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2014 - 東京工業大学
授業料不徴収協定に基づく派遣交換留学終了報告書 留学プログラム名 所属(本学) 現在の学年 留学先国 留学期間 派遣交換留学 大学院理工学研究科 建築学専攻 修士 2 年 アメリカ合衆国 留学先大学 ジョージア工科大学 2015 年 1 月 4 日~ 2015 年 12 月 11 日 ① 留学先大学の概略 ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology/Georgia Tech)はジョージア州アトランタにある州立大学 である。東工大と同様に理工系の大学で、地元アトランタでの評判は良い。空港からのキャンパスまでのアク セスは良く、電車で 30 分ほどである。州内の生徒は学費が割安になるのでジョージア州出身の人が多いが、 米国南部を中心に様々な地域の人が集まっている。留学生に関しては中国出身が最も多く、ついでインド出 身の学生が多いという印象だった。ちなみに、交換留学生には特に関係ないが、日本だと大学に関しては私 立より国立というイメージがあるのに対し、アメリカは逆で、ハーバードや MIT などの権威ある大学はみな私立 である。アトランタは過去に夏期オリンピックが開催されたこともあるが、抱えている人口は全米 39 位と、そこ まで大きな都市ではない。だが CNN やコカ・コーラなどの魅力的な観光スポットが多数ある。 ②留学前の準備 初めから 1 年留年することに決めていたので、修論も就活も 1 年遅れる。留学中に研究に関することは一切し なかった。留学先の情報は、主に向こうの担当者とメールでやりとりしながら得ていた。 語学は TOEFL に必死だった。TOEFL は TOEIC と違い頻繁に受験できるが、一度の受験に 2 万近くかかる人 泣かせなテストである。私はもともと英語が得意というわけではなかったので、当初 Architecture Department の下限である 100 を目指していたが、2 回の受験で結局 90 しかとれなかった。当時の東工大の留学の冊子に は「ジョージア工科大学 大学院 TOEFL100~」とあったため、これは駄目だったなと諦めたが、Georgia Tech のホームページに Building Construction Department の下限が 75 であることがわかり、そちらの学部に変えて 応募した。本当は Architecture の方に行きたかったので、当初は少し妥協した気分だったが、結局行ってみる と何故か普通に Architecture の授業に登録でき、単位も取得できた。同じ College of Architecture 傘下であっ たためかもしれないし、交換留学生の身分がこちらでは「special non degree student」だったので、その辺は正 規留学生と違い適当なのかもしれない。いずれにせよ、当然のことながら留学生交流課の方々が一つ一つの 協定大学の一つ一つの学部・学科の情報を完璧に網羅しているわけではないので、自分で調べることは大事 だと実感した。また、TOEFL の他に GRE というニッチなテストも受けなければならなかった(およそ 2 万)。 Verbal の結果が散々だったが、大丈夫だったので多分形式だけだと思う。 院生の場合には推薦状を 3 枚提出しなければならない。これがやっかいだった。日本の場合(少なくとも私の 周りでは)、教授達は推薦状というものを自ら作文せず、学生が内容を書いてサインだけしてもらう、というの が実情である。自分を 3 つの違う視点から誉めるのは私には大変難儀だった。英語も自分で書くとどれも同じ ような感じになってしまうので苦労した。私は専攻内で極めて地味な学生だったので、指導教員以外の 2 名の 教授にいきなり推薦状を頼むのには気が引けた。しかし、これも特に注意深く読み込まれたようではないので、 形式だけだったと思う(正規留学生でないので選考する必要がない)。 経済力を証明する書類も必要である。具体的には銀行の英文残高証明書だが、英文となると発行手数料が 私の利用している銀行では 1 枚 2000 円ほどした。大学院で 2 学期交換留学する場合、$21,000(当時およそ 250 万円)が残高として要求される最小額だった。ビザは向こうから DS-2015 が届けば取れる。ただし、その際 SEIVE というところに 2 万近く払わなければならない。住居は迷ったが、最初ということで学内の寮にした。締 切がとっくに過ぎていたが、メールしたところ一部屋あてがってくれた。 ③留学中の勉学・研究 学生ビザとして、1 学期あたり 12 単位登録しなければならない(夏学期は除く)。私は春学期と秋学期にそれ ぞれ 12 単位(3 単位×4 授業)登録した。修士だが研究に関することは何もしなかった。 教科書などは場合によるが、基本的に高めだった($100~など)。Amazon を利用するのが最も手っ取り早い が、レンタルなどのより安価な方法もある。だがその場合はアメリカで発行したクレジットカードが必要になる 場合もあるので、持っておいた方がいいかもしれない。教科書は買うと高い一方、売れば結構戻ってくる。 こちらの授業では成績のつけ方が厳密かつオープンで、シラバスの段階で各課題が最終成績に占める割合 が事細かに学生に提示される。教授と学生といえど、限りなくフェアな環境だと感じた。大学院では特にそうだ が、様々な年齢・経験を持った人達が学生として集まっているため、教える側にも緊張感が感じられた。グル ープワークなどでは、いきなり英語ネイティブの中に混ざるのは私にとって大変だったが、そういう時は同じ英 語を母国語としない留学生の人たちに本当に助けてもらった。 Value Management Integrated Design 建設の過程をコストの面から評価する授業。学部と大学院共同の授業だった。定期的に簡単なクイズがあっ た。最終課題のグループワークでは実質的な貢献をすることができなかったが、アメリカの学生の仕事の早さ、 的確さに学ぶことが多かった。発表時には学期末だったということもあるが、ほとんどの学生が聞いておらず、 自身のパソコンのデスクトップに釘付けになっていて何だか虚しかった。授業時間は週 1 で 18:00~3 時間。 Special Topics 就活に関する授業。主にゲストスピーカーによる建設業界やビジネスに関する話や、自己アピールの仕方な どを学んだ。これも学部と共同の授業で学生が多く、毎週レポートを提出した。だが教授(またはアシスタント) が多忙なのか、なぜかいつも満点が来た。周りの学生もそうだった模様。授業時間は週 2 で 16:30~1.5 時間。 Management of Design Phase 一番つかみどころがわからなかった授業。設計から施工に至るまでのプロセスと効率を学ぶ授業だった。学 生のほとんどは仕事があるまたは職務経験のある人達で、ついていけない時も多かった。アトランタにある設 計事務所などを訪問した。授業時間は週 1 で 18:00~3 時間。 Residential Design and Construction やりがいがあった授業。アメリカの典型的な木造住宅の設計から施工段階までを細かくカバーする内容。最 終課題は実際の図面を起こすことで、何日も没頭し苦労したが、それなりのものができた。授業時間は週 1 で 18:00~3 時間。 Architecture History Ⅰ 建築の歴史を学んだ。教授がとても献身的な人で驚いた。定期的に重い課題が出され苦労したが、やりがい があった。最終課題はどうしても文字数が足りず諦めて規定文字数以下で提出したが、予想外に評価は高か った。あまり細かい形式的なことには目を向けないのかもしれない。授業時間は週 3 で 12:00~1 時間。 Construction Technique Ⅰ コンクリートや鉄筋などの建設の基本的な内容をカバーする授業。予備知識があったので楽しく受講できた。 スケジュールの関係で最終試験を受けられなかったが、単位は取得できた。授業時間は週 2 で 10:45~1.5 時 間。 Building Physics Modeling 建物の熱環境を空調のコストを最小にするという視点からモデル化する授業。数学的な置換が難しかった。 授業時間は週 2 で 15:00~1.5 時間。 Materials and Fabrication 建設・施工の一端を学ぶべく、実際に手を動かし簡単な創作をする授業。日曜大工的な事を毎週やり、一番 平和な授業だった。授業時間は週 2 で 17:00~1.5 時間。 ④留学中に行った勉学・研究以外の活動 ア メ リ カ 中 の 主 要 な 都 市 を 泥 臭 く 回 る こ と に ず っ と 憧 れ て い た 。 移 動 手 段 は 飛 行 機 、 Amtrak( 鉄 道 ) 、 Greyhound(長距離バス)などがある。私は主に長距離バスで移動し、近場では Charlotte, New Orleans, Dallas, San Antonio, Houston, Washington D.C など、遠場では NY, Boston, LA, SF, SD, Chicago, Key West, Kansas City などを訪ねた。これらの小旅行は全て全力の自己満足だったが、とても楽しかった。交換留学生なら Student Advantage というバスや宿泊などで学割が利用できるカードに登録できる(入会に$20 かかるがすぐ に元を取れる)。将来もしアメリカを訪れる機会があったらレンタカーを利用してみたい。 ⑤留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード 2 月の半ばに中国の春節のパーティーに誘って貰った。見ず知らずの外 国人なのに誘ってくれて本当に嬉しかった。彼ら中国の学生は日本の事 をよく知っていて、みんな一度は東京や大阪、京都に行ったことがあるよ うだったが、私の方は中国に行ったこともなく、大した知識もなく情けない 思いをした。理解とまではいかなくとも、ちょっと知っていること、ちょっと 体験したことがあることが会話を盛り上げ、親近感を抱いてもらえるきっ かけになるのだということを、ひしひしと実感した。相手の国のことを何も知らないというのは、時として失礼に あたる。これからはどこ出身の人に会っても、相手の文化を知るきっかけとなるような、その地域に関するちょ っとした知識を必ず持っていたいと思う。それは例えば、「おはよう」とか「さようなら」とかを○○語で言える! というだけでもいい。 また、留学経験を通して他人の情報を鵜呑みにしないという事も学んだ。そのように実感した場面はいく つもある。例えば、留学前、私は「アトランタではホームステイは通学を考えると絶対無理」と東工大をた またま訪れていたジョージア工科大学の教員自身の口から言われ、信じていたが、実際やってみたら何 の問題もなかった。その一方で、他人・経験者の情報の大切さを実感する場面も多かった。今後も、他 人の経験やアドバイスに耳を傾けながら、自分の頭で考えることを常に忘れないでいたい。 ⑥留学費用 奨学金:JASSO から毎月 8 万円を 12 ヶ月分 学費:東工大に\267,900×2 学期分 渡航費:行き\150,000 (Korean Air・仁川空港乗り換え)、帰り\99,000 (Air Canada・トロント乗り換え) 生活費:9 割自炊で寮とアパートでは月平均$200、ホームステイでは月平均$100 住居費:寮は application fee が$80、家賃が 1/3~5/3 で$4,244。洗濯は有料。アパートは application fee が $50、家賃が 5/3~7/31 で$2,441。洗濯は無料。ホームステイは application fee が$200、家賃が 8/15~12/15 で$2,800。ただし電車・バス通学になるので地元の公共交通機関の定期が 1 ヶ月で$58.5。洗濯は無料。 保険料:\112,605 その他: International student fee $25, SEIVE fee $180, 米国ビザ申請料 \19,200, 免疫費用 $282, B 型肝炎 免疫費用 $168。他にも TOEFL・GRE や成績書発行の費用($7)、小旅行費などなど。 ⑦留学先での住居 アメリカの大学は秋学期→春学期の順が一般的だが、私は春学期からのスタートだったため、住居にはとて も苦労した。結局 1 年で 3 つの場所に住んだ。 寮:秋→春の通年の契約が一般的。春→秋の契約は不可だった。また、 秋学期だけの契約は OK なのに対し、何故か春学期だけの契約は駄目。 寮は 4 人が各自の部屋を持ち、2 つのバスルームと 1 つの台所を共有す るタイプ。ルームメイトは現地の学生 3 人で、ほとんど会話についていけ ず。だが事あるごとに親切にしてくれ、様々な場面で助けられた。週末に 大学が Atlantic Station というショッピング街までシャトルバスを出してく れるため、食料品や日用品の調達には困らない。キャンパスの近くに Publix もある。 アパート:100Midtown という以前より東工大からの交換留学生ご用達の アパート。キャンパスから近く、留学生も多かった。ここで秋学期の終わ りまで住みたいと思ったが 8 月からの最短の契約期間が 1 年だったため 再び引っ越した。夏学期には多く学生は国や地元に帰ってしまうらしく、5 月中は 4 人部屋の中 1 人でいた。6 月からプエルトリコとパナマから来た 語学留学生がルームメイトになり、同じ英語を学ぶ身としてとても刺激的 だった。外国で部屋を借りるのは初めての経験で四苦八苦した。 ホームステイ:大学から距離のある Sandy Spring という地域のホームス テイを利用した。家主さんはフィリピン出身の方で、とてもよくしてくれた。 通学に関しては、朝は家主さんが最寄りの駅まで車で送ってくれたが、 帰りは電車とバスと歩きで道の込み具合によっては 2 時間近くかかるこ ともあった。住宅街といえど夜出歩きたくなかったので、1 つ受講したかっ た夕方からの授業を諦めた。ホストファミリーは留学生やインターンでア トランタに来ている人で、周りに何も娯楽がない土地だったので休日はし ょっちゅう散歩などをした。家主さんがおおらかな方で、作りすぎた夕飯 などを食べさせてくれることがあり、食費が半分ほどになった。 ⑧留学先での語学状況 留学前の TOEIC は 815、TOEFL は 90 だった。私にとって英語は常に難しく、いつまでも自分のものになった 気持ちにはならない一方、絶えず刺激的だったとも言える。友人に積極的に話しかけるのは勿論だが、店で わかっていることでもいちいち店員さんに質問する、わかっていても優しそうな人に道を聞いてみる、などベタ なことを 1 年間真剣にやっていた。授業は TOEFL 頑張っていたのなら何とかなると思う。先生の言っているこ とはわかるが、学生のいっていることはわからないことが多かった。 ⑨単位認定、在学期間 JASSO の規定でもあるので、取得単位の認定は行う予定である。在学期間は希望半年延長だが、修論の進 みが遅かったら 2 学期になるかもしれない。単位の認定には細かいルールがあるので、卒業(修了)単位とし て考慮している場合は予め教務課に訊いてみるといいかもしれない。 ⑩就職活動 学内の就活イベントに参加してみたが、全く準備してなかったこと、英語 が下手だったことなどから私は全然相手にされなかった。日本と違い新 卒という特殊な付加価値がない就職活動では、より自身の専門と自分自 身について自覚的でなければならず、周りの学生の自分の売り込み方 が非常に印象的だった。 ⑪留学先で困ったこと(もしあれば) 免疫の証明をしなければならなかった。出発前に日本で水疱瘡やおたふくなど、持っている免疫の英文証明 書を作っておけばよかったのだが、私は無視していて酷い目にあった。既に持っている免疫でも全ての項目を チェックするのに$300 近く払わなければならず、ならばこちらの日本人が経営するクリニックに頼んで免疫の 有無を証明してもらおうと思ったが(母子手帳は持っていたので)、初診料$300 と言われでやめた。私は関東 で生まれ育ち、普通に免疫の注射を子供の時に受けてきたが、B 型肝炎の免疫がなく、このワクチンをこちら で打った。 ⑫留学を希望する後輩へアドバイス 私は学部で入学した時から漠然と留学したいと思っていたが、なかなか英語(TOEFL)に本腰で取り組む気 にならず、結局だらだらと実行するまで 5 年近くかかってしまった。語学等の準備は早めに!とよく言われるが、 自身を振り返ると本当にそうだなあと実感する。 留学は、塾やサークルや海外旅行などと同じで、やったらやったで素晴らしいが、やらなかったらやらなか ったで必ず別の成長が待っているものだと思う。なので、これからチャレンジするのであれば、気負いすぎず、 何事も絶対視せず、海外にいるワクワク感を満喫する余裕を忘れずに過ごせたらいいと思う。情報収集は綿 密にするに越したことはないが、実際に行ってみないとわからないことは必ずある。上手くいかなかったことも 含めて、全てのプロセスを楽しめたらいいと思う。