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NICOGRAPH 2010 秋季大会での発表報告

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NICOGRAPH 2010 秋季大会での発表報告
特集
学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 13
NICOGRAPH 2010 秋季大会での発表報告
藤 田 健太郎
Kentaro FUJITA
情報メディア学専攻修士課程
1.はじめに
1年
3.能演劇舞台
第 26 回 NICOGRAPH 2010 秋季大会にて,「モー
ションデータと CG 映像を活用した能演劇パフォ
3. 1.能演劇の創作
芥川龍之介が 1918 年に執筆した小説『蜘蛛の糸』
ーマンス」という題目で口頭発表を行った.学会は
の能演劇を制作した.『蜘蛛の糸』は背景が細かく
2010 年 9 月 24 日から 25 日にかけて,岩手県盛岡
切り替わるため,舞台では大がかりなセットが必要
市のアイーナいわて県民情報交流センターにて開催
となるなど,表現の問題で舞台化が難しい作品とさ
された.
れてきた.そこで我々は伝統芸能の実演と CG 映
像による演出によって,『蜘蛛の糸』の世界を能演
2.研究内容
劇で表現することを試みた.創作舞台の目標は以下
に示す 3 つとした.
2. 1.研究背景
近年,ライブパフォーマンスの舞台演出において
・能の Mocap データを用いた振付
画像や映像といった視覚的効果が使用されるように
・CG 映像による演出
なっている.視覚効果を用いた演出の利点は,表現
・役者と CG 映像のコラボレーション
の拡張や具体的なイメージによる情報の伝達効果な
この舞台作品では,役者を能役者のお釈迦様,狂
どが挙げられる.このような演出のためには多くの
言役者の泥坊かんだた,語りの 3 名とし,背景やそ
機器や大がかりな舞台セットが必要となるが,本研
の他のキャラクタを全て CG で表現した.能の Mo-
究では一般的な PC とプロジェクタ,スクリーンを
cap データを用いた振付により,すべての CG キャ
用いたシンプルな構成により,効果的な演出を試み
ラクタの動きを能で表現した.
た.
3. 2.舞台での上演
創作した舞台の上演を 2010 年 2 月にキャンパス
2. 2.研究概要
本研究プロジェクトでは,モーションキャプチャ
プラザ京都で行った.上演の様子を図 1 に示す.舞
(以下,Mocap)システムで取得したリアルな人体
台構成は能役者が舞う台と 2 枚のスクリーン,台と
動作を,文化やアートの分野で活用することを目的
スクリーンの前の演技スペースからなり,非常にシ
としている.伝統芸能の舞台において Mocap デー
ンプルな構成となっている.舞台の構成を図 2 に示
タを用いた CG 映像による舞台演出を行い,伝統
す.2 つのスクリーンを活用した演出,図 3 のよう
芸能と情報技術の融合により,観客にとってより具
に能の Mocap データを用いた CG キャラクタによ
体的かつ魅力的な演出を行うことを目指した.
る地獄の表現や,役者と CG キャラクタのコラボ
レーションにより,視覚的に物語の理解ができる演
― S-125 ―
CG 映像とスクリーンについての評価は,
・舞台進行とスクリーン映像の同期が面白い
・舞台が広く感じた
・CG 映像と舞台全体との調和がとれていた
などといった意見が得られた.これらの評価より,
役者と CG 映像のコラボレーション,舞台空間の
拡張が達成でき,CG 映像が物語の世界観を乱すこ
図1
となく魅力的な演出が実現できたものと思われる.
舞台での上演
全体の評価としては,
・役者が何をしているのかが映像でわかった
・能の抽象的な動きが具体的な映像で補完された
・日本語のわからない外国人でも映像で物語の理
解ができた
・物語の理解という点で分かりやすいので,子ど
も向けに適している
などといった意見が得られた.これらの評価より,
CG 映像を用いた演出は効果的であり,伝統芸能の
観客層を広げる可能性もあることが確認できた.
図2
舞台構成
4.学会での発表
発表時間は質疑を含めて 15 分であった.今回は
初の口頭発表であったが,十分に練習を行ったため
質問にも余裕を持って回答ができた.質疑では主に
インタラクティブな CG 映像による演出について
回答を行った.今後の課題である,センサを用いた
役者と CG 映像のインタラクションについて具体
的に述べた.また,同年代の人の発表を見る貴重な
図3
能の動きから生成したアニメーション
体験ができた.また,ポスターセッションにおいて
は多くの研究者と意見交換を行い,新しい観点や手
出を行った.CG 映像を演出に用いることで,役者
の演技だけでは表現が難しい物語の舞台を実現し
た.また,CG 映像の切り替えを舞台の進行に合わ
せてリアルタイムに行うことにより,一般的な舞台
環境では難しいスムーズな場面転換を実現した.
上演終了後に観客へのアンケートと,観客,役
者,スタッフによるディスカッションで舞台の評価
法について知ることができた.
5.おわりに
今回の発表により口頭発表での自信が持て,研究
内容を細部まで理解することの重要さが分かった.
今回の経験を活かし,研究活動により一層力を入
れて取り組んでいきたい.
を得た結果,多くの肯定的な評価が得られた.
― S-126 ―
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