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6185 ソネット・メディア・ネットワークス
http://www.so-netmedia.jp/ 6185 ソネット・メディア・ネットワークス 地引 剛史 (ジビキ タケシ) ソネット・メディア・ネットワークス株式会社 代表取締役社長 中長期的な成長に向けて DSP 事業への投資を強化 ◆マーケティングテクノロジー事業展開 当社のミッションは、情報通信技術の進歩を人に優しいかたちにして愉快なる未来を創ることであり、発想力と 技術力で社会にダイナミズムをもたらすユニークな事業開発会社になることをビジョンに掲げている。ソニーグル ープ、データ、テクノロジーの強みを生かして、マーケティングテクノロジー事業(DSP、アフィリエイト、メディアプラ ンニング)を展開しており、DSP 事業が売上の 6 割弱を占める。 当社の沿革として、事業上のルーツとなるバリュークリックジャパンは、平成 10 年 11 月に設立された日本で最も 古いアドネットワーク会社の 1 社である。平成 20 年 7 月にはソネットグループ入りし、平成 24 年 4 月に現在の中 核事業である DSP の提供を開始した。平成 27 年 12 月には東証マザーズに上場し、平成 28 年 4 月には子会社 のソネット・メディア・トレーディングを設立している。 DSP の登場により、広告枠をユーザー単位で買い付けることが可能となった。DSP を支える RTB の仕組みとし ては、ユーザーが WEB サイトを閲覧すると、WEB サイトから SSP に広告リクエストが飛ぶ。SSP は、ユーザー情報、 広告条件などを集約し、オークションを開催する。DSP は、広告キャンペーンの内容、入札価格を瞬時に見極めて 入札し、オークションに勝った DSP が広告を配信する。なお、オークションは開始から 0.1 秒で終了する。 平成 27 年の国内インターネット広告市場は、前年比で 10.2%成長し、1 兆 1,000 億円を超える規模となった。当 社が属する RTB 市場は、2019 年にグローバルで約 300 億ドル(約 3 兆 3,000 億円)まで成長すると予測されてい る。日本では、すでに市場が成熟し始めているため、2016 年の伸び率は 20%台となる見込みだが、ワールドワイ ドでは約 40%の伸びが見込まれる。 ◆人工知能で膨大なデータを分析 当社の DSP「Logicad」は、ダイレクト・レスポンス広告を中心とした積み上げ型のビジネスである。ダイレクト・レ スポンス広告は、購買や資料請求などユーザーの直接的なアクションを誘発するもので、費用対効果にシビアで ある一方、広告効果があれば継続的に使われる。当社は、絶え間ない効果の改善、細かいレポートによる「見え る化」で顧客から信頼を得ており、広告主は、化粧品・トイレタリー、エンターテインメント(電子書籍など)、金融(ダ イレクト損保など)、不動産、旅行と幅広い。 「Logicad」の強みとしては、ソニーグループとの協業が挙げられる。人材交流により研究開発が強化されており、 ゼータ・ブリッジ社とのアライアンスによる「テレビ CM リアルタイム連動型広告」など、他社にない商品を提供して いる。さらに、グループ各社で新たなプロダクトのテストマーケティングを行い、その結果をもって、グループ外に展 開することが可能である。2 つめの強みはビッグデータであり、約 1,500 億インプレッションのオーディエンスデータ と DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を活用して、DSP の広告効果を改善している。 リアルタイム・ビッグデータ処理技術も強みとなっており、秒間最大 8 万回の膨大な入札リクエストを処理し、約 3 億ブラウザーのデータを高速解析している。広告のターゲティングには、独自開発の人工知能「VALIS-Engine」を 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 用いており、グループの機械学習系エンジニアが集結し、膨大なデータを分析して広告効果を改善している。 アフィリエイト事業では、広告主、媒体を厳選したクローズド型アフィリエイトを展開しており、平成 28 年 4 月に新 設分割により 100%子会社としての運営を開始した。メディアプランニング事業では、ポータルサイト「So-net」を中 心に、媒体の広告収益最大化を支援しているほか、世界有数の SSP「PubMatic(パブマティック)」を国内で共同展 開している。 ◆売上・利益ともに業績予想を超過 平成 28 年 3 月期は、業績予想に対し、売上・利益ともに超過して着地しており、ソネット出資後、初めて営業利 益率が 5%を超過した。売上高は 56 億 28 百万円(前期比 52%増)、営業利益は 2 億 94 百万円(同 73%増)とな り、営業利益率は前期の 4.6%から 5.2%に上昇した。経常利益は 2 億 78 百万円(同 65%増)、当期純利益は 2 億 41 百万円(同 16%増)となっている。 売上高については、DSP 事業が 31 億 34 百万円(前期比 49%増)、アフィリエイト事業が 21 億 39 百万円(同 77%増)、メディアプランニング事業が 3 億 53 百万円(同 13%減)となった。売上原価については、原価率の高い アフィリエイト事業の売上増に伴い、仕入の比率が増加したが、各事業の原価率は悪化していない。販管費につ いては、メディアプランニング事業の売上減少に伴って代理店手数料が減少した。なお、DSP およびアフィリエイト 事業については、代理店手数料を控除して売上計上している。 貸借対照表については、IPO 等により、15 億 60 百万円超を調達した。キャッシュフローについては、期末残高が 前期の 3 億 25 百万円から 17 億 18 百万円に増加しており、財務キャッシュフローが 15 億 59 百万円のプラスとな ったことが要因である。なお、営業キャッシュフローはプラスとなったが、まだ投資フェーズにあるため、フリーキャ ッシュフローはマイナスとなった。今後も積極的な投資を継続する方針である。 当社は、平成 29 年 3 月期より連結決算を開始する。今期は、中長期的な成長に向けて、コアサービスである DSP 事業に投資と施策を集中し、アフィリエイト事業については、分社化によって安定成長に向けた体制を強化し ていく。連結売上高は 67 億円(前期比 19%増)、営業利益は 3 億円(同 2%増)、経常利益は 3 億円(同 8%増)、 当期純利益は 2 億 25 百万円(同 7%減)を予想している。当期純利益の減少は、アフィリエイト事業の分社化によ って、繰越欠損金の適用範囲が狭まることが要因である。 売上高の見通しとして、DSP 事業では 41 億円(前期比 31%増)を見込んでいる。スマホ売上拡大に向けた施策 を強化し、既存商材の成長に加え、ダイナミック・クリエイティブ、テレビ CM 連動等、新規商材の販売に注力してい きたい。アフィリエイト事業については、平成 28 年 3 月期に金融・法律系で特需があったが、粗利率が低い商品で あり、利益には大きく貢献していない。今期は特需が落ち着くため、22 億 40 百万円(同 5%増)を見込んでいる。業 種ポートフォリオのリバランスを行い、粗利率の高い商材を増やしていきたいと考えており、リバランスを機動的に 行えるよう、完全子会社として新設分割した。メディアプランニング事業では 3 億 60 百万円(同 2%増)を見込んで おり、So-net ポータルのスマートフォン化、SSP の伸長により、売上の減少傾向に歯止めがかかると見ている。 ◆トリプル・スリー戦略を推進 DSP 事業の施策としては、トリプル・スリー戦略を推進し、平成 33 年までに国内ビッグ 3 としての地位を確立す る。今期は、トリプル・スリー戦略に向けて、「DSP 重点三策」(スマートフォン・シフト、フル・ファネルソリューション、 人工知能「VALIS-Engine」)を仕掛ける。スマートフォンについては、これまで注力していなかったにも関わらず、売 上比率が上昇しているため、今期は、更なる比率向上に向けてギア・チェンジする。具体的には、クロスデバイス でのユーザー同定技術の研究開発、アプリ面への広告配信の強化に取り組むほか、ネイティブ広告対応を開始 する。 フル・ファネルは、ユーザーが商品を知ってから購入するまで、すべてのプロセスにおいてソリューションを提供 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 する取り組みである。まず、ダイレクト・レスポンスについては、ダイナミック・クリエイティブを投入する。ユーザーが 閲覧した商品と関連性の高い商品の広告を自動的に表示することにより、通常のバナー広告よりも高いクリック率 が期待される。ここに人工知能が使われており、ユーザーの媒体閲覧履歴や商品データベースを基に、ユーザー の関心が高いと推測される商品の組み合わせを自動的に決定し、最適なクリエイティブを生成している。現在は、 通信販売、不動産、人材業界に展開しているが、今後は金融、旅行業界への対応を行う予定である。 ブランディングについては、2 つの商品を投入する。1 つは、プライベート DMP を活用した潜在顧客ターゲティン グ広告である。人工知能をフル活用し、広告主にとって優良顧客になることが見込まれる顧客を高精度に見つけ 出して配信する広告であり、5 月より本格的に販売を開始する。2 つめは、テレビ CM リアルタイム連動広告である。 ゼータ・ブリッジ社のリアルタイム CM 自動認識システムを活用したもので、テレビ CM の放映直後にインターネット 広告を流し、クロスメディアでの相乗効果を狙う。 「VALIS-Engine」については、DSP のメインシステムで本格稼働する予定である。「VALIS-Engine」の用途は、オ ーディエンス、クリエイティブ、プライス、タイミングに分類されるが、今期は特にプライスとタイミングに注力する。プ ライスは、広告キャンペーンに対する各ユーザーの反応を予測し、オークションの入札価格に反映させるものであ る。タイミングは、時間帯に加え、ユーザーの興味関心のステージに即した広告を適切なタイミングで配信するも のである。 中長期的には、グローバル構想、Digital Marketing Hub 構想、VALIS 構想で成長を目指す。グローバル構想に ついては、アジア展開の橋頭保として、台湾に子会社を設立し、So-net 台湾との協業により、DSP 事業の垂直立 ち上げを目指す。Digital Marketing Hub 構想は、「最適なマーケティング施策」を「最適なタイミング」、「最適なチャ ネル」で提供可能な世界を実現する構想である。VALIS 構想としては、幅広い事業領域で「VALIS-Engine」を活用 すべく、研究開発投資を加速していく。 (平成 28 年 5 月 11 日・東京) 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。