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サプライチェーンの混乱と震災復興政策 Author(s)
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<論文> サプライチェーンの混乱と震災復興政策
森原, 康仁
資本と地域 (2012), 8: 1-19
2012-03
http://hdl.handle.net/2433/160693
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
サプライチェーンの混乱と震災復興政策(森原)
<論文Ⅰ>
サプライチェーンの混乱と震災復興政策
森原 康仁
以下では、まず第 1 節で、今回の震災が企業の生産能
はじめに
力にどの程度ダメージを与えたのかを把握し、サプライ
2011 年 3 月 11 日午後 2 時 46 分に東北三陸沖で発生し
チェーン問題がクローズアップされた背景を理解する。
たマグニチュード 9.0、最大震度 7 の大地震(東日本大
次に第 2 節および第 3 節で、震災をきっかけに露呈した
震災)は、34 万 1,411 人の避難者を生み、1 万 5,846 人
サプライチェーンの脆弱性、これを克服するために採ら
も の 尊い 命 を奪 い、 3,320 人の 行 方不 明者 を 出し た
れた対応、生産能力の急速な回復とその背景を整理する
(2012 年 2 月 6 日現在)
。地震動と被害規模の大きさだ
(先の論点の第一から第三)
。そして最後に、サプライチ
けからみても、間違いなく第二次大戦後最悪の災害とし
ェーン問題に焦点化された復興政策がはらむ問題点を指
て歴史に刻まれるだろう。
摘したい。
この災禍を筆舌に尽くしがたいものにしたのは、まず
第一に、地震とほぼ同時に津波が発生したからである。
地震および津波の被害は北海道から静岡、三重県にいた
第1節 資本ストックの毀損とサプライチェーンへの注
る 18 都道府県におよび、津波の被害は三陸沿岸の自治体
目
に集中した(岡田[2011b]
、
[2011c]
)。しかも第二に、
福島第一原発の外部電源が地震動および津波によって消
1項 震災のマクロ的影響
失し、ベント作業によって大量の放射性物質が飛散し水
まず 2011 年 3 月 23 日に公表された内閣府の試算をも
素爆発も発生した。石橋[1997]が警告していた「原発
とに地震と津波によるマクロ的影響をみておこう5。同試
震災」が現実のものとなったのである1。
算によれば、直接的被害(社会資本、住宅、民間企業設
これまで震災・津波・原発危機という三重の災害が経
備といった資本ストックの毀損)は約 16 兆~25 兆円で、
済や産業に及ぼす影響として、①企業の生産能力の毀損
このうち岩手、宮城、福島 3 県で約 14 兆~23 兆円を占
による総供給の減少、②こうした被害を生む「基盤」2に
める。これは阪神淡路大震災における被災地の毀損額約
よって「日本リスク」が再認識させられること、③日本
9.6 兆円(国土庁推計)を最大 2 倍強上回る規模である。
企業の海外依存を加速させる可能性などが指摘されてき
さらに資本ストックの毀損はフロー(GDP)にも間接的
た。そしてこれらがあいまって、
「潜在成長率の下方屈折」 な影響をおよぼす。震災による民間企業設備の毀損額は
が生じかねないと「警告」されてきた3。
約 9 兆~16 兆円と見込まれているので、この結果年間で
本稿が取り上げるのは、これらのうち①の生産能力の
約 1 兆 2,500 億円~2 兆 5,000 億円分 GDP が押し下げら
毀損である。というのもこの問題は、震災直後から「サ
れる。しかも他地域の生産減による GDP の減少額は
プライチェーン問題」として把握され、大量の議論が積
2011 年度前半で約 2,500 億円にのぼると見込まれた。
み上げられてきたばかりでなく4、政府や自治体の復興政
その後 6 月 24 日、内閣府は震災と津波による直接被害
策の柱のひとつとして位置づけられてきたからである。
額の推計値(16.9 兆円)を発表した6。第1表によれば、
震災によるサプライチェーンの混乱をめぐる論点は 3 つ
建築物(住宅、店舗、工場など)の損害額が 10 兆 4,000
ある。第一は、トヨタ生産方式に代表されるように、
「強
億円で阪神淡路大震災時の 1.6 倍、農林水産関係や保健
靭」に思われた日本製造業のサプライチェーンがいとも
医療施設などその他部門の損害額が 3 兆円で同 6 倍、原
簡単に打撃をこうむったのはなぜかということである。
発施設も含まれるライフラインの損害額が 1 兆 3,000 億
第二は、サプライチェーンの復旧と今後のリスク対応が
円で同約 2.2 倍、社会基盤の損害額が 2 兆 2,000 億円だ
はらむ問題点と具体的な処方箋である。第三は、サプラ
った。3.11 後に発表された民間機関による推計値もおお
イチェーン(生産ネットワーク)の「ボトルネック」を
むね 15 兆~20 兆円の幅であり7、実際の調査によってこ
構成する諸企業のダメージを回復しようとする「インセ
れらの推計が裏付けられたと考えてよいだろう。
ンティブ」がどこから生じるかということである。
1
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サプライチェーンの混乱と震災復興政策(森原)
第2表 全国の業種別生産の対前月比推移(2011 年 3 月~12 月)
業 種
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11月
12 月
鉱工業全体
-15.5%
1.6%
6.2%
3.8%
0.4%
0.6%
-3.3%
2.2%
-2.7%
鉄鋼業
-10.2%
-2.2%
-2.1%
1.0%
-0.7%
2.4%
-2.9%
2.6%
-1.2% -0.8%
非鉄金属
-16.5%
3.2%
1.9%
2.7%
1.2%
2.5%
-2.3%
5.4%
-2.5%
金属製品
-10.7%
2.1%
3.4%
2.9%
-2.4%
0.2%
-4.4%
2.5%
一般機械
-14.5%
12.0%
5.6%
-0.8%
0.5%
1.0%
-6.1%
3.1%
電気機械
-10.2%
4.4%
2.4%
4.6%
-0.2%
0.8%
-7.4%
0.2%
情報通信機械
-8.0% -16.7% 13.5% 15.0% 15.8% -10.6%
-7.8%
-6.8% -23.7% 34.8%
電子部品・デバイス
-6.6% -12.6%
-0.6%
4.0%
2.4%
0.7% -0.1%
-0.3%
0.9%
0.2% -1.1%
5.2%
-3.4%
1.2%
-2.3%
-5.6%
0.5%
7.1%
11.5% -10.0% 12.3%
輸送機械
-46.7%
-1.9% 36.6% 19.5%
5.5%
6.7%
-5.9%
精密機械
-12.9%
13.6%
1.8%
9.9%
5.7%
-2.2%
-1.3%
2.0%
-3.7%
窯業・土石製品
-5.1%
0.2%
-1.8%
0.5%
1.0%
1.1%
-2.7%
1.5%
-0.4% -0.2%
化学
-2.3%
-0.1% 11.0%
-0.3%
-6.3%
0.6%
0.0%
-0.4%
-1.5%
NA
2.8%
石油・石炭製品
-12.3%
-0.4%
1.0%
5.7%
1.3%
-0.5%
-4.3%
1.3%
-0.9%
0.2%
プラスチック製品
-11.9%
4.6%
5.1%
-2.1%
-0.5%
0.0%
-4.9%
2.8%
0.9%
3.5%
パルプ・紙・紙加工品
-8.3%
-0.4%
-1.5%
1.9%
-2.2%
1.8%
-1.5%
5.8%
0.5% -0.2%
繊維
-1.8%
-0.9%
-0.9%
0.4%
0.3%
1.8%
-3.7%
-1.0%
2.4%
0.6%
食料品・たばこ
-8.7%
7.1%
1.0%
-3.1%
2.1%
-3.3%
0.9%
0.8%
2.4%
NA
その他
-9.4%
6.1%
0.5%
-0.7%
-0.7%
-0.3%
-1.3%
-0.9%
0.7%
2.0%
注:12 月の数値は推計値。NA はデータがないことを意味する。
出所:経済産業省「鉱工業生産指数」より筆者作成。
第 3 表 生産の落込みが顕著な業種(2011 年 3 月)
乗用車・バス・トラック
-54.2%
自動車部品
-42.1%
二輪自動車
-39.8%
ボイラ・原動機
-33.2%
光学部品
-31.6%
時計
-30.2%
民生用 電子機械
-29.0%
半導体部品
-28.8%
半導体・フラットパネル製造装置
-26.4%
化学機械
-25.8%
産 業車両
-25.4%
注: 数値は対前月比。
出所: 経済産業省「鉱工業生産指数」より筆者作成。
3
資
本
と
地
第 8 号(2012 年 3 月)
域
第4表 東北地域の業種別生産動向(2011 年 3 月)
業 種
対全国(倍 )
前月比
鉱工業全体
-25.0%
1.6
電子部品・デバイス
-28.5%
4.3
化学
-47.1%
20.5
輸送機械
-43.8%
0.9
食料品・たばこ
-36.0%
4.1
一般機械
-26.7%
1.8
情報通信機械
-29.1%
3.6
鉄鋼業
-65.6%
6.4
パルプ・紙・紙加工品
-59.3%
7.1
注: 「対全国」は全国の同業種の前月比との比
出所:経産省東北経済産業局「東北地域鉱工業生産指数」より筆者作成。
第5表 原材料、部品・部材の調達困難の背景(単位:%)
調達先企業が 調達先企業の
被災
調達先が被災
流通網の不全
計画停電の影響
その他
素材業種
88
42
27
35
12
加工業種
82
91
18
50
23
注: 調査期間は 2011 年 4 月 8 日~4 月 15 日。対象企業は 80 社(製造業 55 社、小売・サービス業 25 社)。
出所:経済産業省「東日本大震災後の産業実態緊急調査」より筆者作成。
対前月比で生産が 25%以上落ち込んだ業種を細分して
電機産業であった。
みているのが第 3 表である。同表によれば、東日本大震
災で生産能力に打撃を受けた業種は乗用車や自動車部品
2項 電気・電機産業への被害の集中とサプライチェー
などを生産する自動車産業、半導体や半導体製造装置、
ンの毀損
その要因は東北地域に立地する企業・事業所と地域外
電子機器を生産する電気・電機産業、さらに精密機械産
の企業・事業所との間に結ばれた部品供給網――サプラ
業などが中心であることがわかる。
以上は全国的な動向だが、東北地域の生産動向は異な
イチェーンの寸断である。第 5 表は原材料や部品・部材
った特徴がみられる。第 4 表によれば、もっとも打撃を
の調達困難の背景をみたものである。これによると、
「調
受けた業種は鉄鋼業で、それにパルプ・紙・紙加工品、
達先企業が被災」したという理由で「原材料や部品の供
化学、輸送機械と続く。全国の生産動向では輸送機械
給が途絶えた」と回答した企業は 9 割近くに及んでいる。
(自動車産業)の生産の落ち込みが突出していたのと比
また自動車産業や電気・電機産業のような加工業種は
べるとこれは特徴的である。また化学工業は、全国レベ
91%もの企業が「調達先企業の調達先が被災」したため
ルでは他業種に比べて相対的に生産の落ち込みが軽微で
部品調達が困難になったと答えており、サプライチェー
あったが、東北地域に限定すると打撃が強いことも特徴
ンの寸断が加工業種により鋭くあらわれたことをうかが
的である(対全国比で 20.5 倍もの生産の落ち込み)
。
わせる9。
パルプ工業や鉄鋼業、化学工業は典型的な装置産業だ
また日本政策投資銀行産業調査部[2011]による資本
から、被災地に近ければ近いほど生産に深刻な打撃を受
金 10 億円以上の 3,302 社を対象にした調査(うち 1,464
けやすい。東北に立地するこれらの産業にたいして震災
社が回答)によれば、
「東日本大震災の影響のうち、自社
の影響が大きくあらわれるのは当然だろう。むしろ震災
の事業活動への影響の有無」で「サプライチェーンの混
後に注目されたのは、被災地周辺のみならず全国レベル
乱」の影響があると答えた企業は 51.2%だった。これを
で生産が大きく落ち込んだことである。先に見たように、 製 造 業 に 限 定 し て み る と 6 6 . 6 % に の ぼ る
とりわけそれが顕著に現れた業種が自動車産業や電気・
4
サプライチェーンの混乱と震災復興政策(森原)
第 6 表 2011 年 3 月期の棚卸資産減少率ランキング
順 位
社 名
棚卸資産
回転率 (%)
-21.4
棚卸資産
(億円)
307
1 (25)
タダノ
2 (68)
三菱紙
-19.0
412
3 (59)
日軽金
-16.6
530
4 (53)
NEC
-16.1
2,647
5 (112)
ダイハツ
-16.0
806
6 (23)
富士重
-15.4
1,664
7 (5)
JVCケンウ
-14.5
382
8 (181)
大日本住友
-14.2
559
9 (60)
新明和
-13.0
312
10(170)
トクヤマ
-10.5
363
11(136)
カシオ
-10.3
454
12(64)
IHI
-10.2
3,630
13(38)
太平洋セメ
-10.0
685
14(131)
三菱重
-10.0
11,162
15(142)
森永乳
-8.9
322
16(129)
トヨタ
-8.3
13,042
17(141)
味の素
-7.8
1,353
18(180)
JT
-7.4
5,138
19(15)
アマダ
-6.9
523
20(133)
マツダ
-6.6
1,970
注:カッコ内は前の期の順位、2011 年 3 月 17 日までに決算発表した 3 月期決算企業(金融、新興 2 市場除く)で 3 期間
比較可能、2011 年 3 月期の棚卸資産が 300 億円以上の製造業 187 社が対象、連結優先、変則決算除く、社名は略称。
出所:『日本経済新聞』2011 年 5 月 19 日付朝刊。
第7表 東北地域の製造業付加価値生産額
業 種
金額
(百万円)
構成比
(東北)
構成比
(全国)
構成比の差
(東北-全国)
1
食料品
636,535
13.6%
10.7%
2.9%
2
電子部品・デバイス
491,799
10.5%
5.1%
5.4%
3
情報通信機械
357,401
7.7%
3.5%
4.2%
4
化学工業
330,458
7.1%
11.4%
-4.3%
5
非鉄金属
293,543
6.3%
2.0%
4.3%
6
輸送機械
267,187
5.7%
14.4%
-8.7%
7
金属部品
232,965
5.0%
5.9%
-0.9%
8
生産用機械
227,194
4.9%
5.2%
-0.3%
9
業務用機械
193,969
4.2%
3.1%
1.1%
192,912
4.1%
3.7%
0.4%
10 飲料・たばこ・飼料
原出所:経済産業省。
出所: 法村裕紀「サプライチェーンと電力供給」『調査時報』No. 360、三菱 UFJ 信託銀行、2011 年 6 月、3 ページ。
5
資
本
と
地
第 8 号(2012 年 3 月)
域
第8表 電気機械関連産業の地方別集積状況(工場ベース)
業 種 名
北海道・東北
近畿
関東
全国
工場数 比率 (%) 工場数 比率 (%) 工場数 比率 (%) 工場数 比率 (%)
半導体製造装置生 業
3
12.5
フラットパネルディスプレイ製造装置製造業
1
25.0
電子管製造業
2
40.0
1
20.0
光電変換素子製造業
4
28.6
1
7.1
1
7.1
半導体素子製造業(光電変換素子を除く)
20
22.0
15
16.5
11
12.1
91
100
集積回路製造業
22
19.8
26
23.4
5
4.5
111
100
3
12.0
5
20.0
2
8.0
25
100
6
8.5
7
9.9
71
100
1
20.0
5
100
液晶パネル・フラットパネル製造業
7
29.2
4
16.7
24
100
4
100
5
100
14
100
26
36.6
音響部品・磁気ヘッド・小型モータ製造業
1
20.0
コネクタ・スイッチ・リレー製造業
8
28.6
6
21.4
28
100
半導体メモリメディア製造業
1
50.0
1
50.0
2
100
抵抗器・コンデンサ・変成器・複合部品製造業
2
15.4
6
46.2
2
15.4
13
100
18
20.7
28
32.2
11
12.6
87
100
電子回路実装基板製造業
1
25.0
1
25.0
4
100
電源ユニット・高周波ユニット・コントロールユニット製造業
1
25.0
光ディスク・磁気ディスク・磁気テープ製造業
電子回路基板製造業
その他のユニット部品製造業
その他の電子部品・デバイス・電子回路製造業
42
22.3
ちゅう房機器製造業
空調・住宅関連機器製造業
1
7.7
医療衛生関連機器製造業
その他の民生用 電気機械器具製造業
1
3.1
電球製造業
2
50.0
4
100
1
50.0
2
100
22
11.7
186
100
3
100
37
19.7
1
33.3
3
23.1
1
7.7
13
100
1
33.3
1
33.3
3
100
5
15.6
16
50.0
32
100
4
30.8
5
38.5
13
100
電気気照明器具製造業
1
6.3
4
25.0
1
6.3
16
100
蓄電池 製造業
3
14.3
5
23.8
7
33.3
21
100
1
16.7
3
50.0
6
100
9
10.8
83
100
9
100
一次電池(乾電池 、湿電池 )製造業
その他の電気機械器具製造業
7
8.4
30
36.1
有線通信機械器具製造業
3
33.3
5
55.6
携帯電話機・PHS電話機製造業
1
33.3
1
33.3
3
100
ラジオ受信機・テレビジョン受信機製造業
4
50.0
2
25.0
8
100
ビデオ機器製造業
2
25.0
2
25.0
8
100
3
100
3
25.0
1
8.3
12
100
15
100
1
12.5
8
100
4
100
1
16.7
6
100
1
100.0
1
100
7
100
デジタルカメラ製造業
6
50.0
10
66.7
パーソナルコンピュータ製造業
2
25.0
2
25.0
外部記憶装置製造業
1
25.0
2
50.0
印刷装置製造業
2
33.3
2
33.3
1
14.3
2
28.6
151
23.2
133
20.5
65
10.0
650
100
電気音響機械器具製造業
電子計算機製造業(パーソナルコンピュータを除く)
表示装置製造業
その他の附属装置製造業
電子部品・デバイス・電子回路製造業
電気機械器具製造業
13
6.8
54
28.4
43
22.6
190
100
情報通信機械器具製造業
16
19.0
33
39.3
8
9.5
84
100
184
19.3
227
23.8
120
12.6
952
100
総合計
注: 2009 年 3 月 31 日時点。
原出所: (財)日本立地センター「平成 22 年度『新興国シフト』に伴う家電メーカーの国内拠点への影響と競争力強化に向
けた調査報告書」30 ページ。
出所: 藤本隆宏・天野倫文「『東日本大震災』から産業社会を考える」『世界経済評論』2011 年 7/8 月号、29 ページ。
6
サプライチェーンの混乱と震災復興政策(森原)
企業が「サプライチェーン混乱」を震災の影響として挙
導体、自動車関連製品、絶縁線、制御計装用電線、輸送
げている 10 。これは「設備損傷」や「電力不足」、「物
用電線の製造)
、ルネサスエレクトロニクス那珂工場(半
流・交通網」など 10 項目の質問のうちもっとも高い回答
導体前工程(電子制御回路)の製造)など電子部品・デ
率である。
バイス産業が多数入っていることがわかる。
サプライチェーンの寸断は商品在庫や仕掛品などの棚
企業の生産能力に対するダメージに関してはサプライ
卸資産の急減につながった。部品供給が途絶えた下で操
チェーンの毀損以外にも、放射性物質の飛散や電力供給
業を続けようとすると、在庫や仕掛品などを取り崩さざ
の「不安」などほかに複数の要因が挙げられるべきだろ
るをえないからである。第 6 表は 2011 年 3 月期の棚卸
う。しかし東北に立地している部品企業が多数にのぼる
資産減少率の順位をみたものである。同表によれば、上
こと、東北地域のみならず自動車産業や電気・電機産業
位 20 位にランキングしている企業のうち、前年も 20 位
をはじめ全国的な生産動向に否定的な影響が生じたこと
以内だった企業は JVC ケンウッドとアマダのみである。
から、震災後は、サプライチェーン問題が焦点としてク
上位に入っている企業がダイハツ工業(5 位)
、富士重工
ローズアップされることになった。
業(6 位)
、トヨタ自動車(16 位)
、マツダ(20 位)など
経済産業省[2011b]はこうした生産能力への影響を
完成車メーカーと、NEC(4 位)
、カシオ(11 位)など
「供給制約」と呼び12、その実態把握を行っている。そ
の電気・電機メーカーが入っていることが特徴的である
のポイントは、①輸送用機械の生産・輸出の落ち込みが
11。
顕著であること、②被災地域の貿易シェアは小さいもの
以上のように、震災・津波は自動車産業や電気・電機
の(輸出 2%・輸入 4%)被災地域以外の地域を介した間
産業のように高度なサプライチェーンを形成している産
接輸出の落ち込みに対する影響が甚大であること、③と
業の生産基盤に甚大な影響を与えた。とりわけ被災した
くに自動車部品の場合関東を経由した輸出への影響が相
東北地域には電子部品・デバイス産業が多数立地してい
対的に大きいという3点である。
る。第 7 表によれば、同産業の域内構成比(付加価値生
産額ベース)は全国平均の倍の 10.5%で 4,917 億 9,900
万円だった。同じように情報通信機械も全国平均の約 2
第2節 サプライチェーン毀損の背景と回復に向けた対
倍の 7.7%で 3,574 億 100 万円である。
応
工場数ベースでみても同様の傾向である。第 8 表によ
れば、電子部品・デバイス・電子回路製造業、電気機械
1項 サプライチェーンの脆弱性――ダイヤモンド型サ
器具製造業、情報通信機械器具製造業の北海道・東北の
プライチェーン
工場数は、関東の 227 工場に次いで 184 工場にのぼる。
サプライチェーンの毀損が国内のみならず国際的な影
全国の工場数に占める比率が 25%を超える業種を挙げる
響を及ぼしたのはなぜか。それは、藤原[2011]、山
と、半導体メモリメディア製造業(50.0%)
、電気音響機
田・牛窪・中村[2011]、大塚・市川[2011]などが指
械器具製造業(50.0%)、電子管製造業(40.0%)、抵抗
摘するように、
「ピラミッド型」と思われていたサプライ
器・コンデンサ・変成器・複合部品製造業(36.6%)
、有
チェーンが、実際にはすそ野の狭い「ダイヤモンド型」
線通信機械器具製造業(33.3%)
、携帯電話機・PHS 電
ないし「樽型」になっていたからである(第2図)
。すな
話機製造業(33.3%)、印刷装置製造業(33.3%)、コネ
わち、日本の「ものづくり」の強みとされてきた「①在
クタ・スイッチ・リレー製造業(28.6%)
、光電変換素子
庫を圧縮することを目指す『ジャスト・インタイム方式』
製造業(28.6%)
、フラットパネルディスプレイ製造装置
の採用、②コスト削減を狙った部品・部材の大規模集中
業(25.0%)、電子回路実装基板製造業(25.0%)、電源
調達、③強固な系列関係の構築等」が、
「いたるところで
ユニット・高周波ユニット・コントロールユニット製造
オンリーワン企業」を生み、これが「ボトルネック」と
13
業(25.0%)、パーソナルコンピュータ製造業(25.0%)
、 なったのである 。
「ダイヤモンド型」のサプライチェーンの下では、
外部記憶装置製造業(25.0%)となる。
、
「Tier 3」と呼ばれる二次下請け、三次下請け
ここで生産された部品は電気・電機産業だけではなく、 「Tier 2」
が特定企業に集中する。第
10 表によれば、ルネサスエレ
自動車産業など他業種にも利用される。第 9 表によれば、
クトロニクスの生産するマイコン(マイクロ・コントロ
被災地域に立地する自動車部品工場が化学や鉄鋼産業だ
けでなく、アルプス電気古川工場(センサー、スイッチ、 ーラー)は世界市場シェア 3 割、三井金属の生産する超
薄銅箔は同 9 割、帝人デュポンフィルムの生産する反射
車載電装機器の製造)
、日立電線電線工場(半導体パッケ
ージ材料、自動車用ホース、情報機器用部品の製造)、
シート用 PET フィルムは同 6 割強、JX 日鉱日石金属の
同・高砂工場(情報ネットワーク/無線システム関連製
生産する ITO ターゲット材は同 4 割強である。シェア
品、光コンポーネント/光システム関連製品、化合物半
の高さからわかるとおり、これらの部品・部材の生産は
7
資
本
と
地
域
第 8 号(2012 年 3 月)
第9表 被災地域に立地する自動車部品各社工場
生産 拠点名
メーカー
立地拠点
アルプス電気
古川工場
宮城県大崎市
岩機ダイカスト工業
本社工場
宮城県亘理 郡
カヤバ工業
熊谷工場
埼玉 県深谷市
品 目
センサー、スイッチ、車載電装機器
ダイカスト金型の設計・政策、アルミダイカスト・亜鉛ダイカス
ト・スクイズダイカストの製品製造および出荷
特 装車両(コンクリートミキサー車、粉粒体運搬車)、空送シ
ステム、油圧機器(ギヤポンプ)、セラメタ
カルソニックカンンセイ宇都宮株式会社 栃木県宇都宮市
カーエアコン用 コンプレッサーの製造
株式会社CKF
福島県二本松市
各種センサー
株式会社CKP(栃木工場)
栃木県下野市
インスツルメントパネル、リッドコンソール、 Assyクラスター
岩代精器株式会社
福島県二本松市
建機用 モニター、建機用サーキット、傾斜角センサー
カルソニックカンセイ岩手株式会社
岩手県北上市
金属切削加工用機械製造
カルソニックカンセイ山形株式会社
山形県寒河江市
アルミダイキャスト製品(カーエアコン用コンプレッサー向け)
キリウ
キリウ山形
山形県最上郡
ブレーキディスク、ブレーキドラム、空調部品・油圧部品他
クラレ
鹿島事業所
茨城県神栖市
イソブレン、イソブチレン系化学品、熱可塑性エラストマー、
ジオール
クレハ
いわき事業所
福島県いわき市
リチウムイオン電池用の粘着剤(高機能樹脂KF ポリマー)
角田 第一工場
宮城県角田 市
角田 第二工場
宮城県角田 市
角田 第三工場
宮城県角田 市
二輪・汎用電子製品および四輪電子製品(ECU等)の製造
丸森工場
宮城県伊具郡
二輪/四輪車用インジェクターの製造
JSR
鹿島工場
茨城県神栖市
エチレンプロピレンゴム、ブタジエン、イソプレン他
新日鐵住金ステンレス
鹿島製造所
茨城県鹿嶋市
ステンレス薄板
新日本製鐵
釜石製鉄所
岩手県釜石市
棒鋼、バーインコイル、特 殊線材、普通線材、鋳物用銑鉄
住友金属工業
鹿島製鉄所
茨城県鹿嶋市
溶 接軽量H形鋼、鋼管杭、ガス管、厚板、薄板等
住友ゴム工業
白河工場
福島県白河市
乗用車/トラック/バス用タイヤ
THK
山形工場
山形県東根市
上リンクボール、ロッドエンドなど
帝人デュポンフィルム
宇都宮事業所
栃木県宇都宮市
ポリエステルフィルムの製造・加工・販売等
東洋ゴム工業
仙台工場
宮城県岩沼市
自動車タイヤ
東レ
東レ東燃機能膜合同会社
栃木県那須塩原市
バッテリーセパレータフィルム
日本化学工業
福島第一工場
福島県郡山市
正極材他
株式会社日ピス岩手一関工場(本社・
工場)
岩手県一関市
自動車用/陸・船用 ピストンリング・ロータリーエンジン部
品、他
株式会社日ピス岩手千厩工場
岩手県一関市
自動車用/陸・船用 ピスントリングの素材及び加工
株式会社日ピス福島製造所
福島県伊達郡
バルブシート、シリンダライナ、鋳鉄カムシャフト、他
日本ペイント
栃木工場
栃木県宇都宮市
塗料
日立オートモティブシステ
ムズ
佐和事業所
茨城県ひたちなか市
ECU(エンジン制御システム、サスペンションシステム)他
福島事業所
福島県伊達郡
サスペンション、ブレーキ
山崎事業所
茨城県日立市
リチウム電池用カーボン負極材
浪江 日本ブレーキ株式会社
福島県双葉郡
ブレーキパッド
電線工場
茨城県日立市
半導体パッケージ材料、自動車用ホース、情報機器用 部品
高砂工場
茨城県日立市
情報ネットワーク/無線システム関連製品、光コンポーネン
ト/光システム関連製品、化合物 半導体、自動車関連製
品、絶縁線、制御計装用電線、輸送用 電線
藤倉ゴム工業
原町 工場
福島県南相馬市
ゴム製品
プライムアースEV エナ
ジー
宮城工場
宮城県黒川郡
PEV・HEV用ニッケル水素蓄電池 、リチウムイオン電池、
BMS
三井化学
鹿島工場
茨城県神栖市
シート用 クッション材、塗料、無水マイン酸(ボディ等用)
三井金属アクト
石川工場
福島県石川郡
ドアロック等
三井金属鉱業
八戸製錬株式会社八戸精練所
青森県八戸市
亜鉛
三菱化学
筑波事業所
茨城県牛 久市
LED関連部材等
筑波製作所
茨城県常総市
いわき製作所
福島県いわき市
超硬工具、エンジン/トランスミッションなどの各種中枢構成
部品
小名浜製錬株式会社小名浜製錬所
福島県いわき市
車載用 端子、粗硫酸ニッケル
那珂 工場
茨城県ひたちなか市
半導体前工程(電子制御回路)
カルソニックカンセイ
ケーヒン
日本ピスントリング
日立化成
日立電線
三菱マテリアル
ルネサスエレクトロニクス
二輪・汎用部品(キャブレター、インジェクター、DBWスロッ
トルボディ、燃料ポンプモジュール)の製造
四輪機構製品(インテークマニホールド Assy、HVACユニッ
ト等)の製造
出所: FOURIN『日本自動車調査月報』No. 146、2011 年 5 月、9~11 ページより筆者作成。
8
サプライチェーンの混乱と震災復興政策(森原)
第2図 ピラミッド型のサプライチェーンとダイヤモンド型のサプライチェーン(模式図)
出所: 大塚哲洋・市川雄介「日本型サプライチェーンをどう評価すべきか」『みずほ総研論集』2011Ⅲ号、2011 年。
第 10 表 生産回復のボトルネックとなりうる部品・材料・装置
分野
ボトルネックとなりうる
部品・材料・装置
シリコンウェハー
半導体
各種電子機
器、自動車
世界 シェア
信越半導体
33%
SUMCO
32%
MEMC
12%
国内生産量の
5割
過酸化水素水
三菱ガス化学
反射シート用 PETフィルム
帝人デュポンフィルム
6 割強
JX日鉱日石金属
4 割強
液晶パネル ITOターゲット材
プリント
配線板
企業名
液晶パネル製造装置
ニコン
電解銅箔
三井金属
アルミ電解コンデンサ
日本ケミコン
マイコン
ルネサスエレクトロニクス
中小型パネル用 を
ほぼ独 占
9割
1 割強
3割
出所:石原伸志・加藤孝治「東日本大震災が国際物流に与えた影響――製造業企業が取り組むサプライチェーン見直し
の動きについて」みずほ銀行、2011 年 6 月 17 日、13 ページ。
代替が困難であり必然的に特定企業に生産が集中する。
く「ダイヤモンド型」になったのか、という問題である。
またこれらの部品・部材が電子機器や乗用車生産に必須
新宅[2011]によれば、これは「個別対応を重視するカ
であることは言うまでもない14。
スタマイズ化」の結果である。カスタマイズ化の背景に
「ダイヤモンド型」サプライチェーンをめぐっては、
は、①製品差異化のため特注部品・部材が利用され、②
大きく分けて2つの問題が指摘された。第一は、そもそ
そうした特注部品・部材は生産量が少ないため一社一工
もなぜサプライチェーンの型が「ピラミッド型」ではな
場に特化されがちになるという事情があるほか、③そも
9
資
本
と
地
域
第 8 号(2012 年 3 月)
第 11 表 東日本大震災を受けた部材共通化の動き
デンソー
カーエアコン、メーターなど主力製品で種類を半減へ
自動車・電子機器向け半導体の種類を2011年度中に
半減
ルネサスエレクトロニ マイコンなどの設計を共通化。工場間の代替生産も可
クス
能に。半導体受託製造会社も活用
東京エレクトロン、アド 半導体製造装置を搭載する部材を共通化。個別仕様
バンテストなど
の設計を見直し、部材メーカー間で代替生産 を可能に
自動車メーカー間でマイコンや素材の一部共通化を
トヨタ自動車
検討。エアバックやパワーウィンドーなどの制御に使う
マイコンの共通化を半導体メーカーに打診
自動車メーカー間でマイコンや素材の一部共通化を
日産自動車
検討
マイコンの調達先の分散を検討。海外の半導体メー
ホンダ
カーからの調達を増やす
トランスミッション向けオイルシールを中国とタイでも生
NOK
産する準備を始めた
東芝
出所:『日本経済新聞』2011 年 8 月 30 日付朝刊、『日経産業新聞』2011 年 9 月 20 日付。
そもある種の部材は特定の企業しか加工できないという
こうしたトレードオフ問題の解決策をめぐる代表的な
事情があった。そして①~③の結果、二次下請け、三次
議論は以下の3つである。第一は、藤本[2011]が提案
下請けが特定企業に集中し、サプライチェーンが「ダイ
する「サプライチェーンのバーチャル・デュアル化」で
ヤモンド型」になったのである。
ある。現実に調達先を二系統以上確保すると、特定企業
第二は、トヨタの佐々木眞一副社長が「下請の 2 次、3
から部品・部材を調達することによって得ていた競争優
次メーカーでは同じ会社に発注しているケースがあった」 位を失うことになる。そこで「クリティカルな設計情報
15 と述べたように、サプライチェーンが高度に複雑化し
の可搬性 (portability)」18を確保したうえで、「いざとい
ていたという問題である。つまり「1 次段階では、2 社購
う災害時に第 2 系統を迅速に立ち上げることにより、生
買にしていても、実は 5 次、6 次のサプライヤーは同じ
産ラインを、
『リアルには1本だが、いざという時には2
だったということが起き」、
「実は海外部品メーカーも、
本あるも同然』という状態に保」19とうというわけであ
末端では日本企業の部品をつかっていたことが明らかに
る。
なった」16のである。
そのうえで藤本は「バーチャル・デュアル化」の実効
性を担保するため以下のような提案をしている。すなわ
2項 サプライチェーン復旧にともなうトレードオフ問
ち、サプライチェーンを支える購買契約のうち死活的な
題
部品・工程について「バックアップ条項」を追加し、そ
いずれにせよサプライチェーンの脆弱性は「オンリー
の条項において、①代替的に利用する「バックアップラ
ワン企業」に依存するような「ダイヤモンド型」の構造
イン」を事前指名し、②一定期間でバックアップライン
から生じていたのである。しかしこれは日本製造業の競
を立ち上げるための手順を指示し、③それらの構築の実
争力の源泉でもある。すなわち、藤本・天野[2011]が
効性を担保する「設計情報の避難訓練」を義務付けるこ
指摘するように、カスタマイズ部品は日本製造業の競争
と、そしてさらにこれらの前提として④緊急時に各サプ
力の源泉であり、安易に汎用部品に置き換えることがで
ライヤーが担当する上流サプライチェーンとその被害状
きない。
「日本の場合、個々の自動車メーカーからみれば、 況を短期間のうちに把握し、下流の企業に報告すること
同種部品(例えば各種ヘッドランプ)のサプライヤーは
を義務付けるという4点である20。
二~三社、特定品種のカスタム部品の国際承認図取引な
第二は、新宅[2011]が提案する「特注部材の仕様統
ら一社供給が基本的な姿であり、それが競争合理的」17
合」である。これは汎用部品・部材の活用とは似て非な
なのである。つまり本質的な問題は、調達先を二系統以
るものである。すなわち 1990 年代以降、自動車業界で
上にすることとコストのトレードオフ、あるいは汎用部
は部品の共通化に取り組みコストを削減してきた経験を
品・部材の使用と特注部品・部材の使用のトレードオフ
もっている。新宅[2011]は、こうした専用部品・部材
である。
の活用範囲を同一企業内でさらに広げることができれば、
10
サプライチェーンの混乱と震災復興政策(森原)
第3図 サプライチェーン・ガバナンスの考え方
出所:渋谷敦巳・松川公司・竹内睦・竹本佳弘「サプライチェーン・ガバナンス――平時における有事への備え」『化学経
済』2011 年 8 月号、24 ページ。
第 12 表 製造工業稼働率指数の推移(2011 年1月~12 月)
1月
製造工業
91.1
2月
3月
93.7
73.6
4月
72.8
5月
82.1
6月
7月
86.4
86.9
8月
89.0
9月
85.8
10月
89.3
11月
12月
86.7
89.4
注:2005 年=100、季節調整済み
出所:経済産業省「稼働率・生産能力指数」
量を確保することにより、デュアルソーシングによるコ
3項 復旧に向けた具体的対応――部品・部材の共通化
スト増のマイナスを回避することができるとする。
実際には経済産業省[2011d]が嚆矢となり、完成品
第三は、柴田友厚の言う「プラットフォーム(共通基
メーカーを中心に部分的な部品・部材の共通化が進んで
盤)化」である。
「製品を構成する部品は、機種が変わっ
いる23。たとえば、2011 年 6 月 20 日、日本自動車工業
ても長期安定的に使用される共通基盤部品群と、頻繁な
会の志賀俊之会長は「震災に強いサプライチェーンを作
変更と機種ごとの違いが必要になる補完部品群の2種類
るためにも部品の共通化はできるところから実施してい
に大別できる。
(…)こうした視点を意識的に導入して製
きたい」と話した24。さらに 7 月 25 日には、トヨタの
品全体を設計することを共通基盤化という」 21 。柴田
佐々木眞一副社長が「自動車部品のうち、マイコンやゴ
[2011]の特徴は、被災地域に立地する下請けメーカー
ムなど素材の一部はメーカー間で共通化できる」
、
「2013
を、特注部品・部材をつくるメーカーから「汎用的な共
年ごろには共通の部品が出てくるのではないか」25と述
通基盤部品をベースにして補完部品との組み合わせで世
べた。また部品メーカーも完成品メーカー主導の「作り
界中の顧客の要望に応える」標準部品メーカーに転換さ
込み」によって利益の出にくい体質を変えたいという要
せることによって、
「特注品だからこそ合理的だった統合
求も相まって、部品の共通化に着手している26。
第 11 表は 2011 年 8 月~9 月時点での各社の部品・部
型供給網」を分散させ「供給網の頑健性と復元力」が高
まると論じていることである22。
材共通化の動きをみたものである。この表によればデン
11
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サプライチェーンの混乱と震災復興政策(森原)
藤本隆宏[2011]
「サプライチェーンの競争力と頑健性
山本康雄[2011]
「東日本大震災後の日本経済――供給
――東日本大震災の教訓と供給の『バーチャル・デュ
制約の影響で短期的に落ち込むが、夏場から高成長」
ア ル 化 』」 東 京 大 学 も の づ く り 経 営 研 究 セ ン タ ー
『みずほリサーチ』6 月。
DISCUSSION PAPER SERIES、No. 354、5 月。
吉岡斉・笹本征男[1996]
「核時代とは何か」
『現代思想』
第 24 巻第 6 号、5 月。
藤本隆宏・天野倫文「
『東日本大震災』から産業社会を考
える」
『世界経済評論』7/8 月号。
吉村一元[2011]
「サプライチェーンの強化策――震災
を契機として」
『化学経済』第 58 巻第 10 号、8 月。
藤本隆宏・塩沢由典[2010]「世界競争時代における企
業間・企業内競争――リカード貿易論のミクロ・マク
ルネサスエレクトロニクス[2011]『東日本大震災にお
ロ解釈をめぐって」東京大学ものづくり経営研究セン
けるルネサス那珂工場生産ラインの復旧と今後の対応
ター Discussion Paper Series、No. 322、9 月。
について』ルネサスエレクトロニクス株式会社、9 月 6
藤原裕之[2011]
「サプライチェーン寸断リスクにどう
日。
対処すべきか――海外移転を急ぐ前に考えるべきこと」
『金融経済レポート』No. 30、7 月 4 日。
レビンソン、マーク[2011]
「日本の大災害で露呈した
グローバル・サプライチェーンの大きな弱点」
『フォー
法村裕紀[2011]
「サプライチェーンと電力供給」
『調査
リン・アフェアーズ・リポート』5 月号。
時報』No. 360、三菱 UFJ 信託銀行、6 月。
鷲尾知春[2011]
「東日本大震災と日本産業の将来――
星岳雄・カシャップ、アニル[2011]
『何が日本の経済
最悪を想定し、最善を期するには」
『世界経済評論』第
55 巻第 5 号、9 月。
成長を止めたのか?』総合研究開発機構。
増田貴司[2011]
「東日本大震災後のものづくりの課題
渡辺満久[2009]「原子力関連施設周辺における活断層
評価への疑問」
『科学』第 79 巻第 2 号、2 月。
――企業はどこに活路を見いだすか」
『経営センサー』
Escaith, H. and Inomata, S. eds. [2011], Trade Patterns
第 135 号、東レ経営研究所、9 月。
and Global Value Chains in East Asia: From Trade in
Goods to Trade in Tasks, Geneva: World Trade
三井住友銀行企画調査部[2012]『産業アウトルック』
三井住友銀行、1 月。
Organization.
FOURIN『日本自動車調査月報』
。
安井肇[2011]「震災後のグローバル・サプライチェー
ン」
『金融財政事情』第 62 巻第 20 号、5 月 30 日。
山田大介・牛窪恭彦・中村朋夫[2011]
「東日本大震災
『日本経済新聞』
。
後の企業戦略の方向性に関する一考察――サプライチ
『日経産業新聞』
。
ェーンの強化と空洞化リスクへの対応」
『証券アナリス
『化学工業日報』
。
トジャーナル』第 49 巻第 10 号、10 月。
エネルギーという言葉で一貫させるべきであろうと思
うのです。原子力と言うと日本語ではどうしても、民
【注】
事利用の方があたかも中心であるかのような印象を受
ける。日本政府が核という言葉を避けて原子力という
1
元・神戸大学都市安全研究センター教授の石橋克彦
言葉を使ってきたのは、やはり軍事利用とか民事利用
は、すでに 1997 年の時点において「浜岡以外の原発
の密接な連関性についてのリアルな認識を薄めようと
でも、直下や近傍の大地震によって浜岡と同様の原発
してきたからです」
(吉岡・笹本、128~129 ページ)
。
震災がおこる可能性は現実的な問題」であり、
「全国の
2
原発について、原発震災のポテンシャルが相対的に高
東日本大震災が「安全神話大国」である日本の「基盤
い原子炉から順次廃炉にし、日本全体の原発震災の確
問題」を露呈させたとしている。
率を段階的に下げていくというような道筋を、真剣に
3
考えなければならない」
(石橋[1997]
、724 ページ)
『日本離れ』という形で潜在成長率の『下方屈折』を
と警告していた。また石橋は地震列島日本において原
生み出す可能性、日本企業の海外移転・海外部品調達
子力発電に依存することは、電力供給危機の長期継続
比率の引き上げは空洞化を促進、雇用の悪化と技術者
という地震リスクを抱えることにもなると指摘してい
の海外流出を加速する」と述べている。
た(石橋[2008]
)
。原発建設計画において地震リスク
4
が過小評価されていた実態について、渡辺[2009]も
できる。
「分散し、高度に専門化されたビジネスオペレ
参照。なお「原子力」という表現の政治的・社会的な
ーションにはかなりの経済的優位があった」
。すなわち
意味につき、吉岡・笹本[1996]の以下の指摘も参照。
「第1に、各メーカーは(…)自分が最も強い領域に
「軍事利用と民事利用、あるいは民生利用と言っても
おける特定の部品に特化できる」し、
「第2に、このタ
いいですが、両者を一体として捉えるには、やはり核
たとえば、大濱[2011a]
[2011b][2011c]
。大濱は
たとえば、白川[2011]は「日本リスクの再認識が
典型的な認識は、レビンソン[2011]にみることが
イプの生産方式によって規模の経済性を生かせるよう
17
資
本
と
地
域
第 8 号(2012 年 3 月)
になった」
。しかしそれゆえに「サプライチェーンのど
20
藤本[2011]
、25 ページ。
こかで予期せぬ事態が起きれば、ここで流れが遮断さ
21
柴田[2011]
。
れ、遠く離れたサプライチェーンの次のポイントへの
22
柴田[2011]。ただし「統合型供給網」の(完成品
供給が途絶えてしまう」という「リスク」も抱え込む
メーカーにとっての)メリットが、
「標準部品メーカー」
ことになる(レビンソン[2011]
、32~33 ページ)
。
の台頭によってどのように推移するかは明確ではない。
5 以下、内閣府[2011a]を参照。本試算の対象地域は
藤本[2011]や新宅[2011]が実質的に「完成品メー
青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の6県と北海道
カー」の視点からみたトレードオフ問題を論じていた
の1道6県であり、対象期間は 2011 年度~2013 年度
のに対し、柴田[2011]は下請メーカーからみた戦略
である。
を論じている。この違いが、柴田の「トレードオフ問
6
題」に対するあいまいさを生んでいると考えられる。
なおこの推計は青森から千葉までの太平洋岸各県と
栃木、新潟、長野の各県、さらに各省庁が集めたデー
23
タを基礎にしており、3 月 23 日発表の推計とソースが
うな提言を取りまとめている。
「
〔サプライチェーンの
異なる。また東京電力福島第1原発については、設備
強靭化に向けた取り組みとして〕第一に、単一サプラ
の損壊額は織り込まれているものの、放射性物質の飛
イヤーによる生産拠点の分散化・複線化の推進である。
散による被害は含まれていない。
あくまでコスト競争力を落とすことのないよう留意し
7
小黒[2011]
、6 ページ。
ながら、中核部素材等の生産拠点を複数化・分散化を
8
同時期に経済産業省の産業競争力審議会も以下のよ
2011 年 9 月以降は、国内外での PC・デジタル家電
進め、自社の他ラインでの代替生産を可能とするもの
の需要減やタイの洪水にともなう部品供給の途絶によ
である。第二に、再編や事業の共同化の促進により、
って生産が減退した。加えて円高によって輸出が伸び
全国レベルでの生産拠点の分散化を進めることである。
悩んだ(三井住友銀行企画調査部[2012]
)
。
第三に、複数サプライヤーによる災害時代替供給契約
9
の締結などによる体制構築を促すことである。第四に、
岡田[2011b]
[2011c]が指摘するように、ここから
被災地域を実質的に「東北地域」に限定し、被災の実
バランスの取れた仕様・部品の整理・共通化を行い、
態を「サプライチェーンの寸断」に限定する言説が生
コアでない部素材の代替可能性を確保するとともに、
まれる。
川上産業と川下産業が一体となって新部素材の開発・
10
導入を進めることで、海外企業に容易に転注されない
日本政策投資銀行産業調査部[2011]
、2~3 ページ。
なおこの調査は 2011 年 7 月 1 日を期日として実施さ
優位性を確保することである。第五に、取引先を含め
れた。調査対象は「2010・2011・2012 年度
たサプライチェーン全体での BCP の再構築である」
設備投
資計画調査」の対象企業である。回答した企業 1,464
(経済産業省[2011c]
、10 ページ)
。
社のうち製造業は 624 社、非製造業は 840 社だった。
24
『日経産業新聞』2011 年 6 月 21 日付。
20 位の企業のうち、震災の影響が直接あらわれ
25
『日本経済新聞』2011 年 7 月 26 日付朝刊。
たのは三菱製紙と太平洋セメントだった。三菱製紙は
26
たとえば 2011 年 5 月中旬に行われた経済産業省の
主力工場が被災し、棚卸資産評価損を 47 億円計上し
研究会で三菱ケミカルの小林喜光社長は完成車メーカ
た。太平洋セメントも震災で一部の在庫が使えなくな
ーのトップに対して「従属関係の解消をお願いしたい」
り、92 億円の特別損失を計上した(
『日本経済新聞』
と発言した。背景には日本自動車部品工業会の高橋武
2011 年 5 月 19 日付朝刊)
。
秀副会長が述べるように「今の車の造り方では、部材
12
メーカーはコスト的な有利な作り方を放棄せざるを得
11 上位
経済産業省[2011b]
、219 ページ。
13 中村[2011]
、4 ページ。
ない」という現実がある(
『日経産業新聞』2011 年 9
14
月 20 日付)
。
震災後、 サプライチェーンの混乱がクローズアップ
されるなかで「半導体を基軸とするエレクトロニクス
27
鍋山[2011]
、9 ページ。
産業の自動車生産への従属ぶり」
(鷲尾[2011]
、56 ペ
28
塩見[2011]
、89 ページ。
ージ)も明らかになった。これは、ルネサスエレクト
29 「震災とサプライチェーン
ロニクスなど代表的な半導体関連企業が実質的に自動
学工業日報』2011 年 7 月 19 日付。
車完成車メーカーの一次下請け、二次下請けになって
30
いることを示す。
によれば、貨物情報の可視化によって、荷主は連結在
化学需給品を追う」『化
林[2011]
、95 ページ。経済産業省[2009]の調査
15
『日本経済新聞』2011 年 5 月 12 付朝刊。
庫を平均で約 1.6 日削減できるという。
16
新宅[2011]
。
31
渋谷ほか[2011]
、24 ページ。
17
藤本・天野[2011]
、30~31 ページ。
32
内閣府[2011b]
、19~20 ページ。
18
藤本[2011]
、23 ページ。
33
ルネサスエレクトロニクス[2011]
、11 ページ。
19 藤本[2011]
、24 ページ。
34
大河原[2011]
、129~130 ページ。
18
サプライチェーンの混乱と震災復興政策(森原)
35
「生産ネットワーク」と「サプライチェーン」はほ
ぼ同義である。
「生産ネットワーク」は国際経済分野で
頻繁に使用される言葉で、通常「国際生産ネットワー
ク (IPN: International Production Network(s) )」とか
「グローバル価値連鎖 (GVC: Global Value Chain(s) )」
などと呼ばれる。国際生産ネットワークについては、
さしあたり Escaith and Inomata eds. [2011] を参照。
36
木村・安藤[2011]
、46 ページ。
37
神戸港をはじめとした港湾整備事業の推移につき、
林・瀬田[2010]も参照。
38
閣議決定[2011]
、3~4 ページ。
39
東日本大震災復興対策本部[2011]
、15 ページ。
40 鷲尾[2011]
、57 ページ。
41
たとえば TPP の「本質的なメリット」は「輸出の拡
大」ではなく「生産性の上昇」にあるとされる。内閣
府[2011c]は、この点について、①輸入の拡大で国
内生産のための材料や機械設備の選択肢が広がり、効
率化につながる、②海外からの輸入品に体化された技
術を学習し、自国の生産技術の向上につながる、③内
外の市場での外国製品との競争を通じて、国内の個別
企業の効率改善や、産業間・企業間の資源の再配置に
よる経済全体としての生産性の向上につながる、とい
う(内閣府[2011c]
、151 ページ)
。つまり自由貿易=
競争の促進を通じて、利潤率が高いという意味で「効
率的な」企業が選別・強化されることが期待されてい
る。
42
これらの政策メニューは先に掲げた政府の復興政策
に盛り込まれているだけでなく、民間団体によっても
提唱されている(たとえば、経団連[2011]および経
済同友会[2011]参照)
。
43
岡田[2011b]
、221~222 ページ。
44
藤本・天野[2011]
、32 ページ。なおこの議論につ
いて、藤本・塩沢[2010]も参照。
45
経済産業省課長補佐の吉村一元は、
「この電力制約へ
の対応は、ビジネス環境の国際的なイコールフッティ
ングにおける 7 つ目の課題(いわゆる「7 重苦」
:法人
税、経済連携、労働、地球温暖化問題、原料高・原料
課税、円高、電力制約)とも位置づけられ、国内空洞
化 問 題 へ の 対 策 と し て 極 め て 重 要 と な る 」( 吉元
[2011]
、21 ページ)と述べている。
「6 重苦」とは法
人税(法人減税の不全)
、経済連携(貿易自由化の不
全)
、労働(労働規制緩和の遅延)
、地球温暖化問題、
原料高・原料課税、円高であり、
「7 重苦」とはこれに
電力供給不安(原発の稼働停止)を加えたものである。
(京都大学非常勤講師)
19
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