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専修大学 原田ゼミ B - C

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専修大学 原田ゼミ B - C
電力産業構造の変革による日本経済の立て直し
専修大学経済学部
原田博夫ゼミナール
2 年生Bパート
有光拓也
太田基有
熊谷りお
1
中島俊介
浜上聡一朗
目次
序章
論第解釈
第 1 章 電力と経済の関係
第1節 電力需要と GDP の関係
第 2 節 現在の電力システム
第2章
電力供給体制の現状と問題点
第1節 日本の電力供給構造と問題点
第 2 節 発送電分離
第1項
発送電分離とは
第2項
海外の導入例
第3項
分離に対する政府の取り組み
第 3 節 原発の現状
第 3 章 今後のエネルギーについて
第 1 節 シェールガス
第 2 節 再生可能エネルギー
第 3 節 まとめ
第 4 章 政策提言
第 1 節 発送電分離後の電力供給構造
第 2 節 原発の国営化
第 3 節 再生可能エネルギーへの補助金
参考文献
2
序章
平成 24 年 12 月 26 日に発足した第二次安倍内閣では、
相互に補強しあう三本の矢、
つまりアベノミクスを推進していくことによって、長期にわたるデフレおよび景気低
迷からの脱却を最優先の課題として取り組んでおり、日本経済は回復の兆しを見せつ
つあるが、経済の活動水準は、潜在生産量を依然として下回ったままである。
今回、全体テーマ「日本経済再生のために、いかなる経済政策を実行すべきか?」
ということで、1991 年のバブル経済崩壊後の長期にわたる日本経済の停滞に対して、
現在の安倍内閣で掲げられている政策のアベノミクスにおける第 3 の矢である成長戦
略を主とし考え、2 年生のテーマ「日本経済再生のためにいかなる産業構造を構築す
べきか?」という問題に取り組んでいく。成長戦略においては規制改革が大変重要で
あるが、この 2 年生のテーマにもあるように、いかなる産業構造を構築するかという
ことで特定の産業に絞った結果、私たちのグループでは電力産業に着目した日本経済
の再生というものを考えた。
なぜ、現在、TPP 交渉・参加の議論がなされる農業や医療の分野ではなく、電力産
業に着目した経済の再生を考えたのかというと、電力供給が経済活動に与える影響は
多大なものであるためだ。日本の電力は 9 電力会社による地方独占となっている。電
力会社は金融、建設など色々な業界と密接に関係し、大きな利権団体となっており、
圧倒的な影響力を持つ。電力会社の社長が何人も経団連の会長に就任するなど、政治
的なつながりも強い。この地域独占型の経営体制を崩すためには発送電分離や新エネ
ルギーの導入が必要であり、それによって電力産業が競争の対象になることで、経済
再生が可能となる。これまでほとんど競争の行われていなかった分野を開放し、競争
対象とすることで、新しい分野の発展からもたらされる経済再生の可能性を考えた。
解題で述べられた、特定産業を育成するという産業政策を実行するとした場合、注目
すべき産業であると考えるのが電力であった。
後の第 1 章でも詳しいことについては述べていくが、内閣府より出されている電力
3
需要の推移の部門・電力需要のグラフの中で産業部門での電力需要が増加したとき、
実質 GDP も同じくして上昇している。このことから、安定して電力を供給することが
できれば、さらなる GDP の上昇、日本経済の立て直しが見込まれるのではないかとい
うことで、今回、電力産業に着目したというわけである。
先ほどにも、安倍内閣で掲げられているアベノミクスの第 3 の矢である成長戦略で
規制改革が大変重要だとのべてあるように、私たちが着目し取りあげていこうとする、
この電力産業においても様々な規制が存在している。その中で取り扱うのは、電力会
社の構造改革という面で、発送電分離について第 2 章では述べていく。電力産業の部
門において、現在、東京電力によるシェアがほとんどである。ここで、発電する業者
と供給する業者を二分することで、新たな企業の参入や、企業同士の価格競争により
電気料金が安くなり、各産業において電力が使用しやすくなり、活性化が図られると
いうことを目的とし発送電分離を行うための、規制改革が必要なのである。この発送
電分離については、すでに電力自由化の議論の中でもこれまで多く取り扱われてきた
問題であり、国としても電力事業法の改正案が閣議決定され、徐々に改革に向かわれ
ているものでもある。政府方針の中では電力改革を三段階で進めていくということだ。
これらのことについては、海外の例やメリット、デメリットにも触れながら展開して
いくものとする。
第 3 章では、発電についてということで震災後、様々な議論を呼んでいる原子力発
電の稼働についてとともに、島国であり国土も狭くあまり天然資源のとれない日本に
おける今後の資源利用について考える。東日本大震災の甚大な被害をうけた原子力発
電所では今も多くの問題を抱えている。再稼働の是非についても考え、また、原子力
以外に頼れるもの、新たな電力供給の元を探る。現在の再生可能エネルギーの実状や
今後に向けた利用方法、そして近年注目されているシェールガスについても述べてい
く。シェールガスを利用した場合の利点や、その資源の掘削技術にも注目する。
ここまでのことを踏まえたうえで、私たちのグループとしての「日本経済再生のた
めに、いかなる産業構造を構築すべきか?」というテーマへ対して、電力産業構造の
変革による日本経済の立て直しということでの政策提言を行ったうえで、結論をまと
4
めてゆく展開とする。
第1章 電力と経済の関係
第 1 節電力需要と GDP の関係
我が国、日本では平成 23 年 3 月 11 日東日本大震災が発生し、甚大な人的被害とと
もに経済面でも大きな打撃を受けることとなってしまった。東京電力福島第一原子力
発電所の損壊と放射性物質拡散事故は、国民の原子力発電所への安全性に対する社会
的懸念を高め、そのことは全国に存在する原子力発電所の稼働について大きな影響を
与える結果となった。このことから、政府でも、現在原子力発電を含む電力供給の在
り方が検討されている。一般的に言える、望ましい電源の組み合わせや電力供給体制
のシステムは発送電技術と電力需要の変化によって異なってくる。まずここでは、電
力供給が我が国の経済活動にどのような影響を与えていくのかを見ていくことにす
る。
図1 部門別電力需要
5000
4500
4000
3500
3000
2500
産業部門
2000
実質GDP
1500
1000
500
0
(出所)内閣府 日本経済 2011・2012 電力需要の推移 より筆者作成
5
内閣府より発表されている電力需要の推移のグラフで、部門別電力需要の図におい
ては、各産業の電力使用量の伸び率と実質 GDP の伸び率との比が示してある。見ても
分かる通り産業部門と実質 GDP のグラフはほぼ同じようにして変化している。大まか
に見てみると、各産業の電力使用量が減少するとそれと同じくして実質 GDP のグラフ
も減少を示していることがわかるだろう。長期的な電力と経済活動の関係について概
観してみると、
70 年度から 2009 年度までの 39 年間に実質 GDP は約 2.8 倍になったが、
電力需要量は約 3.1 倍になっており、電力需要の所得弾力性値は 1 を超えている。で
は、ここからは産業部門に着目して電力需要の推移をみていく。1973 年から 1980 年
代中ごろまで産業部門のグラフにおいて、多少の変動はあるもののほぼ横ばいの変化
となっている。この期間に発生していたのはオイルショック(石油危機)である。1973
年第 1 次オイルショックと 1979 年第 2 次オイルショックに始まった、原油の供給逼
迫と価格高騰、世界経済の混乱は産業部門においても大きな影響を与えることとなっ
た。オイルショックおよびその原因は日本銀行『日本銀行百年史 第 6 巻』
, 1986 年
では
「「いわゆる石油危機は 1973 年 (昭和 48 年 )の第 4 次中東戦争勃発 (10 月 6 日 )
を契機として始まった。もともと、原油価格は、アメリカをはじめとする主要先進国
におけるインフレ-ションの進展ならびにドル切下げなどによる原油輸出代金の目
減り傾向の強まりや国際的な需給関係の変化などを背景に、ここ数年強含みの推移を
たどり、とくに 1973 年に入ってからはじりじりと上げ足を速めていたが、OPEC(石油
輸出国機構 )加盟国のうちペルシア湾岸 6 か国は中東戦争勃発直後の 10 月 16 日に突
如として原油公示価格を 1 バ-レル 3.01 ドルから 5.12 ドル (代表的品種のアラビア
ン・ライト,以下同じ )へ 70%即刻引き上げる旨発表した (第 1 次値上げ )。次いで
翌 17 日 OAPEC(アラブ石油輸出国機構 )は緊急会議を開き、イスラエルが占領地から
撤退するまで、アメリカをはじめイスラエル支持国に対する供給を抑制するため、9
月の生産量を基準に 10 月から毎月 5%ずつ生産を削減することを決定した。アラブ産
油国は中東戦争をアラブ側に有利に導くため、量、価格の両面で石油を武器として利
用することに踏み出したわけである。OAPEC 諸国の石油生産量は 1972 年末で全世界
のおよそ 32%を占め、さらにその輸出量は世界全体の 55%にも達していただけに、こ
6
の決定は世界を驚がく・震かんさせた。このあと OAPEC 諸国は 10 月 20 日以降相次
いでイスラエル支援国 (アメリカ,オランダ )に対し石油輸出を全面的に停止する決
定を行った。11 月に入ると事態はさらに深刻化した。11 月 4 日 OAPEC 諸国は 11 月
の石油生産量を 9 月実績比 25%削減し、さらに 12 月には 5%の追加削減を行う旨発表
した。これに基づいてアラブ地域で石油生産を行っている日本のアラビア石油、アブ
ダビ石油の両社に対しでもそれぞれ関係国政府から生産の 25%削減が通告された。こ
の間、わが国に石油を供給しているメジャ-も OAPEC による生産削減措置に対応し、
国内各石油会社に対し供給削減を通告してきた。11 月 11 日に中東戦争は停戦協定が
結ばれ、これにより中東の政治情勢は当面小康を得る見通しになった。これに伴いア
ラブ産油国は、原油輸出に関する戦略を、それまでの生産制限・禁輸等供給量に対す
る直接規制的なものから、価格に原油需給を反映させることにより石油資源の長期温
存を図る方向へ移行させることにして、まずペルシア湾岸 6 か国は 12 月 23 日に原
油公示価格をそれまでの 5.12 ドルから 11.65 ドルヘと一挙に 2 倍以上に引き上げ、
1974 年 1 月から実施する (第 2 次値上げ )旨発表し,続いて 25 日、OAPEC は原油供
給削減措置の緩和を決定した。こうして直接的な物不足に脅かされた石油危機の第1
段階は峠を越したが、 10 月半ばから 12 月下旬までのわずか 2 か月余りの間に原油公
示価格が 3.87 倍に値上げされたことは、石油消費国の交易条件を短期間に極端に悪
化させ、1974 年以降世界的規模のスタグフレ-ションを生み出すもとになった。」と
記されている。国土も狭く、島国であまり天然資源に恵まれず、エネルギー資源の大
半を輸入に依存する日本にとって、このオイルショックは経済に大きなダメージを与
えることとなったのは言うまでもないだろう。このため、政府は電力・石油の使用節
減を図る政策を実施したため、電力需要の推移における部門別電力需要のグラフでは
1973 年から 1980 年代中ごろまで横ばいの変化が見られたのである。オイルショック
による影響のピークは 1980 年代に入ってからのため、1973 年から 1980 年代中ごろま
での期間では、1982 年ごろが横ばいの変化の中でも大きなグラフの減少を見せている。
この頃から、中東の石油に頼らずに、電気を発電する原子力発電の計画が急増してき
た。
7
次に 1990 年代に入ってからのグラフの変化を見てみる。この期間で目立っているの
は 1994 年の実質 GDP と産業部門電力需要のグラフ両方の減少である。戦後、高度経
済成長を続けてきた日本であったが、先ほど述べた二度のオイルショックにより成長
率の大幅なダウンに見舞われた。しかし、1980 年代後半に入ると土地と株式を対象と
した投機熱が高まり、また産業部門においても生産のために電力需要量が大きくなり
1980 年代後半から 90 年代に入るまで急速な成長が見られた。1990 年代に入ると資産
価格が上昇したものたちが下落をはじめ、そもそも実態なく価格の上がっていたもの
であるため一度下落を始めるともとの適正な価格まで下落するために、バブルがはじ
けたわけである。産業部門の低迷をも招き、その結果、電力需要量も減少してしまっ
た。1994 年に見られる産業部門の電力需要量のグラフの減少と実質 GDP のグラフの減
少はこれらのことが原因である、ということが言えるであろう。
2008 年度以降の動きをみると、いずれの部門においても電力需要量が減少している。
これは、2008 年のリーマンショックとそれによるリーマンショックとそれによる景気
後退を原因とする電力需要の落ち込みが大きかったことを示唆している。リーマンシ
ョックとは 2008 年 9 月に引き起こされた、世界的金融危機のことである。ことの発
端は投資銀行であったリーマン・ブラザーズの破綻だ。アメリカ国内でも大手投資銀
行で規模としては第 4 位、巨大な証券会社でもあり投資銀行がいきなりの倒産をして
しまった。倒産の理由としては低所得者向けのサブプライムローンの破綻だ。サブプ
ライムローンとは、返済能力の低い人たちに住宅を担保として高利で貸し付けたロー
ンのことで、そもそも、プライムとは(prime:優れた)という意味で、そこにサブ
(sub:下に)がつくことで、サブ(下に)プライム(優れた)=信用力の低い、と
いう意味である。この信用度の低さを「高金利+住宅の担保」という仕組みでカバー
することにより、ハイリスク・ハイリターンな証券へと変化させた。そして、様々な
金融商品に組み込むことにより世界中の投資家が間接的にサブプライムローン証券
に投資したことで、結果、アメリカの不動産バブル崩壊をきっかけに滞納率が急増し
サブプライム問題やリーマンショックへと発展しました。本来はローンであるはずの
債権を資本として、投資信託に組み込むなどしたために、証券会社が多岐にわたって、
8
資産価格の暴落が起きてしまったのだ。これは日本経済にも大きな打撃を与えたこと
は間違いなく、電力需要は経済活動水準とその内容に大きく依存するため、この産業
部門における電力需要量と実質 GDP のグラフの減少が見られたわけである。アベノミ
クスで言われている「停滞の 20 年」はここまでの時期をさしている。
ここで少し、日本の電気料金と他国の電気料金について見ていきたい。東日本大震
災の津波による福島第一原子力発電所の事故により、日本の電気供給システムに関す
る関心が高まっている。浜岡原発の停止を含め、化石燃料依存が高まり、電気料金の
値上げが実施されていることも関心の高まりの一員となっている。また、日本は欧米
のように「送発電分離」が進んでいないので電気料金が高いという論調も大きくなっ
ている。ここでは産業用の電力の価格グラフを見ていく。図には、OECD/IEA のエネル
ギー価格年報から、ドル換算の毎年の電気料金価格の推移を主要国について掲げた。
単年度の比較は、その時に状況に影響され、また一般に、論者は自分の都合の良い年
次をとる傾向があるので、これに対し、ここではやや長い期間をとり客観性を確保で
きるように努めた。なお、ドル換算なので当然各国通貨の為替レートによって影響を
受けていることを踏まえて判断する必要がある。図の推移から産業用の日本の電気料
金は 1990 年代に高かったのがわかる。ところが、1995 年に電力会社に卸電力を供給
する発電事業者(IPP)の参入が可能になり、2000 年に大需要家に対して、特定規模
電気事業者(PPS)による小売が認められるなど、電力自由化が進展し、1995 年以降
の円高の是正の進展もあって、電力料金はドル換算で低下傾向となった。欧米で電気
料金が日本と比べて相対的に高いのは、環境保全に関する税金が高いことが関わって
いるとみられる。2008 年以降は、再度、日本の電力料金は、相対的に高くなっている。
また 2011 年 3 月には東日本大震災にともなう福島第一原発事故によりほとんどの原
発が稼働停止となり、それ以降、化石燃料の調達に頼っているため電気料金も上昇し
ており、産業用はイタリアに次ぐ 2 位、家庭用はドイツ、イタリアに次ぐ 3 位のラン
キングとなっている。2013 年に入ると円安の影響でランキングは変わらないものの価
格水準は相対的に下がっている。
震災による電力供給制約の発生も経済に大きな影響を与えた。記憶に新しい、平成
9
23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災により、東京電力は 3 月 14 日に「計画停電」
の実施を発表した。
「計画停電」とは、東京電力管区内の一定地域に対する電力供給
を停止し、総供給に合わせて需要の調整を行うものである。電力需要家は節電も併せ
て行うよう求められた。
「計画停電」は 4 月 8 日に解除されたが、夏季の需要拡大局
面に向け、政府の電力需給対策本部が取りまとめた「夏季の電力需給対策」により、
東京電力及び東北電力管区内の全需要家に対して一律 15 パーセントの節電目標が設
定された。また、大口需要家に対しては、電気事業法第 27 条に基づく使用制限が 7
月 1 日から 9 月 9 日まで実施された。こうした需要制限による供給制約への対処によ
り、電力需要は大幅に減少した。計画停電実施期間(3 月 14 日~4 月 7 日)、計画停
電原則不実施期間(4 月 8 日~6 月 30 日)、電力使用制限期間(7 月 1 日~9 月 9 日)
のいずれの期間においても、東京電力及び東北電力管区内において、一日の最大電力
使用量は、前年同期を常に大きく下回るという結果となったのである。ここまで、内
閣府より出されている電力需要の推移における部門別電力需要の変化を表したグラ
フを見てきたが、産業部門の電力需要量のグラフと実質 GDP のグラフの変動がほぼ同
じくして減少するときの経済的背景を考察し、また、電気料金との関連を見てきた結
果、やはり、電力供給は経済活動に大きな影響を与え、なおかつ安定的に安く電力を
供給することが大変重要であることが分かった。
第2節
現在の電力システム
現在の日本には電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配
電を統合した電力系統といったシステムである。日本では、10 の電力会社がそれぞれ
電力系統をもち、沖縄電力を除いた 9 電力会社の電力系統は近隣のいずれかの電力系
統と接続されている。電力系統の運用とは、端的に言えば周波数と電圧を一定の範囲
内に維持させるように、発電所や送配電設備をコントロールすることである。東日本
の 50Hz 地域では、周波数を 50±2Hz に収めるように運用している。需要と供給のバ
10
ランス(同時同量)が崩れると、系統内の周波数に影響が出る。例えば、大規模な負
荷が急に系統から外れると、周波数が上がってしまう。重い荷物を載せた自転車を漕
いでいる時、急に荷物が落ちたらペダルが軽くなるのと同じである。これを防ぐため
に、電力会社はいくつかの発電機を系統から外すような操作を行う。このようなシス
テムがあるが、送電・配電についてはこの後の発送電分離の章で詳しく述べていくと
して、日本では、水力発電、火力発電、原子力発電、新エネルギーの大きく 4 つの発
電方法に分類できるため、ここでは日本の発電方法について述べていくこととする。
2013 年 5 月に電気事業連合が発表した電源別発電電力量構成比で 88.3 パーセント
を占める火力発電の内訳は石油 18.3 パーセント、LNG42.5 パーセント、石炭 27.6 パ
ーセントとなっている。火力発電では、燃料として石油、石炭、天然ガスなどが使わ
れる。石油や石炭などのエネルギー資源には限りがあるため、エネルギー資源に乏し
い日本ではさまざまな発電用燃料を組み合わせることで、エネルギー資源の安定確保
に努めている。しかし、それぞれのエネルギー資源による発電には問題がいくつかあ
る。石油火力は燃料単価が高く、国際情勢などにより燃料価格が変動しやすい、LNG
火力・その他ガス火力は石油・石炭に比べ CO2 の排出量が少ない発電方式なのがメリ
ットで燃料単価は石油より安いが、石炭と比べると割高である。石炭火力は石油に比
べ埋蔵量が豊富で単価も安い。その反面、環境保全対策が特に必要な発電方式となっ
ている。そして、火力発電の抱えるもう一つの問題は、火力発電では、「排気ガス」
が出ること。このため「燃料」
「設備」
「運用」などの対策を積極的に進め、硫黄酸化
物、窒素酸化物、ばいじんなどの排出量の低減を図っている。また、熱効率を向上さ
せ、
「同じ墨の燃料からより多くの電力を発生させる」ことで、CO2 排出量の抑制を図
っているのだ。火力発電の基本的なしくみは、燃料を燃やしてお湯を沸かし、その蒸
気の力で蒸気タービンを回転させて電力を発生させる。蒸気タービンを回転させた後
の蒸気は、復水器で冷やされて水に戻り、またボイラー内に送られて蒸気へと変わる
という動きをくり返す。復水器の水を冷やすために大量の水が必要なため、火力発電
所は比較的海に近い場所に設置されている。また、火力発電といっても発電方法は
様々である。主なものを挙げるとしたら、ボイラーなどで発生した蒸気によって蒸気
11
タービンを回して発電する汽力発電がある。その他のものとしては、高温の燃焼ガス
を発生させ、そのエネルギーによってガスタービンを回すガスタービン発電。ガスタ
ービンと蒸気タービンを組み合わせて、熱エネルギーを効率よく利用する発電方式の
コンバインドサイクル発電。これは、運転・停止が短時間で容易にでき、需要の変化
に対応した運転ができ、発電効率が良いので環境面からも注目され、積極的に取り組
まれている方式でもある。小規模発電で利用されているのは、ディーゼルエンジンな
どの内燃機関で発電する方式の内熱発電である。
続いて、8.4 パーセントを占める水力発電である。この発電方法は、エネルギー資
源に恵まれない日本の、周りを海に囲まれ山が多い自然の地形を生かしたもので、水
が高いところから低いところに落ちる高速・高圧の水の流れで水車を回、発電する。
水力発電所のほとんどが山間部に設置されている。自然エネルギーを利用している水
力発電は、電力需要への変化に対応しにくい発電方式だが、現在では水をせき止める
方法だけではなく、汲み上げる等の方法も行うなど、さまざまな水の利用方法を行い、
電力需要の変化にも対応しているのである。河川流量をそのまま利用する流れ込み式、
河川の流量を調整池で調整して発電し、短期的な発電量調整に活用される調整池式、
河川の流用をダムでせき止め、ダムに溜まった水を利用する山間部でよく見られる貯
水池式、発電所の上部と下部に大きな調整池をつくり、電力供給に余裕のある夜間帯
に水を汲み上げ、昼間帯にその水を利用して発電する揚水式がある。また水力発電は、
その構造物による違いからも分類できる。河から長い水路で水を引き込み、落差が得
られる場所で発電する水路式、ダムで水をせき止めて人工湖をつくり、その落差を利
用して発電するダム式、ダムで貯めた水を引き込み、落差が得られる場所で発電する
ダム水路式等がある。
東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響により、稼働の停
止が相次いだ原子力発電は 2012 年の全体の 1.7 パーセントまで減少した。原子力発
電は、世界中で約 50 年前から行われている発電方式で、その特徴は、発電段階にお
いて二酸化炭素を全く排出せずに大量の電力を安定して供給することができること、
また、使い終わった燃料を再処理することにより再利用できることから、エネルギー
12
資源小国・日本における発電方法として重要視されてきたのだ。原子力発電は、火力
発電のボイラーを原子炉に置き換えたものである。原子炉内では、ウラン燃料の核分
裂が連続して起こっている(連鎖反応)。水や制御棒で核分裂の数をコントロールす
ることで、一定の出力で運転することができるのである。二酸化炭素を全く排出せず
に大量の電力を安定して供給することができた原子力発電であるが、管理を怠たり、
また、一つ問題が起きれば大きな事故につながる。それが東日本大震災であったのだ。
そして、1.6 パーセントしか占めない新エネルギーがある。新エネルギーとは、風
力、太陽光、地熱、中水力、バイオマスなど自然環境から得られ、再生可能なエネル
ギーのうち、その普及のために支援を必要とするものである。新エネルギーは国産エ
ネルギーであること、二酸化炭素の排出量が少ないことから、エネルギー自給率の向
上と地球温暖化問題への対応に優れているといった利点があるが、投資額が高く、風
力、太陽光などは自然条件に左右され出力が不安定であるほか、設置できる地点も限
られているなどの欠点もある。投資額が高いという面では、まさに、アベノミクスの
第 3 の矢「成長戦略」とした各企業への開発援助を行い、新エネルギーの割合を高く
することも望まれる。なぜここまでも、環境問題について叫ばれている中、新エネル
ギーの割合がこんなにも低いのかというと、エネルギー密度が低く、まとまった電力
を得るには広大な面積を要すること、天候など自然条件に左右され、安定性に欠ける
などの問題点も抱えているからである。原子力発電の廃止も計画されているため、こ
の問題は早急に取り組む必要があるのではないかと考えられている。
現在の電力システムに至るまでは時代と経済的な問題が影響してきた。1952 年は水
力が主力であり、山間部にダムが多く作られた。しかし、1965 年石油にシフトするこ
とになる。日本銀行『日本銀行百年史 第 6 巻』
、1986 年に「石油輸入量の削減によ
りわが国の経済活動は先行きかなりの圧縮を余儀なくされると考えられたから、企業
は石油関連の原材料・燃料をはじめ各種物資の入手に狂奔したほか、個人も消費物資
の買い急ぎに走り、需給関係は極端に逼迫した。その象徴的な事例の一つとして 11
月には各地でトイレットペ-パ-、洗剤、砂糖などの買いだめ騒ぎが発生した。さら
に 12 月、ささいな流言飛語がもとになって,格別経営不安が生じていたわけでもな
13
かった愛知県所在の信用金庫に対し預金取付け騒ぎが発生した。幸い、この取付け騒
ぎは本行などの適切な対応により大事には至らなかったが、これら一連の事件は当時
の人心がいかに動揺していたかを如実に示すものであった。至るところで、買占め、
売り惜しみ (当時 「物隠し 」とも呼ばれた 、便乗値上げが発生し、商品市況は全面
高となった。こうした異常な雰囲気のなかで、物価は卸売物価、消費者物価とも 11
月ごろから急騰し、2 月までの 3、4 か月の間朝鮮戦争時以来の暴騰を演じた。まさ
に 「狂乱物価 」そのものであった。」と記されているようにオイルショックの影響で
日本国内は大混乱に陥り、1970 年中ごろからは石油から石炭、LNG を利用する動きが
広まり、また、原子力発電も計画されるようになった。
第2章
電力供給体制の現状と問題点
電力会社には多くの利権が絡んでいる、非常に大きな力を持つ企業であることを序
論で述べた。その始まりは、電力会社による地域独占を認めたことであることも述べ
た通りである。
それを踏まえ本章では、第 1 節で電量会社による地域独占の供給構造の現状と問題
点を把握する。第 2 節では現在導入が検討されている発送電分離について把握し、海
外での制度の導入例を述べた後、制度導入に対する日本政府の取組について把握する。
また第 3 節では、電力会社が保有している原発の実情について把握しておく。
第1節
日本の電力供給構造と問題点
まず初めに電力会社の役割について説明する。電力会社には電力を作る発電事業、
高電圧にした電気を各地域の変電所まで送る送電事業、送られてきた電気を工場や家
14
庭に届ける配電事業がある。日本は9電力会社による地域独占型の供給体制をとって
いるため、これら4つの事業は各地方の電力会社が一括して保有している。
上記を踏まえ、現在の電力供給構造における問題点を述べる。根本的な問題として
あげられるのが、9 電力会社の地域独占である。なぜ電力が独占体型なのか把握する
ためには、電力産業は人々にとって必要不可欠な財・サービスを供給する、いわゆる
公益事業であるということを念頭におかなくてはならない。この公益事業においては
インフラ整備や施設建設などへの莫大な設備投資が必要となってくる。大規模な設備
を導入するとコスト面での優位性が高まる、規模の経済性が現れる。この結果、公益
事業は効率的な資源配分がもたらされない自然独占となる。
現在の電力産業は政府が独占を認めた法定独占の状態である。安定的な供給を目的
として、政府による規制や監督で地域独占を認めている。これはその他の電力会社は
参入が認められず、同時に 9 の電力会社は他社の管轄する地域には参入できないとい
うことを意味している。加えて電力は各地域での自給自足するのが前提とされるため、
市場と市場のつながりは閉じられている。
我々は以上のことが電力産業の競争化を阻む原因となっていると考える。新規事業
者の参入ができないのでは、競争産業として発展するはずがない。9 電力会社による
地域独占を打開するためにはどのような方法があるのかを次節で述べていく。
第2節
発送電分離
第1節では電力会社による地域独占の問題点について述べた。この地域独占打開の
ために検討されているのが発送電分離である。本節ではまず発送電分離の内容とどの
ような効果があるとされているのかについて述べ、次に海外での導入例を把握した後、
実際に日本ではどのように制度の導入を行おうとしているのかについて把握する。
15
第1項
発送電分離とは
まずは発送電分離とは何かについて述べる。電力会社の役割は前節で述べたとおり
である。その中で発電事業とそれ以外の事業を分けることを発送電分離という。発送
電分離は分離度合いの大きさによって4種類あり、送配電事業を外部へ売却すること
などによって完全に電力会社から切り離す所有分離、送配電事業の運用を外部の中立
的機関に任せる機能分離、電力会社の持株会社の傘下として発電・送配電会社を別々
に置く法的分離、会社を分けることなく1つの会社の中で発電と送配電の会計を分け
る会計分離がある。
次に、発送電分離による効果について述べる。効果としてあげられるのは、
1、 電気料金の値下げ、2、電気の安定供給の実現 3、9 電力体制による地域独占の打
開である。それぞれの具体的な内容は以下のとおりである。
1. 電気料金の値下げ
これまで一括保有されていた 4 つの事業を分割し、発電事業と小売事業を市場開放
されれば新規事業者の増加につながり競争が生まれ、電気料金が安くなる。電気需要
者は小売会社から提示される料金プランやサービスから電気の購入先を選択する自
由が多くなることで企業努力が行われ、さらなる電気料金の値下げにもつながってい
く。
2.電力安定供給の実現
現在の日本では電気を販売し各需要者に届けるためには、送配電網を所有している
各地方の電力会社に宅送料を払わなくてはならない。送電事業を中立な会社の経営と
することで誰でも公平に送電網を使用できるようになり、新規事業者の参入促進につ
ながる。新規事業者が増加すれば、現在のように各地方にある 1 つの電力会社に供給
をまかせるのではなくなるため、仮にある発電会社が電気を供給できなくなったとし
ても、他の発電会社で電気需要を満たすことができるようになるため安定的な電力供
給が実現される。
16
3.9 電力会社による地域独占の打破
前節で根本的な問題として述べた地域独占を打破するために送配電事業を現在の
電力会社から分離することが必須である。現在送電網は各地方 9 電力会社それぞれの
所有物である。仮に東京のある発電会社が、電気をある神奈川の需要者に販売し送電
するとする。この場合発電会社、は東京電力の所有する送配電網を利用する必要があ
る。その際に発電会社は東京電力に対し託送料を支払わなくてはならない。この託送
料の負担は大きいが、送配電網の所有者である東京電力は託送料を支払う必要がない。
これが新規の事業者参入を難しくしており、現在のように送配電網を所有する 9 電力
の地域独占体系が維持される要因となっている。
発送電分離によって送配電網を公平、自由に使用できるようになれば、新規事業者
の参入を促すことができる。これが実現すれば上記した 2 つの効果が表れてくるよう
になる。
このように我々の目指す電力産業の競争化と 9 電力の地域独占を打開に、発送電分離
による効果は非常に有効であるといえる。これをふまえ、次節ではすでに分離が行わ
れている海外の例を挙げ、現実に競争化が行われているのかを見ていく。
第2項
海外での導入例
本節では、すでに発送電分離が進められている海外の例として、北欧のノルウェー
をあげる。ノルウェーは電力自由化の先行事例といわれている。前提としてヨーロッ
パの電力供給構造はどのようになっているのか把握しておく。ヨーロッパにおける電
力供給構造の改革の実情に関して、
「発送電分離は切り札か-電力システムの構造改
革」
(2012)のなかで、
「EU 各国は、発電、配電、送電、小売の「機能分離」からス
タートして、すべての国で「会社分離(あるいは法的分離)
」にまで進んだ。その結
果、ヨーロッパでは「電力会社」というものは存在せず、発電会社、送電会社配電会
社、小売会社に分かれている(図 2-1)そして発電部門と小売部門が自由化され、
17
多くの発電会社と小売会社が競争している。
」と述べられている。これは発送電分離
が電力産業を競争化することを実証しているといえる。
このように、発送電分離が行われているヨーロッパの中でもノルウェーは北欧に先
んじて分離を行い、最も分離度合いの大きい所有権分離が実現されている。これらの
ことに注目し、ノルウェーでの制度導入における過程とどのような効果があったのか
を見ていく。
*ノルウェーにおける発送電分離の過程と成果
まずは制度導入における過程を見ていく。1980 年代まで、ノルウェーは国営電
力会社による地域独占の供給体制であった。その後 1991 年にエネルギー法が可決
され、送電会社と発電会社に発送電分離された。しかし、構造分離を行っただけで
は依然として分離された発電会社のシェアが大きいため競争は起こりにくい。それ
をうけて行われたのは取引市場の整備である。ノルウェーをはじめとする北欧諸国
ではノルドプールと呼ばれる国際電力取引所が運営されており、1996 年からノル
ウェーは参加している。このノルドプールを介することで国境を越えた電力の市場
取引が行われるようになった。
では電気料金は実際どのように変化したのか。結論としては、電気料金は下がら
なかった(図表 1)
。しかし、これは分離が無意味であるということではない。この
同じ期間では化石燃料の価格も高騰していた。デンマークはいまだ 75%を化石燃
料による火力発電が占めているという実情を考慮するならば、これはむしろ料金を
抑えたほうだといえる。発送電分離の実現によって電力産業で競争が行われていた
ことが、高い燃料費の中であっても電気料金の上昇は低い値で抑えることができた
とも考えられる。
18
図表 1
(DKK)
デンマークの家庭用エネルギー価格の推移
2.5
2
1.5
電気料金
1
0.5
0
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
「出典:高橋 洋 (2011)
『電力自由化 発送電分離から始まる日本経済の再生』
P101 に掲載されている図をもとに筆者が作成した
注:DKK は貨幣の単位でデンマーククローネという。1DDK は 15 円ほどである。
第3項
分離に対する政府の取組
まずは 2013 年 10 月現在の安倍晋三内閣による、
発送電分離に対する政府方針を述
べる。政府は 2013 年 4 月 2 日、
「電力システムに関する改革方針」を閣議決定した。
3 段階にわけて改革を進める方針で、地域独占を認めている現在の供給体制を見直し、
家庭や企業などが自由に電力会社を選択できるようにすることを目的としている。
具体的な流れは以下のとおりである。
順序 1.2015 年をめどに、
「広域系統運用機関」を新設し、地域を超えて不足した電
気を融通しやすくする。
19
順序 2.2016 年をめどに、これまでの 9 電力会社以外の新しい発電会社が家庭向けに
電力を販売することを認めることで、企業向けから家庭向けまですべての電
力販売の自由化を行う。
順序 3.既存の電力会社から送配電部門に限り、電力会社から切り離す発送電分離を
2018 年から 2020 年をめどに実現を目指す。
この政府方針ではまず発電産業を自由化という形で開放し、その後発送電分離を行
うというものである。確かに送電網を分離するのは非常に難しい。9 電力会社からの
強い反発が予想されるからだ。現状で安定的に利益を生むのに必要なのが送配電網を
発電事業も行っている自社で管理しているということである。送配電網を所有してい
れば託送料を支払う必要もなく、他社には高い託送料を求めれば新規事業者も現れず
に独占状態を維持できるからである。このことから、最も重要な送配電の分離が最後
の順序であるのは電力会社との交渉や制度整備を先に行い、準備ができた上で順序 3
を行う方針であることがわかる。しかしながら、電力産業界からの反発などによりプ
ラン通りに進むのは難しいと予想されるが、安部政権は最後まできっちりと発送電分
離をやりきることが必要である。
第3節
原発の現状
2011 年の震災による影響で発生した原発事故により、原子力発電の安全性が問わ
れるようになった。これは同時に、原子力発電に対するリスクに目が向けられたとい
うことである。原子力は火力に比べてクリーンであり、比較的安価に、大量に電力を
生み出すことができるのが魅力である。しかし今回の事故によって、原子力発電のリ
スクに目が向けられると原発に反対する声が大きくなった。原発事故の補償に関して、
東京電力に対し会計検査院が行った初の検査で、福島第 1 原発事故の賠償資金などに
充てるため国から受けている財政支援の弁済期間と、国が税金で負担する利息を試算
20
した結果、現在の支援総額 3 兆 7893 億円では弁済に 11~23 年かかり、利息は約 235
億~474 億円に上ることが 16 日に分かった。
支援額が上限の 5 兆円の場合は 14~31 年、利息も約 374 億~794 億円となるが、
賠償総額は今後さらに膨れ上がる可能性もある。
このように、未だに事故の補償額すら判明しないほどの莫大な額の補償金が必要な
ほど原発には稼働に対するリスクがある。このような原発を 1 企業である電力会社に
管理・運営を任せてよいのだろうか。この莫大な賠償費用は不足分を国民の税金でど
こまでも賄っていかなければならないのか。発送電分離によってこれまでの電力供給
体制を国が見直そうとしている今こそ、原発のあり方について見直す必要がある。
本章では電力産業を競争化し、地域独占体系を打開する手段として発送電分離につ
いて述べた。実際に分離が実現されれば経済的な影響は非常に大きなものなるだろう。
新規事業者は火力発電所を建設するのではなく、再生可能エネルギーによる発電を主
とする。新たに火力発電所を建設しようとすれば、設備投資に莫大な費用がかかって
しまうからである。再生可能エネルギーによる発電会社の増加は長い目で見れば、原
発が停止した後の代替えとして期待ができる。海外でも多くの発送電分離の導入例は
あるが、実際に日本で導入する際には日本にあった形を考える必要がある。政府方針
が順当に達成されれば、発送電分離は 7 年ほどで実現されることになる。この 7 年の
間で、日本での制度導入にはどのような形態をとるのがよいのか議論されなくてはな
らない。
第3章
今後のエネルギーについて
この章では最近注目が集まっている新エネルギーについて評価し、これからはどの分
野を成長させていかなければいけないのかを述べる。
21
第1節 シェールガスについて
(1) シェールガスとは
最近アメリカでこれまで困難だった地層(シェール層)からの天然ガスの採掘が
可能になったことにより、世界のエネルギー情勢に大きな変化が訪れている。
シェールガスは1キロワット時あたりのコスト6円という驚異的な低価格のエネ
ルギーである。
シェールガスはアメリカのベンチャー企業のミッチェルエナジーが採掘技術開
発を成し遂げ、商業モデルまで乗せた。
アメリカは 2013 年 5 月に日本への輸出解禁第一号を発表した。これから我が
国日本にもシェールガスは輸出されると考える。
<この「シェール」とは、泥岩の中でも特に固く、薄片状に剥がれやすい性質
をもつ頁岩のことだ。大河の流れから押し出された粘土が堆積し、地圧により固
形化して形成された泥岩の一種である頁岩は地球上に広く分布している。地下
2000~3000 メートルに眠るこの頁岩層に含まれている天然ガスがシェールガス
だ。>泉谷
渉(2013)図解「1時間でスピード解説!シェールガス革命」東洋経
済新報社引用
(2) シェールガスのメリット
シェールガスには大きく分けて三つのメリットがある。
① 埋蔵量が多い
② コストが安い
③ CO2 の排出量が従来のエネルギーに比べて少ない
順を追って説明します。①については<統計によれば、シェールガスの埋蔵
量は既存の天然ガスと合わせ、アメリカだけで 150 年分、ロシアと中国を除
いた世界で 400 年分がある。ロシアと中国の正確な数字を探ることは難しい
が、広大な国土を考えれば、全世界で少なくとも 700 年分のガスがあるとみ
22
ていいだろう。>泉谷
渉(2013)図解「1時間でスピード解説!シェールガ
ス革命」東洋経済新報社 引用
表1利用できるガスの資源量が急増
100
90
80
現在の技術では回収できな
い
70
回収できる
60
50
ガスが従来の
20倍も採掘可
能に!
40
30
20
10
0
在来型ガス
シェールガス
(注)地球上に存在するガスの総量を 100 とする。地層中に散在している分や規模の小さい
非在来型ガスは除いてある
(出所) 泉谷
渉(2013)図解「1時間でスピード解説!シェールガス革命」
P.23 に掲載されている図をもとに筆者が作成。
このグラフからも分かるようにシェールガスは在来型のガスに比べて 20 倍
も採掘が可能で今後技術が発展すればさらに多くのガスが採掘可能になると
予想される。したがって、シェールガスの埋蔵量は豊富であると考える。
②のコストが安いについては石油キロワット時あたりのコストは 10 円、風
23
力は 20 円、太陽光は 25~30 円程度であると把握した。
表2エネルギーkwh(キロワット時あたりのコスト)
(出所) 泉谷
石炭
6円
石油
10 円
水力
13 円
風力
20 円
太陽光
25~30 円
シェールガス
6円
渉(2013)図解「1時間でスピード解説!シェールガス革命」P.23 に掲載されている図をもとに筆者が
作成。
表2のグラフからわかるように石炭もシェールガスと同じ 6 円ではあるが、CO2を
大量に排出するため別として、従来のエネルギーよりも安い事がわかる。
③の CO2 排出量については、シェールガスも CO2 を排出するが、その比率は石炭
と比較すると 40%減、石油と比較すると 10~15%減だ。と述べられている。(泉谷 渉
(2013)図解「1時間でスピード解説!シェールガス革命」)
今までのエネルギーよりも CO2 の排出量が少ないとわかる。
シェールガスは大きく分けてこれらの 3 つのメリットがあると考えられる。
アメリカのオバマ大統領がシェールガスはエネルギーの調達問題、コスト問題さらに
は CO2 問題のすべてを解決する。と述べている。シェールガスは従来のエネルギー
が抱えている問題を解決できると考えられる。
(3)シェールガスのデメリット
従来のエネルギーと比較すると、魅力的に映るシェールガスだが当然デメリットも
存在する。それは採掘の際の環境汚染である。これからシェールガスの一般的な採掘
24
手順を紹介する。
<シェールガスは固く薄片状に剥がれやすい性質をもつ頁岩(シェー
ル)に万有されている。地下 2000~3000 メートルの場所にある 1 ミリメートル四方の
微細な割れ目に閉じ込められているので、そのままでは採取することは到底不可能だ。
そこでフラクチャリング法の出番である。(フラクチャリング法とは水の力で地層に圧
力をかけて人工的な割れ目「フラクチャー」を作る採掘方法である。シェールガスの
フラクチャリングは、圧力抗体として、水、プロパント(砂)、化学物質の混合水が用
いられる。水の比率は約 90%、プロパントが約 9%,化学物質が約 1%。
化学物質の使用目的は、土を柔らかくして土壌を改良するなどさまざまだが、薬品と
して何がどれぐらい使用されているのかは各社の企業ノウハウであり、明らかにされ
ていない。>泉谷 渉(2013)図解「1時間でスピード解説!シェールガス革命」引用
表3代表的な化学物質
酸(塩酸など)
セメントや鉱物の溶解
殺生物剤
バクテリアによる腐食防止
pH 調整剤
pH 制御
(炭酸ナトリウム)
界面活性剤
粘性増加
脱酸剤
腐食防止
(重亜流酸アンモニウム)
摩擦低減剤
摩擦損失低減
(ポリアクリルアミド)
ゲル化剤
(出所) 泉谷
プロパント随伴性向上
渉(2013)図解「1時間でスピード解説!シェールガス革命」P.43 に掲載されている図
をもとに筆者が作成。
表3からもわかるようにシェールガス採掘には様々な化学物質が使われる。地下
2000~4000 メートルで採掘するので理論的には地上に影響を及ぼさないはずだが、地
25
下には断層や割れ目多く存在し、その割れ目などを通じ水源に影響をおよぼしている。
シェールガス採掘を禁止している国もある(フランスなど)。シェールガスを使うこ
とは環境汚染を招くが、一番危険なのは日本がシェールガスの輸入に頼ってしまう事
である。日本は資源が少ないからといって輸入に頼ってしまうと、海外から輸出が制
限されてしまった場合エネルギー源が途絶えてしまう。これは大変危険であると考え
た。自身でエネルギーを生み出す事が出来る分野にも力を入れるべきである。
第2節 再生可能エネルギー
第 1 節で述べたように、特定のエネルギーに集中する事は国防上かなりのリスクに
なると考える。資源が少ない日本でも自身で生み出す事が出来るエネルギーとして、
再生可能エネルギーに注目した。
(1)再生可能エネルギーの現状
そもそも再生可能エネルギーとは風力、地熱、太陽光などの事である。
各国の再生可能エネルギー導入状況は以下のとおりである。
<再生可能エネルギー(水力は除く)電源構成に占める割合は、2010 年時点で、ドイツ
で 14.7%、スペインで 18.5%、イギリスで 6.2%、アメリカで 4.4%。(2013) 資源エ
ネルギー庁 「再生可能エネルギーの拡大」引用。
我が国の再生可能エネルギー導入状況(水力は除く)は、2012 年度時点で 1.6%と他国
に比して未だ低水準である。>(2013) 資源エネルギー庁
「再生可能エネルギーの
拡大」引用。
(2)海外の再生可能エネルー導入拡大政策
海外ではどのような政策を用いて再生可能エネルギーの導入を拡大したのかを見
ていく。
26
表4各国の再生可能エネルギー導入拡大政策
ドイツ
○2000 年より、FITによる支援を実施。再生可能エネルギー比率は
6.2%(2000 年)から 19.0%(2010 年)まで増加。
スペイン
○1994 年より、FITによる支援を実施。再生可能エネルギー比率は
16.1%(1995 年)から 33.5%(2010 年)まで増加。
○買取費用を十分転嫁できない制度であったため、送配電会社に赤字が
累積(2011 年時点で 240 億ユーロ(約 3 兆円))
。2012 年に新規案件に
ついて買取りを停止。
イギリス
○RPS(2002 年開始)と、FIT(2010 年開始。小規模発電のみを対象)
の併用。
アメリカ
○30 の州及びワシントン DC で、RPS を採用。5 つの州(カリフォル
ニア州・ハワイ州・ルイジアナ州・オレゴン州・バーモント州)で、F
ITを採用。
(出所)資源エネルギー庁(2013) 再生エネルギーの拡大に掲載されている図をもとに筆者が作成。
世界各国では、固定価格買取制度(FIT)と、再生可能エネルギー電気の一定量
の調達を電力会社に義務づけるRPS(価格は固定せず)などにより、導入を促進。
固定価格買取制度とは再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオ
マス)を用いて発電された電気を、国が定める固定価格で一定の期間電気事業者に調
達を義務づける制度。再生可能エネルギー電気は、送電網を通じて私たちが普段使う
電気として供給される。電気事業者が再生可能エネルギー電気の買取りに要した費用
は、電気料金の一部として、使用電力に比例した賦課金という形で国民が負担すると
いう制度である。この制度の目的は、資源エネルギー庁によるとエネルギー自給率の
向上、地球温暖化対策、産業育成を図ると共に、コストダウンや技術開発によって、
再生可能エネルギーが日本のエネルギーを支える存在とするためと述べている。
実際この制度をいち早く取り入れたドイツでは表4でもわかるように FIT を導入
したことにより、再生可能エネルギーの比率を 6.2%から 19.0%まで増加している。
このことから FIT の導入は再生可能エネルギー拡大に効果があると考える。
日本でも 2012 年 7 月から FIT が導入されている。今までコストが高いために再生
27
可能エネルギー産業に携われなかった企業が新しく参入し、増加してくると考える。
(3)ドイツでは FIT に批判の声も
FIT は確かに欧州諸国において風力、太陽光発電の普及に寄与してきたが、最近買
取時の上乗せ価格を負担する電気料金の値上げに消費者が耐え切れないという声が
あがっている。
<年間 3500kWh を消費するドイツの標準家庭の 2012 年の買取負担額は、1kWh 当
たり 3.6 ユーロセント、
年額にして 126 ユーロと見られている(1 ユーロ=約 107 円)。
2013 年の予想負担額は 186 ユーロだ。家庭用の電気料金は 2012 年 5 月現在で 1kWh
当たり 25.41 ユーロセントだから、FIT の負担額は既に料金の約 14%を占めていた計
算になる。そして、2013 年は 20%を超える見込みだ。産業界の負担額も大きく、2013
年には総額 40 億ユーロに達すると予想されている。>山本 隆三
(2013)「激論&
直言日本のエネルギー」日経エコロジー 引用
FIT を先行したドイツで電力価格が高騰しているのがわかる。日本でも電気料金の
高騰が訪れるだろうと考える。ドイツ政府は、新技術開発への補助金を支出する政策
へ舵を切る見込みである。
<結果的には日本、周回遅れで FIT を開始した。後語釈になるが、本来は先行事例
に学んで FIT に多くを頼るのではなく、新技術の開発や、有望な蓄電、発電設備への
補助金政策など、将来、再エネの大きな導入につながると期待できる政策にも踏み切
るべきだった。>と指摘している(山本 隆三
(2013)「激論&直言日本のエネルギー」
日経エコロジー)。
山本氏が述べているように我々も欧州の先行事例に学んで電気料金
の値上がりが著しくなる前に再エネの大きな導入につながると期待できる政策にも
踏み切るべきだと考える。では、具体的にどのような政策をしていかなければならな
いのかは政策提言で述べるとする。
28
表51kWh当たりの電気料金(ユーロセント)
30
25
20
15
10
5
0
日本
ドイツ
イタリア
スペイン
デンマーク
(注)標準家庭の料金。日本は関西電力(値上げ申請前)、それ以外は 2012 年 5 月時点、1 ユーロ=107
円
(出所) 山本
隆三
(2013)「激論&直言日本のエネルギー」p.14 に掲載されている図をもとに筆者
が作成。
第3節 まとめ
シェールガスは確かにコスト、埋蔵量、CO2 の排出量の少なさでは従来のエネルギ
ーよりも優れているが、特定のエネルギーに集中してしまう事はかなりのリスクであ
る。自国で生産する事が出来る再生可能エネルギーの分野にも力を入れるべきである
と考える。
再生可能エネルギー導入拡大に FIT は有効だが、欧州の先行事例から予想して、
日本でも電気料金の高騰が起きると考える。そうなる前に再エネの大きな導入につな
がると期待できる政策や、再エネが拡大したあとの政策も考えねばならないという課
題が残った。
29
第4章
政策提言
この章では、これまでの内容を踏まえたうえで電力の競争産業化を実現するための
政策について提言を行う。1 節では発送電分離をどのような形で取り入れるかについ
て、2 節では今後の原発のあり方を、3 節では再生可能エネルギーについてをのべて
いく。
第1節
分離後の電力供給構造
第 2 章の 2 節 3 項で述べたように政府の方針としては発電、小売事業を自由化し、
送配電事業は順序 1 の中で述べられている「広域系統運用機関」による独占状態とい
う形を目指している。我々が提案するのは政府の方針とは違い、送配電事業を民間 1
社の独占形態ではなく完全に国有化すべきであるというものである。
前提として、送配電網は公共インフラとしてみるということである。仮に分離後に
ある 1 社に送配電事業を任せたとすると、その会社が送配電事業を独占する形になる
ため、託送料をつり上げないよう規制を強化し国が監視する必要が出てくる。である
ならば、国営化して全国の送配電網を一括管理するほうが効率的であるし、公共イン
フラとしての公平性や中立性が保たれる。また、過疎地や離島なども送配電網が整備
されていなくてはならないことからも国営にし、各都道府県へ管理を委託することで
細かな管理、整備が行われると考える。
我々の根本の考えは、電力を競争産業化し経済再生を目指すということである。
そのためには発電と小売の自由化は必須であるが、送電と配電は誰もが同じ条件で利
用できる状態を維持するためには規制と監視が不可欠である。しかしインフラ整備を
全国レベルで行うとすると、上下水道のように国営化してしまうほうがよい。託送料
が送配電網の整備費にあてられるため、財源の確保も容易である。
30
第2節
今後の原発の在り方
ここで、原子力発電所を廃止に至るまで国営化とすることを政策の一つとして提案
する。最初のほうにも述べてある通り、日本の電力は 9 電力会社による地方独占とな
っており大きな利権団体となっている。福島第一原子力発電所の汚染水問題の原因と
しては東京電力のような利権団体に、原子力発電所の管理運営は任せられない。利益
を優先するあまり、原子力発電所の管理に絶対必要な安全コストを惜しむからだ。国
営化にすれば、これらの点の改善や運営の見直しが図れ、危険な原子力発電所をより
安全な管理下に置くことができると考えた。
原子力発電所が国有化されれば、経営は国庫からとなる。経営不振や資金繰りに困
ることも少なくなるだろう。そして、これまで電力会社といった企業に任され、自分
たちの利益を優先するあまりコストとしておざなりにされてきた安全管理は、国の専
門の安全機関に一任する。もちろん、運営自体も国が行うようにする。東京電力の場
合、運営においては経営者が最終判断を行う。このとき、自社の損得を重視する傾向
があるため、東日本大震災の時の福島第一原子力発電所の爆発のような事故が発生し
たときに、生ぬるい対応・対策で事態の悪化を招くこととなったのだ。そして今では、
汚染水問題までを抱える始末である。これを国有化にした場合、専門の安全機関が主
となり運営するため、最終決定などを下す際も、電力会社のように損得ではなく、安
全性や危険性により判断を下すようになるはずだ。企業の経営判断のミスは、自業自
得とも言える自社の倒産につながるだけであるが、原子力発電所の経営判断のミスで
はそれだけではすまされない。原子力発電所のある地域の住民への多大なる被害、放
射性物質の拡散、現在も続く汚染水の漏洩、たった一つの判断ミスで被害の拡散、ま
た被害は日本全体にまで及ぶこととなる。これは福島第一原子力発電所の事故から現
在の日本の状況そのものである。
また、原子力発電所が国有化された場合のメリットは大変大きい。電力会社での運
営では、各電力会社が所有する原子力発電所をそれぞれで管理するため、技術力も分
散してしまう。そのため、安全性も低くなる。しかしながら、国によって運営が一元
31
化されることによって、高度な技術が集約されて安全面の向上も大変期待できるもの
となるであろう。
ここで一つ例を取り上げるのであれば、アメリカに次ぐ世界第 2 位の原子力発電大
国であるフランスを見てみる。フランスでは政府主導の強力な原子力発電開発体制を
これまで図ってきた。関連機関・企業はほとんど国有企業、またはその子会社という
体制なのだ。だが日本では、原子力事業は、国家戦略に基づく総合的エネルギー政策
のなかで、国策として発足し、今日に至るまで、国策として遂行されてきたにもかか
わらず、それは、国営事業としてではなく、最初から純民間事業として行われてきた
のが大変な問題点であるのだ。ここでフランスの体制を見習い、原子力発電所を廃止
まで国有化するべきだ。
電気料金の値が上がった今、安く電力を使用できなくなり経済への不安が予想され
るからこそ、ここで原子力発電所の国有化を提案しているわけである。
第3節
再生可能エネルギー補助金
第3章で述べたように再生可能エネルギー導入拡大を FIT に多くを頼るのではなく、
先行事例に学んで拡大したあとの政策を考える必要がある。
<米国政府は再エネの大量導入時に必要となる大型の蓄電設備に力を入れている。
例えば、圧縮空気を蓄えて、再エネによる発電がない時間帯には圧縮空気を放出し、
ガスタービンを回す技術だ。オーストラリアの連邦政府や州政府は 24 時間発電可能
な太陽熱発電投資に大きな補助金を出している。>と述べられている。(山本
隆三
(2013)「激論&直言日本のエネルギー」日経エコロジー) 日本もオーストラリアやア
メリカに学ぶべきである。
FIT を継続し、再生可能エネルギー部門に新規参入者を増加させることで地域独占
の形を崩し、アメリカやオーストラリアのように再エネの大量導入時に必要となる大
型の蓄電設備や、発電設備に大きな補助金をだしていくべきである。
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参考文献
日本銀行(1986 年)
『日本銀行百年史 第 6 巻』, 日本銀行
山田光(2012) 『発送電分離は切り札か 電力システムの構造改革』 日本評論社
高橋洋(2011) 『電力自由化 発送電分離から始まる日本の再生』
日本経済新聞出版社
資源エネルギー庁(2013) 『エネルギー白書 2013』
www.enecho.meti.go.jp
(2013 年 8 月 20 日)
電気事業連合会 HP
www.fepc.or.jp
日本経済研究センターJCER
www.jcer.or.jp/
日本経済新聞 HP
www.nikkei.com
山本 隆三 (2013)「激論&直言日本のエネルギー」日経エコロジー
泉谷 渉(2013)図解「1時間でスピード解説!シェールガス革命」東洋
経済新報社
長谷川 慶太郎 泉谷 渉
(2012)「シェールガス革命で世界は激変する」東洋経
済新報社
参考 URL
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/index.html 経済産業省
資源エネル
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http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/sougoubukai/4th/4th-2.pdf 経 済 産
業省 資源エネルギー庁 「再生可能エネルギーの拡大」(最終閲覧日:2013/10/20)
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