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東海天然ガス輸送パイプライン及びガス発電事業の 事業化に関する研究

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東海天然ガス輸送パイプライン及びガス発電事業の 事業化に関する研究
東海天然ガス輸送パイプライン及びガス発電事業の
事業化に関する研究
Feasibility Study on the Tokai Natural-Gas-Pipeline and Distributed Gas-power-plant
松崎浩憲*1 志田忠一*2
Hironori MATSUZAKI, Tadakazu SHIDA
本研究は、東海地区における天然ガス幹線パイプライン及び分散型ガス発電事業構築に係わる研究の第
一ステップである。本論文では、天然ガスパイプライン事業立上のためのコンソーシアム組織化に関する
検討・東北地区におけるガスパイプライン事業化可能性調査と、分散型ガス発電事業については長岡地区
をケーススタディとして取り上げ事業化可能性の検討調査についてその結果を載せた。
キーワード:温室効果ガス、電熱併給、パイプライン敷設新工法
上げ、内陸部への天然ガス供給による分散型発電
事業等の天然ガス活用関連事業の具体的な立ち上
げを目指し、これらの事業を行なう会社発足のた
めの活動(事業の具体的検討・事業計画書等の作
成から事業会社立ち上げ準備活動等)を目的とす
る。
1.調査研究の背景と目的
地球温暖化対策及びエネルギーセキュリティ確
保への対応として、天然ガスの導入拡大が緊急の
課題となっている。
「エネルギー基本計画」
(平成
19 年 3 月 9 日閣議決定)においても、天然ガス
シフトの導入及び利用拡大を推進することが提
言されている。また、政府が CO2排出削減目標を
達成するために必要な各種政策を取り纏めた「京
都議定書目標達成計画」では、天然ガスシフトの
具体的施策として、民間主体による天然ガス供給
インフラ構築のための環境整備を推進するとし、
分散型電源の普及・産業用燃料転換の推進のため
の基盤整備に早急に着手することが必要と指摘
している。なぜなら、同一熱量であれば、天然ガ
スは石油類よりも温室効果ガス排出量は約 25%も
少ないからである。
この天然ガスシフトを支えるインフラとして、
我国の天然ガスパイプラインは諸外国に遅れを
取っており(天然ガスネットワークは欧米の基幹
インフラとなっており、アジアにおいても中国・
韓国が天然ガス供給パイプライン構築を進めて
いる)
、天然ガスの広域供給パイプライン敷設は
重要な課題である。このインフラを活用した分散
電源の導入は、我国の環境・エネルギー分野を中
心に、その整備・取組が強く求められている事業
といえる。
H
21
年
4
月
以
対応 ●広域天然ガス供給パイプライン構築事業
課題 ●分散発電設備導入(燃料:天然ガス)事業
降
図 1 調査研究の背景と目的
調査準備・
予備検討
天然ガス導入拡大
エネルギー基本計画
京都議定書目標達成
コンソーシア
ム企画取纏め
H
21
年
1~
3
月
エネ庁補助事業に応募
ニーズ把握
エネルギーセキュリティ
H
2
0
年
4
~
12
月
企
業
・
関
連
機
関
へ
訪
問
ヒ
ア
リ
ン
グ
コンソーシアムへの
参加呼掛け
地球温暖化対策(CO2削減)
B ガス発電事業
パイプライン活用事業の検討
コンソーシアム組織化対応
コンソーシア
ムの役割明確
化
<社会的背景>
A 天然ガス輸送パイプライン
事業
コンソー
シアム立
ち上げ
建設技術研
究所の新規
事業分野検
討・派生・関
連事業
県庁・地元
企業等へ
協 力 要
請・連携体
制確立
補助事業手続
○事業採択
○補助金交付申請
○補助金交付決定
(約1千万円補助)
●異常な石油
価格高騰に対
応し、既存イ
ンフラを前提
としないフレ
ームで検討
●パイプライ
ン活用の内陸
型発電の技術
的条件、価格
等環境条件の
検討を実施
天然ガス広域パイプラ
イン整備需要顕在化可
能性調査事業
2012 年以降
のガス需給
○対象地域:
(岩手・宮城) 逼 迫 緩 和 時
○調査内容:天然ガス需 期 の 事 業 化
要推定、地区でのパイプ に向けた、状
ライン事業の FS
況分析・諸検
○本研究との関連:●コ 討実施
ンソーシアム必要性明確
化●敷設工法の多角的検
討●資金調達方法検討●
パイプライン関連事業へ
の国の補助の存在
●調査・検討の実施
コンソーシアムを核とした制度問題対応策
○パイプライン事業運営方式(海外先進事例調
査等)
○LNG 基地等との接続
○パイプライン敷設工法の適用(ルート対応)
○事業採算性○資金調達方式
コンソーシアムの企画取り纏め
事業化
準備活動
以上から本調査研究は図 1 に示すように、広域
天然ガスパイプラインによるガス輸送事業の立ち
図 2 調査研究の全体フレーム
*1
東京本社環境システム室 Environmental System Section ,Tokyo office
*2
国土文化研究所 企画室 Research Center for Sustainable Communities, Research Planning Section
- 79 -
・ガス供給者:東京ガス、大阪ガス、静岡ガス
・資源関連:新日石、出光、三菱商事等
・設備関連:JFE,古河、NEXCO等
2.平成 20 年の調査研究フレームと今後の方針
平成 20 年の調査研究のフレームと今後の方針を
鳥瞰したものを図 2 に示す。
(4)コンソーシアム活動の企画内容素材抽出
前項の事業化条件調査を通じて、コンソーシア
ムへの参加・組織化の呼びかけを行うにあたって
必要となる、コンソーシアム活動内容等を企画書
として取りまとめるに当たり、盛り込むべき調
査・検討項目等の素材を抽出した。
3.天然ガス輸送パイプライン事業実現に向けて
の研究
3.1 実施手順・内容
天然ガス輸送パイプライン事業実現に向けての
本年の調査研究実施手順・内容を次に記述する(図
3参照)
(1)調査研究手順検討
本調査研究項目の対象の東海地区の広域天然ガ
スパイプラインは、概算で距離約 200kmの建設
に 700 億円強の費用を必要とする大規模な事業で
あり(事業としては、運用開始後 12 年で、売り上
げ 110 億円強、利益 40 億をあげ、投資回収可能と
試算)
、民間主導で実現するには単独企業での取り
組みの枠を超えた事業と考えられる。このため、
複数企業共同での構築・利用を想定した取り組み
での対応の実現に向けたコンソーシアム組織化が
一方策である。そこで、コンソーシアムの組織化
へ向けての手順検討を行い、以下を本年活動内容
とした。
ⅰ)国の補助事業への応募と実施
資源エネルギー庁の補助を活用した。
「天然ガス
広域パイプライン整備需要顕在化可能性調査事
業」に応募し、採択され、実施中である。これは、
本研究で活用可能な工法の検討などを実施できる
と共に、国の補助を受けることにより本研究の位
置づけのPR効果などの波及効果が大きい。
ⅱ)関連機関・企業訪問による事業化条件調査
関連省庁・民間企業を訪問、パイプライン事業
実現の条件を明確化した。
(5)今後の展開・活動方針検討
来年度以降の事業化に向けた活動・展開方針の
検討を行った。
①調査研究手順検討
天然ガスパイプライン事業化のためのコンソーシ
アム組織化手順・本年活動項目検討
ⅰ)国の補助事業への応募と実施
本研究の内容の一部を補助金でまかなえると共に、
国の補助を受けることにより本研究の位置づけP
R効果を含め活用
ⅱ)関連機関・企業訪問による事業化条件調査
②天然ガス広域パイプライン整備需要顕在化可能性調
査事業の実施
・実施期間:H20/8 月~H21/3 月
・岩手・宮城でのパイプライン事業
・本年実施事項は、工法検討、地域周辺需要の推定
等
③関連機関・企業に対する事業化条件調査
調査対象機関:
ⅰ)官庁
国土交通省、エネ庁、環境省等
ⅱ)民間企業
ガス需要家、ガス供給企業、資源関連企業、パイ
プライン設備関連企業等
(2)天然ガス広域パイプライン整備需要顕在化
④コンソーシアム活動の企画内容素材抽出
コンソーシアム参加呼びかけに際して、その活
動・調査検討事項を示す企画書の素材を抽出
可能性調査事業の実施(期間H20/8 月~H21/3
月)
・東北(岩手・宮城)のパイプライン事業のF/S
・補助金額約 1 千万円で、岩手県庁・宮城県庁及
び地元企業(東北天然ガス(株)等)の協力を得て
推進
・パイプライン敷設工法検討、設定パイプライン
の沿線の産業用ガス需要の推定を実施
⑤今後の展開・活動方針検討
来年度以降の事業化に向けた活動・展開方針の検討
図 3 調査検討実施フロー
3.2 調査研究結果
3.2.1 天然ガス広域パイプライン整備需要顕在
化可能性調査事業
資源エネルギー庁の本補助事業の実施は、本研
究と関連する分野で公的支援を受けることとなる
ことから、本研究遂行上、以下のようなプラス効
(3)関連機関・企業に対する事業化条件調査
ⅰ)官庁関連訪問調査先
資源エネルギー庁、国土交通省、環境省、石油
天然ガス・金属鉱物資源機構 等
ⅱ)民間企業訪問調査先
・ガス需要家:トヨタ、スズキ、東レ、ヤマハ等
- 80 -
表 2 パイプライン沿線産業用ガス需要推定
果があると判断した。
本研究で活用可能なパイプライン敷設工法・資金
調達等の多角的検討等を実施できること。補助事
業の対象は東北地方であるが全国規模展開の企業
が誘致されており、それらの企業との意見交換の
場を創るきっかけを得ること。国の補助を受ける
ことにより本研究の位置づけと事業化に向けての
コンソーシアムの意義強調・参加PR効果が期待
できること等。
本年調査実施の主要結果を以下に記述した。
(1)パイプライン敷設工法
パイプライン敷設工法と(高速)道路で各工法を
適用する場所・特徴を表 1 に示す。
(需要値単位:百万m3/年)
*1 宮城県は、仙台市の既存都市ガスパイプラインでの供給エ
リアも含む数値
*2 PL利用需要は、潜在需要の 60%まで天然ガス転換し
状況でのガス需要量推定値。
3.2.2 関連機関・企業に対する事業化条件調査
パイプライン事業実現のためのコンソーシアム
組織化への活動として企業・関連機関のヒアリン
グ・意見交換を実施した。これはパイプライン事
業に関連する省庁との意見交換で課題明確化と共
に、規制緩和に向けた今後の取り組み方針検討の
区
分
年
度
調
査
対
象
表 1 パイプラインン工法と適用場所・特徴
番
号
パイプライン
敷設工法
1
開削高速配管工
法
2
コンクリートボ
ックス配管工法
3
4
開削・推進迂回配
管工法
二重管架設配管
工法
5
パイプビーム架
設配管工法
6
管周混合推進工
法
敷設場所
特徴
高速道路土工部(盛
土部及び切土部)
連続工事を可能
とし、工期大幅
短縮
高速道路土工部に
高速道路車両通
接するのり面
行阻害を最小化
可能
埋設による外気
高速道路土工部特
温度変化に対応
殊箇所 (カルバー
ト・橋梁・トンネル 二重管で外気温
等)
度変化に対応
高架部に設置し
高速道路都市高架
二重管で外気温
橋梁部
度変化に対応
小規模共同溝的
高速道路都市高架
構造で工期短縮
橋梁部/大規模特
殊部(トンネンル、 が可能
河川)
参
考
東
海
パ
イ
プ
ラ
イ
ン
ガス需要全
体推定
PL利用需
要*2
岩手県部
602
361
121 事業所
(対
象地区)
宮城県部 *1
607
364
176 事業所
(対
象地区)
対象地区
1,209
725
297 事業所
(対
象地区)
愛知県部
1,353
812
759 事業所
(愛
知県全県)
1,093
656
504 事業所
(静
岡県全県)
2,446
1,468
地域
静岡県部
東海PL部
備考
PL:パイプラ
インの意
ため、また需要家ニーズ・コンソーシアムの機能
等の要望把握のために行った。
事業化の条件把握、対応方針・方法を策定する
ため、本年調査した各機関・企業のパイプライン
事業に対する調査結果を表 3 に示す。
(1)パイプライン事業関連省庁等
パイプライン事業化実現に関し、許認可等を含
み関連する各省庁の現在のスタンスは、エネルギ
ー・環境関連省庁は積極的に推進あるいは支持の
スタンスである。
一方、パイプライン敷設の場である道路を管理
する国土交通省では、高速道路の利用についてそ
の開放にはきわめて慎重(使用事例はあるが)で
ある。但し、高速利用実現の暁にはこれを新規事
業に結び付けたいとの意向もNEXCO(特に東
西日本)にはある。
(2)パイプライン沿線産業用ガス需要推定
岩手県(北上市~宮城県境)
・宮城県(岩手県境
~仙台市)の東北自動車道沿線の産業用ガス需要
を推定した。現在稼働中の事業所を対象とした潜
在ガス需要推定値を表 2 に示す。表 2 には、比較
参照のため、本研究の対東海プライン地区需要推
定値も示した。
なお、60%はガス普及地域での天然ガスの利用
割合で、普及後の到達率として設定した。
上記のように、東北の調査対象地区は、本研究が
対象としている東海パイプライン沿線需要に比較
して規模は 50%と推定される。
しかし、パイプラインの延長比較で東海パイプ
ラインが約 200kmに対して 66%(135km)であ
ることから、工事費用や、新規事業者の誘致状況
を考慮すれば、この地区でパイプライン事業の事
業性はないとは現時点では断定できない。
すなわち、今後事業性の検討の過程で、工事費の
推定、事業性向上のための工夫も含め、検討する
予定である。
(2)エネルギー・資源供給企業
①都市ガス会社は、各社の経営姿勢によってスタ
ンスは大きく異なる。すなわち、東京ガスは、
自らの供給エリア及び周辺で独自のガス網展開
を行っていることもあり、広域パイプラインに
関してはきわめて慎重であるが、大阪ガスは中
部電力とのパイプライン展開事業を進めている
こともあり、積極的なスタンスを示している。
静岡ガスなど中小規模の都市ガス会社は、具体
- 81 -
表 3 関連機関・企業のパイプライン事業に対するスタンス
事業へ
のスタ
ンス
積極
派
↑
・
●スズキ
●東レ
●東芝
●JFE
●住友金属
●新日鐵
●住友電装
・
・
・
● ヤマハ
発動機
●東北
天然ガス
●本田技研
パイプライン事
業関連省等
●経産省
(エネ庁)
●環境省
●中部ガス
●古河機械金属
●三菱商事
●静岡ガス
●NEXCO
・
・
●大坂ガス
●新日石
・
・
エネルギー・資源供給系企業
資源卸分野企業 都市ガス会社
天然ガス需要家の企業一般需要
企業 パイプライン建設関連
●出光興産
●東京ガス
・
↓
慎重
派
● 国交省
(路政課)
●トヨタ
タのようにパイプライン事業はガス供給会社の
事業(特に既存工場の地区で)との考えを持っ
ている企業があることも否定できない。
的プロジェクトでメリットがあれば本パイプラ
イン事業に参加・協力すると言うスタンスであ
る。いずれにしても、都市ガス会社では、輸送
型の共用パイプラインが我国でこれまでない形
態の事業であることから、本研究による事業化
に戸惑いを持っていることは否定できない。
②資源卸会社は、本研究による事業化をビジネス
チャンスとして捉えている企業が大半である。
しかし、天然ガスの調達・卸をこれまで手がけ
ていない企業(出光など)はかかわり方に多少
戸惑っている。
都市ガス会社を顧客としている企業(三菱商事
など)は、本パイプライン事業に参加・協力の意
向を持つものの対顧客に対して目立つことは回避
したいとの意向を持っている。
3.2.3 コンソーシアム活動の企画内容・課題
前項記述の訪問企業等との意見交換・聴取・提
起された課題などに基づき、コンソーシアムの設
立・参加募集に必要となる資料「コンソーシアム
の活動計画」を企画書としてこれから取り纏める
が、現時点でその内容として取り上げるべき項目
を以下に示す。
① コンソーシアムの位置付・果たす役割・参加の
メリットを明確化
需要家を組織し、経済的・効率的パイプライン
建設のための高速利用など規制緩和を求めるこ
と、これまで我国に無かった輸送型の共用パイ
プライン事業の方向を示すなど。
②コンソーシアムで調査検討する事項
・規制緩和に向けた活動に必要な調査検討
・パイプライン事業運営方式確立のため、先進事
例(National Grid など)調査企画
・LNG 基地との接続・パイプラインルート・工
法の適用等技術課題の解決
・事業計画策定・資金調達方式の検討
・事業化に向けての諸々の段取り活動
(3)天然ガス需要家企業等
①ガスの需要家であり、かつパイプライン建設事
業自体に関係する企業は、パイプライン事業実
現に積極的である。住友金属・新日鐵などパイ
プメーカはその最右翼である。建機メーカも事
業に関心を示してはいるが、保有技術・製品の
適用可能性が本研究による事業化に参加するか
否か判断のポイントとなる模様である。
②一般需要家は、エネルギーの安価・安定供給の
観点から、強い関心を持っており、積極参加の
方向を示しているスズキなどもある一方、トヨ
- 82 -
本調査研究は、天然ガスパイプライン事業化に
関するものであるが、その目標実現及び、アプ
ローチの過程で新規の派生・関連テーマとして
展開の可能性ある分野・領域に関する検討(目
標事業との関連性・効果等)を行うことを考え
ている。
(建設技術研究所としての対応に関する
検討は含まず)Ex.「エネルギー+土木」分野で
のコンサル・事業運営コンサル(現時点での想
定例)
3.3 考察と今後の課題・方針
(1)天然ガス広域パイプライン整備需要顕在化可
能性調査事業
前述 3.2.1 に示したように、東北地区でのパイプ
ライン事業は産業用需要が東海地区に比べて約半
分である。今後、民生用需要の推定(都市ガスの
天然ガス転換やLPの天然ガス転換)に関する調
査研究を行うが、大幅な需要増大は期待できない
見通しである。但し、現時点で進行している不況
の影響拡大懸念から、東芝・トヨタ等の新規工場
計画が多少の遅れはあるとしても我国の核となる
産業崩壊がない限り、景気回復と共に実現される
ものであることを踏まえ、将来余予測を含む検討
結果を平成 21 年 3 月に取り纏める。
ここでは、単に楽観的な見通しを展開するので
なく、工法面での工夫・資金調達等多角的な観点
からの施策を検討する予定であり、これは本研究
にも反映できると考えている。
(2)パイプライン事業化に向けての調査研究
①前述3.2.2に示したように、企業のパイプライン事
業に対するスタンスはまちまちであるが、需要家
の声を結集することが重要なポイントと考える。
このため需要家の考え方の転換を図る必要もあり、
具体的な事業イメージを示して、活動への参加を
呼びかけ、かつ活動参加者の立場を考慮した(現
状の顧客との関係に悪影響を与えないなど)
、組織
化の方式を検討し実践する予定である。
②上記のためには、これまで訪問していない(表3
に載っていない)自動車・化学以外の分野の企業
へのアプローチを行いつつ、コンソーシアムへの
参加募集に必要となる資料「活動計画」を企画書
として取り纏める。
③また、事業化に当たっては資金調達の面殻の検
討も必要であることから、天然ガスユーザ企業
だけでなく、商社・金融分野の企業に、本事業
化に関しての意見交換を行うことを考えている。
④事業化に向けたコンソーシアム組織化は、上記
の活動企画書を活用した募集活動を行うことで
あるが、コンソーシアム活動はその企画書に沿
って実施することになり、コンソーシアム内に
対応体制を作ることを考えている。
⑤コンソーシアム活動を通し、下記のような事業
に関する具体的活動へと展開させる予定である。
・事業会社発足に関連した活動
・事業計画書・目論見書等の作成を始め、発足
に係わる諸活動
・事業関連手続・システム構築関連の活動
⑥建設技術研究所における新規事業分野の検討
- 83 -
4.天然ガス発電事業の導入研究
4.1 実施手順・内容
天然ガス発電事業の導入に関する本年調査研
究の実施手順・内容を次に記述する(図4)。
(1)調査研究の位置づけ整理
本調査研究項目の具体的な対象は、天然ガス発電
事業の導入に関してだが、天然ガスパイプライン
事業との連携を意識したケーススタディを設定。
すなわち、内陸部での発電施設導入で、天然ガス
の入手が可能であり、地域振興・活性化に結びつ
く企業等の誘致(エネルギー需要が創造される)
の可能性を重視する。
(2)ケーススタディ地域:長岡市
長岡市はガス田が存在し内陸ながら天然ガス入手
が容易という我国で他に類を見ない地域である。
しかし広域天然ガスパイプラインを実現すること
は、周辺地区をガス入手が容易な長岡市と類似の
環境を実現することが可能となり、現時点での内
陸部天然ガス発電のケーススタディとして最適と
判断できる。また、西部丘陵地区での工業団地事
業の存在しエネルギー需要創出が期待できる。
(3)検討体制
民間と自治体との協調的事業展開の観点から下記
体制で検討を実施した。
(4)発電規模の検討
長岡市の規模(世帯数約 8 万世帯)
、周辺需要、発
電機器の効率を考慮し 5~10 万kW級で検討した。
(5)機器仕様の設定に基づく検討
導入機器仕様を設定し必要燃料の量等を調査した。
共同検討チーム:
役割とバックグランド
●建設技術研究所:
事業検討取り纏め
●古河機械金属株式会社:発電設備を保有・運営
●帝国石油株式会社:
天然ガス供給者
●川崎重工業株式会社: 発電機器関連検討
●株式会社エネット:
PPS、生産する電力の買取、販売
●長岡市 企画部、商工部:事業展開予定地間連の検討、自治
体との連携
(上記チームでの検討は、マルチユーティリティ研究会の活動
を並行的に活用して実施)
(6)事業フレームの検討
地産のガスを活用し燃料費を極力抑え、生産電力
の地消を第一義とする(地産燃料で、地域外への
電力供給は従来の構造)
。近隣需要創出に時間がか
かることからPPSとの連携を図る。
発電事業の一環として、近隣地区への熱供給の可
能性も検討した。
(7)事業性検討・評価
事業性検討を踏まえ今後の展開方針を検討した。
長岡西部丘陵地区への発電施設には、新たに 2km
ほどのパイプライン敷設は必要で、建設費は 2~4
億円その他施設に 1 億円かかると予想される。但
し、2005 年以降の石油価格上昇以来、ガス価格だ
けでなく資材高騰・建設資材の調達が問題となっ
てきており、現時点での予測は非常に難しい。
表 4 発電設備関連主要情報
①調査研究の位置づけ整理
ⅰ)天然ガスパイプラインの活用事業として
分散型発電事業を位置づけ
ⅱ)内陸部の分散発電施設を検討
ⅲ)民間と自治体との協調的事業展開の方法
を探る
注)10万kW規模の設備の場合は上記の2倍
出力
カワサキPUCS
500 コンバインド発
電システム
49,700kW
送電端
42,900kW
燃料消費
9,164Nm3/h
工業用水消費
81m3/h
機器名称
必要敷地
5万kW級:
ガスタービン
2台
冬季
②ケーススタディ対象選定の視点
ⅰ)地産の天然ガス/近傍に天然ガスパイプ
ラインが存在(敷設計画の存在)
ⅱ)自治体等の企業・工場誘致計画との連動
可能性
夏季
水冷式
3
17m /h
空冷式
60m×50m
水冷式
80m×50m
空冷式
③ケーススタディ地域として長岡市
ⅰ)帝国石油のガス田の存在
ⅱ)帝国石油の既存天然ガスパイプライン存
在
ⅲ)長岡市の西部丘陵地区での工業団地事業
の存在
長岡市西部丘陵地区は、多量の工業用水確保が
困難のため、空冷式を検討した。
水冷式に比べ、空冷式は必要な水の消費量は
21%(17m3/h)となるが、空冷ファン駆動に 490
kWほど消費し、用地面積が 33%増加する。
本検討対象地区において、用地面積の増大は余
り大きな問題ではない(市がこれから造成する土
地であり、市側との調整可能な範囲のため)が、
他の地域では必要土地面積が 33%増大するのは大
きな問題になろう。
他地域において、工業用水の使用に問題が無い場
合は水冷式の適用が妥当と考えられる。
4.2 調査研究結果
4.2.1 発電機器関連
ケーススタディ地区に導入可能な、発電関連機
器構成に基づき各種性能・主要諸条件を整理し表 4
に示す。
④発電事業規模の検討
ⅰ)地域周辺需要の想定
ⅱ)発電量の想定(高効率な機器規模)
⑤事業検討のための仕様仮設定
発電規模:5 万kW
→ガス量、発電関連設備内容、必要敷地面
積、使用水量、操作人員 等
⑥事業フレームの検討
ⅰ)地産のガスを活用(燃料費を極力抑える)
ⅱ)生産電力の地消を第一義(地産燃料で、地
域外への電力供給は従来の構造)
ⅲ)PPSとの連携を図る
ⅳ)近隣地区へ熱供給の可能性も検討
⑦事業性の検討・評価
⑧今後の展開方針検討
4.2.2 ガス供給関連
ガス生産・供給側の立場では、発電用燃料として
年間ほぼ一定の需要を確保が出来ることはガスの
生産効率を上げることにつながり、特に夏場の熱需
要減少期にこれを埋める(発電需要の増大により)
方向に働くことはメリットがある。すなわち、この
ことは、
燃料供給価格を抑えることにつなげること
も可能となる。
現在の供給能力に関する計画からは、2012 年以
降に発電用ガス供給は発電規模 5 万kW級までが
限界である。
- 84 -
図 4 調査検討実施フロー
(*PPS:特定規模電気事業者 Power Producer & Supplier)
4.2.3 事業フレームと事業性
(1)一括売電の事業形態
天然ガス発電事業のケーススタディにおいて、
生
産した電力を一括して売電した場ケースについて、
概算で試算した事業収支を表5に示す。
事業性評価はガス価格と共に、売電価格の変動
によっても左右される。
表 5 収支概算(PPSへ一括売電)
項目
金額
(億円)
収入
24.5
燃料費
14.95
17.44
設備償却
費
他
収支
4.86
3.96
+0.7
▲1.8
備考(前提条件等)
送電パターン:
平日昼(8 時~22 時)フル運転
夜間・休日 1/2 運転
→27,186 万kWh/年
平均売電価格:9 円/kWh
(PPSへの売電)
ケース ①30 円/Nm3
ケース②35 円/Nm3
(東京ガスの大口料金参考)
発電設備:約 75 億円、
ガスパイプライン 3 億、
他
メンテ、人件費等
①のケース
②のケース
(2)地域内への自営線供給とPPS売電を組み合
わせた事業形態
地域内工場(誘致)の電力需要に対して、自営線
での供給と、
余剰分のPPSへの売電する事業形態
では、工場への電力供給(電力会社)はkWh当り
約 12 円(契約の仕方により異なる)程度である。
このことから、近隣工場に対して、代金の差(12
円と 9 円)を工場と発電事業で折半したとし、総
出力の 1/2 を自営線供給で行うと概算 2 億円の収
入増となる。
すなわち、
地元事業者にとってもメリットがあり、
発電事業としても採算に合う事業に仕立て上げる
可能性がある。ただし、近隣工場誘致の状況に左右
される点を考慮する必要がある。
(3)電熱併給の検討
近隣工場等への電熱併給を行う場合、
熱供給のた
めの設備投資が必要であるが、
熱併給を行うことに
より事業性の向上を図ることが期待出来る
(投資回
収年数で、電力のみ供給で 15 年ほどの回収年が 14
年と 1 割ほど短縮)
。
但し、実際には、近隣に誘致される工場等の進
出状況・誘致工場等の熱の需要に大きく左右され
ることを踏まえ、評価することが必要である。
4.3 ケーススタディ地区での発電事業導入に関す
る考察と今後の対応
長岡市西部丘陵地区を対象とした発電事業立上
の検討は、以上事業性評価及び、現在の社会状況
を考慮すると、以下の方向での対応が現時点では
妥当と考える。
①地域のエネルギー供給(発電による電力供給、
又は電熱併給)は、インフラ整備事業であり、投
資回収期間が長期に及ぶことから、地元自治体(ケ
ーススタディでは長岡市)との連携により、周辺
整備・工場誘致等と歩調を合せた展開が必要であ
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る。また、公的長期低利融資を活用するためにも、
公的機関と連携をとることが重要である。
②本事業は、試算ケースで燃料費が売り上げの 60
~70%を占めると言う特徴を持つことから、燃料
価格(ガス価格)と電気の販売価格に大きく左右
される。ガス価格(長期契約のLNG価格の多く)
は石油価格との間にS字カーブと言う上昇率緩和
パターンが設定されており石油ほどの値上がりは
当面は無いが、2008 年の 7 月 11 日原油価格は 1
バレル 147.27 ドル(2004 年初めで 30 ドル台)と
なった。現在は一転して、1 バレル 40.5 ドル(2008
年 12 月 5 日)となり、
「先が読めない」状況にあ
る。
(天然ガスの価格上昇だけでなく各種資材(発電
設備関連資材等)の値上がりも、設備建設費の上
昇をもたらしている。
)
③一方、電力料金も燃料価格の上昇により引き上
げられることは確実であり(電力会社が赤字決算
を強いられ、燃料代上昇に連動した料金引き上げ
は確実)本検討の試算での価格より販売価格が上
昇する可能性は高く、発電事業にはプラスの影響
を受けるが、料金設定方式の見直しも議論されて
おりその行方は現時点で不透明である。
④このことから、公的な長期低利資金を活用する
としても、現在民間資金を中心に事業化に即時踏
み出すことは難しい状況にある。特に 2008 年の秋
以来の金融危機の状況は、新規工場の進出を押し
とどめる方向に作用しており、当面は需要縮小基
調が続くものと考えられ、現時点では周囲の社会
経済環境の動向を見守り、関連技術や事業展開方
法の検討により、確実なエネルギー需要を伴った
場での展開を図るべきと考えられる。
⑤天然ガスによる発電事業を検討する本取り組み
は、天然ガス幹線パイプライン事業の関事項とし
て「内陸部での低 CO2 排出発電の実現」
、
「パイプラ
イン利用事業開拓」(パイプラインで送られた天然
ガスを利用する事業)などに結びつくものと位置
づけられる。すなわち、本ケーススタディでは、
新規の工業団地への天然ガス発電事業導入を検討
したが、天然ガスパイプラインの建設と天然ガス
発電事業の相互連携により以下のような場所での
事業展開が考えられ、本年の研究成果は、これを
基にした次の一歩に結びつけることを予定してい
る。
今後の内陸型天然ガス発電事業の展開方向例は、
以下の3点である
(ア)天然ガスパイプラインを敷設する(高速)
道路のPA/SA、IC周辺、道の駅等での展開。
(イ)高速道路沿いの敷地での発電電力の高速道
(ウ)今後の電気自動車の充電拠点として、天然
ガスパイプライン敷設道路におけるGSでの発電、
周辺への電力供給など。
路維持管理(照明・トンネル換気・情報提供)等
への活用(本検討において取り上げた、PPSと
の連携による余剰電力の販売等も含め)
。
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