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院内感染対策指針 1.院内感染について ②④⑥ a) 発生場所 従来、医療

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院内感染対策指針 1.院内感染について ②④⑥ a) 発生場所 従来、医療
院内感染対策指針 諌山担当
院内感染対策指針
1.院内感染について ②④⑥
a) 発生場所
従来、医療機関において患者が原疾患とは別に新たに罹患した感染症もしくは 医療従事者等が医
療機関内において感染した場合、院内感染(Nosocomial Infection)または病院感染(Hospital
Infection または Hospital Acquired Infection)とされていた。近年、医療の提供は医療機関以外で
も、長期療養施設や在宅医療など多様化した場所で病原体への暴露の可能性が出てきている。2007
年、米国疾病対策センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)が公表した「隔離予
防策のガイドライン:医療現場における感染病原体の伝播の予防」では、院内感染という用語では
なく医療関連感染(HAI: Healthcare-Associated Infection)という用語の使用が提唱され、世界的
に広く使用されている。
b) 日和見感染
医療関連感染においては、普段は病原性を出さない菌による易感染患者への感染(日和見感染)
は感染拡大や重篤化において深刻な問題を生じる。特に緑膿菌、アシネトバクターなどのグラム陰
性菌は多剤耐性を示し集団発生の危険性が高い。また、グラム陽性菌であるメチシリン耐性黄色ブ
ドウ球菌(MRSA)による感染は、健常人では発症することは稀であるが、抵抗力の衰えた患者には
容易に発症し治療抵抗性を示す。
易感染性患者:新生児、未熟児、高齢者(特に寝たきり)、低栄養状態、重症熱傷患者、
悪性腫瘍・糖尿病・肝硬変・免疫不全などの基礎疾患を持つ患者等
c) 病原体の由来
・内因性感染:抗菌薬の投与による菌交代現象により発生する。
・外因性感染:MRSA 感染のように、医療従事者の手指などを介して伝播し発生する。
d) 感染成立要件
感染症が発症するには、1)病原体の存在、2)病原性の強さ、3)病原体の量、4)伝播経路(接触、
飛沫、空気)、5)侵入門戸、6)宿主感受性(易感染性)などの条件が必要である。
e) 感染制御
感染成立要件の諸条件の少なくともひとつを満たさないようにして、感染症の発生を事前に防
止し(prevention)、発生した感染症の拡大を防ぐこと(control)を意味する。
f)
①
②
③
④
主な医療関連感染
手術部位感染(SSI)
尿道留置カテーテル関連尿路感染(UTI)
血管内留置カテーテル関連血流感染(BSI)
人工呼吸器関連肺炎(VAP)
2.
院内感染対策に対する基本的な考え方及び手技
http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/pdf/isolation2007.pdf
訳 http://www.yoshida-pharm.com/2012/text01_02/
1996 年 CDC は院内感染予防対策として「病院における隔離予防策のためのガイドライン」を公
表し、各国の感染対策に大きな影響を与えた。以後も「2002 年 手指衛生」
「2003 年 環境感染管
理」
「2005 年 結核」などのガイドラインを公表し、2007 年にこれらのガイドラインを統合して「隔
離予防策のためのガイドライン:医療現場における感染性物質の伝播予防」を公表した。これには
今までの標準予防策に呼吸器衛生/咳エチケット等の追加や SARS 等近年対策が必要なものについ
ての勧告が含まれている。
院内感染の多くは接触感染であるので、
「標準予防策」に準じて手洗いを励行しマスク、手袋など
の適正使用が求められる。また、職員に対する教育が重要であるのは論を待たない。以下、2007 年
CDC のガイドラインの概説と院内感染の中でも特に重要な MRSA、結核、緑膿菌やアシネトバク
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院内感染対策指針 諌山担当
ターなどの多剤耐性菌によるアウトブレーク対策につき各論的に詳述する
(A)標準予防策について
感染性微生物の存在の有無が不明な段階においては、すべての患者のケアに適用する。汗を除く
すべての血液、体液、分泌液、排泄物、傷のある皮膚、粘膜は伝播しうる感染性微生物を含んでい
る可能性があるという原則に基づく。
(1)手指衛生
a)患者付近のものに不必要に手を触れない。
b)手洗いの実際
手の肉眼的汚れ(+)
:石けんと水。
肉眼的汚れ(-)
:①擦式アルコール手指消毒薬 または ②石けんと水。
石けんと水+擦式アルコール手指消毒薬の使用は、頻回では皮膚炎の可能性が高くなる。
c)手指衛生を実施すべきタイミング
①患者に直接接触する前 ②血液、血性体液、排泄物、粘膜、創のある皮膚、創部ドレッ
シングに触れたあと ③患者の正常皮膚に触れたあと ④手袋を外したあと
(2) 個人防護具(PPE: personal protective equipment)
a) PPE 使用原則
①血液や血性体液への接触可能性がある場合に着用 ②PPE を脱ぐ過程で衣類や皮膚を
汚染しないようにする ③退室する前に、PPE を脱ぎ廃棄する。
b) 手袋、ガウン
①血液、粘膜、創のある皮膚などへの接触が予想される場合は、手袋、ガウンを装着する。
②患者環境から出る前に、手袋、ガウンをとって手指衛生を行う。
c) 口、鼻、眼の防御
①処置時の体液飛散可能性がある場合、粘膜を守るためにマスク、ゴーグル、フェイスシ
ールドなどを使用する。
(3)呼吸器衛生/咳エチケット
a)ウイルス性気道感染(インフルエンザ、RS ウイルス、アデノウイルスなど)の流行時期は、
飛沫感染および媒介物感染を防ぐために、感染源制御法の重要性について、医療従事者を
教育する。
b)外来の入り口などにポスターを貼り、咳やくしゃみの際の手指衛生を啓発する。
c)擦式アルコール手指消毒薬のディスペンサーを設置。
d)呼吸器感染症の流行期には、入り口で咳をしている患者や付き添い人へマスクを提供する。
e)待合室では隣の人と約 1m距離をおくことを勧める。
(4)患者配置
環境を汚染させる可能性のある患者はできれば個室にいれる。
(5) 患者ケア器材および器具/機器
a)汚染可能性のある器具の取り扱い手順の確立。
b)消毒滅菌の効果を高めるため、洗剤を用いて有機物質を除去する
(6)環境の維持管理
a)ベッド柵やドアノブなど接触機会の多い部位は、より頻回に洗浄および消毒する。
b)感染性微生物の伝播が継続する場合、消毒薬耐性菌の存在の可能性を考える。
(7)安全な注射手技
a)注射器は滅菌単回使用、
b)単回量バイアル、アンプルから複数の患者に薬剤を投与しない。
(8)腰椎穿刺手技のための感染制御策
脊柱管や硬膜外腔にカテーテルを留置、注射する際には外科用マスクを装着する。
(9)血液媒介病原体から医療従事者を守るため、ガイドラインを遵守する。
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院内感染対策指針 諌山担当
(B)感染経路別予防策
感染性微生物を保菌もしくは発症していることが疑われる患者には標準予防策に加えて、感染経路
別予防策を用いる。
(1)接触予防策
訳 http://www.yoshida-pharm.com/2012/text01_03_02/
a) 接触感染の危険性が高いと判明しているか疑われている患者には接触予防策を用いる。
b) 患者の入室先は個室を原則とする。入室先の決定には下記の原則を適用する。
① 排膿、便失禁などが続く患者は個室入室を優先する。②同じ病原体を発症または保菌し
ていて条件の合う患者と同じ病室に一緒に入室させる。③同室者としては免疫が正常で、
創部が開いていない患者を選択し、お互いの距離は1m以上離し、接触する機会を減ら
すため間にカーテンを引く。④一人の患者の処置が終われば防護着を交換し、手指衛生
を実践する。
c) 個人防護具の使用
①手袋:患者の健常皮膚や患者周辺のベッド柵などに触れるときには常に手袋を装着する。
手袋は病室または小個室に入室するときに装着する。
②ガウン: 患者や周辺の器物に衣類が直接触れることが予想されるときは常に、ガウンを
着る。ガウンは病室に入室するときに装着する。退室時にガウンを脱いで、手指衛生を
遵守する。ガウンを脱いだあとは、衣類や皮膚が室内のものに接触しないようにする。
d) 患者の移送
①急性期ケア病院、長期ケア、その他の在宅医療では、病室外への患者の移送や移動は医
学的に必要な目的に限定する。②必要な場合は、患者の体の感染部位や保菌部位が包まれ
て覆われていることを確認する。③接触予防策下の患者を移送する前には、汚染した PPE
は脱いで廃棄し手指衛生を行う。④移送先で患者を取り扱うには清潔な PPE を装着する。
e)
在宅ケア
①接触予防策下の患者の家に持ち込む使い捨てしない患者ケア器具の数を制限する。可能
であれば、在宅ケアサービスが終了するまで患者ケア器具は家の中に置いておく。
②聴診器など家に置いておくことができなければ、家から持ち出す前に低水準~中水準の
消毒薬を用いて、器具を洗浄および消毒するか、プラスチックバッグに入れて、移送して
から洗浄と消毒をおこなう。
f) 環境制御策
接触予防策の患者の部屋は高頻度接触表面(ベッド柵、ベッドサイドテーブル、ドアノブ
など)および患者の直近にある器具に焦点を合わせて、頻回の洗浄と消毒(少なくとも毎
日など)を優先的に実施する。
g) 感染の徴候や症状が改善したら、接触予防策を解除する。
(2) 飛沫予防策
a) 咳、くしゃみ、会話している患者からの気道飛沫(5μm 以上の大きな粒子飛沫など)によ
って伝播するような病原体に感染もしくは疑われる患者には、飛沫予防策を用いる。
b) 患者の入室先
①急性期病院では可能ならば、飛沫予防策が必要な患者は個室に入室させる。個室が足り
なければ、患者の入室先を決定するために、下記の原則を採用する。
② 咳や喀痰の多い患者には個室入室を優先する。③同じ病原体に感染していて条件の合
う患者と同じ病室に一緒に入室させる。④同じ感染症を持っていない患者の病室に飛
沫予防策が必要な患者を入室させる必要があるならば、イ) 感染によって不幸な結果
になる危険性が高い状態の患者、または伝播に拍車をかけるような状態の患者と同じ
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院内感染対策指針 諌山担当
病室に、飛沫予防策下の患者を入室させることを避ける(免疫不全の患者、長期滞在が
予想される患者など)、ロ)患者がお互いに物理的に隔離されていることを確認する (約
1m 以上の距離など)。濃厚接触の機会を最小限にするためにベッドとベッドの間にカ
ーテンを引いておく、ハ)患者が飛沫予防策下にあるか否かに拘わらず、同室の患者接
触と患者接触の間には防護着を交換して、手指衛生を実施する。
c) 個人防護具の使用
① 病室または小個室に入室するときにはマスクを装着する。②飛沫予防策を必要とする
患者への濃厚接触に、マスクに加えて眼防御(ゴーグルやフェイスシールドなど)を日常的に
装着する勧告はなく、未解決問題である。③ SARS、鳥インフルエンザ、パンデミックイ
ンフルエンザが疑われているか確定している患者については、最新の勧告について下記の
ウエブサイトを参照する。
( www.cdc.gov/ncidod/sars/ ;www.cdc.gov/flu/avian/ ;www.pandemicflu.gov/)
d) 患者の移送
① 急性期ケア病院、長期ケア、その他の在宅医療環境では、病室外への患者の移送や移動
は医学的に必要な目的に限定する。② 医療現場において移送や移動が必要な場合は、マス
クを装着して呼吸器衛生/咳エチケットに従うよう患者を教育する。③ 飛沫予防策の患者
を移送する人にはマスクは必要ない。④症状が改善したら、飛沫予防策を解除する。
(3) 空気予防策
a) 空気感染経路によってヒトーヒト間を伝播する感染性微生物(結核菌、麻疹、水痘、播種
性帯状疱疹など) に感染もしくは疑いの患者には空気予防策を用いる。
b) 患者の入室先
①急性期病院および長期ケアでは、空気予防策が必要な患者を、現在のガイドラインに従
って建築された AIIR に入室させる。② 1 時間に少なくとも 6 回(既存施設)または 12 回(新
築/改築施設)の換気をおこなう。③ 空気は外部に直接排気する。AIIR から外部に空気を
直接排気できなければ、すべての空気が HEPA フィルターを通過するならば、空調システ
ムまたは近傍空間に空気を戻してもよい。④ AIIR が空気予防策下の患者に用いられると
きには、差圧感知器(圧力計など)の有無に拘わらず、空気圧を肉眼的指標(スモークチュー
ブ、パタパタする細長い切れなど)で毎日測定する。⑤ 入退室しなければ AIIR の扉は閉め
ておく。⑥ AIIR が利用できないときは、AIIR が利用できる施設に患者を移送する。
⑦空気予防策が必要な患者が集団発症した場合には、AIIR ではなく代替病室の安全性を決
定するため、患者入室の前に感染制御専門家に相談する。⑧施設に陰圧環境を作る為に排
気扇などを用いる。空気は外部に直接排気するか、排気前に HEPA フィルタで濾過する。
c)外来
① 外来入口で空気予防策が必要な患者かどうかを同定するためのシステム(トリアージ、
サインなど)を構築する。②可能な限り迅速に AIIR に入室させる。AIIR が利用できなけれ
ば、外科用マスクを装着させ検査用の部屋に入室させる。患者が退室したあとは空気が完
全に入れ替わるために必要な時間(一般的に 1 時間)、部屋を空室にしておく。③空気感染が
疑われる患者には外科用マスクを装着させ、呼吸器衛生/咳エチケットを遵守するように
教育する。AIIR に入れば、マスクを取り外しても良い。患者が AIIR の外に出る際には、
マスクは装着する。
d) 職員の制限
免疫のある医療従事者が他にいるなら麻疹、水痘、播種性帯状疱疹、天然痘の患者もしく
は疑われる患者の病室に、免疫のない医療従事者が入ることを制限する。
e) PPE の使用
① 下記の疾患が疑われているか確定している場合、患者の病室や家に入るときには呼吸
器防御のために、フィットテストされた N95 マスクまたはそれ以上の高レベルのレスピレー
タを装着する。
イ)肺結核、喉頭結核、結核皮膚病変の患者に結核菌をエアロゾル化するような措置が実
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院内感染対策指針 諌山担当
施される場合(洗浄、切開と排膿、渦流浴治療など)。
ロ)天然痘。すべての医療従事者には呼吸器防御が推奨される。天然痘ワクチンを接種し
たあとに「獲得」の確認がなされた人々も含まれる。ワクチンが無効である遺伝子組み換え
ウイルスの危険性、または極めて大量のウイルス量に曝露する危険性(ハイリスクのエアロゾ
ル産生処置、免疫不全の患者、出血型または扁平型天然痘)があるためである。
② 麻疹、水痘、播種性帯状疱疹が確認されているか疑われている人をケアする場合、医
療従事者の免疫の有無にかかわらず、PPE を使用することに関する推奨はない。
f) 患者の移送
① 急性期ケア病院、長期ケア、その他の在宅医療環境では、病室外への患者の移送や移
動は医学的に必要な目的に限定する。② AIIR の外での移送や移動が必要ならば、できれば
外科用マスクを装着して呼吸器衛生/咳エチケットを遵守するように患者を教育する。③
水痘や天然痘による皮膚病変、または排膿している結核皮膚病変のある患者については、皮
膚病変の感染性微生物のエアロゾル化または接触を防ぐために感染部位を覆う。④ 空気予
防策下の患者を搬送している医療従事者は、患者がマスクをしていて感染性皮膚病変が覆わ
れていれば、搬送の際にマスクやレスピレータを装着する必要はない。
g) 曝露処置
①麻疹、水痘、天然痘の患者に無防備接触(曝露)したら、可能な限り迅速に感受性のある人々
にワクチン接種するか適切な免疫グロブリンを提供する。②麻疹ワクチンは曝露後 72 時間
以内に接種する。ワクチンが禁忌のハイリスクの人々(免疫不全の患者、妊婦、母親の水痘発
症が出産前の 5 日未満または出産後 48 時間以内の新生児)には曝露から 6 日以内に免疫グロ
ブリンを投与する。③水痘ワクチンは曝露後 120 時間以内に投与する。ワクチンが禁忌のハ
イリスクの人々には 96 時間以内に水痘免疫グロブリンを投与する。④天然痘ワクチンは曝
露後 4 日以内に接種する。
h) 防護環境
1) 同種造血幹細胞移植(HSCT: hematopoietic stem cell transplant)の患者は環境真菌(ア
スペルギルス属など)の曝露を減らすために、「HSCT 患者における日和見感染予防のための
ガイドライン」
「医療施設の環境感染制御のためのガイドライン」
「医療ケア関連肺炎の予防
のためのガイドライン」に記載されているような防護環境に入室させる。
2) 防護環境が必要な患者には下記を実施する。
イ)環境制御
① 直 径 0.3 μ m 以 上 の 粒 子 の 99.97% を 除 去 で き る HEPA(high efficiency
particulate)フィルタのセントラル使用またはポイント使用によって流入空気を濾
過する
②病室の一側から空気が供給され、患者ベッドを越えて空気が移動し、病室の反対側
の排気口から流出する一方向性空気流を用いる。
③ 室内空気圧を廊下よりも陽圧(12.5 Pa 以上の差圧)にする。
④空気圧を肉眼的指標で毎日測定する。
⑤ 外部空気の侵入を防ぐために病室を十分にシールする。
⑥1 時間に少なくとも 12 回換気する。
ロ) 埃レベルを低くする。埃をみつける度に水平表面を湿式集塵し、埃が蓄積している
かもしれない割れ目やスプリンクラーの頭部分を日常的に洗浄する。
ハ)区域では廊下や病室のカーペットを避ける。
ニ)ドライフラワー、新鮮な花、鉢植え植物を禁止する。
i) 防護環境を必要とする患者が、診断的措置や他の活動のために病室外にいる時間を最小に
する。
用語辞典
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院内感染対策指針 諌山担当
○ 感染(infection)
微生物が防御機能を回避または乗り越えて宿主組織内で増殖および侵入し、宿主に伝播した状態の
こと。感染に対する宿主の反応には臨床症状が含まれるが、不顕性のこともある。宿主組織を傷害
する微生物の直接的な病原性や細胞性反応または抗体反応の働きによって疾患の症状発現は修飾さ
れる
○ 院内感染(nosocomial infection)
2 つのギリシャ語「nosos」(病気)および「komeion」(世話をする)に由来する言葉であり、急性期
ケア施設(病院)に入院中または入院した結果として発生し、かつ入院時は潜伏期間ではなかった感
染のことを言う。
○ 医療関連感染(HAI: healthcare-associated infection)
医療が提供されている環境(急性期ケア病院、慢性ケア施設、外来クリニック、透析センター、サー
ジセンター、在宅など)において、ケアされている患者に発生し、かつ医療を受けていることに関連
している感染のこと(医療が提供された時点では潜伏期でなく、感染もしていない)。外来および在
宅では、HAI は内科的または外科的介入に関係した感染に適用される。感染した地理的な場所は不
確かなことが多いので、
「医療獲得」よりも「医療関連」のほうが用語として好まれる。
○ 保菌(colonization)
身体の表面または内部での微生物の増殖であるが、検出できるような宿主免疫反応、細胞障害、臨
床症状はみられない。宿主内に微生物が存在する期間は様々であるが、潜在的な感染源になるかも
しれない。多くの場合、保菌とキャリアは同意語である。
○ 多剤耐性微生物(multidrug-resistant organism (MDRO))
一般的に、1 つ以上のクラスの抗菌薬に耐性であるが、通常は 1 つまたは 2 つの抗菌薬製品を除
き、全ての抗菌薬に耐性な細菌のこと(MRSA、VRE、基質拡張型β-ラクタマーゼを産生している
グラム陰性桿菌[ESBL]または本来的に耐性のグラム陰性桿菌)。
○ 空気感染隔離室(AIIR:airborne infection isolation room)
AIIR(以前は陰圧隔離室と呼ばれていた)は、空気感染性疾患が疑われているか確定している人々を
隔離するために用いられる個室病室である。咳による飛沫核やエアロゾル化した汚染体液によって、
ヒトからヒトに感染する感染性微生物の伝播を最小限にするために、AIIR では環境因子が制御さ
れる。AIIR では、病室内が陰圧となり(空気流はドアの隙間の下から病室に流れ込む)、1 時間に 6
~12 回の換気がなされ (既存施設では 1 時間に 6 回換気され、新築または改築施設では 12 回換
気される)、空気は病室から建物の外部に直接排気されるか、病室に戻る前に HEPA フィルタで濾
過されてから再循環される。
○ 個人防護具(personal protective equipment (PPE))
粘膜、皮膚、衣類が感染性微生物に接触するのを防ぐために、単独または組み合わせて用いる様々
なバリアのこと。PPE には手袋、マスク、レスピレータ、ゴーグル、フェースシールド、ガウンが
含まれる。
①
http://www.bdj.co.jp/safety/news/HAI_word1.html
②
http://www.yoshida-pharm.com/2012/text01_01/
③
http://www.tyojyu.or.jp/hp/page000000700/hpg000000637.htm
④
医政指発0617第1号平成23年6月17日 厚生労働省医政局指導課長 通知
⑤
http://www.yoshida-pharm.com/2004/point_02/
⑥
http://www.kankyokansen.org/modules/publication/index.php?content_id=13
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院内感染対策指針 諌山担当
3.手洗い上の注意
院内感染において患者への病原体の伝播はその表面に接触した医療従事者の手によることがほと
んどである。手洗いの意義はこの感染経路を遮断することにある。感染対策で一番重要であり、ま
た一番おろそかになりがちで実行困難であるので、日常の習慣づけが必要である。
手の細菌数は以下のように減少する。
普通の石鹸と流水
15 秒:1/4~1/3
擦式消毒用アルコール製剤
30 秒:1/60 ~1/600
30 秒:1/3,000
60 秒:1/10,000~30,000
従って以下のことに注意する。
1)日常業務では石鹸と流水で 15~30 秒手洗いをおこなう。
2)滅菌、非滅菌を問わずディスポ手袋装着前後でも手洗いをおこなう。
3)手洗いが不十分になり易い指先、爪、指間部、手首、親指の付け根などの手洗いを忘れずに。
4)水節約のため流量を絞らず十分な流水で手洗いを。
5)流水で手洗い出来ない時はウエルパスなどの乾式消毒で代用。
6)手洗い後はペーパータオルを用いる。そのペーパータオルを使って栓を閉める。
7)水道栓はワンタッチか自動水洗を使用する。
医療機関の新築には各病室への水道の設置が院内感染対策として法的に義務づけられている。
4.職員の感染防止対策について
a) 血液体液暴露事故防止
針刺し事故が一番多い。また、損傷皮膚・粘膜及び目に対する接触予防で感染をほぼ完全に防
げる。高リスク体液との直接接触を避ける。高リスク体液とは関節液、脳脊髄液、血液、羊水、心
嚢液、腹水、精液、膣分泌液、その他の血液汚染が肉眼で確認された体液のことをいう。損傷皮膚、
粘膜および目が汚染されたら、①石鹸と流水で洗えれば荒い流す、②目に入った時は直ちに水で洗
う、③口に入った時は大量の水ですすぐ、④責任者に報告、記録するとともに、対応策を検討する。
b) 針刺し事故防止対策
1)針刺し事故発生時の対応
手術室では持針器の針、メスによる事故が多い。針刺し事故が発生したら必ず所属長に報告
する。
2)針刺し事故防止対策
注射針を含め鋭利な医療器具は全て、使用未使用を問わず、感染性廃棄物である。以下のこ
とに注意する。
①キャップを外した針を持って歩かないこと。
②裸の針は事故が発生した時点、場所で即座に針捨てボックスに入れること。
③鋭利なメス、針などの受け渡しは置き台を使い直接手渡ししないこと。
④注射針のリキャップはしない。
⑤翼状針は針刺し事故を起こし易い。使用直後廃棄処理できないときは、廃棄ボックスの
ゴムに差し込むか点滴バッグのゴム栓に差し込むこと。
⑥再刺入時は新しい針に変えること。
⑦注射・点滴施行時は絆創膏など片手で十分処置できる態勢を整えてから行うこと。
⑧注射時は一人で準備から後片付けまで責任を持って行う。
⑨その他起こりうる針刺し事故
ⅰ)誤って落下させた場合あるいは紛失した場合
ⅱ)針が針捨て容器やキャップを突き抜ける危険
ⅲ)中心静脈穿刺処置後のトレイの後片付け中の針刺し事故
ⅳ)家庭ゴミの中の注射針
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c) 針刺し事故を起こしたら
1)流水下で刺入部から血液を絞りだしながら十分に洗う。
2)イソジンで消毒する。
3)所属長に報告する。
4)報告書を提出(医療安全管理用のインシデントレポートを使用)
5)インシデントレポートは必ず委員会にかけ、情報を各現場にフィードバック、情報の共有
化をはかる。
d) 針刺し事故による感染率
HB、HBeAg(―)
2%
HB、HBeAg(+)
20~40%
HCV
1.2~10%
H I V(エイズ)
0.1~ 0.4%
エボラ出血熱
高頻度
HTLV-1(HAM)
HIV と同等かそれ以下
e) 針刺し事故の予防的治療
ⅰ)肝炎(HBV,HCV)患者または強く疑う患者での針刺し事故
①HBV については B 型肝炎免疫グロブリンの投与。
48 時間以内に投与。B 型肝炎抗体価が PHA(受身赤血球凝集反応)で 16 倍以上の
陽性の方は投与の必要なし。
ワクチンによる予防法が確立しているので、職員健康管理として医
療従事者はワクチン投与を受け、抗体価を高めておく必要がある。また明らかな
HBV 陽性患者における事故で医療従事者の抗体価が 16 倍以下の場合は業務上災害
として労災の手続きをとる。HBe 抗原陽性の場合は HB ワクチンの追加投与を行う。
7 日以内に 1 回目、1 ヶ月後 2 回目、2~3 ヶ月後 3 回目の計 3 回。
事故後 1 年間は定期検査必要。労災療養給付は 6 ヶ月まで。
②HCV の場合のインターフェロンは効果・コスト・副作用を考えると予防的投与は、
意義をみとめない。専門医に相談。発症早期では効果あり。患者が「抗体陰性」の
場合:事故後定期的(1,3,6 ヶ月)に HCV 抗体検査を行う。患者が「抗体陽性」
の場合:ウイルス肝炎として定期的に HCV 抗体検査・肝機能検査を」行う。
ⅱ)感染症不明の患者での針刺し事故
①HIV の疑いが強い患者の場合は HIV の対策に準じる。
②HBV,HCV 陰性の患者の場合は経過観察。
③梅毒、マラリアなどは相当量の血液が入らなければ感染しない。ただしガラス板法
強陽性の場合は要注意。
5.職員教育・啓蒙について
1)年 2 回以上職員研修を行う。
2)感染報告は必ず現場にフィードバックさせ、啓蒙を行う。
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