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米国国務省報告(宗教)2013

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米国国務省報告(宗教)2013
当翻訳は,法務省入国管理局による仮訳であり,正確には原文に当たってください。
また,今後当仮訳は精査の上,変更されることがあり得ることにご留意ください。
2013年世界の信教の自由に関する報告書
ナイジェリア
エグゼクティブ・サマリー
憲法並びにその他の法律及び政策は、信教の自由を保護している。しかし、連邦政府は、
一部の州及び地方自治体で行われていると言われる拘禁又は宗教団体に影響を及ぼす制限
を禁じなかった。連邦政府は宗教に基づく暴力の防止又は鎮静化においても無力であり、
信教の自由の侵害に加担している者を時折調査し、起訴し、あるいは処罰するに過ぎなか
った。また、暴力に対して強引な戦術で対応することもあった。
宗教、信条又は慣行に根差した社会的虐待あるいは差別についての報告がなされている。
イスラム教指導者やキリスト教指導者の中には、ボコ・ハラム(Boko Haram)として知ら
れるテロ組織が、北部及び中部の諸州においてイスラム教徒とキリスト教徒の間に敵対関
係を生じさせようとしており、それらの地域では地域の法律、差別的な雇用関係及び土地
を巡る熾烈な競争によって民族的及び宗教的緊張関係が高まっていると述べる者もいた。
ボコ・ハラムは、活発な活動を行っている地域において、非イスラム教徒をボコ・ハラム
が信奉する宗教に強制的に改宗させようとしており、また、ボコ・ハラムが信奉する教義
に従わない又はその活動を支持しないイスラム教徒も攻撃の標的とした。ただし、イスラ
ム教徒及びキリスト教徒は共に、自身の宗教を変えても社会的圧力を受けた。
米国の大使館員及び領事館員は、信教の自由と寛容な対応について、ナイジェリア政府指
導者、宗教団体や市民社会のリーダー達、伝統的指導者などと協議し、その重要性を訴え
た。また、米国の政府職員はハイレベルな2国間会議でボコ・ハラムについて議論した。ナ
イジェリアを訪問中の国務省政治担当国務次官(Under Secretary of State for Political
Affairs)およびアフリカ担当次官補(Assistant Secretary of State for African Affairs)を
含む米国派遣団は、ナイジェリアの州及び連邦政府職員に信教の自由への取組みを提起し
た。米国大使館員は、暴力によって強制追放させられた人々と面談し、また、米国国際開
発庁(United States Agency for International Development、USAID)は寛容政策の推進
を目的としたプロジェクトの対象地域を北部6州に拡大した。
セクション I
宗教人口
米国政府は、ナイジェリアの総人口を 1 億 7,450 万人と推定している(2013 年 7 月推計)。
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大半のオブザーバーの推計では、人口の 50%がイスラム教徒、40%がキリスト教徒、10%
が土着信仰信者とされている。イスラム教徒としては、ティジャニヤ派(Tijaniyah)やカ
ーディリー派(Qadiriyyah)を含むスーフィー(Sufi)諸集団に分裂したスンニ(Sunni)
派が大勢を占める。拡大しつつあるシーア(Shia)派及びイザラ(Izala)
(サラフィー主義
者、Salafist) 少数派も存在する。キリスト教徒集団には、ローマカトリック(Roman
Catholics)、英国国教会(Anglicans)、バプティスト(Baptists)、メソジスト(Methodists)、
長老派教会(Presbyterians)、福音主義派(evangelicals)及びペンテコステ派(Pentecostals)
がある。また、末日聖徒イエスキリスト教会(モルモン教)
(The Church of Jesus Christ of
Latter-day Saints (Mormons))の信者もいる。合算しても人口の 5%に満たない比率しか
構成していない集団には、ユダヤ人、エホバの証人(Jehovah’s Witnesses)、バハイ(Bahais)
及び宗教を一切信奉しない個人が挙げられる。
ハウサ/フラニ族(Hausa-Fulani)及びカヌリ族(Kanuri)が多数を占める北部州では、
圧倒的にイスラム教徒が多い。北部には、相当な数のキリスト教徒も居住している。連邦
首都地区(Federal Capital Territory、FCT)を含む中央ベルト地帯及びヨルバ族(Yoruba)
が多数を占める南西部では、キリスト教徒とイスラム教徒がほぼ同数居住している。ヨル
バ族の大多数はイスラム教徒かキリスト教徒のどちらかであるが、ヨルバの伝統宗教も残
っている。南東部のイボ族(Igbo)が多数を占める南東部の各州では、大多数がカトリッ
ク、英国国教会及びメソジストの信者である。ただし、多数のイボ族は伝統的慣習とキリ
スト教を混ぜ合わせて信奉している。オゴニ族(Ogoni)、イジョー族(Ijaw)が最も多い
ナイジャデルタ(Niger Delta)地域では、キリスト教徒が多数を占め、イスラム教徒はわ
ずか 1%である。ペンテコステ派のキリスト教徒は、中部及び南部で急増している。アフマ
ディー(Ahmadi)イスラム教団の信徒がラゴス(Lagos)やアブジャ(Abuja)の街にわ
ずかながらいる。
セクション II
政府の信教の自由の尊重状況
法的・政治的枠組み
憲法並びにその他の法律及び政策は、一般に信教の自由を保護している。憲法は、政府は
いかなる宗教も国教とはしないことを規定している。憲法は、州政府や地方自治体が州教
を定めること又は特定の宗教や民族集団を優遇することを禁じている。
カツィナ(Katsina)州法では、イスラム教徒の学校、聖職者及びモスク(イスラム教寺院)
に対して業務を開始する前に州政府から許可を得ることを義務付けている。同法は、無許
可での運営に対して1年ないし5年の懲役及び/又は3千ドル以下の罰金を科すことを規定し
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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ている。
憲法の規定により、州は普通法(コモン・ロー)制度又は慣習法制度に基づく法廷を持つ
ことができる。憲法は特に、「民事事件」についてのシャリア法廷(イスラム法に基づいて
審理する裁判所)は認めているが、刑事事件についてシャリア法廷を利用することについ
ては言及していない。一方、北部 12 州には、刑事事件を裁くシャリア法廷がある。イスラ
ム教徒の原告もイスラム教徒の被告もこの法廷で裁かれることに同意している。シャリア
(コーランによる刑罰)及び鞭打ち、手
法廷はシャリア刑法に基づき判決(ハッド(hadd)
足切断、投石による死刑などの懲罰を含む)を言い渡すことができる。イスラム教徒以外
の国民は、イスラム教徒を相手方とした民事事件の当事者となった場合、その事件をシャ
リア法廷で審理してもらう選択権がある。普通法による法廷は、シャリア法廷による審理
に合意しないイスラム教徒と非イスラム教徒の間の訴訟事案を審理する。シャリア法廷は、
非イスラム教徒の参加を強制できないが、これまでにはシャリア法廷の裁判の迅速性と低
コストを引き合いに出して、訴訟事案をシャリア法廷に持ち込む非イスラム教徒もいた。
権利を侵害された当事者は、シャリア法廷の判決に対して 3 段階のシャリア上訴裁判所に
控訴することができる。シャリア上訴裁判所(シャリア裁判所の最高レベル)の判決に不
服がある場合、理論的に言えば連邦上訴裁判所に控訴し、最終的に最高裁判所に上告する
ことができるものの、これまでそのように行われた事例はない。
憲法の規定では、宗教に関係しない刑事裁判所のみが認められ、シャリア刑事裁判所への
非自発的参加は禁じられているにもかかわらず、ザムファラ(Zamfara)州法は、イスラム
教徒が関与するすべての刑事事件がシャリア法廷で審理されねばならないと義務付けてい
る。ザムファラ(Zamfara)州の州レベル宗教問題委員会は、宗教問題と伝道について規定
すると共に、イマームへライセンスを付与し、同州における宗教紛争の解決に努めている。
バウチ(Bauchi)州、ボルノ(Borno)州、カドナ(Kaduna)州、カノ(Kano)州、カ
ツィナ(Katsina)州及びヨベ(Yobe)州も州レベルの宗教問題担当省又は局を設置してい
るが、他の多くの州知事は宗教問題に関する特別アドバイザーを任命している。
新しい教会やモスクの建設を予定するキリスト教徒団体とイスラム教徒団体は法人業務委
員会(Corporate Affairs Commission)に届け出なければならない。
連邦政府も州政府も、公立の学校における宗教の授業を義務付ける規則を施行している。
憲法の規定によれば、学生は、信仰する宗教以外の宗教に関して、宗教教育を強制的に受
けさせられることがない。州政府職員や多くの宗教的指導者は、学生が自分の宗教につい
て教えられる先生に宗教授業をしてもらうよう求めることは自由であると言う。
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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政府の慣行
一部の州や地方自治体では拘禁が行われており、また、政府による宗教的暴力の被害者へ
の保護は十分ではないという報告がなされた。また、一部の州や地方自治体は信教の自由
に関して、宗教諸団体の信徒に影響を及ぼす制限を課した。州政府の中には、治安と市民
の安全を確保するために宗教活動に制限を加えたと言うところもあった。
いくつかの州では、公立学校や医療の場、選挙、運輸サービスにおける男女の分離といっ
たシャリアに基づく慣行が、非イスラム少数民族に影響を及ぼしてきた。一部のキリスト
教徒集団は、いくつかの州における宗教問題省はイスラム教徒のみに焦点を合わせており、
これは州教の採択同然である、と語った。
2013年を通じて、シャリア法廷が刑事事件を違法に審理したという確証ある報告はなされ
ていない。2013年11月20日、バウチ(Bauchi)州のシャリア上級裁判所が強姦と近親相姦
の罪で有罪となった男に投石による死刑の判決を言い渡した。被告は、この判決を不服と
してバウチ州シャリア上訴裁判所へ控訴した。2013年末時点で公判日は設定されていなか
った。また、裁判が2011年に開始されてから警察の留置所に勾留されていた被告は2013年
11月、バウチ州高等裁判所に保釈申請も行った。年末時点で保釈は行われていなかった。
シャリア法廷は、法律が許容する民事事件の審理を続けている。
バウチ(Bauchi)州、ザムファラ(Zamfara)州、ナイジャー(Niger)州、カドゥナ(Kaduna)
州、ジガワ(Jigawa)州、ゴンベ(Gombe)州及びカノ(Kano)州における各州政府は、
シャリア法を一貫性なく、かつ、散発的に執行しているヒスバー(Hisbah)と呼ばれるシ
ャリア法執行機関に資金を提供している。カノ(Kano)州のヒスバーは、2013 年 9 月に「倫
理観を取り戻す」キャンペーンを展開することを発表し、2013 年を通じてその活動を高め
ている。カノ(Kano)州のヒスバー職員は、売春の疑いがある女性を時折勾留した。ある
メディアの支局は、ヒスバー職員の話として、2013 年 1 月から 10 月にかけて売春の疑い
がある女性 500 人が逮捕されたと伝えている。カノ(Kano)州のヒスバーは 2013 年 10
月、報道陣に対して、公共輸送機関を利用する際は男女が別々のままでいることや男性タ
クシー運転手はショートパンツを穿かないことを再認識させる声明を出した。
カノ(Kano)州当局は、シャリア制定法に従い、市民の飲酒や酒類販売には厳しい罰金刑
と懲役刑を科した。2013年11月27日、カノ(Kano)州のヒスバーは、カノ(Kano)市で
押収したビール24万本の破壊とタバコ32万本の廃棄を公開した。
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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一部の州当局は、非主流的な宗教コミュニティ向けの新たな礼拝所建設や既存施設の増
築・修復の許可申請を却下したと報じられた。キリスト教徒は、イスラム教徒が圧倒的多
数を占める北部諸州の地方自治体職員が新しい教会の建設を中止させるあるいは遅らせる
ため、土地区画規制や所有権登録を活用したと報告した。ボルノ(Borno)州土地・調査省
は 2013 年 8 月 20 日、マイドゥグリ(Maiduguri)郊外に位置し、キリスト教の教会や学
校が多数所在するグッビオ・ロード(Gubio Road)沿いの土地・家屋所有者に対し、1 千
戸の家屋を建設するために州がその土地を所有すると通告した。この通告によって土地家
屋の所有者は不動産の価額について協議するため会議に出席するよう要求されたが、政府
職員が計画通りに査定を実施することはなかった。キリスト教徒の全国組織から質問され
た際、ボルノ(Borno)州職員はその通告書の存在を否定した。2013 年末現在、政府は家
屋を一切取り壊していない。一部のキリスト教徒団体は、このプロジェクトがキリスト教
徒を立ち退かせるための口実に過ぎなかった、と語った。
イスラム教徒の諸団体は、イスラム教の学校や聖職者、モスクに関してライセンスの取得
を義務付けるカツィナ(Katsina)州法を批判し続けた。ただし、迫害が行われたという報
告は一切なされなかった。反対を唱えるイスラム教徒は、この州法がキリスト教徒の団体
にはライセンス取得要件を課していないことから差別的だと説明した。また、イスラム教
徒は、この州法によってイスラム教のイマームが政府を批判した説教を公然と行うことが
妨げられる、と語った。州政府は、イスラム教の教育と説教をより厳格に定義することが、
治安の問題に対処する際の一助になった、と州法を擁護した。
一部の非イスラム教徒は、政府の資金援助を受けたシャリア法廷は、イスラム教を州教と
して採用しているも同然であると批判し続けたが、各州政府は並行的な普通法裁判所制度
が利用できることを引き合いに出して、誰もシャリア法廷の利用を強制されない、と主張
した。あるイスラム教徒集団は、刑事事件をシャリア法廷に持ち込めないため、宗教的自
由を十分に行使する能力が削がれている、と不満を漏らした。
連邦政府は、イスラム教徒がメッカへ巡礼の旅に出るため、また、キリスト教徒がエルサ
レムやローマへ巡礼の旅に出るために航空機を利用することを承認し、その両方の巡礼に
補助金を給付した。また、連邦政府は、巡礼を支援するため、航空運賃を設定すると共に、
二国間航空協定の締結についてサウジアラビア、イタリア、イスラエルとそれぞれ交渉し
た。ハッジ国家委員会(National Hajj Commission)は、年間でおよそ 6 万 5,500 人にな
るメッカ巡礼者のためにロジスティックの手配を行った。ナイジェリアキリスト教徒巡礼
者委員会(Nigerian Christian Pilgrims Commission)も、エルサレムとローマを訪れる 3
万人の巡礼者のために物資手配を行った。
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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一部の公立学校では、キリスト教あるいはイスラム教を教えることのできる教師が不足し
ていると報じられた。学生はますます教室で宗教の授業を受けなくなっており、代わりに
公立学校ではない場所で非公式な宗教教育を受けるあるいは教区学校で宗教授業を受ける
ようになってきている。南部に本拠を置くあるイスラム教徒集団は、イスラム教徒の学生
が、私立のキリスト教学校に通学しない限り、キリスト教徒の宗教授業を受けることを義
務付けられない、と確認した。
ヒジャーブ(イスラム教徒の女性が顔を隠すために用いるベール)の着用を禁止する法的
制約は一切ないものの、ラゴス(Lagos)州にある公立学校の校長は 2013 年 2 月 5 日、学
校がヒジャーブの着用を唯一許可している時間であるイスラム教研究授業が終わった後も
ヒジャーブをとらなかった 11 歳の女生徒を鞭でたたいた。ラゴス(Lagos)州では、一部
の公立学校の制服規定によって、学生は活発に礼拝を行っている時にのみヒジャーブを着
用することが許可されている。2013 年 5 月 27 日、ナイジェリアイスラム教徒学生連合ラ
ゴス支部(Muslim Students’ Society of Nigeria Lagos Area Unit)はこの制限が憲法違反
であるとして、イケジャ高等裁判所(Ikeja High Court)に訴訟を提起した。その後、公立
学校、学生連合の両当事者は、この事件を担当した裁判長の勧めで裁判外での和解を選択
した。
キリスト教徒集団からの報告によると、北部の数州にある国営技術学校の個々の管理者は、
キリスト教徒学生の学位とライセンスの発行を拒絶あるいは延期した。
政府の無為
連邦政府は、地域社会や宗教に基づく暴力を防止するあるいは鎮静化させるために迅速な
又は効果的な行動をとっておらず、その暴力の加担者を時折調査し、訴追したに過ぎなか
った。政府はまた、宗教信仰その他を理由として暴力的な攻撃の標的となった被害者を保
護することもしなかった。連邦政府は、信教の自由を攻撃した北部の暴力的な過激派グル
ープを封じ込めるだけの十分な装備と訓練を治安部隊に施さなかった。
ボコ・ハラムの指導者モハメド・ユスフ(Mohammed Yusuf)を超法規的に殺害した罪で
告発された5人の警察官に対して2011年に起訴された訴訟手続きは、2013年中には再開さ
れなかった。この事件を審理する裁判所は、裁判長が2012年に別の管轄区域に異動した後、
2013年2月、5月及び6月に設定されていた審理続行日に閉廷していた。また、2012年後半
には、著名なイスラム教指導者を襲撃し、死に至らしめた事件が3度発生したが、事件の後
に起訴あるいは訴追が行われたことはなかった。
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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キリスト教徒の諸集団は、2013年を通じてボコ・ハラムが村人を殺害し、教会に放火する
中、地方自治体や州当局は北東部の農村社会に対して十分な保護策あるいは襲撃後の救済
措置を講じてこなかった、と訴え続けた。
一部のキリスト教徒集団の報告によると、特に、土地を巡る数十年の抗争に基づく地域社
会の暴力によって、キリスト教徒が大勢を占める農民とイスラム教徒が大勢を占める牧畜
農家が敵対関係にあるナイジェリア中部の諸州において、州政府の差別あるいは住民の保
護に関する州政府の組織的欠落が見られた。連邦政府、州政府及び地方自治体は、この暴
力をもたらす原因となっている政治的、民族的及び宗教的不満に効果的に対処してこなか
った。
中央ベルト地帯で継続する民族・宗教紛争を解決するために政府後援の多数の委員会が行
った勧告には、真実・調停委員会の設置、市の再編成、地域社会の感受性向上への取組み
及び先住民と入植者という二分法の廃止が含まれていた。全国的な慣行として、ある場所
の土着の民族集団である先住民と、国の他の土地に民族的ルーツを持つ入植者が区別され
てきた。地方自治体は、先住民に政治的地位、政府職員への採用、小中学校の授業料など
において一定の特権を与えている。そのような特権を得るためには、地方自治体発行の先
住証明書を提示することが求められる。連邦政府は、政治的指導者や宗教的指導者が上記
勧告を実施するよう繰り返し求めているにもかかわらず、いずれも実行に移さなかった。
反乱軍、外国部隊又はテロ組織による侵害
「The Jama’atu Ahlis Sunna Lidda’awati Wal-Jihad」(訳者注:アラビア語で、宣教及
びジハードを手にしたスンニ派教徒としてふさわしき者たち)又は「People Committed to
the Propagation of the Prophet’s Teachings and Jihad」(通常、ボコ・ハラム(「西欧教
育禁止」を意味するハウサ語)という)は、政府転覆を狙い、ナイジェリア全土にその宗
教的・政治的信念を植え付けるため、特に北部において暴力行為を犯し続けた。米国政府
は2013年11月13日、ボコ・ハラムを外国テロ組織に指定した。
ボコ・ハラムは、2013年に1千人以上の人々を殺害した。この集団は、突撃ライフル、爆弾、
簡易爆発物、自動車やベストを使った自爆テロを用い、キリスト教徒やイスラム教徒の宗
教的指導者、教会、モスクなど様々な市民や場所を標的とした。2013年1月に発生したカノ
首長(Emir of Kano)への襲撃は、ボコ・ハラムが反過激派のイスラム教指導者を沈黙さ
せるために行った仕業であると広く信じられている。この事件に関してボコ・ハラムは正
式な犯行声明を出していない。また、2013年9月28日、ボコ・ハラムは農村部のヨベ(Yobe)
州にある工科大学で50人以上の学生(その大半がイスラム教徒)を殺害した。この事件や
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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他の事件においても、襲撃犯が逃走してから数時間が経過した後に治安部隊がようやく現
場に到着したことから、治安部隊は国民の批判に晒された。
ボコ・ハラムは、教会及びモスクへの致命的襲撃の多数について犯行声明を出しているが、
その多くで礼拝中あるいは礼拝を終えた直後に信徒を殺害している。ボコ・ハラムがしば
しば夜間に、あるいは治安部隊と衝突している間、数十の教会を全焼させたという報道が
なされた。キリスト教徒の諸集団は、メディアが教会の破壊状況を実態より過少に報道し
ている、と語った。キリスト教指導者数人は、北部における教会出席率が 30%下がって 2012
年では 70%となり、その低率が続いているが、その原因がボコ・ハラムの恐怖によるもの
である、と報告した。
ボコ・ハラムがボルノ(Borno)州やヨベ(Yobe)州の過疎地に住むキリスト教徒を含む個
人やコミュニティを標的としていることを確認する、複数の報告がなされた。襲撃する理
由は、そうした人々の宗教的信仰である。生存者や被害者の親族は、武装した男たちが住
民にキリスト教を放棄するよう強要し、その場で改宗しない住民を殺害した、と語った。
あるキリスト教団体は、ボコ・ハラムの疑いのある兵士が、ボルノ(Borno)州グウォザ
(Gwoza)地区近くにあるキリスト教徒が大多数を占める市を延べ 11 回に亘って襲撃し、
住民の改宗あるいは逃走を強要しようとした、と報告した。また、ボコ・ハラムが「反イ
スラム的」と認識する活動に従事している人々を標的にしているという報告もなされた。
武装集団が 2013 年 1 月 18 日にボルノ(Borno)州首都マイドゥグリ(Maiduguri)近く
のダンボア(Damboa)地区にある市場でノン・ハラル(訳者注:イスラム教の戒律に従っ
て食肉処理されていない)肉を販売している猟師 18 人を殺害したことが報じられた。同じ
く 2013 年 1 月、武装集団がカノ(Kano)州の道路脇で賭け事を行っていた 5 人の男性を
殺害したという報道がなされた。
市民社会グループ、メディア支局及び政治家は、ボコ・ハラムが、活動の本拠地をイスラ
ム教徒が大多数を占める北部に置いていることから、キリスト教徒よりも多くイスラム教
徒を殺害しており、また、頻繁に学校、治安部隊及び政府施設を標的にした、と述べた。
たとえば2013年8月に起きた事件では、ボコ・ハラムがボルノ(Borno )州のマラム・フ
ァトリ(Mallam Fatori)村を襲撃し、兵士と警察官を20人以上殺害し、またその際、治安
部隊を支援したイスラム教徒の市民も標的にした。この事件が、2013年8月11日に礼拝者44
人を殺害したボルノ(Borno)州コンドゥガ(Konduga)地区のモスクを狙った襲撃の動機
になっていると広く信じられている。
ボコ・ハラムを阻止しようとする政府の試みは概して効果が得られていない。北東部のボ
ルノ(Borno)州、ヨベ(Yobe)州及びアダマワ(Adamawa)州で 2013 年 5 月に宣言さ
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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れた緊急事態時に治安部隊がとった行動によって、傍観が都市部での戦闘中に銃撃戦に巻
き込まれるかたちになり、しばしば死亡者数を増加させる結果となった。治安部隊は、テ
ロリストの疑いのある人物を超法規的に殺害し、被収容者は勾留中に死亡した。宗教的指
導者、市民社会及び国際人権機関は、政府の強圧的な軍事行動を非難した。隣国へ逃亡し
た 1 万人以上の難民の中には、ボコ・ハラムと軍隊の双方に対する恐怖があって母国に戻
ることができない、と報告する人々もいた。ボコ・ハラムと治安職員との大規模な衝突が
頻繁に発生しているマイドゥグリ(Maiduguri)に住む大半の市民が 2013 年の一時期につ
いては治安が改善されたと報告しているものの、ボコ・ハラムは北東部の農村地区におい
て自由に活動を続けており、2013 年 12 月にはボコ・ハラムの大軍がマイドゥグリ
(Maiduguri)に攻撃を仕掛けた。
セクション III
信教の自由に対する社会的尊重の状況
宗教、信条又は慣行に基づく社会的虐待や差別に関する報告がなされた。民族性や宗教、
社会経済的状況はしばしば密接につながっていることから、社会的虐待や差別の事例を民
族的不寛容又は宗教的不寛容として分類することは困難であった。
他の宗教へ改宗したイスラム教徒又はキリスト教徒の一部が、以前に信仰していた宗教の
信奉者による脅迫や村八分に直面したことが報道された。北部にある一部の州では、イス
ラム教に改宗したいと望む人々は、その家族に送付するための改宗レターをシャリア法廷
に申請するよう強く促された。このレターは、キリスト教徒との結婚を解消し、親族の報
復からの保護をヒスバーに求めるのに役立った。キリスト教に改宗する人々に関して、同
様の手続きは存在していなかった。イスラム教へ改宗した北部のナイジャー(Niger)州に
住む女性が2013年7月、彼女の改宗を拒絶しているキリスト教牧師の父親から保護してほし
いと地元の当局に要請し、その際、公の場でイスラム教徒であることを宣言しているのに
もかかわらず父親から強制されてキリスト教徒になっていたと訴えた。
2012年にイスラム教からキリスト教へ改宗した女性の家族が正体不明の武装集団によって
殺害された事件の捜査に進展は見られなかった。
2013年4月、北部のある州に住むキリスト教指導者が、宗教的寛容と異教徒間の関係改善の
取組みを公に支持したことに反応して送られてきた脅迫メッセージを受け取った後、一時
的に出国した。同氏は、居住地域のキリスト教徒が脅迫を行ったと疑っており、異教徒間
の関係強化に専心している他のキリスト教徒やイスラム教徒も本人たちの宗教社会のメン
バーから敵対的な苦情をしばしば受けた、と語った。
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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イスラム教徒とキリスト教徒は、宗教に基づく報復攻撃を恐れ続けた。ボコ・ハラムの疑
いのある自爆テロ犯が 2013 年 3 月 18 日にカノ(Kano)市のキリスト教コミュニティ内に
あるバス停留所で 22 人を殺害した直後、アビア(Abia)州に住むハウサ(Hausa)族住民
に対して脅迫が行われたという未確認報告があった。キリスト教の複数の宗教的指導者が
冷静を保つよう公の場で訴えを行って以来、知られるような暴力事件は発生しなかった。
2013年を通じて、一部のキリスト教徒がその他多数の居住者と共に、紛争に疲弊した北部
のボルノ(Borno)州やヨベ(Yobe)州を離れた。プラトー(Plateau)州のジョス(Jos)
市に移動したおよそ100人の国内避難民の内、インタビューに応じた数人は、ボコ・ハラム
や戸別ごとの殺害、教会への襲撃、継続する過激派、政府治安部隊間の暴力行為などに対
する恐怖心から家を離れた、と語った。
雇用やその他の活動における宗教的差別は法律で禁じられているが、宗教諸団体は一部の
経済社会部門が宗教を理由として職場において差別をしていると、引き続き語った。南部
に住むイスラム教徒の女性は、民間部門、特に顧客サービス職で職業上の差別に直面し続
けていることが報じられた。イスラム教諸団体による権利擁護運動によって、南部の大手
銀行 3 行が初めて企業の服装規定でヒジャーブを受け入れることになった。
25人のキリスト教徒指導者と25人のイスラム教指導者で構成される独立組織のナイジェリ
ア異宗教間評議会(Nigerian Inter-Religious Council、NIREC)は、政府に宗教団体間の
暴力を緩和するための方法について助言した。連邦政府はNIRECの取組みを公に支援した
が、NIREC と政府の会談は2013年中に一度開催されたのみであった。キリスト教指導者
とイスラム教指導者数人は、NIRECの指導力に対する不満を募らせ、NIRECへの不信感を
表明した。多くの宗教指導者は寛容方針と異教徒間の関係改善による紛争解決を公に支持
しているものの、キリスト教指導者とイスラム教指導者の間で高まる不信感によって異教
徒間の関係強化への取組みが脅かされている、と語る指導者もいた。
宗教社会は、神の存在を受け入れない人々に時折烙印を押した。たとえば、キリスト教徒 2
人とイスラム教徒 1 人は密かに、もはや神の存在を信じていない、と報告したが、家族か
ら排斥され、隣人からも必要以上の監視を受けるのではないかという恐れから、礼拝には
参加し続けた。
セクション IV
米国政府のポリシー
米国の大使館員及び領事館員は、信教の自由と寛容な対応について、ナイジェリア政府指
導者、宗教団体や市民社会のリーダー達、伝統的指導者などと協議し、その重要性を訴え
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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た。駐ナイジェリア大使はナイジェリアを訪問する国務省政治担当国務次官(Under
Secretary of State for Political Affairs)及びアフリカ担当次官補(Assistant Secretary of
State for African Affairs)を含む米国派遣団のために、政府職員との会見を手配し、その
会見に出席した。こうした米国職員は、外務省(Ministry of Foreign Affairs)や国家安全
保障補佐官室(Office of the National Security Advisor)といったナイジェリア政府部門の
職員に宗派間の暴力へ対処するよう促すと共に、暴力の加担者に対して法的措置を適時に
講じるよう求めた。ナイジェリアを訪問したその他10人を超える米国政府職員は、ナイジ
ェリアキリスト教徒教会(Christian Association of Nigeria)及びイスラム問題全国最高評
議会(National Supreme Council for Islamic Affairs)を含む市民社会団体や宗教的指導者
と面談し、その関心事項に耳を傾け、公的な指示を表明した。ケリー国務長官がナイジェ
リアの外務大臣との会見で表明したように、オバマ大統領はナイジェリアのジョナサン大
統領との会見で、ボコ・ハラム(Boko Haram)を打倒するナイジェリアの取組みに対して
米国の支援を表明すると共に、そうした取組みを成功させるためには人権を尊重する包括
的なアプローチが重要であることを強調した。ナイジェリア政府職員は、宗教的自由を支
持すると返答し、米国にボコ・ハラムとの戦闘でナイジェリアを支援するよう求めた。
2013 年 8 月、ラゴス(Lagos)米国総領事館は宗教多元主義を推進するための異教徒間イ
フター(iftar)
(毎日の断食明けに最初に食べる夕食)を主催した。各ゲスト・スピーカー
は、イスラム教の基本的な寛容性や平和的性格を強調すると共に、宗教的暴力を非難した。
ラゴス(Lagos)米国総領事館の総領事は、2013 年を通じて複数の機会に、成長を遂げて
いるペンテコスタ派キリスト教徒団体、その他のキリスト教指導者及び影響力の大きいイ
スラム教聖職者と、宗教的寛容及び異教徒間の関係構築について協議した。大使館職員は、
25 人の大使館職員ボランティアがイフターで貧しい若者やイスラム教徒に食事を提供した
2013 年 8 月のイベントで、宗教的寛容及び異なる信仰を持つナイジェリア人の間の強固な
絆に対する共通のコミットメントに言及した。
異教徒間の各組織がコミュニティの仲介能力を高め、強化するのを支援すると共に、北部
及び中部の6州における異教徒間対話をサポートするプログラムの推進に関して、USAID
は、カドゥナ(Kaduna)州異教徒間調停センター(Interfaith Mediation Center)との協
力を継続した。
米国大使館の代表者たちは、ボコ・ハラムの暴力によって強制追放させられた人々と話し
合いの場を持ち、また、プラトー(Plateau)州政府が主催する「宗教社会の暴力に関する
会議」で発言し、さらに、アブジャ(Abuja)市で開催された複数の会議や研究発表の場で、
宗教的、伝統的及び学術的指導者たちと宗教的緊張の緩和努力について議論することによ
って、異教徒間対話を支援した。
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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米国大使館と総領事館は宗教の自由に関する情報を定期的にジャーナリスト、学者、企業
家、市民組織、教師、学生、政府職員、軍隊及び伝統的指導者に広めた。
日本語訳は,法務省入国管理局による仮訳である。
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