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地域に根ざした音楽活動

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地域に根ざした音楽活動
地域に根ざした音楽活動
養父市立高柳小学校
教諭 中 川
千文
1 取組の内容・方法
(1)地域の伝統芸能「葛畑歌舞伎」の指導を通しての音楽活動
関宮中学校校区(旧関宮町)葛畑地区には、農山村地域ならではの伝統芸能が残っ
ている。国の重要文化財の指定を受けている「葛畑の歌舞伎舞台」を使って上演する
農村歌舞伎である。この舞台は、江戸時代末期に建立された。同時に「葛畑座」が結
成され、農閑期には歌舞伎を上演したのが農村歌舞伎の始まりである。昭和41年頃
から途絶えていたが、伝統文化を守り次世代に受け継いでいこうと地元の人たちが立
ち上がり、平成15年には37年ぶりに復活した。これが「農村歌舞伎・葛畑座」で
ある。
中学校でも、生まれ育った土地の良さに気づき地域を愛するとともに、その伝統と
文化を大切にしていこうとする態度を育てたいとの願いから、授業の一環として歌舞
伎に触れる機会を作り学習を進めてきた。先人の残した優れた文化やそれを生み出し
た精神に学び、関心を深め、尊重し、継承・発展させる態度を育成したいとの願いで
ある。平成23年度は、兵庫県中学校総合文化祭の音楽部門に出演が決まっていたこ
ともあり、3学年の生徒全員で葛畑農村歌舞伎の三番叟をアレンジした「関中三番叟」
に取り組んだ。
<舞の練習>
<取組のあしあと>
5月 講師初顔合わせ・鑑賞
歌舞伎についての講義
7月 全員、三味線・太夫(語り)を体験
舞踊三名の選出、台本・楽譜の完成
8月 本格的な練習
<義太夫三味線の練習>
前掛け・見台(譜面台)の制作
9月 全パート合わせての練習
10月 仕上げ、通し練習
6日 校内発表会
8日 県中総合文化祭
各月とも講師の都合の良い2∼3日間に集中的に指導していただいた。毎回2時間
程度、総合的な学習の時間を利用した。選択教科の音楽を受講している生徒は三味線
の練習に充て、太夫は講師の見本CDを配布し、個人練習した。舞踊は葛畑農村歌舞
伎保存会・校区内の舞踊講師に指導を仰いだ。見台は講師が、前掛けは中学校職員が
手作業で作った。県中総合文化祭当日は、舞踊の化粧・衣装も専門の方に協力してい
ただき、緋毛氈を敷いて本格的な舞台にした。
また、三味線・太夫の講師には一緒にステー
に上がっていただき、共演した。
<当日のステージ>
(2)地域の親子合唱団「ドレミぽけっと」指導を通しての音楽活動
平成4年に養父市立ビバホール専属の親子合唱団として「親子で一緒に歌いましょ
う。」と呼びかけ結成した「ドレミぽけっと」が、20周年を迎えた。現在3歳∼1
2歳までの子ども達19名とその保護者の計28名で活動している。近年はビバホー
ルにとどまらず、芸能祭や合唱祭、福祉施設訪問、他団体との交流練習会など活動の
場を広げてきた。週1回、親子で楽しみながら練習を重ね、より豊かな楽しい活動を
めざして以下の活動を継続している。
<活動のあしあと>
<デイサービス訪問>
【平成 23 年度】
4/ 8 練習始め
4/15 団員募集ビデオ撮影(合同練習)
5/21 大屋デイサービス訪問(合同)
5/28 関宮デイサービス訪問(合同)
7/ 8 新入団員歓迎会
<親子制作「大きな魚」>
7/15 クローバーさんと交流練習会
8/ 9 デイサービス訪問(真愛)
8/19 なかよし遠足(バルーンようか)
10/22 赤星さん・江口さん交流会(八鹿公民館)
10/29 やぶ文化祭 バザー出店
10/29 やぶ芸能祭
12/11 養父市合唱祭(八鹿文化ホール)
合同打ち上げ(八鹿公民館)
12/23 クリスマス会
3/24 6 年生を送る会/親の会・総会
〔※「合同」はうたごえロケットさんと〕
<20周年記念コンサート>
2 取組の成果
(1)新聞やCATV、各種メディアでこの取組を報道していただいた。文化祭の発 表終
了後、再び公演してほしいという依頼が地域住民らから殺到した。若い世代が地 元の
伝統芸能に携わることが地域の活性化に少なからず影響していることを、生徒たちも
実感できた。運営経費や物品の借り受けについては、関宮公民館をはじめ、葛畑地区
以外にも多くの関係者の方々にお世話になり、今回の公演ができたことも大変感謝す
べきことである。
<各種新聞記載記事>
<生徒の感想の一部を抜粋>
・日本の文化を大切にし、受け継いでいくことが大事だと改めて思う事が出来た。今ま
であまり知らなかったけど、練習するうちに地元にある歌舞伎や三番叟に興味が持て
るようになってきた。先生方も楽しく厳しく指導して下さり、嫌になったりすること
もなく続けていくことが出来た。これからは、今まで気にもとめていなかったこのよ
うな文化にも少し興味を持ってやってみようと思う。
・最初は声を出すことに抵抗があって、しっかり出来なかったけど、だんだん慣れてき
て大きい声を出せるようになった。最初は面倒くさいと思っていた太夫も結構楽しく
思えてきた。やっていくうちに価値が分かってきたような気がしました。最後には、
関宮にもこんな素晴らしい伝統文化があるんだと少し誇りに思った。たぶん一生忘れ
ないと思う。
・練習中は、時には楽しみながら集中して取り組めていたのでとてもいい雰囲気の中で
行うことが出来た。実際に先生方の声を聞いてみると、その声量や高低の付け方に驚
き、自分たちもそれに及ばずとも精一杯の声を出し切れるように一日一日の練習に取
り組んだ。地元にこのような素晴らしい文化があることに気づいていなかった僕たち
にそれを気づかせくださった先生方に感謝したいと思った。地元の文化に触れ、達成
感と感動を与えてくれた歌舞伎を体験できて本当に良かったと思った。
・三味線のバチが当たる右手の痛さと体勢のつらさになかなか慣れませんでしたが、尻
引きや見台まで作ってくださったり、丁寧に教えてくださったのでだんだん弾けるよ
うになってうれしかったです。三味線や太夫や舞を合わせるともっと楽しくなってき
ました。普段あまり関わりのない日本の伝統音楽だったけど、こんな素晴らしい機会
を作ってくださって感謝しています。三味線がこんなに楽しいものだと初めて知りま
した。
(2)地域の親子合唱団では、はずかしくてお母さんにだっこされたり陰に隠れてステー
ジに立っていた子どもたちが、回を重ねるうちに一人でステージに立って歌えるよう
になる。口をしっかり開けて動作を入れて堂々と表現できるようになる姿を見ること
は、とてもうれしい一コマである。また、3歳から12歳までの子どもたちと保護者
が「ドレミぽけっと」で歌うことを通してふれあい、学校や地域の枠を超えて、支え
合い励まし合い協力しながら活動することが、親子の絆
<養父市合唱祭>
を強くする大切な時間となっている。
福祉施設訪問では、高齢者の方々と一緒に歌ったり遊
んだりする中で、優しい気持ちを共有させてもらってい
る。最初高齢者の方々との交流は、初対面の緊張ととま
どいから話も出来ずぎくしゃくしていたが、回を重ねる
うちに打ち解け和やかに交流できるようになってきた。
「来てくれてありがとう。また、来てね。」「はい、また来ます。」と次の交流を約
束して握手する子どもたちは、満足気な顔に充ちている。
また、市内の様々な地域から集まって来る保護者たちは子育ての悩みを話したり、
時にはお下がりの子ども服の交換会をしたりする。文化祭には、合唱団員の栄養士さ
んの指導により屋台を運営販売している。クリスマス会では各家庭で手作りの一品を
持ち寄って楽しいひとときを過ごすなど、親子合唱団ならではの交流活動も行ってい
る。
このように親子のふれあいを通した活動が自己実現への一助となり、また、地域の
活性化にもつながっていると感じている。
3 課題及び今後の取組の方向
(1)この取組を通してほとんどの生徒が、体験的な学習を通して地域の伝統や文化の良
さに気づき、今まで以上に地域への愛着を強く感じたと書いている。学校だけでなく、
地域の方々に協力をいただきながら生徒を育むことの大切さを改めて感じた。今後も
地域の伝統と文化を尊重し、それらを育んできた郷土を愛し、継承・発展・創造でき
るような生徒の育成を目指したい。
また、選択教科が再編成された教育課程の中でこの学習をどう位置づけ、練習時間
をどのように確保していくかが今後の課題である。
(2)今後も親子の絆を大切にし、親子合唱団ならではのチームワークで地域のみなさん
に元気と笑顔を届けていきたい。自分たちが歌うことを楽しみながら、聴いてくださ
る方々へ歌う喜びを伝えられるような合唱をめざしていきたい。
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