...

知的資産経営報告書 - 近畿経済産業局

by user

on
Category: Documents
23

views

Report

Comments

Transcript

知的資産経営報告書 - 近畿経済産業局
知的資産経営報告書
2006年6月
株式会社プロテインクリスタル
知的資産経営報告書
目
次
Ⅰ
社長からのメッセージ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
Ⅱ
経営方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
Ⅲ
商品説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
(1)タンパク質受託生産
(2)プロテインビーズ®
Ⅳ
優位性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
(1)人材
(2)知的財産
(3)ネットワーク
(4)大学発ベンチャー
(5)国家プロジェクト
Ⅴ
事業戦略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
(1)タンパク質受託生産事業
(2)プロテインビーズ®事業
Ⅵ
事業計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
Ⅶ
会社概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
Ⅷ
その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
(1)関連文献
(2)関連記事
(3)用語解説
Ⅸ
知的資産経営報告書とは・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
Ⅹ
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
Ⅰ
社長からのメッセージ
株式会社プロテインクリスタルは、5年前の 2001 年 5 月 14 日に京都工芸繊維大学発の第 1
号ベンチャーとして誕生しました。もともと京都工芸繊維大学は、100 年以上も前に遡った 1899
年(明治 32 年)に開所された京都蚕業講習所から端を発しており、今日にいたるまで「蚕(カ
イコ)」に関する研究を脈々と継続してきました。養蚕業が盛んだった頃、このカイコに重篤な病
気をもたらす原因として多角体病ウイルスという病原体が知られていました。株式会社プロテイ
ンクリスタルは、多角体病ウイルスの中のひとつである細胞質多角体病ウイルスが作り出すタン
パク質結晶(プロテインクリスタル)を使って、人類の病気の診断や治療に貢献しようと考えま
した。
生命とは何か?病気とは何か?を考える時、常に「遺伝子」とか「タンパク質」とかを考える
必要があります。でも、
「遺伝子」や「タンパク質」と申し上げてもなかなかご理解をいただけな
いかと思いますので、私はいつも皆様にご説明する時は、生命現象を映画や芝居に例えてご説明
させていただきます。見る、聞く、走る、考える、また発熱する、頭痛がする、咳が出る、これ
らはすべて生命という映画や芝居の一コマです。しかし、この一コマも実は「遺伝子」という台
詞や振り付けを、
「タンパク質」という役者が演じているのです。この遺伝子が長々と書かれた台
本が「ゲノム」であり、オールキャストの役者が「プロテオーム」です。今、様々な生物の生命
の台本、すなわち「ゲノム」が解き明かされつつあります。しかし、皆さんはわざわざお金を払
って映画や芝居の台本を購入し、読まれますか?映画や芝居が面白かった、感動したと感じられ
るのは役者による台詞や振り付けのすばらしさですよね?でも、どこの世界でもこの役者はなか
なか一筋縄ではいかない連中です。すぐに、拗ねたり怒ったりします・・。実は、生命現象とい
う映画や芝居を演じる役者に相当する「タンパク質」も、とても扱いにくい物なのです。
弊社は、この扱いにくい「タンパク質」をプロテインクリスタルの中に封じ込めることによっ
て扱いやすくするというどこにもない技術を生み出しました。これによって、様々な生命現象や
病気が起こる仕組み、病気の治療に関する研究をされている研究者の方々に、この扱いにくい「タ
ンパク質」をより扱い易い状態で提供しようと考えております。
現在、株式会社プロテインクリスタルは自社オリジナルであるこのクリスタルに封じ込められ
た状態でのタンパク質(プロテインビーズ®)の販路拡大につとめながら、さらにプロテインビー
ズ®を用いた製品開発を行っております。
この本報告書を通じて弊社の事業展開を顧客の皆様方に少しでもご理解して頂き、一日も早く
安定した経営路線に到達できるようご協力を頂ければ幸いです。
2006 年 5 月 14 日
-1-
代表取締役
森
肇(もり
はじめ)
1959 年
京都市生まれ
1982 年
京都工芸繊維大学繊維学部卒業
1987 年
名古屋大学大学院農学研究科博士課程単位取得退学および農学博士取得
京都工芸繊維大学繊維学部助手
1996 年
同大学助教授
1997 年
日経BP技術賞受賞
2001 年
蚕糸学賞受賞
株式会社プロテインクリスタルを大阪市に設立し、取締役就任
2004 年
同社代表取締役就任
米国ワイオミング大学
2005 年
コンサルタント
京都工芸繊維大学教授および同大学昆虫バイオメディカルセンター長就任
現在に至る
-2-
Ⅱ
経営方針
ヒトを含む多くの生物のゲノム解析が進められつつあります。このゲノムとは生命現象の台本、
すなわち設計図であります。研究者たちはこの設計図の解読が終わると、次は生命現象にかかわ
る全てのタンパク質の解析「プロテオーム解析」へと研究の方向をシフトしつつあります。しか
し、生まれてから死を迎えるまで不変である遺伝子とは異なり、タンパク質は必要な時に、必要
な場所で、必要な量だけ存在して初めてその存在価値を発揮します。言わば、タンパク質はある
一定の寿命をもっているのです。また、タンパク質は遺伝子のように PCR と呼ばれるコピー機
のようなもので簡単に、しかも大量に増やすことができません。このため、プロテオーム解析に
よって新しい薬を開発(創薬)しようとする研究者や企業は、いつも自らの側にタンパク質があ
ればなあ・・と感じておられます。
株式会社プロテインクリスタルは、そんな要望に応えるために、1)タンパク質の受託生産、
2)タンパク質のハンドリングを容易にするための固定化、などのサービスを提供し、創薬事業
を支援します。また、3)感染症診断キットの開発、4)再生医療の研究、などの分野でお役に
立てるようなタンパク質固定化プロテインビーズ®の販売を行います。
このように弊社は、創薬を目指すバイオベンチャーのような華やかさはありませんが、タンパ
ク質やプロテインビーズ®の供給を通して、着実に成果を収める企業として成長し、世界のバイオ
産業界でのニッチトップを目指します。さらに、タンパク質をすぐさまプロテインビーズ®として
供給できるフットワークの良さを生かして、人類の生存を脅かす新興・再興感染症に果敢に立ち
向かうことで、増大する社会不安を払拭する一助となる一方、これからの医療の中心となるであ
ろう再生医療分野の発展にも貢献できると考えております。
-3-
Ⅲ
商品説明
(1)タンパク質受託生産
薬の開発にはまず、対象となる病気のメカニズムを解明することが必要であり、それには細胞・
器官・組織などの構成要素であるタンパク質の解析が重要です。タンパク質の解析には生体内と
同様のタンパク質を大量に必要とし、細菌類、動物細胞、昆虫細胞を用いた系が開発されていま
す。特に昆虫細胞を用いたバキュロウイルス発現系は大量で高品質のタンパク質を生産すること
ができ、しかも昆虫培養細胞は培養方法が他の哺乳動物よりも容易であることから、分子生物学
の研究においてはよく用いられる手法です。しかし、タンパク質の種類においてはプロトコール
通りに行っても、収量が少なかったり、分解されていたり、活性がなかったり・・・と問題が多々
起こるのが実情であり、確実に目的タンパク質を得るために研究機関などではアウトソースする
傾向が近年強まっています。
当社はこの昆虫細胞-バキュロウイルス発現系での約 20 年間の研究経験を基に目的に応じた
より品質の高いタンパク質を提供することを目的とし、2005 年 5 月より、京都市左京区に本社
を置く和研薬株式会社と共同で「タンパク質受託生産」事業を開始しました。
これまでに発現量が少なかったもの、活性がなかったものなども個別対応することにより、品
質を上げて提供させていただくと共に、目的に応じて昆虫培養細胞または昆虫でのタンパク質生
産にも対応しています。
(商品ホームページ:http://www.wakenyaku.co.jp/pro/products/waken-29.asp)
昆虫細胞を用いた
大量生産
DNAおよび
遺伝子情報
の受取
組換えウイルス
の作製
発現の確認
大量発現
方法の選択
納品
昆虫を用いた
大量生産
-4-
(2)プロテインビーズ®
「タンパク質は壊れやすい」
・・・ほとんどのタンパク質は熱や乾燥にたいへん弱く、特に研究・
分析を行うには常に新鮮なタンパク質の供給が必要であり、鮮度が落ちないように低温室の設置
などタンパク質の取り扱いおよび研究環境の整備が困難です。そこで、当社が世界に先駆けて開
発したプロテインビーズ®はタンパク質の鮮度(機能)を保護するために、目的のタンパク質を発
現と同時にあるタンパク質の結晶体の中に閉じ込め、タンパク質の長期保存を可能にしました。
<プロテインビーズ®作製方法>
昆虫ウイルスはどのような劣悪な環境にさらされても、自らを守り生き永らえるために、多角
体と呼ばれるタンパク質の結晶体の中で息を潜めて宿主の登場を待つことができる。その原理を
応用したのがプロテインビーズ®です。具体的には昆虫に感染するウイルスの遺伝子の一部を多角
体固定化シグナルとして目的タンパク質の遺伝子に挿入し、多角体タンパク質遺伝子とともに発
現すれば、増殖したウイルス粒子が次々と多角体の中に包埋されるように、その目的タンパク質
は発現と同時に多角体の中に独占的に包埋されていきます。すなわち、目的のタンパク質を特異
的に固定化した多角体がプロテインビーズ®です。プロテインビーズ®によってタンパク質の精製
の単純化、タンパク質の安定性の飛躍的な向上が可能となり、さらにはこのプロテインビーズ®を
集積および配列化したプロテインチップの開発を行い、様々な用途に活用できます。
多角体固定化
シグナル 目的タンパク質遺伝子
多角体タンパク質遺伝子
多角体タンパク質結晶化
と同時に
目的タンパク質の固定化
固定化タンパク質
多角体タンパク質
・プロテインビーズ®の大きさは平均数ミクロン
・乾燥や熱に強い
・界面活性剤、アルコールなどに溶解しない
・酸性~中性では溶解しない
プロテインビーズ®
・低速遠心操作のみで回収可能
タンパク質の入れ物
-5-
<プロテインビーズ®の特徴>
z
タンパク質分子を乾燥から保護できるので特殊な保湿装置を必要とせず、常温で取り扱いが
可能
z
タンパク質分子を熱から保護できるので変性を防止
プロテインビーズ®に固定化したタンパク質の安定性試験
耐乾燥
a
b
c
耐熱
f
d
g
e
h
37℃
50℃
60℃
65℃
70℃
75℃
80℃
90℃
A
B
C
それぞれの写真の左側はスポットしたEGFP溶液、
右側はスポットしたEGFP固定化多角体
a,bはスライドガラス上に滴下直後(aは透過像、bは蛍光像)
c〜hはスライドガラス上に滴下して10分経過後(cは透過像、dは蛍光像)、
1時間経過後(e)、1日経過後(f)、1週間経過後(g)、1ヶ月経過後(h)
z
Aは緩衝液中のVP3/EGFP、Bは50%グリセロール溶液中のVP3/EGFP、
Cは多角体に固体化されたVP3/EGFP
プロテインビーズ®からタンパク質分子を従来法に比べて大幅に短縮して精製できるのでク
イックレスポンスが可能
約30日でタンパク質発現から精製まで(1/2~1/3の期間短縮)
多角体タンパク質遺伝子
BmCPV-VP3遺伝子
多角体タンパク質
目的タンパク質遺伝子
VP3-目的 融合タンパク質
プロテインビーズ®
z
抗原タンパク質を固定化し、抗原抗体反応が検出できるので感染症やアレルギーの診断に使
用可能
z
酵素タンパク質を固定化し、固定化酵素として利用できるので合成や治療に応用可能
z
固定化したタンパク質分子を用いて、タンパク質分子間相互作用を測定できるので新薬開発
の大きな武器となる
z
固定化したサイトカインを用いて細胞の増殖と分化を制御できるので再生医療への展開が
可能
以上のような特徴を総合するとプロテインビーズ® はタンパク質分子からなる素子として利
用可能であり、将来的にはタンパク質分子間相互作用を検出できるプロテインチップの開発も夢
ではありません。
プロテインビーズ®を配列したプロテインチップ
-6-
<主な用途>
1)アレルギー・感染症診断用プロテインビーズ®
ヒトや動物の感染症の診断は、これまで専門の検査会社で行われてきたが、近年 POC(Point of
Care)の必要性から院内での迅速な診断が求められています。
プロテインビーズ®を応用することにより、少ない血清量で既存の機器で判定可能なものから機
器を使用せずに 15 分で目視判定できる簡易なものまで、迅速かつ正確な診断を行える感染症診
断キットを世界に先駆けて開発しました。
血清量
従来法
判定方法
判定時間
対象
プレートリーダー
検査会社
2時間
数ml
大規模
病院
PCCチップ法
スキャナー
検査会社
反応なし
反応あり
0.1ml
2時間
大規模
病院
感染症判定チップ
PCC凝集反応法
目視
Y
Y
Y
Y
Y
Y Y
Y Y
0.1ml
Y
15分
反応あり
Y
感染症凝集反応プレート
病院
動物病院
病原体が既知の場合
反応なし
問 診
↓
採 血
病原体が未知の場合
PCC凝集反応法
PCCチップ法
病原体を検出し、
迅速な治療および対応
病原体を特定し、
適切な治療法の選択
-7-
病院
クリニック
個人
農家
●応用事例
・鳥インフルエンザウイルス診断キット
現在、鳥インフルエンザウイルス診断キットがないため、ヒトインフルエンザウイルスのもの
を流用しており、度重なる誤判定が起こっています。したがって、家畜伝染病予防法による感染
症の蔓延防止のためにも迅速でかつ正確な判定の必要性が高まっています。
当社の動物用感染症判定チップ、凝集反応プレートは血清(抗体)検査に対応可能です。
NP固定化プロテインビーズ®
空の多角体
プロテインビーズを用いた凝集反応
NP固定化プロテインビーズ®
空の多角体
プロテインビーズと血清を
混合
NP固定化プロテインビーズ®
正常血清
空の多角体
感染鶏血清
NP固定化プロテインビーズ®
15分~30分間振盪
トリインフルエンザウイルス
タンパク質固定化
プロテインビーズ
空の多角体
独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所において
トリインフルエンザウイルス感染鶏の血清を用いて抗原抗体反応(ELISA)試験を実施中
NP固定化プロテインビーズ®
観察
非常に短時間で。しかも簡便に感染の有無を判定できる
感染鶏の判別が可能!
空の多角体
・アレルギー診断用キット
アレルゲンをプロテインビーズ®に固定化し、感染症診断と同様に抗体の検出を行うことができ、
アレルゲンの早期特定に効果を発揮すると考えられます。また、治療法の一つである減感作療法
の効果の確認にも使用できることから、アレルギー治療分野にも貢献できます。
ダニアレルゲンに対する
アレルギー抗体(IgE)の検出
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
Y
X100倍
X200倍
抗原抗体反応後の
プロテインビーズ®の凝集
多角体のみ
・ヒト用感染症診断キット
感染症を発病した疑いがある場合、病院で診察を受けて診断結果が出るまでに約 1 週間必要と
いわれています。しかし、感染症は蔓延を防止するためにできる限り早期診断および早期治療が
必要です。
感染症の診断には①特異的抗体の検索
②ウイルス分離
③ウイルス遺伝子の検出
といった
3 段階の検査があります。各種感染症の抗原タンパク質をプロテインビーズ®に固定化したヒト用
感染症判定チップ・凝集反応プレートでは、①の「特異的抗体の検索」において少ない血清量で
短時間に判定することができます。
-8-
2)研究開発支援用プロテインビーズ®
ゲノム解析からタンパク質を多用するプロテオーム解析へと研究がシフトし、病気の診断薬、治
療薬開発のためには品質の良いタンパク質が必要となってきており、タンパク質生産のアウトソー
シングが増大しています。しかし、タンパク質は熱や乾燥にたいへん弱く、分解されやすいために、
タンパク質の取り扱いが研究推進の障害となっています。そこで、タンパク質の安定性を上げるた
め、当社のプロテインビーズ®にタンパク質を固定化することで保存を可能にし、安定したタンパク
質の供給を可能にすることできます。したがって、必要な時に必要な量だけ使用できるので、効率
よくタンパク質分子間相互作用等の機能解析が行え、新薬開発の高速化にも貢献できます。
3)サイトカインプロテインビーズ®
再生医療とは病気や損傷により、機能低下や機能不全となった組織・臓器に対して、生きた細胞
の機能を有効に活用して再生させる医療を示しており、現在、皮膚・軟骨・血管などを中心にほぼ
全ての組織・臓器の再生が臨床応用を目指して世界中で研究されています。
再生医療を実用化するためには 3 つの要素、具体的には①再生したい組織の細胞または未分化の
細胞(幹細胞)②その細胞が増殖や分化を行うための足場③細胞に対して増殖や分化の指令を行う
サイトカイン―が全て揃わなければたいへん難しいと言われています。
当社は世界で初めて細胞増殖因子などのサイトカインの固定化に成功し、不安定なサイトカイン
分子を安定化するだけでなく、プロテインビーズ®そのものが「足場」となり、効率よく細胞の増殖・
分化を促進することができました(例:FGF2)。すなわち再生医療 3 要素の②と③をサイトカイン
プロテインビーズ®によって解決し、作業の効率化を図り、培養器の中で細胞の増殖・分化を制御す
ることができます。
FGF2 プロテインビーズ ®による
軟骨前駆細胞(ATDC5)の軟骨分化の制御
FGF2 プロテインビーズ ®による
軟骨前駆細胞(ATDC5)の軟骨分化の制御
無添加
2.0x104
1.0x105
無添加
2.0x105
2X104
空の多角体
1X105
2X105
空の多角体
0.1%アルブミン
市販のFGF-2
(1ng/ml)
FGF2
プロテインビーズ®
FGF2
プロテインビーズ®
市販のFGF2
(1ng/ml)
Alcian Blue による染色
Alizarin red による染色
(細胞外基質の酸性ムコ多糖が青色に染色される)
(石灰化基質が赤色に染色される)
軟骨細胞への分化(後期分化)が制御された
軟骨細胞への分化(初期分化)が制御された
財団法人先端医療振興財団との共同研究において、ヒト臍帯血幹細胞の増殖に必要なサイトカイ
ンプロテインビーズ®を用い、同細胞の増殖効果を調べています。その結果、従来の方法と比較して
同等あるいはそれ以上の効果を実証することができました。
今後、各種サイトカインを固定化したプロテインビーズ®を作製し、細胞増殖・分化のための足場
として利用し、将来的には1細胞からの短時間での大量培養や組織・器官形成、胚性幹細胞(ES
細胞)や体性幹細胞の増殖・分化制御など再生医療への応用が期待できます。
-9-
Ⅳ
優位性
㈱プロテインクリスタルは高い技術力に基づく製品を生み出していくにあたり、以下の知的財産
の活用を図って参りたいと考えております。
技術
ノウハウ
人 材
株式会社
プロテイン
クリスタル
知 財
タンパク質受託生産
プロテインビーズ®
ネットワーク
バイオ関連分野への研究支援事業
各種プロジェクト参画
大学発ベンチャー支援
(1)人材
当社代表取締役社長 森は京都工芸繊維大学の教授であり、京都工芸繊維大学昆虫バイオメディカ
ルセンターのセンター長も務めています。大学では昆虫分子生物学、蚕糸・昆虫利用学を専門とし、
20 年以上にわたり昆虫ウイルスに関する研究およびカイコの遺伝子組み換えに関する研究を行い、
日経BP賞(1997 年)
、蚕糸学賞(2001 年)の受賞や日本蚕糸学会、国際ウイルス学会の委員を務め
るなど国内外において高い評価を得ています。
この長年の研究実績をもとに蓄積された数多くのノウハウが当社技術の根幹となっており、2004
年には次世代テクノロジーリーダー100 人(ダイヤモンド社)にも選ばれています。
また、代表取締役として経営にも積極的に参加し、技術開発と会社運営の絶妙なバランスを常に
保っており、学術・経営両面に力を入れています。
弊社研究員 2 名は昆虫ウイルスに関する研究で博士の学位を有しており、昆虫ウイルス、昆虫細
胞の取り扱いに優れています。したがって、タンパク質の使用目的等に応じた組み換えウイルス作
製を行い、適切な発現方法を選択して高品質のタンパク質を提供することができます。また、プロ
テインビーズ®の発明にも貢献し、その生産ノウハウ等高い技術を熟知しており、当社の設立準備か
ら携わっているため、本ビジネスへの思い入れも熱いものがあります。
- 10 -
(2)知的財産
・特許
現在当社が所有している公開特許は以下の表の通りです。プロテインビーズ®に関しては基本特許
を持っており、周辺特許についても随時出願を行っています。
出願情報
日本国内の出願
出願日
出願番号
H13.10.30
2002-539531
H13.11.15
2001-350774
H15.1.10
2003-005099
H15.2.28
2003-052403
H16.1.7
2005-507964
H16.3.24
2004-087841
出願人
名称
㈱プロテインクリスタル タンパク質複合体およびその製造方法
㈱プロテインクリスタル
サイボックス㈱
プロテインチップおよびその化学反応検出への使用
㈱プロテインクリスタル タンパク質複合体及びその製造方法並びにその用途
㈱プロテインクリスタル 無細胞タンパク質合成系による多角体の形成および
東洋紡績㈱
その多角体へのタンパク質の包埋技術
㈱プロテインクリスタル タンパク質複合体及びその製造方法並びにその装置
㈱プロテインクリスタル
日本全薬工業㈱
多角体タンパク質複合体を用いた検出方法
外国出願
出願国
出願番号
出願人
名称
米国
10/415,096
㈱プロテインクリスタル タンパク質複合体およびその製造方法
米国
10/541,752
㈱プロテインクリスタル タンパク質複合体及びその製造方法並びにその装置
カナダ
未付与
㈱プロテインクリスタル タンパク質複合体及びその製造方法並びにその装置
中国
200480001852.7 ㈱プロテインクリスタル タンパク質複合体及びその製造方法並びにその装置
ヨーロッパ
04700519.4-2406 ㈱プロテインクリスタル タンパク質複合体及びその製造方法並びにその装置
・商標登録
プロテインビーズ\PROTEINBEADS(登録番号
- 11 -
第4662701号)
(3)ネットワーク
・バイオビジネスコンペJAPAN(2002 年 4 月 15 日)
大阪商工会議所主催の第 2 回バイオビジネスコンペ JAPAN において大阪大学と共同で「レー
ザーマイクロプロセスにより結晶性タンパク質封入体を配列・固定した新規プロテインチップの
開発」を提案し、最優秀賞を受賞しました。
設立当初は役員の個人的なネットワークの中での活動でしたが、この受賞を機会に大阪商工会
議所などの支援を中心に会社をPRする機会等が増え、ネットワークが急速に拡大しました。
・和研薬株式会社
当社にはない昆虫細胞の大量培養の実績および昆虫細胞での目的タンパク質の大量生産の実績
を持っている和研薬株式会社と提携し、一貫したタンパク質受託生産体制を整備しています。ま
た、和研薬株式会社は全国に営業所または代理店を持っており、日頃から研究者と接触が多いこ
とから、そのネットワークを利用した販路拡大が期待できます。
(4)大学発ベンチャー
・京都工芸繊維大学 地域共同研究センター インキュベーション・ラボラトリー
スタートアップラボ
入居(2003 年)
学内に当社研究室を設けることで、大学研究室や社内の密な連絡が可能となると共に、大学発
ベンチャー特有の課題である経営面における人材不足に対し、客員教授等の外部専門家の支援を
受けることができました。
・近畿経済産業局や大阪府など行政から補助金等を受託しただけでなく、会社をPRする機会や運
営のアドバイス等の支援・指導を受けております。
・京都銀行「がんばれ中小企業・活き活き育成投資事業有限責任組合」の第一号投資(2005 年)
ベンチャー振興にご理解のある京都銀行のファンドから投資を受けております。
・中小企業基盤整備機構
クリエイション・コア京都御車
入居(2006 年)
入居に伴い京都府および京都市より補助金の提供を頂き、成長期の環境整備が進むと共に、ク
リエイション・コア京都御車のサポートにより、日常業務の環境も整いつつあります。
- 12 -
(5)国家プロジェクト
・(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
ヒト完全長 cDNA プロジェクト
タンパク質機能解析「大量発現」を受託
平成13年度-17年度
内容:年間300~400個のヒト完全長 cDNA クローンからのタンパク質の発現と多角体への
固定化
・経済産業省
即効型地域新生コンソーシアム研究開発事業
「蛋白質分子固定化ハイスループットスクリーニング用チップの開発」を受託
平成13年度採択
平成14年度実施
内容:昆虫細胞系及び小麦胚芽系での多角体へのタンパク質の固定化とレーザーマニュピレーシ
ョン及びスポッティングによるプロテインチップの開発
成果:アレルギー診断チップの試作と日本全薬工業への研究ツールとしての販売
・経済産業省
地域新生コンソーシアム研究開発事業
「昆虫ウイルスの微結晶を用いたタンパク質の構造と機能解析」を受託
平成16年度-17年度
内容:多角体を用いたタンパク質の構造解析、感染症診断キットの開発と膜タンパク質チップの
開発
成果:トリインフルエンザウイルス感染診断キットの試作(動物衛生研究所での評価)
・文部科学省
再生医療の実現化プロジェクト
「ヒト臍帯血幹細胞増幅因子探索」に参画
平成17・18年度
内容:細胞増殖因子を多角体に固定化し、臍帯血幹細胞の増殖と分化を制御
成果:多角体に固定化したサイトカインの有効性が認められ、さらに今後プロテインビーズ®その
ものが幹細胞などの増殖・分化を誘導するための足場としての機能も持てることを実証
・農林水産省
安全・安心な畜産物生産技術の開発
「減投薬を可能とするドラッグデリバリーシステム(DDS)の利用技術の開発」を受託
平成17年度-19年度
内容:サイトカイン固定化多角体による経口 DDS システムの開発
- 13 -
Ⅴ
事業戦略
㈱プロテインクリスタルはタンパク質受託生産事業とプロテインビーズ®事業を二本の柱として、
バイオ関連分野への研究支援事業を行う開発型の企業を目指します。
(1)タンパク質受託生産事業
タンパク質発現のアウトソーシングは遺伝子やタンパク質解析速度の加速化に伴い成長してい
る分野です。そこで、タンパク質の受託生産においてもより高品質のものを適正な価格と高い技
術力で市場を開拓できるように日々努め、全国に営業所、代理店を持つ和研薬(株)との連携や
ベンチャーならではのきめ細かい対応で差別化を図っていきます。このようにタンパク質受託生
産という新興事業分野において技術的リーダーシップを発揮し、先行者優位を築くように努めま
す。
(2)プロテインビーズ®事業
国家プロジェクト等の参画により培ってきた実績(プロテインビーズ®の有用性)を事業化につ
なげるため、更なる用途開発を進めます。具体的には実用化プロジェクトへの参画や関連企業の
開拓を積極的に行い、実績を積むと共に、プロテインビーズ®の受託生産システムの確立を目指し
ます。
前述のタンパク質受託生産事業とは異なり新しい分野の事業であることから、顧客獲得には困
難が伴うものの、逆に本事業がデファクトスタンダード(事実上の業界標準)となり得る大きな
可能性を秘めており、従来の枠にとらわれないプロテインビーズ®の用途開発に努めます。また、
先行者として業界の標準化に成功した際には、その製造特許をライセンシングすることも含め海
外展開を行う予定です。
一方、プロテインビーズ®を用いたプロテインチップも現在のプロトタイプから商品化へ向けた
開発へ移行していくと共に関連技術企業や販路の開拓に取り組みます。
- 14 -
Ⅵ
事業計画
タンパク質受託生産事業は従来の方法とプロテインビーズ®作製の二本の柱を立てて展開していく
予定です。また、感染症診断キットは世界に先駆けた高付加価値商品であり、サイトカインプロテイ
ンビーズ®事業はこれから再生医療が飛躍的に進歩していく中で重要な位置を占めるものであり、両者
とも継続的に大きく収益に貢献できると考えています。しかし、プロテインビーズ®事業に関しては用
途開発が急務であり、各種公募プロジェクトに参画することにより、効率よく実績を積みながら、商
品開発へフィードバックしていく予定です。
(単位;百万円)
05年度
(実績)
各種公募PJ
06年度
07年度
08年度
09年度
売 上 高
25.0
25.0
30.0
30.0
30.0
発現受託
8.0
8.0
10.0
12.0
14.0
動物用キット
2.0
2.0
5.0
5.0
5.0
サイトカイン
3.0
3.0
5.0
15.0
25.0
38.0
38.0
50.0
62.0
74.0
経常利益
△1.0
△1.0
3.0
7.0
11.0
増員計画
0
0
営業 1名
研究 1名
事務 1名
設備投資
0
0
0
0
0
運転資金
15.0
10.0
0
0
0
合計
15.0
10.0
0
0
0
合計
資金調達
プロテインビーズ®関連事業は受託生産、動物用感染症診断、ヒト用感染症診断およびサイトカイン
関連に事業の柱を立てて展開します。現在の開発スキームは以下の通りです。
テーマ
対象分野
開発段階
プロテインビーズ®
受託生産
製薬メーカー
大学
研究機関
動物用
感染症診断キット
ヒト用
感染症診断キット
サイトカイン
プロテインビーズ®
提携先
製造
販売
生産開始
和研薬㈱
和研薬㈱
動物病院
検査会社
畜産企業
臨床テスト
探索中
日本全薬工業㈱
病院
検査会社
クリニック
基礎研究
探索中
探索中
製薬メーカー
大学
研究機関
試作中
A
A
- 15 -
社
社
z 予想される市場規模
・動物用感染症診断キット
家畜(産業用動物)や愛玩動物などの感染症を中心に展開していく予定ですが、鳥インフルエ
ンザウイルス診断キットの開発が急務であり、現在商品化へ向けて最終段階にきています。
鳥インフルエンザウイルス診断キット
国内において採卵鶏は 1 億 3,700 万羽、ブロイラーは 5 億 8,600 万羽が飼育されています(2002
年)。現在開発中の診断キットは1キット単価 1,000 円を予定しており、年 4 回、5%の抜き取
り検査を行うと仮定して、国内市場規模 1,446 億円を見込んでいます。
・ヒト用感染症診断キット
国内市場は 3,000 億円程度であり、特に人命に関わるため迅速かつ正確な診断が要求されてい
ます。特に注意をしなければならない感染症は以下のものです。
1.ウイルスの大規模感染(アウトブレーク):重症急性呼吸器症候群(SARS)、西ナイルウ
イルス感染症など
2.小児科医療における感染症:麻疹、水疱瘡、突発性発疹、水痘、手足口病、おたふく風邪、
川崎病など
3.内科医療における感染症:インフルエンザ、風疹など
シェアー20%を目標とし、2009 年度から展開できるよう開発および提携先探索を行います。
・サイトカインプロテインビーズ®
当社は世界で初めてサイトカインの固定化に成功し、そのサイトカインは非常に安定であり、
そのままの状態で細胞に対して「増殖」「分化」のシグナルを持続的に発信することができます。
また、プロテインビーズ®そのものが細胞を増殖・分化させる「足場」となるため、外傷(火傷や
床ずれ)、角膜幹細胞、臍帯血幹細胞の増殖・分化誘導への展開も期待できます。
世界の再生医療分野(市場 10 兆円)における細胞治療およびサイトカイン治療の収益は 2005
年で 1.3 兆円であり、2010 年には 2 兆円を超えるまで成長すると予測されています。また動物細
胞実験分野の市場は7兆円であり、両分野に参入する予定です。
- 16 -
Ⅶ
会社概要
商
号
株式会社プロテインクリスタル
本
社
〒541-0053
大阪市中央区本町 2 丁目 3 番 8 号
電話 06-4964-6690
設
立
三甲大阪本町ビル 6 階
FAX 06-4964-6691
2001年5月14日
代 表 者
森
資 本 金
3,213万円(2006年5月現在)
決 算 期
3月
京都支社
〒602-0841
肇・山中唯義・金井宏実
京都市上京区河原町通今出川下る梶井町448番5
クリエイション・コア京都御車
電話 075-950-1150
(研 究 所)
212号室
FAX 075-950-1151
クリエイション・コア京都御車
205・206号室
- 17 -
Ⅷ
その他
(1)関連文献
・Mori H, Nakazawa H, Shirai N, Shibata N, Sumida M, Matsubara F. (1992)
Foreign gene expression by a baculovirus vector with an expanded host range
J. Gen. Virol. 73, 1877-1880
昆虫-バキュロウイルス系による外来タンパク質の発現に関する論文。
一種類の組換えウイルスで昆虫培養細胞だけでなく昆虫(個体)でのタンパク質発現が可能となり、タンパク質の
生産方法に使用目的に応じた選択肢を増やした。
・Mori H, Ito R, Nakazawa H, Sumida M, Matsubara F, Minobe Y. (1993)
Expression of Bombyx mori cytoplasmic polyhedrosis virus polyhedrin in insect cells by using a baculovirus
expression vector, and its assembly into polyhedra.
J Gen Virol. 74, 99-102.
プロテインビーズ®として使用している多角体タンパク質遺伝子の発現に関する論文。
・Ikeda K, Nagaoka S, Winkler S, Kotani K, Yagi H, Nakanishi K, Miyajima S, Kobayashi J, Mori H. (2001)
Molecular characterization of Bombyx mori cytoplasmic polyhedrosis virus genome segment 4
J. Virol. 75, 988-995
昆虫ウイルスが多角体の中に入るために関与するタンパク質の遺伝子を解析した論文。
この遺伝子の解析により目的のタンパク質を活性を保ったままの状態で意図的に多角体の中に封じ込めること
に成功した。
・Ikeda K, Nakazawa H, Shimo-Oka A, Ishio K, Miyata S, Hosokawa Y, Matsumura S, Masuhara H, Belloncik S,
Alain R, Goshima N, Nomura N, Morigaki K, Kawai A,
Kuroita T, Kawakami B, Endo Y, Mori H. (2006)
Immobilization of diverse foreign proteins in viral polyhedra and potential application for protein
microarrays.
Proteomics. 6, 54-66.
プロテインビーズ®に固定化したタンパク質の安定性とプロテインチップの作製について報告した論文。
・森
肇、池田敬子
BIO REVIEW「昆虫ウイルスの多角体を用いたプロテインチップの開発」
月刊バイオインダストリー2003 年 3 月号(シーエムシー出版)
・森
肇、中澤
裕、池田敬子
昆虫ウイルスを用いたプロテインチップの開発
松永是監修(2004 年、シーエムシー出版)
バイオチップの最新技術と応用
・森
肇、中澤
裕、池田敬子
昆虫ウイルスを用いたプロテインチップの開発-プロテインチップの考え方と作成法、利用法-
川崎健次郎・野田博明・木内
信監修(2005 年、シーエムシー出版)
昆虫テクノロジー研究とその産業利用
- 18 -
(2)関連記事
・平成13年(2001年)12月
プロテインクリスタル
日刊工業新聞
「バイオの関西、事業化に名乗り」
・平成14年(2002年)3月18日
プロテインクリスタル
読売新聞
増殖するバイオベンチャー
「カイコから成長プロテイン社」
・平成14年(2002年)3月25日
産経新聞
・平成14年(2002年)4月16日
新産業を拓く大学発ベンチャー7
「研究と事業、第 2 世代は役割分担」
プロテインクリスタル・京都工芸繊維大学
日本工業新聞・朝日新聞・毎日新聞
「第 2 回バイオビジネスコンペ」
プロテインクリスタル・大阪大学
・平成14年(2002年)10月30日
・平成15年(2003年)1月11日
「カイコのウイルスでタンパク質保存」
日本経済新聞(夕刊)
「地場産業を先導
・平成15年(2003年)1月16日
大学 VB 人
日経産業新聞
プロテインクリスタル・京都工芸繊維大学
プロテインクリスタル他
ベンチャー・中小7
大学発ベンチャー
蚕研究からバイオ」
京都新聞
知の種子 産の果実
プロテインクリスタル他 「技術力で起業に挑戦」
・平成15年(2003年)7月
プロテインクリスタル
9日
「試験用たんぱく質を供給」
・平成15年(2003年)9月11日
プロテインクリスタル
大学発 VB の素顔
日本経済新聞
日刊工業新聞
飛躍するバイオベンチャー
「アレルゲン特定チップ開発」
・平成16年(2004年)4月 ダイヤモンド[ループ]2004 年 4 月号(ダイヤモンド社)
特集次世代テクノロジーリーダー100 人
・平成16年(2004年)5月
日本全薬工業・京都工芸繊維大学
3日
日本経済新聞
科学
日刊工業新聞
「動物感染症診断15分以内」
・平成18年(2006年)2月23日
プロテインクリスタル
肇」
「ウイルス感染15分診断」
・平成16年(2004年)5月19日
京都工繊大 VB と全薬工業
「森
日刊工業新聞
バイオベンチャー最先端
「感染症診断などに応用」
- 19 -
(3)用語解説
【タンパク質とは・・・】
タンパク質は知っているようで、よく考えると分からない不思議な物質です。
「アミノ酸からできている。炭水化物、
脂質とともに3大栄養素の一つ。動物性と植物性がある」といった断片的な知識はあっても、正確には答えられない人
がほとんどではないでしょうか。2002 年にノーベル化学賞を受賞した島津製作所の田中耕一さんは、タンパク質の構
造解析に新しい道を切り拓いたといわれています。田中さんは世界で初めてタンパク質を気化、検出する「ソフトレー
ザーイオン化法」を開発、その業績がノーベル賞の決め手になったようです。タンパク質を質量分析するには気化して
イオン化することが必要ですが、タンパク質は気化しにくい上にイオン化の際に高エネルギーをかけると分解してしま
うため、高分子量のタンパク質ほどイオン化が困難であるとされていました。田中さんはグリセロールとコバルトの混
合物を熱エネルギーの緩衝材に使用して、レーザーによるタンパク質の気化、検出を可能にしたのですが、実は間違え
てグリセロールとコバルトを混ぜてしまい「どうせ捨てるのだから」といって実験し、それが成功したという逸話があ
るようです。
タンパク質は 20 種類のアミノ酸が 50 個程度から数万個、鎖状に連なって3次元に複雑に折りたたまれてできてい
ます。アミノ酸の並び方でタンパク質の種類が異なり、ヒトに関するものだけでも 10 万種類以上あるといわれ、その
性質や機能も様々です。タンパク質は生物の体を構成している主な成分であり、細胞の主成分でもあります。人間の体
の 30%はタンパク質からできており、骨、筋肉、血液、爪、髪の毛にも含まれています。また体を形づくるだけでは
なく、栄養の運搬・貯蔵やホルモンのように細胞間の情報伝達に関与しているのをはじめ、免疫にも重要な役割を果た
しています。生命全体に関わる非常に重要な機能を担っているといっても過言ではないでしょう。体内に存在するタン
パク質が全て明らかになれば、体内で起こっている現象を把握し、これまで解くことのできなかった多くの疑問が解決
でき医学・医療の進歩を一段と期待することができます。
タンパク質の正体を明かすにはその周辺の数多くのタンパク質も解析をする必要があり、また、そのタンパク質を分
析装置などにかける場合は大量のタンパク質を必要となります。したがって、生体内から組織を採取して一種類のタン
パク質を特定することは極めて困難なことであり時間も要します。実際、1901 年に膵臓のランゲルハンス島と糖尿病
の因果関係が明らかになってからインスリンの発見までに 20 年という長い年月がかかっています。インスリンは血糖
値の恒常性維持に重要なホルモンのひとつです。インスリンの分泌は血糖値の上昇に依存しますが、インスリンの生産
が追いつかなくなり慢性的な高血糖が続くと糖尿病の引き金となります。
今日まで治療技術は進歩してきたものの、未だ、糖尿病に苦しむ患者は減少するどころか世界的にも増加の一途をた
どっています。糖尿病発症のメカニズムも解析技術の進歩と共に謎の部分が次々と明らかになり、インスリンが糖尿病
を引き起こす病因の氷山の一角であることを示しています。したがって、現在でも関連タンパク質を中心とした機能解
析の研究、および、より効果のある薬の開発が行われているのです。
- 20 -
【タンパク質の発現系とは・・・】
インスリンは血糖値を減少させるため糖尿病の治療薬として用いられますが、発見当時は精製方法が未熟で希少価値
も危険性も共に高いものでした。インスリンは 1982 年に遺伝子組み換え技術を用いることによって、純度が高く安価
な製品の大量供給が可能となり、第 1 世代のバイオ医薬品として商業化され、現在でも常に改良を加えられながら糖尿
病の治療薬として販売されています。
下の図のように遺伝子から mRNA を作るまでを「転写」と言い、さらに mRNA からタンパク質を作るまでを「翻
訳」と言います。
「タンパク質の発現」とは、遺伝子組み換え技術を用いて微生物や動植物の細胞の中で遺伝子から「転
写」と「翻訳」を経てタンパク質を作るまでのプロセスのことであり、このタンパク質発現のためのシステムを「タン
パク質発現系」と呼びます。
生命活動の必要性に応じて、どのようなタンパク質を作ればよいか(どのようなアミノ酸配列を作ればよいのか)を
命令するのは遺伝子です。遺伝子が入手できれば、遺伝子にコードされたタンパク質を「タンパク質の発現系」を用い
て大量に作ることができます。「タンパク質の発現系」は数多く開発されており、大腸菌発現系・酵母発現系・昆虫細
胞発現系・動物細胞発現系などが挙げられます。しかし、多種多様なタンパク質をそつなく発現できる万能な系は現在
のところ存在せず、それぞれの系にコストや手間、翻訳後の修飾の特徴や違いがあるため、目的に応じてどの系で行う
か選択しなければなりません。
酵母
昆虫細胞
各発現系において遺伝子からタンパク質が作られる
大腸菌
5’
3’
DNA
T A C A A C C C A G A G G G T C A T T T C
A T G T T G G G T C T C
C C A G T A A A G
3’
5’
転写
mRNA
3’
5’
U A C A A C C C A G A G G G U C A U U U C
翻訳
チロシン
アスパラギン
プロリン
グルタミン酸
グリシン
タンパク質
ヒスチジン
フェニルアラニン
動物細胞
- 21 -
【バキュロウイルス発現系とは・・・】
タンパク質の発現系の中でも哺乳動物の培養細胞系よりも高収量でかつ作業が容易であり、細菌の系よりも高品質の
タンパク質の生産が期待できる系が昆虫細胞を用いたバキュロウイルス発現系です。バキュロウイルスと昆虫細胞を用
いた発現系は、キンウワバに感染する Autographa californica nucleopolyhedrovirus(AcNPV)とカイコに感染する
Bombyx mori nucleopolyhedrovirus (BmNPV)の系が開発され、様々な研究に用いられています。
バキュロウイルス粒子は、多角体という封入体に包埋されており、多角体は自然界では紫外線などからウイルス粒子
を守る働きをしています。また多角体は、ウイルスがコードする多角体タンパク質より構成されている結晶性の構造物
で、感染細胞の核内にきわめて大量に形成されます。
多角体タンパク質遺伝子のプロモーターは、非常に強力なプロモーター活性を持ち、しかも多角体タンパク質はウイ
ルスの増殖や複製には関与していないことが知られています。そのために、このプロモーターを利用して、多角体タン
パク質の代わりに組み換えタンパク質を発現させる系、すなわちバキュロウイルス発現系が開発されました。 この発
現系を用いて、現在では数多くの組み換えタンパク質が作られています。また、弊社ではこの系を応用して、昆虫培養
細胞だけでなく、昆虫の個体からも大量の組み換えタンパク質を生産することができます。
【昆虫が注目されている】
品質の良いタンパク質を大量に作る系として現在注目されているのが昆虫および昆虫の培養細胞を用いたバキュロ
ウイルス発現系ですが、この発現系を応用したカイコ-バキュロウイルス発現系は生きたカイコ(昆虫)の個体がウイ
ルスの培養装置となり、昆虫の体を有用物質の生産工場と見立てて、「昆虫工場」とも呼ばれています。カイコはマウ
スなどに比べて、逃げない、噛まない、啼かない、臭くないなどの利点を有しており、組み換え DNA 実験レベルでの
大量飼育に適しています。また、広食性蚕の育成によって人工飼料での大量飼育が極めて安定しているので、昆虫を使
って大量に有用物質を生産することへの期待は大きいものがあります。生産効率は作る物質にもよりますが、1頭の昆
虫工場で約1㎎の目的タンパク質が得られ、大腸菌の系の数千倍から1万倍に達するといわれています。国内では動物
用のインターフェロン製剤がこの昆虫工場で量産化され、商品化されています。
- 22 -
【プロテインビーズ®とは・・・】
弊社でもタンパク質発現受託サービスを行っていますが、遺伝子構造からその産物であるタンパク質を大量に発現す
る技術は進歩しています。しかし、タンパク質はDNAなどの核酸と違い、個々の分子の物理的性質が異なり、その特
性も多様です。したがって現在画一的な方法で多くのタンパク質を精製する技術は確立していません。
その理由にはタンパク質は不安定な物質であるというタンパク質そのものの特徴が挙げられます。主な特徴としては
1.熱や乾燥等による変性や分解、2.発現中に共存するプロテアーゼに分解されやすい、3.ガラスやプラスティック器具
表面への吸着による損失などが挙げられます。現在対処法として、常に 1~5℃程度の低温に保っておくことが原則で
あり、場合によっては界面活性剤・塩濃度・SH保護剤・グリセリン・金属イオン・pHなどの調製を個々のタンパク
質に対して至適量を検討し、最も安定な条件を見つけることが必須となっています。また、プロテアーゼによる分解を
防ぐには適当なプロテアーゼ阻害剤の選択が必要であり、損失を最小限に留めるためには実験器具の素材検討などの対
策も必要となります。
上記に示したようにタンパク質を取り扱うは、たいへん多くの検討項目があり、遺伝子解析ほどタンパク質の解析が
進まないボトルネックがここにあると考えられます。
昆虫ウイルスは宿主である昆虫が休眠(冬眠等活動を休止)している間、エネルギーを獲得できないため自らも息を
潜めていなければならないが、昆虫ウイルスにとって外部環境(乾燥・熱・プロテアーゼ・紫外線等)は劣悪であり、
生命を維持することは不可能です。しかし、昆虫ウイルスは多角体と呼ばれるタンパク質性の結晶体を作る遺伝子を持
っており、宿主に感染している間に増殖したウイルスは自ら作り出す多角体の中に取り込まれています。多角体によっ
て包埋されたウイルスは外的環境、特に紫外線などから保護され、ウイルスの感染力が長期間保護されます。多角体が
昆虫に食下されると、アルカリ性の中腸内腔の消化液によって多角体は溶解し、包埋されていたウイルス粒子が放出さ
れて感染が起きます。
ウイルスはタンパク質と核酸から構成されており、多角体がウイルスの保護をするということはタンパク質や核酸を
外部環境から保護することができるということです。したがって、多角体に目的タンパク質を特異的に固定化できれば
活性を保ったままの状態でタンパク質を安定化させることができ、プロテインバンクやプロテインライブラリーといっ
たタンパク質のストックが可能になると考えられます。
そこで、我々はタンパク質の立体構造とその機能解明の時間、経済的制約を排除できるタンパク質解析研究で渇望さ
れている技術(プロテインビーズ®)をカイコ細胞質多角体病ウイルス(Bombyx mori Cypovirus ; BmCPV)の特徴
を利用して世界に先駆けて開発しました。このプロテインビーズ®は目的のタンパク質を発現と同時に自動的に固定化
し、さらに熱や乾燥等の外部環境から保護できるので、タンパク質の安定性が向上し、保存が可能になります。したが
って、上記のようなタンパク質特有の問題を解決できるものと期待されています。タンパク質の固定化が難題とされて
いるプロテインチップの開発にもこのプロテインビーズ®が起爆剤になれると考えられます。
- 23 -
Ⅸ
知的資産経営報告書とは
真の企業価値を計るには、企業における有形資産のみならず、人的資産、知的財産、関係資産等か
らなる「知的資産」を認識し評価を行うとともに、それをどのように活用して企業の価値を高めてい
くのか、その経営戦略を知ることが重要です。知的資産経営報告書とは、この「知的資産」を活用し
た企業価値向上のための活動(価値創造戦略)を、ステークホルダー(利害関係者)に分かりやすく
伝え、ステークホルダーとの間で企業の将来性に関する認識の共有化を図るために作成される報告書
です。企業の価値創造性が重要視されている現代社会においては、このような報告書により、企業の
正確な実力を計ることがより一層重要となっております。
知的資産経営報告書作成にあたり、経済産業省から 2005 年 10 月に「知的資産経営の開示ガイドラ
イン」が公表されており、本報告書は、原則としてこれに準拠して作成しております。
ただし、創業間もないベンチャーにとって、保有特許や過去の売上実績等をベースにした指標等を
詳細に記述することは難しく、本報告書では、新製品開発や新事業の立ち上げ、技術の優位性等を中
心に詳述し、その結果、新規顧客や連携企業等の開拓につながること期待して本報告書を作成してお
ります。
注意事項
本知的資産経営報告書に記載されている計画、見込み、戦略などは、現在入手可能な情報に基づい
て当社の判断で記載したものです。つまり、現時点における当社の将来予測であるために、内外の環
境の変化や研究開発の進展等によっては、記載内容等を見直すことがあります。従って本報告書に記
載した内容や数値を将来にわたって保証するものではありません。
- 24 -
Ⅹ
謝辞
本報告書を作成するにあたり、お忙しい中終始にわたって丁寧なご指導・ご助言を賜りました
立大学法人
京都工芸繊維大学
連携コーディネーター
地域共同研究センター
中森孝文助教授および同センター
行場吉成客員教授にこころより感謝申し上げます。
- 25 -
国
産学官
Fly UP