...

PDF File:548KB - 東京大学 生産技術研究所 岡部 徹

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

PDF File:548KB - 東京大学 生産技術研究所 岡部 徹
低級塩化物を利用するチタンの新製造プロセス
東京大学生産技術研究所
1. 序論
竹田 修,岡部 徹
直接溶解・鋳造することができる,などの長所を有してい
軽量かつ高強度,高耐食性といった優れた特性を有する
る.さらには,今後増大することが予想されるチタン・ス
チタン(Ti)は,現在,四塩化チタン(TiCl4)のマグネシ
クラップを有効に利用できる点では環境調和型のプロセ
[1]
ウム(Mg)熱還元法(クロール法 )により工業生産され
スも構築できる.
ている.この手法は高純度のチタンが製造できるという長
本研究は,チタンの高速・(半)連続製造プロセスの確
所を有するが,還元工程で析出するチタンが鉄鋼製反応容
立を目指し,その要素技術である効率的な TiClx の製造プ
器内壁に固着するため連続生産が困難で,バッチ式の製造
ロセス,TiClx の濃縮プロセス,TiClx のマグネシウム熱還
プロセスを余儀なくされている.また,TiCl4 のマグネシ
元法および副生成物の高速分離プロセスの開発を行うこ
ウム熱還元反応が強烈な発熱反応であり,反応を制御する
とを目的とする.各プロセスにおける化学種の生成機構を
ために生産速度が制限され,最新の設備を用いても 1 バッ
解析してプロセスの最適化を検討する.最終的に本プロセ
チあたり高々1 トン/日の生産速度であり,極めて生産性が
スの総合的な評価を行い,量産プロセス構築への指針を提
低い.チタンの需要は年々増加しているが[2],クロール法
言する.
による生産性の向上は限界に達しており,チタンの更なる
普及のために安価で生産性の高い新しい製造プロセスの
Calcined coke Rutile, Upgraded ilmenite
Cl2
Crude TiCl4 (+ VOClx, SiCl4, SnCl4)
究が世界各地で盛んに行われているが[3–5],酸化物の還元
Purification of TiCl4
プロセスの実用化のためには解決しなければならない多
Scrap Ti
くの課題がある.一方で,塩化物を利用するプロセスも,
TiCl4
TiClx + MgCl2
的に有利なため,近年検討がなされている[6–8].
MgCl2
以上の背景を踏まえて,著者らは,二塩化チタン(TiCl2)
Mg
や三塩化チタン(TiCl3)などのチタンの低級塩化物のマグ
MgCl2
ネシウム熱還元法を基盤とするチタンの高速・(半)連続
Enrichment of TiClx
TiClx (+ MgCl2)
Mg
Reduction of TiClx
Vacuum distillation
本研究が対象とする新規プロセスのフロー図を Fig. 1 に示
Electrolysis
of MgCl2
Arc melting
の低級塩化物(TiClx,x = 2, 3)を製造し,塩化マグネシウ
Ti or Ti alloy ingot
させる.反応後,副生成物の MgCl2 および余剰のマグネシ
ウムは機械的方法および真空蒸留により分離・回収する.
本プロセスとクロール法の特徴を Table 1 に示す.本プ
ロセスは,TiClx を還元工程の原料として用いることによ
り 1) 低級塩化物の還元反応に伴う発熱が TiCl4 のそれよ
りも低いため還元工程で発生する熱量を低減でき,また凝
縮相中で反応を行うことにより反応容器からの反応熱の
抜熱速度を向上できるため,プロセスの高速化・連続化が
可能である,2) Ti / TiCl2 平衡下で還元反応を進行させるこ
Mg, MgCl2
Ti sponge
ネシウムあるいはチタン・スクラップを反応させてチタン
物をチタン製還元容器に装填し,速やかに還元反応を進行
Ti (+ MgCl2)
Ti sponge(+ MgCl2, Mg)
製造プロセス(サブハライド還元法)の開発を行っている.
ム(MgCl2)中で濃縮する.その後,TiClx と MgCl2 の混合
VOClx, SiCl4
SnCl4
Production of TiClx
系内に酸素を含まず高純度のチタンを製造するのに本質
す.本プロセスでは,図に示すように,まず TiCl4 とマグ
CO, CO2
Fluidized bed chlorination
開発が求められている.近年は,酸化物の直接還元法の研
Fig._1__Flowchart of the new Ti production process based on
the subhalide reduction process.
Table_1__Comparison of the Kroll process and new process.
Process type
Kroll process
This study
Batch-type,
limited speed
(Semi-)continuous,
high speed
Feed material
TiCl4 (l, g)
TiCl2 or TiCl3 (s, l)
Heat of
reduction,
ΔH°/kJ mol Ti
Reactor
material
High
(−434)
Low
(−94~−191)
Mild steel
(Fe contamination
unavoidable)
Large
(Crush and melt)
Ti
(No Fe contamination)
MgCl2, Ti
Reactor size
とによりクロール法で使用不可能であったチタン製反応
Small (No crush
and direct melt)
容器が利用でき,容器からの鉄汚染を効果的に防止できる,
Flux, sealant
Not used
3) 真空蒸留により副生成物を容易に分離でき,高純度の
Common
features
Magnesiothermic reduction of chloride
Removal of MgCl2 and Mg from Ti sponge by
draining and vacuum distillation
High-purity Ti with low oxygen content can be
produced
チタンが得られる,4) 小ロットの半連続還元に適してい
るため,必ずしも破砕工程を必要とせず,還元分離工程後,
1/8
2. 金属チタンと四塩化チタンの反応による
低級塩化物の製造プロセス
2.3 結果と考察
実験後,TiCl4 を導入する管の低温部には紫色物質が凝
縮し,また,Mo トレイ中に設置したチタン粉末は焼結・
2.1 目的
結合し,その上部表面に鱗片状の黒色物質が析出している
チタンの低級塩化物の製造プロセスとしては,TiCl4 と
様子が観察された.XRD により紫色の凝縮物は TiCl3 と同
チタンの反応や TiCl4 とマグネシウムの反応が考えられる. 定された.また,チタン粉末上に生成した黒色物質は TiCl2
今後増大が予想されるチタン・スクラップの有効利用を想
であり,TiCl3 も若干混合していることが分かった.Table_2
定し,前者の合成プロセスについて検討を行った.
に得られた試料の代表的な組成分析を示すが,これからは
試料組成が TiCl2 であることがわかった.XRD では少量の
TiCl3 も同定されていたことから,未反応の金属チタン粉
2.2 実験方法
これまでに多種多様な実験装置を自作し実験を行った
が,その中の代表的なものを Fig. 2 に示す.モリブデン
末が一部存在し,全体の組成が TiCl2 になった可能性があ
るが,詳細は調査中である.
(Mo)製のトレイあるいはステンレス鋼製のトレイにチ
回収された TiClx 試料の収率は 23~35%と低く,TiCl4 の
タン粉末(99.7%,6.30~6.32_g)を充填し,ステンレス鋼
送液速度が高いほど収率は低下する傾向があった.また,
製反応容器内に積み重ねて挿入し,アルゴン雰囲気下で容
反応のために消費されたチタンの割合は,42~45%であっ
器底部が 1273_K になるまで昇温した.反応式(1)を仮定し
た.このように収率および反応率が低い理由は,式(2)に示
たとき,チタン粉末に対して等モルの液体 TiCl4(99%,
す反応で TiCl3 が生成し,蒸発・散逸したためと,金属チ
25.5~25.7_g)を,送液ポンプを用いて 0.12~0.64_g/min の
タン表面で生成した固体の TiCl2 が式(1)に示す金属チタン
速度で輸送し,反応容器内部に滴下・導入した.
の塩化反応を阻害する膜となり,さらに式(3)に示す反応で
Ti (s) + TiCl4 (g) → 2 TiCl2 (s);
(1)
ΔGf° = −18.9 kJ/mol @ 1273 K [9]
反応を十分に進行させるために,送液を 30 min ごとに中
断し 10 min 間の保持時間を設けた.全ての TiCl4 を滴下し
たのち,10 min 間温度を保持して実験を終了した.
反応容器を電気炉内で徐冷したのち開封し,窒素雰囲気
TiCl2 (s)が TiCl3_(g)に変換されて蒸発し,装置低温部に凝
縮したためと推測される(Fig. 3 参照).
Ti (s) + 3 TiCl4 (g) → 4 TiCl3 (g);
ΔGf°
= −75.6 kJ/mol @ 1273 K
(2)
[9]
TiCl2 (s)+ TiCl4 (g) → 2 TiCl3 (g);
ΔGf°
= −28.4 kJ/mol @ 1273 K
(3)
[9]
下で生成物を回収した.得られた TiClx などの大気中の水
TiClx の収率を高めるためには,生成した TiCl2 を反応界面
分と反応する試料は,グローブボックス内でポリイミド製
から除去し,さらに TiCl4 との反応を防ぐ必要があると考
フィルムで覆って粉末 X 線回折分析(XRD)により相の
えられる.
同定を行った.また,試料の金属元素の含有量の定量は誘
導結合プラズマ原子発光分光法(ICP-AES)で,塩素の含
有量の定量は電位差滴定法で行った.
(a)
Exp.
Concentration of element i, Ci (mass%) a
x value
No.
in TiClx
Cl c
Fe b
Ni b
Cr b
Mo b
Ti b
2A
39.13 60.05
0.19
0.49
0.20
0.03
2.07
2B
36.01 63.34
0.16
0.31
0.16
0.04
2.38
2C
38.46 60.45
0.68
0.24
0.17
<0.01
2.13
2D
37.50 61.82
0.18
0.42
0.10
0.04
2.23
a:_Average of 6 samples obtained from each tray.
b:_Determined by inductively coupled plasma-atomic emission
spectrometry (ICP-AES).
c:_Determined by potentiometric titration method.
TiCl4 flow
Thermocouple (T2)
Thermocouple (T1)
Heating element
Table_2__Analytical results of the TiClx samples obtained
by reacting TiCl4 with Ti metal.
(b)
Alumina crucible
Stainless-steel
outer chamber
Tray a
Tray b
TiCl4 (g) + TiCl2 (s) → 2 TiCl3 (g)
Stainless-steel
reactor
Tray c
Tray d
Feed TiCl4 (g)
Mo tray
Tray e
Tray f
Ti powder
10 mm
TiCl3 (g)
TiCl2 (s)
10 mm
Fig._2__(a) Schematic illustration of the representative
experimental apparatus for TiClx synthesis by reaction
of Ti metal with TiCl4, (b) photograph of Mo trays
tentatively installed in transparent beaker.
2/8
Ti (s)
Fig._3__Schematic illustration of an estimated side reaction
between feed TiCl4 and TiCl2 formed on Ti feed
powder.
3. 溶融塩中での金属チタンと四塩化チタンの
反応による低級塩化物の製造プロセス
3.3 結果と考察
実験後,反応容器を設置したステンレス鋼製チャンバー
上部には若干の TiCl3 が凝縮していた.ステンレス鋼製反
応容器内の上部には緑色の塩(Table 3,Position 3a)が,
3.1 目的
前章の研究により,金属チタンと TiCl4 の直接の反応で
下部には黒色の鱗片上結晶と緑色の塩の混合物(Table 3,
は TiClx の合成反応の反応率が低いことがわかった.そこ
Position 3b~3d)が凝固していた.いずれの試料も XRD か
で,溶融塩などの媒体を用いて,生成した TiCl2 を溶融塩
らは MgCl2 のみが同定された.組成分析の一例を Table 3
中に溶解して反応界面から除去し,より効率よく TiClx を
に示すが,反応容器内上部の塩はチタン濃度が
製造するプロセスの検討を行った.
1.58~2.33_mass% と 低 く , 下 部 の 塩 は チ タ ン 濃 度 が
3.2 実験方法
値は,下部の塩は 2.24~2.47 の値であり,TiCl2 として得ら
7.07~9.93_mass%と高い傾向があった.MgCl2–TiClx 中の x
本実験では溶融塩として MgCl2 を選択した.1273 K に
れたことがわかった.上部の塩については 4 を越える値が
お け る 溶 融 MgCl2 中 へ の TiCl2 の 溶 解 度 は 83 mol%
得られており,原因を調査中である.回収された試料の
[10]
,MgCl2 は生成した TiCl2 を反
TiClx 換算の収率は 46~64%で,TiCl4 の送液速度が高いほど
応界面から除去すると同時に TiCl2 を蓄積する媒体として
収率は高い傾向があったが,この理由については詳細は検
機能することが期待される.
討中である.また,反応のために消費されたチタンの割合
(86_mass%)であるため
溶融塩中での低級塩化物合成のために製作した代表的
は,80~93%であった.
な 実 験 装 置 を Fig. 4 に 示 す . 無 水 MgCl2 ( >97% ,
本実験から,溶融 MgCl2 を反応媒体として用いることに
99.98~100.12 g)を 72 h 真空乾燥してステンレス鋼製反応
よって TiClx 合成反応の収率および反応率が向上すること
容器に充填し,アルゴン雰囲気下で容器底部が 1273_K に
が実証された.しかし,その水準は工業的な応用を考慮す
なるまで昇温した.MgCl2 が溶融したのを確認した後,ス
ると未だ十分ではないため,反応温度や TiCl4 導入管の形
テンレス鋼製バスケットに保持されたスポンジチタン
状,スポンジチタンを保持するバスケットの形状と配置等
(99.7%,6.31~6.32 g)を溶融 MgCl2 中に浸漬した.液体
について更なる検討を行う予定である.
TiCl4 ( 99% , 25.4~25.7_g ) を , 送 液 ポ ン プ を 用 い て
0.13~0.56_g/min の速度で輸送し,反応容器内部に滴下・導
入した.滴下された TiCl4 はステンレス鋼製 TiCl4 導入管内
で直ちに気化し,溶融 MgCl2 中で気泡となってスポンジチ
タンと反応すると考えられる.所定量の TiCl4 を滴下した
後も,5 min 間温度を一定に保ち,実験を終了した.ステ
ンレス鋼製バスケットを溶融塩から引き上げ,電気炉内で
反応容器を徐冷して開封し,窒素雰囲気下で生成物を回収
Table_3__Analytical results of the MgCl2–TiClx samples
obtained by TiClx synthesis in molten MgCl2.
Position
Cr a
x value
in
TiClx
<0.01
0.04
0.03
0.04
4.35
2.31
2.39
2.26
Concentration of element i, Ci (mass%)
Ti a
Cl b
Mg a
Fe a
Ni a
3a
2.33
74.63 23.01
0.03
<0.02
3b
7.07
72.25 20.62
0.01
<0.02
3c
8.87
71.85 19.24
0.01
<0.02
3d
9.58
71.34 18.95
0.08
<0.02
a: Determined by ICP–AES.
b: Determined by potentiometric titration method.
した.得られた MgCl2–TiClx 試料はポリイミド製フィルム
で覆い XRD により相の同定を行った.また,ICP-AES お
よび電位差滴定法により組成分析を行った.
(a)
TiCl4 (l, g) flow
4.1 目的
Stainless-steel tube
for TiCl4 feed
チタンの低級塩化物は高温まで凝縮相として存在する
Thermocouple (T2)
ため(TiCl3 の昇華点:1103 K,TiCl2 の昇華点 1580 K),溶
Thermocouple (T1)
Heating element
4. 二塩化チタンのマグネシウム熱還元反応に
よるチタンの製造プロセス
融マグネシウムとの凝縮相中での高速な反応が期待でき
(b)
Alumina crucible
る.また,TiCl2 は金属チタンと平衡するため,クロール
Stainless-steel
outer chamber
法では用いることのできない,チタン製反応容器が利用で
Stainless-steel
container
きる.そこで,チタン製反応容器を用いた TiCl2 のマグネ
Stainless-steel
basket
シウム熱還元法について基礎的な実験を行った.
Ti sponge
Molten MgCl2
10 mm
4.2 実験方法
10 mm
Fig._4__(a) Schematic illustration of the representative
experimental apparatus for TiClx synthesis in molten
MgCl2, (b) photograph of stainless-steel basket for
holding Ti sponge.
3/8
4.2.1 TiCl2 の合成
本実験では,あらかじめ TiCl3 と金属チタンの反応によ
り TiCl2 を合成した.本実験で用いた TiCl3 中には若干の三
塩化アルミニウム(AlCl3)が含まれている.そこで,AlCl3
4.2.2 TiCl2 のマグネシウム熱還元
が 454 K において昇華することを利用して,合成実験の前
の温度上昇中に AlCl3 を蒸発・除去した.
代表的な実験装置を Fig. 5 (d)に示す.特別に作製したチ
タン製反応容器に金属マグネシウム小塊(99.9%,1.34~
代表的な実験装置を Fig. 5 (a)および(c)に示す.グローブ
2.68 g)を設置してから,TiCl2 の合成実験で得られた試料
ボックス内で TiCl3 粉末(10.02~79.97 g)とチタン粉末
(5.97~10.00 g)を充填した.チタン製反応容器をステン
(99.7%,1.21~9.74 g)を均一に混合し特別に作製したチ
レス鋼製チャンバーに装入し,アルゴンガス雰囲気下,
タン製反応容器に充填した.それをステンレス鋼製チャン
3.3_K/min の速度で 1073 K まで昇温した.実験中の試料の
バーに装入し,アルゴン雰囲気下,3.3_K/min の速度で
温度変化を TiCl2 の合成実験と同様に測定した.
773~1073 K まで昇温し,10~120 min 保持した.反応容器
TiCl2 のマグネシウム熱還元反応が終了したのち,1073 K
中央部(熱電対 1,T1)および反応容器外部(熱電対 2,
で 10 min 保持して実験を終了した.試料を電気炉内で徐
T2)に設置した熱電対で実験中の試料の温度変化を測定し
冷した後,機械的に回収した.得られた試料は,純水,酢
た.
酸,および塩酸でリーチングを行い,副生成物の MgCl2
実験後,チャンバーからチタン製反応容器を取り出し,
と余剰の金属マグネシウムを除去した.さらに純水,イソ
反応容器内の複数箇所から生成した物質をサンプリング
プロパノール,アセトンで洗浄し,真空乾燥させた後,分
し分析に供した.得られた TiClx 試料はポリイミド製フィ
析に供した.
ルムで覆い,XRD により相の同定を行った.また,ICP-AES
一部の実験では,TiCl2 のマグネシウム熱還元反応が終
了したのち,1073 K で 10 min 保持し,チャンバー内を
および電位差滴定法により組成分析を行った.
2×10-4 atm の真空度まで排気し,続いて 3.3_K/min の速度
(a)
Argon inlet/outlet
で 1273 K まで昇温し,真空蒸留によって副生成物の MgCl2
(b)
と余剰の金属マグネシウムを蒸発・除去した.試料温度が
Thermocouple (T1)
Thermocouple (T2)
1273 K に到達したのを確認して実験を終了した.試料を電
Alumina tube
気炉内で徐冷した後,機械的に回収し分析に供した.XRD
により試料中の相の同定を行い,組成は蛍光 X 線分析法
Stainless-steel
outer chamber
(XRF)で分析した.試料の形態観察は走査電子顕微鏡
Stainless-steel
Mg and MgCl2
condenser
(SEM)で行った.
100 mm
Heating element
4.3 結果と考察
Stainless-steel
reaction vessel
(c) Exp. for
TiCl2 synthesis
4.3.1 TiCl2 の合成
(d) Exp. for
TiCl2 reduction
実験中の試料温度は単調に上昇し,急激な温度変化は観
測されなかった.XRD から,773 K で行われた実験では
Ti reaction container
a
Top
b
TiCl3 and Ti powder
TiCl2 は生成しなかったが,1073 K で行われた実験では
TiCl2 powder
Middle
TiCl2 が生成したことがわかった.
Stainless-steel cell
Bottom
Mg lump
得られた試料の代表的な組成,収率,および組成式 TiClx
20 mm
Fig._5__Schematic illustration of the experimental apparatus:
(a) total appearance, (b) photograph of stainless-steel
reaction vessel and stainless-steel Mg and MgCl2
condenser, (c) setup for TiCl2 synthesis, (d) setup for
the magnesiothermic reduction of TiCl2.
中の x 値を Table 4 に示す.生成した TiClx 中の x 値は 1.76
~2.28 であり,この結果は XRD の結果とよく一致した.
1073_K で 120 min 保持した試料(Table 4,4A)は収率が
51%と低かった.これは生成した TiCl2 の一部が蒸発し散
逸したためと推測される.
Table_4__Analytical results of the TiCl2 samples obtained in the experiment for TiCl2 synthesis.
Sample
Concentration of element i, Ci (mass%)
Ti
c
Fe
c
Ni
c
TiCl3 Feed a
24.31 b
0.03
<0.01
4A top
42.81
0.13
<0.01
4A bottom
43.18
0.05
<0.01
4B top
37.10
0.06
<0.01
4B middle
39.54
0.05
<0.01
4B bottom
40.25
0.07
<0.01
a: Supplied by Toho Titanium Co., Ltd.
b: Nominal value.
c: Determined by ICP-AES.
d: Determined by potentiometric titration method.
Cr
c
<0.01
<0.01
<0.01
<0.02
<0.02
<0.02
4/8
Mg
c
<0.04
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
Al
c
4.50 b
0.05
0.63
0.19
0.10
0.10
Cl
d
71.12 b
57.01
56.14
62.61
60.29
59.56
Yield
(%)
–
51
94
Calculated
value of x
in TiClx
2.95
1.80
1.76
2.28
2.06
2.00
4.3.2 TiCl2 のマグネシウム熱還元
るチタンの生成速度に比べて極めて高く,本プロセスは高
いずれの実験においても,T1 が 973 K になるまで試料温
速な還元プロセスに適しているといえる.今後,本プロセ
度は単調に増加した.T1 が 973 K 以降の温度履歴の代表例
スにおけるチタンの生成速度をより正確に決定するため
を Fig. 6 (a)に示す.図に示されるように,T1 が 979 K を越
の実験を行う予定である.
えてから急激に温度が上昇した.温度は 1 段階で上昇し,
TiCl2 の還元反応が終了した後,一部の実験では,副生
1009 K まで到達したのち単調な増加に戻った.一連の実験
成物の MgCl2 と余剰の金属マグネシウムを真空蒸留によ
により,200 s 以内で TiCl2 のマグネシウム熱還元反応が終
り除去した.分離プロセスでは試料温度は概して単調に増
了することがわかった.
加した(Fig. 6 (b)参照).途中若干の温度降下がみられたが,
本プロセスは原料の供給形態がクロール法と異なるた
め,本プロセスでのチタンの生成速度をクロール法と単純
に比較することは困難である.しかし,その還元反応の速
[11]
それは MgCl2 および金属マグネシウムの蒸発によって試
料部位の熱が奪われたものと考えられる.
実験後,チタン製反応容器を回収したところ,容器は初
クロール
期の形状を維持し,全く損傷していなかった.つまり,TiCl2
法におけるチタンの生成速度を小スケールのインパルス
のマグネシウム熱還元法に対してチタン製の反応容器を
度を比較することは重要である.下崎と蔵元は
2
応答法で測定し,1000 K で 0.006_kg/m ·s,1140 K で
適用できることがわかった.酸でリーチングして副生成物
0.013_kg/m2·s の値を得ている.より大きなスケール(1.4 t
を除去したところ,XRD より, α–チタンと若干のチタン
バッチ)の実験からは,クロール法におけるチタンの生成
水素化物(TiH2)が得られたことがわかった.TiH2 はリー
2
[12]
速度が 0.009 kg/m ·s 程度であると報告されている
.本研
究では,TiCl2 のマグネシウム熱還元反応が 200 s 以内で終
チング時に余剰の金属マグネシウムと酸が反応して水素
が発生し,それをチタンが吸蔵し生成したと考えられる.
3
一部の実験では副生成物を真空蒸留で除去したが,その実
(0.06_kg/m ·s)程度となる.この値はクロール法におけ
験でもチタン製容器には全く損傷がなく,さらに,リーチ
了したことから,そのチタンの生成速度は 0.76 kg/m ·s
2
ングをすることなしに直接金属チタンのみを得ることが
できた.
(a) Magnesiothermic reduction of TiCl2
1100
得られた試料の代表的な組成を Table 5 に示す.実験条
1000
700
TiCl2 + Mg → Ti + MgCl2
950
: T1 (inner)
: T2 (outer)
900
0
200
400
600
800
Temperature, T’ / °C
750
30 K
Temperature, T / K
800
183 s
1050
件によっては 99.7%の純度のチタンを得ることができた.
得られたチタンの収率は 89~99%であった.これらの実験
結果から,チタン製容器を用いた TiCl2 のマグネシウム熱
還元法と副生成物の真空蒸留・分離プロセスを組み合わせ
650
ることによって,高純度のチタンを高効率で製造できるこ
1000
Time, Δt / s
(b) Removal of reaction product MgCl2 by vacuum distillation
とが実証された.
得られたチタンの SEM 像を Fig. 7 に示す.還元実験の
1300
1200
900
1100
Mg(l) → Mg(g)
MgCl2(l) → MgCl2(g)
800
1000
: T1 (inner)
: T2 (outer)
700
後,リーチングにより副生成物を除去した試料では 1~5 μm
Temperature, T’ / °C
Temperature, T / K
1000
程度の一次粒から形成された珊瑚状の構造が観察された
(Fig. 7 (a)参照).還元反応の後,副生成物を真空蒸留によ
り除去した実験の試料では一次粒間の顕著な凝集が認め
られた(Fig. 7 (b)参照).これは,真空蒸留による副生成物
900
0
1
2
3
4
の分離プロセス中に試料が高温にさらされたため,一次粒
5
Time, Δt’ / ks
Fig._6__Temperature change of sample; (a) on the experiment
for the magnesiothermic reduction of TiCl2, (b) for the
removal of Mg and MgCl2 from Ti product by vacuum
distillation.
の焼結が進行したものと考えられる.今後,TiCl2 のマグ
ネシウム熱還元反応におけるチタンのより詳細な析出メ
カニズムについても検討する予定である.
Table_5__Analytical results of the titanium samples obtained after the experiment for the magnesiothermic reduction of TiCl2.
Concentration of element i, Ci (mass%)a
Ti
Fe
Ni
Cr
Mg
Al
4Xa
99.71
0.16
0.04
<0.01
0.06
0.03
4Xb
99.19
0.10
<0.01
0.04
0.50
0.16
4Ya
99.75
0.22
<0.01
0.03
<0.01
<0.01
4Yb
99.72
0.16
<0.01
<0.01
<0.01
0.10
a: Determined by X-ray fluorescence analysis (XRF); the value excludes carbon and gaseous elements.
b: This value includes the uncertainty due to mechanical separation.
Sample
5/8
Yield
(%)
99
≥89b
98
99
TiCl2
From
4Bb
4Bc
4Bc
4Ba
Separation
method
Leaching
Vacuum
distillation
で分析した.試料の形態観察は SEM で行った.
(a) Ti sponge deposit recovered by leaching
5.2.2 副生成物の高速分離プロセス
ドレインと真空蒸留を組み合わせた副生成物の分離実
験では Fig. 8 に示す装置を用いた.図に示されるように,
本装置は反応容器底部に副生成物をドレインするポート
を備えている.還元反応後,このポートを開放することに
10 μm
よって副生成物を重力によって排出することができる.排
(b) Ti sponge deposit recovered by vacuum distillation
出した副生成物は下部のステンレス鋼製トレイで回収し
た.その後,チャンバーを排気して 1273 K まで昇温し,
副生成物と余剰の金属マグネシウムを真空蒸留により除
去した.試料を電気炉内で室温まで冷却した後,機械的に
回収し分析に供した.
(a)
10 μm
Argon inlet / outlet
(c)
50 mm
Thermocouple(T1)
Fig._7__Scanning electron micrograph of Ti sponge deposit
after the experiment for the magnesiothermic
reduction of TiCl2.
Thermocouple(T2)
Alumina tube
Stainless-steel
outer chamber
Stainless-steel
Mg and MgCl2
condenser
5. 三塩化チタンのマグネシウム熱還元反応に
よるチタンの製造プロセス
Heating element
Stainless-steel
reaction vessel
5.1 目的
(b)
Plug and outlet
port for Mg and
MgCl2 drain
前章では,チタン製反応容器を用いた TiCl2 のマグネシ
Stainless-steel tray
for Mg and MgCl2
drain
ウム熱還元反応が高速な還元プロセスに適していること
が実証された.本章では,もう一種の低級塩化物である
(b)
50 mm
TiCl3 のマグネシウム熱還元法によるチタンの製造プロセ
Ti reaction container
スについて基礎的な実験を行った.さらに,ドレインと真
TiCl3 powder
空蒸留を組み合わせた副生成物の高速分離プロセスにつ
Mg rod
いても検討を行った.
Fig._8__Schematic illustrations of the experimental apparatus for the
magnesiothermic reduction of TiCl3, (both ends open / MgCl2
drain type). (a) Over all appearance, (b) inner setup of reaction
vessel, (c) photograph.
5.2 実験方法
5.2.1 TiCl3 のマグネシウム熱還元
特別に作製した小型あるいは大型のチタン製反応容器
に金属マグネシウム(99.9%,4.01~22.52 g)を設置した.
一部の実験では,角型のマグネシウムを反応容器底部に設
置,あるいは棒状のマグネシウムを反応容器鉛直方向に配
置するなどして,マグネシウムの分散状態を変化させた実
験を行った.それらのチタン製反応容器に TiCl3 粉末
(19.70~101.65 g)を充填した.チタン製反応容器をステ
5.3 結果と考察
5.3.1 TiCl3 のマグネシウム熱還元
TiCl3 のマグネシウム熱還元反応による試料の温度変化
の代表例を Fig. 9 に示す.TiCl3 の投入量が少ない実験
(TiCl3: 19.70~19.89 g)では二段階の温度上昇が認められ
た(Fig. 9 (a)参照).これは,以下のステップで反応が進
行したためと考えられる.
ンレス鋼製チャンバーに装入し,アルゴンガス雰囲気下で
昇温し,TiCl3 のマグネシウム熱還元反応における温度変
化を測定した.
TiCl3 (s) + 1/2 Mg (l) → TiCl2 (s) + 1/2 MgCl2 (l);
(4)
°
副生成物の分離は 1) リーチング(Table 6,Exp. No. 5A,
5D,5E 参照),2) 真空蒸留(Table 6,Exp. No. 5B,5C 参
照),3) ドレインと真空蒸留を組み合わせたプロセス
(Table 6,Exp. No. 5X,5Y 参照,詳細後述)で行った.
得られた試料は XRD により相の同定を行い,組成を XRF
6/8
ΔH = −96 kJ/mol @ 1000 K
TiCl2 (s) + Mg (l)
→ Ti (s) + MgCl2 (l);
(5)
°
ΔH = −91 kJ/mol @ 1000 K
一方で,TiCl3 の投入量が多い実験(TiCl3: 99.43~101.65 g)
では一段階の急激な温度上昇が観測された.いずれの実験
みが得られた.得られたチタンの代表的な組成を Table 6
(a) Magnesiothermic reduction of TiCl3 (small amount)
1300
900
150 s
1100
800
1000
700
: T1 (inner)
: T2 (outer)
900
0
200
400
600
Time, Δt / s
800
99%以上のチタンを収率 99%で得ることができた.
Temperature, T’ / °C
2 TiCl3 + 3 Mg → 2 Ti + 3 MgCl2
40 K
Temperature, T / K
1200
に示す.表に示されるように,実験条件によっては純度
1000
Mass of TiCl3 feed: 19.76 g
5.3.2 副生成物の高速分離プロセス
ドレインと真空蒸留を組み合わせた副生成物の分離プ
ロセスの実験(TiCl3: 99.96~100.95 g)では,副生成物をド
1000
レインで排出・除去した後,チャンバーを排気し,1273 K
まで温度を上昇させた.1273_K までの到達時間は 4.5 ks
(b) Magnesiothermic reduction of TiCl3 (large amount)
1000
2 TiCl3 + 3 Mg → 2 Ti + 3 MgCl2
1100
900
200
のみで副生成物を除去する実験(TiCl3: 19.76~19.89 g)で
900
の到達時間(5.6 ks)よりも短かった.これは,副生成物
800
: T1 (inner)
: T2 (outer)
0
Temperature, T’ / °C
80 s
1200
1000
で,TiCl3 の投入量が 5 倍多いにもかかわらず,真空蒸留
Mass of TiCl3 feed: 99.96 g
210 K
Temperature, T / K
1300
400
600
Time, Δt / s
800
および余剰の金属マグネシウムの大部分がドレインで排
出され,残存した少量の部分が真空蒸留によって除去され
700
たためと考えられる.
1000
実験後,反応容器から回収されたチタン,ドレインによ
Fig._9__Temperature change during the experiment for the
magnesiothermic reduction of TiCl3.
においても還元反応は 200 s 以内に終了し,チタンの生成
って排出され回収された MgCl2 およびマグネシウム,およ
(a) Obtained Ti deposit
(b) Setup
速度は 0.54 kg/m3·s(0.04 kg/m2·s)程度であった.つまり,
TiCl2 と同様に TiCl3 のマグネシウム還元反応も高速な還元
Ti reaction
container
プロセスに適していることがわかった.
TiCl3
powder
実験後,チタン製反応容器を回収したところ,容器は初
期の形状を維持し,全く損傷していなかった点は特筆すべ
Mg rod
き点である.つまり,TiCl3 のマグネシウム熱還元法に対
してもチタン製の反応容器を適用できることがわかった.
10 mm
(c) Drained Mg/MgCl2
10 mm
(d) Evaporated Mg/MgCl2
平衡論的には TiCl3 は金属チタンと反応して TiCl2 を生成
するが,チタン製の反応容器が損傷を受けなかったのは,
本実験条件では,TiCl3 のマグネシウム熱還元反応の方が
圧倒的に速かったことが一因として考えられる.
角型のマグネシウムを反応容器底部に設置した実験で
は,反応容器上部に TiCl2 が残存し,還元反応の進行は不
10 mm
十分であった.このことから,還元剤であるマグネシウム
の供給経路の制御と反応容器内での分散状態が重要であ
ることがわかった.
リーチングで副生成物を除去したチタン中には,TiCl2
の還元実験と同様に,水素化物が含まれていた.一方で,
10 mm
Fig._10__(a) Photograph of the obtained Ti deposit after the
experiment for the magnesiothermic reduction of
TiCl3, (b) schematic illustration of the initial setup
before experiment, (c) photograph of drained MgCl2
and Mg, (d) precipitate of MgCl2 and Mg after
evaporation.
真空蒸留で副生成物を除去した実験からは金属チタンの
Table 6
Analytical results of the titanium samples obtained after the experiment for the magnesiothermic reduction of TiCl3.
Exp.
Concentration of element i in obtained Ti sample, Ci (mass%) a
No.
Ti
Fe
Ni
Cr
Mg
Al
5A
96.35
0.13
<0.01
0.03
0.02
3.47
5B
99.37
0.16
<0.01
0.02
0.16
0.44
5C c
95.79
1.74
0.33
0.36
<0.01
1.77
5D
99.26 b
0.29 b
<0.01 b
<0.01 b
0.10 b
0.36 b
5E
99.52 b
0.12 b
<0.01 b
<0.01 b
0.11 b
0.24 b
b
b
b
b
b
5X
99.04
0.18
0.02
0.02
0.09
0.65 b
5Y
99.18 b
0.50 b
<0.01 b
0.01 b
0.09 b
0.21 b
a: Determined by XRF, and the value excludes carbon and gaseous elements.
b: Average of top part and bottom part in the obtained titanium sample.
c: Stainless-steel reaction container was used instead of titanium reaction container in this experiment.
7/8
Yield
(%)
81
99
80
66
91
82
87
Separation
method
Leaching
Vacuum distillation
Leaching
Draining and
vacuum distillation
び真空蒸留によって蒸発・除去され回収された MgCl2 およ
びマグネシウムを Fig. 10 に示す.図に示されるように,
MgCl2 およびマグネシウムを含まない金属チタンを反応
[11]_S. Shimosaki and M. Kuramoto: Kagaku Kogaku
Ronbunshu, 21 (1995), pp. 740–745.
[12]_T. Noda: J. Mining Institute of Japan, 84 (1968),
pp._967–981.
容器から直接得ることができた.得られたチタンの収率は
82~87%で純度は 99%以上であった(Table 6,Exp. No. 5X,
5Y).SEM による微細組織の観察では,リーチングで副
生成物を除去したものにくらべ,珊瑚状構造の一次粒が球
状を失って平板状になり,強固に凝集していた.一次粒の
形態変化のメカニズムについては,現在,詳細な解析を試
みている.
6. 結論と今後の方針
本研究ではチタンの低級塩化物のマグネシウム熱還元
法を基盤とするチタンの高速・
(半)連続製造プロセス(サ
ブハライド還元法)の確立を目指した基礎的な実験を行っ
た.具体的には,金属チタンと TiCl4 の反応による低級塩
化物の合成プロセスの検討を行い,溶融 MgCl2 を媒体とし
て用いることで反応効率を高められることがわかった.
TiCl2 および TiCl3 のマグネシウム熱還元反応によるチタン
の製造実験を行い,現行のクロール法に比べ,本プロセス
におけるチタンの生成速度が極めて高いことを明らかに
した.また,本反応系を用いればチタン製の反応容器の使
用が可能であることを実証し,純度 99%以上のチタンを得
ることができた.さらに,反応生成物(MgCl2)のドレイ
ン除去と真空蒸留を組み合わせた効率的な分離プロセス
を開発した.
現在,低級塩化物のより効率の良い製造技術,溶融
MgCl2–TiClx 中での TiClx の濃縮・抽出技術の開発に注力し
ている.また,鉄で汚染されたチタン・スクラップを利用
する TiClx 原料の製造法についても研究を開始する.さら
に,TiClx のマグネシウム熱還元反応におけるチタンの詳
細な生成メカニズムの解析などの基礎研究を進め,これら
要素技術の開発により革新的なチタンの高速製造プロセ
スの確立を目指す.
参考文献
[1]__W. Kroll: Tr. Electrochem. Soc., 78 (1940), pp. 35–47.
[2]__S. Nakamura: Industrial Rare Metals, (Tokyo, Japan:
Arumu publish co., 2004), pp. 52–55.
[3]__Z. Chen, D.J. Fray, and T.W. Farthing: Nature, 407 (2000),
pp. 361–364.
[4]__K. Ono and R.O. Suzuki: JOM (Journal of Metals), 54
February (2002), pp. 59–61.
[5]__T. Abiko, I. Park, and T.H. Okabe: Proceedings of 10th
World Conference on Titanium, (2003), pp. 253–260.
[6]__G.R.B. Elliott: JOM, 50 September (1998), pp. 48–49.
[7]__G. Crowley: Advanced Materials & Processes, 161
November (2003), pp. 25–27.
[8]__A. Fuwa and S. Takaya: JOM, 57 October (2005),
pp._56–60.
[9]__I. Barin: Thermochemical Data of Pure Substances, (VCH
Verlagsgesellschaft mbH, Weinheim, Germany, 1989).
[10]_K. Komarek and P. Herasymenko: J. Electrochem. Soc.,
105 (1958), pp. 210–215.
8/8
A. 学会誌等への投稿論文
1._T.H. Okabe, O. Takeda, K. Fukuda, and Y. Umetsu: “Direct
Extraction and Recovery of Neodymium Metal from Magnet
scrap”, Materials Transactions, 44 (2003), pp. 798-801.
2._O. Takeda, T.H. Okabe, and Y. Umetsu: “Phase Equilibrium
of the System Ag–Fe–Nd, and Nd Extraction from Magnet
Scraps Using Molten Silver”, Journal of Alloys and
Compounds, 379 (2004), pp. 305-313.
3._O. Takeda, T.H. Okabe, and Y. Umetsu: “Phase Equilibria of
the System Fe–Mg–Nd at 1076 K”, Journal of Alloys and
Compounds, 392 (2005), pp. 206-213.
4._O. Takeda, T.H. Okabe, and Y. Umetsu: “Recovery of
Neodymium from a Mixture of Magnet Scrap and Other
Scrap”, Journal of Alloys and Compounds, (2005), in print.
(B.3 の転載)
5._O. Takeda and T.H. Okabe: “High-speed Titanium
Production by Magnesiothermic Reduction of Titanium
Trichloride”, Materials Transactions, in print.
6._O. Takeda and T.H. Okabe: “High-speed Titanium
Production Based on the Magnesiothermic Reduction of
Titanium Dichloride”, Metallurgical and Materials
Transactions B, submitted.
7._O. Takeda and T.H. Okabe: “Synthesis of Titanium
Subhalide by Reaction of Titanium metal with Titanium
Tetrachloride”, Journal of Alloys and Compounds, in
preparation.
B. 会議録
1._T.H. Okabe, O. Takeda, K. Fukuda, and Y. Umetsu: “Direct
Extraction and Recovery of Neodymium Metal from Magnet
Scraps”, Yazawa International Symposium, Metallurgical
and Materials Processing: Principles and Technologies,
Volume I: Materials Processing Fundamentals and New
Technologies, TMS, March 2-6, (2003), pp. 1079-1091.
2._T.H. Okabe, R. Matsuoka, and O. Takeda: “Recycling
Titanium and Other Reactive Metal Scraps by Utilizing
Chloride Wastes”, REWAS 2004, Global Symposium on
Recycling, Waste Treatment and Clean Technology, Volume
I, Madrid, Spain, Sept. 26-29, (2004), pp. 893-902.
3._O. Takeda, T.H. Okabe, and Y. Umetsu: “Recovery of
Neodymium from a Mixture of Magnet Scrap and Other
Scrap”, Rare Earths ’04, International Conference on Rare
Earths, Nara, Japan, Nov. 7-12, (2004), in print.
4._O. Takeda and T.H. Okabe: “A New High Speed Titanium
Production by Subhalide Reduction Process”, 2005 TMS
Annual Meeting, San Francisco, California, USA, Feb.
13-17, (2005), pp. 1139-1144.
5._M. Koike, M. Itoh, O. Okuno, O. Takeda, T.H. Okabe, and T.
Okabe: “Evaluation of Ti-Cr-Cu Alloys for Dental
Applications”, 2005 TMS Annual Meeting, San Francisco,
California, USA, Feb. 13-17, (2005), in print.
6._T.H. Okabe and O. Takeda: “Titanium Production Processes
by Utilizing Molten Salts”, The First Asian and Ninth
China-Japan Bilateral Conference on Molten Salt Chemistry
and Technology (FANCJ Conference), Wuhu, Anhui, China,
May 23-29, (2005), pp. 25-28.
Fly UP