Comments
Description
Transcript
2016年(PDF 576KB)
バランスの取れた研究環境を築くために ~2016属性調査、今後にどう活かす?~ 疑問:シンポジウム・ワークショップなどのオーガナイザー・口頭発表者における女性比率 は、学会員全体における女性比率と比べて低いのではないでしょうか? 大学や研究機関での男女共同参画を推進するために、学術研究発表の場である学会の大切な役割の一つは、優れた研究に対して、性 差などに関係なく、より積極的に発表し、評価される機会を創出することだと言える。上記の疑問をもとに、日本分子生物学会キャリ アパス委員会は、年会発表者が属する性(属性)について、2009年度(男女共同参画委員会/当時)から継続調査を行っている。 2016年の調査結果と、過去5年間から今後に向けての動向を考えた。 日本分子生物学会会員の男女比率 (2016年9月15日 現在) 正会員(9,043人) 2016年第39回日本分子生物学会年会発表者の属性調査 演題登録システム(日本語版・英語版)にアンケート設問を設置(回答は任意) し、8月3日までの演題登録者等3531名の協力により得られた回答結果である。尚、 Late-Breaking Abstracts投稿分(316件)、登録後にシンポジウムスピーカーとし て選択されたもの(160件)は含まない。一部のオーガナイザー等に関する調査では 公開情報や学会会員データ(学会個人情報保護方針に依拠)なども併用した。 学生会員(4,121人) 3% 1% 20% 36% 77% 63% 年会の発表者として、3種類の参加の仕方 ●シンポジウムオーガナイザー 個人会員全体 2% 女性 25% ●シンポジウムスピーカー* 回答なし スピーカー 自薦 ●一般演題発表者**:自発的な申し込み オーガナイザー 全発表者数におけるオーガナイザーまたはスピーカー としての発表者の割合は、この5年間約17%~27%の間 で推移している。スピーカーとして参加する機会自体は 増加傾向にある。 100 80 60 調査総数 40 2012 20 0 300 スピーカー 250 2013 171 2014 124 2015 200 2016 150 215 100 3505 548 3844 509 315 1085 194 0% 50 387 612 10% 一般演題演者 700 600 500 400 300 200 100 2013 3527 2014 5297 2015 2016 0% 30% 回答しない(無回答) その他 役員クラス 部長クラス 課長クラス 主任クラス 一般社員 主任研究員/グループリーダー ユニット長/チームリーダー 教授 准教授 講師 助教 助手 技術員 ポスドク/研究員 研究生 大学院生(博士課程) 大学院生(修士課程) 学部生 職階に注目した理由 学術集会において発表者が担う役割や責任は、どのような立場 (職階)で研究を遂行しているか、または経験によって異なる。 学生会員→正会員となり、職階が変化する過程で、演題との関わ り方(自身の研究成果発表~分野全体の展望をまとめる)が変化 することを反映するのではないかと考えた。 90% 役員クラス ** 80% 70% 課長クラス ** 主任クラス ** 一般社員 * 主任研究員/グループリーダー * 60% ユニット長/チームリーダー * 教授 50% 准教授 講師 40% 助教 助手 ** 技術員 ** ポスドク/研究員 20% 研究生 ** * 大学院生(博士課程) 10% ** 大学院生(修士課程) 学部生 0% 女性 ** 0% 50% 100% 今後どのような取り組みが可能? 部長クラス 30% 本当にバランスのとれた状態を実現 するためには、継続的な属性調査を 行い、現状把握と取り組みの方向性 を検討していくことが大切です。 どうぞご協力をお願いいたします。 * 50% 女性オーガナイザー数が1.92人(スピーカーで は6.12人)増えると、充足率1%増加となる。 回答しない(無回答)** その他 回答なし 各発表カテゴリーについて、個人会員全体から期待する 女性比率(約25%)と等しい状態を100%として示した (オーガナイザー、スピーカー、一般演題発表者)。 例えば2016年のスピーカー612名については、女性が 25%(152名)を占める場合が100%であるが、実際には 14.5%(89名)なので充足率60%弱となる。 2016年の調査結果より、各職階におけるオーガナイザーとスピーカー の割合に着目し、オーガナイザーとスピーカーの女性比率が、同じ職階か らの発表者全体(オーガナイザー+スピーカー+一般演題発表者)におけ る女性比率と等しい状態を100%として示した。このうち正会員が属する 職階では、全体的にのびしろがある状態(<100%)であり、特にポスドク/ 研究員や講師でその傾向が強い。100%を超えている職階(一般社員な ど)もあるが実際の参加人数が少ないため、全体への寄与が小さい。 *対象となる女性参加者がいない(女性比率0%とは言えない) 100% 3.2% (Q2)その中での女性比率は適正? (Q3) 女性比率の増加がより期待される職階は? 800 3.1% 66.3% 男性 100% 2.6% 82.4% 30.5% (注:数字は人数。オーガナイザー+スピーカー+一般演題 発表者=100%,2015年は日本生化学会との合同大会) 0 900 80% 2012 3531 20% 60% 86.1% 女性 (Q1)「機会」はどのくらいあるのか 120 40% 14.5% 一般演題発表者 * 一般演題から選抜されたスピーカー(160名)は含まれない 20% 11.3% ** LBA発表者(316名)は含まれない 2016年発表者の職階を比較 0 他薦 指定&公募:オーガナイザーが検討・依頼 ※分子生物学会の個人会員: 正会員・学生会員・シニア会員・ 次世代教育会員・名誉会員 オーガナイザー 自薦+他薦 公募:応募者の中から選抜 男性 73% 他薦 指定:年会プログラム委員会で検討・依頼 (13,221人) 0% 100% 150% 200% 一般演題発表者における女性比率が個人 会員全体における女性の割合を上回ってい るのに対し、オーガナイザーやスピーカー では下回る傾向が続いている。 しかし、男女ともにスピーカーとして学 会に参加する機会自体は増加傾向にあり (Q1グラフ)、一進一退しながらも期待さ れる方向へと変化していることも事実であ る(Q2グラフ)。オーガナイザー及びス ピーカーの女性比率を2016年参加者の職 階ごとに比較すると(Q3グラフ)、ある程 度参加者数が多くのびしろがあり、全体の バランス改善への寄与が期待される職階 (学生以外)が複数存在する。 さらなる改善に向けて、女性研究者の研 究時間確保と出産・子育てなどのライフイ ベントとの両立を目指すだけでなく、女性 研究者の積極性を促す必要性も指摘されて いる。企画における学術的な自由という大 原則のもとで、研究者の性別にかかわりな く、年会への一般演題発表以外での参加 (スピーカー・オーガナイザー)が活性化 されることは、優れた研究の発表機会とし ての年会の目的とも合致するのではないだ ろうか。 今後、年会発表における男女共同参画の 望ましい形を検討するために、本調査の内 容を見直しつつ、調査結果の活かし方を考 えていきたい。