防にもつながるものであ
り、その重要性は極めて高いものと位置づけられている。
また、各都道府県においては、地域における高齢者施策を包括的に推進する役割を担う『明るい長寿
社会づくり推進機構』を設置しており、中でもサラリーマン退職者に対する施策は推進機構の最重要課
題の一つとなっている。
2
サラリーマンシニア支援事業の概要
推進機構が実施する本事業は、推進機構の本来事業である高齢者の健康と生きがいづくり事業の一環
として、社団法人日本セカンドライフ協会(JASS)の協力を得て行っている。
具体的には、まず、趣旨に賛同する管内の企業から運営委員の推薦を受け、運営委員の養成研修を行
ったあと、運営委員会を開惟する。次いで運営委員が、自らサラリーマンシニアを対象とした様々なイ
ベント等の企画を行い、これらを実行するというものである。
本事業の最大の特徴は、サラリーマンOB自らが企画立案し、実行するという「参加型の事業」とな
っているということにある。また、サラリーマンOB自身が運営委員となって自立的・自発的に活動す
ることで、いろいろな創意工夫が生まれ、一過性ではなく、継続性・発展性のある事業になる。
(参考2)
(財)みやざき長寿社会推進機構におけるサラリーマンシニア支援事業の取組み
1
経緯
1994年度から財団法人長寿社会開発センターの助成により、財団法人みやざき長寿社会推進機構(じ
ゅぴあ財団)が「サラリーマンOB支援事業」をスタートさせた。じゅぴあ財団では、モデル的に、宮
崎市を中心に、有力企業のOB会からの被推薦者を委員としたネットワーク「達人会」(宮崎地区サラリ
ーマンOB活動運営委員会)を支援してきた。
財団法人長寿社会開発センターの助成期間終了後の1997年度からは、宮崎県の補助により都城市と延
岡市に、達人会と同様のネットワークが立ち上がり、この支援を継続している。
2
3
事業の経過
1994年11月∼
宮崎地区企業訪問(協力依頼)
1995年 2月
宮崎地区運営委員会設立
1996年11月∼
都城・延岡地区企業訪問(協力依頼)
1997年 1月30日
延岡地区説明会
2月12日
都城地区説明会
3月 5日
3地区合同研修会
3月10日
延岡地区運営委員会設立会
3月13日
都城地区運営委員会設立会
運営委員会の概要
(1)運営委員会の開催状況
①委員構成
宮崎地区15名/都城地区10名/延岡地区10名
②開催時期
毎月第一
③開催内容
イベントの企画・立案
火躍日(延岡)/水躍日(宮崎)木曜日(都城)
(2)運営委員会研修会の実施状況
○運営委員研修会(官崎市)
1996年5月23日
「サラリーマンOB活動支援制度の概要とJASSシステム」
について
講
師
長寿社会開発センター
小山
JASS
島津
吉井
長尾
○サラリーマンシニア支援対策サミット(広鳥市/1997年2月20∼21日)
○3地区合同研修会(官崎市/1997年3月5日)
(参考3)
サ ラ リ ー マ ン シ ニ ア 活 動 支 援 事 業 活 動 報 告
(1996年度∼〉
日
時
1996. 6.15
場
所
イベント名
参加者
宮日会館ホール
「渡辺綱纜宮交シティ社長講演∼私の一期一会∼」
8.8
宮崎歴史文化館
「みやざきの歴史探訪∼蓬ケ池史跡公園めぐり」
28名
9.11
九州電力宮崎支店
「男の料理教室1∼男の晩酌料理を体験しよう」
29名
9.12
南郷村
バスハイク「西の正倉院・百済の里に禎嘉王のロマンを訪ねて」
60名
スパーレ21
スパーレ21健康ランド温泉施設体験」
20名
「ねんりんピック'96宮崎大会ボランティア参加」運営委員参加
10名
10.24
11.9∼12
178名
11.29
佐土原町
バスハイク「佐土原城址と仏閣めぐり」
37名
12. 6
県工業試験場
「肝職ガン治療の最先端SPGを工業試験場に学び学園温 泉ジェスパ
33名
学園温泉ジェスパ
でリフレッシュ」
九州電力宮崎支店
「男の料理教室2∼肉料理に挑戦しよう」
29名
3.13
学園温泉ジェスパ
「気功とアクアビクス(水中体操)体験」
18名
4.18
法華岳
バスハイク「法華岳薬師吟行菜の花句会」
29名
5.16
宮崎CC青島コース
「第1回ゴルフコンペ」
47名
6.16
九州電力宮崎支店
「男の料理教室3」
32名
6.19
都農町・日向市
バスハイク「美々津の歴史的町並みと日向馬ケ背を訪ねて」
85名
10.22
西都市
バスハイク「西都原原古墳群・国分寺跡めぐりと西都温泉でのひととき」
50名
11.13
九州電力宮崎支店
「男の料理教室4」
27名
11.22
県水産試験場
「県水産試験場まつり」
48名
11.26
宮崎CC青島コース
「第2回ゴルフコンペ」
50名
野尻町・小林市
バスハイク「霧島山麓の堆大な自然めぐり」
73名
4.27
九州電力宮崎支店
「男の料理教室5」
30名
5.12
UMKカントリー
「第1回ゴルフコンペ」
40名
6.11
山之口町、高崎町
バスハイク「山之口・高城の歴史、史跡めぐりとあじさい公園、高崎
92名
1997. 1.28
1998. 4.10
天文台めぐり」
6.18
都城市中央公民館
「第2回男の料理教室」
15名
県芸術劇場
「社交ダンス
11名
8. 7
延岡市社教センター
「第l回男の料理教室」
18名
8.25
都城市姫城
「ペタンク講習会」
24名
9.23
延岡市三須
「延岡会ゴルフコンペ」
16名
9.28
都城市中央公民館
「第3回男の料理教室」
12名
10.13
九州電力宮崎支店
「男の料理教室6」
29名
7月毎木曜日
初級入門教室」
3
高齢者の学習活動と社会参加
(「1998年度茅野市の公民館」より)
1996年の閣議決定「高齢社会対策の大綱につい
ア
公民館分館活動
て」において「高齢社会においては、価値観が多
茅野市における公民館活動は、中央公民館と9
様化する中で、学習を通じての心の豊かさや生き
地区公民館からなっている。さらに、地区公民館
がいの充足の機会が求められ、経済社会の変化に
の下に80の「分館」が自治会等により自主的に設
対応して絶えず新たな知識や技術を習得する機会
置されており、市はこの公民館分館を生涯学習の
が必要とされることから、生涯のいつでも自由に
拠点として位置づけている(表2−34 省略)。
学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が
適切に評価される生涯学習社会の形成を目指すこ
イ
茅野市公民館分館職員研修会
と。また、高齢者が社会の重要な一員として、生
年間1回、1泊2日の日程で公民館分館活動の
きがいを持って活動できるよう、ボランティア活
進め方や運営方法について研修を行い、例年、分
動をはじめとする高齢者の社会参加活動を促進す
館役職員約 300人が参加している。
るととともに、
高齢者が自由時間を有効に活用し、
充実して過ごせる条件の整備を図ること 。」と述
市公民館からの援助
分館長手当
べられている。
当研究会は、公民館活動を通して活発な高齢者
の学習活動と社会参加に取り組んでいる長野県
ち の
ウ
年間
36,000円
主事手当
31,000円
分館活動交付金
30,000円
し
茅野市をモデルとし、現地調査することにした。
以下、現地調査をもとに 、「りんどうの里
原学習都市
高
茅野」の実現を目指し、生涯学習に
よる人づくり、まちづくりを進めている、茅野市
※一事業につき 5,000円(学習活動3事
業、
体育レクリエーション活動2事業、
ふさと活動1事業)
分館報の発行補助金
5,000円
における高齢者の学習活動の取り組みを紹介す
る。
(2)高齢者大学
茅野市公民館は、高齢者が教養、技能、運動等
(1)茅野市における公民館活動
の学習を通し、さらには個性や能力を発揮して生
「公民館とはみんなで一緒に学びあう集団学習
涯にわたり自己実現を図るとともに、仲間づくり
の場であり、憩いの場であり、自己解放の場であ
の輪を広げ、健康で心豊かな生きがいのある人生
るとともに、文化創造の場でもある。市民の多様
を送れるよう高齢者大学を開設している。
な学習活動を促進し、自主的活動を活発なものと
受講者は、年間 200名以上に上り、教養講座15
していくため、学習の場の確保と環境の整備を図
回、技能講座9回、運動講座3回のほか、特別開
るとともに学習資料の提供や、グループ、団体等
設講座に参加するなど、
活発な学習を行っている。
の運営や活動への助言などを行うものである。特
に茅野市においては生涯学習のまちづくりを進め
(3)本道における高齢者学習の課題
るため生涯学習センターとして位置づけられ、学
茅野市においては、公民館の分館活動がきめ細
習・文化情報センターとして市内における文化活
かに展開されており、世代を越えて公民館で学習
動の情報拠点として位置づけられている。
を行っている。同時に、高齢者対象の学習機会も
分館は、住民にとって最も身近で様々な学習に
充実していることがうかがえた。
参加しやすい施設である。このことから地域にお
本道における公民館活動は長野県とは地域性が
ける生涯学習推進の拠点として、地域の実情に即
異なり、ほとんどの市町村が中央公民館1館を中
した分館の独自性を尊重しながら活動を展開して
心に活動しており、地域自治会単位での公民館活
いかなければならない。
」
動は見られない。しかし、各市町村においては、
教育委員会や公民館等の施設において、学習機会
こういう人々であり、こういう特徴を押さえた上
は多様に提供されており、広域性をカバーするた
での対策が必要である。
めに福祉バスの活用などにより集合学習を進めて
いるところも多い。
判断したくない。判断から逃避する。判断には
自己責任が伴うので避ける。これが40年間のサラ
今後本道においては、
対象を高齢者に限定せず、
リーマン生活の中で育まれた能力である。
だから、
対象年代をオープンにした学習活動に、多くの高
創造性のある仕事をしようとすると必ず衝突す
齢者が参加できる体制による世代間交流学習の推
る。例外的に、自発性のある人、創造的な人、個
進、学習成果を生かすための社会参加・社会貢献
人で行動する人、リスクを負う覚悟のある人がい
の機会の拡充などが課題である。
るが、9割はそれ以外である。
(2)生涯学習と実践活動
4 高齢者活動促進の要点
生涯学習を、実践活動に結びつくように配慮す
ることである。福祉制度や介護保険の勉強会をや
長年にわたり、高齢化社会の様々な問題に取り
組み、行政に対しても民間サイドから多くの提言
っても、それは単に頭の中の知識が増すだけであ
る。生涯学習の中に、フィールドワークを取り入
れるとよい。高齢者は学習が好きであるから、実
をしており、現在は社団法人「長寿社会文化協会
践に結びつくように配慮することが大切である。
(WAC )」を設立した上で、事業の全国展開を
滋賀県の生涯学習の一つに、シナリオづくりと
行っている田中尚輝常務理事から、次のとおりア
絵を描くコースを一緒にした活動、つまり紙芝居
ドバイザー・レクチャーを受けた。
づくりを2年間かけてやっているのがある。修了
したあと、ボランティアサークルをつくり、制作
田 中 尚 輝 ( たなか
した紙芝居を持って、保育園や老人クラブなどに
なおき)氏
1943年京都市生まれ。
1981年 全国高齢化社会研究協会を設立し、事務局長
1986年 長寿社会文化協会(WAC)を設立し、事務局長
1988年 WACが社団法人 として認可され、常務理事
[現職 (
] 財) さわやか福祉財団 組織支援グループ
NPO事業サポ ー トセンター 事務局長
介護の社会化を進 める1万人 市民委員会運営委員
[著書 ]
『高齢化時代のボ ランティア『ボ
』ランティアの時代
NPOが社会を変える( 岩波書店)
出かけていた。これは趣味と社会参加をうまく結
合させた方式でおもしろい。
しかし、一般的に教育委員会は、何回どういう
講座をやったか、何人参加したかということが評
価基準であって、学習を通じて社会的に価値のあ
ることを成し遂げたのかということは、判断基準
にしていない。
(3)活動資金と活動の継続
ア
健康麻雀
長寿社会文化協会(WAC)では、札幌、秋田、
《以下、レクチ ャー 要旨 》
(1)高齢者の日本的特殊性
リタイアしたサラリーマンの特色は、一言でい
うならば、牙を抜かれた人間がたくさんいるとい
うことだ。
①自発性がない。
②創造的でない。
③個人で行動することができない
④リスクを負うことができない。
仙台、東京、名古屋、京都、大阪、神戸、広島な
どで健康麻雀を主催している 。「かけないこと」
と「煙草をすわないこと」が約束事である。雀荘
は通常昼間空いているので、10時から夕方5時ぐ
らいまでで、参加者1人から1,500円を徴収し、
雀荘に1,000円支払い、500円を協会の管理費に充
てている。遊ぶ人は1,500円で1日遊ぶことがで
き、WACの方はコーディネートにより500円を
法人に寄付してもらっているということだ。
イ
うらしま太郎
だ。絶対的無償性しかボランティアでないとプロ
高齢者を模擬的に体験するセットであり、WA
パーの社協職員は言い続けてきたので、事実を知
Cの開発したグッズである。2日間の講習修了の
っていても変えようとしない。今でも9割以上は
あと、小学校へ行ったり、中学校を訪問したり、
無償でないとボランティアでないといっているだ
イベントに参加したりして、グッズ付きで高齢者
ろう。だから有償のボランティアは社協から排除
の問題を話し、気楽にインストラクターとして社
され、登録団体にならず、会館や会議室を他のボ
会参加しているということだ。グッズとインスト
ランティア団体と同じように有利な条件で使えな
ラクター付きでリースするのだが、本部だけで年
いとか、助成金が配分されないとか、団体間の交
間8,000万円、全国では1億5,000万円ぐらい売れ
流ができないなどの問題が起きる。
ている。北海道では旭川にこのグループがある。
アメリカでは、一つ一つのボランティア団体に
このように、資金を自ら稼ぐことができると活
力がある。予算もあり、専任の職員もいる。何か
動が長続きする。社会活動で必要なのはお金であ
やりたいことがあり、その団体のところに訪ねて
り、自分たちで生み出す仕組が必要である。それ
いくと対応してくれる。その対応は、いくら遅く
も行政的にではなく、参加する人の自己責任でや
ても72時間以内に紹介する仕組になっている。人
ってもらう。WAC本部の財政はちっぽけで、年
の気持ちはそんなに長くは続かないものであり、
間2,500万円ぐらいだが、各地には150ポイントぐ
やりたいと思ったときが大切という考えである。
らいの活動拠点があり、
本部は会費は徴収するが、
団体職員の主要な仕事は、ボランティア活動の場
一円も援助はせず、健康麻雀の仕組などの情報を
所を探すことである。種類が多くあり、選択でき
提供するだけである。各ポイントで、年間予算は
るようにしておかなければならない。
0円から3,000万円ぐらいまでであり、全体では
5億円ぐらいの予算になっており、先程の事業な
どで収入を得ている。
(5)団体のマネジメント支援
現在のボランティアの主要な担い手は専業主婦
であり、特徴として、満ち溢れるほどの〝想い 〟
(4)アウトドアボランティアのすすめ
や愛情はあるが、団体をクールな観点でマネージ
ホームヘルプサービスで体をふいたり、洗濯を
メントすることが、全く不得手である。そこで、
したり、おむつを代えたりする活動に、リタイア
実験的に東海銀行のOBの派遣をしている。彼ら
した男性は入ってこない。アウトドアのボランテ
はボランティア組織をつくっているが、団体の会
ィアがよい。これは玄関から中へは入らない活動
計とか総務の仕事をボランティアとして引き受
である。食事の配送、人の移送、声かけ、安全確
け、週に1∼2回行って会計処理とか、役所の交
認のための電話などたくさんある。ボランティア
渉、書類づくりなどをしている。こうして女性と
活動をしたい人は、調査によると6割いるが、実
男性とを組ませるとうまくいく。
際に行っている人は1割弱である。やりやすいと
ころから入るのがよい。アウトドアボランティア
のおもしろさ、活動の豊富さを提示しなければな
らない。
(6)起業としてのNPO「福祉を産業とし
て成立させる」
福祉を産業として見る視点が必要である。福祉
ボランティア活動で、現在ネックになっている
は巨大な産業となる。介護保険は2000年当初は4
のは社会福祉協議会である。社協にボランティア
兆2,000億円でスタートするが、これは公的資金
をしたいと相談に行って、ここでほとんどの人が
であり、これと同じくらい民間でも資金が動くの
止める。また、登録してもほとんど声がかからな
で、8兆円規模になる。これはどんどん伸びてい
い。意欲的な人は、社協とけんかを始める人もい
くだろう。
20年もすれば30兆円産業になっていく。
る。もう一つの問題は社協の人の多くは、有償ボ
これからの日本の優良産業の一つは、福祉産業で
ランティアをボランティアとして認めないこと
ある。民間営利企業はすでに手を打っている。N
PO法ができたので、システムとして中高年の社
以上、田中尚輝氏のレクチャーから、高齢者の
会参加を進める観点から、福祉産業に入り込んで
社会参加を促進するためには、行政主導では失敗
いくことが課題だ。通産省も産業として福祉をと
することが多くある。そのため、例えば、高齢者
らえている。
は生涯学習に熱心である特性を活用して、この生
産業の弱さとNPOの強さであるが、産業は均
涯学習を一歩進めて実践活動に結びつくように誘
一の製品を大量に生み出すことが得意である。と
導する。高齢者が取り組んでいる社会参加活動を
ころが、人間は総合的な存在であるので、個々の
実践活動に結びつけていくことや、地域との関わ
対応には不得意である。企業の立場でなく、人の
りを持たせること、あるいは、高齢者のボランテ
立場に立ってコンサルタント的な支援者として、
ィア活動など、様々な活動をNPO活動として取
NPOが活躍できる。企業と人の間に立つ業とし
り組んでいくことが重要である。北海道において
ての「起業」が今後たくさん出てくるだろう。
も、これらの取り組みを進めることが今後の課題
であると思われる。
(7)アメリカに学ぶ
アメリカの全米退職者協会(AARP)は参考
すおうおおしま
になる。年間8ドルの会費で、3,300万人ほどの
5
高齢者が主役の周防大島
会員がいる。2か月に1回発行される会報は、
2,300万部発行されている。定期刊行物の中で世
先にも紹介したが、山口県では、本格的な高齢
界一の発行部数である。広告料は、1ページでお
社会となる21世紀を先取りした、魅力ある先進的
よそ2,200万円だという。1958年に誕生し、40年
な地域づくりを広域的に進めるために、
超高齢化、
ぐらいの間に急速に伸びてきた。その理由の一つ
過疎化の島で元気に生活している人達に着目し、
はボランティア活動である。50歳以上の半数が入
1997年度から「周防大島高齢者モデル居住圏構想」
会しているが、高齢者の社会的地位の向上をボラ
に取り組んでいる。
ンティア活動とセットしている。現在、アメリカ
モデル居住圏構想推進事業の中から数カ所を選
には定年制がない。1978年に70歳までにした。そ
び、同構想を推進する協議会の藤田事務局次長の
の10年後、70歳の枠も外した。働く意欲や能力の
ほか、高齢者にスポットを当て久賀御用聞き事業
ある人は、何才まででも働ける。アメリカにおけ
に関わっている大波艶子氏、みかん栽培ととんぼ
る最初の権利意識は人種問題であったが、その後、
の会の奥本満男氏、漁業従事者の中谷つとむ氏、
男女問題、そして年齢差別問題と進めんできた。
和田サロンの宮崎邦子氏、東和町毎日給食サービ
日本は、男女差別を問題にしている段階だろうか。
スの山本米子氏などにインタビューをしたので、
もう一つは、ロットメリットをつくり出してい
事業の大枠と島で生きる高齢者の生き方をここで
ることである。AARPが開発した保険は、民間
紹介したい。
保険会社と提携しているが、通常よりも3割ぐら
い安いだけでなく、
サービスもしっかりしている。
おまけに、
55歳運転向上プログラムの講習を行い、
2日間の講習を終えて修了証を持って保険会社に
行くと、保険料が1割安くなる。
アメリカのやり方は、日本でも参考にすること
(1)島民1人ひとりが島づくりの主役とな
るモデル居住圏構想
大島郡4町の行政、民間団体、県、国の関係省
庁、有識者等により構成された「高齢者モデル居
住圏構想推進協議会」は 、1997年6月に設立した。
ができる。NPO事業サポートセンターをNPO
島民1人ひとりが島づくりの主役となって参加
法人として、
4月にはスタートさせる予定である。
し、若者から高齢者まで、ともに安心して暮らせ
AARPを意識しながら、日本的なAARPをつ
る高齢者モデル居住圏の形成を図るための構想を
くれる時代になっている。リタイアした男性に参
策定し、構想の実現に向けて各種事業の推進に当
画してもらえる活動を進めていきたい。
たっている。モデル居住圏構想は 、「元気」=元
気な時、
「にこにこ」=体が弱ってきた時、
「安心」
(2)活躍する高齢者
=介護が必要になった時の3つのケースに分けら
ア
れている(表2−35)
。
久賀御用聞き事業
山口県知事が島を視察した時に、島民から、自
同協議会では、事業を実施する受け皿を選定し
宅と道路までの間が急傾斜地のため、買い物や通
て支援するに当たり、受け皿となる事業主体は、
院時の坂の上り下りに大変苦労していることを聞
島民が魅力ある島づくりを進めるために、自主的
かされた。そこで、検討した結果出されたのが久
に活動していることを主な要件としている。
賀御用聞き事業で、1998年度から実施している。
今回、島を案内してくれた同協議会事務局次長
久賀町商工会が「御用聞きセンター」を設置し、
の藤田 潔氏は、「島の高齢者は自立していて、生
町内の高齢者から電話、ファックスなどで注文を
涯現役の感は強いが、まだ今の段階では行政の主
受け、品物を町内の商店から調達して、注文者の
導が必要である。しかし、当協議会では、高齢者
自宅まで配達する 。「御用聞きセンター」は、町
を保護の対象とは考えず、地域をを支える重要な
から運営費(人件費)の補助を受けているほか、
構成員の1人としてとらえている。また、モデル
注文者から1回につき100円、商店からは売上高
事業への参加を通して、高齢者自身が元気な島を
の3%の手数料を徴収している。利用している
創る代表の1人であると位置づけている 。」とい
家庭は120世帯あり、利用高は、1998年5月から
う。このことは、働いて収益をあげている人だけ
10月末までの間で約100万円となっている。協力
を一人前としてみる、競争社会の価値観を変える
商店は10店で、600品目を扱っている。
可能性を秘めていることを示唆している。また、
インタビューに参加した久賀町住民課長と産業
藤田次長は、注目を浴びてスタートしたモデル事
課長は 、「この事業は、利用状況、利用高、手数
業について 、「もっと多くの住民が事業主体とし
料のデータを収集するなどのモデル事業と位置づ
て参画するように、また、高齢者がいかに閉じこ
けているので、将来は郵便局員や電力会社のメー
もらずに活動範囲を広げることができるようにな
ター検査員なども注文取りのシステムに加入する
るかを考えていかなければならない 。」と、今後
ことを検討し 、「御用聞きセンター」が行政の手
の方向性を語っていた。
を離れて独自に事業を展開できる方向を目指して
周防大島高齢者モデル居住圏構想
表2−35
∼ 「元気・にこにこ・安心」の島づくり∼
「元気」な島づくり
「にこにこ」島づくり
・健康時の支援
・虚弱時の支援
・健康づくり
・快適な住環境
・産業担い手づくり
・ふれあいと交流
・生きがいと参加
等
・外出環境の整備
「安心」の島づくり
・要援護時の支援
・緊急対応
ネ ットワーク
・介護サー ビ ス提供
等
・財産管理
等
・住民サロンの設置
・久賀御用聞 き事業
・高齢社会探検隊
・給食サービ スの充実 他
・朝市の開催
・みかんの木オ ーナ ー制度の推進
・漁師 学校の設置
・三世代参加型フォーラムの開催
他
いる。 また、島の高齢者には単身が多いことか
後であり、現在の会員の跡継ぎが島に戻ってくる
ら、日用品を届けるだけでなく、高齢者が買い物
可能性がほとんど見込めないことが課題である。
に出かけ、地域の人と会話を交わしたり、買い物
これまでみかん栽培をしている者が中心になって
を楽しむなど、活動範囲を広げることができるよ
会を運営してきたが、今後は、みかん畑を持って
うに 、「買い物ツアー」の実施も検討したいと考
いない者も加え、地域の活性化につながる活動に
えている。
」と抱負を語っていた。
取り組まなければならない。」と語っていた。
久賀御用聞き事業では、地域の元気な高齢者が
ここでいうところの〝働く〟という感覚は、生
商品の取りまとめに関わっており、事業を進める
産が主目的ではなく、日々の充実や生きている実
中でお互いのネットワークを築いている点に注目
感を得る一方法である。
したい。また、将来に向けて検討を予定している
高齢者にとって、生涯豊かに過ごすということ
「買い物ツアー」は、高齢者にとっても地域にと
は、周防大島のような状態をいうのであろう。そ
っても有益であると考えられる。それは、足など
のような環境を、自分自身と社会全体がともに考
が弱って外出できなくなり家に閉じこもることは
え、創りだしていくことが必要である。
一種の社会からの隔離といえるであろうし、顔を
合わせ、世間話をするといったごくたわいのない
ウ
住民サロン
ことであっても〝会話〟が地域を生き生きさせる
「住民サロン」は、家庭に引きこもりがちな高
要因になると思われるからである。久賀町の取り
齢者が身近な場所で開催する地域交流活動に参加
組みの中に、ネットワークづくりや地域の活性化
することによって仲間と交流し、心配事の相談を
へのヒントがあると思われる。
したり、健康管理を受けたりすることで、高齢者
の自立と安心できる生活の支えとなることを目的
イ
みかん栽培と朝市
にしている。行政はサロンに保健婦を派遣し、健
「とんぼの会」は、1988年に企業などを定年退
康管理に関する相談や指導を行っている。サロン
職して島に戻ってきた者(Uターン者)が知恵と
の運営は各地区に任されており、各町では、町内
時間を使い、みかん栽培を通してお互いを助け合
の施設や民家を利用して情報交換や悩み事の相
い、励まし合って健康で明るい地域づくりを進め
談、交流やゲーム、健康教室などを開催している。
ることを目指して結成した会である。みかんを農
また、
ボランティアの人々が運営を支援している。
協に出荷するほか、活動の一部として道端での農
東和町和田地区では、1987年に大島郡痴呆性老
産物即売の朝市「青空市場」を開いている。イン
人を支える家族の会を結成し、以来会長に就任し
タビュー参加者全員が「会員の平均年齢は73歳前
ている宮崎氏の活動を1998年度から「周防大島高
齢者モデル居住圏構想推進事業」の一つに位置づ
しいものを食べさせたいたので、自分で山菜を採
け 、「和田サロン」として1か月に2回開催して
ったり、地元の海で魚介類を採ったりして、弁当
いる。和田サロンは、民間の特養老人施設であっ
づくりに工夫をしている。
」と語っていた。
た〝楽楽亭〟を借りて活動しており、公的施設に
はない自由さがあるのが特徴である。
住民サロンは、高齢者の同好の志の集いであり、
また、もう一つの特色は、弁当づくりに3人の
高齢者が参加しており、うち1人は80歳を越えて
いることである。島には元気な高齢者が多く、元
同年代の交流ができる大切な場である。このよう
気なうちは働きたい、役に立ちたいと考えている
な場をエイジレスに向けての一ステップとしてと
人が多いことがここでもうかがえる。
らえ、
こうした集いに若者の集まりが合流したり、
子供たちが参加して地域文化をつくるなど、世代
間交流の場につなげていくことによって、一層地
域に広がりができると思われる。
(3)住民の意識
1年を通して暮らしやすい温暖な気候と、急傾
斜地ではあるが足腰を鍛えることに役立つ段々
エ
東和町毎日給食サービス
高齢者の福祉対策を検討していた東和町社会福
畑、豊かな海に囲まれた周防大島は、高齢者自身
が年齢に関係なく、
自分の果たすべき役割や責任、
祉協議会では、1991年度から 「毎日給食サービ
あるいは目標を持って、みかん栽培や漁業、地域
ス事業」を実施している。同協議会は、自ら経営
活動に携わっている。高齢者はもとより、地域住
する山本民宿で自発的に弁当づくりと配達を行っ
民全員が、高齢者を福祉の受け手としてとらえる
ていた山本米子氏に事業の一部(調理)を委託し
のではなく、若者とともに地域を支える重要な構
ている。運営主体は東和町社会福祉協議会で、山
成員として、その存在や役割を認めあっている。
本氏は 、「東和町毎日給食サービス」事業の責任
「久賀御用聞き事業」参加者は 、「みかん栽培
者である。
は自分の役割であり、畑を守るのも自分の役割で
給食サービスは、昼食用の弁当を配食するだけ
あると考えている。目的、目標、責任を持った生
でなく、その際に声をかけて、独居老人などの健
活が毎日の生活に張り(生きがい)を与えている
康や安否を確認することを主要な目的としてい
と感じている。また、ほとんどが1人暮らしの高
る 。「高齢者の孤独感の解消や健康状態を把握す
齢者なので、みかん栽培の作業中に近隣の仲間と
るために、必ず声かけしていることが、 独居高
雑談することが心の安らぎとなっている 。」と述
齢者や虚弱高齢者の大きな安心と心の支えになっ
べていた。
ている。」とのことであった。
大島町の「とんぼの会」会員は 、「先祖から引
弁当は、朝5時から9時までの間に山本民宿で
き継いだみかん畑の荒廃を防ぎ、次の世代に引き
作り、それを東和町社会福祉協議会から委託され
継ぐことが、会員の役割と責任であると自覚して
た業者が各地区の有償ボランティア宅に車両1台
いる。みかん栽培は生活費を得ることが目的では
で配り、そこからボランティアが各家庭に配達し
なく、
みかんを栽培することによって喜びを感じ、
ている。1年365日無休である。 サービス対象者
良い汗をかいて、食事が美味く、晩酌もうまいと
は、65歳以上のひとり暮らし老人及び夫婦とも80
いう日々の充実を感じるためである。実際に栽培
歳以上の老夫婦世帯である。当初約40人であった
からの収益はほとんどない。生活は現在受けてい
が、その後、希望者が増えたり、島を出ていった
る年金でできる。」という。
子供が高齢になった親の健康状態を心配して申し
また、橘町在住で、1か月の内約20日は息子と
込むようになり、現在は約100人となっている。
2人で漁に出ている中谷つとむ氏は、 「老人クラ
暖かい昼食を汁物付きという心配りで、3段式
ブ活動よりも漁に出る方がはるかに楽しく、日々
ジャーに入れて供給しているのが特色である。山
の生活に充実感を感じる。高齢となった今、若者
本氏は 、「食費を安く抑え、体に良いもの、おい
と同じ内容、同じ程度の漁を行うのは、生活費を
得るためではない。息子といつも一緒に出かけ、
互いに助け合って魚を捕ることが楽しく、生きが
いになっている。しかし、息子にはライバル意識
を持っている。とにかく、自分の役割があり、認
められていることが充実した生活の源となってい
る。
」と語っていた。
個人個人の生涯現役として生きる姿勢が、今後
エイジレス社会の基礎となるであろう。
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