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地域の魅力の要素・視点

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地域の魅力の要素・視点
第1節
1
地域の魅力の要素・視点
魅力の要素
広大な大地、自然、文化、そこに住む人々…。
北海道には、豊かな地域資源がある。それに魅せられて多くの人々が訪れる。
しかしながら、道内の多くの地域では、基幹産業である農林水産業の低迷や過疎化、高
齢化などの進行によって地域活力の衰退に悩まされている。
このような中で、各々の地域では、地域特有の自然、文化を生かした新たな産業づくり
や街づくり・景観づくり、イベントなど、多種多様な魅力づくりを模索している。
魅力とは、人の心を引き付ける力である。
地域の魅力とは、見せかけでなく、人々が「長くそこに住み続けたい 」、あるいは「是
非そこへ行ってみたい 」、「また来たい」などと、自然に思うことができるような地域が
持つ力である。
その地域の魅力には、自然や歴史、文化、産業など地域に存在する資源がそのまま地域
の特性となり魅力となっているもの、イベントなど新たに創出したものなど、様々なスタ
イルを見ることができる。
それらを分類して整理したものが表1−1である。
表1−1
区
分
内
地域の魅力を構成するもの
容
自
然
生態系、景観、恐竜の化石、地形、森林など
歴
史
歴史的建築物、歴史上の人物、寺社など
産
業
一次産業、鉱業、製造業、発電所、物産、インフラなど
文
化
芸術作品、祭り、民謡、アイヌ民族文化など
生
活
生活用品、言葉、民芸品、里山など
その他
上記区分に関連したイベント、上記の複合したものなど
「北の世界遺産」推進方策検討プロジェクトチーム中間報告書(平成10年5月)をもとに作成
2
魅力づくり
(1)魅力づくりの考え方
地域の魅力には、実に様々な要素がある。したがって、地域ごとの個性、特徴、魅力は
実に多彩なものとなる。その要素をうまく利活用することにより活性化にもつながってい
く。
地域の魅力を創り出す上で、何よりも重要な視点は、現在そこに住んでいる人が、「こ
の町にずっと住み続けたい」と感じることである。それには、そこに住んでいる住民が満
足できるかどうかがポイントになる。すなわち、地域住民が豊かな地域資源の魅力を十分
に認識し、最大限活用しながら、主体的に魅力を高めていくことが重要である。
そこに住んでいる人が地域に対して満足できるということは、結果的に多くの人々が訪
れることにもつながる。地域以外の人々からの評価があって、自分の周りを改めて見るこ
とや新たな発見という地域への再認識を促すこととなり、それがまた資源の活用につなが
り、そして再び外からの評価を受けるという循環になる。
(2)魅力づくりの視点
ア 内発型の魅力づくり
これまで多くの地域では、行政が主導する形で基幹産業の振興を図るとともに、企業誘
致などによって外部資本を導入した地域活性化施策を進めてきた。
しかし、高度化、多様化する住民ニーズや「ものの豊かさ」から「心の豊かさ」を求め
る人々の増加、バブルの崩壊や景気低迷といった近年の経済情勢からは、企業誘致やリゾ
ート開発などを地域の活性化に結び付けることは非常に難しくなってきている。
このような状況において、今後の地域づくりを考えたとき、企業誘致など地域産業との
関連を十分に持たないこれまでのような取り組みは、必ずしも住民が満足できる魅力とつ
ながっていくことは難しい。
地域の魅力づくりに当たっては、まずそこに住んでいる住民が主人公であるという認識
に立ち返る必要がある。
北海道においては、全道的な地域づくり運動として、1984 年から「一村一品運動」が
展開された。
この運動は、道民一人ひとりの中に、地域に誇りを持ち、強くたくましい地域社会を育
て上げようとする意欲を呼び起こすことを狙いとしたものであった。全道各地に意欲的な
地域のリーダーを誕生させ、ユニークなイベントやものづくりなど、創意と工夫を凝らし
た魅力づくりが活発に展開される大きな契機となった。この運動を通して、地域に対する
住民意識の向上や、地域の活性化、産業の振興が図られるなど、一定の効果を挙げた。
しかし、そのスタートから 15 年が経過した。今では、人々の多様なライフスタイル、
ゆとりや心の豊かさを求める新しい価値観など、地域を取り巻く環境は大きく変化してい
る。これまで以上に、地域の個性や特徴を強く意識した新たな魅力づくりへの取り組みが
求められている。
また、地方分権の時代を迎え、地域の問題は地域自らが主体的に取り組んでいくことが、
重要となっている。
例えば、胆振支庁管内には、東に日高山脈、北に夕張山地の裾野を望み、自然愛好家た
ちの間では、たんぽぽ群生日本一の町として知られる鵡川町がある。
この町は、柳葉魚(1995 年に町魚として制定されている)が遡上する川を持ち、また、
船により木材などの工業製品を運ぶ町として栄えていたが、交通機関の発達や一次産業を
取り巻く厳しい環境などにより過疎化の波が押し寄せてきたのである。
このような中、町においては、10 年程前から地域資源を生かした取り組みとして、た
んぽぽ群生日本一の啓発を狙いとした「たんぽぽフェスティバル」や貴重な柳葉魚を広く
町民等に知ってもらう「ししゃもシンポジウム」を開催し、町民のレクリエーションと連
帯意識の醸成を図っている。町では、こうした活動が単なるイベントで終わることのない
ように 、「鵡川プロデューサー大学」を設立し、まちづくり活動家の育成に努めている。
現在では、この大学によって、町の宝を発見する「大人の遠足」や、講師を招いて自治体
のイベントづくりを学び合う「夜なべ談義 」、町の「宝の地図 」の作成などを行っている。
こうした様々な活動を通して、わが町を改めて見直すことやわが町に対する愛着が受講生
のみならず町民の間にも、少しずつ芽生えてきている。
また、後志支庁管内の黒松内町は、ブナ原生林の北限の地である。
黒松内町では、まちづくりグループなどの意見を反映させながら、ブナ林を活用して、
「歌才自然の家」や「オートキャンプ場」といった交流拠点施設を整備している。その結
果、年間 12 万人の人が訪れているなど、地域資源を生かした魅力づくりと交流促進が図
られている。この取り組みの背景には、ブナ林の持つ水源かん養機能の維持という、町民
の理念、考え方がある。
今後の魅力づくりを進めるに当たっては、ここで示した二つの事例のように、現在住ん
でいる住民を主体とした魅力づくりを基本とすべきである。地域の人たちが自分たちの生
活を維持しながら、どうすれば、愛着心や誇りを持って暮らせるのかを追及し、またその
地域に合った産業や生活をどのようにして創り出していくのかが重要なのである。
イ 人口増加を目標にしない
北海道においては、札幌周辺への人口集中が進む一方、全道の 85 %に当たる 180 市町
村で人口が減少しており(1995 年の国勢調査)、過疎に歯止めがかからない状況が続いて
いる。
地域で生活する人々が、一定レベルの経済活動やコミュニティー活動を維持していくた
めには、ある程度の規模の人口を維持・確保していくことは必要である。しかし、今後、
地域の魅力を検討するに当たっては、必ずしも人口増加を一義的な目標とはせず、現在住
んでいる人がそこから出て行かなくても良い地域、住民が地域に愛着や誇り、満足感を得
ることができるような魅力をどうつくっていくかという視点が、より強く意識されて良い。
住民の満足度の高さは、結果として、新たな住民の招来やUターン、都市住民の来訪など
にもつながっていくことになる。
例えば、胆振支庁管内西部に壮瞥町がある。
この町は 、「昭和新山国際雪合戦」発祥の地である。この雪合戦は、今や道内外はもと
より、フィンランドやノルウェーなど海外の人々も参加する国際的なスポーツイベントと
なった。
1989 年から始まったこのイベントの誕生には、住民の熱心な取り組みがあった。壮瞥
町は、昭和新山や洞爺湖に面する道内有数の観光地である。しかし、観光客は夏に集中し
ていた。何とか冬期間にも人を呼び込む方法はないかと、町の若者たちが中心となり検討
を重ねた結果、何かとわれる雪を逆に利用し、雪国古来の雪合戦にルールを制定し生まれ
たものである。
これにより、現在ではイベント期間の2日間で 200 チーム、約 2,000 人の参加者を含め
2万人の観光客が壮瞥町を訪れるようになり、洞爺湖周辺地域の冬期間の来遊観光客の増
加につながっている。
壮瞥町では、地域資源の活用、課題克服に向けて、住民自らが知恵と汗を出し合った。
その結果、観光客が増加した。そして何より、自らの地域に対する愛着や誇りを感じるこ
とにつながっている。
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