...

MicroCap5/CQを用いたアクティブフィルターの設計と製作

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MicroCap5/CQを用いたアクティブフィルターの設計と製作
卒 業 研 究 報 告
題 目
MicroCap5/CQ を用いたアクティブ
フィルターの設計と製作
指 導 教 員
綿森道夫助教授
報 告 者
久 保 格致
平成 13年 2月 9日
高知工科大学 電子・光システム工学科
目次
第1章
序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第2章
2−1
2−2
−1
−2
−3
−4
フィルターについて
アクティブ・フィルタ・・・・・・・・・・・・・・・・2
規格化低域通過フィルタの伝達関数・・・・・・・・・・3
2 次のバターワース特性・・・・・・・・・・・・・・・6
3 次のバターワース特性・・・・・・・・・・・・・・・8
4 次のバターワース特性・・・・・・・・・・・・・・・9
5 次のバターワース特性・・・・・・・・・・・・・・・10
第3章
Q の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
第4章
4−1
−1
−2
−3
−4
−5
回路の設計
アクティブ・フィルタの設計・・・・・・・・・・・・・16
RC フィルタの設計・・・・・・・・・・・・・・・・・16
2 次のローパスフィルタの設計・・・・・・・・・・・・16
3 次のローパスフィルタの設計・・・・・・・・・・・・20
4 次のローパスフィルタの設計・・・・・・・・・・・・27
5 次のローパスフィルタの設計・・・・・・・・・・・・32
第5章
5−1
−1
−2
5−2
回路の作成と評価
ローパスフィルタのプリントパターンの作成・・・・・・39
1 次、2 次のローパスフィルタのプリントパターンの作成
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
3 次のローパスフィルタのプリントパターンの作成・・・41
回路の実測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
第6章
結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
第7章
総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
第1章
序論
現代社会では電気製品無しでは生活できないくらいに電気製品は浸透してい
る。しかし、日常生活を普通に送っている限りそれら電気製品の中がどうなっ
ているかなど気にもとめることなどない。
今回は工学部の学生として電気製品を構成している回路というものに注目し、
回路というのはどういうものかということで、基本的な小規模回路としてアク
ティブフィルターを選択した。
アクティブフィルターとして安価で作れるRC回路を選び、理解しやすいバ
ターワース特性を学ぶこととした。回路シミュレーションはMicroCap
5/CQ、回路エディタはPCBEを使用した。
MicroCap5とはSpectrumSoftware社の回路シミュ
レーターでSPICEとの上位互換性のあるソフトである。これはWindo
ws上で回路図の作成から解析までの一連の操作が行えるようにしたもので回
路の設計、動作チェック、回路定数の変化による回路への影響、温度変化によ
る回路特性への影響という実際に設計した回路がどのように動くかが回路を作
る前に確認ができる、というメリットがある。
PCBEは高戸谷 隆氏が作られた実際のプリント基板を作るための回路エ
ディタである。プリンタで印刷して版下を作成できる、ガーバーファイル、ホ
ールファイルを出力できる、主な操作コマンドは、ツールバーに配置してある。
という機能を持ちあわせている。
これらを使い、回路を設計し、シミュレーションをして作成、そしてシミュ
レーションと実測値の違いなどを検証した。
1
第2章
フィルターについて
2−1 アクティブ・フィルタ
低周波では形状が大きくて単価の高いコイルを使わず、抵抗とキャパシタと
増幅回路網で構成されているフィルタをアクティブ・フィルタと呼ばれている。
増幅回路にはOPアンプを使うことが一般的なので今回の研究でもOPアンプ
と使用した。増幅回路を使用せずにCR回路のみで構成された回路はパッシ
ブ・フィルタと呼ばれている。今回のように周波数が低い場合はアクティブ・フ
ィルタが効果的だが周波数があがってくるとOPアンプの周波数特性の関係で
設計どおりに動作しなくなるので高い周波数の場合はRCフィルタまたはLC
フィルタで設計しなくてはならない。
RCフィルタの中にOPアンプを使うことにより、フィルタ各段の出力イン
ピーダンスを遮断周波数fcに関係なく低インピーダンスにすることができる
ので、形状が小さくなるだけでなくフィルタ各段の遮断周波数とQを決定する
ためのCR定数を、前後の段から独立して設計することができる。これがアク
ティブ・フィルタの特徴である。
今回は前述のQを使用してCとRを求める方法と、伝達特性と接点方程式を
用いてCとRを求める方法の二通りで回路を設計した。
2
2−2 規格化低域通過フィルタの伝達関数
伝達関数と接点周波数から回路定数を求める方法でフィルタを設計する場合、
まず希望するフィルタの設計仕様を満足する伝達関数を求めなければならない。
理想低域通過フィルタ(ideal low pass filter)は、図1に示すように規格化
遮断周波数が1で、通過域での振幅特性が1(0dB)で、かつ阻止域で0倍(−
∞dB)のフィルタである。しかし現実的にはここまでの理想的なフィルタを構
成することができないことが知られている。このために、理想低域通過フィル
タにできるだけ近づけるように回路を設計している。この近似させる方法はい
ろいろあるが、ここではバターワース特性について述べる。
図1
1.0
減衰率
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0.01
0.1
1
10
通過域 阻止域
バターワース特性(Butterworth)の周波数特性は、関数 x n が n の大きいとき
x < 1 ではほぼ0、 x > 1 では∞に近くなるという性質を利用している。具体的に
は実現性を考慮して、
1
| H ( jω) |=
1 + ω 2n
−①
の特性を持つ。ただし、 n はフィルタの次数(order)であり、ωは規格化周波数
(normalized frequency)である。周波数がω=0の付近では十分に平坦な特性を
持 ち 、 ω > 1 で は ほ と ん ど 0 と な る 。 周 波 数 が ω = 1 の 遮 断 周 波 数 (cuttoff
frequency)の点で、1/ 2 (−3dB)の減衰がある。周波数の範囲が 0 ≤ ω ≤ 1
の範囲を通過帯域(passband), 1 < ωを減衰帯域(stopband)という。遮断周波数よ
り高い周波数の領域では、フィルタの次数をn とすると、約 − 20 × n[dB dec ] の
傾きで減衰する。
3
図2
図2にフィルタの次数の違いによる周波数特性を示す。フィルタの次数が多
くなるに従い、減衰が大きくなるのがわかる。フィルタの次数はフィルタの設
計仕様により決定しなければならないのが普通であるが今回は次数の違いによ
りどのような特性の差が出るかの研究なので1次から5次までの回路を設計し
て違いを見ることにした。バターワース特性の伝達関数は①の式を2乗して
1
= G( s )
1 + ω2 n
とする特性関数 G(s ) を考える。 s = j ω であるから上式より、
H ( jω) =
2
G( s ) =
1
s
1 +  
 j
2n
を得る。
この式の分母を0とする代数方程式の解は
s
 
 j
2n
= −1
= e − jπ
を解くことで得られる。 (s j ) は絶対値1の複素円上にあるはずであるからこ
れを e j α とすると
2 nα = 2πk − π
となる。ただし k = 1,2,⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅⋅,2 n である。したがって根は
s k = je
j
2 k −1
π
sn
となる。
根 sk は複素平面上の単位円の円周上を π / 2n の角度で等間隔に配置される。n が
奇数の場合は実軸上に−1の根を持つ。
正極側をとると伝達関数 H (s ) は不安定となるので右半円の解を捨て、左半円上
の点を極として計算する。
4
なぜ負極側をとるのかは、
1
 ω 

1 + 
ω
 c 
’
2n
この式を解くことを考える。
の中をいったん複素数に拡張して、絶対値が等しい2つの関数の積
ω
1 +  
 ω
2n
= f ( s) g ( s) となるようにする。
ただし| f (s ) |=| g (s ) |である。
この時、バターワース関数
1
 ω
1 + 
 ω c
ただし s = j



2 n
は
1
1
または
f (s)
g (s)
ω
で与えられる。
ωc
2n
 ω

ω
s= j
とおいて 1 +   = 1 + 
ω 
ωc

 c
2n
s
 は 2 n 個の解 s1 , s 2 ,...........s2 n を用いて
j 
2n
 ω
1 +   = (s − s1 ) (s − s2 ) ・…… s − s 2 n と積の形にかける。
ω 
 c
(
)
f ( s ) ⋅ g ( s ) ⋅ k ( s ) = f ( s ) ⋅ g ( s ) ⋅ k ( s ) がいえるので絶対値の等しいものどおし
を2つに分類する。
例えば、 ( s − s1 ) と ( s − s 2 ) を用いて
s1 = a + bj 、 s 2 = c + dj 、 s = j ω とすると
5
s − s1 = a 2 + (ω − b )
2
s − s 2 = c 2 + (ω − d )2
つまり b = d a = ±c ということになる
以上のことを踏まえて絶対値の等しいもの同士を2つに分類すると
(s − s )(s − s ) ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(s − s )
1
2 n −1
3
(s − s )(s − s ) ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(s − s )
2
4
2n
となるので
1
 ω 

1 + 
ω
c 

=
2 n
1
(s − s )(s − s ) ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(s − s )
1
2 n −1
3
または
1
 ω 

1 + 
 ωc 
=
2 n
1
(s − s )(s − s ) ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(s − s )
2
4
2n
となる。
ここで、計算上は正極側、負極側どちらでもよいのだが、現実で回路を作る場
合、正極側をとると負のコンデンサを使うこととなり、正のコンデンサで作る
と帰還の位相が入力位相と同位相になり、発振してしまい実現不可能なので負
極側をとる。
2−2−1 2次のバターワース特性
フィルタの次数が n = 2 の場合、特性関数は
G( s ) =
1
であるから、その極は
1+ s4
s 4 = −1 = e jπ なので
6
s=e
1
k
j π+j π
4
2
となる。
= e jα と考えると
ここで s
1
k
α = π + π になり
4
2
k = 0→ α=
1
3
π k = 1 → α = π
4
4
5
7
k = 2 → α = π k = 3 → α = π
4
4
以上から負極側を選択すると
1
+j
2
1
s2 = −
−j
2
1
2
1
2
s1 = −
の二つの極が得られる。
2 次の 2 つの極
これより伝達関数 H (s ) は
H (s ) =
1
(s − s )(s − s )
1
=
=
2
1
s − s s1 + s 2 + s1 s 2
2
(
)
1
s + 2s + 1
2
7
2−2−2 3次のバターワース特性
3次の場合は n = 3 なので
G( s ) =
1
であるから、その極は
1+ s6
s 6 = 1 = e j 0 なので
s=e
k
j π
3
ここで s
α=
となる。
= e jα と考えると
k
π になり
3
1
k = 0 → α = 0 k = 1 → α = π
3
2
3
k = 2 → α = π k = 3 → α = π
3
3
4
5
k = 4 → α = π k = 5 → α = π
3
3
以上から負極側を選択すると
s1 = −
1
3
+j
2
2
s 2 = −1
1
3
−j
2
2
の3つの極が得られる。(次項参照)
s3 = −
8
3 次の 3 つの極
これより伝達関数 H (s ) は
H (s ) =
=
=
1
s − s1 s − s 2 s − s 3
(
)(
)(
)
1
s − s s1 + s2 + s 3 + s s1 s 2 + s 2 s 3 + s 3 s1 + s1 s2 s3
3
2
(
) (
)
1
s + 2s + 2 s + 1
3
2
2−2−3 4次のバターワース特性
2次、3次と同様にして
G( s ) =
1
であるから、
1 + s8
1
k
α = − π + π になり
8
4
k = 0→ α= −
π
1
k = 1 → α = π
8
8
3
5
k = 2 → α = π k = 3 → α = π
8
8
7
9
k = 4 → α = π k = 5 → α = π
8
8
11
13
π k = 7 → α = π
8
8
以上から負極側を選択すると
k = 6→ α=
9
s1 = −0.383 + 0.924 j
s 2 = −0.383 − 0.924 j
s3 = −0.924 + 0.383 j
s 4 = −0.924 − 0.383 j
の4つの極が得られる。
4 次の 4 つの極
これより伝達関数 H (s ) は
H (s ) =
1
(s − s )(s − s )(s − s )(s − s )
1
2
3
4
=
1
1
⋅ 2
s − s s1 + s 2 + s1 s 2 s − s s 3 + s 4 + s 3 s 4
=
1
1
⋅ 2
s + 0.766s + 1 s + 1.848s + 1
2
(
)
(
)
2
2−2−4 5次のバターワース特性
3次の場合も同様に
G( s ) =
α=
1
であるから
1 + s 10
k
π になり
5
10
k = 0→ α= −
π
0
k = 1 → α = π
5
5
1
2
k = 2 → α = π k = 3 → α = π
5
5
3
4
k = 4 → α = π k = 5 → α = π
5
5
5
6
k = 6 → α = π k = 7 → α = π
5
5
7
8
k = 8 → α = π k = 9 → α = π
5
5
以上から負極側を選択すると
s1 = −0.309015 + 0 .951057 j
s 2 = −0.309015 − 0.951057 j
s3 = −1
s 4 = −0.809015 + 0.587788 j
s5 = −0.809015 − 0.587788 j
以上より5つの極が得られる。
5 次の 5 つの極
これより伝達関数 H (s ) は
11
H (s ) =
1
s − s1 s − s 2 s − s 3 s − s 4 s − s5
(
)(
)(
)(
)(
)
=
1
1
⋅ 2
s − s s1 + s 2 + s 3 + s s1 s 2 + s 2 s 3 + s 3 s1 + s1 s 2 s 3 s + s s4 + s 5 + s 4 s 5
=
1
s + 1.61803s + 1.61803s + 1 s + 1.61803s + 1
3
2
(
) (
1
3
2
)
⋅
2
となる。
12
(
)
第3章 Q の定義
第2章で述べた伝達関数
H ( s) =
1
s
1 +  
 j
2n
より求めた複素平面上の極 sk で実軸を対称にした極の和の
逆数が Q である。
伝達関数は
次数が偶数のフィルタの場合、2次の伝達関数の積。
1
1
1
H ( s) =
⋅
⋅ ⋅ ⋅ ⋅⋅
( s − s1 )( s − s 2 ) ( s − s 3 )( s − s 4 )
( s − s n −1 )( s − s n )
次数が奇数のフィルタの場合は1次の RC フィルタと2次の伝達関数の積で
考え、1次の RC フィルタの部分は s k = −1 ということになる。
H ( s) =
1
1
1
1
⋅
⋅
⋅ ⋅ ⋅ ⋅⋅
s + 1 ( s − s1 )( s − s 2 ) ( s − s 3 )( s − s 4 )
( s − s n − 2 )( s − s n −1 )
以上の伝達関数の2次部分を一般的に表したものを
1
1
= 2
( s − sn −1 )( s − s n ) s − ( s n −1 + sn ) s + 1
とすると
Q= −
1
s n −1 + s n
が Q の定義になる。
2章の伝達関数より2次と3次の Q を求めてみる。
n = 2 の場合
s1 + s 2 = − 2
ゆえに
1
Q=
2
13
n = 3 の場合
s1 + s 3 = −1
ゆえに
Q=1
以下同様に求めるわけだがテキストにバターワース特性の正規化テーブルが載
っていたので今回はそちらを使用した。
計測のためのフィルタ回路設計より抜粋。
f c
Q n
2次
f1
1.0
Q1
0.707107
3次
f1
1.0
Q1
0.5
f2
1.0
Q2
1
f1
1.0
Q1
0.541196
f2
1.0
Q2
1.306563
f1
1.0
Q1
0.5
f2
1.0
Q2
0.618034
f3
1.0
Q3
1.618034
f1
1.0
Q1
0.517638
f2
1.0
Q2
0.707107
f3
1.0
Q3
1.931852
f1
1.0
Q1
0.5
f2
1.0
Q2
0.554958
f3
1.0
Q3
0.801938
f4
1.0
Q4
2.246980
f1
1.0
Q1
0.509796
f2
1.0
Q2
0.601345
f3
1.0
Q3
0.899976
f4
1.0
Q4
2.562915
4次
5次
6次
7次
8次
この表で1次のところが Q=0.5 となっているが、伝達関数 H (s ) は入出力の電圧
14
比でもあるので
H ( s) =
1
sC
R+
1
sC
=
1
sCR + 1
となり j が残ってしまう。
1 次のときは形式上 Q と書いてあるが普通の RC フィルタで考える。
15
第4章 回路の設計
4−1 アクティブ・フィルタの設計
伝達関数を用いる方法と Q を用いる方法の2つの方法で、2次、3次、4次、
5次のアクティブ・フィルタを設計し、両方を比較する。
また、1次の RC フィルタも次数の変わるとどのように変わっていくかの比較
のためにアクティブ・フィルタではないが設計する。
4−1−1 RC フィルタの設計
f c = 1kHz, R = 10 kΩ として
C=
1
より
2πf c R
C = 16nF
4−1−2 2次のローパスフィルタ設計
2次のバターワース回路より
−
V 12
 1

1
+
+
+ jωC 1 V 11 −
− j ωC 1 V out = 0

R 1  R 1 R 2
R

2
V in
−
 1

+
+ j ωC 2 V12 = 0

R2  R 2

V11
V12 − Vout = 0
という方程式ができるが、実際に回路を作るときには2つの抵抗値を同じに
するので、
16
R = R1 = R2 として
V
2

+  + j ωC1 V11 − 12 − jωC1Vout = 0 −①
R R
R

V
1

− 11 +  + jωC 2 V12 = 0 −②
R R

−
Vin
V12 − Vout = 0 −③
③より
V12 = Vout −③’
②,③’より
V11 = (1 + jωC 2 R )Vout −②’
①、②’③’より
V
V
2

− in +  + j ωC1  1 + jωC 2 R Vout − out − jωC1 RV out = 0
R R
R

(
(
)(
)
)
Vin = 2 + jωC1 R 1 + j ωC2 R Vout − Vout − jωC1 RVout
(
)
= 2 + jωC 2 R + jωC1 R − ω2 C1C 2 R 2 Vout
Vout
Vin
=
1
1 + 2 j ωC2 R − ω2 C1 C 2 R 2
1
C1 C 2 R 2
=
2
1
− ω2 + j ω
−
C1 R C1C 2 R 2
= H ( j ω)
これを先ほど求めた伝達関数と比較する。
1
H ( s) = 2
s + 2s + 1
ω
ここで s = j
とおくと
ωc
17
ωc2
ω
H(j ) =
となり
ωc
− ω2 + 2 jωωc + ωc2
2
= 2ωc
C1 R
1
= ωc2
2
C1C 2 R
ゆえに
2
2ωc R
2
C2 =
2ωc R
C1 =
以上のことから
C1 : C 2 = 2 : 1 であることがわかる。
ここで f c = 1kHz, R = 10 kΩ とすると
ωc = 2πf c より
C1 =
2
=
2 ⋅ 2πf c R
1
2π1 × 10 3 ⋅1 × 10 4
≈ 2.25 × 10 −8
= 22.5nF
C1 : C 2 = 2 : 1 より
C2 = 11.25nF
次に Q を使う方法での回路を設計する。
f c = 1kHz, R = R1 = R2 = 10kΩ として
正規化表より Q=0.707107 なので
1
Cf =
= 15.9nF
2πf c R
18
C1 = 2Q C f = 22.5nF
C2 =
C1
= 11.25nF
2
となり、 H (s ) から求めた値と同じになる。
これを MicroCap5 で回路を作ると以下のようになる。
上図で out1 が 1 次の RC フィルタで out2 が 2 次のアクティブ・フィルタの出力
である。またバッファとしてオペアンプを用いた。
この out1 と out2 で遮断周波数とその 10 倍の周波数での利得をシミュレーショ
ンしたのが下図である。(次項参照)
19
青いラインが 1 次の RC フィルタ、緑のラインが 2 次のバターワースフィルタ
である。下の Left 部分、上段の青字で−3.000 の下に 0.976K と書いてあるのが
out1 の遮断周波数で下段の−20.000 の下に 9.958K と書いてあるのが−20dB
での周波数である。理論上は 1 次の RC フィルタは遮断周波数 1kHz、−20dB/dec
なのでほぼ満たしているといえる。同じように Right 部分、上段の緑字で−3.000
の下に 0.965K と書いてあるのが out2 の遮断周波数で下段の緑字で−40.000 の
下に 10.000K と書いてあるのが−40dB での周波数である。これも理論上は遮
断周波数 1kHz、−40dB/dec なのでほぼ満たしているといえる。
4−1−3 3次のローパスフィルタ設計
3次のバターワース回路より
節点方程式は
−
 1

V
1
+ +
+ jωC1 V11 − 12 = 0

R1  R1 R2
R2

Vin
20
−
 1

V
1
+
+
+ jωC 2 V12 − 13 − jωC 2Vout = 0

R2  R2 R3
R3

V11
−
 1

+  + jωC3 V13 = 0

R3  R3

V12
V13 − Vout = 0
という方程式ができるが、実際に回路を作るときには3つの抵抗値を同じに
するので、
R = R1 = R2 = R3 として
V
2

+  + j ωC1 V11 − 12 = 0
R R
R

V
V
2

− 11 +  + jωC 2 V12 − 13 − j ωC2 Vout = 0
R R
R

V
1

− 12 +  + j ωC3 V13 = 0
R R

−
Vin
V13 − Vout = 0
となる。
④より
V13 = Vout −④’
③,④’より
V12
= 1 + j ωC3 Vout
R
(
(
)
)
V13 = 1 + j ωC3 R Vout −③’
①、③’より
V
2

− in +  + j ωC1 V11 − 1 + j ωC3 R Vout = 0
R R

V
1
2

 + jωC1 V11 = in + 1 + jωC3 R Vout
R R
R

(
)
(
)
21
−①
−②
−③
−④
1
V11 =
2

R + j ωC1 
R

①’、②より
−
(
Vin +
1 + jωC 3 R
2

R + j ωC1 
R

)
Vout −①’
V
1 Vin + 2 + j ωC3 R Vout  2 + jωC 2 R 
 1 + jωC3 R Vout − out − j ωC2Vout = 0
⋅
+ 
R
2 + j ωC1 R
R
R


(
(
(
)
)
 1 + j ωC3 R
1 + j ωC2 R 
 2 + jωC2 R 
 1 + j ωC3 R −
=
+ 
Vout = 0
2 + j ωC1 R  R 2 + jωC1 R 
R
R


(
Vin
Vout
Vin
)
(
)
)
− 1 − j ωC3 R + ( 4 + 2 jωC1 R + 2 j ωC2 R − ω2 C1 C2 R 2 )(1 + j ωC3 R )
=

2
2
− 2 + 2 jωC 2 R + jωC1 R − ω C1 C2 R

− 1 − j ωC3 R + 4 + 2 j ωC1 R + 2 jωC 2 R − ω2 C1 C2 R 2 + 4 j ωC3 R − 2ω2 C1 C2 R 2 
= 

2
2
3
3
2
2
− 2ω C1 C2 R − j ω C1 C 2 C3 R − 2 − 2 jωC 2 R − j ωC1 R + ω C1 C2 R

(
)
(
)
= 1 + jω 3C3 R + C1 R − 2ω2 C1 C3 R 2 + C 2 C3 R 2 − jω3 C1 C 2 C3 R 3
Vin
Vout
=
1
1 + jω 3C3 R + C1 R − 2ω C1 C3 R 2 + C2 C3 R 2 − j ω3 C1 C2 C3 R 3
(
)
2
(
)
ここで分子分母を C1 C2 C3 R 3 で割ると
Vin
Vout
=
1
C1 C2 C3 R 3

 1
1 
3
1
− jω3 − ω2 ⋅ 2
+
+ jω
+
2
C R C R
C C R
C2 C3 R 2
 1
2

 1 3
これを伝達関数 H (s ) と比較する。
2章で求めた H ( s) =
これを s = j
1
s 2s + 2 s + 1
3+
2
ω
とおくと
ωc
ωc2
ω
H(j ) =
となるので
ωc
− j ω3 − 2ωcω2 + 2ωc2 ω + ωc3
22

1
+
 C C C R3

1 2 3
  1
1 
+
= 2ωc
2
  C2 R C1 R 

 3R
1
+
= 2ωc2

2
2
C
C
R
C
C
R
 1 2
2 3

1

3
 C C C R 3 = ωc
 1 2 3
ここでコンデンサ C1 , C 2 , C3 を
X=
1
1
1
,Y =
,Z =
, ω R = 1 とすると
C1
C2
C3 c
1 = XYZ
2 = Y (3 X + Z )
2 = 2( X + Y )
−①
−②
−③
以上のことから
③より X + Y = 1 −③’
Y = −X +1
②、③’より
2 = ( − X + 1)( 3 X + Z )
2 = −3 X 2 − XZ + 3 X + Z
3 X 2 − 3 X + 2 = Z (1 − X )
3X 2 − 3X + 2
Z=
1− X
①、②’より
−②
3X 2 − 3X + 2
1− X
3X 3 − 3X + 2 − 1 = 0
1 = X (1 − X )
これをMathmaticaを使って解くと
X = 0.718057,0.148971 ± 0.66659i であるが
必要なのは実数解なので
X = 0.718057
このXを使いYとZを解くと
Y = 0.281943
Z = 4.93946
ωR を元に戻して C1 , C 2 , C3 の値が決まる。
23
ここで f c = 1kHz, R = 10 kΩ とすると
C1 =
1
1
=
= 0.2242386 × 10 −7
Xωc R 0.718057 × 2πf c R
= 22.4nF
1
1
C2 =
=
= 0.56477 × 10 − 7
Yωc R 0.281943 × 2πf c R
= 56.5nF
1
1
C3 =
=
= 0.032237 ×10 −7
Zωc R 4.93946 × 2πf c R
= 3.2nF
設計した回路図は以下の図である。
この回路のシミュレーション図は以下の図である。(次項参照)
24
遮断周波数が942Hz と予定とは違ってしまっているが、10kHz でほぼ
−60dB と−20×ndB/dec とこちらの方は予定通りに動いた。
次に Q を使う方法での回路を設計する。
f c = 1kHz, R = R1 = R2 = R3 = 10kΩ として
正規化表より Q 1 =0.5、Q 2 2=1より
1 次の部分は普通のRCフィルタなので
1
C1 =
= 15.9nF
2πf c R
2 次の部分は
1
Cf =
= 15.9nF
2πf c R
C2 = 2Q 2 C f = 31.8nF
C1
= 7.95nF
2
設計した回路図としては以下のようにした。(次項参照)
C3 =
25
この回路のシミュレーション結果は以下のようになった。
こちらも遮断周波数が 944Hz と予定より少し低いが、10kHz では−59.982dB
とほぼ−60dB を満たしている。
今回は H (s ) から求めた値と異なっている。
その理由としては以下のような回路があったとすると
RC部分は 1 次のフィルタ、この出力側に回路 RL があったとすると
26
回路 RL
1
1
// RL
j ωC +
jωC
RL
この回路の伝達関数は
=
なので
1
1
R +(
// RL ) R + ( j ωC +
)
jωC
RL
1
jωC
RL
RL が非常に大きければ
=
となり
1
R
+
j
ω
C
R + ( j ωC +
)
RL
j ωC +
RC 回路に影響はほとんどないが、RL が小さいと Va の電圧が変わって RC 回
路の特性が変わってしまう。Q を使って設計するほうはバッファを挟むので後
ろの回路のことは考えなくてよいが H(s)から求める方法では後ろの回路のこと
も考慮しているのでコンデンサの値が変わってくる。
4−1−4 4次のローパスフィルタ設計
4 次のフィルタは2次のフィルタを 2 段に直列接続すればよいので節点方程
式は4−1−2の式をそのまま使う。
まず、1 段目の C の値を決める。
2 次のフィルタの電圧比は
1
C1C 2 R 2
H ( j ω) =
2
1
− ω2 + jω
−
C1 R C1 C2 R 2
これを先ほど求めた伝達関数と比較する。
1
s + 0.766s + 1
ω
ここで s = j
とおくと
ωc
H ( s) =
2
ωc2
ω
H(j ) =
となり
ωc
− ω2 + 0.766 jωωc + ωc2
27
2
= 0.766ωc
C1 R
1
= ωc2
C1C 2 R 2
ゆえに
2
0.766ω c R
になる。
0.766
C2 =
2ω c R
C1 =
ここで f c = 1kHz, R = 10 kΩ とすると
ωc = 2πf c より
C1 =
2
1
=
0.766 ⋅ 2πf c R 0.766 × π ×10 7
≈ 0.416 × 10 −7
= 41.6nF
C2 =
0.766
より
2ωc R
C2 =
0.766
0.766
=
2πf c R 4 × π × 10 7
≈ 0.0609 × 10 −7
= 6.1nF
続いて 2 段目の回路を設計する。
ωc2
ω
H(j ) =
なので
ωc
− ω2 + 1.848 jωωc + ωc2
2
= 1.848ωc
C3 R
1
= ωc2
2
C 3 C4 R
ゆえに
28
2
1.848ω c R
になる。
1.848
C4 =
2ω c R
C3 =
ここで f c = 1kHz, R = 10 kΩ とすると
ωc = 2πf c より
2
1
=
1.848 ⋅ 2πf c R 1.848 × π × 10 7
C3 =
≈ 1.72 × 10 −8
= 17.2nF
C4 =
1.848
より
2ωc R
C4 =
1.848
1.848
=
2πf c R 4 × π × 10 7
≈ 1.47 × 10 −8
= 14.7nF
次に Q を使う方法での回路を設計する。
f c = 1kHz, R = R1 = R 2 = R3 = R4 = 10kΩ として
正規化表より Q 1 =0.541196、Q 2 =1.306563 なので
Cf =
1
= 15.9nF
2πf c R
C1 = 2Q 1 C f = 2 × 0.541196 × 15.9 × 10 −9 = 1.72 × 10 −8
= 17.2nF
15.9 ×10−9
C2 =
=
= 1.47 ×10 −8
2Q1 2 × 0541196
Cf
C2 = 14.7nF
29
C3 = 2Q 2 C f = 2 ×1.306563 ×15.9 × 10 −9 = 4.16 × 10 −8
= 41.6nF
C4 =
Cf
2Q2
=
15.9 × 10 −9
= 6.08 × 10 −9
2 × 1.306563
= 6.1nF
となり、どちらのやり方でも 1 段目と 2 段目の C の数値が逆になったが値的に
は同じになった。
これを MicorCap5 で回路を作ると以下のようになる。
この図では Q を使った式の順番でCが並んでいるが入れ替えても同じなのでシ
ミュレーションもこの回路一つで行った。シミュレーション結果は下図である。
(次項参照)
30
図を見ると遮断周波数が 928Hz、‐80dB/dec であることがわかる。4 次のバタ
ーワース特性は顕著に出ているが遮断周波数の誤差が‐7%になってしまって
いる。ただこれはグラフの表示範囲を−50dB くらいにすると遮断周波数が
985Hz に変化するのでソフト的な問題と思われる。(下図参照)
31
4−1−4 5 次のバターワースフィルタの設計
5 次のフィルタも 3 次と 2 次に分けて考えられるので先に 3 次の方を考えてみ
ると、前章で求めた
1
s 1.61803s + 1.61803s + 1
ω
これを s = j
とおくと
ωc
H ( s) =
3+
2
ωc2
ω
H(j
)=
となるので
ωc
− jω3 − 1.61803ωc ω2 1.61832ωc2 ω + ωc3
  1
1 
+
= 1.61803ωc
2
  C 2 R C1 R 

 3R
1
+
= 1.61803ωc2

2
2
C 2 C3 R
 C1C 2 R

1

3
 C C C R 3 = ωc
 1 2 3
3 次のときと同様にして解くと
X = 0.718057
Y = 0.281943
Z = 4.93946
f c = 1kHz, R = 10 kΩ とすると
C1 =
1
1
=
= 0.224 × 10 −7
Xωc R 0.710347 × 2πf c R
= 22.4nF
1
1
C2 =
=
= 1.613 ×10 −7
Yωc R 0.0986685 × 2πf c R
= 161nF
1
1
C3 =
=
= 0.011× 10 − 7
Zωc R 14.2676 × 2πf c R
= 1.1nF
32
次は残りの 2 次の部分を設計する。
1
s + 1.61803s + 1
ω
ここで s = j
とおくと
ωc
H ( s) =
2
ωc2
ω
H(j ) =
となり
ωc
− ω2 + 1.61803 j ωωc + ωc2
2
= 1.61803ωc
C4R
1
= ωc2
C 4C 5 R 2
ゆえに
2
1.61803ω c R
になる。
1. 61803
C5 =
2ω c R
C4 =
ここで f c = 1kHz, R = 10 kΩ とすると
C4 =
2
1
=
= 0.257 ×10 7
7
1.61803 ⋅ 2πf c R 1.61803 × π × 10
= 25.7 nF
C5 =
1.61803
より
2ωc R
C5 =
1.61803
1.61803
=
= 0.098 × 10 − 7
7
2πf c R
4 × π × 10
= 9.8nF
設計した回路図は以下の図である。(次項参照)
33
シミュレーション結果は
遮断周波数 1.015kHz、‐99.804dB/dec と理想に限りなく近いシミュレーショ
ン結果になった。
次に Q を使った 5 次のバターワースフィルタの設計は
Q 1 = 0.5 、Q 2 = 0.681034 、Q 3 = 1 .618034
R1 = R2 = R3 = R4 = R5 = R, f c = 1kHz として
34
1 段目は 1 次のパッシブ・フィルタなので
C1 =
1
1
=
2πf c R 2 × π × 107
= 15.9nF
2 段目は
1
1
Cf =
=
= 1.59 × 10 −8
2πf c R 2 × π ×10 7
C2 = 2 Q 2 C f = 0.197 ×10 − 7
= 19.7nF
C3 =
Cf
2Q2
= 0.129 × 10 − 7
= 12.9nF
3 段目は
C4 = 2 Q 3 C f = 0.515 × 10 −7
= 51.5nF
C5 =
Cf
2Q3
= 0.0492 × 10 − 7
= 4.9nF
これをもとに以下のような回路図を作成した。(次項参照)
35
この回路をシミュレーションした結果が以下の図である。
図を見ると遮断周波数が 916kHz と目的の 1kHz からの誤差が−8%以上とだ
いぶ開きがあるが−100dB/dec とこちらの方はほぼ理想どおりの結果が得られ
た。しかし、4 次のフィルタのとき同様に Y 軸の範囲を変えてみると遮断周波
数が違う結果になった。シミュレーションの結果を以下に示す。(次項参照)
36
10kHz では同様の−100dB であるが遮断周波数が 983kHz と 1kHz にかなり
近く−2%程度の誤差で充分と言える結果が出た。
4−2−1 OP アンプの特性
1 次から 5 次までの回路をシミュレーションしたが 1 次のパッシブ・フィルタ
以外はどれも 100kHz 付近でディップが発生している。これはパッシブ・フィル
タでは発生していないことから OP アンプが原因であると考えられる。今回の
研究では安価であることと入手しやすいという理由からナショナルセミコンダ
クタ社の LF353 という OP アンプを使用した。この LF353 がほかの素子を繋
がず、単体で今回のような正帰還に接続するとどのような動作をするか調べて
みた。
37
これをシミュレーションしてみたところ以下のような結果が得られた。
やはり 100kHz 付近で特性が変化してしまっている。これが原因であると思
われる。ただ LF353 の仕様書では利得帯域幅が 4MHz と書いてあるで、40kHz
までのローパスフィルタは動作的に保証されているといえるので今回は 1kHz
が遮断周波数として設定しているので動作上問題はないといえる。
38
第 5 章 回路の作成と評価
5−1 ローパスフィルタプリントパターンの作成
回路の作成としてシミュレーションでは 5 次の回路までしたが作成するにあ
たり、4 次以上は 2 次と 3 次の回路の結合なので 3 次までの回路を作成できれ
ば、次数に関係なく回路を作成できると考え、1 次、2次、3 次のローパスフィ
ルタを作ることにした。
作り方の流れとしては、
①MicroCap5 を使って作った回路を元に PCBE で基板のプリント配線のパタ
ーンをつくる。
②それをプリンタでマスク用のフィルムにパターンを打ち出す。
③そのパターンを感光基板に焼き付ける。
④現像、エッチング。
⑤パターンにあわせて基板に素子を乗っけていく。
と、いう流れで作る。
5−1−1 1次、2次のローパスフィルタのプリントパターン作成
4章で設計した回路を作ろうとしたところ、このままではコンデンサの値を
実現するのに適当な容量のコンデンサがないので、コンデンサを中心に回路を
作り直すことにした。コンデンサは E22 系列を使用した。
1
1次のフィルタではコンデンサと抵抗の値を決める式としては C =
と
2πf c R
用いていたのでコンデンサを中心に C = 10nF としたら R = 15.9kΩ になるので、
もっとも近い値で C = 10nF , R = 16kΩ を使って作ることにした。
また、2 次のフィルタでは C1 = 22nF , C2 = 11nF とし、抵抗は 10k のままで作
ることとした。製作に取り掛かる前に MicroCap5 を使って動作シミュレーショ
ンを行った。(次項参照)
39
1 次のフィルタが遮断周波数 976Hz、ほぼ−20dB/dec、2 次のフィルタが遮
断周波数 1009Hz、ほぼ−40dB/dec なのでシミュレーション上は問題がないの
がわかった。
40
5−1−2 3 次のローパスフィルタのプリントパターンの作成
同様にして 3 次のフィルタもコンデンサをもとに抵抗の値を決める。
並列に繋げばかなり細かい値まで実現できるがなるべく少ないコンデンサで
近い値になるようにコンデンサの値を決めた。Q を使わないで設計したほうは、
C1 = 22.4nf , C 2 = 56.5nF , C3 = 3.2nF なので C2 は 47 nF と 10nF 、C3 は 2.2 nF と 1nF
を並列に繋ぐことにした。 R は 10kΩ のままにする。
動作的には遮断周波数 948kHz と理想値より−5%程度、−60dB/dec もほぼ
満たしている。
次に Q から求めたほうだが、 C2 : C3 = 31.8 : 7.95 = 4 : 1 なので C1 ,C 2 を 22 nF 、
41
C3 は 1nF ,2.2nF , 2.2nF を使い 5.4nF とした。
シミュレーション結果は
遮断周波数 985kHz、ほぼ−60dB/dec とかなり理想値に近い値になった。
42
これが PCBE を使って作成したプリントパターン図である。
感光するときに失敗することもあるのでこれらをいくつか複写してフィルムに
印刷した。
出来上がったフィルム
次に現像する。
43
現像
エッチング
44
これらの作業で残ったプリントパターン上の感光剤をヤスリで削ると以下のよ
うになる。
こうしてできたプリント配線が途中で断線していないかをテスターでひとつひ
とつ調べて断線していないものを切り取りその上に回路図どおりに素子を乗っ
けていく。
1 次と 2 次のローパスフィルタ
45
3 次のローパスフィルタ
回路パターンを書くとき、コンデンサや抵抗を並列や直列に繋ぐことを考えて
いなかったので多少無理のある形になってしまった。
5−2 回路の実測
以下の器材を用いて作成した回路の実測をした。
①KENWOOD 社製 FUNCTION GENERATOR
(交流電圧源用)
②同社製
DISTORTION METER
(利得測定用)
③同社製
REGULATED DC POWER SUPPLY ×2(OPア
ンプ直流電源用)
測定をするための初期値は 1 次から 3 次まですべて同じ条件で行った。
入力電圧1v、OP アンプ直流電圧+15v、−15v
150Hz 付近で出力が入力電圧と同じである。
これらを確認した上で以下の観測をした。
1
2
3
3
−3 d B
992Hz
920Hz
977Hz
965Hz
−2 0 d B
10.07kHz
3.90kHz
2.28kHz
2.29kHz
−4 0 d B
97.6kHz
9.66kHz
4.87kHz
4.93kHz
10kHz
次
−20dB
次
−40dB
11.36kHz
次①
−58dB
11.42kHz
次②
−58dB
シミュレーションでは 100kHz 付近でディップが発生していたが実測では発
生しなかった。また、OP アンプも−3dB になるのは 1.4MHz と 200kHz ほ
46
−6 0 d B
ど理論値よりも低かった。
実測した結果をグラフとして表すと
dB
実測値
10
ゲイン
0
1次
-10
-20
-30
2次
2次
1次
3次
3次Q使用
-40
3次
3次Q使用
-50
-60
150
104
1000
周波数(Hz)
実測では目盛り読み取り誤差などがあるせいか、曲線が多少波打ったりして
いるが全体的にはだいたいシミュレーションどおりの結果になった。
47
6章
結果
シミュレーションと実測値の差
遮断周波数
(-3dB)
/dec
1 次
-20dB/dec
976Hz
992Hz
9.958kHz
10.07kHz
2 次
-40dB/dec
965Hz
924Hz
10.228kHz
9.66kHz
3 次
-60dB/dec
948Hz
990Hz
10.009kHz
11.36kHz
3 次 Q 使用
-60dB/dec
985Hz
960Hz
10.176kHz
11.42kHz
シミュレーション
実測
シミュレーション
実測
比較してみると抵抗やコンデンサの値は同じなのだがやはりシミュレーションと実測
値では違いが出るようだ。しかし、3 次の 60dB 下がるところ以外はさほどの差
にはならなかった。ただ 3 次の場合は−60dB と値がかなり小さいので多少の誤
差は測定器の精度などの関係で現れてしまっていると考えられる。
全体的に見て次数n が上がるにつれて-20dB/dec を満たしているのでバター
ワース特性のローパスフィルタとしては実際に回路として有効性はあるとい
える。
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7 章 総括
実際に回路を作ったのは 3 次までではあったが、だいたい予定通りの動作を
してくれた。次数が奇数のフィルタを設計する場合、手間などを考えると正規
化表があるならば 1 次と 2 次のフィルタを接続したほうがよいと考えられる。
低い周波数のうちはいいが、高い周波数帯まで使えるフィルタを設計する場
合はよほど高性能なOPアンプを使うか OP アンプを使わないで設計する必要
があると思われる。
今回は基礎的な回路を作成するだけだったので充分だったが複雑、巨大な回
路を作成する場合、それなりの性能のソフトとハードが必要である。
今回の研究にでは自分の望みの遮断周波数から抵抗、コンデンサの値を決め
て MicroCap5/CQ を使い回路のシミュレーションをし、PCBEで回路のパタ
ーンの作成と、簡単ではあるが一つの回路ができるまでの一連の流れを体験し
た。途中の計算式が違って思い通りにシミュレーションの結果がでなかったり、
基板のプリントパターンを作る過程での失敗、計測時に原因不明と思われた誤
動作、初めて触る計測機器の使用法など思っていた以上にすんなりとはいかな
かった。しかし企業などでは個々の部門に分かれて全体に携わることはおそら
くないであろうと思われるので今回の研究では大変貴重な体験ができた。
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参考文献
①小高明夫・佐藤邦夫著 「改訂版」SPICE による電子回路の基礎(東海大学
出版界)
②黒田徹著 はじめてのトランジスタ回路設計(CQ出版社)
③計測のためのフィルタ回路設計(CQ出版社)
④トランジスタ技術 SPECIAL No.44 特集 フィルタの設計
⑤トランジスタ技術 SPECIAL No.56 特集 電子回路シミュレーター活用
マニュアル(CQ出版社)
⑥T・グレイ、J・グリン著 榊原進訳 Mathematica ビギナーズガイド(アジ
ソン ウェストレイ・トッパン)
⑦JOHN KEOWN 著 町好雄訳 SPICE による電子回路設計(東京電気大
学出版局)
使用ソフト
①MicroCap5/CQ SpectrumSoftware 社
②PCBE 高戸谷隆 氏
③KaleidaGraph ヒューリンクス社
④Mathematica アジソン ウェスレイ・ジャパン社
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謝辞
今回の研究と論文の作成にあたり、終始丁寧なご指導と、ご教示を承りまし
た高知工科大学電子・システム工学科綿森道夫助教授に深い感謝の意を表しま
す。
また本研究の遂行にあたり、適切なるご助言を賜った橘昌良助教授に深い感謝
の意を表します。
高知工科大学電子・光システム工学科在学中にご指導を賜った原央学科長に
心から感謝いたします。
最後に高知工科大学電子・光システム工学科在学中、本研究の実験遂行、各
過程で終始ご厚意、ご協力を頂いた高知工科大学電子・光システム工学科、平木
昭夫教授・河津哲教授・河東田隆教授・神戸宏教授・成沢忠教授・矢野政顕教
授・畠中兼司教授・西本俊彦教授、野中弘二助教授・八田章光助教授・井上昌
昭助教授・関口晃司助教授、笠原泰講師、武田光由実験講師、西田謙助手の方々
に重ねて感謝の意を述べさせていただきます。
また、本研究を遂行するにあたり細部にわたり実験にご協力いただいた梅村佳
克氏、嶋真秀氏、新田敏弘氏、長谷川和也氏に感謝いたします。
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