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4 取組成果の発信と評価 4 取組成果の発信と評価
4 取組成果の発信と評価
4
取組成果の発信と評価
今年度は、3 月 4 日に成果報告シンポジウムを開催し、学内外に対して取組成果を発信し
た。また、他大学での講演やシンポジウムにおいても、教育 GP の取組とその成果を報告し
た。取組に対する評価については、8 月に第 3 回、3 月に第 4 回の GP 企画評価委員会を実
施した。
4-1
成果報告シンポジウム
2011 年 3 月 4 日、秋葉原 UDX シアターにおいて、筑波大学教育 GP 成果報告シンポジウ
ム「筑波スタンダードに基づく教養教育の再構築」を開催した。このシンポジウムは、教
養教育カリキュラムの改革や大人数授業へのアクティブ・ラーニング導入などによる教養
教育プログラムの開発・実践、PFF プログラムの構築、及び「筑波大学 FD」の展開といっ
た、これまで教育 GP で推進してきた取組の成果を報告するとともに、今後の大学教育改革
への展望を共有することを目的として実施したものである。
成果報告シンポジウムでは、教育 GP の成果として取組総括報告を踏まえて、レポート採
点と「現代人のための科学」に関する参加型の実習を行った後、教育 GP において連携を進
めてきたカリフォルニア大学バークレー校と北海道大学における取組について報告した。
さらに、大学教育改革への展望と題して、北原和夫氏(国際基督教大学教授、日本学術会
議「大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会」委員長)、高藪裕三氏(社団法人日本プ
ロジェクト産業協議会(JAPIC)専務理事)、及び藤原章夫氏(文部科学省大学振興課長)
による講演を行った。
参加者は、国公私立の教職員を中心に、企業や非営利団体の関係者など合計約 130 名を
数え、本学の教育 GP に対する学外からの関心の高さを示すシンポジウムであった。以下に
シンポジウムの概要と各講演の報告資料を紹介する。
― 113 ―
成果報告シンポジウム概要
日
時
2011 年 3 月 4 日(金) 13:00~17:30
場
所
秋葉原 UDX シアター
プログラム
13:00~13:10 開会のあいさつ
清水 一彦(教育担当副学長)
13:10~15:10 筑波スタンダードと教養教育の再構築
◆ 取組総括報告
石田 東生(教育企画室長)
◆ アクティブラーニング実習
小笠原 正明(特任教授)
● 大型クラスのレポート採点
加藤 克紀(人間総合科学研究科准教授)
● マイクロティーチング「現代人のための科学」
中野 賢太郎(生命環境科学研究科講師)
15:10~15:30 休憩
15:30~16:15 他大学との連携
◆ カリフォルニア大学バークレー校からのメッセージ
宮本 陽一郎(人文社会科学研究科教授)
◆ 北海道大学の PFF プログラム
―カリフォルニア大学バークレー校・筑波大学との協働から―
安藤 厚(北海道大学名誉教授)
16:15~17:25 大学教育改革への展望
◆ 大学教育の質保証における教養教育の意義
北原 和夫(国際基督教大学教授)
◆ 産業界からみたグローバル人材育成への期待
高藪 裕三(社団法人日本プロジェクト産業協
議会(JAPIC)専務理事)
◆ これからの大学に求められる教養教育について
藤原 章夫(文部科学省大学振興課長)
17:25~17:30 閉会のあいさつ
小笠原 正明(特任教授)
― 114 ―
報告の概要
筑波大学教育GP成果報告シンポジウム
「筑波スタンダードに基づく教養教育の再構築」
筑波スタンダードと教養教育の再構築
成果と課題
取組総括報告
•
•
•
•
2011.3.4
筑波大学 教育企画室長
石 田 東 生
申請時のプロジェクトのフレーム
教育改革の方法・アプローチ
筑波大学の教養教育改革の方向性
試行・成果と課題
1
2
申請時のGPプロジェクトのフレーム(2008.8)
教育改革の方法・アプローチ
���������プロ��ムの�����
��������������フ�の��
�������の��の����
�����の��
3
4
教育改革の方法・アプローチ 1
教育改革の方法・アプローチ 2
筑波スタンダードの公表と活用
筑波大学FD
建学の理念を踏まえて、筑波大学における教育の目標と
その達成方法及び教育内容の改善方策を含む枠組みを
明らかにし、本学の教育宣言として広く社会に公表します
特長
○ 広義のFD: 教育改革・向上を目指す
○ PDCA(Plan-Do-See)サイクルの明示
○ データ主義
常に立ち返るべき原点
3つのスタンダード
– 学群・学類スタンダード(2008.3)
– 教養教育スタンダード(2011.3予定)
– 大学院スタンダード(暫定版2011.3予定)
5
― 115 ―
6
教育改革の方法・アプローチ 3
新しい教育方法 ~アクティブ・ラーニング~
• アクティブ・ラーニング
「講義を聞くだけでなく、授業に積極的に参加して、調査・実験・
議論し、考える。」
筑波大学の教養教育改革
の方向性
• そのために、
– クラスへの参画
• ディスカッション、クリッカー
– Blended E-Learning(Moodle)
• クラス外学習の環境整備
– TA/TFの活用ーー学生の教育参画
• 学生へのキャリア・経済支援
• 教員への負担増を伴わない教育の質向上
7
8
教養教育の理念と目標
筑波スタンダードの記述
学士課程の教育目標
人間としての可能性を知の拠点つくばで拓く
• 筑波スタンダードを教養教育に具体的に展開
「教養教育は、国際化や科学技術の進展など激しい変化に対
応できる統合された知の基盤を与える」
• 本質を究める確かな基礎力と柔軟な思考に裏打ち
された創造性を養う
• 教養教育の4つの目標
• 国際的な活躍の礎となる豊かな教養とコミュニケー
ション力を育む
– 基盤教育: 専門教育を支える幅広い基盤の構築
– アカデミック・リテラシー: 専門人・社会人としての高度なコミュニケーション
• 芸術やスポーツに親しみ、優れた文化的営みに感
動する力を養う
能力の育成
– ヒューマニティ:
養
• 自然と人間を慈しみ、積極的に社会に貢献する態
度を育む
– キャリア:
• 生涯を通して学び、自律的に自己を成長させ続ける
力を養う
専門に偏ることのない豊かな人間性と高い倫理の涵
社会に応える目的意識の形成
• これをさらに教養教育スタンダードに発展
9
10
持続的展開のための組織整備
試行・成果と課題
持続的展開のための組織整備 教養教育機構
筑波大学FDの実践
先導的教育プログラムの開発と実践
TA制度の改革とPFP アクティブラーニングとTA/TF
11
― 116 ―
司令塔としての教養教育機構
6つの共通科目に運営部会
研修・環境整備のための連携
(機構長:教育担当副学長)
eラーニング、FD委員会、教育企画室12
筑波大学の科目構成とカリキュラム編成の特長
筑波大学FDの概要
履修の方法
科目の性格
広義のFD
狭義のFD + SD + カリキュラム改良 +教育目標の見直し + ・・・・
専門的科目
(専門科目・専門基礎科目)
×
必修・選択・自由
教育の向上・改革を目指す日常的努力
データに基づくPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルの
組み込み
教養的科目
(共通科目・関連科目)
×
必修・選択・自由
入力
•
•
•
•
•
学生の興味と関心に応じて、
幅広い学びが達成できる
仕組みとなっているが、
履修登録データ
成績評価データ
学生による授業評価
学生の学習に対する自己診断(Learning Portfolio)
13
ステークホールダーへの取材(卒業生、父母、企業、教員、学生・・・)
実態は・・・?
14
��大学��の�
筑波大学FDの例
卒業生の教養�科�の��修��合(平成19年度卒業学生)
総合科目の履修の偏り
心理学類 開設科目 (1科目 338人)
18
16
(%)
14
50
人文系学類(人間学群)/
理工系学類(理工学群)開設科目の
総合科目履修状況
40
12
10
8
6
4
2
芸術 専 門学群
体育 専 門学群
医療 科学類
医学 類
看護学類
情 報 メ デ ィア 創 成 学 類
知 識 情 報 ・図 書 館 学 類
情報 科学 類
工 学 シ ステ ム学 類
社会 工学類
応用 理工学類
化学 類
物理学類
地球学類
生物 資源学類
生物 学類
10
数学 類
障害科学類
心理学類
国際総合学類
教育学類
比較 文化学類
人文学類
20
0
日 本 語 ・日 本 文 化 学 類
人文系学類
人間学群からの履修は禁止
多くの学類からの履修
社会学類
30
化学類 開設科目 (1科目 165人)
理工系学類
理工学群からの履修が多い
化学類が最大グループ
0
大網化以前
東京大学
30
25
20
15
10
学�は�������科目の�履修
5
医療科学類
芸術専門学群
医学類
体育専門学群
知 識 情 報 ・図 書 館 学 類
15
看護学 類
社会工 学類
応用理工学類
情 報 メデ ィ ア 創 成 学 類
情報科学類
工 学 シ ス テ ム学 類
生物資源学類
化学類
生物学 類
数学類
物理学類
障害科学類
理工学群
地球学 類
社会学 類
教育学類
心理学類
日 本 語 ・日 本 文 化 学 類
国際総 合学類
比較文 化学類
0
人文学 類
教養と専門の良いバランス
教養教育の強化・拡充
履修指導の強化
図書館情報専門学群
芸術専門学 群
看護 ・医療科
工学 シ ステ ム
工学基礎
情報
国際総合
社会工
生物資源
生物
人間
日本語 ・日本文化
比較文化
自然
社会
人文
体育専門学 群
第三学群
医学専門学群
第二学群
第一学群
35
16
先導的教育プログラムの開発と実践
総合科目改革の紹介
現代人のための科学、現代を読もう、筑波大学特別講義
• 総合科目
– 総合科目Ⅰ群の新設
• フレッシュマンセミナー(必修)に加えて、
右の初年次導入科目を配置
– 総合科目Ⅱの履修方法の改定
• 幅広い学びの保証のために、
開設科目をA・B・Cの3グループ
に分類し、Aからの2単位、Bか
らの2単位を含む6単位必修
フレッシュマン・セミナー 必修
•筑波大学特別講義ー大学と学問
•卒業生によるオムニバス講座
•キャリアデザインⅠー未来の自分
•キャリアデザインⅡー学問と自分
•セルフ・ヘルス・ケア
•世界のTSUKUBAで学ぶ
•仕事と生活ー男女共同参画
•共生キャンパスとボランティア
•みんなで創ろう、つくばアクションプロジェクト
•知の探検法
•筑波大学と加納治五郎のレガシー
•JAPIC連携講義ー国家経営と経済戦略、成長戦略
とグローバル人材、グローバル・プロジェクトへの挑戦
挑戦:アクティブラーニングと大型授業の成績評価
アクティブラーニング:講義を聞くだけでなく、
授業に積極的に参加して、調査・実験・議論し、考える。
これまでの思いこみ:少人数授業により追求
学群開設の総科目数:6000以上 → 教員への負担
新しい流れ:大型授業であっても、工夫とインフラ整備により可能
– コア科目の開発
• 現代人のための科学
• 他にも企画中
成績評価:レポート採点の技術
採点基準の作成とTAによる採点補助
A:物質、数理、生命、環境に関わる総合科目
B:精神、文化、社会、歴史の関わる総合科目
C:上記二つの科目群にまたがる総合科目
17
― 117 ―
18
筑波大学(教育GP)での試み
内容の特色
新しい総合科目:コモンコア
現代人のための科学
物理・地球科学・化学・生物学を網羅
現代を生きるための
科学技術リテラシーの涵養
文系学生を主対象
わかりやすく
科学の醍醐味を
「知識」と「スキル」に加えて、
「姿勢・態度」の育成
アクティブ・ラーニング
証拠に基づいて議論する力
:ディスカッション、アクティブラーニング
TAのリードによるディスカッション
クリッカーとmoodleの活用
科学的知識の使用能力
広い範囲の科学の概念や構造の理解
後で体験して
いただきます。
月曜 2時限
1D201
文系だと思っている学生に!!
19
20
筑波大学(教育GP)での試み
筑波大学(教育GP)での試み
筑波大学特別講義
産業界との連携講義
大学と学問
グローバル時代の
トップランナー
多彩な分野の第一線で活躍する筑波大学
ゆかりの研究者が、
世界に挑む産業界・官界トップリーダーによる
連続リレー講義
学問・研究・人生について
JAPICとの連携により産業界・官界より
多数(49名)の講師を招聘
体験を踏まえて語る
総合科目A 1単位
毎週水曜日 6時限
大学会館講堂
1学期 日本の課題と戦略
2学期 次世代を担うグローバル人材
3学期 グローバルプロジェクトで日本が
目指すもの
レポートの提出と
厳格な評価
TAが補助
JAPIC (日本プロジェクト産業協議会)
会長:三村明夫氏(新日鐵会長、中教審会長)
産業界との連携による新たな講義の形を目指す
21
TA制度の改革とPFP
プログラム開発、成績評価、発信方法
22
TAによる採点補助の可能性と試行
• 筑波大学のTA制度
– 1987 英語教育の“教育補助者”の採用(日本の国立大学初)
– 1992 国立大学特別会計におけるTA経費の予算化
– 2006 TAの取り扱いに関する学長裁定
• 状況と課題
– 筑波大学特別講義の受講生は500人超
– 教員(学長・副学長、客員教員)の負担は増やせない
• 予算化から学長裁定までの15年の空白期間
• 実験・実習・演習の教育補助のみ
• 採点補助や教育プログラム開発補助は想定せず
– 大型授業におけるレポートによる成績評価の厳格化
– 実は、統一的なレポートの評価基準は存在しない
• 制度の実態
–
–
–
–
専門科目中心
経済支援が前面に出すぎている:研究室教育の報酬?
訓練・研修プログラムが未確立
業務内容に差が大きい(単純業務から高度な業務まで)
– TAの力を借りたいが、限度がある。どこまで?
• アクティブラーニングを支えるインフラの一つとして重要
• 筑波大学特別講義における試行
– 研修プログラムの開発: 採点補助、ディスカッション誘導、e-ラーニング
– これがキャリア支援としてのPFP(Preparing Future
Professors/Professionals)の一部に
– レポートの採点基準の明確化と学生・TAへの徹底
• TA研修会の実施
– 研修プログラムの開発とTAガイドブックへの反映
– 教員の意識改革 FD研修会との合同実施
• 結果は?
23
― 118 ―
後で実習していただきます。
24
TA��������要
• ��
2010.4.6
��の���ッ��ン��������
10:00~16:00
◇ アクティブラーニングとは?
◇ アクティブラーニングのためのツールと工夫
・クリッカー
・Moodle (CMS)
• ��
・TAの役割と任務の理解
・TAに必要なスキルの習得 (選択)
A) 新しい機器の使用(クリッカー、Moodle)
B) レポート採点方法
C) 議論のファシリテーション
• ����
・103名 大学院生94名
教職員
9名
Q. クリッカー�������た?
は�
25
30% (�����10%, 無 20%)
��� 70%
�科�A:�し�����とマイクロティーチング
分��B�
26
レポートの採点
• 筑波大学特別講義(500人以上受講)において開発
• 「現代人の科学」で導入した TA業務のデモと体験
– 4回のレポート提出により成績評価
– 多忙な講師は採点しない
– 成績評価の公正性と厳格性
☆ クリッカーを使用するためのPPTスライドづくり
☆ Moodle にできること
☆ マイクロティーチング (30mins)
•
Grading rubrics:
– 担当教員とTAで議論しながら構築
– 採点の視点--分量、誤字脱字、日本語の質、正しいまとめ、自己の感
想
– 重要性と使い方
27
�科�C:議論のファシリテーション
FD研修会とTA研修会の同時実施
• TA(現代を読む)の参加と活躍
• 先進例の紹介
• 2010.10.29に実施
• 参加者 TA志望者 70名 教員 80名
• 目的 TA研修を教員が参観し、TAの業務内
容と活用方法を知る
• プログラム
– 総合科目「現代を読む」
– UCバークリーの紹介
• グループ議論
– クラスにおける議論の価値と効用は?
•
28
TAによる先進例の紹介
議論のファシリテーション技術
– 講義:TAの役割・任務
– 参加型実習:レポート採点補助、ディスカッション
– 教員は、大学院生が参加する実習を一部観察、
一部には参加
TAによる議論のリード
29
― 119 ―
30
最後に、これまでの活動の成果と課題
• 原点としての筑波スタンダード
–
–
–
–
産物:筑波大学FD、教養教育の理念と目標
教育改革意識の徐徐ではるが着実な浸透
学群学類スタンダードのさらなる活用と改訂
教養教育スタンダード、大学院スタンダード
ご静聴、ありがとうございました。
• 教育GPによる先導的実践とFDを通じた共有化
質問、コメントは大歓迎です。
– 筑波大学FDによる教養教育改革の実践と共有化
– コモンコア科目構築とその中での実験的試み(TA,レポート採点、elearning、アクティブラーニング、・・・)
– 総合科目再編成の初動
– TA研修プログラム(TA雇用とTAからのフィードバック)
– 先導的実践の拡大と継続
– 教職員へのさらなる浸透と巻き込み
– 組織整備(PFP,・・・)と予算確保(TA/TF,プログラム開発と発信、・・)
31
― 120 ―
連絡先 : [email protected]
32
UDXシアター(秋葉原)
2011.3.4
GPプロジェクトの工程表
〈先導的授業の開発〉〈インフラ整備〉 〈調査・研究〉 〈発信・評価〉〈関連する事項〉
�教�������シン�����
2008-
履修科目分析
�筑波�タン�ー�����教�教������
現代人のための科学
海外調査
企画評価委
現代を読もう
2009-
アクティブラーニング実習
国際WS・
シンポ
大学院授業
総合科目の検討
履修科目分析
企画評価委
海外調査
体育・芸術
2010-
筑波大学特任教授
北海道大学名誉教授
(最終成果)
次世代型授業
実
PFFプログラム
報
筑波大FD
告
筑波大
フォーラム
総合科目の再編成
書
2
・授業コンテンツのレベルは適切か?
・知識構築のレベルは適切か?
・図書検索などの資料マネジメントができるか?
● 講義など一方的な授業と一線を画する教育法一般
●「学生が学習環境に入り込み、自分自身で学習の責任
を負う」形の学習形態
典型的には:
コンパクトな講義 → 情報の収集
→グループ討論
→プレゼンテーションとフロア討論
→レポート作成
2)情意的側面
・快適で、安心で、面白いか?
・自由に、多様に、はっきりと発言できるか?
・グループが活発に柔軟に機能しているか?
3)社会的側面
・孤立していないか、互いに認識し、尊重しているか?
・互いに理解できるか、独立しているか、助け合えるか?
・互いに良い影響を与え、貢献し、グループ意識を持ち得るか?
3
4
TA/TF制度の新しい展開
必要な要素
1)コンテンツと学習戦略
1)人文社会科学研究科で「職業としての大学教育」を
大学院共通科目の「教育・研究指導Ⅲ」として開講
(2008年より)
・“教育特権” からリーダーシップによるコンテンツ構築へ
・授業の組織化、役割分担
2)学習環境
・クリッカーおよびMoodleなどの学習マネジメントシステム
・図書館およびグループ討論ができる空間
3)相互作用(双方向性)
4)参加
5)評価
企画評価委
1)認知的側面
1980年代から始まった高等教育の流れ
→ 初等、中等教育にも普及
・討論の組織化
施
TAの制度化
アクティブラーニングが実現する条件
授業のアクティブラーニング化
具体例:スイスの「ダボス会議」
共通教育FD
TAハンド
ブック
教科書
小笠原 正明
TA研修会
✔2)「質の高い大学教育推進プログラム」として2008年に
採択された『筑波スタンダードに基づく教養教育
の再構築』において、TFの訓練プログラム構築や
TF認定の仕組みづくりが始まる
3)教育企画室にTA /TF研修WGを設置( 2010年)
}
←TAの組織化
・レポート評価の基礎データ
教育の組織化=教育支援
教養教育を梃子にしたTA/TF研修の標準化
5
6
― 121 ―
TAおよびTFの業務内容(2008年大学院教育会議で承認)
筑波大学のTA研修会(全学レベル)
2009年
GPプロジェクトによる予備的研修会
全4回(クリッカー研修、討論法、コミュニケー
ションスキル等)
2010年4月
春の研修会(1日コース):院生
TAの心得、職務倫理、
Moodle実習、
マイクロティーチング実習
レポート評価演習
2010年10月 秋の研修会(半日コース):院生・教員
今日の実習
7
授業におけるTAの役割
“フィッシュボール”形式
マイクロティーチング実習
8
レポート評価演習
実践例:筑波大学の「現代人のための科学」
授業支援
1) 環境、エネルギー等の社会的な問題について自分自身
で判断できる素養を身につける
2) 事実の寄せ集めではなく、科学的手続きに力点
3) 定量的に探ろうとするときの実験と数学の有効性
4) 物理学、化学、地学、生物分野における主な発見の歴史
と最近の進歩
5) 普遍的な法則が物質世界や日常生活にいかに働いてい
るか?
6) 現実世界の問題は、科学的な原理のみならずエネル
ギー需要、危機認識、人口問題など他の要素で決まる
1)教室の環境(照明、音響、室温、誘導等)
2)クリッカー・パワーポイントの準備、実施、後始末
3)資料の準備、配布
4)討論の補助(毎回20分、一回はフルに)
5)レポートの整理・評価の下調べ
授業のモニター
6)授業の難易、学生の反応、わかりやすい構成
7)音声、授業の速さ、演示の効果
プラニングへの参加
8)改良点の指摘
9)次年度へ向けての提案
10)TA研修プログラムの評価・改良
アクティブラーニングの主要なプレーヤー
授業の組織化→20人の教員、4人の職員が参加
10
「現代人のための科学」のコンテンツの構造
グループ討論の指導
9
討論に持ち込むためには手順がある
(空間的広がり・多様性)
1)テーマを適切に設定する
2)討論できる雰囲気を作る
・何を言っても安全だと思う雰囲気
(否定的表現の抑制)
・議論にはメリットがあると感じる
・議論は面白いと感じる
・議論によってコミュニティー意識を持てる
3)一応まとめさせる
4)まとめを報告させる、あるいは書かせる
5)やがて本格的な討論が始まる
物質・生命の多様性
原理・法則
生物
��
宇宙
生物の進化
(時間軸)
地球の進化
宇宙の進化
履修歴を問わない”Science for All”の授業
到達目標は〈フロアでの議論〉
11
― 122 ―
12
良い討論のために
アクティブラーニングが目指すもの
1)事前準備:学生が事前に収集する資料の内容を把握し
ておくこと
2)討論のゴールを明確にしておくこと
学生に考えさせたい事柄は何か?
答えさせたい質問は何か?
向き合わせたい問題は何か?
共通の理念
●反対の立場の意見にも耳を傾け、質問をして、根拠につ
いて議論することにより、自分とは違うものの見方も尊重
できるようにする
●大学はさまざまな問題に通じた知的市民を創出するため
の施設
3)途中で否定的な言動をとらないこと
●教育は「民主主義を支える基盤となる力に活力を与える
4)締めくくりを明快に
もの」← “一般教育運動” 以来の伝統
学生中心の授業:「学生への丸投げ」ではない!
13
教員のリーダーシップと、学習へのより深い関与
まとめに代えて
教育支援の主役:TA/TF
●学習戦略の世界的な転換期
●ゴールを明確にしてそれに到達する筋道を学生と教員と
TA/TFがともに考える
●アクティブラーニング化とは教育の組織化
●〈研究室神話〉からの脱却
→ コースワークの実質化(研究室教育化)
●国際的レベルの大学教育へ
転換の鍵はTA/TFの組織化
15
― 123 ―
「いかに教えるか」ではなく「なぜ教えるか」?
14
筑波大学教育GP成果報告シンポジウム 2011.3.4
「筑波大学特別講義」の特殊性
• 初年次教育の中心となる授業科目として企画
• 典型的なオムニバス授業
大型クラスのレポート採点
– 講師1名1回の講義(75分)を10回
– 話題も毎回異なる
—TA・TFによる採点支援の導入—
• 講義ではなく,「講演」になりがち
• 授業として厳密な成績評価
– 4回のレポート提出
「筑波大学特別講義:大学と学問」
オーガナイザー教員
加藤 克紀
• 受講者数の多さ
– 22年度は470名超
– 将来的には,1,000名近い受講生も想定
• 講師は客員教授(非常勤)が多く,本務が多忙
• レポート採点の依頼は困難
1
2
PFFとの関連
TF・TAによる採点支援導入の趣旨
• 日本の大学では,教員になるための訓練を受け
る機会は少ない
• PFF(Preparing Future Faculty)
• 大学院における教育活動の組織的訓練の一環
• TF(Teaching Fellow)やTA(Teaching Assistant)
による採点支援の可能性
• 教育GPの一環として試験的に実施
– 成績評価はTAの業務として認められていない
– 一定の基準に基づく採点の訓練と手順の標準化
– 採点支援として位置づけ,オーガナイザー教員が統括
– プレゼンテーション
– 授業の運営
– 学生指導 ・・・・
• 類似の大型授業における組織的サポートに対する
寄与
• TF・TA研修会におけるレポート採点の実習
– 採点と厳密な成績評価の実施
– 必要なノウハウの提供
– 採点基準の整備
– 成績のアカウンタビリティ
3
4
レポート作成の条件
レポート採点支援成功の条件
• 手引き「レポート作成について」を配布
• 体裁だけではなく,内容にも条件を設ける
• 受講者側(学生)の条件
– レポートの体裁,内容,評価基準などの明示
– 大学におけるレポートの形式・内容の周知
– 講義の概要
– 興味をもった内容
– その内容に関する自分の意見
– 関連して調べたことや自分の知識
• 「特別講義」の受講生は1年生が多く,開講学期が1学
期であるため,レポート作成については多くの学生が
不慣れ
• 採点者側(TF・TA)の条件
– 随時参照可能な操作的(マニュアル的)評価基準
– 個人差を相殺する採点方法の工夫
– 講義内容の十分な理解
– 試行と一定の訓練
5
• これら4点が,バランスよく,すべて含まれて
いること
• 以上を①段落に分け,②1,000字程度にまと
める.③誤字・脱字がなく,日本語として読み
やすい表現
6
― 124 ―
レポート採点の条件
今後の課題
• 採点のポイントを明示
• 「筑波大学特別講義」における4名のTF・TA
による採点支援は比較的うまく機能した
• 授業運営・成績管理手続きのパッケージ化が
必要
– 講義の概要(2点)
– 講義の中で特に興味を感じた点(2点)
– それに関する自分の見解や疑問など(2点)
– それに関連して調べたことなど(2点)
– 総合的評価(2点)
– レポート提出,レポート取りまとめ,採点者へのレ
ポート配付,採点,結果の取りまとめ,成績報告
• 試行と訓練
• 大型の講義科目と連携したレポート作成実習
(小規模の演習科目)などの工夫 → 大きな
教育効果
– 採点手続きを採点者間で共有
• 採点者のローテーション
– 採点者(4名)の個人差を相殺
7
― 125 ―
8
生物とはどのようなものか?
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�生物の基���:細胞の���とはた���
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① 生物とは何だろう?
② 生命の基盤:細胞とその活動
③ どのようにして生命は誕生したか?
1
2
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ヒント)
冷蔵庫を1時間動かすのに必要なカロリーは、約 40 kcal
(1 kcal=1.163 ワット時、そして 200 L 程度の冷蔵庫の電力消費量 45 ワット時として算出)
3
4
タンパク質
(
アミノ酸)
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6
― 126 ―
エネルギー
をつくる
5
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電子伝達系
血液
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肝臓
(栄養分の一時的な
貯蔵)
�ル�ン酸
炭水化物
(
ブドウ糖)
胃・腸
体をつくる
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Figure 14-4 Essential Cell Biology (© Garland Science 2010)
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7
8
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CO2
Essential Cell Biology (© Garland Science 2010)
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2 ATP
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(CO2)
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↓
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↓
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↓
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CO2
↓
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水 H2O
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9
NADH + FADH2
↓
28 ATP
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水 H2O
10
�� O2
酵素による酸化還元反応を利用した
組織埋込み型小型生体電池の開発
䐠⏕࿨䛾ᇶ┙䠖⣽⬊䛸䛭䛾άື
11
12
Cinquin P, Gondran C, Giroud F, Mazabrard S, Pellissier A, et al. (2010) A Glucose BioFuel Cell Implanted in Rats. PLoS ONE 5(5): e10476. doi:10.1371/journal.pone.0010476
― 127 ―
⏕࿨䛾タィᅗ䛂㻰㻺㻭䛃 䠖༙ಖᏑⓗ」〇䛸✺↛ኚ␗
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DNA
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13
14
Molecular Biology of the Cell (© Garland Science 2008)
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15
16
Molecular Biology of the Cell (© Garland Science 2008)
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18
Essential Cell Biology (© Garland Science 2010)
― 128 ―
クリッカー2
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19
20
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40-45億年前?
単純な分子から生命反応を担う有機化合物がつくられた
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23
24
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― 129 ―
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����の色素体
色素体
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Figure 1-20 Essential Cell Biology (© Garland Science 2010)
25
26
Figure 14-24 Essential Cell Biology (© Garland Science 2010)
色素体に含まれる DNA の塩基配列は、両者がバクテリア起源であることを示唆する
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����菌
菌
植物
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�物
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27
28
Figure 1-29 Essential Cell Biology (© Garland Science 2010)
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⤖ㄽ
⏕≀䛿ᆅ⌫⎔ቃ䛾≀㉁ᚠ⎔䛾୍㒊䛷䛒䜚䚸
考えてみましょう
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㑇ఏ᝟ሗ䜢ఏ᧛䞉᭦᪂䛧䛺䛜䜙⎔ቃ䛻㐺ᛂ䛧
Ȇ‫ڠا‬໤ৗͬऺၳ̱͂̀૽ࢥ୆ྵఘ̩̭͉ͬ̾ͥ͂‫خ‬ෝ̥ȉ
䛶ቑṪ䞉㐍໬䛩䜛
Ȇ૽႒̦૽ࢥ୆ྵ͈ࡄ‫ͅݪ‬ಯ୽̳ͥ‫ث‬౵̱͂̀Ȃ
͈̠̭̦̓̈́͂͢ࣉ̢̺̠̥ͣͦͥͧȉ
䛂䜅䛳䜅䛳䚸䛷䛝䜛䛛䛺䠛䛃
CELL produced by Dr.30
Gello
29
(䛂䝗䝷䝂䞁䝪䞊䝹䛃㫽ᒣ᫂స䜘䜚)
― 130 ―
人工合成生物への挑戦
Published Online May 20, 2010Science DOI: 10.1126/science.1190719
Creation of a Bacterial Cell Controlled by a Chemically Synthesized Genome
AquaBounty TECHNOLOGIES による
成長ホルモン遺伝子を組換えたサケ
Daniel G. Gibson,1 John I. Glass,1 Carole Lartigue,1 Vladimir N. Noskov,1 Ray-Yuan Chuang,1 Mikkel
A. Algire,1 Gwynedd A. Benders,2 Michael G. Montague,1 Li Ma,1 Monzia M. Moodie,1 Chuck
Merryman,1 Sanjay Vashee,1 Radha Krishnakumar,1 Nacyra Assad-Garcia,1 Cynthia AndrewsPfannkoch,1 Evgeniya A. Denisova,1 Lei Young,1 Zhi-Qing Qi,1 Thomas H. Segall-Shapiro,1
Christopher H. Calvey,1 Prashanth P. Parmar,1 Clyde A. Hutchison, III,2 Hamilton O. Smith,2 J. Craig
Venter1,2,*
ES 細胞と iPS 細胞
�e report the design, synthesis, and assembly of the 1.08-Mbp Mycoplasma
mycoides JCVI-syn1.0 genome starting from digitized genome se�uence
information and its transplantation into a Mycoplasma capricolum recipient cell
to create new Mycoplasma mycoides cells that are controlled only by the
synthetic chromosome. The only DNA in the cells is the designed synthetic
DNA se�uence, including �watermark� se�uences and other designed gene
deletions and polymorphisms, and mutations ac�uired during the building
process. The new cells have e�pected phenotypic properties and are capable of
continuous self-replication.
International Genetically Engineered Machine competition
������
����た�…
1 The J. Craig Venter Institute, 9704 Medical Center Drive, Rockville, MD 20850, USA.2 The J. Craig
Venter Institute, 10355 Science Center Drive, San Diego, CA 92121, USA.
32
* To whom correspondence should be addressed. E-mail: [email protected]
31
Figure 20-41 Essential Cell Biology (© Garland Science 2010)
ΪΠ ĴııġŎţġŷŴ ζͼ΋ίρΒζ IJġŎţ
33
― 131 ―
カリフォルニア大学
バークレー校からの
筑波大学のTA研修体制
メッセージ
¥
全学対象のTA研修会の開催
¥
2008年度より、大学院共通科目「職業としての大学教育」開設
¥
カリフォルニア大学バークレー校における視察・研修
単なる視察ではなくフィールドワークとして、バークレーのTAを中心とす
る教育文化全体を1週間にわたり体験・分析し、報告書を作成。
筑波大学大学院
人文社会科学研究科教授
¥
質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)によるTAの授業参画
¥
専攻ベースのペダゴジー・コース
総合科目「現代人のための科学」「現代を読もう」
「嘉納治五郎のレガシー」
特設自由科目「青木彰記念講座 ジャーナリズムとメディアの現在」
宮本 陽一郎
1
2
Timeline
2007 カリフォルニア大学バークレー校GSIセンターのリンダ・フォン
ヘーネ所長が来校。
2008 教育GP採択
バークレー校初訪問
大学院共通科目「職業としての大学教育」開設
2009 第1次バークーレー調査隊
コモン・コアのためのパイロット授業「現代を読もう」開設
「文学とペダゴジー」開設
国際シンポジウム<高等教育におけるプロフェッショナル・ディベ
ロップメント>を開催 フォンヘーネ所長およびソラッコ所長の
ワークショップ
2010 第2次バークレー調査隊
全学向けTA研修会の実施(2回)
総合科目「嘉納治五郎のレガシー」および「青木彰記念講座
ジャーナリズムとメディアの現在」開設
Director Linda von Hoene
2011 第3次バークレー調査隊
3
4
大学院共通科目 教育・研究指導 III
バークレー調査隊のフィールドワーク
職業としての大学教育
先進的なTA制度を視察するだけではなく、その背後にある文
2010 11 14・21・25
年
■ 11月14日(日)第1エリア 1C210
日
月
第2限 宮本 陽一郎 (文芸・言語専攻教授) TA制度を通じて何を学ぶか
キャリアを志す大学院生のために、アク
アメリカにおける大規模教養教育とティーチング・ アシスタントの役割
バス作成、教育プロジェクト作成など、
第4限 宮本 陽一郎 (文芸・言語専攻教授) 方法としてのシラバス
第5限 河内 真美 (教養教育機構研究員) ワークショップ: シラバス作成法
■ 11月21日(日) 第1エリア 1C210
第3・4限 加藤 善子 (信州大学大学講師) アクティヴ・ラーニングの理論と実践
バークレーの教育文化の仕組み全体を理解する。
こ の 授 業 は 、 将 来 の 大 学 教 員 と しての
--- TA経験者によるフォラムと質疑
第3限 小笠原 正明 (筑波大学特任教授) 化を観察する。
ティヴ・ラーニング、eラーニング、 シラ
フィールドノートをとる。視察するだけでなく取材する。
大学教員としての技法を実習するととも
に、今日の日本の大学教育が直面する諸
報告書を執筆する。
課題を論じます。 聴講も歓迎します。
第5限 新井 一郎 (eラーニング推進室長) Moodle の活用法
■ 11月25日(木) 第1エリア 2G407
第2限 宮本 陽一郎 (文芸・言語専攻教授) 教育と危機---戦後アメリカの教育改革
第3限 池田 潤 (文芸・言語専攻教授) 教育プログラムの企画と立案
第4限 小笠原 正明 (筑波大学特任教授) 教養教育の理論と現実
第5限 全体討論
フィールドワークの成果を翌年度の授業に反映させる。
■ 教室:1C210・2G407 ■ 問い合わせ 宮本 陽一郎
[email protected]
5
6
― 132 ―
第1次調査隊(2009年)
第2次調査隊(2010年)
7
8
大 人 数 講 義
第3次調査隊(2011年)
9
10
GSI のためのワークショップ
日本語学科の教授法の授業
11
12
― 133 ―
Teaching & Learning Center
まとめの討議
13
14
まとめの討議
まとめの討議
15
16
バークレー調査隊のフィールドワーク
GSI(TA) の担当する授業
GSI の担当するセクションとペアになる基幹講義
GSI と教員のミーティング
GSI のための教授法の授業(Pedagogy Course)
GSI を指導するメンター教員のためのセミナー
GSI へのインタビュー、GSI アドバイザーへのインタビュー
Teaching & Learning Center の視察
新教養科目
タビュー
Discovery Courses のディレクターへのイン
ヘーネ所長とのまとめ討議
報告書の執筆
教育費削減に抗議する全学ストライキ(3.4.2010)
17
18
― 134 ―
カリフォルニア大学
バークレー校
視察報告書
カリフォルニア大学 バークレー校 視察レポート Vol. 2
---TA制度の新たな可能性に向けて---
筑 波 大 学
日本語・日本文化学類
比較文化学類
19
20
パイロット授業をやってみよう!
1.教員の担当する講義は、まったく従来通りに行う。
2.学生のこれまで通りの受講もさまたげない。
3.しかし、学生の自発的な学習は徹底的に支援
4.アカデミック・リテラシー(討議能力、レポート執筆
能力、論文を読む能力、問題を発見する能力)を養う
総合科目
5.TA6名の活用。
Yes We Can !
6.Moodle の活用。
21
22
Reading
Contemporary
Culture
ディスカッション
コモン・コアのためのパイロット授業
総合科目
現 代 を 読 も う TAとともに作る授業
報 告 書
23
24
― 135 ―
フィールドワーク
Screening
つくば市周辺の戦争遺跡
25
26
フィールドワーク
TAの活動
つくば市周辺の戦争遺跡
1. 毎週、その週の講義に基づく約60分のディスカッション・セクションをオ
フィスアワーに開催。TAが担当。履修者は自由参加。
2. 最終週の授業は、履修者が6つのグループに分かれて、TAを中心としたディ
スカッションを行う。
3. 毎週1回、講義と関連する映画・映像資料を授業時間外に上映。TAが解
説。
4. 履修者は、通常の試験に替えてレポート提出することができる。TAがレポー
ト執筆をサポート。
5. 月曜1限の講義のあと、TAミーティングを行い、ディスカッションのトピッ
クを確定。TAによる模擬ディスカッション。
6. ディスカッション・セッションについてTAが自発的に報告書を作成。
7. フィールドワーク。茨城県の戦争遺跡。
27
28
Reading
Contemporary
Culture
A Message
from
Linda von Hoene
コモン・コアのためのパイロット授業
総合科目
The Director
of
The GSI Teaching & Resource Center
現 代 を 読 も う TAとともに作る授業
University of California
at Berkeley
報 告 書
29
30
― 136 ―
リンダ・フォン・ヘーネ所長のメッセージ
∼ 日本のTA制度の充実のために ∼
TAが授業を担当する機会をさらに増やす。ただし十分な研修と指導
を行なったうえで。
TAを指導するメンター教員の養成。そのためのセミナーの整備。
学問分野ごとの教授法の授業(Pedagogy Course)の充実。
一過性の研修会だけに終わらない、継続的な指導体制を。
31
32
カリフォルニア大学
バークレー校からの
メッセージ
筑波大学大学院
人文社会科学研究科教授
宮本 陽一郎
33
― 137 ―
筑波大学教育GP 成果報告シンポジウム
(平成23 年3 月4 日,秋葉原UDX シアター)
今日の話の概要
北海道大学のPFF プログラム

〜カリフォルニア大学バークレー校・
筑波大学との協働から〜

北大モデルバーン



北海道大学名誉教授
安藤厚
[email protected]
北大のTA研修会の歴史と現状
北大のTA研修の内容
・教育の基本,理念と目標,倫理綱領など
・TAの役割・心得
TA制度の課題(勤務時間と給与,仕事の内容)
米国のTA制度の歴史
次世代のTA研修:PFF (Preparing Future Faculty)
【参考文献】
小笠原正明他「TA実践ガイドブック」玉川大学出版部, 2006.9
北海道大学ティーチング・アシスタントマニュアル改訂第3
版,2011.3
1
北大全学教育TA研修会(2010.4.6)
全学教育TA研修会の歩み
(午前)(大講堂)
9:30 挨拶 佐伯浩総長
9:35 講演「北海道大学の全学教育について」
細川敏幸(高等教育機能開発総合センター)
10:05 講演「TAの心得」瀬名波栄潤(文学研究科)
10:35 休憩
10:45 「TA業務に関する事務処理の内容」山本透(教務課)
11:00 パネル討論「TAの可能性〜現状と理想」
司会:山田邦雅(高等教育機能開発総合センター)
院生パネラー:ウカシ・ザブロンスキ(国際広報・メディ
ア観光学院),名畑康之(文学研究科)
教員パネラー:栗原秀幸(水産科学研究院),
鈴木誠(高等教育機能開発総合センター)
12:00〜12:30 コーヒーブレーク(TA経験者との談話,自由参加)
全学教育TA研修会修了者・予算等の推移
1100
45
1000
40
35
800
30
600
25
500
20
400
15
修了者
午前参加者
対象(新任)
TAのべ人数
(非常勤コマ数)
TA予算(百万円)
300
242
165
200
100
TA予算(百万円)
修了・午前参加・新任・TAのべ人数
900
700
55
64
93
51
162
230
168
194
192
10
120
5
58
0
2
0
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
年度
TAマニュアル刊行: 2006.3, 2008.3, 2011.3
3
全学教育TA研修会(講演)
4
全学教育TA研修会(パネル討論)
5
― 138 ―
6
北大全学教育TA研修会(2010.4.6)
全学教育TA研修会(分科会)
(午後)(分科会)(基本的には13:30~16:00)
A. 一般教育演習・一般教育演習/フィールド
B. 講義
C. 論文指導
D. 情報学
E. 英語IIオンライン授業
F. 英語II以外の英語の授業
G. 初習外国語(中国語以外)
H. 中国語
I. 文系基礎科目
J. 心理学実験
K. 理系基礎科目
L. 自然科学実験
「センターニュース」83号参照
7
8
TA研修の内容
TA研修の目標
教育の基本
○TAの仕事を一種の教育インターンシップ,あるいは
将来の教員の養成(PFF:Preparing Future Faculty)のた
めのFDととらえ,
(1)大学教育の基礎,
(2)全学教育の趣旨,
(3)専門教育に還元できない基礎的な教育技術,
心構え,教育理論,
(4)担当する科目の教授法の理解とともに,
(5)TA相互の交流を目指している。
富良野
9
北大教員の教育倫理綱領
������基�����������
����
��
����
�����
(2009.6.23制定)
������

�������������
������
������
基����� ����
10
��������
������
基���
�������������
������������

��������
��������

����

Be ambitious!
Be gentleman!

北大HP→大学案内→北海道大学の基本理念と長期目標
11
― 139 ―
第1 教員は,すべての学生が「高邁なる大志」を
育み,新しい道を切り拓くことができるよう,模範
と指針を示し,自由な学風の醸成に努める。
第2 教員は,すべての学生に自律的個の確立を促
し,その人格を尊重し,敬意をもって接する。
第3 教員は,学習目標を明確に示し,つねに授業
改善に努め,学生の自主的な学習を支援する。
第4 教員は,学生に明確な成績評価基準を示し,
学習目標に即した公正な評価を行う。
第5 教員は,きめ細かな学生指導に努め,個人情
報の保護に最大限の注意を払う。
今期中期計画:教育活動全般に関する基本姿勢を明
示した教育倫理綱領を個々の教員に浸透させる。
12
シラバス
単位の実質化の取り組み
北大HP→学生生活→講義内容→シラバス検索
①厳格な成績評価(2003〜)
❶成績評価基準(授業科目ごとのガイドライン)の設定
❷成績評価基準の明示(シラバスに「到達目標」「評価の基準と方法」
を明示)
❸成績評価結果(クラス別の成績分布)の公表
北大HP→学生生活→成績評価→成績分布WEB公開システム
❹成績評価の妥当性の検討(評価の極端な片寄りの点検)
②GPA制度(2005〜)
③履修登録の上限設定(CAP制)(2006〜)
④単位の実質化(授業改善と自習促進)(2006〜)
○少ない科目に集中して取り組む
○2単位の授業科目には15週で90時間(1週で6時間)の学習が必要(授
業1.5時間なら自習4.5時間)
○シラバスに「準備学習(予習・復習)等の内容と分量」を記入
TAは,自分の担当科目のシラバスに目を通すこと






授業の目標
到達目標(goal)
授業計画
準備学習(予習・復習)等の内容と分量
成績評価の基準と方法(ガイドライン,相対評価)
テキスト・教科書・参考図書
今期中期計画:教育効果を検証しつつ,単位制度の実質化を推進する。
13
14
TAのDos & Don’ts
瀬名波 栄潤(文学研究科)
��はTeとAshi , 教員と学生のパイプ役
Dos
役割確認
学生への対応・態度
教育環境の保守管理
守秘義務
平等と公正
a. ���
科目担当教員との打合せ
教材等の作成・リハーサル
環境整備
⇒ ホウレンソウ:報告・連絡・相談
b.���
Don’ts
出欠点検
講義・演習への参加
科目担当教員との「あ・うん」の連携
役割確認
学生への対応・態度
教育環境の不徹底
スタンドプレイ
ひいきと批判
c. ���
採点・評価
オフィスアワー
科目担当教員とのレビュー
⇒ パワーハラスメント:アカデミック・セクシュアル
15
16
水産学部教員とTAの合同Work Shop(2003.9)
TA制度の課題
栗原
現在の日本のTA制度で何が問題か?
「学生実験・実習を構成する各要素に対
するTAの役割」
UCBの場合:
 勤務時間と給与
奨学金・健康保険・授業料免除(1学期$6,474.75 )のほかに
50%勤務(週20時間)契約で
GSI I : $1663.70/月(時給$20.8)(1月4週80時間として計算)
GSI IV: $1980.10/月(時給$24.75)

秀幸(水産)
学科ごとの教員とTAにわかれて、それぞれTA
の権限をグループで話し合い,意見をまとめ
る→学科毎に教員とTAで意見の分かれたとこ
ろを話し合い,認識を統一する
仕事の内容
・GSI単独:リーディングと作文,外国語,スタジオ授業
・討論クラス
・実験
・大学院授業
○:TA単独でも役割を担い,責任を持って果たす
△:教員とともに行動して補助するが,責任は教員にある
×:教員の仕事であり,補助もしない
17
― 140 ―
18
1 TAの補助なしに教員が責任を持つ
実験・実習を構成する要素
A. 課題作製、実験作製
A. 課題作製、実験作製
B.実験実習の準備・片付け(テキスト・資料、試薬器具等)
J. 最終的な科目の評価(優~不可)
C. 出欠確認
2教員の責任の下でTAは教員の作業を補助する
D. 実験実習の一部説明(講義)
B.実験実習の準備・片付け
E. デモンストレーション
(テキスト・資料、試薬器具等)
F. 実験実習中の各学生への説明・注意
C. 出欠確認
G. 学生への私語や出入りの注意
D. 実験実習の一部説明(講義)
H. 事故(ケガ、火災への対応)
E. デモンストレーション
I. 課題・レポートの点数つけ・コメント
H. 事故(ケガ、火災への対応)
J. 最終的な科目の評価(優~不可)
19
3 TAが自分の判断で責任を持って実施する
I. 課題・レポートの点数つけ・コメント
20
TAの仕事の内容
F. 実験実習中の各学生への説明・注意
北大全学教育TAアンケート調査報告書(2007.3)より
G. 学生への私語や出入りの注意
・教員/TA・分野に関係なく,イメージ
する「TAの仕事」は共通する。
→TAは教員である
・お互いによくコミュニケーションをと
り,「教員チーム」としてふるまう。
→教育はチームプレイである
採点・評価:試験,課題,検証テスト,クイズ,レポート,論文など/
レポート,宿題,課題など
21
TA制度の歴史と意義(1)
TA制度は,米国で第2次世界大戦前にはじまった
 米国のTA制度の目的
・教員の負担軽減(最大限に活用。授業から評価まで)
・学生への経済的援助(1~2万ドル/年)
・大学院生に教育経験を付与
 1980年代から変化(TA研修運動)
・父兄がTAに不安を抱きはじめる
・UCバークレーで学生組合がTAマニュアルを作成
・ダルハウジー大学(カナダ)などでTA研修開始
・UWナイキスト教授による大学院修了者に期待される
能力に関する全米(大学,公的機関,企業等)調査
・POD (Professional & Organizational Development
Network in Higher Education)

22
TA制度の歴史と意義(2)
過去10年で大きな変化
TA制度の目的が大学院生の教育へシフト
・教育の基礎を大学院生に教育する最初の機会
・1週間程度の研修の義務化
・教員として就職するための基礎知識と経験
 PFF (Preparing Future Faculty) コース
・正課の2 単位科目として教育(ティーチング)に関する教育
・大学教員になるための必須の単位へ:米国の30~40大学
が「高等教育教職資格」を与えはじめた
・北大理学院(大学院共通授業)でも2009年度から開始


23
― 141 ―
24
次世代のTA研修:北米の先進事例1
ダルハウジー大学(リン・テイラー博士)
北米の先進事例2
UCバークレー校(リンダ・フォンヘーネ博士)
GTA (Graduate Teaching Assistant) 研修プログラム
訓練(Training)から開発(Development)へ
1. TA Day(新人オリエンテーション)
2. PD (Professional Development)シリーズ
教員向けとTA向け研修を統合
昼休み討論会,
ダルハウジー大学
90分のワークショップ
3. 大学院授業科目
4. 教育・学習に関する
「修了証明書」
UCB新任GSI研修会, 2010.8.20
25
26
UCバークレー校 (1)
UCバークレー校 (2)
UCB経済学部長(1941)「バークレー校の教育において
TAがどれほど重要な役割を果たしているか,大学上
層部は認識不足だとしばしば感じています。経済学
部の大人数クラスでは,学生が討論する機会は自分
のゼミ以外まったくありませんでした。1914年以前
は,ゼミは各学部の教員が担当していました。TAを
活用するようになってから,大学の財政面で大きな
節約になっただけでなく,率直にいって,ゼミにお
ける教育の質を大いに向上させることができたと思
います。本学のTAの質は他大学の教員の質をはるか
にしのいでいると評価しています。」
カリフォルニア大学の学士課程教育に関する報告書(1989)
「カリフォルニア大学の各校において,TAに対して全学的お
よび各学部による知識および教授法に関する研修を提供す
ることを推奨する。新任TAに対して研修を義務化し,以下
のような事項を含む包括的な研修プログラムを提供すべき
である。学期開始前のオリエンテーションでは,TAの役割
や,基本的な教育技法と理念,TAに関わる大学の方針,教
員が利用できる資源などを紹介し,教員,上級TA,授業改
善専門職員などによる授業参観や学生による授業評価,あ
るいはビデオ撮影などに基づいたメンタリングと助言を行
い,その後も教育に関するセミナーやワークショップを行
い,TAが自分で学ぶことができる教材を提供すること。」
27
28
北大のPFFワークショップ
UCバークレー校 (3)
GSI (Graduate Student Instructor) 向けPFFプログラム
1. 新任GSI研修会(8月,2日間)
2. GSIワークショップ(9〜11月)
3. 優秀GSI賞
4. GSIとともに教える教員セミナー(3月,半日3日)
5. 教育の職務規範と倫理に関するオンラインコース
6. 1学期間のティーチングコース→高等教育教職資格
7. PFF夏季講座(5〜7月6週間)
ティーチング/ライティング
8. 大学訪問:大学院生が就職するかもしれない地域
内の2年制,4年制大学への訪問
(フォンヘーネ:ティーチング)
2. ティーチングの基礎
4. 授業のシラバスと学習目標の設計
7. 評価基準の作成と利用方法
8. 大人数授業の運営方法
10. 職務規定と教育倫理
13. プレゼンテーション
(ソラッコ:ライティング)
3. アカデミックライティングの基礎
5. 学会発表申し込み
6. 国際学会誌への論文投稿
9. 論文要旨執筆方法
11. 論文の推敲・校閲
14. プレゼンテーション
http://socyo.high.hokudai.ac.jp/PFF2010.pdf
29
― 142 ―
30
次世代(つぎの10年)のTA研修




おわりに
TAの単位化
TA研修・業務経験を正課の単位として認定
「情報学教育特論」(大学院共通授業)
「部局横断型特論」(水産科学院)
TAの資格化
研修と業務経験をもったより上位のTAの制度化
TA研修の構造化
全学的研修と各部局の研修の役割分担
PFF (Preparing Future Faculty) コースの拡充
大学院生の能力向上の一環として




31
― 143 ―
世界のTA制度は大きく変わった
大学教員に教育能力を要求するのは必然。教育能
力は,教員だけでなく,あらゆる職種に必要。研
究者にも教育能力が要求される
教育倫理とシラバスを前提とした教育
TAは教育力・コミュニケーション力を向上させる
チャンス
32
大学教育の分野別質保証の在り方審議の経緯
大学教育の質保証における
教養教育の意義
平成20年 5月 文部科学省から日本学術会議への審議依頼
6月 課題別委員会「大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会」の設置
9月 審議開始(第1回会合の開催)
平成21年 1月 3分科会の設置
・質保証枠組み検討分科会
・教養教育・共通教育検討分科会
・大学と職業との接続検討分科会
2~3月 英国における分野別質保証に関する実情調査
4月 学術会議総会での審議状況の報告
7~8月 各部の夏季部会での説明
10月 学術会議総会での審議状況の報告
11月 シンポジウム「大学教育の分野別質保証を考える」 (於東大安田講堂 参加者約700人)
国際基督教大学 北原和夫
日本学術会議
大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会
委員長
平成22年 4月 学術会議総会での審議状況の報告
4~5月 3認証評価機関との共催シンポジウム「これからの大学教育の質保証のあり方
(第1回 於上智大学10号館講堂 参加者約660人)
(第2回 於一橋記念講堂 参加者約330人)
(第3回 於関西大学BIGホール100 参加者約300人)
6月 文部科学省中央教育審議会大学分科会での審議状況の報告
7月 学術会議幹事会への付議・了承
8月 文部科学省に対して審議依頼に対する回答として手交
1
「学士課程教育」答申から、大学教育の
分野別質保証の在り方検討委員会へ
文科省への「回答」の三部構成
平成20年12月 中央教育審議会答申
「学士課程教育の構築に向けて」

第一部 どういう枠組みで質保証を行うのか?
→ 質保証枠組み検討分科会
分野別に教育課程編成上の参照基準を策定することを通じて
各大学の自主的な教育改善を支援
日本の学士が、いかなる能力を証明するものであるのか
(各大学が掲げる教育研究上の目的は建学の精神は総じて抽象的)
第二部 一方で教養教育・共通教育との関係をどう考えるのか?
→ 教養教育・共通教育検討分科会
→ 「学士力」 の提案
知識・理解、汎用的技能、態度・志向性、統合的な学習経験と創造的思考力
分野の壁を越えた協働を可能にする市民性の涵養
※ 「学士力」が求める普遍的な能力を、分野の教育を通じてどう培うのか?

2
学士課程、あるいは各分野の教育における最低限の共通性があるべき ではない
かという課題は必ずしも重視されなかった
第三部 教育の質の保証を図る努力をしても、現実の「就活」
においては大学と職業とが接続していない (特に文系)
→ 大学と職業との接続検討分科会
専門的な知識・技能が尊重される社会の構築
※ それぞれの分野が共有すべき固有の特性を適切に踏まえた教育とは?
21世紀の「協働する知性」を涵養する学士課程教育の質保証
→ 日本学術会議に対して、大学教育の分野別質保証の在り方
に関する審議を依頼
3
21世紀の高等教育
4
一人一人の学習者にとって大学教育が意味あるものとなるために
「協働する知性」を求めて
専門的職業人・市民社会
今回の回答
大学教育の可視化
学術コミュニティ
高等教育を受けた人々が、専門的職業人として一定の専門性を担い
つつ、専門性の垣根を越えて,良き市民として共に働く(協働する)ことが
求められる。
参照基準
平和で持続可能な世界の構築:
1948年「世界人権宣言」:恐怖と欠乏のない世界の到来が一般の人々の最
高の願望である。
1946年「日本国憲法」:全世界の国民が等しく恐怖と欠乏から免れ,平和の
うちに生存する権利を有することを確認する。
+
各大学
大学院
◆ 大学のユニバーサル化:55%の若者が高等教育を受ける。学問の継
承よりは社会の現場で働く
◆ 世界のグローバル化:交通通信手段の高速化、広域化、多様化。課題
の複雑化。
教育課程の学習目標
の具体化と、それに基
づくカリキュラム編成
(教養教育と専門教育
のバランス)
各大学の
特質・資源
大学教育の可視化
初等中等教育
5
― 144 ―
6
分野別の教育課程編成上の参照基準
分野別の教育課程編成上の参照基準
① 学生に何を身に付けさせるのか
② 教育の質保証に関する基本的な考え方
◆ 大学は、各分野の教育課程について、具体性のある学習目標を定めて、
その学習目標を実現するための教育課程(カリキュラム)を編成すべき
◆ 学生たちが、将来社会の現場で、職業人として、市民として
生きていく上で、意味を持つものとしての学びの内容を明らかにす
る。
◆ 最も基本的な意味での「教育の質の保証」のサイクル
◆ 専門分野の細かな知識や能力を徒に数多く列記するのではなく、
将来にわたる基礎となり基本となるようなものを、しっかりと学生が
身に付けられるような方向を目指すべき。
● 各学問分野の特性 & 各大学の理念と現実
→ ● 学習目標の具体化
→ ● 学習方法、学習成果の評価方法の具体化
◆ すべての大学に共有される 「参照基準」 においては、学びの
本質的意義 ・ 中核的事項に絞り込むことが必要。
→ ● 教育課程(カリキュラム)の編成・実施
→ ● (以上のサイクル全体の検証)
◆ 具体的にどのような肉付けを行うかは、各大学が自ら考える。
◆ 学術会議において、分野別に教育課程編成上の参照基準を策定し、
各大学の自主的な教育改善の取組みを支援
7
8
分野別の教育課程編成上の参照基準
分野別の教育課程編成上の参照基準
④ 参照基準の具体的な構成要素
③ 各大学の自主性・自律性の尊重を前提とした活用
各大学に�ける実際の教育課程の編成
各学問分野に固有の特性
世界の認識の仕方、世界
への関与の仕方
すべての学生が身に付けるべき
基本的な素養
当該分野の学びを通じて獲得す
べき基本的な知識と理解、能力
(分野固有の能力と汎用的能力)
・価値観・倫理観、知的座標軸
等をも含む
・具体的な意義に照らして中核
となるもののみに絞り、一定
の抽象性・包括性の下に記述
基本的な考え方の提示
学習方法
学習成果の
評価方法
・各大学の教育理念
・各大学の状況(大学のリソー
スや学生の資質・進路等)
具体的な学習目標
学生が身に付けるべき知識・
理解や能力
・価値観・倫理観、知的座標軸
等をも含む)
・十分な具体性を有する形で
同定
参
※ 各大学が柔軟に展開できるよう、学士課程教育の中核となるものに
絞って、一定の幅と抽象性とを持たせた形で記述
教養教育とのバランスに配慮した
学習目標を定める。(専門教育と
教養教育とをどのように組み合わ
せるのかは、学習目標を達成する
上での最適化という観点から判断)
教育課程編成�の参照基準
参照基準は、検討
の際の一つの「出
発点」であり、そ
れにどのように肉
付けをして、最終
的に具体的な教育
課程を編成するか
は各大学が自主的
に判断
1.各学問分野の特性
世界の認識の仕方・世界への関与の仕方
2.すべての学生が身に付けることを目指すべき「基本的な素養」
基本的な知識と理解、分野に固有の能力、ジェネリックスキル
★ これらを定めるに当たっては、今後学生が、職業人として、あるいは
市民として生きていく上でどのような意義を持つのかを明確にすること
照
具体的な 具体的な
学習方法 学習内容
分野の本質的な部
分を抽出して提示
することにより、
外形的な標準化を
求めるのではなく、
各大学が、それぞ
れの理念・状況に
即した独自の教育
課程編成を行うこ
とを支援
3.学習方法・学習成果の評価方法の基本的な考え方
★ 単なる知識や理解ではなく、それを活用して「~できる」ようになること。
そのための学習方法の重要性
具体的な
学習成果
評価方法
4.市民性の涵養をめぐる専門教育と教養養育との関わり
★ 報告書の第二部 「学士課程の教養教育の在り方について」 との接続
実際の教育課程(カリキュラム)
各分野の教育の意義に関する、大学と社会との共通理解の形成
結果のモニタリング
9
10
分野別の教育課程編成上の参照基準
分野別の教育課程編成上の参照基準
⑤ 各分野の「基本的な素養」の内容
⑥ 当面の策定予定について
◆ 基本的な知識と理解:「~を説明できる」
◆ 当面主要な30程度の分野を3年程度の期間をかけて手がける予定
◆ 基本的な能力:「~ができる」
◆ 分野固有の知識や理解を活用して、何かを行うことができる能力
◆ 分野固有の知識や理解に依存しない能力 (ジェネリックスキル)
◆ 価値観・倫理観や知的座標軸の形成に関するものも含む
◆ 最初の策定作業はモデル的な位置付けとして、分野の数を絞って行う。
◆ 分野の取り上げ方については、課題別委員会と各部・各分野別委員会とで
十分に協議して決定する。
◆ 審議期間はある程度柔軟に考える(8ヶ月~1年程度、必要に応じてそれ以上)
◆ 主要な分野を策定し終えた以後も、必要に応じて追加を行う。
(~に関して適切な判断ができる/~に即して適切に理解できる など)
◇ 上記の知識や理解、能力が、学生にとってどのような意義を持つのかが
明確に理解できるようにすること
◇ 職業生活における有用性
◆ 参照基準の策定のための分科会の設置
◆ 課題別委員会の下に各分野ごとの分科会を設置して審議を行う。
・分野固有の知識や理解の活用能力が、特定の職業の専門知識に直結する場合
・ものの見方・考え方など、分野固有の知識や理解の活用能力が、緩やかな形で
職業上の有用性を持つ場合
・分野に固有の知的訓練を通じて獲得されるが、分野に固有の知識や理解に依存
しない能力 (ジェネリックスキル) として有用性を持つ場合
◆ 分科会のメンバー構成等について
◆ 関連する学協会の参画
◆ 大学の多様性が適切な形で代表されること
◆ 若手教員や職業人、隣接する他分野等からの参画や意見の聴取 等
◇ 公共的な課題に関わる市民としての生活における有用性
◇ より本源的・一般的な意味での有用性
11
― 145 ―
12
分野別の教育課程編成上の参照基準
分野別の教育課程編成上の参照基準
⑦ 「分野」 についての考え方
⑧ 策定作業の工程表についての考え方
◆ あくまで学士課程段階の教育に関する分野
22年度
(研究のための細分化した専門分野ではない。)
23年度
24年度
◆ 「知的訓練方法の固有性」 によって境界づけられる存在としての 「分野」 の理解
(※「分野 = ○○学部○○学科」 という考えに固執しない)
������分野
A分野(A学)
B分野(B学)
X学部A学科
Y学部BC学科
C分野(C学)
D分野(D学)
E分野(E学)
Z学部Z学科
◆ 分野と学科(教育課程)が重なる場合
◆ 分野は、学際的・複合的な教育課程の
構成要素に位置付けられるが、知的訓練
方法の固有性という意味においては、
学科よりも分野に遡るべき場合
�工�分野��
◆ 元来は複数の分野からなる学際的・複合
的な分野・教育課程だったが、学際的・
複合的な姿自体が既に確立した独自の
分野として位置付けられるべき場合
工�分野��
◆ 分野間に一定の包含関係が存在する場合は、できるだけ大括りの分野から参照
基準を策定し、必要に応じて細かな分野を取り上げる
13
14
教養教育について
教養教育について
① そもそも教養教育とは何か?
② 市民性を裏付ける教養概念の変容
◆ 分野別の参照基準は、専門教育と教養教育との
関係に照らして、どのように活用されるべきか
◆ エリートとしての大学生からマスとしての大学生へ
◆ そもそも教養教育とは何か?
◆ その後の新しい市民社会の形成
1970年前後の世界的な学生反乱と、伝統的な教養概念の失効
物質的な豊かさを追い求める価値観への懐疑や環境問題、人権問題、
フェミニズムへの関心をめぐる消費者運動やNPO活動など、マルクス
主義的な体制選択論には還元されない、新しい社会参加や連帯を基軸と
する現代的な市民社会の形成 ※日本での大きな立ち遅れ
------ 歴史的事実としての教養教育の「原点」の検証 -----◆ 戦後の新制大学に導入された「一般教育」
→ ◆ 米国の大学の教養学部のカリキュラム
社会の公共的課題に対して、立場や背景の異なる他者と連帯しつつ取組む
姿勢と行動としての「市民性」を備えた人々による社会
「自由社会における一般教育」
(“General Education in a Free Society”, 1945, Harvard Univ.)
◆ 1990年以降の世界の大規模な社会変動
教育における行き過ぎた専門主義の傾向が、民主主義社会を
支える人々の共通の価値基盤を掘り崩す危険性への危惧
グローバリゼーションに伴う産業構造の変化やメディアの変貌による
大規模な社会変動に対して、単に適応するだけでなく、未来に向かって
現状を作り変えていく 「対応力」 の重要性
民主主義社会を支える市民の教育として、専門教育とは独自の意義を
有する存在としての教養教育の再確認
過去を学ぶことによってあり得た現在を想像し、現在を深く知ることによって
あり得べき未来を構想する力
※ 教養教育は、単なる準備教育でも、ジェネリックスキル養成教育でもない。
15
16
教養教育について
教養教育について
③ 実際の教養教育の在り方についての提言
④ 実際の教養教育の在り方についての提言 (続き)
◆ 現代的な知の共通基盤の形成
・ 現代社会の諸問題 :「現状がなぜこのようになっているのか」という共通の疑問に
端を発し、「現状をどのように変えるべきか」を徹底的に思考させること
・ 文系と理系の問題 :偏りを克服する教育とともに、現代社会における科学技術の
在り方をめぐる教育(新たな科学技術リテラシー)や、細分化の著しい現代科学の
総合的な把握の重要性
◆ 専門教育にとっての教養教育の意義
・ 自分が学習している専門分野の内容を専門外の人にもわかるように
説明できる
・ その専門分野の社会的、公共的意義について考え理解できる
・ その専門分野の限界をわきまえ、相対化できる
★ 教養教育を、必ず専門教育に先立って行うべき理由はない
◆ 参加型学習の必要性
・ teachingからlearningへ
・ 多様な背景の学生の混成の重要性
・ 教室のデザインの重要性
◆ コミュニケーション能力の育成
・ 一方的な情報伝達とは異なる対話の本質:自らの意見や感覚が変容する可能性
を秘めた営み。異なる意見、感覚を持つ人々と出会い、「聴く」 能力の重要性
・ 言語の公共的使用能力という意味における日本語運用能力の向上
・ 国際共通語としての英語教育と、 異文化理解のための外国語教育の在り方
◇ 大学教育を担う教員の「再建」
・ 現役教員の意識、大学院教育の改善、非常勤依存の改善
◆知識とインターネット
・知識の作者性、体系性、歴史性の意義をしっかりと理解したインターネットの活用
◆芸術や体育の持つ意義
・言語と論理偏重教育からの脱却。サービス産業中心社会に対応した柔軟な思考と
コミュニケーション能力を育成
◇ 「隠れたカリキュラム」 :社交空間としての大学の存在の重要性
・ 専門的知識の多寡に還元されない人柄
・ 未来の主人公の精神に「火を点ける」
17
― 146 ―
18
教養教育について
教養を含む教育の必要性についての私見
⑤ 教養教育と専門教育との関係
教養教育と専門教育との関係についての概念図
企画・政策を実施するためには様々なセクターの協働が必要
「教育」(ゆとり教育、総合的学習、高等教育etc)、「人材育成」(グローバル人材etc)
教養教育の理念・目標
(市民性の涵養)
「教養教育・共通教育」
各分野の教育の理念・目標
(職業能力の形成など)
教育の理念・目標
最近の政策は「課題、予算化、委託事業、事後評価」のサイクルで終わるものが多いよう
に見える。事業不成功の場合は「無駄遣い」ということになる。委託事業が成功しても一
事例で終わり、予算化終了とともに消滅してしまう。
「専門・専門基礎教育」
科目区分の名称
・教育の理念・目標と、科目区分とは一旦区別して考えるべき
・教養教育の理念・目標と、専門教育の理念・目標とは、異なりながらも重なり合う
・科目区分としての教養教育と専門教育が、相互に連携して、教育理念の実現のために
編成・実施される
19
20
私見(続き)
私見(続き)
[例]ゆとり教育・総合的学習における欧日の相違
欧州:(Problems) Declining of Interest in Learning,
(Direction of Improvement) Inquiry-based Education rather than
amount of knowledge,
(Conceptualization )”Competency” ,
(assessment ) “PISA”
(Action) “21st Century Science Education” , Royal Society “social
cohesion on the basis of science (Science café, science festival,
consensus meetings etc)”
日本:(課題) 学習離れ、(改善の方向性)ゆとり教育と総合的学習、
(概念化)、(評価)を具体化せず教育現場に丸投げの感がある。「ゆとり教育失敗論」で
揺り戻しが起きたが、本当は様々な試みがなされ始めて成功例も生まれ、やっと教育系
学会、理工系学会などが取り上げだしたところでもある。
ProblemsとDirection of Improvementは様々なセクターが協議して政治的あるい
は社会的に決定すべきこと
ConceptualizationとAssessmentは学術的営みであり、大学、研究者、専門家など
21
academiaがもっと責任を負って行うべきこと
[例]大学評価における自己点検
中期計画の評価:達成度の評価(一律に数値化されてしまいがち)
本当は、大学独自に、計画立案、概念化、評価項目策定まで行って、常時モニターする
仕組みを作ってから、計画実行にうつるべき。
Assessment of evaluability (Y.Tanaka)
概念化、評価策定は極めて学術的作業である。大学の知、社会の知を投入すべき。
逆に言えば、(Problems) →(Direction of Improvement)→
(Conceptualization )→(assessment ) →(Action) のない改革は持続しない。
いわゆるPDCAサイクルについて:Plan-Do-Check-Actが大学改革でも叫ばれている
が,PDCAサイクルは本来品質管理の方法論であり、仕様が決まっているときにそれを
達成する方法論である。「仕様」そのものを改善していくような企画・政策(グランドデザイ
ン)にあっては、もっと高度の考えが必要に思う。このような基本的なことについての検討
には「協働する知性」が必要
22
大学と職業との接続について
大学と職業との接続について
① 当面の就職問題への対策
② 今後目指すべき大学と職業との新しい接続
「早期化問題」から「大学と職業との接続問題」への対策枠組みの拡大


◇ 学生が意義の乏しいエントリーの多発に走らずにすむよう、適切な
キャリアガイダンスを充実
◇ 意義の乏しい就活プロセスの徒な肥大化は抑制する一方で、企業を
含めた「外の世界」を知る機会は、むしろ早期から整備

◇ 学事日程と就職活動の両立のために、土日祝日や長期休暇の有効
活用などを折り込んだ具体的なルールやプロセスを大学と産業界とが
協働して整備

◇ 「就活」に伴う学生の負担の軽減と、就職できない若者に対する
セーフティーネットの構築 ・ 採用における「新卒」要件の緩和の必要性


◇ 今後の新しい就職・採用活動の在り方としての、緩やかな職種別採用
方式への期待 ( 「仕事」 に対する目的意識の明確化と、具体的な
仕事を目指した学びの実現)
大学教育の職業的意義の向上
大学で学んだ内容と求める人材像との適合性を重視した 志望動機・採
用基準に基づいて、大学教育の概ねの課程を修了した段階で開始され
る就職・採用活動
卒業後も求職活動や適職探索を行う余地が幅広く認められる初期職業
キャリア
専門性を重視した職業上の知識・技能に応じて正規雇用・ 非正規雇用
間で均衡した処遇がなされる労働市場
必要に応じて何度でも学び直せるリカレント学習の拡大
生活支援と職業訓練機会の付与、就職支援とが一体となったセーフ
ティーネットの構築
◆ そして、大学教育の職業的意義の向上と、社会によるその適切な評価
23
― 147 ―
24
大学と職業との接続について
③ 今後目指すべき大学と職業との新しい接続(図解)
【現状】
大学
1年
仕事
‫ܖٻ‬૙ᏋƷᎰಅႎॖ፯ƕࠎᕓ
2年
3年
正社員
4年
非正社員
就職活動
【今後の姿】
大学
仕事
正社員
‫ܖٻ‬૙ᏋƷᎰಅႎॖ፯ǛӼɥ
1年
2年
3年
4年
‫ࣱᧉݦ‬Ǜ᣻ᙻƠƨᎰಅɥƷჷᜤȷ২Ꮱ
ƴࣖơƯϼᢀƕƳƞǕǔі΁ࠊ‫ئ‬
非正社員
就労体験・社会体験などの充実
(時期・期間は多様であり得る)
就職活動
卒業後も求職活動や適
職探索を行う余地
正規雇用と非正規雇用
の柔軟な往還
リカレント学習
(大学院での学習も含めて)
セーフティーネットの構築
(生活支援と職業訓練・就職支援)
25
今後に向けて
質保証のための社会全体の連携の実現
◆ 社会の要請に応えるため、大学コミュニティでの相互支援体制
の構築
今後、各大学の取組みを支援するため、学術会議とともに、
各種の学協会や大学横断的なFD団体、さらには国公私立の
大学団体や認証評価機関など、大学コミュニテイを構成する
幅広い関係機関が連携協力することが重要
◆ 新しい産業社会の構築と、そこでの新しい大学教育の実現の
ための、社会全体の連携の必要性
大学・教育界のみならず、企業・産業界、労働界、政府、さらには
広く社会一般の人々が、手を携えて新しい社会の実現に向けて
連携協力することが重要
協働する知性の構築
27
― 148 ―
26
― 149 ―
■ 産学協働で講義プログラムを開発
講師内訳
○ 民 間:35名・・・・ ・メーカ(9名) ・シンクタンク(4名)
○ 公務員:15名
・商社(7名) ・建設(3名)
合 計:50名
・金融(5名) ・その他(7名)
※会員、日本創生委員会委員/同タスクフォー ス、
国家公務員
JAPICが委託する講師※
JAPIC職員
(連携協力事項)
・教育に関する事項
・研究に関する事項
・産学連携に関する事項
・グローバル人材育成に係る事項
・その他
JAPIC
(三村会長)
協定に基づき
実 行
■ 産学融合して育てる戦略議論
講義概要
○ 受講対象:学部1~4年生、大学院修士・博士課程。
○ 授業:隔週土曜日午後に2コマ。
○ 学期末試験実施(出題・採点は講師が行う)。
講師派遣
筑波大学
(山田学長)
「学術教育研究に係る連携協力協定」(3年間)2010年10月28日付
~筑波大学とJAPICの連携協力協定に基づく講義~
世界に挑む産業界・官界トップリーダーによる連続リレー講義
■ 世界で活躍できるグローバル人材育成
平成23年3月4日
JAPIC事務局
筑波大学リレー講義 講師予定一覧(平成23~25年度)
(五十音順・敬称略)
2011/3/4
氏名
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
青山 俊介
浅井 信司
石川 貴之
石川 博紳
石田 有三
伊藤 和央
伊藤 禎則
伊与部 恒雄
岩田 眞二郎
奥住 直明
片岡 隆一
梶浦 敏範
門脇 直哉
金井 道夫
木寺 昌人
葛目 薫
熊谷 文男
河野 龍太郎
甲村 謙友
古賀 信行
佐藤 信秋
佐藤 博恒
篠田 信比古
島崎 豊
進藤 秀夫
末松 広行
瀬口 清之
高木 佳子
高藪 裕三
田邉 弘幸
谷口 博昭
丹呉 泰健
永野 真紀
成田 高一
難波 ひとみ
平野 英治
藤原 章夫
本多 均
皆川 芳嗣
森 正樹
柳 正憲
山崎 亜也
山本 和彦
吉田 芳之
吉村 隆
米田 雅子
渡辺 善之
(未定)
(未定)
23
年
度
所属
あおやま しゅんすけ
㈱エックス都市研究所 取締役特別顧問
あさい しんじ
JAPIC 上席主任研究員/新日鉄エンジニアリング㈱部長
○
いしかわ たかゆき
JAPIC 主任研究員/㈱日建設計総合研究所 理事 上席研究員
○
いしかわ ひろのぶ
三井物産㈱ 執行役員 人事総務部長
いしだ ゆうぞう
JAPIC 主任研究員/大成建設㈱課長
いとう かずお
WAO研究所代表
○
いとう さだのり
経済産業省 経済産業政策局 政策企画官
○
いよべ つねお
三菱商事(株)代表取締役常務執行役員コーポレート担当役員
いわた しんじろう
㈱日立製作所 執行役常務
おくずみ なおあき
㈱東芝 産業政策渉外部長
かたおか りゅういち
内閣府 政策統括官(経済財政運営担当)付 企画官(総括担当)
かじうら としのり
㈱日立製作所 経営戦略室 担当本部長
かどわき なおや
新日本製鐵㈱プロジェクト開発部 部長代理
かない みちお
元 国土交通省道路局長
きてら まさと
外務省 官房長
くずめ かおる
丸紅(株)執行役員人事部長
くまがい ふみお
中外製薬㈱ 顧問
○
こうの りゅうたろう
BNPパリバ証券会社 経済調査本部長チーフエコノミスト
○
こうむら けんゆう
元 国土交通省技監
こが のぶゆき
野村證券(株) 執行役会長
さとう のぶあき
参議院議員(元 国土交通事務次官)
さとう ひろつね
新日本製鐵㈱ 人事・労政部長
○
しのだ のぶひこ
キヤノン㈱ 総合R&D本部 上席担当部長 顧問
○
しまざき ゆたか
丸紅㈱ 広報部副部長
○
しんどう ひでお
経済産業省 産業技術環境局 大学連携推進課長
○
すえまつ ひろゆき
林野庁 林政部長
○
せぐち きよゆき
(財)キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
○
たかぎ けいこ
JAPIC 主任研究員/竹中工務店㈱主任
○
たかやぶ ひろみつ
JAPIC 専務理事・事務局長
○
たなべ ひろゆき
双日㈱副社長執行役員 米州総支配人兼米国会社社長
○
たにぐち ひろあき
芝浦工業大学教授/前 国土交通省事務次官
たんご やすたけ
㈱読売新聞グループ本社監査役/前 財務省事務次官
ながの まき
JAPIC 研究員/㈱日立製作所 主任
○
なりた こういち
JAPIC 常務理事
○
なんば ひとみ
JAPIC 広報部主査
ひらの えいじ
トヨタファイナンシャルサービス㈱ 取締役副社長
ふじわら あきお
文部科学省 高等教育局 大学振興課長
○
ほんだ ひとし
㈱三菱総合研究所 常務執行役員
○
みながわ よしつぐ
林野庁 長官
もり まさき
JAPIC 主任研究員/鹿島建設㈱課長
やなぎ まさのり
㈱日本政策投資銀行 取締役常務執行役員
やまざき あや
住友商事㈱ 理事 資源・化学品事業部門長付
○
やまもと かずひこ
森ビル㈱ 取締役副社長
○
○
○
○
○
よしだ よしゆき
日本郵船㈱ 人事グループ長
よしむら たかし
ゴールドマンサックス証券㈱マネージングディレクター コンプライアンス部門統括
よねだ まさこ
NPO法人 建築技術支援協会理事相談役
わたなべ よしゆき
㈱メタルワン 経営企画部 経営戦略ユニットリーダー
○
○
○
:主幹
(計49名)
― 150 ―
24
年
度
25
年
度
(1)大学における教養教育の現状
①教養教育の必修単位数
卒業要件として修得を必要とする一般科目の単位数別大学数
昭和62年度と平成20年度の比較
※大学数が異なるため,割合で比較
昭和62年度
平成20年度
36単位超
36単位
36単位未満
36単位超
36単位
36単位未満
国立
24.2%
44.7%
31.1%
51.8%
4.3%
43.9%
公立
21.7%
54.3%
23.9%
38.1%
3.0%
59.0%
私立
15.2%
49.8%
35.1%
21.9%
3.7%
74.4%
全体
17.8%
49.0%
33.3%
28.3%
3.7%
68.0%
※昭和62年度・・・「大学教育等の改善等の状況について」より
※平成20年度・・・文部科学省調べ
昭和62年度当時は,一般教育での必要単位数が36単位以上と設定されていたため,36単
位設定の大学が多数。
平成20年度は36単位超を必要単位と設定する大学が増加する一方,36単位未満とする大学
の割合が多数を占め,従前どおり36単位の設定としている大学は少数。
なお平成20年度時点で,卒業までに取得しなければならない教養教育科目の単位数の平均
は,30.5単位。
これからの大学に求められる教養教育について
筑波大学教育GP成果報告シンポジウム
「筑波スタンダードに基づく教養教育の再構築」
平成23年3月
文部科学省 高等教育局
大学振興課長 藤原 章夫
【参考】平成22年4月現在の大学数
※募集を停止している大学を除く
国立大学
公立大学
私立大学
合計
86大学
80大学
592大学
758大学
1
②教養教育の体制
大学学部段階において,教養教育の在り方や専門教育との連携等について検討するための全学的な実施・調整等組織(共通
教育センターや,全学的な検討会議等)を設置する大学は増加傾向。平成20年度においては583大学(80.6%)が設置。
0
100
200
300
400
500
600
私立
389
平成17年度
公立
61
平成18年度
81
56
平成19年度
82
61
436
579大学/80.5%(719大学中)
平成20年度
82
60
441
583大学/80.6%(723大学中)
414
④初年次教育の状況
700 (大学数)
国立
79
近年,高校から大学へ入学した新入生を対象とする初年次教育の実施が増加。平成20年度ではおよそ595大学(82.3%)が実施。
主な内容は,①レポート・論文の書き方等の文章作法を身に付けるプログラム,②プレゼンテーションやディスカッション等の口
頭発表技法を身に付けるプログラム,③学問や大学教育全般に対する動機付けのためのプログラム,等が含まれる。
529大学/75.6%(700大学中)
【初年次教育】高等学校から大学への円滑な移行をはかり,大学での学問的・社会的な諸条件を成功させるべく,主として大学新入生を対象に作られた総
合的教育プログラム。高等学校までに修得しておくべき基礎学力の補完を目的とする補習教育とは異なる。
551大学/77.6%(710大学中)
0
平成18年度
「大学における教育内容等の改善状況について」より作成
100
国立 公立
67
45
平成19年度
74
54
平成20年度
77
54
200
300
400
私立
389
500
600
700
(大学数)
501大学/70.6%(710大学中)
442
570大学/79.3%(719大学中)
③主な教養教育の実施内容(平成20年度,大学学部の状況)
○外国語教育の開設状況(上位6言語)
1.英語・・・715大学(98.9%)
4.ドイツ語・・・528大学(73.0%)
2.中国語・・・610大学(84.4%)
5.朝鮮語・韓国語・・・429大学(59.3%)
3.フランス語・・・531大学(73.4%) 6.スペイン語・・・241大学(33.3%)
○情報処理教育科目を開設する大学数
国立82大学,公立72大学,私立567大学
464
595大学/82.3%(723大学中)
「大学における教育内容等の改善状況について」より作成
計721大学(99.7%)で開設。
○ボランティア教育に関する講義または実技科目を開設する大学数
国立51大学,公立19大学,私立245大学 計315大学(43.6%)で開設。
○キャリア教育に関する講義または特別講義等を開講する大学数
国立81大学,公立62大学,私立531大学 計674大学(93.2%)で開設。
(文部科学省調べ)
※大学の母数は国立82,公立73,私立567,放送大学1(集計上は私立大学に含む)の計723大学。全国の大学のうち,短期大学,大学院大学,通信制
大学のみの大学を含まない数となる。
2
3
(参考)「法と現代社会」の授業構成
⑤新たな教養教育の展開事例
【教養教育全般】東京大学・学術俯瞰講義
東京大学では平成17年から,大学1,2年生を対象に,「知」の体系や構造
を広い視点から見ることで,それぞれの学問領域の全体像や,学問領域同
士の関係性を理解するための授業科目群を展開。
各学期に設定されるテーマごとに,各分野のスペシャリスト等がオムニバス
形式で講義を行う形態を取る。各テーマにはコーディネータが配置され,講
義全体の設計や俯瞰・まとめ等を行う。
例えば,平成22年夏学期開講の「法と現代社会」については,法学の様々
な分野から現代社会への課題へのアプローチを試み,法と社会秩序の相互
作用について考えさせる授業を行った。
(東京大学ホームページより作成)
2010年夏学期法と現代社会-見える法と見えざる法
コーディネータ:太田勝造(法学部)
ナビゲータ:清水剛(教養学部)
<見える法と見えざる法/太田勝造(法学部)>
第1回 見える法と見えざる法:ユビキタスな法と社会秩序
─俯瞰講義への導入を兼ねて
<法と市民生活/大村敦志(法学部)>
第2回 いま、法と法学は
第3回 児童虐待への法的対応
第4回 児童虐待防止の社会的背景
<法と科学/畔柳達雄(弁護士),大渕哲也(法学部),
濱田純一(総長)>
第5回 裁判と科学(畔柳)
第6回 発明と法(大渕)
第7回 法と情報(濱田)
<法と経済学/八代尚宏(ICU)>
第8回 法と経済の接点-市場の役割はなぜ重要か
第9回 都市・住宅問題への適用
第10回 雇用問題への適用
<法と文化/寺尾美子(法学部)>
第11回 日本の法と日本的公私構造(1)都市計画を題材に
第12回 日本の法と日本的公私構造(2)ジェンダー問題を
題材に
【まとめ:法と社会秩序の相互作用/清水剛(教養学部)】
第13回 まとめ:法と社会秩序の相互作用
⑥文部科学省の補助金(GP等)による教養教育の取組事例
○慶應義塾大学
「身体知教育を通して行う教養言語力教育」
(平成21年度 大学教育・学生支援推進事業【テーマA】採択取組)
社会のリーダーたるに相応しい言語力を身につけさせるため、身体知教育(身体的気づきを導く体験型授業)のノウハウを活用して、芸術、フィールド
アクティビティ、コミュニティ作り、コミュニケーション、本、雑誌作りなどの体験型授業によって、優秀な大学生に相応しい言葉の力=教養言語力を習得さ
せる教育モデルの構築を図る。
○金沢工業大学
「価値の共有による技術者倫理教育」
(平成19~21年度 特色ある大学教育支援プログラム採択取組)
「技術者入門」、「日本学」、「科学技術者倫理」の3科目を必修とする技術者倫理教育プログラムを技術者になるための新教養教育と位置付け、初年
次教育から専門教育全体にわたってその展開を図り、自ら考え行動する技術者の育成を図る。
○東京外国語大学
「『教養日本力』高度化推進プログラム」
(平成19~21年度 特色ある大学教育支援プログラム採択取組)
【英語教育】早稲田大学「チュートリアル・イングリッシュ」
早稲田大学では,グローバル化への対応として,これまでの語学教育を見直し。
「実践で使える英語」を身につけることができるよう,大人数の講義型授業から,講師1人当たり学生4人という少人数でのレッ
スンを週2回の頻度で実施。TOEFLの平均スコアが約60点向上する等の成果を上げることに成功しており,2006年時点で年
間1万2000人が受講するまでになっている。
(「早稲田はいかに人を育てるか」白井克彦,早稲田大学パンフレットなどから作成)
【教養学部の取組】国際教養大学「国際教養人の育成」
国際教養大学は,平成16年に全国初の公立大学法人として開学。「国際教養人の育成」を目標とし,正規授業は原則全て
英語で実施,入学初年度は全寮制,約90の海外大学と提携し卒業までに1年間の海外留学を義務付け,学生数を1学年150
人程度と限定し,少人数教育を実施(7割以上の授業が学生数20人以下),留学生と日本人が同じ授業を履修する機会を拡
大する等,様々な特徴的な取組を行っている。
また,GPA制度を活用し,第1期生の4年卒業率は47.1%となるなど成績管理も厳密に行われている。
教育の内容及び卒業生に対する内外からの評価は高く,就職率は100%を達成。
(読売新聞「教育ルネサンス」,国際教養大学ホームページより作成)
外国の言語・地域・文化を学ぶ学生こそ日本についての教養教育が重要との考えに立ち、1・2年次における日本を学ぶ科目群の開設、外国人留学
生とともに受講する英語による日本に関する教養科目の開設などの取組を通じ、日本について自ら問い、考える真の国際人の養成を図る。
○山形大学
「到達目標を明確にした自己実現学習システム」
(平成21年度 大学教育・学生支援推進事業【テーマA】採択取組)
社会が大学教育に求めている基本的能力を学生に確実に身につけさせるため、学生が自ら設定する学習到達目標を実現するために必要とされる科
目が何かを意識しながら学習を進めることが出きる「自己実現学習システム」を構築し、社会に必要とされる学生の能力の定着を図る。
○大阪大学
「進化する理学教育プログラム」
(平成16年度 特色ある大学教育支援プログラム採択取組)
理学部において、全学科の1年生を対象として、①専門とは直接関係ない幅広い理系の基礎を学ぶ必修科目、②様々なテーマで専門科目への意欲
を高める学科単位の少人数ゼミ、③好奇心に沿って自由選択できる250の教養科目、の3種類の科目群から教養科目を履修させるとともに、細分化して
いる専門教育科目との接続を容易にすることにより、広い視野に立ち柔軟な発想のできる人材の育成を図る。
4
― 151 ―
5
②教育基本法,学校教育法の改正
(2)教養教育をめぐる動き
平成18年の教育基本法改正において,「教育の目標」として「幅広い知識と教養を身に付け」ること,また,「大学」の項で
は,「高い教養」を培うことを規定。
平成19年の学校教育法改正では,目的を実現するために教育研究を行うこと,及びその成果の還元により社会の発展
に寄与することを明文化。
①大学設置基準の規定の変化
平成3年の大学設置基準の改正において,
「一般教育,専門教育等の科目区分及び必要単位数の撤廃」を実施。
教育基本法 新旧対照表
【平成3年の改正前】
【平成3年の改正後】
旧
新
第19条
大学で開設すべき授業科目は、その内容により、一般教育
科目、外国語科目、保健体育科目及び専門教育科目に分け
る。
2 前項に規定するもののほか、教育上必要があるときは、専
門教育の基礎となる授業科目として、基礎教育科目を置くこと
ができる。
第20条
大学は、一般教育科目に関する授業科目を人文、社会及び
自然の3分野にわたつて開設するものとする。
2(略)
第19条
大学は、当該大学、学部及び学科又は課程等の教育上の目
的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教
育課程を編成するものとする。
2 教育課程の編成に当たつては、大学は、学部等の専攻に係
る専門の学芸を教授するとともに、幅広く深い教養及び総合的
な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮しな
ければならない。
第二条 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆ
る場所において実現されなければならない。
この目的を達成するためには、学問の自由を
尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、
自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発
展に貢献するように努めなければならない。
(新設)
第32条
卒業の要件は、大学に4年以上在学し、次の各号に定める
単位を含め、124単位以上を修得することとする。
一 一般教育科目については、人文、社会及び自然の3分野
にわたり36単位
二 外国語科目については、一の外国語の科目8単位
三 保健体育科目については、講義及び実技4単位
四 専門教育科目については、76単位
2(略)
第32条
卒業の要件は、大学に4年以上在学し、124単位以上を修得
することとする。
第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達
成するよう行われるものとする。
一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培う
とともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養
うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づ
き、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国との郷土を愛するとともに、他
国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
第七条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探
求して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の
発展に寄与するものとする。
2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重され
なければならない。
学校教育法 新旧対照表
2~5(略)
旧
第五十二条 大学は、学術の中心として、広く知
識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研
究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させ
ることを目的とする。
(新設)
新
第八十三条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を
教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。
② 大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供する
ことにより、社会の発展に寄与するものとする。
6
③審議会答申等の関係記述(概要)
7
③審議会答申等の関係記述(参考,抜粋等)
【H3大学審議会「大学教育の改善について」】
●設置基準を大綱化し,各大学が教育課程を自らの判断で柔軟に運用できるよう提言。
●自由で個性的なカリキュラムを大学が自ら検討することを可能とし,「学生に学問を通じ広い知識を身に付けさせると共に,ものを
見る目や自主的・総合的に考える力を養う」という従前からの理念・目標の実現を促進することをねらいとしていた。
H3 設置基準の大綱化
【H10大学審議会「21世紀の大学像と今後の改革方策について」】
●教養教育の軽視を懸念,各大学における教養教育の在り方の更なる検討が必要である旨を指摘。
●専門教育と関連をもった教養教育,教養教育の理念・目標を踏まえた専門教育の充実・強化を提言。
【H14中央教育審議会「新しい時代における教養教育の在り方について」】
●大学における教養教育においては,社会の変化に対応しうる知の基盤を与えるものと位置付け,
・専門分野の枠を越えて共通に求められる知識や思考法等の知的技法の獲得
・人間としての在り方や生き方に関する深い洞察
・現実を正しく理解する力の涵養
等に関する努力を期待した。
H15 設置基準の準則化
【H17中央教育審議会「我が国の高等教育の将来像」】
●「教養教育答申」で示された考えに加え,大学教員には高い力量が求められることとそのために授業改善を不断に行う必要があ
ることを提言。
H20 FD義務化
【H20中央教育審議会「学士課程教育の構築に向けて」】
●早期の専門分化は学生の学びの幅を狭めてしまうこと等を懸念し,専門分野の入学後の選択や柔軟な変更等の検討の必要性
を指摘。
●教員意識としての教養教育の軽視に触れ,その望ましい実施体制に関する議論と適切な対応を求めた。
8
【大学審議会「大学教育の改善について」(平成3年)】
大学設置基準を大綱化し,各大学が教育課程を自らの判断で実施できるよう提言。
(3)一般教育と専門教育の改善
①一般教育の理念・目標は,大学の教育が専門的な知識の修得だけにとどまることのないように,学生に学問を通じ,広い知識を身に付けさせるとともに,ものを
見る目や自主的・総合的に考える力を養うことにあり,入学してくる学生や諸科学の発展の現状から見て,このような理念・目標を実現することが一層必要となってい
る。
現状では,改善・工夫の努力が行われているが,一般教育の理念・目標と授業の実際との間には,しばしば乖離が見られ,専門教育との関係でも,有機的な関連
性が欠如している傾向も見受けられる。
このような一般教育の理念・目標が大学教育全体の中で実質的,効果的に実現されるよう,カリキュラム及び教育体制の改善が求められている。(略)
1 大学設置基準の大綱化等について
(1)教育内容・方法に関する事項
a 開設授業科目及び卒業要件
①現在,大学が順守すべきカリキュラムの枠組みについては,学校教育法で大学の目的を「学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を教授
研究し,知的,道徳的及び応用的能力を展開させること」(第52条)と規定し,この目的を実現するための具体的な仕組みは,大学が開設すべき授業科目と学生の
卒業要件という側面から,大学設置基準により規定されている。
(注)大学設置基準の規定
○授業科目については,その内容により,一般教育科目,外国語科目,保健体育科目及び専門教育科目に区分し,それぞれ開設を義務付けている。
このうち,一般教育科目に関する授業科目については,人文,社会及び自然の3分野にわたって開設するものとされ,外国語科目については,2以上の外国
語の科目を開設するものとされている。
(略)
②このように,大学が順守すべきカリキュラムの枠組みを大学設置基準で細かく規定することについては,これにより,大学教育の内容・水準が大学の如何を問わ
ずある程度保証されてきたという点が評価される一方で,以下のような問題点がある。
ア 各大学が,それぞれの理念に基づき,また時代や社会の進展に対応して,自由で個性的なカリキュラムを設計しようとする際に,現行の大学設置基準の規定
が障害となってきている面がある。
イ また,カリキュラムの枠組みを大学設置基準で細かく規定していることが,各大学において,カリキュラムの在り方についての真剣な検討や改善のための努力
を怠らせることになっている面も見られる。
ウ ある授業科目が,一般教育,専門教育等のいずれの科目区分に該当するかは,その授業科目を履修する学生の専攻分野等とも深く関連するものである。
エ 一般教育等の理念・目標を実現するためには,そのことを目的とした授業科目区分を設定して教育するという方法のほかにも,大学の創意工夫により,いろい
ろな方法が考えられるのではないか。
オ 大学教育は4年間の教育全体を通じて行われるべきものであり,専門教育についても,上記大学の目的や一般教育等の理念・目標とするところに留意して教
育が行われる必要がある。(略)
④以上のような趣旨から,大学設置基準の開設授業科目及び卒業要件に関する規定は,以下の方向で改正する必要がある。
ア 開設授業科目については,大学設置基準上,一般教育科目,専門教育科目等の科目区分は設けないこととし,大学は,当該大学,学部及び学科(課程)の
教育上の目的を達成するために必要な授業科目を開設し,体系的に教育課程を編成すること,教育課程の編成に当たっては,学部等の専攻に係る専門の学芸を
教授するとともに,幅広く深い教養,総合的な判断力を身に付けさせ,豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮することという趣旨を規定することとする。(略)
⑥ このように,大学設置基準上開設授業科目の科目区分を整理することについて,これにより一般教育等を軽視する大学が出てくるのではないかと危惧する向
きもある。本審議会としては,一般教育等の理念・目標は極めて重要であるとの認識に立ち,それぞれの大学において,授業科目の枠組みにこだわることなく,この
9
理念・目標の実現のための真剣な努力・工夫がなされることを期待するとともに,この点についての大学人の見識を信ずるものである。(略)
【大学審議会「21世紀の大学像と今後の改革方策について」(平成10年)】
大綱化後の状況を踏まえ,教養教育の重要性と専門教育との連関に関し提言。
平成13年に中央教育審議会となった後も,引き続き教養教育の充実に関する提言が行われている。
第1章 21世紀初頭の社会状況と大学像
2 高等教育改革進展の現状と課題
ii) 現状の問題点と課題
(ア)現状の問題点
学部段階の教育については,一般に教員は研究重視の意識は強いが教育活動に対する責任意識が十分でない,授業では教員から学生への一方通行型
の講義が行われている,授業時間外の学習指導を行っていない,学期末の試験のみで成績評価が行われている,成績評価が甘く安易な進級・卒業認定が
行われている,教養教育が軽視されているのではないかとの危惧がある,専門分野の教育が狭い領域に限定されてしまう傾向があるなど,教育内容と教育方
法の両面にわたり多くの問題点が厳しく指摘されている。また,学生によっては,授業に出席しない,授業中に質問をしない,授業時間外の学習が不十分で
ある,議論ができないなど,学習態度とその成果の両面について問題点が指摘されている。 (略)
【中央教育審議会「新しい時代における教養教育の在り方について」(平成14年)】
第3章 どのように教養を培っていくのか
第2節 青年期における教養教育
3 大学における教養教育
(1)大学における教養教育の課題
○ 新たに構築される教養教育は、学生に、グローバル化や科学技術の進展など社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤を与えるものでなければなら
ない。各大学は、理系・文系、人文科学、社会科学、自然科学といった従来の縦割りの学問分野による知識伝達型の教育や、専門教育への単なる入門教育ではな
く、専門分野の枠を超えて共通に求められる知識や思考法などの知的な技法の獲得や、人間としての在り方や生き方に関する深い洞察、現実を正しく理解する力の
涵養など、新しい時代に求められる教養教育の制度設計に全力で取り組む必要がある。
第2章 大学の個性化を目指す改革方策
1 課題探求能力の育成―教育研究の質の向上―
(1)学部教育の再構築
1)教育内容の在り方 ―課題探求能力の育成―
i) 教養教育の重視,教養教育と専門教育の有機的連携の確保
(ア)教養教育の重視
学術研究や技術革新の進展,国際化・情報化の進展等社会の急速な変化が進む中で,これからの社会はより複雑化し社会の様々な要素の関連が強くなり
相互の波及効果が大きくなる傾向にあり,一つの角度から物事を見ていたのでは的確な判断はできなくなってきている。このため,「学問のすそ野を広げ,
様々な角度から物事を見ることができる能力や,自主的・総合的に考え,的確に判断する能力,豊かな人間性を養い,自分の知識や人生を社会との関係で
位置付けることのできる人材を育てる」という教養教育の理念・目標の実現のため,各大学において教養教育の在り方を真剣に考えていくことが必要である。
(イ)教養教育の工夫・改善のための取組
各大学においては,教養教育の理念・目標の実現のため,かつての一般教育のように独立の科目を設ける,あるいは,専門教育科目の中で学際的な科目
を開設するなど,各大学の工夫により教養教育を実施することが必要である。また,教養教育は専門教育と対置されるものではなく,専門教育においても教養
教育の理念・目標を踏まえた教育が展開されることが専門教育の充実・強化の上でも一層重要となることを十分に認識しなければならない。
この際,教養教育の内容については,例えば,i)社会生活を送る上で身に付けておくべき基本的な知識と技能を習得させる,ii)社会的・学問的に重要な特
定の主題や現代社会が直面する基本的な諸課題について授業(テーマ講義やゼミナールなど)を行い,多面的な理解と総合的な洞察力や現代社会の諸課
題を総合的に判断し対処する能力を養成する,iii)体系化された学問を幅広く経験することにより,専攻する学問分野の理解を助けるとともに,専攻する学問
分野の違いを越えて共通に必要な複合的視点や豊かな人間性をかん養する,iv)専門教育において,関連する分野に関する幅広い視野に立って学際的に
取り組むことのできる力を培うなどが考えられる。各大学においては,それぞれの理念・目標に沿って,教養教育の重要性を踏まえた体系的なカリキュラムを
工夫していく必要がある。
教養教育の実施に当たっては,教養教育は従来の専門教育の教員を含め全教員が責任を持って担うべきものであるという認識の下,その実施・運営の責
任を持つ組織を明確にするとともに,一部の教員に過度の負担が集中したり,全学的な視点からの調整や学部・学科間の連絡が希薄なために教養教育の実
施に支障を来したりすることのないように全学的な実施・運営体制を整備する必要がある。
教養教育の実施方法等については,学際的・総合的視野に立って,自ら課題を探求し,柔軟かつ総合的な思考,判断によって解決する能力を育成すること
が重要であることを踏まえ,例えば,環境問題などのような複合的視点から検討が必要な課題を探求,設定して考えるという課題探求型学習の推進が重要で
ある。また,米国の大学における主専攻・副専攻のように,複数の学部・学科の専門科目を同時に履修できるようなカリキュラム上の工夫を行うことも有効である。
(略)
【中央教育審議会「我が国の高等教育の将来像」(平成17年)】
第3章 新時代における高等教育機関の在り方
1 各高等教育機関の教育・研究の質の向上に関する考え方
(1)大学
(エ)学士課程
《教養教育》
○ 新たに構築されるべき「教養教育」は,学生に,国際化や科学技術の進展等社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤を与えるものでなければならな
い。各大学は,理系・文系,人文・社会・自然といった,かつての一般教育のような従来型の縦割りの学問分野による知識伝達型の教育や単なる入門教育ではなく,
専門分野の枠を超えて共通に求められる知識や思考法等の知的な技法の獲得や,人間としての在り方や生き方に関する深い洞察,現実を正しく理解する力の涵養
に努めることが期待される。
○ このような観点から,教養教育に携わる教員には高い力量が求められる。加えて,教員は教育のプロとしての自覚を持ち,絶えず授業内容や教育方法の改善に
努める必要がある。入門段階の学生にも高度な知識を分かりやすく興味深い形で提供したり,学問を追究する姿勢や生き方を語ったりするなど,学生の学ぶ意欲や
目的意識を刺激することも求められる。
【中央教育審議会「学士課程教育の構築に向けて」(平成20年)】
第2節 教育課程編成・実施の方針について~学生が本気で学び,社会で通用する力を身に付けるよう,きめ細かな指導と厳格な成績評価を~
1 教育課程の体系化
(2)改革の方向
(イ) また,多くの学生が,入学時に学科等への所属を決定しているが,これにより,共通教育や基礎教育の後退傾向や専門教育の早期化の動き,さらに第3節で触
れる入学者受入れの方針も相まって,学生の学びの幅を早期から狭めてしまうことが懸念される。
ユニバーサル段階において,自己決定力の未熟な学生も目立つ中,入学してから時間のゆとりを持って専門分野を選択できる,あるいは柔軟に変更できる仕組み
づくりも検討課題とすべきである。
(ウ) なお,大学設置基準の大綱化以降,国立大学を中心に,基礎教育や共通教育の担い手であった教養部が改組され,その多くが廃止された。この改革は,旧教
養部等の教員に限らず,多くの教員が基礎教育や共通教育に携わることを目指すものであったが,現実には,個々の教員には,研究活動や専門教育を重視する一
方,基礎教育や共通教育を軽んじる傾向も否めないという課題も残っている。
各大学において,その実情に応じて,基礎教育や共通教育の望ましい実施・責任体制について,改めて真剣に議論し,適切な対応を取っていく必要がある。
10
― 152 ―
11
�����世界のリーダーを養成する�リーディング大学院」の構築
新成長戦略≪21世紀の日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクト≫
15.「リーディング大学院」構想等による国際競争力強化と人材育成
(3)参考資料(新制大学制度導入当初の「教養」に関する考え方)
博士����リーディングプログラム
○南原繁 「学徒の使命」(昭和20年9月,大学新聞掲載)
今後,国家社会の中堅たるべき青年知識層において,特にこのことが覚醒されなければならぬ。それは自己自身を断えず内面的
に向上し純化する人間として,自らを形成することである。これが「教養(ビルヅング)」の真の意義であり,かような教養を身に着ける
ことが,諸君の大学生活のまたひとつの大きな使命でなければならぬ。それは一言で云えば「人間性理想」(Humanitätsideal)であ
り,祖国と人類の将来は,この理想によって自らの未来を創造するところに成立するであろう。たとい今より後,いかなる最悪の情況
に立ち到ろうとも,その中にあって,われわれはこの理想を放棄してはならない。これが放棄されることは,およそ精神的な人間の没
落と文化の終焉を意味するからである。 (「南原繁の言葉」立花隆編より)
23年度���:39億円(新�)
広く産学官にわたって活躍できる、成長分野等で世界を牽引するリーダー(専門性、俯瞰力、国際性、創造力、
構想力、行動力等を備えた博士人材)を養成する「リーディング大学院」の構築を支援。
 国際的に卓越した教育研究資源を土台に、大学の叡智を結集して、博士課程前期・後期が一貫した学位プログラ
ムにより、世界に通用する質の保証された博士課程教育を構築
 イノベーションにより新たな価値を創造し、世界や人類が直面する課題の解決に導くリーダーを養成する、専攻の枠
を越えた課題設定型プログラムを構築
 カリキュラムの企画段階からキャリアパスの確立まで産業界等が参画した人材養成を実施
○文部省「日本における高等教育の再編成」(昭和23年1月)
三,新制大学の性格
新制大学の一つの特長は一般教養の重視せられる事である。専門的な狭い分野に入る前に社会科学・人文科学・自然科学の広
い基本的な科目を学ぶ事は広い世界を自由にとらわれない立場で眺め人生観世界観を確立するために最も大切な事である。人
格を完成することも国家社会の健康な形成者となる事もこの様な教養を俟って完きを得るのである。又専門的な研究の広い基礎を
確保するためにも不可欠の準備なのである。従来の専門学校においてはこの点に欠ける所があったが,多くの専門学校が新制の
大学に転換するに際してこの一般教養の講座を豊かに持つことは,この再編成の一つの大きな収穫という事ができよう。
プログラムの�型に��て、���プの支援を��(��を�て�大�年�)。�成��年度�でに��件�度を����。
������:��������型�
23年度:3億円(半年分)×2件
・国内外の政財官学界で活
躍しグローバル社会を牽
引するトップリーダーを養
成するための、大学の叡
智を結集した、文理統合
型の学位プログラム
文理統合型
の新たな学位
プログラム
人文学
12
(4)これからの大学教育に求められる教養教育
【これまで示されてきた理念】
○大綱化以前からの教養教育理念=広い知識をもち,総合的な「考える力」の養成
○近年の大学への要請=国際的・社会的なニーズ,多様化する学生への対応。
「学士と共通の学修成果(学士力)」等
【現在示されている課題】
・喫緊の課題としての「大学教育の質保証」。
・知の細分化の進展,学術研究の発展の中,その基盤たる「教養」が知識基盤社会に
おいて必要。
・グローバル化社会の中で求められる活躍,そこで重視される教養的素養
→これから求められていくもの
◎各大学が多様な人材養成の像を描いていく中で,それぞれの大学における
「教養教育」の位置付けを明確化していくことが必要。
14
― 153 ―
社会科学
自然科学
������:複合領域
型�
23年度:1.5億円(半年分)×5件
・グリーン、ライフ、アジ
ア社会経済、ICT等の
分野でイノベーション
を牽引するリーダーを
養成するための、複数
領域を横断した学位プ
複合領域の
ログラム
材料
化学
・新たな分野を拓く
リーダーを養成する
ための、世界的に独
自の優れた資源を生
かした学位プログラ
ム
学位プログラム
・・・
������:������
型�
23年度:2.5億円(半年分)×10件
独自の資源を
生かした学位
プログラム
機械
社会の各界各層で活躍できるリーダーの養成、博士課程教育の抜本的改革
13
4-2
その他の成果発信
先述の成果報告シンポジウムのほか、今年度は、学内における広報活動・成果発信とし
て、①教育 GP ニュースレター(2010 年 3 月、2010 年 10 月、2011 年 2 月の計 3 回)、及び
②筑波大学 FD 委員会編『平成 21 年度筑波大学ファカルティ・ディベロップメント活動報
告書』
(2010 年 7 月)において、教育 GP に関する情報発信を行った。一方、学外に対して
は、岡山理科大学、山形大学、大阪大学、宮崎大学等、及び「大学教育改革フォーラム in
東海 2011」において、教育 GP の取組について講演する機会を得た。さらに、教養教育機
構のウェブページにおいて、ニュースレターの PDF 版を含め、TA 研修会や企画評価委員会
などの取組や成果について発信した。
学外に対する情報・成果発信を行った講演会等の概要は次のとおりである。なお、以下
に挙げた講演会等以外に、他大学からの調査の受け入れも行っている。これについては、
他の講演とあわせて、「Ⅰ 取組総括報告」に掲載した一覧を参照いただきたい。
第 15 回岡山理科大学 FD 講演会および討論会
岡山理科大学より、教養教育再編に向けた検討を進めるにあたり、現在求められている
教養教育について教員の認識共有を図るきっかけとして、筑波大学における教養教育の再
構築に関する講演依頼をいただき、教育 GP について報告する機会を得た。
日
時:2010 年 7 月 29 日(木)
場
所:岡山理科大学
16:00~18:10
第 25 号館 8 階理大ホール
講演者:石田東生(教育企画室長)
演
題:筑波大学における教養教育改革の試み
―「筑波スタンダードに基づく教養教育の再構築」の成果と課題―
主
催:岡山理科大学
共
催:科学 Try アングル岡山
後
援:岡山オルガノン
平成 22 年度山形大学教員研修会第 12 回基盤教育ワークショップ
日
時:2010 年 8 月 6 日(金)10:00~16:30
場
所:山形大学基盤教育棟
講演者:小笠原正明(特任教授)
演
題:『統合された科学の授業は可能か?』―筑波大学の試み―
主
催:山形大学教育方法等改善専門部会、高等教育研究企画センター
大阪大学シンポジウム「ティーチングアシスタント制度とキャリア教育への展開」
大阪大学において平成 22 年度 6 月に教育・情報室の下に設置された「TA・RA のあり方
検討ワーキング」の活動の一環として実施されたシンポジウムであり、本学を含む 4 大学
への訪問調査、教員・TA に対するアンケート調査、学内部局の聞き取り調査等を踏まえて
― 154 ―
開催された。
日
時:2011 年 2 月 18 日(金)13:30~17:30
場
所:大阪大学吹田キャンパス
銀杏会館 3 階大会議室
講演者:小笠原正明(特任教授)
演
題:「筑波大学の Teaching Fellow 制度と TA/TF 研修会について」
主
催:大阪大学「TA・RA のあり方検討ワーキング」
宮崎大学「平成 22 年度 FD/SD 研修会」
宮崎大学の FD/SD 研修会は、教育改善の取組を組織的に推進するため、学内外の研究
者を招き定期的に開催されている。今年度の研修会は、
「ディプロマ・ポリシー、カリキュ
ラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーを考える」を全体テーマとして実施され、特
別講演として筑波スタンダードと教育 GP の取組に関する報告機会を得た。
日
時:2011 年 3 月 7 日(月)
場
所:宮崎大学
13:30~15:30
附属図書館 3 階大会議室(木花キャンパス)
講演者:石田東生(教育企画室長)
演
題:筑波スタンダード―そのコンセプトとプロセス―
主
催:宮崎大学教育・学生支援センター
大学教育改革フォーラム in 東海 2011
「大学教育改革フォーラム in 東海」は、東海地域の大学・短大等に所属する教職員が一
同に会し、教育改善の方策について意見交換をすることを趣旨として毎年開催されている
ものである。今年度の基調講演を本学の小笠原正明特任教授が行うこととなった。講演で
は、「大学における学び」における近年の変化や必要な支援内容等とともに、教育 GP の先
導的科目「現代人のための科学」について、開発・実施過程で生じた具体的な問題の説明
や成果として作成された教科書の紹介がなされた。
日
時:2011 年 3 月 12 日(土)
場
所:名古屋大学 IB 電子情報館・中央図書館
10:00~17:50
講演者:小笠原正明(特任教授)
演
題:学生の学びを支援する大学改革
主
催:大学教育改革フォーラム in 東海 2011 実行委員会、FD・SD コンソーシアム名古屋
後
援:大学行政管理学会中部・北陸地区研究会
― 155 ―
4-3
GP企画評価委員会
GP 企画評価委員会は、教育 GP の取組における方向性や実施内容について、評価・助言
をするために設置された委員会(アドバイザリーボード)であり、本学の教員のほか、国
内外の他大学の教員及び産業界の有識者が委員となっている。委員は別表のとおりである。
これまでに、2009 年 3 月 11 日に第 1 回、2009 年 7 月 28 日に第 2 回、計 2 回開催している。
今年度は、海外委員の訪日日程に合わせて第 3 回を 8 月 2 日、さらに最終的な評価を受
けるために第 4 回を 3 月 4 日に開催した。各回の概要及び学外委員による評価・助言等を
以下に報告する。
第 3 回GP企画評価委員会
日
時
2010 年 8 月 2 日(月)
場
所
ホテル京阪京都
出席者
3階
15:00~17:00
藤の間
(敬称略)
【学外】リンダ・フォンヘーネ、サブリナ・ソラッコ、イ ヘジュン、安藤 厚
【学内】石田 東生、石川 本雄、宮本 陽一郎、小笠原 正明
【オブザーバー】宮田 裕州(教育推進部長)、関 瑞穂(教育企画課専門員)、
河内 真美(教養教育機構研究員)
次
第
15:00
開会挨拶
15:05
筑波スタンダードに基づく教養教育の再構築:目的と概要
石田 東生
石田 東生
15:15
新しい科学授業科目の導入と筑波大学における教養教育改革への示唆
小笠原 正明
15:30
授業開発におけるTAの役割:筑波大学における「現代を読もう」の事例
宮本 陽一郎
15:45
2010 年度TA研修会:概要と参加者の感想
河内 真美
16:05
議
16:55
閉会挨拶
論
石田 東生
学外委員からの評価・助言等
補助事業開始から 2 年に満たない短期間のなかで、多くの取組が実施され成果が出てい
る点において学外委員からは一様に高い評価が得られ、補助事業期間終了後も取組内容を
発展的に継続することへの期待と要望が出された。その他、全体議論で出された学外委員
の主な意見・コメントは以下のとおりである。
(●:学外委員の意見・コメント、▲:筑波
大学委員による応答)
― 156 ―
【教養教育カリキュラム改革】
● 学生による幅の広い分野の履修を保証するためには、自分の専門と異なる分野の履修を
数単位分必修化する必要があるのではないか。
● バークレー校では、全学生が6つの分野から履修することが必要。高年次でも異分野
の数科目が必修。アメリカの多くの大学で同様。
▲ 来年度から総合科目については構造化(自然科学と人文・社会科学それぞれからの2
単位以上の履修を必修化)。
● 教養教育科目の必修単位増よりも、アクティブ・ラーニングや単位の実質化(適切な課
題量など)により教育の質を高めることが重要とも考えられるがどうか。
▲ 大学設置基準大綱化の際に総合科目の必修単位数は 6 単位に減少したので、少し戻そ
うという議論を始めた。しかし、専門科目との兼ね合い等で単位増は難しく、来年度
から導入される新カリキュラムでは 1 単位のみ増加する。
【先導的科目】
●「現代人のための科学」は、すべての人々が身につけるべき最低限の科学的素養を扱う
統合科目として意義深い。
● 共同教授(co-teaching)による分野横断性を活かすためには、担当教員が複数いて
週ごとに変わるということではなく、物理的に同時に複数の教員が教室にいてあるト
ピックの議論を行うことが重要ではないか。
▲ 物理的に複数の教員が同席することは教員の忙しさや負担の点から難しい。そのため、
TA ミーティング等における授業内容の検討、教科書の作成、Moodle の活用を通し
て、授業の統合性を高めようとしている。
● 「現代を読もう」で、各ディスカッション・セクションについて TA が報告書を出して
いるのは大変評価できる。
【TA 研修】
● TA 制度を効果的なものにするためには教員の参加が不可欠であり、教員に対する取組
をすでに検討していることは大変良い。
● TA 経験者が回答した TA 業務内容についてのデータは、現在の TA 活動が大学院生
のプロフェッショナル・ディベロップメントに必ずしも寄与していないため、改善す
る必要があることを主張するうえで説得力がある。
● バークレー校では、TA とともに良い授業運営をしている教員の活動内容紹介をウェ
ブページで公開することで、他の教員が参照できるようにしている。
● 教員が自分の教育経験や直面した困難について、TA と議論することが有効である。
● 研修への教員の参加を促すには、TA 自身からの要望が非常に効果的であろう。
● TA 研修会で各参加者が1つの分科会しか選べないという問題点は、バークレー校では、
同様のワークショップを1年通して数回開催することなどで対応している。
【その他】
● 自分が考えてみなかったことを実践しているなど筑波大学の取組から学ぶ点も多く、こ
のような良い意見交換の場が今後も続くことを期待している。
― 157 ―
第 4 回GP企画評価委員会
日
時
2011 年 3 月 4 日(金) 10:00~12:00
場
所
秋葉原 UDX 4 階
出席者
ゲストルーム A
(敬称略)
【学外】安藤 厚、高藪 裕三
【学内】清水 一彦、石田 東生、石川 本雄、宮本 陽一郎、小笠原 正明
【オブザーバー】宮田 裕州(教育推進部長)
、太田 知啓(教育企画課長)
関 瑞穂(教育企画課専門員)、河内 真美(教養教育機構研究員)
次
第
10:00
開会挨拶
10:05
筑波スタンダードに基づく教養教育の再構築:取組総括
清水 一彦
石田 東生
10:35
議
11:30
学外委員からの評価
11:55
閉会挨拶
論
石田 東生
学外委員からの評価・助言等
教育 GP の下、多くの取組が企画・実施され、先導的な教養教育プログラムとそれを支え
るインフラストラクチャーが整備されたことにより、教養教育の質を持続的に高めていく
ための基盤が築かれたことに対して、学外委員からは大変高い評価が得られた。その他、
全体議論で出された学外委員の主なコメントは以下のとおりである。(●:学外委員の意
見・コメント、▲:筑波大学委員による応答)
【教養教育の実質化】
● 実施体制に関して、実際に担当する教員はどのように動員しているのか
▲ 筑波大学の教養教育は全学出動体制で行っている。ただし教員の意識としては、大
綱化以降徐々に専門志向が強くなっている。そのため、現在、教養教育関係の科目
担当教員にインセンティブを与える仕組みを検討中である。
▲ 外部資金の獲得において、研究の成果が求められる状況下で、各教員が研究と教育
のバランスの折り合いをどのようにつけ、教育にも目を向けてもらうかが大きな課
題である。
● 開設科目が 6,000 あるのは多すぎるのではないか
▲ 現在 6,000 科目が開設されているのは、学類再編の移行期であり旧組織所属学生と
新組織所属学生それぞれに対応した科目が混在しているためである。移行期が終わ
る 2~3 年後には 4,500 科目までは減る見込みであるが、それでも多いと感じてい
るので、今後授業科目の精選を促進したい。
● 北海道大学では現在約 4,500 科目が開設されているが、倍の数の学生数を持つ UC
バークレーでは 3,000 科目しか開設していない。日本の大学では、学生数に対する
― 158 ―
教員数が多く、少人数授業へのこだわりが強いが、少人数の授業科目については TA
の積極的参画を進め、教員への過剰な負担を減らすことも必要だと考える。
▲ 科目数を減らすためには、1 科目あたりの重み(単位数)を増やし、単なる単位の
積み重ねではなく、
「科目を履修する」という考え方に変えていくことが重要だと考
えている。教育の実質化と CAP 制の連動が課題である。
▲ 「特別講義」や「現代人のための科学」などで試みた先導的科目における TA の参画は、
大人数授業でも教育の質を高く保つ方法があることを示しており、他の大学にも参考に
なる取組だと考えている。
【学生の学習成果】
● 教育 GP の取組により、学生の学習成果はどう変わったのか。学習成果の変化を示すデ
ータは採っているか。
▲ 現在のところあるデータとしては、学生による授業評価(授業満足度や学習内容理
解度の向上または高さ)や、成績分布(成績評価の厳格化)がある。
● 北海道大学では、CAP 制導入後、GPA の大幅な上昇がみられた。このようなデータ
も採ったほうが良いのではないか。
▲ GPA については、一部の学類ではすでに導入しているが、全学での導入を現在検討
中である。
▲ 学生の学習成果の向上については、一部の授業科目における試みのみでは難しい。
必修科目でない限り、学生は自由に科目を選択できるからである。総合科目であれ
ば総合科目全体で学習成果を管理していくことが重要だと考えている。
●今後は Institutional Research にも力を入れてほしい。
【大学の経営と社会との連携】
● システム(経営のためのシステムや、学群・学類と教員組織等との関係性など)がかな
り複雑であり、外部の人からはわかりにくくなっている。
▲ これからは「見える化」を促進し、社会に理解してもらえるようにする必要性を強
く感じている。システムは複雑であるが、その運用はシンプルでわかりやすいもの
にしていきたい。
● 北海道大学では、大学の経営の中心を担う人材を育成するため、中堅教員に対する教育
マネージメントに関する FD を開始することにしている。
― 159 ―
筑波大学教育GP 企画評価委員会委員名簿
Members of Advisory Board on Education Good Practice Program, University of Tsukuba
氏 名
Name
所 属
Institute
職 名
Position
リ ン ダ ・ フ ォ ン ヘ ー ネ カリフォルニア大学バークレー校
Linda
von
Hoene University of California, Berkeley
GSIティーチング・リソースセンター長
Director, Graduate Student Instructor
Teaching and Resource Center
サ ブ リ ナ ・ ソ ラ ッ コ カリフォルニア大学バークレー校
Sabrina
Soracco University of California, Berkeley
大学院アカデミック・サービス部長
Director, Graduate Division Academic
Services
イ
ヘ
Hye-Jung
教授・学習センター
eラーニング・サービス部長
Director, e-Learning Support, Center
for Teaching and Learning
安
Atsushi
ジ
ュ
藤
ン ソウル国立大学
Lee Seoul National University
高等教育機能開発センター
高等教育開発部 研究員
Research Fellow, Research Division for
Higher Education, Center for Research
and Development in Higher Education
厚 北海道大学
Ando Hokkaido University
社団法人日本プロジェクト産業協議会
専務理事
裕
三
(JAPIC)
Executive Director
Takayabu
Japan Project-Industry Council
高
藪
Hiromitsu
備考
Remarks
前高等教育機能開発
センター
高等教育開発部長
元新日本製鐵(株)部
長
筑波大学 Univ.of Tsukuba
氏 名
Name
清
水
Kazuhiko
石
Haruo
一
田
東
所 属
Institute
職 名
Position
副学長
教養教育機構長
Vice President
Director,Organization of Liberal
Education
彦
Shimizu
システム情報工学研究科
生
Graduate School of Systems and
Ishida
Information Engineering
システム情報工学研究科
本
雄
Graduate School of Systems and
Ishikawa
Information Engineering
石
川
Motoo
宮
本
Yoichiro
陽
小
笠
Masaaki
原
備考
Remarks
人文社会科学研究科
一
郎
Graduate School of Humanities and
Miyamoto
Social Sciences
正
明 教養教育機構
Ogasawara Organization of Liberal Education
― 160 ―
教 授
学長補佐
教育企画室長
Professor
Advisor to the President
Director, Education Planning and
Manegement Office
Member
Organization of
Liberal Education
教 授
Professor
Member
Organization of
Liberal Education
教 授
Professor
Member
Organization of
Liberal Education
特任教授
Specially Appointed Professor
Member
Organization of
Liberal Education
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