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レジュメ(一括)

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レジュメ(一括)
平 成 2 0 年 度 日 本 保 険 学会 シ ン ポ ジ ウ ム
自 由 化 の 言平 価 と 消 費 者 利 益
- 損害保険業を 中 心 に -
慶應義塾大学
堀 田 - 吉
報告 の 目 的
①戦 後 保 険 政 策 の 特 徴 を 整 理 し た 上 で 、 保 険 自 由 化
へ の 政 策 転換 に 至 る 経 緯 と 必 然 性 を 考 察す る 。
②保 険 自 由 化 後 の 損 害 保 険 市 場 の 構 造 変 化 に つ い
て 、 統計 的 分析を行 い そ の 成果を見る 。
③保 険 自 由 化 に よ る 経 営 戦 略 の 多 様 化 が 、 消 費 者 利
益 に ど の よ う な 影響 を 与 え 、 ま た 問 題 を 抱 え て い る
か に つ い て考察す る 。
④保 険 市 場 を 取 り 巻 く 環 境 変 化 を 踏 ま え て 、 保 険 自 由
化が果た した意義 と課題を考える 。
目
次
窯 戦後 保 険政 策 の 転換 と意 義
2 . 保 険 自 由 化 がもた ら した構造 変 化
3.経営戦略の 多様化 と消 費者利 益
4 . 保険市場 の 環境 変 化 と損害保険 業
の 将 来 課題
乱 戦後 保 険 政 策 の 転換と意 義
( 1 )護送 船 団 行 政 の 功 罪
l ツ
一 メI ツ
. 幼 稚産 業 と して の 保 険産 業 ・ 「 二 重 の 非効 率 」 ( 効 率 企 業 の
の 保護育 成
超過 利 潤 獲得 と 非効 率 企 業 の
・ 保 険市 場 の 安 定 性維 持
存続 ) の 温存
. 破綻企 業 の 発 生 回 避
. 政 府 権 限 の 集 中 と 認可 行 政 の
. 政府 に よ る 保 険産 業 に 対す 非効 率
る効 果 的コ ン ト ロ ール
. 行政コス トの 増 大と過重な 国
民負担
・ 保 険会 社 な ら び に 消 費 者 の 自
己 責任意識の 欠 如
乱 戦後保険政 策 の 転換 と意義
(2 )政 策 転換 ( = 保 険 自 由 化 ) へ の 背 景
①護送船 団 行 政 の 非 効 率 に 対 す る 認識の 高 ま り
②保 険市 場 の 飽和 化 に よ る 収 益 低 下 の 中 で 、 新
た な 事 業 領域 へ の 進 出
③付 加 価 値 の 高 い 金 融保 険サ ー ビ ス の 提 供 に よ
り 、 金 融機 関 と し て の 地位 向 上 を 目 指す
④消 費 者 ニ ーズ の 多 様 化 と社 会 的 要 請
⑤海 外 か ら の 規制 緩 和 ・ 市 場 開 放 の 強 い 要 求
(3)保 険 自 由 化 に よ り 期 待された 効 果
乱 戦後保 険政策 の 転換と意義
①保 険料 率 ( 価 格 ) の 低 下 ( = 消 費 者 余 剰 の 拡 大 )
②事 業 領域 の 拡 大 と 保 険市 場 の 活性 化 ( = 第 3分
野保 険 の 自 由 化 、 販 売 チ ャ ネ ル の 自 由 化 な ど )
③新 し い 保 険商 品 の 開 発 と 消 費 者 選択 の 多 様 化
④消 費 者意 識 の 高 揚 ( = 外 部 効 果 の 可 能 性 )
⑤行 政 コ ス ト の 軽減 ( = 行 政 認 可 に 関 す る 機会 コ
ス トの 節約 )
嶬参考腺“ ‘ “'・“““““■界“‘““向
・
1 996 年4 月
保険業法 の 改正 ( 生損保相 互参入 、 商 品 ・ 料率の 届 け 出 制 導入 、
保 険ブ ロ ーカ ー制 度 の 導入な ど )
・
1 9 96 年 1 2 月
日 米保険協議合意 ( 算定会 料率使 用 義務 の 廃止 、
リ スク細分型保険の 認可 、 第 三分野保険の 販売認可など)
・ 僅 9 97 年 9 月 リ ス ク 細 分 型 自 動 車 保 険 の 販 売 認 可
・ 也 9 98 年 6 月 金 融 シ ス テ ム 改 革 法 成 立
・ 僅 998年7 月 算定 会料率 の 遵守 義 務廃止
・ 1 998 年 1 2 月 業 態 間 の 相 互参 入 解 禁 保 険 契 約 者 保 護機 構 の 創 設
・ 200 1 年4 月 消 費 者 契約 法 、 金融商 品 販売法施行
・
保険商 品 の 銀 行 窓 販解禁 代 理店 制 度 の 自 由 化
・ 2 0 0 1 年 8 月 本 体 に よ る 第 三 分 野 保 険 へ の 参 入 規 制 撤廃
・ 2 0 02 年 笹 月 銀 行 窓 販 の 対 象 種 目 拡 大
・ 2 0 05 年 4 月 個 人 情 報 保 護 法 の 全 面 施 行
・ 2 0 06 年 4 月 少 額短 期 保 険 業 制 度 導 入
・
2 0 06 年 僅 2 月
銀行窓 販の 全 面解禁
・
2 0 07 年4 月
かん ば生命保険の 発 足
・
2 0 07 年 9 月
金 融商 品 取 引 法 施 行
2 . 保険 自 由 化 がもた ら した構造変 化
( ○販 売 チ ャ ネ ル 改革 の 推進
代理 店 数 と 平 均 代 理 店 手 数料 の 推移
れ儒 99
006年)
9966 ~
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369
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3 50
代理店数
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342 1 9 1
323 1 39
代理店 あた り 手 数料
‐ 2 50
資 料 ) 「 イ ン シ ュア ラ ン ス 損 害 保 険統計 号 」 各 年 度 版 よ り 筆者 作 成 。
8
鬘ず
2 . 保 険 自 由 化 が もた ら した構造 変 化
(2 )市 場 集 中 化 ・ 寡 占 化
市 場 集 中 率 と会 社 数 の 変 化
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1 998
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200 1
2002
2003
2004
2005
2006
注 ) 元 受 正 味 保 険料で測 定 したも の
資料) 「インシュアランス損害保険統計号」 よ り 筆者作成 9
2 . 保 険 自 由 化 がもた ら した構造 変 化
(3 )損 害 率 の 上 昇 、 経 費 率 の 減 少
損 害 率 と経費 率 の 推移
( 自 動 車保 険 )
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200 1
2002
2003
攣地軸 合 計
2004
2005
2006
資 料 ) 「 イ ン シ ュ ア ラ ン ス 損 害 保 険 統 計 号 」 各 年 度 版 よ り 筆者 作 成 。
2 . 保 険 自 由 化 がもた ら した 構造変 化
(4)価 格競 争 の 進 展
契約件数と一件 当 た り
平 均 保 険料 の 推移 ( 自 動 車保 険 )
5 3 000000
7 6 000
鬮嚢 契 約 件 数
円
三鞭- 1 件 当 た り 平 均 保
5 2000000
フ 4000
5 1 000000
7 2 000
5 0000000
7 0000
71
4 6000000
6 6000
47 000000
68 000
4 8 000000
49 000000
64000
1 999
2 000
200 1
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2003
20 04
2005
2006
資 料 ) 「 イ ン シ ュア ラ ン ス 損 害 保 険統計 号 」 各 年 度 版 よ り 筆 者 作 成 。
2 . 保 険 自 由 化 がもた ら した構造変化
(5) 利 益構造 の 変 化(①
保 険 引 受 利 益 と 資 産 運 用 利 益 の 推移
( 過去5年 )
三 井住 友 海 上
損 保ジャパン
東 京 海上
1 20G 億 円
1 0 00
1 0 0 0 一800
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1 2 00
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円
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2003
2004
20 0 5
離 保険 引 受 利 益
2006
20 0 7
窯 資 産 運 用 利益
醗 保険引受利蕊
. 資産運 用 利益
600
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醍 探険 引 受 利益
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資 料 ) 各 社 ディ ス ク ロ ー ジ ャ ー 資 料 よ り 筆 者 作 成2
2 . 保険 自 由 化 がも た ら し た構造 変 化
(5 ) 利 益構造 の 変 化(②
参 考 : 事 業 分 野別 に み る 収 益 傾 向 ( 東 京 海 上 H D )
1 400億 暫- --- …{ ・ し‐… ‐ … ----“- 」{- - -- - - - -}" " " {… }“--}…- ^-- 医 “ - “- - ……“~{
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2007
注) 修正 利 益による数値
資 料 ) ディ ス ク ロ ー ジ ャ ー 資 料 よ り 筆者 作 成
2 . 保 険 自 由 化 がも た ら した 構造 変 化
小 括
①販 売 チ ャ ネ ル 改 革 ( 代 理 店 選 別 ・ 体 制 見 直 し 、 販 売 コ
ストの見直し)
②市 場 集 中 化 ・ 寡 占 化 ( M &A ・ 経 営 統 合 ・ グ ル ープ 化 )
③損 害 率 の 上 昇 、 経 費 率 の 減 少 ( 収 益 性 の 低 下 )
④価 格 競 争 の 進 行 ( 一 件 当 た り 保 険 料 の 低 下 、 通 販 型
保 険の 浸透 に よる価格競争 )
⑤ 国 内 保 険収 益 の 低 下 と 海 外 保 険事 業 へ の 積 極 展 開
保
自 由 化 以降 は 、 収益 力 の 格差が顕著となる
3 . 経営 戦略 の 多 様化 と 消 費 者 利 益
( ○保 険 自 由 化 以 降 の 経 営 戦 略 の 多 様 化
● 1 9 97 年 9 月 の リ ス ク 細 分 型 自 動 車 保 険 を 販 売 認可 に よ り 、 外 資 系 保 険 会 社 が 通
販チ ャ ネ ル に よ る 市 場 参 入 。 ( 二 価 格 破 壊 の 開 始 )
● 国 内 保 険 会 社 は 、 価 格 競 争 に 追 随す る こ と を 避 け て 、 特 約 付 加 に よ る 商 品 差 別 化
を 図 り 、 サ ー ビ ス 競争 を 展 開 (ex. 人 身 傷 害補償特 約 、 レッ カ ー移 動 費 補償 、 な
ど)=> そ の 結 果 、 一 時 的 に は 、 平 均 保 険料 は 上 昇 。
● 一 方 、 価 格 対 抗 ・ 経 費 削 減 に 向 け て 、 代 理 店 チ ャ ネ ル 改 革 が進 行 し 、 代 理 店 手 数
料 の 自 由 化 に よ り 、 代 理 店 の 選 別 が進 行 。
● 価 格 競 争 は 、 国 内 保 険 会 社 も 、 当 初 の 企 業 向 け 保 険 か ら 、 個 人 向 け 保 険へ 拡 大 。
( リ スク細 分型 保険販売 、 各種割 引 導入な ど) 。 二>結果 的 に 、 平 均 保険料 は低下 、
収益の 悪化 。
● グ ル ー プ会 社 化 を 通 じ て 、 各 社 独 自 の さ ま ざま な ビ ジ ネ ス モ デ ル を 模 索 。 ( 価 格 戦
略 の 複 雑 化 、 生 保 と の 販 売 提携 、 通 販 会 社 の 設 立 な ど )
保
料率 と 。 品
組み合
せた , 高度 か つ複雑な経営戦略へ
( 2 ) 経営 環境 の 変 化 と経営 戦略
※ 人 口 減 少社 会 の 到 来 、 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 、 恒 常 的 な 低 成 長 経 済な ど 、
保 険 市 場 に は 大 き な 外 生 的 要 因 が 影響 を 及 ぼ し て い る 。
( り資 本 提 携 や 合 併な ど 業 界再編 成 お よ び事 業 再編 成
( = )保 険 自 由 化 に よ る 自 動 車保 険 ・ 火 災 保 険 の 収 益 力 低 下
畑 i )相 対 的 に 資 産 運 用 収 益 の ウ ェ イ ト 増 大
(N)海外 保 険事 業 へ の 積極 的 進 出
(v)事 業 体 制 に よ っ て 、 ビ ジ ネ スモ デル の 多 様 化 = >他 の 事 業 領域 を 取 り 入 れ
た 総合 的戦略
こう したダイナミックな構造変化 につ いても ,
ノJ ~ な か ら “ 保 険 自 由 化 に 起 因 掌 る も の で あ る 。
3 . 経営戦 略の 多 様化 と 消 費者 利 益
(3)保 険 自 由 化 と 消 費 者 利 益
◎保険 自 由 化 に よっ て 、 保険料率の 低下 、 保険商 品 の 選択 多様化 、 消 費者意識の 高
揚など にお いて は 、 一 定 の 効果 が認め られる 。 ただ し 、 料率格差 の 拡大 や顧客対象
の 選別 限 定な ど 、 そ の 利 益 は 均 等 に配分されたわ けで はな い 。
恒)消 費者 自 身 の価格志 向 とサービス 志 向 の 二極化傾 向 、 保険加 入チャネルの選択 多
様化 が見 ら れる 。 ( cf. 2007 年 度 の 自 動 車保険通販 の シェア7 .4% )
{i i n保険情報 に関 して は 、 氾濫傾 向 がみ られ 、 と り わ け リ テラシー (情報理解 力 ) の 低い
消 費 者 に とっ て は 、 適 正 な商 品 選択が 困 難な状 況 に あ る 。
(iv)商 品 多様化 の 行き過ぎを一 因 とする保険金不 払い 問 題の 発生 に よ り 、 保険会社 に
対す る信頼 は 著 しく低下 して い る 。 ただ し 、 問 題 の 本 質 は 、 業界側 の 自 由 化 へ の 認
識不 足 に あ り 、 保険 自 由 化 自 体 が 問 題であっ たわ け で はな い 。
(v)行政コ ス ト の節減効 果 につ いて は 、 今後 の 詳細な検証が必要である が 、 公正な競争
を実現する た め に は 、 行政監視コ ス ト やセーフティネッ ト ・ コ ス ト は不 可 欠 であ る 。
総合 的 に み る と 保
自 由 化 茨 制緩和 は 消
た と判 断 しう る が 、 残された課題も 多 い 。
者利益 増進し
“
保険 自 由 化 時代の 保険契約者の 立場
(利潤動機に基づ く
( リ ス ク 回 避動機 に
商 品 開発)
臼 煎 な 選択
基づ く 保険加 入)
ニ ー ズの表示
保 険契約 者
保 険企業
情報 入 手
く 経 営 責任 )
● 公正 な 自 由 競争の 監視
● 消 費 者保護の た め の 諸施策 ノノ
⑪
く 行政責 任 )
「 保 険△ 生 還 " 時代 で
\
\、
く選択 責任 )
● 選択 判 断 の た め の 情 報提 供
● 世 論の 形 成 、 保険教 育 ・
啓蒙
④
( 社会 的 責任)
と 口 時 に 「 操陰会社 か ら 選 ばれる 時代 」 に
4, 保 険市 場の 環境変 化 と 損害保 険業 の 将 来 課題
( 1 ) 損害保険業を め ぐる 環境 変化
・ 人 口 減 少社 会 の 到 来 ( 自 動 車 保 有 台 数 、 住 宅 着 工
件 数な ど の 低迷 )
・ 金 融 不 安 定 経 済 ( = 金 融 リ ス ク の 拡 大 連鎖 )
・ 経済不 況 と 家 計 ( 保 険) リ ス トラ
・ 国 内 市 場 の 飽和 化 、 規模縮 減 的 傾 向
・ 消 費 者ニーズの 多様化 ( = 多 品 種少量 時代 )
・ 自 然 災 害 リ ス ク の 顕在 化 ・ 巨 大 化
・ 販売チャネル改革 の 進行 ( 銀行 窓 口 販売 、 インター
ネ ッ トな ど の 多 様 化 )
4. 保 険市場 の 環境変 化 と損害保 険業 の 将来 課題
(2) 保険 自 由 化 と損害保険業 の 課題
・ 販売チャネル に お ける経営効 率化 の 促進
・ 消 費 者 ニ ーズ の 掘 り 起 こ し と 商 品 開 発
・ 海外事 業展 開へ の 動き と経営戦略
・ 縮小市場 に お ける ビ ジネスモデルの 構築
・ 資産運用 利 益へ の ウ ェイ ト増 大 と金融 リ スク
管 理体制 の 確立
・ 利 益志 向 と消 費者重視の 両 立 ( 企 業 の 社会 的
責 任 ( CS R) の 遂 行 )
総括
① 自 由 化 後 僅 0 年を 振 り 返 る と 、 保 険 自 由 化 は 、 保 険市 場 の 構造
変化 に 多 大なインパク トを与えた 。
②そ の 間 、 保 険 自 由 化 に 対 応 す る た め に 、 保 険会 社 は さ ま ざま
な経 営 戦 略を 講 じ て お り 、 ビ ジ ネ ス モ デ ル も 多 様 化 し て い る 。
③全 体 と して 消 費 者 利 益 は 増 進 し た も の の 、 そ の 利 益 は 均 等 に
分 配 さ れた わ け で は な い 。 一 部 に 、 契 約 者 間 の 利 益 享 受 に 格
差 が 存 在 し て お り 、 そ の 行 き 過 ぎ に 対 して は 、 是 正 措置 が 必
要である 。
④保 険 自 由 化 の 下 で は 、 あ く ま で も 市 場 規律 が尊 重 さ れ る べ き
で あ る が 、 そ の た め の 環 境 整 備 と し て ;肖 費 者 自 立 に 向 け た
一 層 の 企 業努 力 が求め られる 。
⑤ 人 口 減少社 会 の 到 来 、 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 な ど の 保 険 業 の
将来を取 り 巻く厳 しい経営 環境を鑑みる と 、 保険 自 由 化 は 不
可避的な手段であ った 。
2乍
参考文献
井 口 富 夫 ( 200 8 ) 『 現 代 保 険 業 研 究 の 新 展 開 - 競 争 と 消 費 者 利 益 - 』 NTT 出 版 .
久 保 英 也 (2007) 「 日 本 に お け る 保 険料率 自 由 化 が 損害 保 険 業 の 経 営 効 率 に 与 え た 影響 」 『 損 害
保 険 研 究 』 6 8 巻4号 .
M e ler, Ken n eth J . ( 僅 988 ) , 古ねe Po′′r!Ca/ Economy oず RegU′a"○“ 訪ねe Case o"“Su摺りCe,
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69 巻 3号
日 本 保 険 学 会 平 成 乍 0 年 度 大 会 共 通 論 題 「 金 融 ビ ッ グ バ ン と 保 険 業 」 『 保 険学 雑 誌』 563号 .
柳 瀬典 由 他 (2007) 「 規制 緩 和 後 の わ が 国 損 害 保 険 業 の 再編 と 効 率性 ・ 生 産性へ の 影響 」 『損害
保 険研 究』 69巻 3号 ,
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号。
堀 田 一 吉 (2002) 「 戦 後 保 険 業 の 発 展 と 保 険政 策 の 転換」 庭 田 範秋編 『新世 紀 の 保 険』 慶應 義 塾
大学 出 版会 .
堀 田 一 古 (2003) 『 保 険理論 と 保 険 政 策 - 原 理 と機 能 - 』 東 洋経 済新報社 .
【 平成 2 0 年 度 日 本保 険 学会 大 会 】
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 l o 年 の 検証」
レ ジ ュ メ ; 米 山高生
戦後型保険 シ ス テ ム の 転換 - 生命保険 の 自 由 化 と は何だ っ た の か ? 一橋 大学
1 .
米
山
高
生
は じめに
われ われ は 、
『保 険 の 産業分水嶺』 1 で 、 第 二次大戦後長 く 続い た保 険 シ ス テ ム が 産業分
水嶺 に 差 し か か っ て い る と 述べ た 。 ピ オ リ = セ ー ブル は 、
『第 二 の 産業分水嶺』 に お い て 、
1 980 年代 は じ め に 大企業 に よ る 大量生産体制 の 転換 を 予告 し た が 、 保 険業 の 産業分水嶺 は製
造業 よ り も 遅れ た。 保 険業 の 産業分水嶺 を 戦後 型保 険 シ ス テ ム の 転換 と 考 え る な ら ば 、 1 980
年代 に お い て 新 し い シ ス テ ム に 転換 し た と し て も 不 思議 で は な か っ た 。 と い う の は 、 1 980 年
代 に はす で に 、 戦後 の 特殊 な 状況 の 中 で 生誕 し た戦後 型保 険 シ ス テ ム 2 が 存在す る 根拠 は 、
あ ら か た 失 われ て い た か ら で あ る 。 し か し な が ら 、 と く に プ ラ ザ合意 以 降 に 生 じ た わ が 国 の
過熱 し た 経済 が 、 保 険市場 に 影響 を 及 ぼ し 、 見せ か け の 生保需要 の 増 大 に よ り 、 構造転換の
時期 を 引 き 伸 ば し て し ま っ た 。 第 2 節 で は 、 自 由 化後 の l o 年 間 を 考 え る 大前提 と し て 、 戦
後 型保 険 シ ス テ ム の 特徴 と そ の 歴 史 性 を 明 ら か に す る 。
バ ブル経済 が 崩壊 し た 1 990 年代 に は 、 生命保 険業界 に数 々 の 苦難が 襲 っ た。 第 3 節 で は 、
バ ブル経済 の 崩 壊 が も た ら し た 1 990 年代 の 苦難 と 保 険 ・ 金融 に 関連す る 環境変化 に つ い て
検討 を加 え る 。 と く に保 険が 90 年代 に 至 っ て よ う や く 保 険 シ ス テ ム の 転換が 始 ま っ た と い
う 観点 か ら 分析 し た い と 思 っ て い る 。
そ も そ も 産業分水嶺 と い う 考 え 方 は 、 産業や技術の 発展 の 初期 段 階 に お い て 、 水 の 性質 よ
り も、
「 水 の 流れ方 向 」 が 決定 的 に 重要 で あ る と す る も の で あ る 。 保 険業法 の 改正 に 取 り 掛
か っ た 大 き な 理 由 は 、 戦後 型保 険 シ ス テ ム の 設計理念 を 見 直 し 、 新 し い理念 の も と で保 険 の
制 度設 計 を 行 う と い う こ と で あ っ た か と 思 う 。 戦後 型保 険 シ ス テ ム の 設計理念 は 、 競争 を 組
織化す る こ と に よ っ て 産業 を 安 定化 し 、 そ れ に よ っ て 保 険サ ー ビ ス の 長 期 的信頼性 を 確保 し 、
1 田 村祐一 郎 (縞) 小林篤 、 宇野典明 、 田 畑廉人 、 米 山 高 生 『保険 の 産業分水嶺』 千倉書房 、 2002 年。
2 戦後 型保 険 シ ス テ ム は 、 生保 に も 損保 に も 共通 し た シ ス テ ム で あ る と 考 え て い る 。 た だ し 第 2 節 で指摘す
る よ う る こ 生保 と 損保 で は 、 戦後 の 出 発 点 の 初期 条件 が 異 な っ て い た た め に 、 特徴 の 現れ方 が 異 な っ て い た 。
本報告 は 、 主 と し て 生保 を と り あ つ か っ て い る の で 、 戦後 型 生命保 険 シ ス テ ム と 読 ん で い た だ い て も 構 わ な
し 、。
虻 平成 2 0 年 度 日 本保 険 学 会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ : 米山高生
も っ て 契約者保護 を は か る と い う も の で あ る 。 こ れ に 対 し て 、 新 し い 制 度設 計理念 は 、 自 由
化 に よ っ て 生 じ る 効 率性 と 利便性 を 保 険契約者 に 還元す る と い う も の で あ る 。 保 険業法 の 改
正 と そ の 後 の 「 自 由 化 」 は 、 も はや 「 水 の 流れ の 方 向 」 が 元 に 戻 る こ と が な い と い う こ と を
決定的 に示す も の で あ る 。
しか しなが ら、
「 水 の 流れ の 方 向 」 が 定 ま っ て い て も 、 谷川 か ら 支流 と な り 大河 と な る ま
で に は様 々 な 要 因 が 複雑 に 絡み合 っ て く る 。 1 990 年代 に はバ ブル経済 の 影響 に よ っ て 、 新 し
い 保 険 シ ス テ ム へ の 転換 が ス ト レ ー ト に 進 展 し な か っ た 。
第 4 節 において は、
「水 の 流れ の 方 向 」 は 定 ま っ た が 、 い っ こ う に 大河 と な ら な い よ う に
見 え る 中 で 、 生命保 険 の 自 由 化 が ど の よ う に進展 し た の か に つ い て 具体 的 に 検討 し 、 そ の 結
果 も た ら さ れ た 効果 に つ い て 考察す る 。 本来 は 、 イ ベ ン ト ス タ デ ィ ー 等 の 実証研究 の 成果 に
も と づ い て 、 分析 的 な議論 を す る 必要 が あ る が 、 残念 な が ら わ が 国 に お け る 保 険産業 を 対象
と し た 実証研究 は豊 富 と は い え な い 。 本報告 で は 、 実務 家 へ の イ ン タ ビ ュ ー と 記述 統 計分析
に よ っ て 課題 に 答 え た い。
最後 に 、 第 5 節 に お い て 、 わ が 国 の 生命保 険産業 の 将来像 に つ い て 、 生保経営 、 規制 監督
お よ び 消 費者 の 立場 か ら 考 え る こ と に す る 。
2 . 戦後型保険 シ ス テ ム の 特徴
( 1 ) 戦後型保険 シ ス テ ム を成立 さ せ た歴史 的条件
20 世紀 を 振 り 返 る と 世界 史 的 な 転換点 は 第一 次世界大戦 で あ る が 、 日 本 に と っ て の 転換点
は 第二次世界 大戦 で あ る 3。 保 険 シ ス テ ム と い う 観点 か ら み て も そ れ は 同 様 で あ る 。 ま さ に
第 二 次世界大戦 の 敗戦 と い う 歴史 的 条件 の 下 で 、 戦後 の 保 険 シ ス テ ム 4の 制 度設 計 が 行 われ
た の で あ る 5。
3 第 一 次世界大戦 が 世界史 に と っ て 転換点 で あ っ た こ と に つ い て は 、 ダ ニ エル . ヤ ー ギ ン 、 ジ ョ ゼ フ ・ ス タ
ニ ス ロ ー 著 、 山 岡 洋 一 訳 『 市場対 国 家』 日 本経 済新 聞 社 、 1 998 年 を 参 照 。
4 本報告 で よ く 使 われ る 「保険制 度」 と は別 に 『保 険 シ ス テ ム 」 と い う 耳慣れ な い概念 を 用 い た 理 由 は 、 こ
の 二 つ の 概念 が 次 の よ う に 異 な る も の で あ る と 考 え て い る た め で あ る 。 す な わ ち 、 制 度 は た と え ば商 品 認可
制 度 の よ う る こ 人為 的 に 設 計 さ れ た も の で あ る の に 対 し 、 シ ス テ ム は人為 的 に 設 計 さ れ た 制 度 が 集 ま っ て で き
た も の で あ る 。 た だ し 、 シ ス テ ム は 、 単 に 制 度 を 足 し 合 わせ た も の で は な く 、 一 つ の 制 度 を 取 り 除 く と 、 残
り の 制 度 の そ れ ぞ れ が 変 化す る よ う な 関 係 を も っ た 制 度 群 で あ る 。
5 戦 時期 の 変革や経験 、 た と え ば保険業法 の全面 改正や大蔵省 へ の 保険 監督 の移管 な ど が 、 戦後 に 活 か さ れ
た と す る 考 え方 も で き る。
2
竈 平成 2 0 年度 日 本保 険 学 会 大 会 薹
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ : 米山高生
と こ ろ で 、 戦後 復 興期 に お い て 、 生保 と 損保 の 出 発 点 が 異 な っ て い た と い う 事実 は 興 味深
い こ と で あ る 。 す な わ ち 生命保 険 は 、 需要 の 極端 な 不振 が 持続 し 、 損保 は経済復興 に よ る 保
険需要 を 満 た す供給 を 行 う だ け の 資本不 足 が 状態 で あ っ た 。 し か し 、 いずれ に せ よ 、 保 険会
社 の 経営 は安 定せず 、 産業 的 基盤 の 確 立 が 必 要 な 状態 で あ る こ と に つ い て は 共通 し て い た 。
こ の よ う な 初期 条件 の も と で は 、 保 険需要 を 安定 的 に 国 民 に提供す る と い う 便益 と 、 契約
者 が 割 高 な保 険料 を 負 担す る 損 失 を 比較す る と 、 社会 的 な観点 か ら 考 え る と 便益 の 方 が 大 き
か っ た。 そ こ で 、 監督官庁 は 、 価格規制 と い う 手段 を 主軸 に す え た保 険行政 に よ り 、 保 険会
社の利 益 を保 障す る こ と を こ よ っ て 、 保 険 の 健全 な成長 を促進 し 、 も っ て 契約者 の利 益 に か な
う こ と と 目 指 したのであ る。
( 2 ) 戦後型保険 シ ス テ ム の 特徴
構築 さ れ た 戦後 型保 険 シ ス テ ム の 特徴 は 、 初期 条件 が 異 な っ た に も か かわ ら ず 、 生保 も 損
保 も 良 く 似 て い た 。 次 の 二 つ の 特徴 が も っ と も 顕著 な も の で あ ろ う 。
第一 の 特徴 は 、 同 一 商 品 同 一価格 と い う 価格規制 で あ り 、 第 二 の 特徴 は 、 中 小 生保 の 保護
で あ る 。 同 一 商 品 同 一価格 の 達成 の 仕方 は 、 生損 で 異 な っ て い た。 損 害保険 は 、 料率算 出 団
体 に よ る カ ル テ ル価格 に よ っ て そ れ を 実施 し た の に 対 し て 、 生命保 険 で は 、 拙稿 に お い て 明
ら か に し た よ う に 、 大蔵省 の 商 品認可 プ ロ セ ス に お い て そ れ を 達成 し た6。 こ の よ う に 生損
で 手段 は 異 な っ て い た が 、 価格規制 に よ っ て も た ら さ れ た 効果 は 同 一 で あ っ た 。 す な わ ち 、
効 率性 の 高 い 会社 に レ ン ト が 発 生 し た が 、 そ の レ ン ト を 、 価格競争 に 投入す る こ と が 出 来 な
い の で 、 内 部留保 さ れ た り 、 機能 的競争 ( 鉦nctional comp et1tlon ) に 投入 さ れ た り し た 。 言
い換 え れ ば 、 自 由 競争で あ れ ば価格 を と お し て 消 費者 に 直接 的 に 還元 さ れ る べ き 部 分 が 効 率
の よ い 大 手企業 に 内 部 留保 さ れ た り 、 非価 格 的 な 競争 に 使 わ れ た の で あ る 。
中 小 の保護 は 、 上位企業へ の レ ン ト の 集 中 に よ っ て 、 中 小 が 脱落す る の を 防止 す る た め に
お こ ん われ た も の と 考 え ら れ る 。 こ の 考 え 方 は 「護送船団 行政 」 と も 呼 ばれ て い る 。 生命保
険産業 の 場合 、 中 小 生保 が 開 発 し た 新商 品 に つ い て は 、 大手 の模倣や追 随 を し ば ら く 遅 ら せ
る な ど の 手段 で 、 発 明 に よ る 利 益 を 補償 し た が 、 大手 の 新商 品 に つ い て は他社 の 追 随 を た だ
6 米 山 高 生 『 戦後 生命保 険 シ ス テ ム に お け る 企業 間 競争」
( 『保険 の 産業分水嶺』 に 所収) pp.26-28。
虻 平成 2 0 年 度 日 本保 険 学 会 大 会 溝
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 10 年の 検証」
レジュ メ ; 米山高生
ち に 認 め て 、 発 明 に よ る 利 益 を 補償 し な か っ た 。 大手生保 が 、 中 小 の 得意 と す る 単 品 の 医 療
保 険商 品 の 販売 を 長 い 期 間 に わ た っ て 禁止 さ れ て い た こ と も 良 く 知 ら れ た 事実 で あ る 。 損 害
保 険 の 場合 も 同 様 に積立型商 品 に つ い て は 「長総」 が 発 売 さ れ る ま で は 、 大手 が 販売す る こ
と は許 さ れ な か っ た 。
こ の 二 つ の 特徴 は 、 前述 し た よ う る こ 、 国 民 に 安定 し た 保 険サ ー ビ ス を 提供す る た め に は 、
やや高 め の 保 険料 と い う か た ち で 消 費者 が コ ス ト を 負 担 し て も よ い と い う 理念 か ら 導 かれ た
戦後 型保 険 シ ス テ ム の 下 で 生 ま れ た も の で あ る 。
3 . バ ブル経済 と そ の崩壊 が 生命保 険業 に も た ら し た も の
( 1 ) 1980 年代 の 生命保険
1 980 年代 の 生命保 険市場 は 、 大手生命保 険会社だ け を 見 て い れ ば 「静か な海 と 幸福 な 航
海」 の よ う に 見 え た が 、 水 面 下 の 状 況 を み る と ま さ に 大 き な 変容 の 時代 で あ っ た 。 と り わ け 、
1 980 年代 の 中 堅 生命保 険会社の 経営者 に と っ て は 、 戦後 生命保 険 シ ス テ ム の 中 で変化 の な か
っ た 企業順位 と い う 「 業界秩序」 を ひ っ く り 返す こ と の で き る 時代 と う つ っ た に 違い な い。
と く に プ ラ ザ合意後 の 時代 は 、 業界全体 が 右肩上 が り の 中 で 、 金融商 品 と し て 華 々 し く 登
場 し た 一 時払養 老保 険や銀行提携 の 個 人年金 な ど が 急激 に 売れ始 め た 。 こ の よ う な 新 し い 商
品 が 市場 で受 け 入れ ら れ、 中 小 生保 に企業順位 の 上昇 の 希望が 見 え て く る こ と に よ り 、 戦後
保 険 シ ス テ ム が 大 き く 転換す る よ う に 見 え た が 、 そ れ は幻想 で あ っ た 。 拙著 で も 明 ら か に し
た よ う に7 、 1 980 年代 の 生命保 険企業 の 変 動 は 、 中 小 生保会社 の 保有す る 商 品 ポ ー ト フ ォ リ
オ の 変化 に過 ぎず 、 戦後 生命保 険 シ ス テ ム の 内 部 で変容 は あ っ た が 、 シ ス テ ム が 転換 し た と
は言 い が た い も の で あ っ た。 そ の 証拠 に 、 l 980 年代後 半 に 企業順位 の 大 き な 変化 が あ っ た に
も か か わ ら ず 、 1 990 年代 は じ め に は本 業 回 帰 の 現象 が 観察 さ れ る 。
1 970 年代 か ら 1 9 80 年代 に か け て の 中 堅生保 の ポ ジ シ ョ ン の 変化 に つ い て は 、 拙著 か ら 抜
粋 し た 次 の 三つ の 図 を 参 照 さ れ た い。 こ の 間 に お い て 、 上位企業 の 企業順位 は何 の 変 更 も な
か っ た の で あ る が 、 中 堅企業 に お い て は 、 大 き な 変化 が 生 じ て い た こ と が 視覚 的 に 明 ら か で
あ ろ う 。 付言すれ ば 、 70 年代 か ら 80 年代 の は じ め に か け て 相 対 的 に 地位 を 低下 さ せ た 生保
7 1 98o 年代 の 変容お よ び 1 99o 年代初 め の 状況 に つ い て は 、 米 山 高 生 『戦後 生命保険 シ ス テ ム の 変革』 同 文
舘 、 1 997 年 の 第 4 章 を 参 照 さ れ た い 。
4
菰 平 成 2 0 年度 日 本保 険 学会 大 会 讓
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ ; 米山高生
を 一言 で い う な ら ば 、 1 9 80 年代 の 後 半 に き わ め て 急激 に 右側 に シ フ ト し て い る 。 こ の シ フ ト
の 意 味す る と こ ろ は 、 予定利 子 率 を 高 く し て 金融商 品 と し て 売 り 出 し た 一 時払養 老保 険等 を
大 量販売 し た と い う こ と で あ る 。 い う ま で も な く 1 980 年代後 半 に 大 き く 右 に シ フ ト し た企
業 の 多 く は 、 そ の 後 の 破綻企 業 で あ っ た 。
図4-7
収入保 険料 と 保有契約 高 の XY グ ラ フ ( 中位企 業X 1 974年)
( 兆円 )
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図 4-8
( 十億 円 )
収 入 保 険料 と 保 有 契約 高 の XY グ ラ フ ( 中 位 企 業 X 1 984 年 )
( 兆円 )
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( 十億 円 )
鬘 平成 2 0 年度 日 本保 険 学会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レ ジ ュ メ : 米 山高生
図 4- 9
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( 2 ) バ ブル崩壊 と そ の 後 - 1 990 年代 の 生命保険
バ ブル崩壊後 の l 990 年代 は 、 保 険業 に と っ て 厳 し い超低金利 時代 が 長 く 続い た 。 保 険料
を 長期 的 に あ ず か っ て 将来 に保 険金や給付金 と し て 戻す と い う ビ ジネ ス を 行 う 生命保 険 に と
っ て 、 超低金利 時代 の 持続 は経営 的 に 極 め て 厳 し い環境 で あ っ た 。 こ の よ う な 環境 の 中 で戦
後 生命保 険 シ ス テ ム は転換期 を 迎 え た。 そ の 具体的 な 動 き は 、 保 険業 法 の 改正 に む け て の 動
向 で あ っ た が 、 既存 の 大 手生命保 険会 社 は 、 逆 ザ ヤ と 保 険需要 の 落 ち 込 み と い う 「 二 つ の 悪
魔」 に 立 ち 向 か う こ と に気力 と 体力 を 消耗 し 、 シ ス テ ム の 転換 に と も な う 選択 的 資源配分 に
心 を 砕 く 余裕 は な か っ た 。
( 3 ) 1990 年代 に 生 じ た 二つ の 技術変化
と こ ろ が 大手 生命保 険会社 が 、 逆 ザ ヤ 対策 に 汲 々 と し て い た 1 990 年代 は じ め に 、 保 険 の
産 業分水嶺 を 予感 さ せ る 二 つ の 大 き な 技術変化 が 、 保 険お よ び金融 に影響 を 及 ぼ し は じ め た 。
ひ と つ は 、 l 990 年代 に 生 じ た リ ス ク を 制 御 す る 金融技術 の 飛 躍 的 な 発 展 で あ り 、 も う ひ と つ
は l 992 年以 来 「 イ ン タ ー ネ ッ ト 」 と 呼称 さ れ て い る TCP/IP プ ロ ト コ ル に よ る パ ケ ッ ト 通信
網 の 社会 へ の 急速 な 浸 透 で あ る 。
前者 は伝統 的 な 保 険 業 に 対す る 「 諸 刃 の 刃 」 で あ っ た 。 1 990 年代初 め の ロ イ ズ危機 を ロ イ
ズが 乗 り 越 え ら れ た の は 、 ロ イ ズが 保有 し て い た複雑 な リ ス ク を 制御 し 軽減す る た め に 多様
/○
菰 平成 2 0 年 度 日 本保 険 学 会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 lo 年の検証」
レ ジュ メ : 米山高生
な 金融工学 的 手法 を 活用 し た か ら だ と い われ て い る 。 反 対 に 、 異 常 災 害 リ ス ク を 証券化 の 技
法 を 用 い た キ ャ ッ ト ボ ン ドや オ リ エ ン タ ル ラ ン ド をこ よ っ て 発行 さ れ た保 険 リ ス ク 証券 な ど の
従 来 の保 険 と は異 な る リ ス ク 移転手法 (ART) が 、 伝統 的保 険 と 競合す る も の と し て 登場 し
た 。 従来型 の 保 険 は 、 プー リ ン グ ・ ア レ ン ジ メ ン ト に よ っ て リ ス ク を 軽減す る 機能 を 基本 と
し た 、 薄利 多売型 の ビ ジネ ス モ デル で あ る が 、 リ ス ク の 価格づ け す る こ と に よ っ て リ ス ク を
市場 で販売 す る と い う ビ ジネ ス は 、 商 品 自 体 の ス ペ シ ャ リ テ ィ の 度合 い が 高 い 分 だ け 高 い付
加 価値 を 期 待 で き る と い う 点 で 対 照 的 で あ る 。
イ ン タ ー ネ ッ ト 社会 の 到 来 は 、 生産者 の 効 率性 に影響 を 与 え る ば か り で な く 、 生産者 と 消
費者 の 間 の コ ス ト 構造 を 変化 さ せ た 。 す ぐ れ て 販売 志 向性 の 高 い 生命保 険で は 、 後 者 の 影響
が 大 き い。 ネ ッ ト 販売 で は 生命保 険 は売れ な い と 繰 り 返 し 述べ ら れ て き た に も か か わ ら ず 、
従来型 の 販売 チ ャ ネ ル を 主力 と す る 既存保 険会社の 相 対 的 な 地位 は次第 に低下 し て い る 。 生
命保 険市場全体 で みれ ば、 イ ン タ ー ネ ッ ト 社会 の 影響 は軽微 か も し れ な い が 、 死 亡保障 が も
っ と も 必要 と さ れ る 3 0 歳代 の 男 性 に と っ て 、 携 帯 と パ ソ コ ン は テ レ ビ以 上 に 重要 な 情報源
と な っ て い る こ と を 忘れ て は な ら な い 。
既存 の 大手生命保 険会社 に と っ て 、 1 990 年代 に 二つ の 技術的 な 変化 が 顕在化 し て い た に も
か か わ ら ず 、 大 き な 営業職員販売 チ ャ ネ ル と 巨額 な 資産 (保 険負 債) と い う 過去 の 遺産 を ひ
き ず り な が ら 、 二 つ の 悪魔 に 対す る 防衛戦 を 行 わ ざ る を 得 な か っ た 時代 で あ っ た。
( 4 ) グ ロ ーバル時代 の 競争力 構築
す で に 述べ た こ と か ら 、 既存 の 生命保 険会社 に と っ て 、 戦後 型保 険 シ ス テ ム が 新 し い保 険
シ ス テ ム に 転換す る タ イ ミ ン グ が 悪 か っ た こ と は 明 ら か で あ ろ う 。 そ の た め わ が 国 の 生命保
険会社 は 、 90 年代 の 二 つ の 技術的 変化 に 十分 に 投資 で き な か っ た。 事業会社が 純粋 リ ス ク を
中 心 と し た リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト か ら 、 市場 リ ス ク や信用 リ ス ク を 含 む ト ー タ ル な リ ス ク の 統
合 的 管理 を 重視す る よ う に な る と 、 純粋 リ ス ク を 得意 と し て き た 損 害保 険会社 は 、 広範 な サ
ー ビ ス の 提供 を 行 わ ざ る を 得 な く な っ た 。 生命保険会社 も 1 980 年代 ま で は意識 し て な か っ
た ALM を は じ め と し て 、 全社的 な リ ス ク 管理体制 を 構築す る 必 要 が 生 じ た 。 現在 に お い て 、
グ ロ ー バル な プ レ ー ヤ ー と し て 国 際保 険市場 で活動 を 行 う た め に は 、 銀行 同 様 に リ ス ク の 計
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虻 平成 2 0 年 度 日 本保 険 学会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 l o 年 の 検証」
レ ジュ メ : 米 山高生
量化 に も と づ く 高 度 な 内 部 リ ス ク 管 理体制 の構築 が 必須 で あ る が 、 わ が 国 の 大手生命保 険会
社 は 、 1 990 年代 に お い て は 、 人 的 お よ び金銭 的 な 面 で十分 な 投資 を し て こ な か っ た 。
さ ら に 情 報投 資 の 面 で も 問 題 が あ る 。 既存保 険企業 の 基幹 と な る コ ン ピ ュ ー タ シ ス テ ム は 、
90 年代 以 降浸透 し た 分散型ネ ッ ト ワ ー ク に よ る 機動力 の 高 い シ ス テ ム に 転換 し て い な い 。 と
く に 生命保 険 の 場合 は 、 保 険期 間 が 長 い た め 、 一件 で も 残存契約 が あ る 限 り プ ロ グ ラ ム を 走
ら せ て お く 必要 が あ る 。 そ の た め 既存保 険会社 の コ ン ピ ュ ー タ シ ス テ ム は 、 建 て 増 し を 重ね
た 「 片 田 舎 の 温泉旅館」 の よ う な 姿 と な っ て い る 。 さ ら に プ ロ グ ラ ム はす で に 教育 の 世界 で
は 死滅 し か け て い る 言語 COBOL で書かれ て い る こ と が 多 い8。
基幹 と な る コ ン ピ ュ ー タ シ ス テ ム を 根 こ そ ぎ 変 え る こ と に よ る ス イ ッ チ ン グ コ ス ト の 期 待
値 は 大 き く な い も の の 、 万 が 一 の 場合 に は企業 の 存 亡 に か か わ る ほ ど被害 が 大 き い。 そ の た
め 経営者が 、 シ ス テ ム の根本 的 な 転換 を 逡巡す る こ と は 大 い に 理解 で き る 。 し か し な が ら 、
片 田 舎 の 増 築 し た 温泉旅館 で は 、 複雑化 し た 特約 の 支払 いや 、 自 由 で弾力 的 な保険機能 の 提
供 を す る こ と は不 可能 に 近い。 ネ ッ ト ワ ー ク 社会 を 前提 と し て 消 費者 の ニ ー ズ に 十分 に 答 え
る た め に は 、 90 年代 の情報技術 の 変 革 を 踏 ま え た 拡 張可能性 の 高 い シ ス テ ム へ の 転換 に 投資
す る こ と は重要 で あ っ た はず で あ る が 、 残念 な が ら わ が 国 の 生命保 険会社が 、 そ の よ う な 投
資 を お こ な っ た と は 聞 い て い な い。
金融工学的 技術へ の 投資 、 お よ びネ ッ ト ワ ー ク 社会 に 柔軟 に 対応す る コ ン ピ ュ ー タ シ ス テ
ム へ の 転換 は 、 国 際保 険市場 に お け る グ ロ ー バル ・ プ レ ー ヤ ー と し て 生 き て ゆ く と い う 意思
決定 を し て い る 生命保 険会社 に と っ て は 、 企業競争力 を 左右す る ほ ど重要 な こ と で あ る 。
し か し 、 生命保 険 シ ス テ ム の 転換 の 時期 が 、 超低金利 と 死 亡保 障市場 の 縮小 と い う 「 二 つ
の 悪魔」 が 跳梁す る 時代 で あ っ た こ と か ら 、 日 本 の 保 険会社 は 、 国 際競争力 を 蓄積す る こ と
が で き な かっ たおそれが あ る 。
8 プ ロ グ ラ マ ー派遣会社の ウ ェ ッ ブペー ジ に 、
「COBOL で の 開 発 は絶対 に な く な ら な い。 日 本 に 『金融、
生保 、 損保 の ホ ス ト マ シー ン 』 が あ る 限 り 、 永 遠 に 不滅 で あ る 。 日 本 か ら 、 ホ ス ト マ シ ー ン が な く な る こ と
は 、 現 時点 で は考 え ら れ な い。 何故 な ら 、 金融 、 生保 、 損保 の 核 に な る マ シ ー ン は 、 必ず と い っ て よ い程 、
ホ ス ト マ シ ー ン を 使 用 し て い る か ら だ 」 と 書 かれ て い る 。 h中 :〃www. 疊芻川susya.neび?gdid=CN-
aMmJY℃FQONewodTFOY6A (200窓年 1 0 月 1 0 日 閲 覧 )
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I 平成 2 0 年 度 日 本保 険 学 会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジ ュ メ ; 米 山高生
4 . 生命保険 の 自 由 化 と は何 だ っ た の か ?
( 1 ) 生命保険 に お け る 自 由 化
保 険業 に お け る 自 由 化 は 、 改正保 険業法 の 施行 か ら 始 ま っ た と す る の が 通説 か も し れ な い。
た し か に 、 改正保 険業法 の ひ と つ の 大 き な 柱 は 自 由 化 で あ っ た 。 具体的 に は 、 子会社方式 に
よ る 生損兼営 が 可能 に な り 、 ま た 第 三分野 の 保 険の 自 由 化 な ど が 行 われ た。
で は 、 戦後 型保 険 シ ス テ ム の 特徴 で あ る と 指摘 し た価格規制 お よ び 中 小 の保護 の 自 由 化 に
つ い て は ど の よ う に行 われ て の だ ろ う か。 価格 の 自 由 化 に つ い て は 、 生損 で 対照 的 で あ っ た 。
生命保 険 に つ い て は 、 一部保険商 品 が 認可制 か ら 届 出 制 と な っ た他 は 、 価格 の 自 由 化 が 行 わ
れ て い る わ け で は な い。 た だ し 、 戦後 型生命保 険 シ ス テ ム に お い て お こ な われ て い た認可 プ
ロ セ ス を と お し た 価格規制 は 、 も はや意 味 を 失 っ て い る 。 こ れ に 対 し て 、 損 害保 険 の 場合 は 、
損算会 に よ る カ ルテ ル料率 は廃止 さ れ 、 損 害保 険会社 は 、 算 定会 に よ る 料率 を 遵守す る 義務
が な く な っ た。
中 小 の 保護 に つ い て は 、 一部 に は ア メ リ カ の 政治力 も あ っ て 、 第 三分野 の 保 険 に 最後 ま で
残 っ た が 、 現 時点 で は基本的 に は 中 小 の 保護 を 含む 、 護送船団行政 は行 われ て い な い。
「 生命保 険 に と っ て 自 由 化 と は何だ っ た の か ? 」 と い う の が 、 本報告 の サ ブ タ イ ト ル で あ
る 。 こ の 疑 問 の 含意す る と こ ろ は 、 l 990 年代 に 戦後 型保 険 シ ス テ ム が 転換 し た の は確 か で あ
る と し て も 、 価格 の 自 由 化 が 明 確 で あ る 損 害保 険 に 対 し て 、 生命保 険 で は 自 由 化 が い っ 、 ど
の よ う に起 こ っ た の か明 ら かで な い と い う も の であ る 。
そ こ で保 険業 法以 降 に 生命保 険 に 生 じ た 自 由 化 と思 われ る 動 き を あ げ て 、 主要 な も の に つ
い て 検討 し て み る こ と に す る 。 こ こ で と り あ げ る の は 、 子会社方式 に よ る 生損兼営 、 価格 の
自 由 化 、 第 三分 野 の 自 由 化 、 募集 チ ャ ネ ル の 多様化 で あ る 。 さ ら に こ れ ら の 自 由 化 プ ロ セ ス
と 対応す る 契約者保護 を 目 的 と す る 制 度 と し て 、 契約者保護基金 の 創設 、 財務健全規制 の 導
入 、 お よ び金融商 品 取 引 法 な ど の 消 費者保護 立法 が 行 わ れ た が 、 こ れ ら に つ い て は簡 単 に 触
れ る に と ど め る こ と にす る 。
( 2 ) 生損兼営 に 関す る 自 由 化 - 子会社方式 に よ る 競争 と そ の 効果 -
子会社 に よ る 生損兼営 が認 め ら れ た 際 の 狙い は 、 寡 占 的傾 向 に あ る 保 険市場 の 企業数 を 多
く す る こ と に よ っ て 競争が 促進 さ れ る こ と で あ っ た。 保 険業法 に よ っ て 子会社方式 に よ る 生
9
I 平成 2 0 年度 日 本保 険 学会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 l o 年 の 検証」
レジュ メ ; 米山高生
損兼営 が 認 め ら れ た こ と か ら 、 生命保 険会社 6 社 ( 日 本 、 第一 、 住友 、 明 治 、 安 田 、 お よ び
三井) は 1 996 年 1 0 月 に 損保子会社 を 設 立 し た 。 他方 、 損害保 険会社 = 社 (東海 、 日 動 、
住友 、 三井 、 日 本火 災 、 興亜 、 千代 田 火 災 、 大東京火 災 、 共栄 、 富士 お よ び 同 和 ) は 、 同 年
1 0 月 に 生保子会社 を 設 立 し た9。
子会社方式 に よ る 相 互参入 は 、 た だ単 に企業数 を 増加 さ せ る こ と で競争 を促進 し た の で は
な か っ た 。 実際 に そ の 後 生 じ た 大型合併 な ど を と お し て 企業数 は 大 き く 減少 し て い る 。 む し
ろ 生保 と 損保 の 間 の 競争 関係 が 現実 の も の と な っ た こ と の 影響 が 大 き い と 思 われ る 。 そ れ ま
で は 、 生保 と 損保 は 完全 に 兼業 を 禁止 さ れ て い た の で 、 第 三分野保 険 を 除 け ば 、 競合 関係 が
ほ と ん ど な か っ た。
生損 の 競争の 結果 は 、 結論 的 に い え ば、 損 害保険 の 生保子会社が シ ェ ア を 伸 ば し た の に 対
し て 、 生命保 険 の 損 害保険子会社 の 多 く は 、 少 な く と も 現 時点 に お い て は成功 し た と は い え
な い 状態 で あ る 。 生保 に よ る 損保子会社で は 、 同 和火 災 を 合併 し た 日 本生命 が 善戦 を し て い
る 他 、 第一 と 三井 は子会社 を 売却 し て 撤退 し て お り 、 残 る 住友 と 明 治安 田 が 自 力 で存続 し て
い る が 、 必ず し も 自 覚 し い 業績 を あ げ て い る わ け で は な い。
こ の よ う に 考 え る と 、 子会社方式 に よ る 相 互参入 が 自 由 化 に も た ら し た も の は 、 生損 間 の
競争 を 促進 し た こ と で あ り 、 そ の 競争か ら も た ら さ れ た 、 商 品 と サ ー ビ ス の 多様化 で あ っ た
と い え る 。 た と え ば 、 損害保 険子会社 の 申i 差 の み配 当 商 品 」 な ど は 、 既存生命保 険会社 の
発想 に な い 商 品 で あ っ た。 こ の よ う な 意 味 で 、 子会社方式 に よ る 相 互参入 と い う 自 由 化 は 、
戦後 型保 険 シ ス テ ム に 風穴 を あ げ る 役割 を 果 た し た も の と 評価 で き る 。
( 3 ) 価格 の 自 由 化 - 損害保険 と の 相違 と 課題 -
前述 し た よ う に 、 損 害保 険 と は異 な り 、 生命保険 の 保 険料率 の 自 由 化 に つ い て は何 を も っ
て 自 由 化 の メ ル ク マ ール と す る の か難 し い。 基本 的 に は 生命保 険商 品 は 、 一部届 出 制 が 導入
さ れ た と は い え 、 基本 的 に は認可制 が 残 っ て い る た め 、 形式的 に みれ ば 自 由 化 さ れ て い る よ
う に は 見 え な い 。 し か し な が ら 、 戦後型生命保 険 シ ス テ ム の よ う に保 険商 品 の 認可 プ ロ セ ス
を と お し て 価格 の 画一化 を は か る こ と は な く な っ て い る 。 つ ま り 、 認可制 度 自 体 は か わ っ て
9 大手損害保険会社で は 、 安 田 火 災 (現、 損保 ジ ャ パ ン ) は 、 新設子会社 を 立 ち 上 げず 、 か わ っ て 既存生保
会 社で あ る ア イ ・ エ ヌ ・ エ イ を 買 収 し 子会社 と す る と い う 戦略 を と っ た 。
10
I 平成 2 0 年度 日 本保 険 学会 大 会 】
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レ ジ ュ メ ; 米山高生
い な い が 、 行政 の 商 品認可 の ス タ ン ス が 自 由 化 の過程 で大 き く 変化 し た。 さ ら に 、 業法改 正
を 契機 に 、 各社 の 基礎率 の横並 び が 崩 れ 、 そ の 意 味 で は 同 一価格 同 一 商 品 を 特徴 と し た価格
規制 は な く な っ た と い え る 。
損 害保 険 の 価格が 、 割 引 期 待保 険金支払 コ ス ト (純保 険料) と 付加保 険料 (経費 と 資本 コ
ス ト に 分解可能) だ け で構成 さ れ て い る の に 対 し て 、 一般 に 生命保 険 の 保 険料 に は 、 貯蓄保
険料部分 が 含 ま れ て お り 、 一 定 の 安全マ ー ジ ン が 見 込 ま れ て 計算 さ れ て い る 。 さ ら に 生命保
険商 品 に は 、 様 々 な オ プ シ ョ ン が 組み込 ま れ て い る 。 た と え ば死 亡保 障 と い う 機能 だ け を 売
る よ う な保 険商 品 が あ る と し て 、 そ れ が あ る 種 の コ モ デ ィ テ ィ ー化 し た と すれ ば 、 保 険会社
に と っ て は辛 い 状況 で は あ る が 、 競争 が 効 率 に 直結す る 。 し か し な が ら 、 わ が 国 で販売 さ れ
て い る よ う な 、 様 々 な オ プ シ ョ ン を も っ た複雑 な 生命保 険商 品 で は 、 単純 な価格競争 は お こ
り に く い。
生命保 険 に お け る 価格 の 自 由 化 が 、 損 害保 険の 価格 の 自 由 化 と 異 な る こ と は そ の 意 味 で 当
然 の こ と か も し れ な い。 そ こ で 生命保 険 に お け る 価格 の 自 由 化 は 、 各企業 の 業績 を 反 映 し た
成果 を 配 当 を含む広 い意 味 で の 価格 に 反 映す る 自 由 度 を 促進す る こ と に お い て 見 て ゆ く 必要
がある。
自 由 化 の過程 で 配 当 規制 が 変 更 さ れ た こ と は 、 保 険 の 価格 に つ い て 大変 重要 な こ と で あ る 。
業法 の 施行時 に 配 当 申 請書が 配 当 届 出 書 と な り 認可 か ら 外れた lo。 従来 は 80%以 上 と い う 配
当 比 率規制 が 行 われ て い た が 、 2000 年 に は 、 こ の 比 率 の 算式の 分母 か ら 基金 を 控 除で き る こ
と に な り 、 2002 年 か ら は 20% と い う 比 率 に 引 き 下 げ ら れ て い る 。 こ れ は 、 配 当 規制 の 自 由 化
と い え る が 、 む し ろ 生保破綻 が 続い た こ と か ら 、 契約者還元 よ り も 内 部 留保 の 充 実 に よ っ て 、
財務健全性 に 配慮す る も の で あ る と 考 え る の が 自 然 で あ ろ う 。
戦後型生命保 険 シ ス テ ム で は 、 剰 余 の ほ と ん ど を 契約者配 当 と し て 戻す と い う こ と で 、 安
全マ ー ジ ン に よ る やや高 め の保 険料率 で画一化す る こ と が 許容 さ れ て い た が 、 新 し い 生命保
1 0 財産利 用 方法書 も 廃止 さ れ、 ま た 昨年か ら 基礎書類 で事業費 を 記載 し な く て も よ く な っ た こ と か ら 、 事業
費 規制 も 終 了 し た 。
11
は 平成 2 0 年度 日 本保 険 学会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ : 米山高生
険 シ ス テ ム で は 、 配 当 規制 が 緩和 さ れ た こ と に よ る 契約者 の 「 不利 益 」 を ど の よ う な 理屈 に
よ っ て 埋 め 合 わせ る だ ろ う か。 悩 ま し い と こ ろ で あ る n。
( 4 ) 第三分野 の 自 由 化 - そ の課題 -
第三分 野 に 属 す る 保 険 に つ い て は 、 す で に 生損本体で も 販 売す る こ と が 可能 と な っ て い る 。
こ の 分野 の 商 品 は標準化が行 われ て お ら ず、 商 品設計 に お け る 自 由 度 が 高 い。 そ の 意 味 で 自
由 化 の 最 た る 分野 で あ る と い え る 12。
第 三分野 に お け る こ の よ う な 自 由 化 に つ い て は 、 い く つ か の 点 で疑 問 を感 じ る こ と が あ る 。
第一 に 、 消 費者 の選択 の 幅 を 広 げ る と い う 意 味で の 商 品 の 多様化 な ら ば評価 で き る が 、 商 品
の 機能 が 見 え な く な っ て し ま う ほ ど の 多様化 (複雑化) で は 消 費者 の利 便性 に つ な が ら な い
の で は な い か と い う 疑 問 で あ る 。 ま し て や 、 複雑化 ゆ え に 不払 い や不適切 な 不 払 い が 生 じ た
と す る と 、 消 費者 の 立場 か ら い っ て 大 い に 問題 の あ る と こ ろ で あ る 。
第二 に 、 標準化 で き て い な い こ と に よ り 、 各社の 商 品 が 、 第三分野 の リ ス ク に 対す る 適正
な価格づ け を し て い る の か ど う か と い う 疑 問 で あ る 。 各 商 品 の 保 険料計算 に お い て は 、 標 準
化 さ れ て い な い 、 制 約 さ れ た デー タ に も と づ い て 計算 し た期 待保 険金 コ ス ト を 基本 と し て 、
割 引 率 、 付加保 険料 な ど を 考慮 し た価格づ け が 行 わ れ て い る 。 各社が リ ス ク に た い し て 甘 い
計算 を し て い れ ば、 将来 の 経営基盤 を 揺 る が す だ ろ う し 、 反対 の 場合 、 も う け す ぎ の 批判 を
う け る こ と になる。
第 三 の 疑 問 は 、 よ り 根本的 な疑 問 で あ る が 、 現行 の 第三分野 の 保 険商 品 は 、 国 民 の 本 当 に
必要 と すべ き ニ ー ズ に マ ッ チ し た保 険で あ る の か と い う こ と で あ る 。 た と え ば、 半 日 や 1 日
の 入院 で給付 を す る よ う な入院給付 は意味が あ る の だ ろ う か。 多 く の 医療保険商 品 は 、 医療
保障 で は な く 、 所得保 障保険 に 過 ぎ な い の で は な い か等 々 、 の 疑 問 が 生 じ る 。 各社が 自 由 化
さ れ た 多様 な 商 品 で競争す る 代 わ り に 、 本 当 に 国 民 が 必要 と し て い る 医療保 障 と い う 機能 を
特定 し 、 各社が デー タ を 共有化 し て 、 標 準化す る こ と が 、 今後 の わ が 国 の 医 療保 障 に つ い て
1 1 報告者 が 悩 ま し い と す る 理 由 は 、 契約者配 当 政策 が 内 部 留保政策 よ り も 契約 者利益 に か な う と 断言 で き な
い こ と で あ る 。 内 部留保 に よ る 破産確率 の 低下 は 、 間 接 的 に 契約者 の利益 に な る 。 し か し 、 配 当 規制 の緩和
に よ っ て 、 保 険会社 が 契約 者配 当 を 軽視す る 傾 向 と な る こ と は避 け る べ き で あ ろ う 。
蛇 かつ て 第 三分野 の 商 品 に標準責任準備金 の 導入が試み ら れた が 、 既存商 品 の 多様性 と い う 現実 に 直面 し て
断念 し た 経 緯 が あ る 。
12
【 平成 2 0 年度 日 本保 険学会 大 会 讓
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ : 米山高生
重要 な こ と で は な い か と 思 われ る 。 こ れ に よ っ て 、 見せ掛 け の 医療保 障 ブー ム が な く な る か
も れ な い が 、 民 間 保 険会社 の 使命 に 立 ち 戻 っ て 考 え れ ば、 標 準化 に 向 け て 努力 す る こ と は本
来 と る べ き 道 で あ る と 思われ る 。
( 5 ) 販売 チ ャ ネ ル の 自 由 化 - 銀行窓販 の ゆ く え -
昨年 1 2 月 に 保 険商 品 の 銀行窓販 の 全面解禁 が 行 われ て こ と は ま だ記憶 に 新 し い。 こ の 自
由 化 の 目 的 は 、 金融 ・ 証券 ・ 保 険 の ワ ン ス ト ッ プ シ ョ ッ ピ ン グ が 実現す る こ と に よ っ て 、 消
費者 の利 便性 が 増 大す る こ と で あ る と さ れ て い る 。 新 し い チ ャ ネ ル に よ っ て 、 新 し い保 険需
要 が 開 発 さ れ る と し た ら 、 保 険市場 に と っ て も 望 ま し い こ と で あ る 。
保 険チ ャ ネ ル の 自 由 化 を 評価す る 場合 に は 、 消 費者 の利便性 と 保 険需要 と い う 二つ の 点 か
ら 考 え る 必要 が あ る が 、 現在 の と こ ろ ま だ l 年 に 満 た な い た め 、 自 由 化 の 評価 を す る こ と は
で き な い。
こ こ で は 、 自 由 化 の 評価 と い う こ と よ り も 、 銀行 の保 険窓販担 当 者 か ら の聴取 に も と づ い
て 、 大手銀行 の保 険 の 売 り 方 に つ い で情報提供 を 行 い た い。 銀行窓販 の 当 初 は 、 すべ て の 銀
行 は フ ィ ー ビ ジネ ス に 徹 し て お り 、 死 亡保 障商 品 を 本気 で販売 し よ う と す る 銀行 は な い と 考
え て い た。 そ の 証拠 に 、 一行 た り と も 契約者 に 対す る 忠実義務 を 要求 さ れ る ブ ロ ー カ ー 登録
を し よ う と す る 銀行 が な か っ た 。
し か し な が ら 、 保 険 の 銀行 窓販 に 対す る 取 り 組み方 は 、 様 々 な よ う で 、 極論すれ ば 、 単純
な フ ィ ー ビ ジネ ス に 徹 し よ う と す る 銀行 か ら 、 専 門 的 な販売部 隊 を 教育 し て 本気 で保 険 を 売
ろ う と 考 え る 銀行 ま で 、 多様 な ス タ ン ス が あ る こ と が わ か っ た 。
銀行 が 、 保 険 の 窓販 に かか る 戦略 で 多様 で あ る と い う こ と は評価 で き る が 、 さ ら に 一歩進
ん で 、 ブ ロ ー カ ー 登録す る こ と に よ っ て 、 契約者 に 対 し て コ ミ ッ ト メ ン ト を 与 え る 1 3 よ う な
制 度設 計 を 考 え る こ と も あ り う る の で は な い か。
1 3 こ こ で コ ミ ッ ト メ ン ト と は経済学的 な使 い方 を し て い る 。 契約者 に と っ て も っ と も 良 い 商 品 を 販売す る
と 繰 り 返 し 述べ た と し て も 、 銀行代理店 は あ く ま で も 保 険会社 の 代理店 な の で 、 契約 者 は信用 し な い。 し か
し な が ら 、 ブ ロ ー カ ー 登録す る こ と に よ っ て 、 契約 者 に と っ て も っ と も 良 い 商 品 を 販 売す る と い う コ ミ ッ ト
メ ン ト を 契約者 に 与 え る こ と に な る 。
13
区 平成 2 0 年 度 日 本保 険 学会 大 会 薫
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ : 米山高生
( 6 ) 自 由 化 に対応 し て 行 われた契約者保護規制
以 上 で 、 保 険業法 の 改正後 の 生命保 険 の 自 由 化 に つ い て 、 価格規制 、 商 品 規制 、 チ ャ ネ ル
規制 な ど の 面 か ら 考察 し た。 こ れ ら の 一連 の 自 由 化 に 対応す る も の と し て 、 契約者 を 保護す
る た め の 規制 や制 度 が 整備 さ れ た 。 契約者保護基金 の創設 、 財務健全性規制 の 導入 、 お よ び
金融 商 品 取 引 法 な ど の 消 費者保護 立法 で あ る 。
自 由 化 と は 市場 の機能へ の 信頼 を 前提 と す る 考 え 方 で あ る が 、 市場 の 失敗 に よ っ て 生 じ る
問題や市場機能 が 及 ば な い 問題 に つ い て は 、 制 度 的 な 手 当 て を 行 っ て お く 必要 が あ る 。 セ ー
フ テ ィ ー ネ ッ ト は 、 新 し い保 険 シ ス テ ム に お い て は 、 行政 の 権 限 で破綻会社 の 処理 を で き な
い た め 、 必要不 可欠 な も の と し て 整備 さ れ た 。 財務健全性規制 は 、 自 由 な 企業活動 を 許容 し
な が ら 、 支払 不能 に な っ た 企業 に よ っ て 生 じ る 契約者 の 被害 を 最小 限 に 食い止 め る た め に 導
入 さ れ た 14。 こ れ ら の 制 度お よ び規制 は 、 戦後 型 の 生命保 険 シ ス テ ム で は必要 と さ れ な か っ
た が 、 マ ー ケ ッ ト を 重視す る 新 し い保 険 シ ス テ ム に お い て は重要 な 制 度 と し て位置づ け ら れ
る も のであ る。
5 . 新 し い 生命保険 シ ス テ ム の 生誕
戦後 型 生命保 険 シ ス テ ム は 、 バ ブル の 崩 壊 と そ の 後 の超低金利 時代 の 到 来 に よ っ て 死期 を
迎 え た が 、 保 険業法 の 改正 に よ っ て 引 導 を 渡 さ れ た 。 し か し 新 し い保険 シ ス テ ム を 構成す る
諸 制 度 が 出 揃 う た め に は 、 保 険業法 の 改正 を 待つ こ と と な っ た 。
「 自 由 化後 の 1 0 年」 と は 、
新 し い保 険 シ ス テ ム が 誕生す る た め の 1 0 年 だ っ た と い え る 。
ま た こ の 1 0 年 に 共済 を 含む 生命保 険 の 産業組織 に も 大 き な 変化 が あ っ た 。 1 997 年頃 を ピ
ー ク に 生命保 険 の保 有契約 が 減少 を 続 け 、 い ま だ に 歯止 め が 利 か な い 状 態 に あ る 。 そ の た め
比較 的 高 額 な 保 険商 品 を 中 心 に販売 し て い た 既存 の 大手生保会社が ゆ っ く り と シ ェ ア を 小 さ
く し て い る 。 こ れ に 対 し て 、 い わ ゆ る カ タ カ ナ 生保や損保 の 生保子会社 な ど は徐 々 に シ ェ ア
を 高 め て い る 。 ま た 民保 の 業績不振 を 横 目 に 、 共済 に よ る 生命共済 の 業績 は伸 びて い る 。 今
年 3 月 期 の保 険料等収入 の 企業別順位 を 示 し た の が 次 の 図 で あ る が 、 戦後型 生命保 険 シ ス テ
ム で安定 的 な 企業順位 を 占 め て き た 様子 が 一 変 し て い る の に 驚 く 。
1 4 消 費者保護立法 に つ い て は 、 生命保 険の 自 由 化 と の み 関連す る わ け で は な い の で 、 本稿 で は検討 し な い。
14
虻 平成 2 0 年 度 日 本保 険 学会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ : 米山高生
国 内 生保 の 保 険料等 収入 (2008 年 3 月 期 、 単位億 円 )
14
日本
4 8 , 900
1l
マニュ ライ フ
7 , 94 1
2
第一
明 治安 田
住友
3 1 ,876
12
26 , 5 3 7
富国
AIG エ ジ ソ ン 十 ス タ ー
7 , 3 64
13
25 ,4 8 5
14
アクサ
6 , 64 5
ジブ ラ ル タ
6 ,49 5
3
4
6 , 73 6
5
ア リ コ
l 4,657
l5
6
アフラ ッ ク
1 1 , 1 40
16
ソ ニー
6 , 4 84
8,43 3
17
三井住 友 メ ッ ト ラ イ フ
6 ,449
8,3 1 5
18
太陽
6,3 57
朝日
東海 日 動 フ ィ ナ ン シ ャ ル
5,554
7
8
大同
ア イ エ ヌ ジー
9
ハー ト フ ォ ー ド
8,253
19
lo
三井
8 , 00 6
20
5, l 88
出 典 ; 『 日 本経済新 聞 』 200 8 年 1 0 月 5 日 付記事
戦後 型保 険 シ ス テ ム の 理念 と 新 し い保 険 シ ス テ ム の 理念 は 、 と も に 消 費者 に と っ て 適切 な
保 険サ ー ビ ス の提供で あ る 。 両者 の 違 い は 、 歴史 的 条件異 な る た め に 、 そ の 理念 の 実現方法
が 異 な る こ と で あ る 。 前者 は 、 組織化 さ れ た 競争 に よ る 保 険サ ー ビ ス の 安定 的 な 供給 に よ っ
て そ れ を 達成 し た が 、 後者 は 、 競争的 市場 を 前提 と し た保険サ ー ビ ス の 効 率 的 な 供給 に よ っ
て そ れ を 実現 し よ う と す る も の で あ る 。
第 4 節 に お い て 検討 し た 生命保 険 に 関 す る 自 由 化 と 自 由 化 に 対応す る 契約者保護制 度 か ら 、
同 一 商 品 ・ 同 一価格 を 達成す る 価格規制 と 中 小保護 を 特徴 と し た 戦後 型 生命保 険 シ ス テ ム と
は 完全 に 決別 し た と い う こ と が 分 か っ た 。 ま た 2000 年 頃 か ら 、 新 し い 生命保 険 シ ス テ ム が 、
機能 を し 始 め た こ と も 分か っ て き た。 し か し 新 し い 生命保 険 シ ス テ ム が 、 上手 く 機能 し て い
る の か ど う か に つ い て は 、 ま だ不 明 な こ と が 多 い 。
た と え ば、 新 し い保 険 シ ス テ ム の 理念 で あ る 、 消費者 に 対す る 適切 な サ ー ビ ス の 提供 が 出
来 て い る の か と い う 点 に つ い て は 、 配 当 規制 で指摘 し た よ う な 疑 問 が な い わ け で は な い。 ま
た 第 三分野 の 保 険商 品 で指摘 し た よ う に 、 自 由 化 が 国 民 に と っ て の 適切 な保 険機能 を 提供 し
て い る の か を 再検討す る こ と も 必 要 で あ ろ う 。
競争的 な 市場 を 前提 と す る 新 し い 生命保 険 シ ス テ ム が 有効 に機能 し て い る か ど う か を 知 る
た め に は 、 自 由 化 の イ ンパ ク ト が ど の よ う な 影響 を も た ら し た の か を 明 ら か に す る イ ベ ン
ト ・ ス タ デ ィ や新 シ ス テ ム の 下 で の 企業活動 が 効率 的 で あ る か ど う か を 実証す る (計量分析
を 含 む) 産業組織論 的 な研究 が 待 た れ る と こ ろ で あ る 。 若手研究者 の 成果 に 大 い に 期 待 し た
15
鑿 平成 2 0 年 度 目 本保 険学 会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ : 米山高生
い 。 本報告 に 意 味 が あ る と すれ ば 、 そ の よ う な 実証研究 に 先 立つ保 険 シ ス テ ム の 理論的 な 露
払い と い う こ と で あ る 。
16
戦後 型 保 険シ ステ ム の 転換
生 命 保険 の 自 由 化 と は何だっ た の か ?
一橋大学商学研究科
米山高生
モI I ′T O T S U B A S H I
U N I V E R S I TY
日 本 保 険 学会 シ ン ポ ジ ウ ム ( 米 山 )
1 . は じめ に
200 8/1 O/20
本報告 の 課 題
シ ン ポ ジ ウ ム の課題
自 由 化 後 僅 0年 の 検証
鑄
本報告の具体的な課題
・ 生保の 自 由 化 と は何か ?
・ 1 0 年 間 に 何 が起 こ っ た の
か?
生 命 保 険 を 中 心 と して
日 本 保 険学会 シ ン ポ ジ ウ ム ( 米 山 )
・ 自 由 化 の 意 図 は達成され
たのか ?
2008′ 1 0′20
1 はじめに 報告の構成
鑄
H 王 T OT S U B A S H I
U N I VE R S I T Y
・ 生保の 自 由 化 と は何か ?
・ 仰 ご年 間 に 何 が起 こ っ た の か ?
・ 自 由 化 の 意 図 は 達 成された の か ?
第2節 と 第 3節
簾榊 製機"
8 0 年 代 に は 、 戦後 生 保シ ステ
ム の 前提 とな る 歴史 条件 は 失
わ れて い た 。
産 業分水嶺と いう考え方
シ ステ ム 転換 と い う 考 え 方
水 の 流れ の 方 向 が決 定
人為 的な制 度 の 構築
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
第4節
萎.
雲 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ . ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 1I
… . … . ■ ‐ ‐ M m ■ M m 竪ル ー ■ . … - - , ■ m m . ・ ■ m m m m … \
新 し いシ ステ ム の 成立 と
その検証
1 . は じめ に
産 業 分 水嶺 と は ?
・
第5範
H I TO
UNI
産業分水嶺
・ 二 つ の 並 存 す る 技 術 体 系 の うち 採 用 さ れ る 技術 は 、
そ れ ぞれ の 技術 の 優 劣 に依存す る の で は な く 、 どち
ら が選 択さ れ る か に依存 す る 。
・ 内 燃機 関 エ ン ジ ン が 自 動 車 に 採 用 さ れた の は 、 電
気 自 動 車 エ ン ジ ン よ り も 技術 的 に優 れ て い た た め で
は な く 、 技術 以 外 の 要 因 ( テ キ サ ス 油 田 の 発 見 、 H .
フ オー ド の 自 動 車 レ ース優 勝等 ) に よ っ て 、 内 燃機
関 エ ン ジ ン が選 択 さ れ た た め で あ る 。
・ 選 択され る と 、 す べ て の 技術 開 発 投 資 がそち ら に 流
れ 込 む 。 = 水 の 流れ の 方 向 が決 定 的 に 重 要
1 . は じ め に 制 度 の 集 合 体 と し て の シ ステ ム
H I TOT S U B 人 S H 亙
U N I VE R S I TY
制 度 と シ ス テ ムの概念図
毛 蕊
日 本 保 険学会 シ ン ポ ジ ウ ム ( 米 山 )
1 . は じめ に
20 08/ ↑ 0/20
鑄
や は り 変わった !
H I TOT S U B 人 S H I
UNIVE RSITY
国 内 生保 の 保 険料等収入 (2008 年 3 月 期 、 単位億 円 )
簾
! 日本
l 4gがOG
11
1 マニュ ライ フ
ー フ,94 1
2
l 第 雑皺
l 3 1 ,876
箋2
4 富国
{ 7,3 64
3
I 明 治安 田
f 26553 7
13
l A IG エ ジ ソ ン 十 ス タ ー
l 6,736
4
I 住友
l 2 5。4 85
14
l アクサ
l 6 , 645
5
i ア リ コ
l
1 4,657
姫
l ジブラルタ
I 6 ,495
6
1 アフラ ック
! 1 1 , 1 40
16
?
菱 太髓
l
8,433
8
ア イ エ ヌ ジ紐
l 8き l 5
鱗罐
騨 ′ ′ ′ ' 嚢鬘騒鬘鬘騨臺鬮鬘
鱸 ′ ← “ 切 Z 数〉ル 榊
鬘鬘嚢獺
嚢
鳩
出典 "
三井
」 6粁 84
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『 臼 本経 済 新 聞 』 2008 年 1 0 月 5 日 f寸記 事
日 本保険学会シンポジ ウ ム ( 米 山 )
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2 00 8/ 1 0/20
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2 . 戦後 型 保 険システ ム の 特徴 と意 義
・
・
・
・
第 二 次 世 界 大 戦 を 契 機 に 金 融シ ステ ム の 制 度 設計
金 融シ ステ ム の サ ブ シ ステ ム と し て の 保 険シ ステ ム
生 保 と 損 保 の 直 面 す る 問 題 は 逆だ っ た が 、 本 質 的
に は 同 じ 理 念 の シ ステ ム が 成 立
。
・
戦 後 型 保 険シ ステ ム を 成 立 さ せ た 歴 史 的 条 件
生保 需要過少
・ 損 保 供給不 足
安定
安
定 的な保険サービス
的な係 瞑サー ヒ ス の
の 提供の
提 供 の たコの
ため
I
には・ 産業的安定性が必要
に は 、 産 業 的 安 定 性 が必要
I
価 格規制 と い う 手 段 を 主 軸 に す え て 、 保 険会 社 に
安 定 的 な 利 益 を 保 証 し な が ら も 、 配 当 規制 な ど に
よ り 私 的 利 益 の 実 現を 制 約 す る こ と に よ っ て 、 安 定
的 な 保 険 サ ー ビ ス の 実 現を 目 指 し た 。
2 . 戦 後 型 保 険システ ム の 特徴 と意 義
礎
日IT
Uよ
・ 戦 後 型 保 険 シ ステ ム の 特徴
・ 同 一商 品 ・ 同 一価格
・ 生 命 保 険 の 場 合 は 、 商 品 認可 プ ロ セ ス を 通 し て概ね 同 一
商 品 同 一 価格 と い う 価 格規制 を 実 現 Cf. 「 レ ン ト 発 生 の メ
カ ニズム 」 を参 照 。
・ 中 小 の 保 護 ( 護送 船 団 行 政 )
・ 中 小 生保 の 新商 品 に 関す る 開 発 利 益を保証 。
・ 商 品 認 可 過程 で 若 干 の 優 遇
2 . 戦後 型 保 険システ ム の 特徴 と意 義
鱗
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日 本保険学会シンポジ ウ ム ( 米 山 )
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2008/ 仂 0/20
3 . バブ ル経済 と そ の 崩 壊
9
鑄
( 1 ) 僅 980 年 代 の 変 化 はシ ステ ム 転換だっ た の か ?
戦 後 生 保 シ ステ
ム成立条件の 歴
史 的意味の 消 滅
l 初期の「 自 由化一一
は始まっていた
日 本保 険学会シンポジ ウ ム ( 米 山 )
200 8′ 1 0/20
10
鑄
3 . バブ ル経済 と そ の 崩 壊
図47 収入保 険料 と 保有契約 高 のXY グ ラ フ ( 中位企業X 1 974年)
9
(兆円)
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保有 契約 高
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収入保 険料
日 本 保 険 学会 シ ン ポ ジ ウ ム ( 米 山 )
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( 十億 円 )
200 8′僅 0/20
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3 . バブ ル経済 と そ の 崩 壊
H I TOT S U B ハ S H I
U N I V E R S 亙T Y
図4-8
収 入保険料 と 保有契約 高 のXY グ ラ フ ( 中位企 業X I 984年)
g毯 円 )
日 本保険学会シンポジ ウ ム ( 米 山 )
収入保険料
200 8月 0/20
( 十億 円 )
12
3 . バブル経済 と そ の 崩 壊
H I T OT S U B A S H I
U N 工VE R 銘 TY
図4-9 収入保 険料 と 保有 契 約 高のXY グ ラ フ ( 中 位企 業X 1 988 年)
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13
2 0 0 8′ 1 0/ 2 0
日 本保 険学会 シ ンポジ ウ ム ( 米 山 )
3 . バブル経済 と そ の 崩 壊
H I TOT S U B 人 S H I
U NIVE RS主TY
図44 1 収 入保険料 と 保有契約高 の XY グ ラ フ ( 中位企 業X 1 9知 - 94年)
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80
・ 80 年 代 の 反 動
協栄 千炉
保 有 契約 高
X
・ 金融バブ ル に影響を
受 けた 契約 ポー トフ ォ
リオの 変化
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富国
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20
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05
収 入保険料
◇ = 1 994 年
△ = l 992 年
g毯 円 )
X = 1 990年
( 国 注 ) 下 位 以 下 の 企 業 の ド ッ ト は l 994 年 の も の 。
日 本 保 険学会 シ ンポジ ウ ム ( 米 山 )
2 0 0 8 ′ l o/2 0
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3 . ′バブ ル経済 と そ の 月扇
競
H I T OT S U B A S H I
U N I VE R S I T Y
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I 死亡保障市場の 収縮 I
圏
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… 二 つ の 悪魔 m
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超低金 利 時代 の 到 来
率成
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… 議会答
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l ( 2 月 990年代の 困難とシステム転換
戦後 型 生 保システム の 終焉 に扇かジ シ ステムの 理念 の 宣言
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… 二 つ の変化 …
l 金融工学の 発展 l
圏
インターネッ ト社会の 到 来
15
2 0 0 8 / 1 0/2 0
日 本保 険学会 シ ンポジ ウ ム ( 米 山 )
口 だっ
4 . 生 命 保 険 の 自 由 化 と は何だ
っ たこ の か、 ?
H I TO T S U B 人 S H I
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営 業規制
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価格 自 由 化 の 仕組み につ い て
価 格規制
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日 本 保 険学会 シ ンポ ジ ウ ム ( 米 山 )
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4 . 生 命 保 険 の 自 由 化 と は何だっ た の か ?
鱗
子会社方 式 の 生損兼営 の 解禁 の 理 由 著 企 業数 の 増 大 に よる競争促進
1 . 合 併 に よ り 企 業 数減少
2 . 商 品 イノ ベ ーショ ン効 果 が発揮
3 . 生保 に よる損保子会社 の 不振と損保 に よる 生保子会社 の 躍進
日 本保 険学会 シンポジ ウ ム ( 米 山 )
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4 . 生 命 保 険 の 自 由 化 と は何だっ た の か ?
17
鑄
カ ルテル料率を撤廃 した損保と比較 して価格 の 自 由 化 が見 え に く い
戦後生命保険システムのように商品認可プロセスをとおして価格規制をおこ 1
なう こ と は 出 来な くなっ て い る
認可 の 姿勢の 変 化 珍 各社の基礎率がまちまち になる という意味で 自 由 化
生命保険の価格要素 と して 重要な配 当 規制も 自 由 化
かつ て は80% と いう配 当 比 率規制 だった も の が現在で は20%
内 部 留 保重視型 の 配 当 政策 の 継続 はシステム の 理念 と抵触 しな い か ?
日 本 保 険学会 シ ンポジ ウ ム ( 米 山 )
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4 . 生 命 保 険 の 自 由 化 と は何だっ た の か ?
H I T OT S U B A S H I
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消 費者の二彎ズに対応褻 る よそ &し会 さきをもぶ れ
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国 民 が必要と して い る 医療 ・ 傷害ニーズ は何 か と いう こ とを 出 発 点 と して 、
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一 両
保 険商 品
ではなく
、 保険の 機能を安 く安 定 的 に提供する
という
こ と か、 ら考え
直
す 必要 が あ る 。
日 本保 険学会 シンポジ ウ ム ( 米 山 )
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4 . 生 命 保 険 の 自 由 化 と は何だっ た の か ?
19
H I TOT S U B ハ S H 王
U N I V E RS 1T Y
「 ■ ・ r‐ f i ■m .増
保険販売 にコ ミッ トす る 銀行 = ブ ロ ーカ ー型 が登場 しても よ い 。
当 地域 的な強 固 な地盤をもっ て い る銀行 の 競争 力 につ な がる 可能性
チャネル効 率性 につ いて計量モデル に よる 実証分析 が必要
詩 データ の 提供 に よ る 業界 の 協 力 が必要
日 本保険学会シンポジ ウ ム ( 米 山 )
2 0 0 8 ハ o/2 0
20
4 . 生 命 保 険 の 自 由 化 と は何だっ た の か ?
鑄
H I TOT S U B A S H 1
U N IVE R S 主 T Y
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-
税金 の 問 題 ( 保 険 の 公 共 性 の 解釈 に依存 )
合 理 的な リ スク 管 理 ( 企 業 の 競争 力 の 源 泉 )
消 費 者 の 自 立 支 援 ( 不 招 請勧 誘 の 問 題 点 )
日 本保険学会シンポジ ウ ム ( 米 山 )
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5 . 新 し い 保 険システ ム の 誕 生
21
鑄
日 I T OT S U B A S H I
U N I V E R S 1T Y
.::緩 む 鶴詞チキ ン ユ テ ム 導 けI: 点
保険サービス の 安 定 的な供給を確保する こ とが
大切 で あ る 。 そ の た め に は 、 官 民協 力 して競争を組織化
し 、 利 益処分を 管理する こ とで 、 社会 全体の 利 益を増 大する
自 由 化 によ る経営 資源 の 有効 活用 で効率性を 向 上 させる ととも に 、
そ の 成果を 的確 に利 用 者 に還 元する 。 自 由 競争 の結果 、 予 想
される 破綻 に 対 して は 、 契約 者保護 の 観 点 か ら セーフティーネッ ト
な どの 手 当 てを お こなう
日 本 保 険 学会 シ ン ポ ジ ウ ム ( 米 山 )
200 8′ 1 0/2 0
22
5.
新 し い 保 険シ ステ ム の 言 生
H I TOT S U B A S H I
U N IVE R S 1 T Y
1 . 「 二 つ の 悪魔 」 が解消 し よう と して いる 時 に 、 新た にア メ
リ カ か ら 「 新 しい 悪魔」 が到 来 した 。 それ ら を考慮する と 内
部 留 保が翻っ て は 消 費者保護となる かも しれない が 、 そ れ
に しても消 費者利 益の 還元 につ いて 努 力 する 必要がある 。
2 . 新しい保険システムの 理念 の 実現 に は 、 システム の
パーツの 部分での 標準化 、 組織化 が必要であ る 。
3 。 自 由 競争を前提と した 契約者保護の 諸制 度 につ いて は 、
新 しいシステム の 理念 と矛盾 しな い よう に徐 々 に整理 して
ゆ く 必要 が あ る 。
4 . 新 し い保険システム の 理念が実現されてい る の か どう
か につ いて は 、 計量分析 にも とづいた 実証研究 が必要で あ
る。
日 本 保 険学会 シ ンポジ ウ ム ( 米 山 )
2 0 0 8/ 1 0/ 2 0
ご清 ふ あ り が とう ござ い ま した
23
H I T OT S U B 人 S H I
U N I V E R S I TY
・ 本報告 に 際 しま して は 、 こ の 僅 0 年 間 実 務 の 中 心 に
い ら っ し ゃ っ た 実 務 家 の 皆 様 か ら ご教 示 い た だ い た
他 、 先 学 の 多 く の 研 究 書を 参 考 と さ せ て
て い た だき ま
した 最 後 とな り ま した が 、 記 し て 感 謝寸 申
申 し 上 げま す 。
・ し か しな が ら 、 報告 に お け る 事 実 認識も お
お よ び解 釈 の
間 違 い に つ い て は 、 報告 者 の 責 任 です 。 事 後 的 で も
ゞ指
結構 です か ら 下 記ア ド レ ス 宛 に ご
指摘
摘を いただ けれ
ば幸 甚 です 。
報 告 者 連 絡ア ド レ ス
yo n eyam a@P icCo lo m isc. h itをu . aC.i P
日 本保 険学会シ ンポジ ウ ム ( 米 山 )
2 0 0 8/ l o /2 0
24
【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 『 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ
: 上柳 敏 郎
保険 自 由 化 1 0 年 と 消費者 問題
弁護 士 ・ 早稲 田 大学 上 柳
敏
郎
本報告 は 、 1 9 9 5 年保険業法改正以 降 の 制 度改革 と そ の も と で の 運用 に つ い て 、 保険契
約者 な い し 消 費者 の視点 か ら 、 功罪 を検討す る と と も に 、 今後 の 方 向性 を 考 え よ う と す る も
のであ る。
1 . 自 由 化 の 1 0 年 ・ ・ 消 費者 (契約者) と 大 き な 関 わ り の あ る 諸改正
保 険業法 は 、 1 9 9 5 (平成 7 ) 年 に全面 的 に 改定 さ れ た。 同 改定 と そ の 後 の制 度改革 は 、
多岐 に わ た る が 、 全体 と し て 自 由 化 な い し 規制緩和 を め ざ し た も の で 、 保険商 品 の 多様化や
業者 間 競争の 変容 を招 く も の で あ り 、 ま た 、 保護基金 の創設や 開 示 の 強化 は一面 で は そ の 後
の保険会社破綻の 土俵 を整備 し た も の と い え 、 いずれ も 消 費者 の利 害 に 大 き な影響 を 与 え る
も の で あ っ た。
(1)
1 9 9 5 年保 険業法改 正
1 9 9 5 年改定 は 、 1 9 3 9 ( 昭和 1 4 ) 年制 定 の保険業法 の カ タ カ ナ表記 を ひ ら が な 表
記 に 改 め 、 保険行政 の も と で の 統制 色 の 強 か っ た制 度 を 、 そ の 後 の省令や通達 に よ る 制 度改
革 を 反 映 さ せ 、 抜本 的 に 改 定 し よ う と し た 。
同 改定 に よ る 諸制 度改革 に つ い て 、 消 費者 の 立場か ら も 第一 に 注 目 さ れ る の は 、 規制緩和
な い し 自 由 化 の 諸策 で あ る 。 ①保険商 品 設計 の 自 由 化や 、 ②業 際規制 の緩和 、 ③資産運用 方
法の 規制 緩和 に かか わ る も の で あ る 。 同 改定 に先 だ っ て と り ま と め ら れた保険審議会 の 平成
4 年 6 月 7 日 答 申 「新 し い保険事業 の 在 り 方」 は 、
「 3 つ の指針」 の 一つ と し て 、
「①規制
緩和 、 自 由 化 に よ る 競争 の促進 、 事業 の 効 率化 」 を 掲 げ て い た。
す な わ ち 、 商 品設計や料率 に 関 し 届 出制 が 一部導入 さ れた。 商 品 設計 は 、 従来保険行政の
一律認可制 の も と に あ っ た が 、 大企業 向 け 大 口 保険等 、 契約者保護 に欠 け る お そ れ の 少 な い
も の に 限定 さ れた も の の届 出制 が 新た に 導入 さ れ、 自 由 化 に む か っ た の で あ る 。 損害保険料
率 に つ い て 、 料率算 出 団 体が 算 出す る 火災保険、 地震保険、 自 動車保険等 の 料率 を 届 出制 と
【 平成 2 0 年 度 日 本保 険学会 大 会 】
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ
: 上柳 敏 郎
し た。 そ れ ま で の 業者 間 競争 は 商 品 設計や料率 と い う 商 品価格 の 根幹 に つ い て 競争制 限下 に
お かれ た も の で あ っ た と こ ろ 、 同 改 定 に よ り 商 品 設計上 の 競争 に 道 が 開 かれ た 。 消 費者側 か
ら み る と 、 そ れ ま で は と も すれ ば 、 親族や地縁 、 職場 関係 の 知 り 合 い な い し そ の 紹介 の 生命
保 険募集人や損 害保 険代理店 が あ る か ど う か が 選択 の 基準 で あ っ た の が 、 商 品 比較 に よ る 選
択 の 条件 が 開 かれ る こ と に な っ た の で あ る 。
ま た 、 子会社方式 に よ る 生損保相 互参入 の 道 が 開 かれ た。 生命保 険事業 と 損 害保 険事業 の
兼業禁止規定 は維持 さ れた も の も の の 、 そ れ ま で は 、 性質が 異 な る と さ れた 生命保険 と 損害
保 険が 、 子会社方式の も の に 事実上 同 一 ブ ラ ン ド の も と で提供 さ れ る よ う に な っ た。 ま た 、
傷害 ・ 疾病 ・ 介護保 険 の い わ ゆ る 第三分野保険 に つ い て 、 生損保両者が 扱 え る 方 向 が 打 ち 出
さ れ た。 第 三分野商 品 が 目 立つ よ う に な っ た こ と と 相 ま っ て 、 購入チ ャ ンネ ル が 増加 な い し
多様化す る こ と に な っ た 。
さ ら に 、 財産利 用 方法書が 廃止 さ れ た。 運用 対象 の 制 限や 、 国 内 株式や外貨建 て 資産へ の
投資 、 不動 産等 に つ い て 、 一般勘 定 の 一 定割合 以 内 に と ど め る 旨 の 制 限 は設 定 さ れ た も の の 、
資 産運用 面 で の 大 き な 自 由 化 で あ る 。
1 9 9 5 年改 定 で は 、 ④ ソ ルベ ン シ ー マ ー ジ ン 基準導入 、 ⑤標 準責任準備金制 度 の 導入 、
⑥経営財務 内 容 の 開 示 、 ⑦保険契約者保護基金 の創設 、 ⑧保険金額削減 に 関す る 規定 の 削 除
な ど も な さ れ た。 こ れ ら の 規定 は 、 前述 の 自 由 化 ・ 規制 緩和策 と 裏腹の 関係 に あ る と も い え
る と と も に 、 保 険会社の破綻 が あ り う る こ と を 前提 と す る 制 度 と も い え る 。 こ の う ち 保 険契
約者保護基金の創設 は 、 ま さ に破綻時 の 対応方法の整備 で あ り 、 そ の ほ かの 諸策 も 、 破綻予
防策 な い し 早期 警戒措置、 さ ら に は 消 費者側 に 回避可能性 を 少 な く と も 理論 的 に は 与 え る も
の と 位置 づ け る こ と が で き る 。
(2)
1 9 9 0 年代後 半 の 改革
そ の 後 1 9 9 0 年代後 半の 自 由 化 の進展 と し て は 、 保 険会社 と 金融他業態 と の 相 互参入、
窓 口 販売 が あ げ ら れ る 。
1 9 9 8 年 1 2 月 か ら 、 保 険会社が 証券子会社 を 設 立 し た り 破綻銀行 を 取得す る こ と が で
き る よ う に な っ た。 証券会社が 保 険業 に 参入す る こ と も 認 め ら れ た 。 さ ら に 、 1 9 9 9 年 1
0 月 か ら 、 銀行子会社及び証券子会社 の 設 立や既存銀行 の 取得 が 可能 と な っ た。 銀行 は 、 1
2
【 平成 2 0 年度 日 本保 険 学会 大 会 】
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ
; 上柳 敏 郎
9 9 8 年 1 2 月 以 降 、 破綻 し た 既存保 険会社 を 子会社 と す る こ と が で き る よ う るこ な り 、 2 0
0 0 年 1 0 月 か ら は 、 破綻会社 の 制 限 が 解 かれ た 。
ま た 、 1 9 9 8 年 1 2 月 か ら 、 保 険会社が 投資信託 を 販売 で き る よ う を こ な っ た 。
ま た 、 破綻予 防 ・ 対応策 の 展 開 と し て 、 保 険早期 是正措置 の 導入 ( 1 9 9 9 年 4 月 ) 、 支
払 保証制 度 の 創設 な ど が あ げ ら れ る 。
( 3 ) 2 0 0 0 年代 の 改革
自 由 化 ・ 規制 緩和 の 展 開 と し て 、 2 0 0 1 年 4 月 以 降 、 銀行 が 一 定 の 保 険 を 窓 ロ 販売 で き
る よ う に な っ た。
破綻予 防 ・ 対応策 の 展 開 と し て 、 2 0 0 0 年 5 月 、 保 険相 互会社の株式会社化 の 促進す る
保 険業 法改正 が な さ れ 、 同 年 6 月 に 施行 さ れ た。 ま た 、 金融機 関 等 の 更 生手続 の 特例 に 関 す
る 法律 (更 生特例 法) が 制 定 さ れ 、 2 0 0 0 年 1 0 月 か ら 施行 さ れ 、 同 月 千代 田 生命保 険相
互会社 と 協栄 生命保 険株式会社 の 2 社が 更 生手続 き に 入 っ た 。 生命保 険契約者保護機構へ の
政府支援 強化 も な さ れ た 。
さ ら に 、 2 0 0 3 年 8 月 施行 の 改正保 険業法 は 、 予 定利 率 の 引 き 下 げ を 可能 と し た。 契約
条件 の 変 更 を 行 わ な け れ ば営 業 の継続 が 困 難 と な る お そ れ が 高 ま っ た 場合 に 、 3 パ ー セ ン ト
を 限度 と し て 、 当 局 に よ る 承認 を 受 け る と い う も の で あ る 。
2 0 0 0 年代 に 入 り 、 勧誘規制 に か か わ る 法律改正等 が な さ れ た。 2 0 0 0 年 の 消 費者契
約 法や金融商 品 販売 法 の 制 定 、 2 0 0 5 年 の 無認可共済 ・ 少額短期保 険業者規制 、 2 0 0 6
年 の 金融商 品 取 引 法 と そ れ に と も な う 保 険業法改正 、 2 0 0 8 年 の保 険法改正 と 続い た 。 さ
ら に 、 現在 、 保 険業 法 改正 の 議論 が 続 い て い る 。
2 . 利便性 の 向 上 と そ の影
1 9 9 5 年保 険業法改 定 に あ た っ て は 、 国 民経済 的 見 地 及び 国 際性 と と も に 、 利 用 者 の 立
場 が 強調 さ れ た が 、 そ の 実現度や功罪 に つ い て は慎重 な 検証が 必要 で あ る 。
前述 の 保 険審議会 平成 4 年 6 月 7 日 答 申 は 、
『①規制 緩和 、 自 由 化 に よ る 競争の促進 、 事
業 の 効 率化 、 ②健全性 の 維持 、 ③公正 な 事業運営 、 の 3 つ を 指針 と 」 す る 旨 述べ る と と も に 、
【 平成 2 0 年 度 日 本保 険学会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レ ジ ュ メ : 上柳 敏 郎
そ の 前提 と し て 、
「保 険事業 に つ い て は 、 利 用 者 の 立場 、 国 民経済 的 見地 、 国 際性 の い ずれ
の視点 か ら も 、 効 率性 が 強 く 求 め ら れ て い る 。 」 と 指摘 し て い た。
1 9 9 5 年以 降 の 制 度 改革 は 、 基本 的 に 自 由 化 ・ 規制緩和 を め ざす も の で あ っ た が 、 必ず
し も 自 由 化施策 が 徹底 し た わ け で は な く 、 ま た 、 そ の 自 由 化等 が 利 用 者 の 立場 を 強化 し た わ
け で も な い。 む し ろ 全般的 に み る と 、 国 際性 な い し 外資参入へ の 対応 の 側 面 が 強 か っ た よ う
に 思われ る 。
( 1 ) 販売 ル ー ト 及 び商 品 の 多様化
例 え ば、 生損保 の相 互参入や銀行 の 窓 口 販売 な ど 、 販売ルー ト の 多様化 は 、 一般的 に歓迎
さ れ た と 思 われ る が 、 他業態 で の 優越 的 地位濫用 や 、 リ ス ク に つ い て の 説 明 不 足 に よ る 誤解
や混 同 が 懸念 さ れ る 1 。 1 9 9 0 年前後 の 変額保 険 を め ぐ る 消 費者被害 の 記憶 は 、 ま だ払拭
さ れ て お ら ず 、 銀行等 が 販売 手数料 目 当 て に 、 無理 な保 険販売 を す る の で は な い か と い う 懸
念 は根 強 い。
ま た 、 保 険商 品 の 多様化 は 、 第三分野保 険 を 中 心 に 一 定程度 実現 し た と い え る が 、 違 い が
良 く わ か ら な い と か 、 か え っ て そ れ ほ ど意 味 の な い 差異 の た め に 商 品 比較 が で き な い と い う
声 も 多い。
自 由 化 な い し 競争促進 の も と で 、 募集人や代理店 の 勧誘姿勢 は 、 消 費者 に と っ て 改善 さ れ
た 面 も あ る が 、 不招 請勧誘 の 弊害 が な く な っ た わ け で は な い。
予 定利 率低減 に つ い て 理解 し な い ま ま に 、 募集人や代理店 の 販売圧力 の も と で 、 保 険契約
を 乗 り 換 え た 例 も 多 い。 こ の 場合 も 、 新 た に 開 発 さ れ た 「 多様 な 」 商 品 が 、 か え っ て 、 旧 契
約 と の損得比較 を し に く く し た と も い え る 。 あ る い は 、 高 い予定利 率への 対応 の た め に 、 多
様 な 商 品 を も っ て 、 乗 り 換 え促進策 が と ら れ た と も 見 ら れ る 。 ま た 、 商 品 の 多様化 が保 険料
不 払 い 多発 の 一 因 で も あ る と い う 説 明 も な さ れ た 。
1 「 1 8 年 1 月 ~ 1 9 年 5 月 ま で に 保 険会社及 び銀行等 で受 け 付 け た 窓販 関係 の 苦情 は 、 期 間 通
算 で 3, 828 件 (銀行等 1 , 406 件 、 生保会社 2, 3 1 5 件 、 損保会社 1 07 件) と な っ て お り 、 1 8 年
7 月 を 境 に 大幅 に 増加 し て い る 。 こ の う ち 、 説 明 不 足 に 関 す る も の が 最 も 多 く 、 圧力 ・ 抱 き
合 わせ販売 に 関す る も の は 、 8 件 で あ っ た 。 」 金融庁 「銀行等 の 保 険募集 に 関 す る モ ニ タ リ
ン グ結果 に つ い て 」 金融審議会第 二部会 資料平成 1 9 年 9 月 1 8 日 (金融庁 ホ ー ム ペー ジ所
収)
4
【 平成 2 0 年度 日 本保 険学会 大 会 】
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ
: 上柳敏 郎
マ ルチ チ ャ ネ ル化や保険仲 立人 は 、 消 費者側 を 支援す る こ と が 期待 さ れ た が 、 活用 は ま だ
ま だで あ る 。 消 費者側 に対す る 助言 に よ る 売 り 上 げ を 中 心 と す る と い う 仲 立入 の ビ ジネ ス モ
デル は 、 理念 と し て は望 ま し い と 思われ る が 、 現実 に採算 を確保す る の は難 し い の か も し れ
な し 、。
( 2 ) 破綻処理
こ の 1 0 年 の 間 に 、 保険会社の破綻が 現実の も の と な り 、 契約者 に 大 き な 実損2 と 心労 を
も た ら し た。 た だ一面 と し て は 、 破綻処理 を 一 定 の透 明性の も と に整然 と な し と げた 、 早期
警戒措置等 の 施策 が 被害 を 抑 え た と い う 面 も あ る と 思 う 。
保険業法 に 基づ く 手続に よ り 、 保険契約 を 新会社 に包括移転 し た の が 、 1 9 9 7 年 4 月 の
日 産生命 、 1 9 9 9 年 6 月 の 東邦 生命 、 2 0 0 0 年 5 月 の 第 百 生命 、 2 0 0 0 年 8 月 る 大正
生命 で あ る 。 前述 の 更生特例法 の 手続 に よ っ た の が 、 2 0 0 0 年 1 0 月 の 千代 田 生命 と 協栄
生命 、 2 0 0 1 年 3 月 の 東京 生命 で あ る 。
( 3 ) 無認可 共済 規制 等
保険契約 に も 適用 が あ る 消 費者契約法や金融商 品販売法が 制 定 さ れ、 ま た 、 無認可共済規
制 や不払 い摘発 は 、 金融行政が 、 業界だ け で な く 消 費者 の ほ う を 向 き 出 し た現れ と い え る 。
と い っ て も 裏 か ら 言 う と 、 法 のす き 間 が 放置 さ れた ま ま に 、 自 由 化が な さ れた と い う こ と
でも ある。
( 4 ) 開 示 、 ガバ ナ ン ス
経営財務 内 容や ソ ルベ ン シー マ ー ジ ン に 関す る 開 示 は進 ん だが 、 消 費者が 十分 に活用 で き
る も の と は言い難い。 消費者及び消 費者団 体側 の リ テ ラ シー不 足 の 問題 も あ ろ う が 、 開 示 の
わ か り をこ く さ 、 内 容及び真実性へ の 不信 、 適切 な解説者 な い し 助言者 の 不足等 の 問題が 大 き
2解約返戻金 の 削減率等 に つ い て 、 田 口 誠 『被保険者の た め に積み立て ら れた金額 と 解約返
戻金」 生命保 険論集 1 62 号 2 86 頁 等。
5
【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大 会 】
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ
: 上柳敏 郎
2 0 0 8 年 1 0 月 に破綻 し た 大和 生命 は 、 2 0 0 8 年 3 月 期 決算 で発表 し た ソ ルベ ン シ ー
マ ー ジ ン は 5 5 5 . 4 % と 2 0 0 % を 上 回 っ て い た が 、 破綻時 に 発表 し た 2 0 0 8 年 9 月 末
の ソ ルベ ン シー マ ー ジ ン は 2 6 . 6 % に 急落 し た3。
3 . 事故 ・ 不祥事 と そ の 背景
( 1 ) 保 険金 不 払 い
保 険金不払 い を め ぐ っ て 、 2 0 0 5 年以 降 、 生命保 険 ( 2 0 0 5 年 2 月 、 2 0 0 5 年 1 0
月 、 2 0 0 6 年 7 月 ) 、 付 随的損 害保 険金 ( 2 0 0 5 年 1 1 月 、 2 0 0 6 年 5 月 、 2 0 0 6
年 6 月 ) 、 第三分野 ( 2 0 0 7 年 3 月 ) 、 火 災保険料過徴収 ( 2 0 0 7 年) と 、 摘発 が 相 次
い だ。
自 由 化以前 か ら 同様 の 問題 は あ っ た と も い え る が 、 自 由 化 を 背景 に 各社で4大量発生 し た
と 思 われ る 5。 言 い換 え る と 、 従前 か ら の 契約者軽視姿勢 の 問題 と 、 自 由 化 ・ 収益重視経営
下 で の 問題 と が あ る 。
( 2 ) 破綻
前述 の よ う をこ 、 1 9 9 7 年か ら 2 0 0 1 年 に か け て 現実化 し た保険会社の破綻 は 、 契約者
に 大 き な 実損6 ご 心 労 を も た ら し た 。 そ の 後 終 息 を み て い た が 、 今 後 は本 当 に 大 丈 夫 な の か 、
消 費者側 の 不 安 は残 っ て い た 。
2 0 0 8 年 1 0 月 に は 、 8 社 目 の破綻が 現実化 し た。 保険会社は 、 相 当 割合 の 有価証券投
資 を し て お り 、 全般的 な株価下落 の な かで 、 不安 が 再燃 し て い る 。
3 asalu.com2008 年 1 0 月 1 0 日 。
4 金融庁 「保険金等支払管理態勢 の 再点検及び不払事案 に係 る 再検証の 結果 に つ い て 」 平成
1 7 年 1 0 月 28 日 (金融庁 ホ ー ム ペー ジ所収) は 、 明 治安 田 生命 の件数 が 突 出 し て い る こ と を
指摘 し つ つ 、 同社以外 に お い て 「①支払査定基準等 の 改定等 に 関す る 経営 陣の 関与 、 ②支払
査定の過程 に お け る 外部 チ ェ ッ ク 機能 、 ③不払状況への 経営 陣への 報告 、 ④不払 に 関す る 苦
情へ の適切 な 対応 」 に つ い て の 要改善点 が認 め ら れ た と す る 。
5 社 内 弁護士 の 関 与 が 問題 と さ れ た 事例 も あ っ た。 同 弁護士 の コ ン プ ラ イ ア ン ス 上 の 問題 と
と も に 、 収益優 先 の 結果 で あ っ た と も 思 わ れ る 。
6解約返戻金 の 削減率等 につ い て 、 田 口 誠 『被保険者 の た め に積み立て ら れた金額 と 解約返
戻金 」 生命保 険論集 1 62 号 286 頁 等。
6
【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大 会 】
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ
: 上柳 敏 郎
( 3 ) 不 当 勧誘 、 変 額保 険等
バ ブル期 の 銀行融資 に よ る 変額保 険 に よ っ て 多数 の 契約者 が 生活 の 本拠 を 失 っ た。
険 は 、 1 9 8 0 年代後 半、 生命保 険会社及び提携銀行 の 大 き な 収益源 と な っ た が 、
変 額保
同時にそ
の 後 の破綻 の 要 因 の 一 つ と も な り 、 あ わせ て 、 多数 の 契約者 に被害 を 与 え た 。
最近 、 変額保 険 ・ 年金 に つ い て 、 消 費者相 談 が ま た 増 え て き た 。
4 . 課題
( 1 ) 勧誘規制
コ ン プ ラ イ ア ン ス や手数料 の 問題 、 金融商 品 取 引 法及び保 険業 法改正 に よ る 勧誘規制 の 実
効性の検証、 さ ら に 生保外交員や損保代理店 と い う 販売体制 自 体の 再考が 必要 で あ る 。 つ ま
り 、 不招 請勧誘禁止 の 問題意識 と 現実性 に つ い て の 真剣 な論議 が 必要 で あ る 。
適合性原則 に つ い て 、 販売 チ ャ ンネ ルや商 品 の 多様化 に 対応 し て 、 顧客調査義務 と と も に 、
商 品調査義務 が 強調 さ れ る べ き で あ る 。 顧客調査義務や説 明 義務、 助 言義務 に つ い て は 、 証
券 に 関 し て判例理論や行政実務 が 蓄積 さ れて き た が 、 保険 に お け る 消費者の ニ ー ズや契約 の
長期性 に 対応 し た適用 な い し 応用 が課題 で あ る 。 保険料 は誰 の も の か、 契約 な の か金融商 品
な の か、 保 険法理 の 原理的 な 部分 に も 検討が 必要 と 考 え る 。
ま た 、 今 後保 険会社 の 海外展 開 が進 む と 思 われ る が 、 外 国 に お い て も コ ン プ ラ イ ア ン ス や
自 主規制 を 含 め 規律 を 遵守 し 、 消 費者保護 と 保 険会社へ
険会社 の信頼 を 確保すべ き と こ ろ で あ る 。
( ア ) 不招 請勧誘 の 禁止
不招請勧誘 の禁止 は 、 旧 金融先物取 引 法 7 6 条 4 号が 外 国為 替証拠金取 引 に つ い て 導入 し 、
つ い で金融商 品 取 引 法 3 8 条 3 号が 規定 し ( 2 0 0 7 年 9 月 施行) 、 特定預貯金 に つ い て 銀
行法 1 3 条 の 4 、 特定保険 に つ い て保険業法 3 0 0 条 の 2 が 準用 し て い る 。 金融商 品 取 引 法
3 8 条 3 号は、
「金融商 品 取 引 契約 ( 当 該金融商 品 取 引 契約 の 内容そ の他の 事情 を 勘案 し 、
投資者 の保護 を 図 る こ と が 特 に 必要 な も の と し て 政令で定 め る も の に 限 る 。 ) の締結 の勧誘
の 要請 を し て い な い顧客 に 対 し 、 訪 問 し 又 は電話 を か け て 、 金融商 品 契約 の 締結 の 勧誘 を す
る 行為 」 を 禁止 し 、 同 法施行令 1 6 条 の 4 第 1 項 は 、 店頭金融先物 取 引 を 指 定 し て い る 。
7
【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大 会 】
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ
: 上柳 敏 郎
つ ま り 、 現時点 に お い て 実際 に 、 保険商 品 で 、 不招 請勧誘 の 禁止 の 対象 に な っ て い る も の
は な いo
し か し 、 不招 請勧誘 の禁止 の保 険分野への 導入 は 、 消 費者 の 不測 の損害 を 回避す る た め だ
け で な く 、 保険商 品 の ビ ジネ ス モ デル に 対 し て も 大 き な意義 が あ る と 考 え 、 特定保険 は も ち
ろ ん保 険商 品 全般 に つ い て 実施 さ れ る べ き で あ る と 考 え る 。
不招請勧誘 の禁止 の も と で こ そ 、 リ ス ク と リ タ ー ン の 配分 な い し ポー ト フ ォ リ オや、 保険
商 品 と 投資商 品 の配分 につ い て 、 真 に 消 費者主導 と な る 。 こ れ は 、 金融商 品 全般 に つ い て 市
場 の 価格形成機能 が 発揮 さ れ る こ と で も あ る 。
保険商 品 に つ い て い え ば、 募集人や代理店 の積極的 な勧誘 に よ っ て購入意欲 を 喚起す る 手
法で は な く 、 商 品 設計や募集主体の健全性 に つ い て の 競争 を 実現す る こ と に な る 。
( イ ) 適合性原則
適合性原則 は 、 金融商 品取 引 法 4 0 条 が 、
「金融商 品 取 引 行為 に つ い て 、 顧客 の 知識、 経
験、 財産 の 状況及び金融商 品 取 引 契約 を 締結す る 目 的 に 照 ら し て 不適 当 と 認 め ら れ る 勧誘 を
行っ て 投資者の保護 に 欠 け る こ と と な っ て お り 、 又 は欠 け る こ と と な る お そ れ が あ る こ と 」
の な い よ う に 業務 を 行 わ な け れ ば な ら な い と 規定 し 、 特定預貯金 に つ い て 銀行法 1 3 条 の 4 、
特定保 険 に つ い て 保 険業法 3 0 0 条 の 2 が 準用 し て い る 。
ま た 、 最高裁判所平成 1 7 年 7 月 1 4 日 判決 は 、 証券会社に つ い て 、 適合性原則違反 が 民
事責任 を発生 さ れ る こ と を 明 示 し た。 各界で検討が 始 ま っ て い る 民法 (債権法) 改正論議 の
な かで も 、 民法 の 一般原則 と し て 、 適合性 の 原則 が 論 じ ら れ て い る 。
純粋 な保 険商 品 に つ い て 、 投資商 品 (証券等投資取 引 ) と の 異 同 を 考 え る と 、 こ の よ う な
適合性原則 が ス ト レ ー ト に 当 て は ま る か ど う か は検討の 余地が あ る 。 あ て は ま る と し て も 、
不適合 な 商 品 の購入 を勧誘 し て は な ら な い と い う よ り 、 保険の 場合 は顧客 に 最 も 適合 し た設
計 の 契約 を提示すべ き で あ る と い う ベス ト ア ドバイ ス 義務が 強調 さ れ る こ と も 多 い。
法理の検討に あ た っ て は、 保険 に お い て は 、 契約 関係 が長期 間 に わ た っ て継続す る こ と 、
業者 の 契約履行 が ず っ と 後 の 時期 に な る こ と を 十分 に ふ ま え る 必要 が あ る 。 が 、 保険 も 現在
と 将来 の キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー の 交換で あ り 、 一 定の リ ス ク を含有す る と い う 面 か ら は 、 金融商
QO
【 平成 20 年度 日 本保 険学会 大 会 】
シ ン ポ ジ ウ ム 『 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ
: 上柳 敏 郎
品 一般 と 同様 に保険一般 に適合性原則 が適用 さ れ る べ き で あ る と 考 え る 。 保険業法改正か ら
金融サ ー ビ ス 法へつ な が っ て い く 分野で あ る 。
そ し て 、 適合性原則 に つ い て は 、 顧客調査義務 ( ノ ウ ・ ヨ ア ・ カ ス タ マ ー) と 商 品調査義
務 ( ノ ウ ・ ヨ ア ・ プ ロ ダ ク ト ) の 両面 が 強調 さ れ る べ き で あ る 。
( ウ ) 説 明 義務
説 明 義務 に つ い て 、 法令及び判例法理が 展 開 し て き た。 い わ ゆ る 変額保険 に つ い て 、 消 費
者勝訴事例 も 敗訴事例 も 多数蓄積 さ れて き た と こ ろ で あ り 、 再発 防止 の た め に も 、 遵守態勢
の 確立 と 、 自 主規制 、 当 局 監視 が 必要 で あ る 。
広告規制 や団 体生命保険の ヒ ュ ー マ ンバ リ ュ ー特約 に つ い て の 同 意 の 問題等 も 、 重要 で あ
る。
( 2 ) 開 示規制
開 示 の 必要性 に つ い て 、 総論的 に は争い は な い と 思 われ る 。 し か し 、 実質 に つ い て は 、 不
信 は深い。 消費者側 リ テ ラ シー の 向 上 も 課題で あ る 。 こ こ が解消 さ れ な い と 、 別 の場面 で も
問題 が発 生 し た り 、 制 度改革 の論議 が ゆ が ん だ り す る と 思 う 。
保険数理面や積立金、 解約返戻金 の 計算 関係 に つ い て も 、 開 示 を も っ と 進 め る べ き で あ る
と 考 え る 。 各社の 企業秘密 で あ る 部分や事業上 の ノ ウ ハ ウ の 部分 も 多 い と は思 う が 、 実際 に
は業界 関係者 は互い に おお よ そ 知 っ て い て 、 し か し 実際 に は カ ルテ ル的 に 消 費者 に は知 ら せ
ない こ と に な っ てい る のでは と さ え思 う 面が あ る 。
し か し 、 保険契約者保護 の た め に は 、 開 示 だ け で は足 り な い の で は な い か。 一 定 の 運用 制
限や一 定 の 商 品 規制 が 必要 で あ る 。 投資′性の 商 品 や組み合 わせ商 品 は制 限 し 、 保険商 品 は保
険 に 純化す る べ き で あ る と 考 え て い る 。 保険は保険 に ア ンバ ン ド リ ン グ さ れ る べ き で あ る 。
業 際規制緩和 は持 ち株会社方式で進 め て 良 い が 、 商 品 は純化すべ き で あ る 。 保険勘 定 の 分別
管理や倒 産隔壁 を維持 し つつ 、 総合金融サ ー ビ ス 業 と し て 、 ワ ン ス ト ッ プサ ー ビス やポー ト
フ ォ リ オ に つ い て の助言サ ー ビ ス を提供 し う る よ う に し 、 個 人情報 の 一 定の利用 を認 め 、 ノ
ウ ハ ウ や 国 際競争条件確保す る の で あ る 。
9
【 平成 2 0 年度 日 本保 険学会 大会 】
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検証」
レジュ メ
: 上柳 敏 郎
( 3 ) ガバ ナ ン ス 規制
勧誘や販売 の 問題 に つ い て 、 消 費者 は金融行政や 司 法事後救済 に頼 ら ざ る を え な い の で あ
る が 、 そ れ ら に 完全 を 求 め る の は そ う 簡 単 で は な く 消 費者 に し わ 寄せ が き て い る 。
本来 は 、 保険会社の ガバ ナ ン ス 機構 を 通 じ て 自 治的 に 、 利 害 関係者が 経営 陣 に 対 し 勧誘や
開 示 の適正 を 実現 さ せ る こ と が 期待 さ れ る 。 本来 は 、 契約者の利 益 を 最大 に し て こ そ 、 会社
の長期 的利 益が 実現 さ れ、 出 資者 の 利 益 に も な る はずで あ る 。 相 互会社制 度や 、 総代制 度 は 、
本来 、 最適 の ガバ ナ ン ス 態勢 を め ざ し た も の で あ っ た と 思 われ る 。
し か し 、 保険会社の 運用 に つ い て 、 消費者 ・ 契約者 の 関 与 な い し コ ン ト ロ ール は 、 実質的
に は皆無 に近い。 い わ ば契約者大衆が 、 日 常 の 運用 に は無 関 心で あ る と い う か、 参画す る 余
裕や意 思 を 持 ち 合 わせ て い な い こ と も 現実 で あ る 。
出 資者が 契約者利益 を は か る た め の イ ンセ ンテ ィ ブ と し て 、 公的規制 な い し 監督が 必要 と
なる。
参考文献
甘利公人 『生命保 険契約 法 の 基礎理論』 有斐 閣 、 2007
石 田 成則編著 『保険事業 の イ ノ ベー シ ョ ン』 慶應義塾大学 出 版会 、 2008/
植草益編 『現代 日 本 の 損害保 険産業』 NTT 出 版、 1 999
木村栄一 、 野村修也 、 平澤敷 『損害保 険論』 有斐 閣 、 2006
鹿 野嘉昭 『 日 本 の 金融制 度
第 2 版』 東洋経済 新報社 、 2006
高柳一男 『 明 治安 田 生命 の 不 当 不払 い事件 に お け る 企業法務対応 」 2005 年 1 2 月 1 5 日 研究会
報告 (早稲 田 大学 グ ロ ーバル COE プ ロ グ ラ ム 企業法制 と 法創造総合研究所ホ ー ム ペー ジ
所収)
田 口 誠 「被保 険者 の た め に積み立 て ら れた金額 と 解約返戻金」 生命保 険論集 1 62 号 269 頁
武 田 久義 『 生命保 険会社の 経営破綻』 成文堂 、 2008
出 口 治 明 『 生命保 険入 門 』 岩波書店 、 2004
日 本弁護士連合会 「保 険業法 の 改正 に 関す る 意見書」 2008 年 2 月 14 日 ( 日 弁連 ホ ー ム ペー
所収 )
lo
【 平成 2 0 年度 日 本保 険学会 大 会 1
シ ン ポ ジ ウ ム 「 自 由 化後 1 0 年 の 検 証 」
レジュ メ
: 上柳 敏 郎
堀 田 - 古 『保 険理論 と 保険政策』 東洋経済新報社、 2003
山 下孝 之 『 生命保 険 の 財産法的側 面』 商事法務 、 2003
山 下友信 『現代 の 生命 ・ 傷害保 険法』 弘文 堂 、 1999
山 野嘉朝 『保 険契約 と 消 費者保護 の 法理』 成文堂 : 、 2007
11
彦 保 険会社経営 の 健全性確保 につ い て
2 008 年 1 0 月 2 5 日 ( 土 )
日 本保険学会 大会
格付 投資情報センター ( R &I )
格付本部チーフアナ リ ス ト
植村 信保
魂 本 日 の報告
1 . 健 全 性確 保 の 枠 組 み の 変 化
2 . 中 堅生 保の 経営 破綻
3 . 健全性規制 の 動 向 と 今 後 の 方 向 性
4 . 会 計 と ディ ス ク ロ ー ジ ャ ー
5 . ガ バナ ン ス 面
製
晝 1 健全踵確保の 枠組みの 変化
霊
「 護 送 船 団 」 か ら 現在 の 枠 組 み へ
・
.
保 険 業 法 改 正 ( 1 99 5 年 ) 以 前
監督 当 局 に 広 範な権限
.
実態 的監督主 義
現在 の 健 全 性確 保 の 枠組 み
.
・
.
.
自 己 規 律 ( リ ス ク 管 理 態 勢 、 ガ バナ ン ス 面 )
.
行政 に よる規律
.
市場規律
現在 の 枠 組 み は 十 分 機 能 し て い る か ?
2 . 中 堅 生 保 の 経営 破綻
彊
.
.
中 堅 生 保 7社 の 相 次 ぐ 経 営 破 綻
・
.
総資 産シェア で L O% 以上 の 生保が短期 間 に破綻
拙 著 「 経営 なき破綻 平 成生 保危機 の 真実 」
.
平 成金 融危機 に お け る 生 保破綻 の 要 因 分析 を 実 施
.
統計 手 法 で は な く 、 公 表 資 料 や イ ン タ ビ ュ ー 調 査 に 基 づ く
以下 の3 点 につ いて考察
.
.
破綻 に 至っ た要 因
そ の よう な行動 がと ら れた理 由
.
当 時 の 経 営 者 と 経 営 チ ごソ ク 機 能 、 リ ス ク 管 理 態 勢 の 実 態
一 連 の 生 保破綻 に は外 的 要 因 ばか り でなく 、 内 的要
因 、 すなわち 個 別 オペ レーショ ン の 問 題 が重要であ
る こ と が浮き彫 引 こなっ た
保険会 社 の 経営 破綻
1 995年
保 険 業 法 改 正 ( S M 基 準 導 入 、 ディ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 な ど )
1 996年
日米
1 997
率 自 由 化 が決ま
.
‘
′ 一 翼 ^蓚 國拷腰鬘 燭 '-
-
‐
~
1 998年
G Eエ ジ ソ ン 生 命 の 設 立 ( 東 邦 生 命 か ら 営 業 権譲 受 )
保 有 株 式 の 原 価 法 評 価 が認 め ら れ る
1 999 年
早期 是 正 措置 の 導 入
マニュラ イフ 、 第 百 生 命 か ら 営 業権譲 受
の
第一 火 災 と協栄 生命 が業務 ・ 資本提携
2000 年
第 一 火 災 に 業 務停 止 命 令
ク レア モ ン ト キ ャ ピ タ ル が大 正 生 命 の 増 資 引 受 け
保険業 法 改正 ( 更 生手続の 導入 )
大 成 火 災 が安 田 火 災 、 日 産 火 災 と の 合 併 を 発 表
2 00 1 年
大 成 火 災 が更 生 特例 法 の 適用 申 請
正 劫m 名
2003 年
2005
の′ ・
が可 能 に
杲 険 業 法 改 正 ( セ ーフティ ネ ッ ト 見 直 し )
( 出 所 ) 筆者作 成
日 産生命
破綻時
処理完 了
手続き
債 務 超 過額
東邦 生命
第百生命
大正生命
千 代 田 生命
1 9 9 7 年 4 月 1 9 9 9 年 6 月 2000 年 5 月 2000 年 8 月 2 000 年 1 0 月
1 9 9 7 年 1 0 月 2000 年 3 月 2 0 0 1 年 4 月 200 1 年 3 月 200 1 年 4 月
行 政 手 続 き 行 政 手 続 き 行 政 手 続 き 行 政 手 続 き 更 牛 特例 法
5 9 5 0億 円
365億 円
3 1 77億 円
6 5 00億 円
3 02 9 億 円
不明
不明
劣 後 ロ ーンな ど
一 般債権
保 護機 構 等 の
資金援助
責任準備金 の 削 減
不明
2000億 円
3663億 円
1 4 5 0億 円
26 7 億 円
0%
1 0%
1 0%
1 0%
営 業権
1 232億 円
2 400 億 円
1 47 0億 円
不明
予定利率
破綻前 ( 平 均 )
破綻後 ( 上 限 )
早期 解約控除
東京生命
協栄生命
200 1 年 3 月
2000 年 1 0 月
20 0 1 年 1 0 月
200 l 年 4 月
更 生 特例 法 更 生 特 例 法
731 億 円
6895億 円
全額免 除
全額免 除
全 額免 除
なし
なし
なし
1 0%
8%
0%
7 0 億 円 約 3 2 00 億 円
3 64 0 億 円
325億 円
4. 20%
不明
47 9%
4。46%
4.05%
3 ,7 0%
4.00%
2 7 5%
1 5 0%
L O O%
1 .0 0%
1 . 5 0%
17 5%
2.60%
7年間
8年間
1 0年 間
9年間
1 0年 間
8年間
1 0.5 年 間
米 プ ルデ ン シャ ル 太 陽 生 命 ・
米 AI G
あ ざみ 生 命
マ ニ ユラ イ フ
受 け皿会社また は あ お ば生 命 GEエジ ソン
大同生命
生命
生命
再建スポン サー
* あ お ば生 命 は 生 命 保 険 協 会 が設 立 、 そ の 後 フ ラ ン ス ・ ア ルテ ミ ス グ ル ー プ に 売 却 。 2004 年 に プ ル デ ン シ ャ ル 生 命 と 合 併
* あ ぎ み 生 命 は 大 和 生 命 と ソ フ ト バ ン ク が合 弁 で設 立 、 そ の 後 ソ フ ト バ ン ク は 離 脱
* 千 代 田 生 命 は AIG ス タ ー 生 命 、 協 栄 生 命 は ジ ブラ ル タ 生 命 、 東 京 生 命 はT&D フ ィ ナ ン シ ャ ル 生 命 に そ れ ぞ れ 商 号 変 更
( 資料) 各種 資 料 よ り 筆者作 成
融 2轟堅生保の経営破綻
騨 破綻 リ スク を高 め る 内 的 要 因
. ビ ジネスモデル
. 歴 史 的 背 景 の 果 た し た 役 割 / 過 去 の 体 験 に よ る 影響 / 社 内
文 化 の 問 題 / 創 業 家 な ど の 影響 / 採 用 し た 経 営 戦 略 ・ ビ ジ
ネスモデル の 問 題/他 の 構造 問 題
・ 経営者に関するもの
. ト ッ プ の 適 性 の 問 題 / ト ッ プ の 影響 力 の 強 さ / ト ッ プ周 辺 の
不適切 な行動 /経営 内 部 の 牽制 機能の 欠 如 /経営意識の
欠 如 / マ ネ ジ メ ン ト の 弱 さ / 状 況 認識 の 遅 れ や 甘 さ / 経 営
判 断の ミス
. 経 営 組織 に 関 す る も の
. 情報伝 達 機 能 の 問 題 / 牽 制 機 能 の 不 備 / リ ス ク 管 理 態 勢
の 不備/ 営 業部 門 の 発言 力 が強 い/部 門 間 の 連携不 足
製
廳 3 健全荘規制 の動 向 と今後 の 方 向 性
嚢
健全性規制 の 動 向
・
ソ ル ベ ン シ ー ・ マ ー ジ ン 比 率 ( SM R) の 導 入
.
経営 危機を未 然 に 防止す る 指標
1 9 99 年 か ら 「 実 質 資 産 負 債 差 額 」 と と も に 早 期 是 正 措 置 の 発
動基準に
.
更 生 手続き 申 立 て の 基準 と して は 「 将来収支分析」
平 成 生 保 破 綻 を 防 げな か っ た
過 去 の 事 例 で は 、 直 前 ま でS M Rが 200 % を 超 え て い た 会 社 が
いく つ も破綻 して しまっ た
・
S M Rの 見 直 し
・
2 0 07 年 4 月 の 金 融 庁 報 告 書
.
経 済価 値 ベ ー ス の ソ ル ベ ン シ ー 規制 を 志 向
.
「 ソ ルベンシー ・ マージン比率の 算 出 基準等 に 関する 検討会 」
国 際的な動 向 と調和
3 . 健全性規制 の 動 向 と 今 後 の 寿 両 性
ソ ルベ ン シー ・ マ ー ジ ン 比 率 の 算 出 方 式
ソ ル ベ ン シ ー ・ マ ー ジ ン 総額
ソ ルベンシー ・ マージ ン 比率 =
、
リ スク の 合 計額
×
1 /2
レベ ンぐ 一 ・ マージン 比
2 00 % 以 上
非対象
定正 日 逗の
1 00 % 以 上 2 00 % 未 満
経営 改善計画 の 提 出 と実行
0 % 以 上 1 00 % 未 満
支払能 力 の 充実計画 の 提 出 と実行
配 当 ・ 役員 賞 与の禁止や抑制
新規 契 約 の 保 険 料 計 算 方 法 の 変 更
事業費の 抑制
一部の営業所、 事務所の廃止
子会社等 の 業務 の 縮 小
など
0%未満
業務の 全部また は 一 部 の 停止命 令
* な お 、 早期 是正 措置 の 発動基準 に は 「実 質 資産 負債差額」 も あ る
9
3 健全 性規制 の 動 向 と今 後 の 方 向 性
保朧 衾撻 齢 リ ス ク 暮 理の 高 蜜 化 へ の
釜薹市場褻 議 の 反 駛
イ ン セ ンテ# ブ
1 国 際鞠な議 高との整合性
」
・ 直 近デ▼割 こ基づ く
リ スク係数の見直し
鬱 リ スク係数の信頼水
凖の引 上 げ
・ 各社 範 資 産轤歳割合を基 に
分 散投 資 効 果 を 計 算 す る 方
法を検討
・ 繰 越 競全 資 産 等 の 算 入 の
適正化 に 高 鼾た横肘
舞 え て 不 断 の 拒 蘂 を 涯欖 橇 “
縫 済 価 艫バ ー ス で の 費艫謙
艫 《 いわゆ る 係駿 箕債ぬ特 価
群 価 〉 鱒 繭 fT だ 躍 範み
ニ 擬 議 員 艫 の 最 皺 舵競 へ の
見積 り 作業誘 着 手
輻準糞 リ スク癈議手 法 霞 高度
鷺 へ の 取組み
爵 各 社 窃 ALM 鑓 爽 轆 鑿 を 反 醸
した 叢荊 リ スク窃 計 測 審 議の
筏 蓬 } 欧 州 に 塞 い て 経 済舞 櫨 ペ ー ス
の ソ ルベ ンシー講 価 嚢 魂誇ため
の 節 目 の 年 を窓養 と 兜 邊叢れて 態
10
總≦ ◎ . 健全挫規制 の 藁 高 と 今後 の 芳 向性
霊 国 際的な検討状 況
・ IAS B ( 国 際 会 計 基 準 審 議 会 )
. 保 険 契 約 の 国 際会 計 基 準 を 検 討
. 2007 年 5 月 に D P ( 論 点 書 ) を 公 表 、 2 008 年 に 公 開 草 案 ?
. IAIS ( 保 険 監 督 者 国 際機構 )
. 経 済価 値 ベ ー ス の ソ ル ベ ン シ ー 基 準 を 検 討
. 2 007 年 2 月 に 「 ス ト ラ ク チ ャ ー ・ ペ ー パ ー 」 公 表
. CEIO PS ( 欧 州 保 険 年 金 監 督 者 会 議 )
. ソ ルベンシー □ を検討
. 2008 年4- 7 月 にQIS4を 実 施
. 20 1 2 年 の 導 入 を 目 指 す
11
製
蝨 4 会計とディスク □ *ジヤ*
彊
保 険会 計 の 問 題
.
.
監督会計 に財務会計 が加 わ っ た 中 途半 端なも の に
・
収入 と支 出 の 対 応期 間 の ずれ
.
責 任準備金 は ロ ック イン方 式
.
税効 果会計 の 導入
不 十 分 な ディ ス ク ロ ー ジ ャ ー
.
中 堅 生 保 の 破 綻 事 例 で は 、 行 政 当 局 以 外 の 外 部 チ ヱソ ク は
.
ディ ス ク ロ ー ジ ャ ー の 利 用 者 も 限 ら れ て い た
.
保 険 会 計 の 枠 組 み を 超 え た ディ ス ク ロ ー ジ ャ ー の 動 き も
ほ と ん ど機能 して い な か っ た
12
4 . 会 計 と ディ ス ク 薹 - ジ ャ ー
郭生命の
借 対 照 表 ( 1 99 9 年 3 月 末 )
修正 後
修正後
修正前
との差額
現預金
645
コ ー′し ロ ーン
480
金銭の信託
有価証券
単位 : 億 円
554
= ,486
保険契約準備金
責任準備金
0
借入金
‐1 ,1 62
貸倒 引 当 金
0
価格変動準備金
‐245 負債 の 都 合計
0
25,33 1
0
0
24, 7 l 5
0
公社債
株式
3,02 1
外 国 証券
5,3 1 6
‐46 7
基金
1 ,7 80
‐45 1
法 定準備金
貸 付金
9 ,304
‐4 0
一般貸 付
不 動 産 及 び動 産
8,6 1 3
‐40
1 ,953
0
1 ,368
その 他 の 証券
資産 の 都合計
25,708
修正 前
と の 差額
一 転 274
21 5
0
1 , 204
963
62
0
27 ,6 94
962
1 00
0
12
0
剰余金
当 期未処分剰余金
資本 の 都 合計
‐2,09 8
‐2,236
‐2 , 1 1 2
‐2 ,23 6
‐1 ,986
‐2,236
負債 及 び資 本 の 都 合 計
25, 708
‐1 ,274
( 資料 ) 1 999 年 東邦 生命社 員 総代会 資 料よ り 作 成
13
4 . 会 計 と ディ ス ク ロ ー ジ ャ ー
三 利 源損益 の 推移
88/3
89/3
90/3
9 1 /3
9 2/3
9 3/3
9 5/3
94/3
9 6/3
‐24
費差益
‐2 9
‐25
12
‐1 5
‐3 4
‐30
‐2 2
‐3 6
死差 益
1 23
1 43
1 56
1 53
1 57
1 39
1 64
1 68
1 86
刺差益
70
60
1 1 9
95
66
‐1 8
‐1 41
‐2 1 6
‐2 7 5
f 65
1 78
287
233
91
2
‐8 5
‐1 1 3
合計
1 89 I
( 資料) 東京 生 命 の 検査報告書よ り 作 成
14
亀 会 計 と ディ ス ク 薹 - ジ ャ ー
金 利 低下 の 影響
< 資産 >
< 負債 >
<
>
* 実 際 に は 資 産 以 上 に 負債 が増 加
( 資産 の Du R < 負債 の DURの 場合 )
* 現行会 計 で は 資 産 の み 増 加
15
≦ ′ " ユー
2 00 7 / 3
EV ( E m b e d d e d Va l u e )
修正純資産
既契約の将来価値
EVの うち 新 契 約 分
2 0 0 8 /3
200 7
3
1
1 ス
・
‐7 35
‐ 1 52
552
462
‐90
902
1 82
1 - ・ レー 0.5 % 上 白
感応 度 2 ( リ スク ・ フ リ ー ・ レー ト0.5 % 低下 )
感応 度 3 (株 式 ・ 不 動 産価 値 1 0 % 下 落)
感応度4 (解約失効率1 0%低下 )
感応度5 (事業費率1 0%減少)
( 資 料 ) T& D ホー ル ディ ン グ ス 決 算 資 料 よ り 作 成
増減
‐2, 7 23
‐1 ,95 1
334
< 前 提 条 件 を 変 更 し た 場 合 の EVへ の 影 響 >
200 8 /3
9,907
5,329
4, 5 7 7
‐ 1 ,637
EV
2007/3
1 2 , 6 30
7 , 2 80
5 , 3 49
5 , 749
4,847
株主配 当
保険 関 係 の 前提条件 変 更
予 定収益
前 提 条 件 と 200 8 年 3 月 期 実 績 の 差 異
運用 関 係収 益差異
2008 年3 月 期 新 契 約 EV
2008 年3 月 期 EV
感心
増減
7,386
5, 749
1 ,637
< 前 年 度 か ら の 主 な EV 変 動 要 因 >
ロ
大 同 生命
太陽生命
‐902
‐7 7 2
大 同 生命
太陽生命
7 386
1 2 630
‐6 1
‐1 65
40 7
‐3 2
‐1 ,969
1 82
5, 749
‐99
4 50
554
‐1 55
‐3 , 3 2 4
462
9 , 907
T&D 保 険 グ ル ープ の EV の 変 動
1 6 40
‐2,03 6
‐ 1 ,570
5 94
41 8
鬮
ガバナンス面
破 綻 し た 保 険 会 社 で は 、 自 己 規律 、 行 政 に よ る 規律 、
市 場 規律 の い ずれ も がう ま く 機 能 し な か っ た
最も重要な 内 的要 因 は 「 経営者 に 関 す る も の 」 。 すなわち 、
破綻会 社 の コ ーポ レー トガバナンス が十 分でな か っ た こ と
が 、 破綻 リ スクを高 め る こ と になった
ガ バナ ン ス が働 き や す い 組織 の 構 築 がで き れ ば 、 経
営 者 に 起 因 す る 破 綻 リ ス ク を 小 さ く でき る
例 え ば 、 経営 内 容を 「 見える 」 よう にす る
当 時も 現在 も 会 計情報だ けで は 生 保経営 を 把握す る の は
不可能 に近い
17
大成 火 災 の 再保険取 引 の 仕組み
契約者
( 航空 会 社 な ど )
< F R再 保 険プー ル >
< 金 融再 保 険 >
【 FR社 】
受 再会社
(再 々 保険会社 )
( 5年 間 で返済
再 保険料
出 再会社
( 元 受 保険会社 )
【 プー ル メン バー 】
・ 大成火災
・ 日 産火災
・ あい おい損保
再保険料
< 伝統 的 再 保 険 >
受 再会 社
( 再 々 保 険会 社 )
( 資 料 ) あ い お い 損 保 会 社 説 明 会 資 料 ( 20 0 1 年 1 2 月 )
18
6 . ガバ ナ ン ス 面
霊
リ スク管理態勢
ど ん な に 形 を 整 え 、 きち ん と 数 値 を 算 出 し て も 、 経 営
に 活用 されな けれ ば リ スク 管 理 に はな ら な い
1 980年 代 後 半 の 中 堅 生 保 に 「 リ ス ク 」 と い う 感覚 が全 くな
かったわ けで はない
問 題 は経営 に 生 かされなかっ た こ と
近 年 で は リ スク 管 理 の 普及 に加 え 、 技術 が進み 、 高
度 なALM や 統 合 的 な リ ス ク 管 理 も 可 能 に
.
現 状 の 生 保 の リ ス ク 管 理 やALM ( 資 産 ・ 負 債 の 総 合 管 理 ) に
は依然 と して 改善 の 余 地が大き い
他方 、 生保 は従 来 あま り 意識 して こな か っ た経営 リ スクを抱
える よう に もなっ てきた
.
19
5 . ガバナンス 面
I ス
ンノ ミ
ト
%o
基礎 利 益
特別 勘 定運用 収支
(対特別勘定 資産)
08/3
07/3
ハー トフ オー ド 生 命
三 井住 友 海上 メツ トラ イフ生命
ア イエヌ ジー生命
東京海上 自 動フィナンシャ ル生 命
住友生命
マニ ュラ イフ 生 命
三井生命
ア リ コジヤパン
T&Dフィナ ン シ ャ ル生 命
0 8/3
前期差
責 任 準備金 出 再保 険に よ り
積 増 の 影 響 控 除さ れた 責 任 準備 金
08/3
0 8 /3
‐ 1 0. 1 %
5.5
1 17
63
‐9
‐ 1 2. 7%
6.3
26
64
‐ = . 9%
3。5
1 2l
21
‐ = . 0%
6.O
‐6 1
‐8.6%
45
‐9 . 9%
4.4
前期 差
0
1 ,236
1 , 6 24
1 ,420
1 , 40 6
1 ,408
‐=
‐1 37
746
71 7
2,382
‐6 47
‐6 7 7
1
0
‐1 2
‐= 5
‐58
1 , 1 97
583
‐5 5
3
0
‐2 1 0
0
O
‐5.5%
4. 1
667
‐2 5 3
‐ 1 2.6%
4. O
1 ,039
1 00
‐ 1 2 .8%
2. 1 %
‐ 1 82
‐1 1 7
872
( 注 ) 特 別 勘 定 資 産 は 期 首 ・ 期 末 平 均 、 三 井 住 友 海 上 メ ッ ト ラ イ フ の 基礎 利 益 は 保 険 業 法 1 1 3 条繰 延 ・ 償 却 前
基礎 利 益 の う ち 責 任 準 備 金 積 増 の 影 響 は 判 明 し た 会 社 の み
( 資 料 ) 各 社 の 決 算 発 表 資 料 、 日 本 経 済新 聞 ( 2 008 年 6 月 1 4 日 ) よ り 作 成
20
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