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平和教育カリキュラム編成に関する国際比較研究
平和教育カリキュラム編成に関する国際比較研究 -アメリカ・カナダ・インドネシアの事例- 中矢 礼美 はじめに 平和教育は、世界各地で様々な団体や個人によって取り組まれ、近年では平和教育地球 キャンペーンによってさらに広がりを見せている。ただし、それらは各国・地域の歴史・ 政 治・経 済・文 化 の 影 響 を 受 け て 、 「 平 和 教 育 」と い う 科 目 が 国 家 的 に 学 校 教 育 で 取 り 組 ま れ る 国 は わ ず か で あ り 、「 寛 容 教 育 」「 紛 争 解 決 教 育 」「 非 暴 力 教 育 」「 グ ロ ー バ ル 教 育 」 と いう名を冠したり、教科教育の一部であったり、単発的な短期間のプロジェクトであった りと、多様な様相を呈している。日本でも平和教育は反戦教育を中心として取り組まれて きたが、教育内容の系統性の不十分さや平和教育の実践内容のマンネリ化といった問題が 指 摘 さ れ て い る i 。ま た 包 括 的 平 和 教 育 が 主 流 と な っ て い る 現 在 、国 際 理 解 教 育 、多 文 化 教 育、開発教育に平和教育が位置づけられて取組まれ、その目的と内容は多岐にわたり、平 和 教 育 と し て の 一 貫 性 や 系 統 性 が 捉 え ら れ に く く な っ て い る と い う ii 。 では、諸外国における「平和教育カリキュラム」はいかなる編成原理に基づき、いかな る価値・態度・技能・知識をどのように構成しているのだろうか。これまで、各国の平和 教 育 カ リ キ ュ ラ ム の 収 集 ・ 比 較 調 査 の 報 告 は 、UNICEF や UNESCO を 始 め 、諸 研 究 者 に よって行われつつあるが、管見の限りそれらは断片的なモデルの紹介が多く、カリキュラ ム の 全 体 像 を 把 握 す る こ と は 難 し い iii 。 そこで本稿では、入手できたものに限定されるが、諸外国において開発されている「平 和教育」カリキュラムを教育学的見地(編成原理・内容・教授法・評価法)から比較検討 し、今後のカリキュラム開発への示唆を得ることを目的とする。 1.研究対象カリキュラムの特徴 本稿で対象とするカリキュラムは、 「 平 和 」を カ リ キ ュ ラ ム 名 称 に 直 接 用 い る カ リ キ ュ ラ ム お よ び 平 和 教 育 を 主 目 的 と す る こ と が 明 示 さ れ て い る も の に 限 定 し iv 、ア メ リ カ 合 衆 国 、 カ ナ ダ 、 イ ン ド ネ シ ア か ら 7 つ を 選 択 し て い る ( 表 1 )。 1 ) Eric D. Dawson, The Peace Games Curriculum (Community Service Learning Curriculum(2003), Kindergarden curriculum- Fifth Grade curriculum (2006), Games Peace Makers Play (2007). ( 以 下 、 Peace Game と 表 記 す る 。) ア メ リ カ 合 衆 国 ボ ス ト ン の Peace Games と い う NGO が 開 発 。幼 稚 園 か ら 第 8 学 年 ま で を対象。学校や地域で積極的でポジティブに課題解決できるピースメーカーを育成するた めの知識、スキル、関係構築力を向上させるよう、学校ですぐに応用実践できるゲームを 中 心 と し た 教 授 本 を 編 成 し て い る( 各 セメスター 80 頁 程 度 )。秋 学 期 で 知 識 と ス キ ル を 学 び( 45 分 ×10 課 )、 春 学 期 で プ ロ ジ ェ ク ト に 参 画 し て 実 践 能 力 を 養 う ( 10 課 )。 - 16 - 2 ) Eisha Mason, Peggy Dobreer, 64 Ways to Practice Nonviolence , Common Peace Center for the Advancement of Nonviolence, Pro-ed, 2008.( 以 下 、 64Ways ) ア メ リ カ 合 衆 国 に あ る コ モ ン・ピ ー ス( 非 暴 力 促 進 セ ン タ ー )が 発 行 し た カ リ キ ュ ラ ム 。 中学生、高校生を対象。カリフォルニア州の言語リテラシースタンダードと学習活動の関 連 を 表 示 し 、学 力 保 障 を 示 し て い る 。4 つ の 鍵 概 念 を 64 テ ー マ の 教 科・学 習 活 動( 芸 術 、 生物、数学、調査研究活動、社会科学、言語学、演劇芸術)において繰り返し学習する構 成 と な っ て い る ( 64 テ ー マ 、 193 頁 )。 3 ) Emily Farell, Kathy Seipp, The Road to Peace , The Advocates for Human Rights 2008. ア メ リ カ 合 衆 国 ミ ネ ソ タ の The Advocates for Human Right( 人 権 研 究 推 進 機 関 ) が 開 発 。第 9 学 年 か ら 成 人 ま で を 対 象 。身 近 な 公 正 と 国 際 レ ベ ル の 公 正 を 関 連 さ せ て 考 え 、 公 正 な 社 会 を 創 造 す る 思 考 力 を 育 て る よ う 豊 富 な 資 料 を 盛 り 込 ん で い る( 10 課 、229 頁 )。 各単元は、ミネソタの高等学校社会科スタンダードとの対応を示している。 4 ) Leah C.Wells, Teaching Peace , Nuclear Age Peace Foundation, 2003. Nuclear Age Peace Foundation の 助 成 を 受 け て 高 校 の 教 員 が 作 成 。高 校 生 を 対 象 。ピ ー スメーカーの功績や平和教育の効力を発揮してきた事例に関する議論を中心に学習するこ と で 、自 分 の 考 え に 気 付 き 、お 互 い の 意 見 を 聞 き あ い 、尊 重 し 学 び 合 う ス キ ル を 向 上 さ せ 、 平 和 な 社 会 を 創 造 で き る 力 を 身 に つ け さ せ よ う と し て い る ( 8 課 、 84 頁 )。 5 ) Classroom Connections, Cultivating Peace in the 21st century (http://www.cultivatingpeace.ca) (以 下 、 Cultivating Peace と 表 記 す る ) カ ナ ダ の Classroom Connections と い う NPO が 開 発 し た カ リ キ ュ ラ ム 。中 学 校 1 年 か ら 3 年までを対象。平和的方法によってコンフリクトに対応できる積極的な市民の育成のた め 、平 和 、紛 争 、安 全 保 障 、平 和 の 文 化 を 学 習 し 、自 己 の 定 位 を 考 え さ せ る( 7 課 、60 頁 )。 社会科と歴史科で教師が活用できるように、科目の柱や単元との関係性を示している。 6 ) Asna Husin( Edit) , Karim Douglas Crow(Reviewed), Darni M. Daud(Translate), Peace Education Curriculum , 2002.( 以 下 、 Peace Education ) インドネシア・アチェにおいて、長年にわたる独立紛争と津波後の社会の立て直しのた め に 、 UNICEF、 Nonviolence International お よ び AusID の 支 援 を 受 け て イ ン ド ネ シ ア 研究者チームが開発した平和教育カリキュラム。高校生を対象。イスラム教の教えやアチ ェ人の英知によって平和の概念、非暴力的なコンフリクトの解決、平和の文化を理解し、 平 和 構 築 の た め の 想 像 力 と ス キ ル の 向 上 を 目 指 す ( 6 部 21 単 元 、 91 頁 )。 7 )Dinas Pendidikan Kota Ambon, Kurikulum Pendidikan Orang Basudara Maluku (マ ル ク 州 兄 弟 教 育 カ リ キ ュ ラ ム ), Ambon,2009. ( 以 下 、 Pendidikan Orang Basudara ) UNICEF と UNDP の 支 援 を 受 け て 、 イ ン ド ネ シ ア の ア ン ボ ン 市 教 育 局 が 開 発 し た 平 和 教育カリキュラム。中学生対象。紛争後の地域の状況に合わせてコンフリクト解決や多文 化 教 育 な ど を 内 容 と し 、ア ン ボ ン の 言 葉 や 昔 話 を 多 く 盛 り 込 ん で い る( 6 部 21 単 元 96 頁 )。 - 17 - 表1 各国の平和教育カリキュラム構造の比較分析 アメリカ カリキュ The Peace Games Curriculum ラム名 アメリカ 64Ways to Practice Nonviolence アメリカ The Road to Peace ピースメーカになるための知識、スキ 様々なテストや州スタンダードに縛られ カリキュ ル、関係構築力を向上させるための、 て時間がないという教師に対して、様々 ラムの目 学校ですぐに応用実践できるゲームを な教科に統合して平和教育が実践できる 的 中心とした教材の提供 ように作成した教授ガイド 身近な公正と国際レベルでの公正を つなげて考えることができ、公正な 社会を創造できるようにするための 教授ガイド 対象 第9学年から成人まで 幼稚園から第8学年まで 中学校および高等学校 「価値ある目的」を与えることで、言語 領域の成績と理解力を向上させる。 批 判的思考スキル、口語および文語による コミュニケーションスキルを向上する。 市民参画を促し、力づけ、市民と社会科 学校や地域で積極的でポジティブに課 におけるコンピテンシーを向上する。暴 教育目標 題解決できるピースメーカーの育成 力の文化習慣に挑戦する。 古い考えへ 挑戦するための安全な場所を造り、新し い道を探求し、非暴力の実践を伴う経験 をする。創造的な疑問を引き出し、思 考、反省、および対話をファシリテート する。 コンフリクト解決にむけた創造的な 思考力、身近な公正から広い世界の 公正へと関連づけて活動する力の育 成。 知識とスキルの系統型カリキュラム (秋学期:発達段階、文化コンピテン カリキュ ス、国家学力フレームワークとコアカ ラム編成 リキュラへの連結)と経験型カリキュ 原理 ラム(春学期:生徒の参画、コミュニ ティサービスと市民参画、家族との連 結) 記述なし:螺旋型カリキュラム(4つの 主要概念を様々なテーマにおいて繰り返 し扱い、様々な活動を通して身につけて いく) (記述なし:探求型カリキュラム 系統型カリキュラムとして知識(自己 認識とアイデンティティ、文化認識と アイデンティティ、選択性と一貫性、 感情と平和構築との関係、友情と愛 情、集団認識とアイデンティティ、い じめ・勇気・不公正への対抗、リー ダーシップとコンフリクト解決の関 カリキュ 係、ジェンダーと個人の変革に向けた ラム構造 文化的アイデンティティ、社会公正と 社会変革への関係)とスキル(コミュ ニケーション、共同、コンフリクト解 決、参画)が学習され、経験型カリ キュラムで関係構築力、社会参画力、 サービスラーニングを向上させるよう にしている。 鍵となる4つの概念(文化、暴力、パ ワー、非暴力)理解プログラムを基盤と して、64日間のプログラム(個人の次 元:23日間、個人間の次元23日間、コ ミュニティ・社会の次元18日間)が構成 される。各プログラムは、教科領域(芸 術、演劇、経験、ライフサイエンス、数 学、調査、社会科学、言語)とその中で 育成される言語リテラシーに関するカリ フォルニア州スタンダードとの関連が一 覧表で示されている。 コンフリクト、コンフリクトの脱構 築、人権、公正、社会公正にむけた 人権回復活動、グローバルな平和活 動につながるローカルな活動実践へ と内容が配列され、大量の資料を活 用しながらテーマを探求していく構 造となっている。 単元の概要(目的、成果、アジェン 単元の構 ダ、教材、キーワード、教える前 単元名の意味解説、有名なピースメー 成 に)、レッスンプラン(導入、展開、 カーによる格言、議論のための質問文。 まとめと振り返り、教授のヒント) 引用文、本質的な目標、学習目的、 重要な質問、鍵となる語彙、推奨時 間配分、および必要な教材リスト 探求と対話を深める。社会科学の授業で はパネルディスカッションを行い、口頭 での発表能力を向上させ、家庭では筆記 課題によってリテラシーを向上し、小グ ゲームか他の経験活動的な手法を用い ループの円になっての話し合いでは、一 る。 人ひとりが順に話すことで輪の一部であ ることを感じ、他の人は話手を尊重し、 注意深く聞く姿勢を育てる。平等な関係 と考えを共有することの意義に気づく。 論文作成による深い考察と表現の担 保、語彙の予習、小グループでの カードを用いた議論、創造的な教授 法(情緒から行動へ)、単元学習後 の自主学習へのヒント、 教授法 生徒が自分で学習活動とその学びを評 価することで、コミュニケーション、 共同、コンフリクト解決、および参画 評価方法 のスキルを向上できるようする。ま 設定なし た、平和の促進と意味のある変化にお いて自らの学びとリーダーシップに責 任がとれるようにする。 設定なし - 18 - アメリカ Teaching Pecae カナダ インドネシア Cultivating Peace in the 21st century Peace Education Curriculum インドネシア Kurikulum Pendidikan Orang Basudara Maluku 平和教育とは何かだけでなく、平和 教育が効力を発揮してきた証拠をど のように教えるべきか、非暴力がこ れまで効力を発揮してきた事例をい かに学習できるかに興味を持つ教師 のための教授ガイド カナダの教師やコミュニティ リーダーが「変化のための教 育」を行えるよう学校の教室で 使える教材 アチェの高校教員が自主的 に、効果的に、創造的に、そ して柔軟に学校で平和教育を 行えるような教材 教師、生徒そして広くマルクの地域 社会に、多文化共生と平和の価値観 を育成することで、平和の文化を育 て、持続的な調停をもたらすことを 目指す。マルク社会の豊かな文化を 公的な空間に組み入れることで、そ の掘り起こしと維持を行う。 高校段階の前後 第10、11、12学年 高校生 中学生 自分の考えに気付き、お互いの意見 を聞きあい、尊重し学び合うスキル を向上 平和尊重・非暴力・公正・多様 性・人権に価値を置き、社会の 不公平を認識し、グローバルに 考え、共同、歩み寄り、ネゴシ エーションといった平和的方法 によってコンフリクトに対応で きる積極的な市民の育成 暴力を使うことなくコンフリ クトを解決できる想像力とス キルの向上 マルクの平和が持続できるよう、生 徒に平和を創造するための意識を強 く持たせる 記述なし:探求型カリキュラム 系統型カリキュラム・経験型カ リキュラム融合 テーマ学習内 容・学習者中心 モジュール 主題中心アプローチ(平和教 育に適した教材の選択)、生 徒中心アプローチ(生徒の状 況、動機、興味関心の考慮) コンピテンシーを基盤としたカリ キュラム 平和教育として重要な主題(個人レ ベルの平和創造、人権と差別、暴 力、教育の機能、核)を設定し、実 態の考察とこれまで平和活動を推進 してきた人びとの功績から学び現実 を批判的に分析・検討し、自覚と理 解を深める構成 7つのコースを設定し、それぞ れ教科単元・テーマ・柱(社会 科、カナダと世界の歴史、市 民、政治および世界の問題)と の関連を示す。 6つのプログラム、①専門的プログ ラム(コミュニケーション、人間関 係およびコンフリクト解決能力の向 6つの主題(自分と平和、権利 上)、②平和プログラム(特定のコ と責任、アッラーによる多様 ンフリクトを克服することに焦 性の創造、コンフリクト、民 点)、③多文化教育(多様性、中立 主主義と公正、平和への道) および相互依存性を理解する教 をたてて、それぞれ生徒の状 育)、④人権教育(人間観の平等と 況や興味関心に合わて21ト 公平を強調)、⑤民主主義教育(市 ピックが設定されている。 民の諸権利や法律を順守する責任を 強調)、⑥環境プログラムに、21単 元を設定。 はじめの語り、フレームワーク、 ピースメーカや非暴力者による言葉 の引用、クラスでの議論、家庭学習 課題、個人的に考え深めるための質 問リスト 目標、鍵概念と課題、教材、学 習概要、学習ステージ、応用学 習例、評価(ジャーナルリフレ クション、概念の関連付け、グ ループ学習プロセス、論文分 析、作文課題など) イスラム教典・アチェの逸話 や諺からの引用、学習目標、 鍵概念、概説、学習方法、概 念説明、講話・談話、活動、 教授ヒント、フォロー コンピテンシー基準、基本コンピテ ンシー、評価基準、主要内容、教材 用語説明 公正でバランスの取れた議論をファ シリテートし、全ての声を聞き、尊 重するように方向づける。 活動ベース学習:学習者の学習 への参画を最大限効果的に促進 する方法。教師は知識を与える だけでなく、学習者の学習参加 に対して反省を促すような批判 的役割を果たす。 ダイナミックでコミュニカ ティブな教授法 議論を中心とし、教師はファシリ テートする。 設定なし 概念学習評価は事前事後の多様 な方法(絵画、いくつかの用 語、文章、エッセイ)で実施。 態度変容についての質問紙調査 もオンラインで提供。観察シー トやピア評価、自己評価もでき る。 記述なし 記述なし 注)各カリキュラムより,筆者作成。 - 19 - 2.平和教育カリキュラムの位置づけ-教科統合型か独立型か カリキュラムの位置づけについて比較してみると、教科や国家スタンダードとの関係性 を示している教科統合型(アメリカ・カナダ)とそうでない独立型(インドネシア)があ る。教科統合型は、平和教育に独自の時間を割くことができない条件が存在するため、他 教 科 に 組 み 入 れ た り 、関 連 さ せ た り し て 実 施 す る タ イ プ で あ る 。例 え ば ,Cultivating Peace では、表3のように州ごとに教科(コース)とテーマとの関連を示している。 表3 カリキュラム関連表 州 バ ン ク ー バ ー コース 第 11 学 年 サ ス カ チ ュ ワン 社 会 科 10 テーマ・ストランズ・ユニット ・カナダ人のアイデンティティ ・世界コミュニティにおけるカナダ ・カナダとグローバルシティズンシップ ・政策決定 ・イデオロギーと政策決定プロセス ・国際的な政治団体 ・人権 ・世界のガバナンス ・文化 ・ガバナンス ・グローバリゼーション 社会科 社 会 科 20 社 会 科 30 注 ) 上 記 表 で は BC お よ び SK の み 抜 粋 し て い る が 、 カ リ キ ュ ラ ム で は 全 州 に つ い て チ ャ ー ト を 表 示 し て い る 。 Cultivating Peace, P.10 よ り 筆 者 作 成 。 64ways で は 、 平 和 教 育 に 特 別 な 時 間 を と る こ と が で き な く て も 、 教 科 学 習 の 中 で 規 定 の学力を保証しながら、平和教育を教材とすることで、二つの目標を同時に達成できるこ と を 示 し 、平 和 教 育 の 実 施 を 可 能 に し よ う と し て い る 。表 2 の よ う に カ リ フ ォ ル ニ ア 州 言 語 リ テ ラ シ ー ス タ ン ダ ー ド が 64 テ ー マ の 各 活 動 に お い て 何 を 扱 っ て い る か チ ェ ッ ク を 入 れて一覧表を示している。 表2 64ways の 学 習 活 動 と カ リ フ ォ ル ニ ア 州 言 語 リ テ ラ シ ー と の 関 連 表 ま と め の 記 述 出 来 事 の 解 説と要約 文 脈 の 糸 口 の使用 原 因 と 影 響 の理解 主 要 な 考 え の理解 比較と対照 語り文 記述 説得文 解説文 申込書 返信 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 3調査 6 -8 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 4調査 9 -1 2 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 5経験 6数学 7経験 8調査 1 0 -1 2 1 0 -1 2 1 0 -1 2 9 -1 2 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 9調査 1 0 -1 2 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 10 数 学 11 演 劇 1 0 -1 2 9 -1 2 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 言 語 メ カ ニ ズム 見方 意 見 か ら の 真実 6 -9 9 -1 2 雑 誌 記 事 保 存 コ ミ ュ ニ ケ ーション 1芸術 2経験 手紙 対象 学年 詩・散文 Day47 活動 武装解除 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 注 ) Eisha Mason, Peggy Dobreer, 64 Ways to Practice Nonviolence , <second edition>, Common Peace Center for the Advancement of Nonviolence, Pro-ed, 2008, p.xxv か ら 筆 者 作 成 。 インドネシアの二つのカリキュラムは独立型カリキュラムである。それは、紛争後地域 であり平和教育の必要性が国家・地方政府によって強く認識されていることによって可能 となっている。また、アンボンについては、日本の総合的な学習の時間のような学校裁量 時 間 ( 地 域 科 ) で の 実 施 が 奨 励 さ れ て い る た め 、 可 能 と な っ て い る v。 3.カリキュラム編成原理(表1、表4参照) 次に本稿で分析対象としたカリキュラムは、その編成原理について明確に言及している も の と 、 言 及 し て い な い も の が あ っ た 。 Peace Game は 、 知 識 と ス キ ル の 系 統 型 カ リ キ ュ - 20 - ラムと経験型カリキュラムから成ると説明している。毎学年の秋学期には発達段階に合わ せた文化コンピテンス、国家学力フレームワークおよびコアカリキュラに連結させてカリ キュラムが系統的に編成されており、毎学年の春学期には生徒がコミュニティサービスに 参 画 し 、家 庭 生 活 や 家 族 と の 連 結 を 目 指 す 経 験 型 の カ リ キ ュ ラ ム を 編 成 し て い る 。例 え ば 、 秋学期には知識として、 「 自 己 認 識 と ア イ デ ン テ ィ テ ィ 、文 化 認 識 と ア イ デ ン テ ィ テ ィ 、選 択と一貫性、感情と平和構築の関係、友情と公正、グループ意識とアイデンティティ、い じめ・勇気・不公正への対抗、リーダーシップとコンフリクト解決との関係、個人変革に 関係するジェンダーと文化アイデンティティ、社会校正と社会変革への関係」を学ぶ。そ し て 春 学 期 の サ ー ビ ス ラ ー ニ ン グ で は 平 和 構 築 ス キ ル と し て「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン( 聞 く 、 話 す 、 書 く )、 協 働 ( 順 番 を 待 つ 、 共 有 す る 、 協 力 し な が ら 決 定 す る )、 コ ン フ リ ク ト 解 決 (意見を持つ、ネゴシエーション、エスカレーションをとめる、ブレーンストーミング、 仲 介 、怒 り の マ ネ ジ メ ン ト )、参 加( 実 際 の コ ン フ リ ク ト を 解 決 し 、コ ミ ュ ニ テ ィ を よ く す る た め の や る 気 と 平 和 構 築 ス キ ル の 適 用 )」 を 強 化 す る よ う に プ ロ グ ラ ム が 組 ま れ て い る 。 64Ways で は 、編 成 原 理 に つ い て の 記 述 は な い が 、4 つ の 主 要 概 念 (文 化 、非 暴 力 、暴 力 、 パ ワ ー ) の 理 解 を 行 っ た 後 に 、 64 日 間 の プ ロ グ ラ ム ( 個 人 の 次 元 : 23 日 間 、 個 人 間 の 次 元 23 日 間 、コ ミ ュ ニ テ ィ・社 会 の 次 元 18 日 間 )に お い て そ れ ら 4 つ の 概 念 を 繰 り 返 し 扱 い 、身 に つ け て い く よ う に 構 成 さ れ て い る こ と か ら 、螺 旋 型 カ リ キ ュ ラ ム と 言 え よ う 。64 プログラムには、教科領域(芸術、演劇、経験、ライフサイエンス、数学、調査、社会科 学、言語)において多様な活動が展開できるように例が示されている。 The Road to Peace は 編 成 原 理 に つ い て 記 述 し て い な い が 、 コ ン フ リ ク ト 、 コ ン フ リ ク トの脱構築、人権、公正、社会公正にむけた人権回復活動、グローバルな平和活動につな がるローカルな活動実践へと系統立てられた内容であり、大量の資料を活用しながらテー マ を 探 求 し て い く 構 造 と な っ て い る こ と か ら 探 求 型 カ リ キ ュ ラ ム と い え よ う 。 Teaching Peace も 平 和 教 育 と し て 重 要 な 主 題 ( 個 人 レ ベ ル の 平 和 創 造 、 人 権 と 差 別 、 暴 力 、 教 育 の 機能、核)を設定し、実態の考察とこれまで平和活動を推進してきた人びとの功績から学 び,現実を批判的に分析・検討し、自覚と理解を深める構成となっており、探求型といえ よ う 。 カ ナ ダ の Cultivating Peace は 、 系 統 型 カ リ キ ュ ラ ム ・ 経 験 型 カ リ キ ュ ラ ム の 融 合 で あ る と し て い る 。人 権 、安 全 保 障 、社 会 構 成 に つ い て 系 統 的 に 内 容 が 編 成 さ れ て い る が 、 各単元においてはそれらを学校生活やコミュニティ活動において実践し、経験を通して学 べ る よ う に し て い る 。イ ン ド ネ シ ア の Peace Education は 、主 題 中 心 ア プ ロ ー チ( 平 和 教 育に適した教材の選択)と生徒中心アプローチ(生徒の状況、動機、興味関心の考慮)を 編成原理と説明している。6 つの主題(自分と平和、権利と責任、アッラーによる多様性 の創造、コンフリクト、民主主義と公正、平和への道)に対して、生徒の状況や興味関心 に 合 わ せ て 21 ト ピ ッ ク が 設 定 さ れ て い る 。 Pendidikan Orang Basudara は 、 コ ン ピ テ ン シーを基盤とするカリキュラムであると説明している。インドネシアでは現在カリキュラ - 21 - ムは全てコンピテンシーを基盤として開発している。6つの主要コンピテンシーの発展を 目指して、6つの専門的プログラム(コミュニケーション、人間関係およびコンフリクト 解 決 能 力 の 向 上 )、 平 和 プ ロ グ ラ ム ( 特 定 の コ ン フ リ ク ト を 克 服 す る )、 多 文 化 教 育 ( 多 様 性 、 中 立 お よ び 相 互 依 存 性 を 理 解 す る )、 人 権 教 育 ( 人 間 観 の 平 等 と 公 平 を 理 解 す る )、 民 主 主 義 教 育( 市 民 の 諸 権 利 や 法 律 を 順 守 す る 責 任 を 果 た す )、環 境 プ ロ グ ラ ム( 持 続 可 能 な 開 発 の た め の 責 任 を 果 た す )に 21 単 元 が 設 定 さ れ て い る 。た だ し 、 Road to Peace の よ う に自分達でテーマを深く探求していくという形ではなく、与えられたテーマや教材の範囲 で理解を深める程度となっている。 次に、内容重視か学習者重視かという視点から見た場合、いずれもゲームやディスカッ ションを中心とした学習者中心アプローチをとりつつ主題についての理解を深め、さらに 実践能力の向上につなげるために、学習者の経験、意欲、興味にあった活動(調査活動、 地域での平和構築活動など)へと展開する形式となっている。活動レベルはカリキュラム よ っ て 異 な り 、 Peace Game は 各 学 年 の 後 半 で 地 域 で の サ ー ビ ス ラ ー ニ ン グ を 実 施 し て お り 、Cultivating Peace は 平 和 HP 立 ち 上 げ や ラ ジ オ 番 組 活 用 な ど 学 外 で の 実 践 に つ な げ て いるが、その他のカリキュラムは、行動計画立案、学級・学校内、家族レベルでの実践と なっている。内容をどの程度重視しているかは、発達段階やカリキュラムの狙いによって 違いがある。 「 コ ン フ リ ク ト と は 何 か 」と い う 知 識 を 教 え る 際 に 、Peace Game で は 対 象 が 幼 稚 園 か ら 第 8 学 年 と 低 学 年 で あ る た め 、簡 単 な 概 念 定 義 が 教 え ら れ る だ け で 、後 は 学 習 者が短いストーリーの解釈やゲームやディスカッションを通して、自分自身が経験するコ ンフリクトに引き付けて理解し、 「 コ ン フ リ ク ト の 非 暴 力 的 解 決 」ス キ ル を 学 び と る よ う に し て い る 。 64Ways で も 簡 単 な 方 向 付 け と 活 動 の 指 示 が 記 載 さ れ て い る だ け で あ る が 、 こ のカリキュラムの場合は、情報は盛り込まれていなくても、表5のように生徒に探求学習 を促して児童が知識・態度・スキルを学びとるようにしている。 表5 64ways 第 47 プ ロ グ ラ ム 概 要 ( 下 線 は 、 筆 者 に よ る ) < Day47 武 装 解 除 > 武器が存在しない、あるいはそのニーズそのものがないような世界とはどのようなものかを話し合ってみよう。そんな世 界をイメージしてみよう。 質問と定義 1 .多 様 な 武 装 解 除 に つ い て リ ス ト を 作 成 す る 。そ れ ら が 自 分 あ る い は ク ラ ス に と っ て ど の く ら い 重 要 か に つ い て 議 論 す る 。 2.銃はなんのためにあるのか。ライフルはなんのためか。自動制御兵器はなんのためか。核兵器はなんのためか。それら の武器はあなたにとってどのくらい重要か。それらはあなたの生活、コミュニティ、国家、世界にどのようなインパクト を与えているか。3.あなたは銃の所有や使い方についてどう考えるか。それはなぜか。 4.核兵器の所有と使用についてあなたはどう考えるか。 5.国際的な核兵器の拡散と使用についてどう考えるか。核の縮小はどのように国に影響を与えるか。 活動(一部抜粋) ( 調 査 活 動 ) 他 の 国 で は 銃 の 所 有 権 な し で ど の よ う に 機 能 し て い る の か を 調 査 す る ( イ ギ リ ス 、 オ ラ ン ダ 、 日 本 な ど )。 二 つ 以上の国についてその概要を比較・対照し、何を学んだかについて要約を書く。生徒の学校にとって武装解除はどのような 意味をもつのか。人々はどのような武装解除を、どのように行うのか。 (数学)銃へのアクセスは、今日の生徒にどのような影響を与えているのか。学校の他の生徒に個人の意見や話を聞く。質 問紙を作成し、経営者、生徒、教師、職員の異なる見解について統計的なグラフを作成する。 (調査活動)アメリカ合衆国の経済と国際経済における武器の売買の役割を調査する。武器の商売が如何に我々の経済に影 響を与えているのか。私たちは誰に武器を売っているのか。武装商売について議論をさせる。 ( 数 学 )核 武 装 に 参 加 し て い る 国 を 選 択 す る 。そ の 国 で 毎 年 そ の 核 武 装 が ど の く ら い の コ ス ト を か け て い る の か を 調 査 す る 。 その保管、調査と開発、生産、発展および除去について考える。この調査が終わった後、核兵器の効力と使用について考え る対話の会を開く。 (演劇)広島の人々に対する核兵器の影響について調査し、記述する。原爆乙女とは誰か。もし原爆乙女のようになったら どうなるかをイメージする。広島の乙女の特徴を慮りながら、アメリカの人々へのメッセージを書き、伝える。 - 22 - 「 質 問 と 定 義 」に あ る よ う に 、す べ て の 質 問 は 感 覚 的 に 回 答 す る の で は 十 分 で な く 、 「5. 国際的な核兵器の拡散と使用についてどう考えるか。核の縮小はどのように国に影響を与 えるか」に回答するためには、核の拡散と使用の状況という知識が必要であり、核の縮小 についてもコストや関係者に関する知識が必要である。各活動においても各国の銃所有や 核保有状況の知識が必要となり、自分たちで情報を獲得することが促されている。 一 方 、 高 校 生 対 象 の Cultivating Peace で は 、 平 和 学 で 定 義 さ れ て い る 平 和 ・ コ ン フ リ クト・戦争の知識の学習から始まり、テーマごとに論文、ドキュメンタリー文、ビデオク リ ッ プ( URL 記 載 )が 掲 載 さ れ て お り 、そ れ ら を 観 賞 し た り 読 ん だ 後 に 、グ ル ー プ デ ィ ス カッションを通して、個人のコンフリクトとコミュニティ・国家レベルのコンフリクトと の 因 果 関 係 の 相 違 を 学 び と る よ う に し て い る 。 同 じ く 高 校 生 を 対 象 と す る Road to Peace は 、1 単 元 に 7 、8 種 類 、20 ペ ー ジ 以 上 に も わ た る 資 料 が 準 備 さ れ て い る 。そ れ は 、内 容 重視であるためではなく、多くの情報があればあるほど生徒の思考が広まり、深まり、適 切な選択が可能となるためであるという。 「 公 正 と は 何 か を 教 え る の で は な く 、ど う す れ ば 公正を促進させられるのかを探求する」と記述しているように、テーマ探求型アプローチ をとっているといえよう。つまり、内容重視か学習者重視かのバランスは、発達段階に合 わせて、経験主義的アプローチからテーマ探求型アプローチに移行しつつ、内容としては 公正、非暴力、軍縮、平和の文化の創造を促進する実践能力に向けた価値・知識・態度・ スキルという傾向を有しているといえよう。また、社会科などですでに知識を扱っている 内 容 、例 え ば 、人 権 で あ れ ば 世 界 人 権 宣 言 や 自 国 で の 法 律 な ど を 十 分 に 扱 っ て い る 場 合 は 、 平和教育としてとこさら扱う必要はないように思われる。しかし、目標が平和構築におか れた時点で、それらの知識は人権侵害をいかに回復し、社会の不公正を正すために法律が い か に 効 果 を 発 揮 す る の か( あ る い は し な い か ),自 分 は ど う 行 動 す る べ き か と い う 視 点 か ら思考を深める必要がある。歴史、社会などで学習するトピックであっても、平和創造の 視点から情報を補足し,カリキュラムを再構築する必要があることを示唆している。 4.社会状況による内容(価値、知識、スキル)の相違(表4参照) 平和教育で教えるべき内容については、多くの研究者によってユニバーサルな次元と 国・地 域 の 次 元 で 様 々 に 定 義 さ れ て い る 。ハ ー グ・ア ジ ェ ン ダ で は 、50 の 勧 告 を 大 き く 4 つ の 柱 (「 戦 争 の 根 本 的 原 因 と 『 平 和 文 化 』」「 国 際 人 道 法 ・ 国 際 人 権 法 と そ の 制 度 」「 暴 力 的 紛 争 の 予 防 ・ 解 決 ・ 転 換 」「 軍 縮 ・ 非 武 装 化 と 人 間 の 安 全 保 障 」) に わ け て 示 し て お り 、 リアドンらはそれにそって平和教育目標と内容のうち、人権教育、寛容教育については発 達段階別に知識・技能・価値を示しており、発達段階別に系統立てて平和教育内容を編成 し て い く 必 要 性 を 示 し て い る vi 。 Daniel ら は 、 間 接 的 平 和 教 育 と 直 接 的 平 和 教 育 と い う 二 つ の モ デ ル を 提 示 し 、 そ の 内 容 の 違 い を 示 し て い る vii 。 間 接 的 平 和 教 育 は 、 社 会 に コ ン フ リクトや暴力が現存し、人々がその存続をサポートしているような状況で、直接それらを - 23 - 取り扱えない場合に選択される平和教育の形態であるとしている。それは短期的に問題を 解決するには至らないが、長期的に見て若い世代が平和構築に貢献したり、調停を行うと いうポジティブな結果を導くとする。そしてカリキュラム内容は、反省的思考、寛容性、 ethno-empathy(民 族 的 共 感 性 )、 人 権 、 コ ン フ リ ク ト 解 決 か ら な る と す る 。 ま た 直 接 的 平 和教育は、社会的政治的状況が成熟しており、行政的にも教育学的にも実施可能な際に行 わ れ 、そ の 内 容 は 、コ ン フ リ ク ト と 平 和 、平 和 プ ロ セ ス 、敵 の 表 現 、コ ン フ リ ク ト の 歴 史 、 新しい影響と感情に焦点が当てられるとしている。 このように普遍的な平和教育の内容とされるものが探求されつつも、社会状況や発達段 階によって平和教育内容は異なることになるため、本稿で扱ったカリキュラムでも共通性 や相違が見られる。共通する最終目標は「平和な社会の構築」であり、価値としては平和 の 希 求 、非 暴 力 、公 正 、人 権 尊 重 が 目 指 さ れ 、そ れ に 対 応 し て 知 識 は 平 和 、暴 力 、不 公 正 、 人権侵害、コンフリクト、平和の文化に関する概念、メカニズム、事例であり、スキルと して非暴力的解決力が扱われている。 社会状況から見ると、アメリカやカナダは上述の直接的平和教育に当てはまり、インド ネシアは間接的平和教育に大別できるが、宗教的文化的な違いも内容に影響している。イ ン ド ネ シ ア の Peace Education は イ ス ラ ム 教 的 な 知 識 や 説 明 が 多 く 、同 じ く イ ン ド ネ シ ア の Pendidikan Orang Basaudara は マ ル ク の 文 化 が 多 い 。そ の ほ か 、全 体 を 通 し て ネ ガ テ ィブ/悲観的/批判的内容か、ポジティブ/未来志向型の内容かの違いも見られる。例え ば「 平 和 」に つ い て は 、Teaching Peace, Road to Peace, Peace Education で は , 身 近 な レ ベ ル 、 地域、国家レベルでの暴力、コンフリクト、不公正といったネガティブな事象との関連の 中 で 平 和 が 定 義 さ れ る 傾 向 に あ る 。 一 方 Peace Game は 幼 少 期 を 対 象 と し て い る た め か 、 「平和」という用語の学習は第3学年に始まり、カリキュラムでは「ハーモニーを感じる こと」と定義されている。児童の「平和」理解の活動は、「私にとっての平和」「みんな にとっての平和」について、自分や家族への愛や友情といった温かい関係を振り返りなが ら 、 ウ ェ ブ 作 成 や 話 し 合 い で 「 平 和 」 を 実 感 で き る も の と な っ て い る 。 Peace Game を 実 践する小学校教員は、 「国レベルの紛争や不公正や暴力性に関する知識は非常に重要なコン ピテンシーの要素であるが、それを受け入れ平和創造に向けて活用するためには、その素 地となる価値観・態度・スキルを学ぶことが幼少期には必要だ。暴力がエスカレートする 前に落ちつくように、ポジティブな変化やエンパワーメントや創造的で構築主義的な方法 を見つけるスキルを幼少期から身につけていれば、ピースメーカーとしてあらゆる対立を 平 和 裏 に 解 決 で き る よ う に な る 」と い う viii 。平 和 学 習 が 、将 来 に 希 望 を 持 っ て 生 き て い け るための学習に結びつくようなカリキュラム内容の選択が必要であろう。 またすべてのカリキュラムの内容とされているコンフリクトに関する学習をみると、す べてのカリキュラムがコンフリクトはネガティブな側面だけではないことを強調しつつ、 ネガティブな方向にエスカレートするメカニズム(要求・ニーズの相違、偏見、文化アイ - 24 - デンティティの衝突)を学習し、その結果何がもたらされるのかについての知識を多く学 ぶようにしている点で一致している。感情的にコンフリクトを拒絶することを促すのでは なく、合理的な思考によってコンフリクトに適切に対処することを学びとるようにしてい る。さらにコンフリクト学習は、戦争、人権、公正など、それぞれ異なる方向に発展的に つ な げ ら れ て い っ て い る 。Road to Peace で は 戦 争 と 人 権 侵 害 に 関 連 付 け ら れ 、マ イ ノ リ テ ィ の 悲 惨 な 人 権 侵 害 の 歴 史 と 現 状 把 握 を 行 っ た 後 に 、Transitional Justice と い う 人 権 回 復 活 動へと平和への道筋が導かれる。そこでは、国内外において人権侵害を犯した責任者は誰 な の か 、コ ン フ リ ク ト の 後 の 調 停 こ そ が 平 和 へ の 道 で あ る こ と を 学 ば せ る よ う に し て い る 。 Teaching Peace で は 非 暴 力 的 に コ ン フ リ ク ト や 人 権 侵 害 に 対 抗 し て き た 先 人 と し て 、 ガ ン ディー、ダライラマ、キング牧師などの功績を学ぶようにしている。特徴的であるのは、 平和教育の功績として、平和教育を学んだ学生たちの功績を挙げ、生徒が自ら立ち上がる 道 筋 を 描 け る よ う に し て い る 点 で あ る 。Peace Education で は 近 年 ま で の 独 立 紛 争 の 経 験 と 復興が喫緊の課題であるため、コンフリクトの後には民主主義、社会・経済の公正(弱者 のエンパワメント)、トラウマ対応が内容として配置されている。そして平和への道とし て、解決を熱望することからはじまり、非暴力的な解決方法を学ぶことが内容とされてい る 。Pendidikan Orang Basaudara で は 、キ リ ス ト 教 徒 と イ ス ラ ム 教 徒 の コ ン フ リ ク ト が 社 会 の課題であるため、信頼関係、相互扶助、法の遵守や社会的責任に重点が置かれている。 同じ「コンフリクト」でも、個人間レベル以上の問題では、多様な方向性があることが分 かる。 5.教授方法の特徴(表1参照) 教授学習方法は、すべてのカリキュラムに共通して、問題解決学習、協同学習、探求学 習、批判的思考アプローチ、ゲームアプローチが組み合わせて用いられている。教師は、 友好的で柔軟な教授方法を用いるようにとされており、多くの場合、ファシリテーターの 役割を行うべきとされている。しかし、平和教育のトレーニングを十分に受けていない教 師には、それが実際にはどのような発言や行動や態度として行うべきかが分からず,戸惑 う の で は な い だ ろ う か 。 例 え ば 、 Peace Education で は 、 教 師 へ の ヒ ン ト と し て 「 生 徒 を ファシリテートする。また、生徒の活動を批判もする」と書いてあるのみで、どのような 発言や態度をとればファシリテートすることになのか、生徒の活動のどのような部分をど の よ う に 批 判 す べ き な の か は 示 さ れ て い な い 。そ の 点 Peace Game は 、各 単 元 に 内 容 説 明 部 分とレッスンプラン部分が用意されており、教師が行うべき発問・行動もわかりやすく示 さ れ て い る 。 生 徒 の 思 考 や 議 論 を 深 め る た め の 発 問 は 、 Teaching Peace 、 Road to Peace でも多数設定されている。この多くの教授ヒントや質問項目が、平和教育の質を左右する ものと考える。 - 25 - 表4 各国平和教育カリキュラム内容の比較 アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ The Peace Games Curriculum 幼稚園 児童はいかに彼ら と彼らの家族が特別である かを探求する。 第 1学 年 児 童 は 自 分 の 感 情 を い か に 同 定 し 、表 現 す る か を学習する。 第 2学 年 児 童 は 、 友 情 を 定 義 し 、効 果 的 な 関 係 性 の た め の戦略を発達させる。 第 3学 年 児 童 は 、 コ ミ ュ ニ ケーションと共同を通して、 クラスのピースメーカーに なるにはどうすればよいか を学習する。 第 4学 年 児 童 は 、 立 場 を 表 明 す る こ と に よ っ て 、勇 気 と ピースメーカーになる訓練 をする。 第 5学 年 児 童 は 、 コ ン フ リ クトを探求することによっ て平和創造におけるリーダ ーにいかになるかを学習す る。 第 6学 年 児 童 は 、 ジ ェ ン ダ ー 、文 化 お よ び ア イ デ ン テ ィ ティを定義し、共有する。 第 7 学 年 生 徒 は 、青 年 期 の 友情と仲間集団が平和創造 における役割をどのように 果たすかを探求する。 第 8学 年 生 徒 は 学 校 と コ ミ ュニティにおけるリーダー に な る た め の ピ ア・メ デ ィ エ ーション(仲間同士の介入) のスキルを用いる。 64Ways to Practice Nonviolence 概 念 1 文 化:明 ら か な 暴力だけでなく、経済 的 、政 治 的 な 暴 力 を 増 進 す る 。個 人 の 考 え 方 や 行 動に影響を与えるだけ で な く 、個 人 の 暴 力 的 行 為に対する他人の対応 にも影響する。 概 念 2 暴 力:物 理 的 あ るいは言語的に個人間 において発生するだけ でなく、価値感、伝統、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 、権 力構造にも埋め込まれ ている。 概 念 3 パ ワ ー:パ ワ ー の ア イ デ ア( そ れ は 何 ? ど う 使 う ? ど う 多 く /少 なく得る?)は、個人 的・集 合 的 な 選 択 や 行 動 を 形 成 す る 。ま た 、人 々 のコミュニケーション スタイルも形成する。 概 念 4 非 暴 力:人 類 す べての心に見いだされ る 力 の 考 え で 、い か な る 環境や状況から独立し て い る 。非 暴 力 は コ ン フ リ ク ト を 変 換 し 、愛 、尊 敬 、同 情 、教 育 に よ る 平 和を形成する。 レ ッ ス ン 1 -23 個 人 レ ベ ル:勇 気 、笑 顔 、感 謝 、 思いやり、信頼、純真、 教育、癒し、夢、信念、 侮 辱 、規 律 、創 造 性 、卑 下 、尊 敬 、リ ー ダ ー シ ッ プ、正直、自由、受容、 自 己 許 容 、イ ン ス ピ レ ー ション、使命、祈り レ ッ ス ン 24― 46 個 人 間レベル:ハーモニー、 友好、敬意、気前良さ、 傾 聴 、許 し 、修 正 、葛 藤 解決、我慢、感謝、愛、 理 解 、心 の 豊 か さ 、魅 力 、 優 し さ 、対 話 、統 一 、オ ー プ ン さ 、説 明 責 任 、ユ ニークさ、協力、統御、 同情 レ ッ ス ン 47- 64 コ ミ ュ ニ テ ィ レ ベ ル:武 装 解 除、エコロジー、名誉、 選 択 、表 明 、平 等 、ア ク シ ョ ン 、寄 与 、責 任 、自 給 、サ ー ビ ス 、シ チ ズ ン シ ッ プ 、仲 介 、証 言 、平 和、参加、開放、称賛 The Road to Peace Teaching Peace 序 論 : Transitional Justice(過 渡 期 の 公 正 )と は。教授ガイドの使い方 第 1章 コ ン フ リ ク ト と は な に か( 活 動 1:平 和 と コ ンフリクトの定義、活動 2:コンフリクトの様相) 第 2章 武 装 し た コ ン フ リ ク ト の 脱 構 築( 活 動 1:戦 争と平和のルーツ、活動 2:戦 争 の 話 、活 動 3:平 和への道) 第 3章 人 権 の 定 義 ( 活 動 1:人権とは何か、活動 2:私 に と っ て の UDHRの 意 味、活動3:構造的暴力) 第 4章 公 正 と は 何 か ( 活 動 1:私 た ち の 世 界 に お け る公正) 第 5 章 transitional justiceの 事 例 研 究 ( 活 動 1:国 の 事 例 研 究 プ ロ ジ ェ クト) 第 6章 真 実 の コ ミ ッ シ ョ ン( 活 動 1:真 実 で 調 停 の ためのコミッションとは、 活 動 2:真 実 の 調 停 の コ ミ ッションのロールプレイ) 第 7章 Mock 法 廷 ( 活 動 1:モ ッ ク 法 廷 ロ ー ル プ レ イ) 第 8章 つ な が り の 創 造 ( 活 動 1:自 分 の 歴 史 に つ いて話してみよう、活動 2:教 室 か ら 世 界 へ 、活 動 3:向 こ う 側 に 立 っ て い る だけではだめ) 第 9章 ロ ー カ ル レ ベ ル に おける調停(活動1: transitional justiceの 基 盤 、活 動 2:コ モ ン・グ ラ ウ ン ド の 発 見 、活 動 3 : コミュニティ会議ロール プレイ) 第 10章 活 動 を し よ う ! ( 活 動 1:ピ ー ス メ ー カ ー に な る 100の 方 法 、 活 動 2:ピ ー ス ヒ ー ロ ー 、活 動 3:ピ ー ス チ ャ レ ン ジ ) 参 考 資 料 ・ 教 材 50頁 第 1章 個 人 の 平 和 の 創 造 : 生 徒 自 身 の 経 験 か ら 始 め 、セ メスターを通して使われる 用 語 を 定 義 す る 。非 暴 力 の 基 礎を理解する。 第 2章 ガ ン デ ィ は 何 を し た の か:最 も 有 名 な 非 暴 力 提 唱 者ガンディの人生と哲学を 探 求 し 、個 人 間 で の コ ン フ リ クト解消の基礎を与えると 同様に広い領域の非暴力キ ャンペーンの機能がいかに あるかを理解する。 第 3章 思 い や り と 意 味 の あ る 人 生:内 面 の 平 和 の 創 造 を 行 っ た ド ロ シ ー デ イ 、ア ル バ ー ト ・ シ ュ ワ イ ザ ー 、ダ ラ イ ラマについて学習する 第 4章 昔 と 現 在 の 市 民 の 権 利:マ ル チ ン・ル ー サ ー・キ ン グ ・ Jr の 目 を 通 し て 、 合 衆国における市民権獲得に 向けた歴史を見つめ、また、 革 命 の 概 念 に 触 れ 、現 在 の 犯 罪や経済の課題において直 面している人種的偏見や差 別の実態を見る。 第 5章 ロ ー カ ル と グ ロ ー バ ル な 非 暴 力 活 動:社 会 変 化 の ための非暴力的な戦略の実 践 と 教 育 学 、お よ び こ れ ら の 手法を用いた現在のキャン ペーンの事例を吟味する。 第 6章 平 和 創 造 の 過 程 に お け る 女 性:平 和 運 動 や 世 界 に お け る 女 性 の 貢 献 、特 別 な ニ ー ズ お よ び 特 性 を 示 す 。女 性 と 子 ど も は 、暴 力 の 影 響 を 最 初 に 受 け 、ま た 彼 ら の 声 や 行 動はしばしば有効で意味の ある解決を促進させる。 第 7章 監 視 の 下 で の 教 育 : 若者のパワーと不登校を題 材 と す る 。若 い 人 々 が 自 ら の 教 育 を コ ン ト ロ ー ル し 、最 適 な 教 育 の 展 望 を 抱 く こ と 、ま た全ての学生が多様なニー ズ に 対 応 し 、共 有 で き る 学 習 プロセスの実施の重要性に 焦点を当てる。 第 8章 核 の 解 決 : 誰 一 人 隔 離されて存在できないとい う考えや関係性の課題につ いて触れることによってコ ー ス の ま と め と す る 。特 に 核 時代であり食時代における 生活へのインパクトについ て補足する。 注)各カリキュラムより,筆者作成。 - 26 - カナダ インドネシア インドネシア Cultivating Peace in the 21st century レッスン1:平和-シンボ ル以上のもの 自分自身 の平和の定義を探求し、平 和とは彼らや彼らの仲間に とって何を意味するのかの 最初の理解を構築する。平 和、コンフリクトおよび戦 争についての格言の再構築 を通して、平和の本質に関 する広い考え方や紹介され た平和の探求における鍵概 念に触れる。 レッスン2:コンフリク ト・暴力および戦争の原因 フィルムや論文の分析を通 して、コンフリクト、暴力 および戦争の多様な原因や 引き金の理解の発達を始め る。個人、コミュニティレ ベルの人間関係に存在する 因果関係の相違点を探求す ることを続け、合意形成や ネゴシエーションなどの平 和構築を実践する。 レッスン3:安全保障-防 衛以上のもの 安全保障の 定義の多様性を検証し、そ れらの定義を安全保障法案 の範囲と関係させる。生徒 は、世界人権宣言に反する 人権の破壊あるいはその促 進の範囲を決定し続ける。 レッスン4:深い安全保障 -ケーススタディ 高校に おけるマイノリティの生徒 の安全保障が、事例研究を 通して探究される。生徒が 差別を受ける際に起こる人 権の侵害が検討され、被害 者、加害者および学校コミ ュニティにとっての差別の 結果を同定する。 レッスン5:平和の文化に 向けて グローバルな公 正、積極的平和および人権 について政治的なマンガの 解釈を通して検討し、平和 の文化を創造するための実 践を探究する。 レッスン6:活動実践 多 様な抗議形態の探究を通し て社会・政治活動の異なる タイプの倫理や効力を検討 する。 生徒はケベック・ サミットなど政治抗議のケ ーススタディを検討する。 レッスン7:私はどこに拠 っ て 立 つ の か Arun Gandhi による論文の考察を通して 生徒は個人として平和の文 化を創造するサポートとい う貢献を検討するよう励ま される。 Peace Education Curriculum (原 語 Programa Pendidiken Damai) <平和は私と共に始まる> 1内面を見つめて:自己観察、オープンさ、自 己反省的な態度の向上。2許しと正直さ:許し はイスラム的な価値であり、正直さと公正さを 基盤とした許しの重要性に気づく。3私の口は 虎:正しい情報処理能力、感情コントロール、 コミュニケーションスキルの向上。 <私の権利と責任> 4子どもの権利と責任:平和構築のための権利 と責任を理解し、努力のバランスをとる。5学 習 す る 権 利 と 義 務:子 ど も の 学 習 権 を 理 解 す る 。 6 搾 取:基 本 的 人 権 を 尊 重 す る 精 神 を 構 築 す る 。 子どもの様々な搾取の形態に批判的になる。 <アッラーによる多様性の創造> 7自然と私:人間と自然はアッラーの創造物で あること、相互依存を生活の中で説明し、きれ いな環境を創造する。8私たちは多様性の中で 生きている:偏見とステレオタイプはコンフリ クトの根源であることを理解し、共同意識を高 める。9違うけれど同じ:男性と女性を中立的 に理解し、ポジティブに協働できるようバラン スのとれた見解を理解する。 <コンフリクト> 10 コ ン フ リ ク ト と 私 : コ ン フ リ ク ト の 意 味 、 要 因 、 平 和 に 解 決 す る ス キ ル を 修 得 す る 。 11 コ ン フリクト・マネイジング:問題解決方法につい て批判的に考察し、多様な戦略とアプローチを 用 い て 公 正 に 問 題 を 解 決 す る 。 12 私 た ち の 社 会 的分離:問題の原因を分析し、評価し、同定す る。隣人との社会的関係性の原因と効果につい て注意し、問題の探求と解決のためにグループ 討 論 が で き る 。 13 あ な た の 怒 り は 、 私 の 痛 み : コンフリクトのインパクトやトラウマに敏感に な り 、解 決 ・ 軽 減 す る 方 法 を 見 つ け よ う と す る 。 <民主主義と公正> 14 民 主 化 と 私 た ち : 公 正 、 民 主 主 義 、 人 権 の 原 則、社会的、政治的な現実を理性的に理解・分 析 で き る 。 15 法 へ の 敬 意 : 法 律 の 重 要 性 を 認 識 し、個人的な判断による行動を控え、法律の効 果 的 な 発 揮 に 役 割 を 果 た す 。 16 社 会 的 平 和 と 私 たち:平和的な社会環境の意味を理解する。自 分自身、家族および社会を守るための社会的環 境に向けた友好的な態度をとる。調和のとれた 社会環境を作り出すよう手助けし、公共の平和 を 持 続 さ せ る 。17 経 済 的 な 公 正 、私 た ち の 願 い : 経済における公正の概念を理解する。コミュニ ティにおける経済的なエンパワーメントの重要 性を認識する。経済的弱者を強化するための地 域のイニシアティブを育てる。現行経済のシス テ ム 、ダ イ ナ ミ ズ ム お よ び 現 実 に 批 判 的 に な る 。 <平和への道> 18 暴 力 は 私 た ち の 方 法 で は な い : 暴 力 行 為 の 形 態を認識し、暴力のインパクトを理解し、非暴 力 的 な 行 為 を と れ る よ う に す る 。 19 解 決 へ の 熱 望:問題を多角的に捉え、平等に、ウィン・ウ ィ ン 解 決 が で き る 。 20 ネ ゴ シ エ ー シ ョ ン を 通 し ての要求への接合:合理的な思考能力、他の意 見の尊重、自分の意見を明確に、効果的に表現 し 、 ネ ゴ シ エ ー シ ョ ン で き る 。 21 私 た ち は 平 和 を愛する:より包括的に平和を理解する。平和 とは人間の共同的な努力と態度の生産物である ことに気付かせる。コンフリクト解決のための 最適な方法を見出すことに創造的になる。平和 のメッセージを広めるにあたって、先を見越し た行動をとれるようになる。 Kurikulum Pendidikan Orang Basudara Maluku 第1章 生活の多様性 1.1 多 様 性 の 中 の 私 た ち の 生 活 : 神の恩恵としての多様性の事実を 理 解 し 、 尊 重 す る 。 1.2 違 い の 中 の強さ:違いはコンフリクトの源 だけでなく、創造性を支援できる 強 み に も な る こ と を 理 解 す る 。1.3 生 活 の 調 査:多 様 な 宗 教 が 存 在 し 、 多民族社会の中で、社会関係の質 を高めるために必要とされるポジ テ ィ ブ な 態 度 を 理 解 す る 。 1.4 す べての人は考えが違う:意見の多 様性の意義について理解する。 第 2 章 暴力とコンフリクト 2.1 コ ン フ リ ク ト : 常 に ネ ガ テ ィ ブなことではなく、非常に自然な ことで、人間生活から切り離すこ とができないものであることを理 解 す る 。 2.2 私 は 暴 力 が 嫌 い : 暴 力の形態や影響について理解す る 。 2.3 解 決 の 糸 口 を 見 つ け る : 学校、家族、社会において発生す るコンフリクトに対応するための 平 和 的 方 法 を 理 解 す る 。 2.4 先 入 観:コンフリクトの原因となるプ ロセスの一つとして理解する。 第 3 章 平和の発展 3.1 共 に 生 き る : 暴 力 の な い ( 共 に生きる)平和を発展させるため に 建 設 的 な 努 力 を 理 解 す る 。 3.2 信頼関係を築く:互いに信頼し合 えることを信じ、その重要性を自 覚 す る 。 3.3 共 感 : 日 常 生 活 の 中 で共感の実際やその実現方法を理 解 す る 。3.4 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン : コミュニケーションを理解し、効 果的なコミュニケーションを行 う 。 4.1 権 利 と 義 務 : 子 供 の 権 利 、 人権、社会、国民および国家に対 す る 基 本 的 な 義 務 を 理 解 す る 。4.2 民主主義:社会的・国家的な生活 の 中 で 民 主 主 義 を 理 解 す る 。 4.3 責任:すべての人が持つ責任につ いて、自分だけでなく、家族、学 校、生活地域社会に対する責任に ついて理解する。 第 5 章 社会の公正 5.1 社 会 の 公 正 : 社 会 的 公 正 の 意 味について理解し、日常生活の中 でそれを実現していくための責任 感 を 向 上 さ せ る 。 5.2 相 互 扶 助 : 一人では生きていくことができな い生き物であることを理解する。 5.3 共 同 : masohi あ る い は 協 働 に ついて理解し、日常生活の中で実 現できる。 第 6 章 人間と生活環境 6.1 エ コ シ ス テ ム : エ コ シ ス テ ム と人間生活の持続のためのエコシ ス テ ム の 重 要 性 を 理 解 す る 。 6.2 水不足と汚染:水の汚染の諸要因 を理解し、祖先からの影響を理解 す る 。 6.3 持 続 可 能 な 開 発 : 持 続 可能な開発の概念を理解し、日常 生活の中でそれを実行できる。 - 27 - 6.評価の視点 64Ways と Teaching Peace 以 外 は 、 各 課 に お い て 具 体 的 な 達 成 目 標 を 示 し て い る 。 し か し 、 評 価 基 準 や 方 法 を 明 確 に 示 し て い る の は 、Peace Game と Cultivating Peace の み で あ る 。Peace Game で は 、生 徒 自 身 が 単 元 の 概 要 を 聞 い た 後 に ど の よ う な 態 度 変 容 や ス キ ル 習 得 が 必 要 か 評 価 指 標 を 設 定 し 、ピ ア 評 価 を 通 し て さ ら に 到 達 度 を 上 げ て い く よ う に 活 動 を 設 定 し て い る( 表 5 )。 そ し て 自 己 評 価 や ピ ア 評 価 は 新 し い 単 元 を 始 め る 際 や 春 学 期 で プ ロ ジ ェ ク ト を 始 め る 際 に 、振 り返りと新たな目標設定を行う基盤として用いられており、効果が高まると考えられる。 表5 Peace Game 5 th Grade Curriculum, Lesson 8 Culture and Conflict レ ッ ス ン プ ラ ン 導 入 ( 15 分 ) 1.挨拶とレビュー(5 分) 2.価値の振り返り(5 分) 目 標:生 徒 は こ の レ ッ ス ン に 関 連 す る テ ー マ に つ い て 賛 成 か 反 対 か の 意 思 表 示 を 行 う こ と で 自 分 の レ ベ ル を 測る ○私はコンフリクトにあるとき、その結果についてよく考える/あまり考えない。 ○私はコンフリクトを解決するときはいつも同じ方法を使う/いつも違う方法を使う。 ○練習すればコンフリクトの解決ストラテジーはうまくいく/練習なしでうまくいく。 ○私は自分と違う文化の人とはうまくいかない/違う文化の人とも楽しくできる。 ○違う文化の人たちは一人ではうまくいかないから、同じ文化の人たちと一緒にいるべき/違う文化の人 たちはお互い学びあえるから、交じり合って一緒に何かするべき。 3.パフォーマンスゴール(5 分) 目標:生徒は、これまで勉強してきたことを振り返り、ガイドラインを見ながら、今日のパフォーマンス ゴールを設定する。 a.生 徒 に 、 今 日 は コ ン フ リ ク ト 解 決 の ロ ー ル プ レ イ を し て 、 そ れ に つ い て デ ィ ス カ ッ シ ョ ン す る 予 定 で あ ることを伝える。コンフリクトのいくつかは、人々の文化の違いによるものである。 b.生 徒 に 、 ど ん な 行 動 を と れ ば 今 日 の 活 動 が 楽 し く て 教 育 的 な も の に な る か を 考 え て リ ス ト に さ せ る 。 c.リ ス ト を も と に パ フ ォ ー マ ン ス ゴ ー ル を 決 め て 、 見 え や す い と こ ろ に 示 す 。 活 動 ( 30 分 ) 1.コンフリクト解決ロールプレイ(省略) 終 わ り に ( 15 分 ) 1.パフォーマンス評価(5 分) 目標:生徒は、ガイドラインをみながら、自分のパフォーマンスを振りかえり、次の授業でよくするため の方法についてディスカッションする。 a.生 徒 に 、 今 日 の 授 業 は ど う だ っ た か を 考 え さ せ 、 設 定 し た パ フ ォ ー マ ン ス ゴ ー ル と ガ イ ド ラ イ ン を 検 討 させる。 b.生 徒 か ら 意 見 を 聞 く 。 よ か っ た 点 、 悪 か っ た 点 を ま と め て い く 。 c.よ か っ た 点 を 評 価 し て 、 う ま く い か な か っ た 点 は 今 後 取 り 組 ん で い く よ う に 励 ま す 。 2 . 振 り 返 り ノ ー ト ( 10 分 )( 省 略 ) 出 典 : Peace Game 5 t h Grade Curriculum,2003 Peace Game(fall semester)よ り 筆 者 作 成 。 Cultivating Peace は 、 単 元 ご と に 事 前 事 後 の 筆 記 テ ス ト に よ っ て 生 徒 の 認 知 面 に つ い て の 評 価 を 行 い 、ポ ー ト フ ォ リ オ 、エ ッ セ イ 、プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 、日 常 の 観 察 を 通 し て 実 践 能 力 の 向 上 を 教 員 が 評 価 し( 表 6 )、生 徒 も グ ル ー プ 評 価 を 行 い( 表 7 )、授 業 改 善 に 役 立 て ら れ る 。 表5 氏名 生徒観察チャート 行動 グループ で行動す る 知識を共 有してい る グ ル ー プ の 締 め き り を 助ける 建設的な 意見を言 う いい質 問をす る 注意深く 聞いてい る 他人の意 見を明確 にする コンフリ クトの仲 裁をする グループが準 備できるよう にする ○○ 出 典 : Cultivating Peace , p.57 よ り 筆 者 作 成 。 表6 グループ参加に関する自己評価シート 規準 あまりグループとなっていない 協働 メンバーは競争的で自分達で完結 している メンバーは他のメンバーを気にし ていない 敏感さ グループが作り始められてい る メンバーは張り合っていない が、助けあいもしない メンバーは礼儀正しい - 28 - 生産的で協同的グループ メンバーは、グループとして考え、 全員が学べるように助けている 他のメンバーの気持ちに積極的に 対応する 個人の責任 他のメンバーが仕事をするのを待 っている メンバーは自分の仕事はする メ ン バ ー は 、強 み を 共 有 し て グ ル ー プがよい成果を出すようにする 出 典 : 同 上 書 , p.58 よ り 筆 者 作 成 。 注 : 上 記 の 表 に 続 い て 、 二 つ の 自 己 評 価 の た め の 質 問 が 続 く 。「 ② あ な た の グ ル ー プ に つ い て 3 つ ポ ジ テ ィ ブ な こ と を 書 き ま し ょ う 。 ③ あ な た の グ ル ー プ が よ く な る た め に 必 要 な こ と を 一 つ 選 べ ば 、 な ん で し ょ う か 。」 平 和 教 育 に お い て 、認 知 的 評 価 は 容 易 で あ る が 、認 知 の 高 さ は 直 接 行 動 へ と つ な が る わ け で は な い た め 、行 動 変 容 は 観 察 や 自 己 評 価 と い っ た 方 法 が 必 要 で あ り 、上 記 の 方 法 は 参 考 と な る 。 おわりに 以 上 、7 つ の カ リ キ ュ ラ ム に 限 定 さ れ て は い る が 、平 和 教 育 カ リ キ ュ ラ ム 開 発 に 向 け て い く つかの示唆を得ることができた。 ま ず 平 和 教 育 カ リ キ ュ ラ ム の 位 置 づ け に つ い て は 、人 権 や 民 主 主 義 と い っ た 知 識 事 項 に 注 目 し て 社 会 科 な ど の 隣 接 教 科 と の 関 連 性 を 示 す こ と も 必 要 で あ る が 、 64ways の よ う に 各 活 動 で 向 上 を 目 指 す ス キ ル に つ い て 学 力 基 準 と の 関 連 性 を チ ャ ー ト 化 す る こ と が で き れ ば 、学 力 保 障 を 示 す こ と に な り 、学 校 で 取 り 組 み や す く な る の で は な い だ ろ う か 。さ ら に 、今 後 は 平 和 教 育 と し て 目 指 す 実 践 能 力 と 学 力 と の 関 連 性 を 発 達 段 階 に 応 じ て 設 定 で き れ ば 、さ ら に 系 統 性 が 高 まると考えられる。 カリキュラム編成については、個人、個人間、集団間、地域そしてグローバルな次元へと、 「 平 和 」意 識 の つ な が り や 広 が り を 認 識 で き る よ う に 組 み 立 て ら れ て お り 、暴 力 や コ ン フ リ ク ト を 非 暴 力 的 に 解 決 し 、平 和 を 構 築 す る た め の 価 値 観 、知 識 、ス キ ル の 育 成 は 、発 達 段 階 や 経 験 を 踏 ま え て 体 系 化 さ れ て い る こ と が 分 か っ た 。そ れ ぞ れ の カ リ キ ュ ラ ム に よ さ が あ り 、Peace Game の よ う に 年 度 の 前 半 は 自 ら の 経 験 か ら 知 識 と ス キ ル を 学 び 、理 解 を 深 め 、そ し て 後 半 は 実際に学校から外に出て地域でその知識やスキルを活用した実践活動を行うという組み立て は 、 児 童 生 徒 に と っ て モ チ ベ ー シ ョ ン 、 知 識 ・ ス キ ル の 向 上 に つ な が る 。 64ways の よ う に 、 核 と な る 概 念 を 、教 科 や 諸 活 動 に お い て 多 様 な バ リ エ ー シ ョ ン に よ っ て 繰 り 返 し 学 習 す る 方 式 は 、 生 徒 の 概 念 理 解 と 、 活 用 力 を 高 め る も の と し て 参 考 に な る 。 Road to Peace の よ う に リ ア ル な 現 実 の 複 雑 さ を 理 解 で き 、多 角 的 な 分 析 力 を 養 う こ と が で き る 多 数 の 資 料 を 組 み 込 ん だ カ リ キ ュ ラ ム は 、よ り 深 い 議 論 を 進 め や す く 、効 率 の よ い 平 和 教 育 実 践 に つ な が る と 考 え ら れ る 。 カ リ キ ュ ラ ム の 内 容 に つ い て は 、平 和 、暴 力 、コ ン フ リ ク ト 、非 暴 力 的 紛 争 解 決 、人 権 、民 主 主 義 、社 会 公 正 に つ い て は 、ほ ぼ 共 通 し て 扱 っ て い る こ と が 分 か っ た が 、社 会 状 況 や 生 徒 の 発 達 や 信 条 に 合 わ せ て 、多 様 な 事 例 が 用 い ら れ て い た 。無 論 、カ リ キ ュ ラ ム は 地 域 や 子 ど も の 状 況 に 合 わ せ て 教 師 が ア レ ン ジ し な け れ ば 効 果 的 な 教 育 と は な り え な い 。家 庭 、コ ミ ュ ニ テ ィ と 連 携 し た カ リ キ ュ ラ ム マ ネ ジ メ ン ト が 鍵 と な る の は 言 う ま で も な い 。ま た 、こ の よ う に 他 国 の 平 和 教 育 の 内 容 が ど の よ う な も の か を 知 る こ と は 、日 本 で の 平 和 教 育 の 内 容 を 吟 味 す る た め の 参 考 に な ろ う が 、そ れ だ け で は な く 、他 国 の 生 徒 た ち が ど の よ う な 内 容 で 平 和 に つ い て 考 え 、 平和のために自分たちがなすべきことを学習しているということ自体を日本の子供たちに伝 えることも必要ではないかと考える。 - 29 - 教 授 法 に つ い て は 、問 題 解 決 学 習 、協 同 学 習 、探 求 学 習 、批 判 的 思 考 ア プ ロ ー チ 、ゲ ー ム ア プ ロ ー チ が と ら れ て お り 、教 師 の フ ァ シ リ テ ー ト 能 力 は ま す ま す 重 要 と な る と い え よ う 。ま た 平 和 教 育 の 評 価 は 、認 知 的 評 価 は 比 較 的 容 易 で あ る が 、平 和 な 社 会 を 構 築 す る 能 力 の 評 価 は 短 期 間 の 学 習 で は 難 し い 。 し か し Peace Game や Cultivating Peace の よ う に 、 小 さ な 取 り 組 み ご と に 行 う 観 察 と 自 己 評 価 は 、日 々 の モ チ ベ ー シ ョ ン を 高 め ,成 長 を 促 進 し 、カ リ キ ュ ラ ム や 教授法の改善にも有効であり、参考となるものである。 以 上 み て き た よ う に 、諸 外 国 で の 平 和 教 育 カ リ キ ュ ラ ム の 動 向 か ら 学 ぶ こ と は 多 く 、今 後 も よ り よ い 平 和 教 育 カ リ キ ュ ラ ム と は ど の よ う な も の か を 引 き 続 き 考 察 し て い く と と も に 、平 和 教育に挑戦する教師の実践能力訓練プログラムや教授マニュアルについても検討していきた い。 <参考文献> 村 上 登 司 文 『 戦 後 日 本 の 平 和 教 育 の 社 会 学 的 研 究 』 学 術 出 版 会 、 2009 年 。 Monisha Bajaj, Encyclopedia of Peace Education , Information Age Publishing, 2008. Salomon and Nevo, Peace Education , Lawrence Erlbaum Associate, 2002. 付 記:本 発 表 は ,科 学 研 究 費 補 助 金 若 手 研 究( B) ( 課 題 番 号:21730670)の 成 果 の 一 部 で あ る 。 村 上 登 司 文 『 戦 後 日 本 の 平 和 教 育 の 社 会 学 的 研 究 』 学 術 出 版 会 、 2009 年 、 215 頁 。 た だ し 、広 島 平 和 教 育 研 究 所 は 、小 学 校 中 学 校 に お け る 平 和 教 育 カ リ キ ュ ラ ム を 試 案 と し て HP に 公 開 し て お り 、平 和 教 育 を 教 育 段 階 別 に 教 育 目 標 と 主 題 を 設 定 し 、教 科・活 動 別 に 平 和 教 育との関連が一目で分かるように工夫している。またこれまでの実践事例も集められており、 活 用 し や す く な っ て い る 。こ の よ う な カ リ キ ュ ラ ム の 活 用 と 改 良 が さ ら に 望 ま れ る と こ ろ で あ る 。 http://www1.ocn.ne.jp/~hipe/kijun/newpage2.html( 2012 年 2 月 3 日 ) ii 同 上 書 、 414 頁 。 iii UNICEF, Curriculum Report Card (Working Paper Series Education Section Programme Division, Nunited Nations Children’s Fund New York, USA,2000.『 戦 争 を な く す た め の 平 和 教 育 』( ベ テ ィ ・ リ ア ド ン 、ア リ シ ア ・ カ ベ ス ー ド( 著 )藤 田 秀 雄 、淺 川 和 也( 監 訳 )、明 石 書 店 、 2005 年 ) の 第 2 部 で は 4 つ の 柱 別 に 、 モ デ ル と な る 各 国 で の 実 践 事 例 を 紹 介 し て い る 。 iv 本 稿 が 分 析 対 象 と す る カ リ キ ュ ラ ム の 内 、 The Road to Peace、 Teaching Peace、 Cultivating Peace、 Peace Education に つ い て は 、 中 国 四 国 教 育 学 会 編 『 教 育 学 研 究 紀 要 』 「平和教育カリキュラムの国際比較研究」 ( 2012 年 3 月 刊 行 予 定 )に お い て も 分 析 し て い る が 、 そ こ で は 非 暴 力 に よ る 平 和 の 構 築 力 の 育 成 に 焦 点 を 当 て て お り 、本 稿 は カ リ キ ュ ラ ム 編 成 の 視 点から再分析することを目的とする。 v た だ し 、ア チ ェ で は 1 年 間 と 短 期 間 で し か な い た め 、よ り 多 く の 時 間 の 配 分 が 望 ま れ て い る こ と が 生 徒 へ の ア ン ケ ー ト 調 査 か ら 報 告 さ れ て い る 。ま た 、ア ン ボ ン で も 地 域 科 で の 平 和 教 育 が 教 育 局 よ り 推 奨 さ れ な が ら も 現 場 が 動 い て い な い と い う 状 況 が あ る 。平 和 教 育 の 実 現 は 、国 家の制度的整備、学校全体の体制整備、教師の専門職的準備が揃わなければ難しい。 vi ベ テ ィ ・ リ ア ド ン 、 同 上 書 。 vii Daniel Bar-Tal,Yigal Rosen, and Rafi Net-Zehngut, “Peace Education in Societies Involved in Intractable Conflicts –Goal, Conditions, and Directions”, Gavliel Salomon and Edward Cirns(Edit), Handbook on Peace Education , Psychology Press, 2010, pp.28-35. viii 2011 年 1 月 4 日 に 実 施 し た ア メ リ カ 合 衆 国 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 小学校教員への面接調査よ り。 i - 30 -