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61 データ通信対応ワイドバンド 受信機DJ
(表1). データ通信対応ワイドバンド 受信機DJ-X11 ここでは,流行の E −モバイル PC を組み合わ せれば自宅から旅先まで気軽にデータ受信が可能 になる軽快なフットワークの多機能ハンディ・レ アルインコの DJ-X11(写真 1)は受信機本体だ (* 1) けでスキャナ として完結する機能をもちます が,別売のケーブルをPC に接続することでIQ 信 シーバ DJ-X11 を使って,音声通信のディジタル 化が進んでもモニタできるディジタル・データ通 信受信のおもしろさについて紹介します. (* 2) 号 出力を使ってサード・パーティから出てい る SDR( * 3) (Software defined radio)ソフトを VHF帯のデータ通信の代表格 使ったり,ACARS やAIS といったデータ通信の 信号を受信してパソコンのモニタに位置情報や文 現在多くのファンを持つデータ通信は,VHF 字通信の内容をプロットさせることが容易です. 帯で運用されているものが多く,代表格は以下の SDR に関しても,無償配布される専用ソフトで ものです. PC のキーボードから受信周波数を直接入力する 1 ような基本的な動作をリアル・タイムに制御でき and Reporting System) ます. ACARS(Aircraft Communications Addressing 航空無線の位置情報などをデータで行う通信で 実勢価格4 万円ほどのハンディ・レシーバなが す.短波,衛星とならんで航空機の運行管理をす ら長波から 1300MHz のカバレッジ,周波数に制 るシステムの一つで,世界的に VHF 航空無線バ 限があるとはいえ二つの VFO による同時受信が ンドの131MHz帯周辺を使っており,キャリアは 可能,SSBやCWモードに対応,入力した周波数 AM で FSK の 2400bps と案外簡素なアナログ・ を音声で読み上げるボイス・ガイダンス機能,フ データ通信です.出力も地上・移動局とも数ワッ ル・ボリュームで受信し続けても10時間以上動作 ト程度ですが200km程度の範囲は最低でもカバー するレシーバとしての基本性能が充実しています します.よく普及した歴史のあるシステムですか (*1)スキャナ:ハンディ型広帯域受信機の総称として主にアメリカで使われる呼び方. (*2)IQ信号:I=同相信号,Q=直交信号. (*3)SDR:無線機の操作系ハード部を大きくパソコンに依存させた機種.製品単体では受信すらできないものもある. 61 特設記事① 表1 DJ-X11のおもな定格 写真 1 アルインコのハン ディ型レシーバDJ-X11 周波数範囲 0.1∼1299.995MHz 受信電波型式 A3E(AM) ,F3E(FM,WFM) アンテナインピーダンス 50 Ω 不平衡(SMA端子) (出力端子) トリプル・スーパーヘテロダイン(NFM/AM) 受信方式 ダブル・スーパーヘテロダイン(WFM) 1st:243.95MHz 中間周波数 2nd :39.15MHz(NFM/AM) ,10.7MHz(WFM) 3rd :450kHz(NFM/AM) AM 0.1 ∼50MHz -1dBu(0.89V)以下 (10dBS/N) 50MHz 以上 -7dBu(0.45μV)以下 FM 30∼470MHz -15dBu(0.17μV)以下 (12dB SINAD) 受信感度(代表値) 470MHz 以上 -6dBu(0.5 μV)以下 WFM 76 ∼470MHz -6dBu(0.5 μV)以下 (12dB SINAD) 470MHz 以上 -3dBu(0.7 μV)以下 標準電池使用時/DC2.4 ∼3.0V 電源電圧 外部入力電圧/DC5.4V∼6.0V 接地方式 マイナス接地 待ち受け時 約80mA/BS モード時(1:4)約26mA 消費電流 受信定格出力時 約140mA 周波数安定度 −7∼+3ppm以内 (−10 ℃∼60 ℃) 100mW以上(8Ω) 低周波出力 外形寸法(突起物除く) 50W ×99H×32D mm 重量 約220g(EBP-57,付属アンテナ装着時) 使用時間の目安 標準ニッケル水素電池 約20時間(1:4 BSモード時) (連続受信時) ら,欧米や日本では民間航空会社 90 %以上,ア ジアでも半数以上の会社が運用していて,定期便 だけでなく軍用機や政府専用機,プライベート・ ジェットなどもしばしばプロットできます(写真2) . 2 AIS(Automatic Identification System) 2008年以降一定の条件を満たす船に搭載が義務 付けられた,コールサイン,船名,船種,位置, 写真 2 ACARS は航空機の位置情報表示システムで民間 機から軍用機まで幅広く運用している 針路,速力,目的地などのデータ信号をリアル・ タイムに発信するディジタル通信システムです.変 するのが目的ですから,遠距離通信する必要がな 調はGMSK の9600bps で,PHS のTDMA とほぼ いため出力は大きくなく,10W 強から簡易型の1 同じSOTDMAと呼ばれる時分割多重方式にて複 ∼2W程度です(写真3). 数信号がバッティングしないように制御されます. 3 APT(Automatic Picture Transmission) 国際的に161.975MHz, 162.025MHz の2 波で運 APT とは気象衛星を使ったアナログ画像送信 用されており,同じ船が2 波で送信するためどち システムで,比較的低コストで地上局が構築でき らを受信していてもプロット結果は同じです(正 るため世界中で 1960 年代より 50 年近くも利用さ 確には2 波受信すると航跡密度が細かくなる) .船 れてきた実績があります.世界中どこにいてもそ 舶同士の衝突予防や海上交通センター,海上保安 の地域の画像を最低 1 日に 2 回以上受信できるも 本部,ポート・ラジオなどの航行管制として利用 ので,信号は256レベル振幅変調2400Hzサブキャ 62