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第2章 墨田区のがんを取り巻く現状(PDF:190KB)
墨田区のがんを取り巻く現状 第2章 第2章 墨田区のがんを取り巻く現状 1 人口 墨田区の人口(住民基本台帳による)は、平成26年1月1日現在、245,318人(外国 人を除く)であり、10年前と比べると約10.6%の増加となっています。 また、年齢構成別で見ると、図1のとおり、少子高齢化が進展し、65歳以上の高齢者 の割合が年々増加しており、昭和54年と比べると約2.6倍の23.1%にまで増えています。 平成24年の区民のがんによる死亡者数のうち、約8割を65歳以上の高齢者が占めてい りかん ることから、今後、高齢者人口の増加に伴い、がんの罹患者数・死亡者数はますます 増えていくことが見込まれます。 図1 墨田区の人口推移(各年1月1日現在) (人) 300,000 250,000 9.0% 23.1% 200,000 150,000 70.7% 66.3% 100,000 50,000 20.3% 10.6% 0 昭和54年 昭和59年 平成元年 幼年人口(0歳~14歳) 平成6年 平成11年 平成16年 平成21年 平成26年 生産年齢人口(15歳~64歳) 老年人口(65歳以上) 出典:『住民基本台帳』 2 がんによる死亡者数・死亡率 (1)主な死因別死亡割合の推移 墨田区では平成24年に、総死亡者数の約3割に当たる718人の方ががんで亡くなら れています。つまり、区民の約3人に1人ががんで亡くなっていることになり、ここ 数年でやや減少傾向にあるものの、依然として高い割合にあります(図2)。 3 図2 墨田区における主な死因別死亡割合の推移(昭和 52 年~平成 24 年) 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 昭和52年 昭和57年 がん 昭和62年 心疾患 平成4年 平成9年 脳血管疾患 平成14年 肺炎 平成19年 老衰 平成24年 自殺 出典:『墨田区の福祉・保健』 (2)三大疾病による死亡の割合 全国的にも、三大疾病といわれる「がん」「心疾患」「脳血管疾患」による死亡者 は、総死亡者数の半数以上を占め、墨田区においても同じような傾向となっています (図3)。三大疾病の中でも、最も多い「がん」が、2番目に多い「心疾患」の約2 倍となっており、「がん」による死亡者数がいかに多いかということが分かります。 図3 全死因のうち、三大疾病による死亡の割合(平成 24 年) 墨田区・総数 全国・総数 東京都・総数 がん 29.8% 44.7% 30.1% 45.4% 心疾患 45.8% 15.8% 15.4% 16.4% 9.1% 9.1% 9.7% がんによる死亡者 心疾患による死亡者 脳血管疾患による死亡者 その他 墨田区 総数 男性 28.7% 東京都 女性 総数 男性 国 女性 総数 男性 女性 総死亡者数 人 2,408 1,287 1,087 109,194 58,203 50,991 1,256,359 655,526 600,833 うち、がん による死亡者 人 718 422 296 32,921 19,409 13,512 360,963 215,110 145,853 % 29.80% 32.80% 27.20% 30.10% 33.30% 26.50% 28.70% 32.80% 24.30% うち、心疾患 による死亡者 人 394 193 201 16807 8155 8652 198836 92976 105860 % 16.40% 15.00% 18.50% 15.40% 14.00% 17.00% 15.80% 14.20% 17.60% うち、脳血管疾患 人 による死亡者 % 219 114 105 9903 5024 4879 121602 58625 62977 9.10% 8.90% 9.70% 9.10% 8.60% 9.60% 9.70% 8.90% 10.50% 出典:『墨田区の福祉・保健』(平成 25 年度版) 厚生労働省・東京都『人口動態統計』 4 (3)がんの部位別死亡割合 墨田区におけるがんの部位別の死亡割合は、図4・5のとおり、男性では肺がん、 胃がん、大腸がんの順に高く、女性では肺がん、大腸がん、乳がんの順に高くなって います。 国・東京都と比較すると、墨田区では、男性の胃がん、大腸がんの割合が高く、女 性の肺がん、乳がんの割合が高い傾向にあります。 図4 がんの部位別死亡割合・男性(平成 20 年~平成 24 年の5年平均) 墨田区 16.1% 22.0% 13.3% 48.6% 東京都 15.4% 22.4% 12.4% 49.9% 全国 15.6% 23.8% 0% 11.4% 20% 胃がん 40% 肺がん 49.2% 60% 大腸がん 80% 100% その他 出典:『墨田区の福祉・保健』 厚生労働省・東京都『人口動態統計』 図5 がんの部位別死亡割合・女性(平成 20 年~平成 24 年の5年平均) 4.4% 墨田区 11.4% 14.7% 14.5% 11.7% 43.2% 4.4% 東京都 11.4% 13.9% 14.4% 10.5% 45.4% 4.2% 全国 12.1% 13.6% 14.5% 8.7% 0% 20% 40% 胃がん 肺がん 大腸がん 出典:『墨田区の福祉・保健』 厚生労働省・東京都『人口動態統計』 47.0% 60% 乳がん 80% 子宮がん 100% その他 (4)がんの75歳未満年齢調整死亡率8 がんの75歳未満年齢調整死亡率(全がん9)を23区で比較すると、図6・7のとお 8 9 75 歳未満年齢調整死亡率:年齢構成の異なる地域間で死亡状況の比較ができるように、年齢構成を調整し た死亡率を年齢調整死亡率という。一般的にがんによる死亡率を算出する際には、高齢化の影響を除去す るため、75 歳以上の死亡を除いた 75 歳未満年齢調整死亡率が用いられる。 全がん:全ての種類のがん 5 り、墨田区の死亡率は、男性では最も高く、女性では23区中7番目に高くなっていま す。ただし、75歳未満年齢調整死亡率は単年度で大きく値が変動し、平成23年のみの 数値で評価することはできないため、今後も引き続き動向を注視していく必要があり ます。 図6 75歳未満年齢調整死亡率(全がん・男性)の23区比較(平成23年) 140 132.1 125.0 120 平均 106.8 100 人 口 80 10 万 人 60 対 86.4 86.7 88.5 新 宿 区 目 黒 区 港 区 101.9 103.4 91.0 91.1 91.3 92.4 文 京 区 渋 谷 区 世 田 谷 区 杉 並 区 95.8 98.5 荒 川 区 豊 島 区 111.6 112.2 108.7 109.7 114.5 119.1 117.0 117.3 118.2 75.7 40 20 0 千 代 田 区 中 野 区 板 橋 区 練 馬 区 中 央 区 北 区 品 川 区 江 東 区 葛 飾 区 足 立 区 大 田 区 江 戸 川 区 台 東 区 墨 田 区 出典:東京都ホームページ『受けよう!がん検診』 図7 75 歳未満年齢調整死亡率(全がん・女性)の 23 区比較(平成 23 年) 80 76.3 70 平均 64.1 68.0 68.7 69.1 大 田 区 板 橋 区 新 宿 区 杉 並 区 北 区 荒 川 区 目 黒 区 練 馬 区 葛 飾 区 江 東 区 江 戸 川 区 墨 田 区 中 央 区 71.0 71.1 渋 谷 区 港 区 中 野 区 72.3 60.6 60 人 口 50 10 万 40 人 対 30 67.1 63.2 65.4 62.9 64.8 67.0 61.7 64.2 66.2 61.3 71.0 55.4 46.5 48.7 50.0 20 10 0 千 代 田 区 品 川 区 文 京 区 世 田 谷 区 豊 島 区 出典:東京都ホームページ『受けよう!がん検診』 6 足 立 区 台 東 区 3 がんによる医療費 墨田区国民健康保険の疾病別の平成25年4月分の医療費を見ると、悪性新生物(が ん)を含む新生物、循環器系の疾患、腎泌尿生殖器系の疾患の順に高額となっていま す。悪性新生物(がん)を含む新生物の費用額は約1億8,900万円で、このうち悪性新 生物(がん)が約1億7,300万円となっており、がんにかかる医療費が高額であること が分かります。 また、レセプト1件当たりの費用額10を見ても、悪性新生物(がん)が最も高くなっ ています。 図8 疾病大分類別費用額(墨田区国民健康保険・平成 25 年4月分) ◆新生物 188,944,970円 17.4% 新生物 27.3% 5.6% 費用額合計 1,083,142,080円 <内訳> 良性新生物及びその他の新生物 15,714,930円(1.4%) 悪性新生物 173,230,040円(16.0%) 17.2% 循環器系 の疾患 5.8% 10.4% 7.1% 7.7% 8.4% 新生物 循環器系の疾患 腎泌尿生殖器系の疾患 筋骨格系及び結合組織の疾患 内分泌、栄養及び代謝疾患 精神及び行動の障害 腎泌尿生殖器 系の疾患 疾病別 レセプト1件当たりの費用額 悪性新生物 134,495 腎泌尿生殖器系の疾患 71,732 精神及び行動の障害 31,915 消化器系の疾患 22,925 筋骨格系及び結合組織の疾患 22,213 循環器系の疾患 消化器系の疾患 内分泌、栄養及び代謝疾患 呼吸器系の疾患 呼吸器系の疾患 その他 20,465 17,427 10,978 0 40,000 80,000 120,000 160,000 (円) 出典:東京都国民健康保険団体連合会『疾病別医療費分析』 4 がん検診(胃、大腸、肺、子宮、乳)の受診率の推移 区が実施するがん検診の受診率は、図9のとおりとなっています。大腸がん、乳がん、 子宮がんの受診率が向上してきている一方で、胃がん、肺がんの受診率は低迷してい ます。 がん検診を受ける機会としては、区が実施するがん検診のほかに、職場や健康保険組 合等が実施するがん検診や、個人的に人間ドックなどで受けるがん検診があります。 図9の受診率には、区が実施する検診以外の受診者の人数が含まれていないため、区 民全体のがん検診の受診率を表しているものではありません。国や東京都は、職場や 人間ドック等での受診も含めた受診率を50%にすることを目標としています。 10 レセプト1件当たりの費用額:医療費総額をレセプト件数で除した値。レセプト(診療報酬明細書)とは、 診療報酬請求のために医療機関で作成されるもので、処置内容や検査、投薬等の細かい情報が記載されて いる。レセプトは患者1人につき、1つの医療機関で毎月1枚作成される。 7 区では、職場や人間ドック等での受診も含めた「区民のがん検診の受診率」を算出す るため、平成23年度に実施した『がんに関する意識調査』において、がん検診の受診 状況とがん検診の受診機会について質問しました。その結果、「区民のがん検診の受 診率」は、いずれのがん検診でも30%~40%台ということが判明しました(P61の図 37)。 図9 区が実施するがん検診の受診率の推移 25% 20% 胃がん(40歳以上) 15% 大腸がん(40歳以上) 肺がん(40歳以上) 10% 子宮がん(20歳以上) 乳がん(40歳以上) 5% 0% 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 出典:厚生労働省『地域保健・健康増進事業報告』 5 これまでの区の取組 区では、がん検診の受診率向上、がんに関する正しい知識の普及啓発等を目的に、 これまで次のような取組を進めてきました。 ○胃がん検診における受診率向上の取組 ▼前年度受診者への申込はがきの送付(継続受診の促進) ▼胃がんのリスクの高い年代への受診票の送付 ○大腸がん検診における受診率向上の取組 ▼無料クーポン券の送付 ▼大腸がんのリスクの高い年代への受診票の送付 ○女性特有のがん(子宮がん、乳がん)検診における受診率向上の取組 ▼無料クーポン券の送付 ▼前々年度受診者への受診票の送付(継続受診の促進) ○墨田区国民健康保険加入者等へのがん検診案内パンフレットの送付 ○がんに関する普及啓発イベントの開催 ○がんに関する様々な講演会の開催 これらの取組の結果、がん検診の受診率が上昇するなど、一定の成果が見られること から、区民のがんに対する意識は少しずつ向上してきていると考えられます。 8