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コンピュータビジョン技術による仮想現実・複合現実技術

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コンピュータビジョン技術による仮想現実・複合現実技術
コンピュータビジョン技術による仮想現実・複合現実技術
斎藤 英雄
慶應義塾大学大学院理工学研究科 〒223-8522 横浜市港北区日吉 3-14-1
E-mail:
[email protected]
あらまし コンピュータビジョンはカメラで撮影された画像をコンピュータに理解させるための技術であり,30
年以上前からコンピュータによる人工視覚の実現を目的として研究されてきた.最近の 10 年は,コンピュータビジ
ョンは色々な目的に利用されており,仮想・複合現実感のためにも盛んに利用されている.本発表では,コンピュ
ータビジョン技術を仮想・複合現実感に応用した研究事例として,筆者が最近行っている関連研究について紹介す
る.
キーワード 自由視点画像,マルチカメラ,カメラキャリブレーション,3 次元形状復元,トラッキング
Free Viewpoint Image Generation from Multiple Viewpoint Images
and its Application to Mixed Reality Presentation
Hideo Saito
Graduate School of Science and Technology, Keio University
3-14-1 Hiyoshi Kouhoku-ku Yokohama, 223-8522, Japan
E-mail:
[email protected]
Abstract Research on image processing and computer vision for multiple viewpoint images has extensively been
performed in recent years. Free viewpoint image generation has especially been attracting a great deal of attention, because is
can be applied to highly immersive visual communications and broadcasting in the next generation. In this article, I would
like to introduce related researches to free viewpoint generation from multiple cameras that I have been performed in recent
years, while referring to related researches. In addition to that, I would also like to introduce application of free viewpoint
generation to mixed reality presentation.
Keyword Free Viewpoint Image, Multiple Cameras, Camera Calibration, 3D Shape Recovery, Tracking
1. は じ め に
筆者は,多視点画像からの自由視点映像生成に関す
複数のカメラを用いて同一シーンを撮影したり,1
る 研 究 を 1997 年 ご ろ に 米 国 の CMU に 滞 在 す る 機 会 を
台のカメラを異動させながら同一シーンを撮影したり
得た際に始め,それ以降,関連する技術についての研
することにより得られる多視点画像を入力とした画像
究を行ってきた.本稿では,これまでに筆者が行って
処 理・コ ン ピ ュ ー タ ビ ジ ョ ン の 研 究 は ,最 近 10 年 以 上
きた多視点画像からの自由視点映像生成に関連した研
にわたって非常に盛んに研究されてきた.
究事例を関連研究の動向とともに紹介する.さらに,
特に自由視点映像生成に関する研究開発は,映像の
最近筆者が展開している,自由視点画像生成技術を複
視聴者や製作者がカメラを実際に移動させたり切り替
合現実感提示に応用しようとする研究事例について紹
えたりすることなく,同一シーンに対して観察したい
介する.
視点を自由に設定して映像見ることができる技術であ
2. Virtualized Reality
り,次世代の映像生成・提示技術として注目を集めて
1995 年 に Kanade ら が 発 表 し た 論 文 [1]で , Virtualized
いる.
Reality の コ ン セ プ ト が 紹 介 さ れ ,そ れ を 実 現 す る た め
に行った基礎実験の結果が紹介された.このコンセプ
トは単純明快である.つまり,多視点画像を利用すれ
容易ではなくなってくるのである.
そこで,3 次元位置は未知であるが,画像中に投影
ば原理的にはシーンの 3 次元形状復元が可能であり,
されて検出された複数の点の視点間の対応関係のみを
実際は色々難しいにしても,何とかして復元した 3 次
利用したキャリブレーションが,簡単なキャリブレー
元形状を利用することにより,それを任意視点から観
ションとして利用されることがある.このような複数
察 し た「 自 由 視 点 画 像 」を CG 合 成 す る こ と が で き る ,
カメラ間の対応点関係のみに基づくキャリブレーショ
というものであった.これは,つまりのところ,現実
ン は ,弱 キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン [4]と 呼 ば れ た り し て い る
シーンの幾何学的構造情報と,その見え方の情報を一
が,理論的には複数カメラ間のエピポーラ幾何的関係
旦 コ ン ピ ュ ー タ に 取 り 込 み( 電 子 化 ,も し く は 仮 想 化 ),
を 求 め る こ と に 相 当 し ,2 カ メ ラ の 場 合 は Fundamental
その上で電子化・仮想化された現実シーンを自由に観
Matrix を 推 定 す る こ と が こ れ に 相 当 す る .
察 し よ う , と い う も の で あ る . Kanade ら の 論 文 [ 1]
筆 者 は , こ の Fundamental Matrix に 基 づ い て , 複 数
などで最初に言われた応用としては,バスケットボー
カメラにより撮影された多視点画像から自由視点画像
ルをコート内部から観戦しよう,というものであった
を生成するための技術について研究を進めてきた.そ
が,実際はそこまで仮想視点を移動させてしまうと,
の基本コンセプトになっているのは,射影グリッド空
3 次元形状復元の誤差等が非常に大きく目立ってしま
間 [5]と 呼 ん で い る ,複 数 カ メ ラ か ら 選 ば れ た 2 台 の 基
うために画質が良好な自由視点画像を得ることがで
底 カ メ ラ 間 の Fundamental Matrix と , 基 底 カ メ ラ と そ
きなかった.
の 他 の カ メ ラ 間 と の Fundamental Matrix か ら 各 カ メ ラ
筆 者 は , 部 屋 の 壁 4 面 と 天 井 に 合 計 49 台 の カ メ ラ
間の幾何学的関係を表現する枠組みである.この枠組
を 固 定 し た 3DRoom[2]を 構 築 し , さ ら に , 自 由 視 点 合
み を 利 用 す る こ と に よ っ て , 例 え ば , 図 1(a) を 含 む
成の際の画質を入力画像から出来るだけ劣化させな
20 枚 の 多 視 点 画 像 か ら 形 状 復 元 を 行 い ,そ れ に 基 づ い
いようにするために,入力画像を撮影した視点間の視
て 図 1(b)に 示 す よ う な 自 由 視 点 画 像 が 合 成 可 能 で あ る
点内挿(補間)を行うことにより自由視点画像を合成
こ と を 示 し て い る [6].
す る 手 法 を 実 装 し ,有 効 性 を 示 し た [3].そ し て ,こ の
研究を通して,多視点画像からの自由視点画像生成の
ための重要な要素技術として,
・
カメラキャリブレーション技術
・
3 次元形状復元技術
・
レンダリング技術
それぞれについて,まだ多くの研究課題が残されてい
ることを痛感し,それぞれの技術を出来るだけ実用レ
ベルに引き上げることが,自由視点画像生成を実用化
させるために重要であると考えた.以下,それぞれの
(a) 入 力 多 視 点 画 像 の う ち の 2 枚
観点から筆者が行ってきた研究とその関連研究につい
て述べる.
3. カ メ ラ キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン 技 術
多視点画像を利用して自由視点画像を生成するため
に避けて通れないのが,カメラキャリブレーションで
ある.同じ空間を撮影する多視点カメラの内部パラメ
ータと外部パラメータの全てを精度良く推定すること
は容易な作業ではない.特に,撮影対象空間が大きく
なると,その作業には相当の労力を要する.単純な方
(b) 多 視 点 画 像 か ら 生 成 さ れ た 自 由 視 点 画 像 の 例
法としては,撮影対象空間中に 3 次元座標が既知な点
図 1 : 多 視 点 画 像 間 の Fundamental Matrix の み を 用 い
を複数配置し,それらが各カメラに投影される 2 次元
て生成した自由視点画像
座標と,元の 3 次元座標の関係を利用してカメラキャ
リブレーションは行われる.しかし,対象空間が大き
さらに,複数の人が手持ちで同一対象を撮影してい
くなると,3 次元座標が既知な点を空間中に配置する
る状況を想定し,複数の移動カメラを利用して撮影し
ことが難しくなるため,カメラキャリブレーションは
た多視点画像から自由視点画像を生成するのに上記の
考 え 方 を 利 用 し た 手 法 を 提 案 し た [7]. こ の 手 法 で は ,
2 台の基底カメラ画像のみは固定とし,このカメラに
より定義される 3 次元空間座標系に対して全てのカメ
ラ の 射 影 関 係 を カ メ ラ 間 の Fundamental Matrix の み を
用いて推定することができることを利用して,自由視
点画像の合成を行っている.
上 記 の よ う な Fundamental Matrix に 基 づ く 複 数 カ メ
図2:同一平面に存在する 3 次元座標が既知の5個の
ラ の キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン は ,3 視 点 ,4 視 点 間 の 関 係 を
マーカを撮影した多視点画像と,両端に 2 点のマーカ
表 現 す る た め に ,よ り 高 次 の テ ン ソ ル 表 現 に 拡 張 さ れ ,
が取り付けられている長さが既知の棒を移動させなが
それらを利用したキャリブレーション手法が研究され
ら撮影した多視点画像列を入力画像とした多視点カメ
て い る [8].
ラキャリブレーション手法
さて,上記の手法のように,カメラ間の 2 次元特徴
点 の 対 応 関 係 の み に 依 存 す る「 弱 キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン 」
では,結局のところカメラの位置や向きの絶対値を知
4. 形 状 復 元 技 術
ることは困難なので,結果的には,対象シーンの 3 次
多視点画像から対象の 3 次元形状を復元することは,
元形状の絶対値を知ることは出来ない場合が多い.そ
自由視点画像の質を本質的に高めるために必須である.
こで,やはり対象空間に配置した 3 次元座標の既知な
文 献 [3]で は ,隣 接 す る 複 数 カ メ ラ に マ ル チ ベ ー ス ラ イ
点などに頼る必要が出てくることも多い.このような
ン ス テ レ オ 法 [11]と , 全 て の カ メ ラ の シ ル エ ッ ト を 利
場 合 に ,カ メ ラ 間 の 2 次 元 特 徴 点 の 対 応 関 係 も 利 用 し ,
用 し た 視 体 積 交 差 法 [12]を 併 用 し て 形 状 復 元 を 行 っ た .
これに矛盾の無いような内部パラメータ・外部パラメ
冨 山 ら の 研 究 [13]に お い て も 視 体 積 交 差 法 を ベ ー ス に
Bundle
して,ステレオ法の考え方を併用して,高精度な形状
Adjustment[9] で あ る .こ の 考 え 方 を 利 用 し て ,図 2 に
復元が可能なことが報告されている.また,視体積交
ー タ を 推 定 し よ う と す る 考 え 方 が
示すように,同一平面に存在する 3 次元座標が既知の
差法で得られる形状と,実際のシルエットの差を出来
5個のマーカを撮影した多視点画像一組からカメラパ
るだけ小さくするような形状を反復演算で求める手法
ラメータを推定し,さらにこの推定値の精度を向上さ
[6,14]も 高 精 度 な 形 状 復 元 に は 有 効 で あ り ,図 1 で 示 し
せるために,両端に 2 点のマーカが取り付けられてい
た自由視点画像もこの手法で復元した形状を利用して
る長さが既知の棒を任意の姿勢・位置で移動させなが
いる.
ら撮影した多視点画像列から得られるカメラ間の 2 次
この分野では世界的に高いレベルの国際会議であ
元特徴の関係を利用してカメラパラメータの推定精度
る CVPR06 で は ,こ の よ う な 多 視 点 画 像 か ら の 形 状 復
を向上させることにより,多視点カメラのキャリブレ
元 手 法 に つ い て の 比 較 サ ー ベ イ [15]が 行 わ れ , 最 新 の
ーションを実現するソフトウエアを共同で開発した
アルゴリズムの手法が色々な評価基準で比較された.
[10]. カ メ ラ の 特 性 等 に も 依 存 す る が , 直 径 1 メ ー ト
こ の 中 で も ,Furukawa ら に よ る 手 法 の 評 価 が 高 く ,こ
ル程度の空間に対して6台のカメラを利用して本手法
れ を 発 展 さ せ た 手 法 が CVPR07 で 報 告 さ れ て い る [16].
を適用した場合,空間内の長さが既知の2点間の距離
しかし,形状復元精度を向上させようとアルゴリズ
の 推 定 誤 差 が 最 大 で 2mm, 平 均 で 1mm 程 度 に な る よ
ムを工夫すればするほど計算時間は掛かるようになり,
うな精度で全てのカメラのキャリブレーションを行う
動きのある対象についての自由視点画像をターゲット
ことができた.
とすると,この計算時間の短縮の問題は避けては通れ
これは,同一平面特徴点を利用するだけでもカメラ
なくなってしまう.また,対象が静止しているスタテ
キャリブレーションを実現できることが知られている
ィックな物体だ,と仮定すれば,計算時間は気にしな
が,それだけでは十分な精度が得られない場合に,た
く て も 良 く な っ て く る ,と い う 考 え 方 も あ る .し か し ,
とえその 3 次元位置が未知であっても,任意位置姿勢
対象が静止物体の場合,あえてカメラを利用して多視
にマーカ配置し,そこから得られるカメラ間のエピポ
点画像を撮影しなくても,3 次元スキャナを利用する
ーラ幾何的関係が精度向上に役立つことを意味するも
などして高精度計測をすればよい,という考えも生ま
のである.
れてきてしまう.このような議論については,各手法
の長所・短所をよる検討した上で,実際の要求に合わ
せて選択する必要がある.
一方,対象が何か,ということを限定することによ
って,形状に関連する未知変数を減らして,形状推定
を簡略化することによって,多視点画像から良好な形
視点内挿した映像を生成すると,実視点に近い視点の
状復元を行う,という考え方も有効である.
場合は実画像に近い画質の画像が再生されるため,全
その一例として,人をスケルトンモデルとして考え,
体としての画質が劣化したという印象を抑えることが
人の各関節角度と,各スケルトンの形状を標準形状か
できるという心理的効果を期待できることがメリット
らの変形により表現してパラメータを削減することに
となる.
よって,人が動作しているシーンを撮影した多視点画
像から形状を推定し,自由視点画像を生成した研究が
あ る [17].
6. 複 合 現 実 提 示
さて,上記のような自由視点画像生成は,一定の映
筆者らのグループでは,自由視点画像の生成を目的
像コンテンツに対して,自由に視点を選択した画像を
にしたものではないが,顔形状の多視点画像からの推
生成してみせるものである.一方,複合現実提示は,
定に,複数の実測顔形状データベースを利用した手法
現実シーンで電子化されている仮想映像を同時に複合
を 提 案 し て い る [18]. こ の 手 法 で は , 顔 形 状 デ ー タ ベ
的に観察することによって,現実シーンに新たな映像
ースに含まれる形状を主成分分析し,その上位の主成
情報を増強して提示することにより観察者に多くの情
分ベクトルの係数により顔形状を表現することによっ
報を提示しようとするものである.
て ,顔 形 状 を 少 数 の パ ラ メ ー タ( 筆 者 ら の 実 験 で は 20)
自由視点画像は,このような複合現実提示と非常に
で表現し,このパラメータを多視点画像から推定する
関連したコンテンツである.なぜなら,自由視点画像
ものである.
を見るときには,視点を自由に選択することを暗に述
その結果,同じ顔をレーザースキャナにより計測し
べているわけであり,一方で,複合現実提示は,現実
た 真 値 と 比 較 し て も ,平 均 3mm 以 内 の 誤 差 に 収 ま る 高
シーンを自由な視点で観察しながらも,そこに増強表
精度な形状計測が可能であることを確認した.
示される仮想コンテンツは現実シーンを観察する際に
選択されている視点に応じた変化をする必要があるか
5. レ ン ダ リ ン グ
らである.
文 献 [19]で 筆 者 ら が 生 成 し た 自 由 視 点 画 像 で は , 復
この考え方による発想に基づいて実現しようとし
元した 3 次元モデルに入力画像のテクスチャをマッピ
たのが,サッカーの自由視点映像を実フィールドで観
ングして自由視点映像を生成した.これは,形状復元
察 す る と い う 試 み で あ る [21]. こ れ は , 実 際 に は サ ッ
精度が非常に良い場合は良好な自由視点映像が得られ
カーゲームの行われていない空のスタジアムや,スタ
る手法であるが,そうでない場合には,その誤差の影
ジアムの模型を現実世界に用意し,その現実世界のス
響による画質劣化が,生成される自由視点画像に対し
タジアムを観察した際に,その観察した視点に相当す
て,自由視点画像の仮想視点が実視点に近いか遠いか
る仮想視点で生成した自由視点画像をスタジアム画像
に無関係に生じてしまう.
に重畳表示するというものである.こうすることによ
そこで,あくまでも見かけ上の画質劣化を防ぐ方法
って,観察者は,その現実世界に用意したスタジアム
として,隣接する視点間の視点内挿(補間)を利用し
でサッカーの試合が行われているかのような効果を得
て,実カメラ画像に近い視点の場合は,できるだけ実
る こ と が で き る わ け で あ る .図 3 に そ の 実 現 例 を 示 す .
視点画像に近い画像が生成されるような手法を適用す
さらに,同様の考え方に基づいて,図4に示すよう
ることが有効と考えた.その考え方のもとに行った研
な,野球コンテンツを観察することができるシステム
究が,実際のサッカー多視点画像からの自由視点映像
を 構 築 し た [22].
生 成 で あ る [20].
この研究では,対象シーンの 3 次元形状を復元する
ことは困難と考えられるために,グランドは平面であ
ると考え,まず,平面領域については,隣接する視点
間 の 平 面 射 影 行 列 か ら 自 由 視 点 画 像 を 生 成 し た .一 方 ,
選手領域はグランドに立つビルボードのようなもので
ある,という考え方を利用して,隣接する視点間で領
域の輪郭間の対応関係のみを求め,その対応点位置を
視点の移動に応じて移動させ,領域内もそれに応じて
移動させる(ワープさせる)処理によって中間視点画
像を生成した.
このような手法を利用して複数カメラ間を連続的に
図 3:サ ッ カ ー を 現 実 の ス タ ジ ア ム モ デ ル 上 で 仮 想 的
に 観 察 す る シ ス テ ム .こ こ で は ,サ ッ カ ー フ ィ ー ル ド
上の直線パターンを利用してカメラ位置姿勢の推定
を行っている.
ブレーション技術と密接な関係があることになる.し
かし,この場合に重要なのは,オンラインで行う,と
いう点であり,オンラインで行うがために,カメラキ
ャリブレーションとしての精度や前提について,多少
の妥協が必要な場合もある.例えば,マーカーの利用
である.しかし,マーカが常に見えるとは限らないの
で,色々なところにマーカを設置しておくことにより
解 決 可 能 で あ る が ,マ ー カ の 位 置 関 係 が 未 知 で あ る と ,
図 4:野 球 を 現 実 の ス タ ジ ア ム モ デ ル 上 で 仮 想 的 に 観
察するシステム
連続的な複合現実提示が不可能になってしまう.
筆者らは,マーカの位置関係が未知な場合であって
も,それらをフリーハンドのカメラで撮影した画像列
から位置関係をあらかじめ推定しておき,複数マーカ
を連続的に利用することによって広範囲な領域で複合
現実提示を行うことが出来る手法を提案しており,文
献 [22]で 野 球 コ ン テ ン ツ を 広 範 囲 の 視 点 か ら 複 合 現 実
提示できるようにするために利用されている.
図5:障害物により一部を遮蔽された同一シーンを複
数のカメラが観察しているという状況を想定して,障
害物を除去した画像を表示するシステム例
自由視点画像は,従来は映像制作者・撮影者側にあ
った視点の選択権を,観察者(視聴者)に与えること
のできる技術であり,次世代の映像メディアとしての
期待は大きい.しかしながら,視点選択の自由度が増
えることにより,視聴者(観察者)に余計な負担を強
いることも考えられるため,視点の選択をより自然な
形で負担を与えることなく行わせることができる仕組
みも重要と考えられる.その意味では,本稿で紹介し
たような複合現実提示では,現実シーンを観察するこ
聴者が極めて自然な形で視点を選択する仕組みになっ
(b)障 害 物 を 除 去 表 示 し た
画像列
図6:手で文字を描いている時に,パターンを遮蔽し
ているとも考えられる.
ている手を除去した画像を生成した例
とが,視点を自動的に選択していることに相当し,視
ところで,これらの複合現実提示で重要となる技術
は,カメラのオンライントラッキングである.この技
術は,別の見方をすれば,カメラのオンラインキャリ
ブレーションということになり,前述のカメラキャリ
(a) 入 力 画 像 列
一方,仮想物体を提示することとは逆に,余計なも
のを削除して提示するということも複合現実提示の一
種 で あ る .筆 者 ら は ,図 5 の よ う に ,複 数 の カ メ ラ が ,
ある障害物により一部を遮蔽された同一シーンを独立
に観察しているという状況を想定し,複数カメラのう
ちいずれかが遮蔽されたシーンを部分的に撮影してい
るという前提に基づいて,各カメラに対して遮蔽物体
を 削 除 し た 画 像 を 提 示 す る 手 法 を 提 案 し て い る [23].
ここでは,シーン中に設置されたマーカーパターンに
より,各カメラの位置姿勢は常に得られているものと
考 え ,遮 蔽 物 体 に よ り 隠 れ て い る シ ー ン の 画 像 情 報 を ,
それが見えている他のカメラから入手して,隠れてい
るシーンに貼り付けて提示する.図6に,本手法によ
り実際にペンで紙に絵を書いている際に,それを遮蔽
している手を除去して提示した画像例を示す.
7. お わ り に
本稿では,これまでに筆者が行ってきた多視点画像
からの自由視点映像生成に関連した研究事例と関連研
究について紹介し,さらに,自由視点画像を複合現実
提示に応用した研究例について紹介した.
今後は,自由視点映像の生成法にとどまらず,生成
した自由視点画像をどのように利用するのか,またど
のように提示することが効果的なのか,といった応用
面についての研究開発も重要と考えられ,筆者もその
方向についての研究を展開していきたいと考えている.
文
献
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