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ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観

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ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
Kobe University Repository : Kernel
Title
ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
Author(s)
西出, 佳代
Citation
神戸大学国際コミュニケーションセンター論集,12:6878
Issue date
2015
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81009381
Create Date: 2017-03-31
西出 佳代
ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観 1
西出 佳代 2
1.はじめに
ルクセンブルク語は、話者数 40 万人ほどと見積もられる少数言語で 3、西ゲルマン語の一つである。19 世
紀以来の伝統的なドイツ語方言地理学の枠組みによると、西中部ドイツ語の中の西モーゼルフランケン方言
に分類される同言語は(Niebaum/Macha 2006: 55 ff.; Newton 1996: 50)、ドイツ語の一方言から 1984 年言語
法によりルクセンブルク大公国の「国語」へと昇格した拡充言語(Ausbausprache)である(Glück 2005: 71; 西
出 2015: 1 ff.)。言語へと昇格してから 30 年ほどの同言語の規範化は十分進んでいるとはいえず、「標準ル
クセンブルク語」とみなされる言語変種はまだ定まっていない(Moulin 2006)。本稿が記述の対象とするのは、
4 つに大別されるルクセンブルク語方言のうち 4、超地域的な(überregional)言語変種とみなされる中央方言
である(Gilles 1999)。以下、断りがない場合、「ルクセンブルク語(lux.)」という表現は、ルクセンブルク語中央
方言を指すものとする。なお、正書法はすでに公的なものがあり、本稿では現行の 1999 年正書法に則った
綴りを用いる(Braun 2009)。本稿では、標準ドイツ語(dt.)との相違点に着目しながら、ルクセンブルク語にお
ける動詞の屈折体系を概観する。
2.動詞の屈折形式
ルクセンブルク語における動詞は、他のゲルマン語と同様、法・時制の屈折を示し、かつ主語と一致した
人称(1〜3 人称)・数(単数・複数)の屈折語尾を伴う形式(定形、定動詞)と、これらを示さない形式に大別さ
れる。後者には、不定詞、現在分詞、過去分詞が属する。定動詞の屈折には、本来、直説法と接続法があり、
それぞれが時制(現在・過去)と人称・数の屈折を示すが、現在のルクセンブルク語において接続法現在は
すでに失われており、文献にも残っていない。接続法過去も多くの動詞の屈折体系から失われており、助動
詞を用いた迂言法による表現が使用されるため、本稿では直説法の屈折を中心に扱う。また、同言語におけ
る現在分詞は、使用頻度の高いもの、語彙化が進んでいると考えられるものを除いて(lux. ustrengend5 (dt.
1
本研究は、JSPS 科研費 15K16728 の助成を受けたものです。
神戸大学大学教育推進機構国際コミュニケーションセンター [email protected]
3
(UNESCO の「危機言語」(endangered languages)の基準によると、「脆弱な言語」(“vulnerable languages”) に分類されている
(http://www.unesco.org/languages-atlas/ (2016 年 2 月 29 日最終閲覧))。
4
同言語は、中央、北、南、東の 4 つの方言に大別される(Gilles 1999)。
5
同語彙の不定詞の形式は lux. ustrengen 「疲れさせる、負担を強いる」である。不定詞の語尾 lux. -en に接尾辞 lux. -d を
付す現在分詞の形式は、標準ドイツ語などと同様である。ルクセンブルク語において現在分詞が廃れた要因の一つとして、歯
茎鼻音と歯茎閉鎖音の子音連続の同化 *nd/nt > n が挙げられる(lux. an [ɑn] (dt. und 「そして」), lux. bannen (dt. binden 「結
ぶ」); vgl. Bruch 1973: 78; 西出 2015: 214 ff.)。同現象によって、多くの動詞の現在分詞と不定詞との間の形式上の区別が失
われたと考えられる(*-end > -en (現在分詞) = -en (不定詞))。lux. ustrengend などの例は、ドイツ語からの借用語の一種ともみ
2
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西出 佳代
ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
anstrengend 「骨の折れる」など))、基本的に使用されないないため、動詞の屈折体系からはすでに失われ
ていると考えられる(Bruch 1973: 78 ff.)。そのため、本稿で扱う分詞は過去分詞のみとする。
時制と人称・数の屈折を示す定動詞について、まず現在時制の人称・数の屈折語尾(以下、人称屈折語
尾)を示す。また、比較のため、隣に標準ドイツ語のものを載せる。以下では、語幹部分が変化しない弱変化
動詞 lux. wunnen (dt. wohnen) 「住む」の例を示す。
表 1. 現在時制の人称屈折体系
ルクセンブルク語 wunnen の人称屈折語尾
単数
複数
wunn-en
wunn-en
1 人称
wunn-s
wunn-t
2 人称
wunn-t
wunn-en
3 人称
標準ドイツ語 wohnen の人称屈折語尾
単数
複数
wohn-e
wohn-en
1 人称
wohn-st
wohn-t
2 人称
wohn-t
wohn-en
3 人称
複数の屈折語尾は、ルクセンブルク語でも標準ドイツ語でも同様である。単数について、1 人称では、鼻音
を有する印欧祖語以来の古い形式が保たれており(lux. -en)(Beekes 1995: 232 ff.; Keller 1978: 190)、2 人称
では、人称代名詞 lux. du/de/d’ からの異分析(Metanalyse)が起きていない、無声歯茎摩擦音 lux. -s のみ
の古い形式がやはり保たれている。これに対して、標準ドイツ語では、1 人称で鼻音の脱落(dt. -e)、2 人称で
人称代名詞 dt. du からの異分析が起きており、2 人称単数の屈折語尾は、本来の語尾 *-s の後ろに人称
代名詞に由来する歯茎閉鎖音 t が付された形式 dt. -st となっている(*-s du > *-sde > *-ste > -st)(Keller
1978: 190)。
過去時制の屈折について、西ゲルマン語地域では、南部の上部ドイツ語(Oberdeutsch)地域を中心に過
去形の衰退(Präteritumschwund)が進行している。過去形の衰退とは、過去時制を助動詞と過去分詞を用い
た迂言的な完了形式を用いて表現することにより、過去形が動詞の屈折体系から失われる通時的言語変化
を指す。中部ドイツ語に属すルクセンブルク語にも同言語変化は及んでおり、過去形を屈折体系に残す動
詞は、助動詞や頻度の高い動詞のみに限られている。助動詞の過去形は現在も使用頻度が高いが、その他
の動詞は、文献に過去形が記述されている動詞が約 30 個で(Schanen 2012: 327 ff.)、筆者が 2015 年 2-3 月
に行った母語話者に対する調査では 6、その中でも現在はほとんど使用されない動詞が多いことがわかっ
た 7。以下の記述では、標準ドイツ語と比較するために、主に文献に過去形の記述が残っている動詞を取り
上げるが、その中には、すでに実際には使用されていないものも含まれている。
過去時制の人称屈折語尾は、1, 3 人称単数でゼロ形式となる以外は現在時制のものと同様である。語幹
が母音交替を起こさない弱変化動詞では、語幹と人称屈折語尾との間に過去時制の語尾(もしくは接尾辞
(dentales Suffix)) lux. -t, dt. -te が付される(標準ドイツ語では、時制屈折語尾の末尾があいまい母音である
ため、1, 3 人称複数の人称屈折語尾は鼻音のみの dt. -n となる(dt. -te-n/*-te-en))。ルクセンブルク語にお
なすことができる。
6
20 代から 60 代までの中央ルクセンブルク語の母語話者 51 人に対して、過去形が保たれやすい童話のテキストから引用した
過去形を含むドイツ語の文のルクセンブルク語訳をお願いした(詳細は、2015 年 5 月 31 日ドイツ文法理論研究会春季研究発
表会(於武蔵大学)で口頭発表(「ルクセンブルク語における過去形の衰退」))。
7
lux. sëtzen (dt. sitzen) 「座る」などのいわゆる姿勢動詞や、lux. soen (dt. sagen) 「言う」、lux. froen (dt. fragen) 「尋ねる」などの
いくつかの特定の動詞で過去形が保たれる傾向があったが、それ以外の動詞については過去形の使用が観察されなかった。
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ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
ける弱変化動詞は母音交替を起こし、弱変化語尾 lux. -t を伴わないものもあるが(第 3 節参照)、本節では
人称屈折体系に着目するため、標準ドイツ語と同じ特徴を有する弱変化動詞 lux. soen (dt. sagen) 「言う」の
例を示す。
表 2. 過去時制の人称屈折体系
ルクセンブルク語 soen の人称屈折語尾
単数
複数
so-t-φ
so-t-en
1 人称
so-t-s
so-t-φ8
2 人称
so-t-φ
so-t-en
3 人称
標準ドイツ語 sagen の人称屈折語尾
単数
複数
sag-te-φ
sag-te-n
1 人称
sag-te-st
sag-te-t
2 人称
sag-te-φ
sag-te-n
3 人称
時制や人称・数の屈折を示さない形式について、まず不定詞は、語根動詞や縮約(Kontraktion)を起こし
た動詞など特殊なものを除いて(lux. sinn (dt. sein) 「ある(存在・コピュラ動詞)」, lux. ginn (dt. geben) 「与え
る」など)、基本的に接尾辞 lux. -en を伴う 9。
過去分詞について、標準ドイツ語における強変化動詞には、接頭辞 dt. ge- と接尾辞 dt. -en が付される
(dt. komm-en – ge-komm-en 「来る」)。また、語幹の母音は母音交替(Ablaut)を起こすため、不定詞や現在
時制の母音とは異なる場合がある(dt. bleib-en – ge-blieb-en 「留まる」)。弱変化動詞では母音交替が起こら
ず、接頭辞 dt. ge- と接尾辞 dt. -t が付される(dt. mach-en – ge-mach-t 「作る」)。これに対してルクセンブル
ク語では、接頭辞 lux. ge- や接尾辞 lux. -en/-t が付されない動詞が多い(lux. komm-en – komm 「来る」;
lux. bleiw-en – bliww-en 「留まる」; lux. maach-en – ge-maach 「作る」)。詳細は第 3 節で扱う。
以下の節では、強変化動詞と弱変化動詞(第 3 節)、語根動詞(第 4 節)、過去現在動詞(第 5 節)という主
なグループに分けて、その屈折体系をまとめる。
3.強変化動詞(starke Verben)と弱変化動詞(schwache Verben)
動詞の強変化及び弱変化という概念は、ヤーコプ・グリム(Jacob Grimm)によって考案され、今日もゲルマ
ン語の動詞記述の際に用いられることが多い(Schmidt 2007: 220)。印欧祖語以来のこの動詞の区別をよく保
持する標準ドイツ語との比較を行うため、本稿でもこの概念を用いて記述を行う。
まず、標準ドイツ語における強変化動詞は、7 種類の母音階梯(Ablautreihe: I〜VII)を示すグループに大
別されるが(7 つ目は、本来、重複(Reduplikation)を示していたグループ)、共通する特徴は、過去形や過去
分詞で歯茎閉鎖音の接尾辞(dentales Suffix)が付されず、母音交替を示すこと、また 2, 3 人称単数現在にお
いて、ウムラウト(変母音(Umlaut))10を示す場合があることである。標準ドイツ語における強変化動詞の 7 階
8
過去時制の屈折語尾 lux. -t と 2 人称複数の屈折語尾 lux. -t が同音であり、ルクセンブルク語の子音には基本的に長短の
対立がないため(西出 2015: 92)、ゼロ形式の語尾を伴う 1, 3 人称単数と同形になっている。過去時制の語尾 lux. -t によって
ではなく、語幹の母音交替によって時制屈折を示す強変化動詞などでは、2 人称複数の屈折語尾 lux. -t が観察できる。
9
標準ドイツ語では、語末の n は音節形成子音となる場合が多く(dt. machen [ˈmaxn̩] 「する、作る」; DUDEN 2005)、不定詞
の接尾辞が、あいまい母音が脱落した形式で語彙化された動詞もあるが(dt. handeln [ˈhandəln̩] 「商売をする」)、ルクセンブル
ク語においては n が特定の音韻環境([t], [d], [ts], [n], [h] 以外の子音の前)で脱落する音韻規則「n 規則」(n-Regel)が観察さ
れ、語末や形態素末の同音が脱落する頻度が非常に高い(西出 2015: 113 ff.)。そのため、同音が音節形成子音となることは
ない(lux. handelen/*handeln [ˈhɑndələn]/ [ˈhɑndlən]/*[ˈhɑndəln̩])(西出 2015: 128)。
10
語幹に後続する同人称の過去時制の屈折語尾が、本来、前舌狭母音 i を有していたため、先行する語幹の母音が前舌化
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ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
梯は、印欧祖語の母音交替の特徴をよく受け継いだものであるが、ルクセンブルク語の母音体系では多くの
通時的変化が起きており(西出 2015: 170 ff.)、7 階梯の特徴及び区別はほとんど意味をなさなくなっている。
また、2, 3 人称単数現在のウムラウトについても、標準ドイツ語が示すものとは異なる変化を示している。以下
では、ルクセンブルク語と標準ドイツ語の7つの階梯について、それぞれ不定詞、2, 3 人称単数現在、1 人称
単数過去、過去分詞の形式を示す。
表 3. 強変化動詞の屈折体系
ルクセンブルク語
不定詞 2, 3・単・現
bleiwen
bleifs/
「留まる」 bleift
zéien
zitts/
zitt
「引く」
klammklëmms11/
en 「よじ klëmmt
登る」
kommen kënns/
kënnt
「来る」
leien
läis/
「 横 た わ っ läit
I
II
III
IV
V
1・単・過
blouf
過去分詞
bliwwen
zouch
gezunn
標準ドイツ語
不定詞 2, 3・単・現
bleiben bleibst/
bleibt
ziehen
ziehst/zieht
kloum
geklommen
klimmen
koum
komm
louch
1・単・過
blieb
過去分詞
geblieben
zog
gezogen
klimmst/
klimmt
klomm
geklommen
kommst/
kommt
liegst/
liegt
kam
geleeën
kommen
liegen
lag
gekommen
gelegen
drouch
gedroen
tragen
trug
getragen
foul
gefall
fallen
trägst/
trägt
fällst/fällt
fiel
gefallen
ている」
VI
VII
droen
「運ぶ」
falen
「落ちる」
dréis/
dréit
fäls/
fält
まず、2, 3 人称単数現在におけるウムラウトについて、標準ドイツ語の動詞屈折において起こるウムラウトは
以下の 3 種類のみである 12。
(1)標準ドイツ語の動詞屈折におけるウムラウト
a > ä ([a]/[aː] > [ɛ]/[ɛː]) (dt. tragen – trägt 「運ぶ」など),
e > i(e) ([ɛ]/[eː] > [ɪ]/[iː]) (dt. sehen – sieht 「見る」など),
o > ö ([oː] > [øː] (dt. stoßen – stößt 「ぶつける」など。ただし、数は多くない。))
これに対して、ルクセンブルク語は、不定詞の語幹の母音の低舌化(lux. klammen など、西出 2015: 170
ff.)や長母音の二重母音化(lux. leien13 など、西出 2015: 184 ff.)により、体系がより複雑化していると考えら
及び高舌化を起こす一種の同化の現象を指す。
11
綴り字 <ë> は、あいまい母音と同じ位置で調音される音を示す。しかしながら、第 1 強勢の位置に現れ、特定の音韻環境で
観察される異音 [e] を有する同音は、あいまい母音とは別の音素とみなすべきである(西出 2015: 60)。
12
母音の長短も加味すれば、より多くの変化が観察されるが、ここでは前舌化と高舌化のみに着目して 3 種類としている。
13
lux. leien では、長母音の二重母音化の他に、中部フランケン高低アクセント(mittelfränkischer Tonakzent)が関係していると
考えられる(西出 2015: 191 ff.)。lux. leien – läis/läit は、ウムラウトではなく、同高低アクセントに由来する 2 種類の二重母音が
現れている(西出 2015: 201 ff.)。
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ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
れる。ただし、 lux. hëllefen - hëlleft (dt. helfen - hilft 「助ける」) など、標準ドイツ語で観察されるウムラウトが
ルクセンブルク語では観察されない例も、多くはないが観察される。 これは、不定詞の語幹の母音の中舌化
が起き(*ɛ > ë14)、さらに 2, 3 人称単数現在で一旦ウムラウトを起こした前舌狭母音が、その後低舌化と中舌
化を起こしたために(*i > *e > ë)、結果として両者が同形式になったためだと考えられる。本稿では、以上で
挙げた例のみの記述に止めるが、ルクセンブルク語は、母音体系の変化のためにより多様で複雑なウムラウ
トを示す動詞の屈折体系を発展させていると言える。
過去形について、標準ドイツ語では母音階梯によって、語幹で様々な母音が観察されるが、それに対して
ルクセンブルク語において観察される過去形の語幹の母音は lux. -ou- [ëʊ] のみである。この二重母音は、
不定詞や現在時制の語幹ではほとんど観察されない母音であるため、ルクセンブルク語は同音を過去形の
統一語幹母音として発展させていると考えられる。
過去分詞の接頭辞 lux./dt. ge-, ahd. gi- は、本来動詞に完了の意味を付す要素であり、古高ドイツ語
では、もともと完了のアスペクト(Aktionsart)を有する動詞の過去分詞は、この接頭辞を伴わなかった
(ahd.15 findan – fundan (dt. finden - gefunden) 「見つける」)(Schmidt 2007: 241 ff.)。ルクセンブルク語
の動詞は、この特徴を保つ傾向にある(lux. finden – fonnt 「見つける」)(Gilles 2011: 53 ff.)。その他、閉
鎖音の前という特定の音韻環境で、接頭辞 lux. ge- が付されない(lux. bleiwen – bliwwen 「留まる」;
Gilles 2011: 53 ff.)。また、接尾辞 lux. -en は、障害音(Obstruent)や鳴音(Sonorant)の前で脱落する
(lux. kommen – komm 「来る」;Gilles 2011: 60 ff.)。
弱変化動詞は、本来、他の品詞や他の動詞からの派生によって作られた比較的新しい動詞のグループで、
母音交替を示さず、過去形や過去分詞を歯茎閉鎖音 t を含む接尾辞(dentales Suffix)を用いて形成すると
いう特徴を持つ。弱変化動詞は、派生の際に付される接尾辞によって jan 動詞、ôn 動詞、ên 動詞の 3 つのグ
ループに大別されるが
16
、そのうち硬口蓋接近音を含む jan ([jan]) 動詞のグループでは、不定詞と現在時
制において、語幹の母音が前舌化及び高舌化(ウムラウト)を起こした形式が観察されるものがある(„Rückumlaut“17、dt. brennen (過去形は dt. brannte) 「燃える」など)。
表 4 では、過去形を残す弱変化動詞を挙げている。これらのうち、 lux. froen, lux. kréien, lux. maachen, lux.
soen の 2, 3 人称単数現在においてウムラウトが観察される。ウムラウトが観察される弱変化動詞は、他にも多
い(lux. bezuelen – bezills/bezillt (dt. bezahlen – bezahlst/bezahlt) 「支払う」など)。過去形について、lux.
maachen において、強変化動詞で観察された統一語幹母音 lux. -ou- を含む形式が観察され、歯茎音を含
む弱変化語尾の脱落が観察される(lux. mouch)。過去分詞について、接頭辞 lux. ge- が脱落するのは、強
変化動詞と同様、閉鎖音の前である(lux. kritt)。過去分詞の接尾辞 lux. -t も脱落する動詞があるが、強変
化動詞の場合と異なり、使用頻度の高い動詞において脱落する傾向があり(lux. gemaach)、揺れが観察され
14
強勢を伴いうる中舌音を、本稿ではあいまい母音と区別し、中舌化の記号 [¨] を付した [ë] として記述する(西出 2015: 60
ff.、注 9 参照)。
15
Althochdeutsch. 古高ドイツ語。
16
東ゲルマン語に属するゴート語では、これらに nan 動詞が加わった 4 つの弱変化動詞のグループが保たれている(Schmidt
2007: 248)。
17
ヤーコプ・グリムによる呼称で(dt. rück- は「戻って」の意)、用語として定着している。グリムは、不定詞と現在時制以外で、一
度ウムラウトを起こした音が元の音に戻る現象を仮定し、この名称をつけたが、現在は、過去形や過去分詞ではそもそもウムラウ
トが起こらず、不定詞と現在時制においてのみ部分的に起きたとする説が一般的である(Schmidt 2007: 226)。
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ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
る動詞もある(lux. kafen – kaf/kaaft 「買う」など)(Gilles 2011: 55 ff.)。表 4 の動詞のうち、lux. denken (dt.
denken) は、ルクセンブルク語においても標準ドイツ語においても „Rückumlaut“ が観察される動詞である
(lux. denken – duecht 18 (dt. denken – dachte))。ルクセンブルク語には、標準ドイツ語では観察されない
„Rückumlaut“ が観察される動詞が多くある(lux. stellen – gestallt (dt. stellen – gestellt) 「置く」, lux. setzen –
gesat (nhd. setzen – gesetzt) 「据える」など)。
表 4. 弱変化動詞の屈折体系
ルクセンブルク語
不定詞 2, 3・単・現
denken
denks/
「考える」 denkt
froen
frees/
「尋ねる」 freet
kréien
kriss/
kritt
「得る」
maachen méchs/
mécht
「作る」
soen
sees/
seet
「言う」
1・単・過
duecht
過去分詞
geduecht
frot
gefrot
krut
kritt
mouch
gemaach
sot
gesot
標準ドイツ語
不定詞 2, 3・単・現
denken denkst/
denkt
fragen
fragst/
fragt
kriegen kriegst/
kriegt
machen machst/
macht
sagen
sagst/
sagt
1・単・過
dachte
過去分詞
gedacht
fragte
gefragt
kriegte
gekriegt
machte
gemacht
sagte
gesagt
以上、ルクセンブルク語では、弱変化動詞の語幹でウムラウトや母音交替が観察されたり、過去分詞の接
尾辞 lux. -en (強変化動詞)もしくは lux. -t (弱変化動詞)が脱落したりすることによって、強変化動詞と弱
変化動詞の境界があいまいになる傾向が強い。主に強変化動詞の過去形において統一語幹母音 lux. -ouを新たに発展させる、弱変化動詞で „Rückumlaut“ が多く観察されるなど、独自の特徴も有していることが
確認できる。
4.語根動詞と縮約を起こした動詞
語根動詞は、本来、語根に幹母音もしくは語幹形成母音(thematischer Vokal)が付されず、直接屈折
語尾が後続していた動詞のグループで、1 音節からなっている(Schmidt 2007: 239)。古高ドイツ語や中
高ドイツ語には 4 つの語根動詞がある(ahd. sîn 「ある(存在・コピュラ動詞)」, ahd. gân 「行く」, ahd. stân
「立つ」, ahd. tuon 「する」)(Schmidt 2007: 253 ff.; Paul 2007: 274 ff.)。
これらの動詞は、現在のルクセンブルク語や標準ドイツ語では 2 音節になっているものが多く(lux.
goen, lux. stoen, lux. doen19; dt. gehen, dt. stehen)20、強変化動詞と同様の屈折体系を示す。
表 5. 語根動詞の屈折体系
ルクセンブルク語
不定詞 2, 3・単・現 1・単・過
過去分詞
標準ドイツ語
不定詞 2, 3・単・現
1・単・過
過去分詞
ルクセンブルク語では、-ht [xt] の前で母音の長母化が起こり(西出 2015: 182)、その結果生じた長母音 *aː はさらに ʊə
へと二重母音化を起こした(西出 2015: 187)。
19
lux. doen については、1 音節の lux. dinn/dunn という形式も観察される。
20
初期新高ドイツ語の時代に 1 音節という特徴が失われた(Schmidt 2007: 403 ff.)。
18
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西出 佳代
sinn
「ある」
goen
「行く」
stoen
「立つ」
doen
「する」
bass/
ass
gees/
geet
stees/
steet
dees/
deet
ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
war
gewiescht
sein
goung
gaangen
gehen
stoung
gestanen
stehen
doung
gedoen
tun
bist/
ist
gehst/
geht
stehst/
steht
tust/
tut
war
gewesen
ging
gegangen
stand
gestanden
tat
getan
lux. sinn, dt. sein は、補充法(Suppletiv)による屈折体系が観察される。標準ドイツ語では、 dt. sein と
dt. tun は 1 音節の形式を保っているが、ルクセンブルク語では lux. sinn 以外は 2 音節になっている。
標準ドイツ語ではウムラウトが観察されないが、ルクセンブルク語では観察される(lux. gees, lux. stees,
lux. dees)。過去形では、ルクセンブルク語で統一語幹母音 lux. -ou- が観察される。
ルクセンブルク語では、語根動詞で 1 音節の形式が失われているが、他の動詞で縮約(Kontraktion)
が起き、その結果、新たに 1 音節の動詞が生じた。
表 6. 縮約を起こした動詞の屈折体系
ルクセンブルク語
不定詞 2, 3・単・現 1・単・過 過去分詞
gesinn
gesäis/
gesouch
gesinn
gesäit
「見る」
ginn
gëss/
gouf
ginn
「与える」 gëtt
hunn
hues/
hat
gehat
huet
「持つ」
標準ドイツ語
不定詞 2, 3・単・現
sehen
siehst/
sieht
geben
gibt/
gibt
haben
hast/
hat
1・単・過
sah
過去分詞
gesehen
gab
gegeben
hatte
gehabt
表 6 の動詞のうち、 lux. gesinn, lux. ginn が強変化動詞、lux. hunn が弱変化動詞である。2 つの強変
化動詞では、ウムラウトと統一語幹母音 lux. -ou- が観察される。また、これらの動詞の過去形では語幹
の母音に後続する子音(それぞれ ch [x] と f [f])が保たれている。lux. hunn の不定詞と現在人称変
化においては、縮約の結果生じた後舌狭母音 u が観察されるが、過去形と過去分詞では語幹の広母
音 a が保たれている(ahd. habên)。
5.過去現在動詞及び話法の助動詞
過去現在動詞は、印欧祖語の完了形から生じた動詞のグループで、現在時制の人称屈折体系が過去時
制の体系を示す(表 7 では、確認のため、1, 2, 3 人称単数現在の形式を載せている)(Schmidt 2007: 252)。
過去形や過去分詞では、歯茎音を含んだ接尾辞を伴う弱変化動詞と共通する特徴を有する。この動詞のグ
ループは、lux. wëssen (dt. wissen) 「知っている」を除いて、話法の助動詞(Modalverb)からなっている。
表 7. 過去現在動詞の屈折体系
ルクセンブルク語
不定詞 1, 2, 3・単・ 1・単・過
現
過去分詞
標準ドイツ語
不定詞 1, 2, 3・単・
現
-74-
1・単・過
過去分詞
西出 佳代
däerfen
「〜して
よい」
kënnen
「〜でき
る」
sollen
「〜すべ
きだ」
wëssen
「知って
いる」
däerf/
däerfs/
däerf
kann/
kanns/
kann
soll/
solls/
soll
weess/
weess21/
weess
ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
duerft
däerfen
dürfen
konnt
kënnen
können
sollt
sollen
sollen
wousst
gewosst
wissen
darf/
darfst/
darf
kann/
kannst/
kann
soll/
sollst/
soll
weiß/
weißt/
weiß
durfte
gedurft/
dürfen
konnte
gekonnt/
können
sollte
gesollt/
sollen
wusste
gewusst
標準ドイツ語で観察される話法の助動詞 dt. mögen 「〜かもしれない」に相当するルクセンブルク語の語彙
はない。現在時制では、 標準ドイツ語と同様、1, 3 人称単数の人称屈折語尾がゼロ形式となる、過去形の人
称変化と同じ特徴を示す(第 2 節参照)。過去現在動詞ではさらに、lux. sollen, lux. däerfen を除いて、単数
の語幹の母音が不定詞と複数のそれとは異なる音となっている(母音交替)。過去形では、lux. wëssen にお
いて統一語幹母音が観察される(lux. wousst)。過去分詞について、標準ドイツ語では、本動詞を省略して話
法の助動詞を本動詞的に用いる場合に、接頭辞 dt. ge- と接尾辞 dt. -t を伴う本来の過去分詞の形式が現
れるが、本動詞とともに助動詞的に使用する場合、不定詞の形式で過去分詞を代用する(代替不定詞
(Ersatzinfinitiv))22。ルクセンブルク語では、本来の過去分詞の形式が失われている。
話法の助動詞 lux. wëllen (dt. willen) 「〜したい」は、本来、過去現在動詞ではなく、語根動詞の希求法
(Optativ)に由来する(Paul 2007: 272 ff.)。標準ドイツ語の dt. willen は、他の話法の助動詞からの類推で過
去現在動詞と同様の屈折体系を示しているが、ルクセンブルク語においては 3 人称単数現在の形式に希求
法の屈折語尾を残している(lux. wëll-t (dt. will))。
表 8. lux. wëllen (dt. willen) の屈折体系
ルクセンブルク語
不定詞 1, 2, 3・単・ 1・単・過 過去分詞
現
wëllen
wëll/
wollt
wëllen
「 〜 し た wëlls/
wëllt
い」
標準ドイツ語
不定詞 1, 2, 3・単・
現
wollen will/
willst/
will
1・単・過
wollte
過去分詞
gewollt/
wollen
表 9. lux. brauchen (dt. brauchen) と lux. wäerten (dt. werden) の屈折体系
21
語幹 lux. weess [veːs] の末尾の子音と 2 人称単数の屈折語尾 lux. -s [s] が同音であり、ルクセンブルク語の子音には基本
的に長短の対立がないため(西出 2015: 92)、ゼロ形式の語尾を伴う 1, 3 人称単数と同形になっている。
22
例えば、完了の助動詞 dt. haben を用いた以下の例文において、本動詞が省略された (ia) では本来の過去分詞 dt.
gekonnt が、本動詞 dt. sprechen 「話す」を伴う (ib) では代替不定詞 dt. können が現れている。
(i) a. dt. Sie haben Deutsch gekonnt. 「彼らはドイツ語ができた。」
they have German
can
b. dt. Sie haben Deutsch sprechen können. 「彼らはドイツ語が話せた。」
they have German speak
can
-75-
西出 佳代
ルクセンブルク語
不定詞 1, 2, 3・単・
現
brauchen brauch
「 〜 す る 必 brauchs/
要がある」
brauch
wäerten
wäert/
「 ~ だ ろ wäerts/
wäert
う」
ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
1・単・過
過去分詞
gebraucht
23
標準ドイツ語
不定詞 1, 2, 3・単・
現
brauchen brauche/
brauchst/
braucht
werden
werde/
「~にな wirst/
wird
る」
1・単・過
過去分詞
brauchte
gebraucht
wurde
geworden
lux. brauchen (dt. brauchen) 「〜する必要がある」は、過去現在動詞ではなく、また上で挙げた話法の助動
詞と異なり、必ず不定詞標識 lux. ze (dt. zu) を伴った不定詞を支配する 24。しかしながら、意味上は話法の
意味を有するため、ルクセンブルク語の lux. brauchen は、他の過去現在動詞と同様、1, 3 人称単数現在で
ゼロ形式の屈折語尾を伴う体系を発展させている。同様に、本来強変化動詞の lux. wäerten/wäerden (dt.
werden) も、1, 3 人称単数現在でゼロ形式の屈折語尾を伴う(Schanen 2012: 332)。この動詞は、標準ドイツ
語では「~になる」という本動詞としての意味・用法の他に、不定詞とともに未来の助動詞として、過去分詞と
ともに受動の助動詞として使用される。これに対してルクセンブルク語における lux. wäerten/wäerden は、も
っぱら不定詞を伴った助動詞として用いられ、「~だろう」という推量の意味、すなわち話法の意味を担って
いる。さらに、過去形や過去分詞の形式を失った特殊な体系を有している。この動詞の形式の記述は、文献
によってまちまちだが(lux. wäerten (Schanen 2012); lux. wäerden (Dammel 2006))、本稿では lux. wäerten
で代表させ、表 9 で lux. brauchen とともに屈折体系をまとめる。
6.まとめ
本稿では、ルクセンブルク語における動詞の屈折体系を標準ドイツ語のものと比較しながら概観した。ま
ず、ルクセンブルク語の人称屈折体系では、1, 2 人称単数現在で古い屈折語尾が保たれていることが確認
された(第 2 節)。強変化動詞では、標準ドイツ語が 7 つの階梯の違いを保持しているのに対し、ルクセンブ
ルク語では母音体系の通時的変化により 7 つの区別が失われている。さらに、弱変化動詞においてもウムラ
ウトや母音交替が起こり、過去分詞の接尾辞 lux. -en/-t の脱落が起きた動詞が多いため、強変化動詞と弱
変化動詞の区別も意味をなさなくなりつつあることが確認された。上記の母音体系の変化による強変化動詞
の新たなウムラウト、弱変化動詞におけるウムラウト、および標準ドイツ語よりも多く観察される „Rückumlaut“、そして過去形における統一語幹母音 lux. -ou- から、ルクセンブルク語は屈折体系においてウムラ
ウトや母音交替を起こさない簡素な体系よりも、2, 3 人称単数現在、過去形、および過去分詞において母音
を変えるという一貫性を優先して動詞の屈折体系を発展させているものと推測される。ただし、この特徴は、
本稿で扱った比較的頻度の高い動詞で観察される特徴であり、借用語など、ウムラウトや母音交替が全く観
察されない動詞もある(lux. studéieren – studéiers/studéiert – (過去形なし) – studéiert (dt. studieren –
23
lux. brauchen の過去形は、すでに屈折体系から失われている。。
他の話法の助動詞は、不定詞標識を伴わない不定詞を支配する。
(ii) a. lux. Hie kann Däitsch schwätzen. (dt. Er kann Deutsch sprechen.) 「彼はドイツ語を話すことができる。」
24
he can German
speak
b. lux. Hie brauch Däitsch ze schwätzen. (dt. Er braucht Deutsch zu sprechen.) 「彼はドイツ語を話す必要がある。」
he needs German to
speak
-76-
西出 佳代
ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
studierst/studiert – studierte – studiert) 「研究する」)。話法の助動詞では、lux. wëllen (dt. wollen) 「〜したい」
が 希求法 の 屈折語尾 を 残 す 一方 で 、 lux. brauchen (dt. brauchen) 「 〜 す る 必要 が あ る 」 や lux.
wäerten/wäerden (dt. werden) 「〜だろう」は、他の話法の助動詞からの類推で、新たに過去現在動詞の屈折
を示すようになっている。
本稿では接続法過去の形式を扱わなかったが、この形式は、lux. sinn – wier (dt. sein - wäre) 「ある」, lux.
hunn – hätt (dt. haben - hätte) 「持っている」などの特殊な動詞を除いて、過去形の統一語幹母音 lux. -ouがウムラウトを起こした lux. -éi- [ɛɪ] を統一的に有している(lux. kommen – kéim (dt. kommen - käme) 「来る」,
lux. maachen – méich (dt. machen – machte (würde machen)) 「作る」, lux. goen – géing (dt. gehen - ginge)
「行く」, lux. ginn – géif (dt. geben - gäbe), lux. kënnen – kéint (dt. können - könnte) 「〜できる」)。Schanen
(2012) などの記述を見ると、過去形が屈折体系に残っていて接続法過去が残っていないもの、接続法過去
が残っていて過去形が残っていないものなど、ばらつきがある。過去形の衰退の現象とともに、どのような動
詞でこれらの形式が保たれるのか、現在のルクセンブルク語における実際の使用状況について調査を進め
ながら実態を把握することが今後の課題である。
参考文献
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西出 佳代
ルクセンブルク語における動詞の屈折体系概観
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Schmidt, Wilhelm (2007) Geschichte der deutschen Sprache (10. Aufl.). Stuttgart: S. Hirzel.
-78-
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