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事例のプロファイル No.6:現地政府・代理人(調査会社)・メディアと連携

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事例のプロファイル No.6:現地政府・代理人(調査会社)・メディアと連携
No.6:現地政府・代理人(調査会社)・メディアと連携、大規模摘発を実
施し、新聞記事にしてもらうことで、広く効果的な啓発活動を実現。
事例のプロファイル
権利種別
商標権
対象国・地域
UAE(アラブ首長国連邦)
対策シーン
①権利取得・ブランディング
対策コスト
費用なし(※法律事務所への追加的費用なし。恒常的費用のみ。その
他、通訳等の費用は発生。ケースによってはメディア対策費等が発生
する場合もあることなどには留意が必要。)
所要期間
約半年
対策の目標
対策効果
業種
模倣品の問題点と政府の取締に対する厳しい姿勢を消費者・模倣品事
業者に強烈な印象で伝えること。
 現地一般紙に行政摘発の様子が大きな事件として掲載される
 同時に、UAE 政府への同社からの感謝状贈呈の写真なども掲載さ
れ、①同国における模倣品製造への一定のけん制効果が期待さ
れ、②同社と UAE 政府との強い関係も示すことができ、同社の模倣
品抑制効果が期待される。
自動車等製造業
経緯まとめ
 UAE において、輸送用機器部品の模倣品が多く確認され始めていた。
 輸送用機器は、質の悪い模倣部品によって正常に作動しなくなることがある。X 社のレピュ
テーションだけではなく、実際に利用者・周囲の人の生命・身体を傷つけることが懸念さ
れ、模倣品の危険性について、広く UAE 国民、機器販売者・修理者等に周知する必要があ
った。
 X 社でも、既に行政摘発等は実践していたが、“モグラ叩き”の感があり、漫然と行政摘発
を繰り返すだけでは状況の抜本的改善は無い、と認識し始めていた。
 一方で、UAE 政府も、模倣品が増加しつつある現状に頭を痛めており、政府も取締に熱心
であることをアピールし、模倣品の市場からの減少を促したいと考えていた。
 X 社が委託していた UAE の法律事務所が、X 社、UAE 政府の双方の意向を掴み、大きな
行政摘発について、大々的・計画的に実施し、新聞等主要メディアで摘発状況を報道する
ことで、一般消費者、取引企業等に効果的な啓発活動を行うことを提案し、UAE 政府担当
者と X 社担当者を引き合わせ、合同で戦略を立てた。
 ちょうど、数万件の模倣品が保管されている倉庫があるという確証を掴んだため、予め新
聞社等メディアにも摘発実施タイミングを伝えて同行してもらい、摘発現場の写真などを撮
影させ、新聞に大きなニュースとして掲載してもらった。
 X 社が UAE 政府に感謝状を贈呈している写真なども掲載し、政府の取組を PR、同社との
良好な関係性も消費者及び事業者に向けて PR することに成功した。
 このことで、X 社が模倣品対策に熱心であることが模倣品事業者にも伝わり、X 社製品へ
の抑制効果が期待できるほか、消費者にも模倣品への注意喚起を訴えることができた。
1
問題の構造
関心が
薄い
消費者・取扱店等
重要性・危険性
に気付かない
政府(新興国)
国民の安全への脅威
啓発活動
新聞広告
新聞広告、パンフレット
配布等では、問題の重
要性が十分に認識さ
れず
模倣品による
事故・故障の頻発
• 模倣品問題に
悩む
• 厳格な姿勢を
示す機会があ
まりない
企業
エンフォースメント
個別案件を摘発している
だけでは、摘発対象となら
なかった模倣品事業者は
摘発の詳細を知らないた
め、十分な抑止効果につ
ながらない
問題の核心
新興国においては、一般消費者まで模造品の悪性の認知が広がらず、摘発の効
果も限定的

新興国では、模倣品に対する危険性の認識がまだ薄く、消費者・取扱店等も問題の認識
をあまりしていない。そのため、重大な事故につながるケースもあった。

UAE でも、模倣品問題が認識され始めた段階であり、消費者・取扱店等も問題を強く認識
していなかった。しかし、模倣品が原因ではないかと疑われる事故等は存在していたし、
中国等から流入する模倣品が、UAE 国内の市場でも増加しつつあった。

政府はこの事態を重く見つつ、模倣品取締りに対して積極的な姿勢を見せたいと考えて
いた。これは、外資系企業に対しても、同国の姿勢を示し、投資を呼び込むよい機会にな
ると考えていた。

しかし、新聞広告等だけでは、企業側の一方的な情報伝達に過ぎないと考えられたり、外
資系企業の自社製品の購入への誘導的な内容が含まれていると考えられたりするため、
啓発活動としての効果は限定的な部分があった。

一方で、行政摘発を繰り返しても、“モグラ叩き”であり、根本的な解決になっておらず、潮
目を変えるための象徴的なアクションが必要であった。

2
対策事例
啓発効果
違法性の再認識
事業からの撤退
重要性・危険性
を深く理解
関心
消費者・取扱店等
政府
模倣品事業者
牽制効果
摘発
取締部門
大規模な摘発
マスコミ
摘発現場へ
の同行取材
(問題意識)
国民に取締をPRしたい
国民に問題意識を持っ
てほしい
(問題意識)
抑止力の強化
消費者などの意識改革
企業
事前の
連携
事前の
調整
対策のポイント
政府と連携し、行政摘発等を大きな“ニュース”としてメディアに取り上げてもらう。
 偶然メディアに取り上げられるのではなく、戦略的に、摘発を大きな事件・ニュースとして報
道してもらうように動くことが重要である。
 取締機関である政府と連携すると、より大きなニュースとなって取り上げられやすい。その
ためには、政府の模倣品対策に係る意欲やタイミングについて、事前に情報収集をするこ
とが有益である。
 情報収集は現地代理人(法律事務所)等と連携しつつ、ニュース価値のある大規模な模倣
品摘発案件を対象とすることが重要である。
~今回のケース~
 現地代理人(法律事務所)が、UAE 政府が模倣品対策に積極的であることを PR したがって
おり、大きな摘発案件を探しているという情報を、掴んで来ていた。
 同時期に、X 社の模倣品が数万件発見される事案があり、この事案をシンボリックな摘発
案件として“活用”することを、UAE 政府にも企業としての思いを伝え、模造品撲滅の方向
で意見の一致を見た。この動きを受けて、摘発場所・日時等についてメディアに情報を流
し、取材してもらえるようにあらかじめセットした。
 摘発は新聞等に大きく掲載され、X 社が UAE 政府に感謝している様子も写真入りで掲載さ
れ、両者の親密な関係や政府の模倣品対策への国民・事業者向け PR も成功した。国民は
消費者として模倣品に対する意識が向上し、事業者に対しては模倣品製造販売の抑止効
果が期待される。
3
実践編
対策の手順
STEP
Step1
準備
Step2
調査
1
ここに注意
模倣品問題の啓発の必要性を
検証する。
 国・地域により状況は異なる。
 既に模倣品問題が認識されて長い国、まだ
2
従来の自社の啓発活動について
検証する。

3
現地 代理店、調 査会社等 を選
定・利用する。


4
政府(取締機関)の模倣品対策
に対する姿勢を確認する。

5
社会的インパクトが大きい模倣
品製造・販売事例をみつける。

6
現地代理店、調査会社等と戦略
を練る。
政府、メディアなどと面会し、摘
発の可能性について検討する。

7


Step3
摘発・啓
発活動
8
合意された計画・手順に従い、摘
発を行う。



9
政府(取締機関)等に対する表敬
訪問、表彰・感謝状授与等を行
う。


模倣品問題があまりにも関心が薄い国で
は、必要性が少ない場合もある。
まずは容易に実施できる新聞広告等の啓
発活動の過去の実施有無等、効果等を検
証する。
(初めて依頼する場合は)JETRO 等、業界
団体等の紹介を受けて、調査会社を探す。
取締機関にネットワークのある調査会社の
ほうが望ましい。
模倣品対策に今後力を入れていこうとして
いるか、何らかの大きな模倣品関連事件が
起きているか、外資の受け入れに熱心かと
いった視点から情報収集する。
摘発数量が多い、扱い品目が重大な社会
問題と関係しているなどの特徴ある事件を
対象とできるかどうかを検討する。
政府を巻き込めるか、社会的に耳目を集め
そうか(メディアは乗ってくるか)。
模倣品の製造・販売情報が漏れ、摘発がで
きなくなることが無いようにする。
相互にとってのメリットを説明し、提供できる
メリットも共有する。
計画等が事前に漏れないように配慮する。
摘発への同行の危険性に十分配慮する。
メディア等に予め日程や場所を伝え、確実
に報道してもらうようにする。
政府(取締機関)に謝意を表すことで、今後
も模倣品対策に協力してもらう関係を強化
する。
メディア等に表彰場面等も報道してもらう。
本事例からの示唆

本事例では、現地代理人(法律事務所)が重要な役割を果たしているが、企業側から、積
極的・戦略的に報道可能な摘発等の場面を“創り出す”ように動くことも重要である。

最初から中央政府と連携して、このような社会的耳目を集める啓発活動ができた場合に
は、その事例を基に、地方の取締機関等とも友好な関係を構築して、その後の摘発等取締
りを行うためのネットワーク作りに活用することもできる。

特定の新興国で政府と協力して、大規模摘発を行った事案について、周辺国等での啓発
活動に活用することも考えられる。

但し、模倣品摘発のニュース自体が、先進国企業が自社製品を強引に売り込むための活
動と誤解され、逆に不買活動等につながる可能性も皆無ではないので、注意が必要。

摘発への同行等は、当局からの情報漏えいのおそれがあるなど、対象国の治安や社会情
勢によっては、危険性を伴う可能性もあることに注意が必要。
4
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