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成果文書概要(和文翻訳版) [PDF 531 KB]
エグゼクティブ・サマリー 1 地球の物理的,生物的,社会的要素は過去数十年間で劇的な変化をとげた。安定した生物・ 社会的システムを将来にわたって維持できるかどうかの一端は,変化を引き起している要 因,および個々の要因とそれら要因が集合的に生物物理学・社会的システムへ及ぼす影響 について理解を深め,我々が十分な知識をもとに対応することにかかっている。 2 「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES) 」は, 社会が将来直面する課題に対し,社会が戦略的に行動する上で役立つ情報や助言を伝える ために,科学コミュニティと政策コミュニティが共に作業するまたとない機会を提供する ものである。 3 2011 年 10 月に開かれた IPBES に関する総会第 1 セッションでは,130 ヶ国を超える代表 団の参加のもとで,IPBES の科学的スコープや法的枠組み,総会の手続規則が検討された。 これら事項についての最終合意は,2012 年 4 月にパナマで開かれる総会第 2 セッションで 決められる予定である。 4 パナマで開かれる第 2 セッションは,IPBES の設立のための柱石となるだろう。IPBES のような複雑な科学と政策のインターフェイスの設立には多くの決定が伴う。パナマでの 課題は,IPBES の実施に必要となる効果的かつ効率的なプロセスを可能にする最低限の決 定について合意することにあるだろう。 5 この課題に対処するため,国際的な科学コミュニティから参加する科学者から,IPBES に 関する総会第 2 セッションに対し,以下の検討事項と提案を提出する。これは,日本政府 と南アフリカ政府により主催され,国連大学のホストのもと,2012 年 2 月 27~29 日に開 かれた「第 2 回 IPBES アセスメントに関する国際科学ワークショップ」での議論にもとづ いている。 6 東京での本ワークショップを開催するにあたり,国連大学は日本国環境省の要請を受けて 2012 年 1 月に,世界規模での調査を実施した。本調査の目的は,パナマでの審議事項の多 くについて,より多くの科学コミュニティからの意見を得ることにあった。その結果,2,000 人を超える科学者がこの調査に参加し,136 ヶ国を超える 1,607 人が調査票の全ての質問 に回答した。国際的な科学コミュニティからの回答は,政策コミュニティに対して,生物 多様性と生態系サービスに関わる科学と政策のインターフェイス強化に向けた支援要請の 強いメッセージだけでなく,そのための提言を送っている。 7 本文書は,東京で開催された第 1 回,第 2 回の IPBES アセスメントに関する国際科学ワ ークショップ,IPBES に関する総会第 1 セッション,ならびに世界規模での調査にもとづ くものである。第 2 回 IPBES アセスメントに関する国際科学ワークショップへの参加者 は,IPBES に関する総会第 2 セッション用に準備された作業文書(本文書)を横断するも のとして,4 つのキーメッセージを強調する(ボックス1参照) 。 ボックス 1. キーメッセージ キーメッセージ 1:ボトムアップによる,統合的な作業プログラムの確保:科学コミュニティは,科 学パネルの調整のもと,リージョナル作業グループを通じて各地域の社会,文化,経済,生態学的な 構成要素を考慮に入れ,これら全ての要素が,知識(ナレッジ)生成・科学的評価・政策立案支援・ 能力開発の取組み全てにおいて適切に対処され,かつそれら取り組みが統合的に実施される作業プロ グラムを提案する。 キーメッセージ 2:作業プログラムをガイドする学際的な共通の概念的枠組みの構築:科学コミュニ ティは,異なるスケール,異なる地域において首尾一貫した科学評価を実施するため,異なるエンド ユーザーのニーズに対処しつつ,多様なナレッジと学際性に対応した共通の概念的枠組みの構築を強 く提案する。 キーメッセージ 3:科学的独立性とレビュープロセスの信頼性を保証するガバナンス構造と手続規則 の構築:IPBES の科学的側面の独立性と信頼性だけでなく,その効果的かつ効率的なガバナンスを 強く支持する。科学の独立性と信頼性を支えるため,科学者たちは科学パネルと独立したレビューの 仕組みを提案する。 キーメッセージ 4:IPBES への公平で包括的な参加を保証する:IPBES は作業プログラムの全ての 要素に能力開発を統合し,また IPBES 総会は国連機関に対して,科学・教育に関連する組織と緊密 に連携し,IPBES の作業プログラムが成功裏に実施できるよう要請する。 提言 8 パナマでの議論のために準備された作業文書のレビューならびに上記の 4 つのキーメッセ ージをもとに,本文書では IPBES に関する総会の第 2 セッションにおいて代表団が,審議 や重要な決定をしつつ,考慮すべき事項について提言する。以下で我々は,各作業文書に ついて,議題(UNEP/IPBES.MI/2/1)に提示されている順に,これらの主要な提言の概 要を説明する。 作業文書“プラットフォームの作業プログラムについて考えられる要素” (UNEP IPBES.MI/2/2)に関して 提言 1 9 作業プログラムの実行に向けて,UNEP/IPBES.MI/2/2 に示されるように,全ての潜在的 な活動(PA:Potential Activities)が,個別にではなく,一体的にデザインされるための 1 年間のスコーピング作業を行うことを,IPBES 総会に要請する。 提言 2 10 IPBES の活動の初期段階に最新のナレッジ・マネジメントシステムを構築し,既存の科学 的評価の枠組みのレビュー(PA1)をもとに,学際的な概念的枠組みと手段,方法を構築 する(PA2)と共に,関連する科学的評価の情勢についての動的なカタログを維持する。 提言 3 11 作業プログラム(作業文書第 II 節 A,第 13,14,15 パラグラフ)を決定するための要求 と優先順位のスクリーニングと作成に幅広いユーザーの関与を保証すると共に,広範な当 事者意識,深い関与,自覚,関心を確保できるよう効果的なコミュニケーションを保証す る(作業文書第 II 節,C1 第 23 パラグラフ) 。 提言 4 12 作業プログラムへ,科学者および政策立案者の全世界規模での参加を確保するために,作 業文書第 III 節 A に明記されるように,能力開発をプラットフォームの作業プログラムの 不可欠な要素として位置づける。我々は,第 III 節 B に示された,能力開発や優先順位や 資金調達に関する潜在的な活動(PA)13 および 14 を支持すると共に,これらが IPBES の初期段階の活動として考慮されるよう提言する。 作業文書“IPBES の下に設立される機関の機能と構造” (UNEP IPBES.MI/2/3) に関して 提言 5 13 作業文書第 III 節 B 第 15 パラグラフにおいて,オプション 2 として明記された 2 つの補助 機関-科学パネル,管理事務局-を設置する。ここで科学パネルは,開かれた指名プロセ スを通じて選ばれ,総会により任命される多くの専門分野にわたる科学者のグループによ り構成され,プラットフォームの科学的・技術的な機能を遂行する。管理事務局は,総会 により選ばれ,プラットフォームの管理機能を遂行する(図1参照) 。 図 1 科学パネルと事務局を持つ IPBES のガバナンス構造 提言 6 14 同パラグラフに示されるオプション 1(拡大事務局)が選択された場場合は,科学的機能 の独立性と信頼性を保証するために必要なガバナンスと手続規則を確立する必要がある。 提言 7 15 IPBES の4つの機能であるナレッジ生成・科学的評価・政策立案支援・能力開発を満たす 作業プログラムを監督するリージョナル統合作業部会を設立する。全ての地域と作業要素 の間での首尾一貫性を確保するために,リージョナル統合作業部会は,科学パネルの監督 を受ける。また,第 III 節 C 第 19 パラグラフのオプション 3 に規定された,特別かつ,期 限付きの統合的全球作業部会,主題別作業部会の指示についても考慮に入れる(図 1 参照) 。 提言 8 16 IPBES による科学的な成果のレビューとプラットフォームそのもののレビューを監督す る独立したレビュープロセスを確立する(図 1 参照) 作業文書“IPBES 総会の会合の手続規則” (UNEP/IPBES.MI/2/4)に関して 提言 9 17 IPBES に関する総会の第 2 セッションと第 1 回 IPBES 総会の間に,期間会合の開催を要 請し,作業文書 UNEP/IPBES.MI/2/4 の第 7 パラグラフの(7b)と(7g)において提案さ れている手続規則を科学コミュニティと連携して定め,第1回 IPBES 総会で提示する。 また,以下に列挙される残りの事項についても規則を定めることを IPBES 総会に要請する。 執筆者,レビュアー,レビュー編集者の指名と選定 (7b); 報告書とその他提出物の準備,レビュー,受諾,採択,承認及び公表(7c); 不確実性のレベルの割り当てと定義 (7e); 報告書への多数派と少数は意見の反映(7e); 報告書に含まれる誤りへの対処 (7f); 伝統的知識と土着の知識の取り扱いに関するガイドライン (7g); プラットフォームの独立したレビューと評価 (7h); IPBES 事務局の管理,監督,外部評価 (新規). 提言 10 18 総会に,国連機関,関連する政府間機関,NGO からのオブザーバーを含める(作業文書 UNEP IPBES.MI/2/3 第 II 節 B) 。