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Ⅰ 毒物,劇物,特定毒物
Ⅰ 毒物,劇物,特定毒物 1 定義 化学物質には,概ね,学術レベルでは,1600万種,実用レベルでは約100万種あり,毎年,学術レベ ルでは100万種以上,実用レベルでは数千種の新規化学物質が開発されていると言われている。 この化学物質について,「毒物及び劇物取締法」では,毒性の強い物を毒物に,これに準じて規制する必 要がある物を劇物(劇性の強い物)に,毒物のうち特に著しい毒性を有するものについて特定毒物に指定し て,必要な規制を行っている。 なお,シンナー,爆発物に対する規制は毒物劇物の範囲を超えた規制の必要性からこの法律に追加された。 また,医薬品及び医薬部外品は薬事法によって規定されているが,医薬品はほぼ同じ基準で毒薬又は劇薬に 指定されており,医薬部外品はそもそも人体に対する作用が緩慢なものと定義されていることから,毒物及び 劇物に該当するようなものは除外されている。 『毒物及び劇物取締法』 (目的) 第1条 この法律は,毒物及び劇物について,保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的とする。 (定義) 第2条 この法律で「毒物」とは,別表第1に掲げるものであって,医薬品及び医薬部外品以外のものをい う。 2 この法律で「劇物」とは,別表第2に掲げるものであって,医薬品及び医薬部外品以外のものをいう。 3 この法律で「特定毒物」とは,毒物であって,別表第3に掲げるものをいう。 ※別表1∼3は厚生労働省ホームページを参照のこと。 毒物に指定されている物 101項目 塩類や化合物で指定して 劇物に指定されている物 353項目 いる項目もあり,実際の 特定毒物に指定されている物 19項目 物質は数万種類に及ぶ (平成16年4月現在) 2 判定基準 毒物劇物の判定は,動物における知見,ヒトにおける知見,又はその他の知見に基づき,当該物資の物性, 化学製品としての特質等を勘案して行うものとされ,その基準は原則として次のとおり。 (1)動物における知見 ア 急性毒性 原則として,得られる限り多様な曝露経路の急性毒性情報を評価し,どれか一つの曝露経路でも毒物 と判定される場合には毒物に,一つも毒物と判定される曝露経路がなく,どれか一つの曝露経路で劇物 と判定される場合には劇物と判定される。 (ア)経口 毒物:LD50※が50mg/kg以下のもの 劇物:LD50が50mg/kgを越え300mg/kg以下のもの (イ)経皮 毒物:LD50が200mg/kg以下のもの 劇物:LD50が200mg/kgを越え1,000mg/kg以下のもの (ウ)吸入 毒物:LC50※が500ppm(4hr)以下のもの (ガス) 劇物:LC50が500ppm(4hr)を越え2,500ppm(4hr)以下のもの (エ)吸入 毒物:LC50が2.0mg/L(4hr)以下のもの (蒸気) 劇物:LC50が2.0mg/L(4hr)を越え10mg/L(4hr)以下のもの (オ)吸入 毒物:LC50が0.5mg/L(4hr)以下のもの (ダスト,ミスト)劇物:LC50が0.5mg/L(4hr)を越え1.0mg/L(4hr)以下のもの (カ)その他 ※ LD50,LC50:摂取した個体数の内,その半数が死に至る量をいう。 イ 皮膚に対する腐食性 劇物:最高4時間までの曝露の後,試験動物3匹中1匹以上の皮膚組織の破壊,すなわち,表皮を 貫通して真皮に至るような明らかに認められる壊死を生じる場合 ウ 目等の粘膜に対する重篤な損傷 目の場合 劇物:ウサギを用いたDraize試験において少なくとも1匹の動物で角膜,虹彩又は結膜に対する,可 逆的であると予測されない作用が認められる,または,通常21日間の観察期間中に完全には 回復しない作用が認められる,または,試験動物3匹中少なくとも2匹で,被検物質滴下後24, 48及び72時間における評価の平均スコア計算値が角膜混濁≧3または虹彩炎>1.5で陽性応答が 見られる場合。 なお,上記のほか次に揚げる項目に関して知見が得られている場合は,当該項目を参考にして判定を行 うとされる。 (ア) 中毒徴候の発現時間,重篤度並びに器官,組織における障害の性質と程度 (イ) 吸収,分布,代謝,排泄動態,蓄積性及び生物学的半減期 (ウ) 生体内代謝物の毒性と他の物質との相互作用 (エ) 感作の程度 (オ) その他 (2)ヒトにおける知見 ヒトの事故事例を基礎として毒性の検討を行い,判定を行うとされる。 (3)その他の知見 化学物質の反応性等の物理化学的性質,有効なin vitro試験等における知見により,毒性,刺激性 の検討を行い,判定を行うとされる。 (4)上記(1)∼(3)の判定に際しては次に揚げる項目に関する知見を考慮し,例えば,物性や製品 形態から投与経路が限定されるものについては,想定しがたい曝露経路については判定を省略するな ど現実的かつ効率的に判定するものとされる。 (ア) 物性(蒸気圧) (イ) 解毒法の有無 (ウ) 通常の使用頻度 (エ) 製品形態 (5)毒物のうちで毒性が極めて強く,当該物質が広く一般に使用されるか又は使用されると考えられ るものなどで,危害発生のおそれが著しいものは特定毒物とされる。 Ⅱ 営業者登録制度 1 営業の登録(法第3条,第4条) (1)製造業者,輸入業者 ・製造業,輸入業の登録は,製造所又は営業所ごとに厚生労働省地方厚生局長が行う。 - 1 - ・製剤の製造(製剤の小分けを含む)若しくは原体の小分けのみを行う製造業又は製剤の輸入のみを行う 輸入業にあっては,都道府県知事が行う。 ・登録は5年ごとに更新を受けなければ,その効力を失う。 (2)販売業者 ・販売業者の登録は店舗ごとに都道府県知事が行う。 ・その店舗の所在地が,保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては市長又は区長が行う。 ・登録は6年ごとに更新を受けなければ,その効力を失う。 ・販売業の種類は ① 一般販売業(全ての毒劇物を販売・授与等できる) ② 農業用品目販売業(農業上必要な毒劇物であって厚生労働省令で定めるもののみ) ③ 特定品目販売業(厚生労働省令で定める毒劇物のみ) 2 登録基準(法第5条) 設備に関する基準と,人的要件を充たさないと登録できない。 (1)構造設備基準(規則第4条の4) ① 製造作業を行う場所 ・コンクリート,板張り又はこれに準ずる構造とする等その外に毒物劇物が飛散し,漏れ,しみ出若しく は流れ出,又は地下にしみ込むおそれのない構造であること。 ・毒物劇物を含有する粉じん,蒸気又は廃水の処理に要する設備又は器具を備えていること。 ② 貯蔵設備 ・毒物劇物とその他の物とを区分して貯蔵できるものであること。 ・毒物劇物を貯蔵するタンク,ドラムかん,その他の容器は,毒物劇物が飛散し,漏れ,しみ出るおそれ のないものであること。 ・貯水池その他容器を用いないで毒物劇物を貯蔵する設備は,毒物劇物が飛散し,地下にしみ込み,又は 流れ出るおそれがないものであること。 ・毒物劇物を貯蔵する場所にかぎをかける設備があること。ただし,その場所が性質上かぎをかけること ができないものであるときは,その周囲に,堅固な柵が設けてあること。 ③ 陳列する場所 ・かぎをかける設備があること。 ④ 運搬用具 ・毒物劇物が飛散し,漏れ,しみ出るおそれがないものであること。 (2)欠格条項(申請者) 法第19条第2項若しくは第4項の規定により,登録を取り消され,取消の日から起算して2年を経過し ていないものであるとき 3 登録取消等(法第19条) 4 登録が失効した場合等の措置(法第21条) (1)登録または効力を失ったときは,15日以内に現に所有する特定毒物の品名及び数量を届け出なければな らない。 (2)特定毒物を譲り渡す場合には,50日以内に毒物劇物営業者,特定毒物研究者又は特定毒物使用者に譲り 渡さなければならない。 Ⅲ 毒物劇物取扱責任者 1 毒物劇物取扱責任者設置(法第7条,法第22条第4項) (1)毒物劇物営業者は,毒物劇物を直接取り扱う製造所,営業所又は店舗ごとに専任の毒物劇物取扱責任者を 置き,毒物劇物による保健衛生の危害の防止に当たらなければならない。 - 2 - (2)この設置の規定は,法第22条第1項に規定する者(届出が必要な業務上取扱者)について準用する。 (3)毒物劇物取扱責任者を置いたときは,30日以内に届け出なければならない。 2 毒物劇物取扱責任者の資格(法第8条) ① 資格 ・薬剤師 ・高等学校又はこれと同等以上の学校で応用化学に関する学課を修了した者 ・都道府県知事が行う毒物劇物取扱責任者試験に合格した者 ② 絶対的欠格事由 ・18歳末満の者 ・心身の障害により毒物劇物取扱着任者の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定める もの(精神の機能の障害により業務を適正に行うに当って必要な認知,判断及び意思疎通を適切に行うこ とができない者とする。(規則第4条の7)) ・麻薬,大麻,あへん又は覚せい剤の中毒者 ・毒物若しくは劇物又は薬事に関する罪を犯し,罰金以上の刑に処せられ,その執行を終り,又は執行を受 けることができなくなった日から起算して3年を経過していない者 3 業務上取扱者(法第22条) 毒物劇物営業者又は特定毒物研究者以外の者であって毒物劇物を業務上取り扱う者は,業務上取扱者として 扱われ,毒物劇物の取り扱い等に関する規制が一部準用されている。 (1)届出が必要な業務上取扱者(法第22条第1項) ① 電気めっきを行う事業を行う者であって,その業務上シアン化ナトリウム又は無機シアン化合物たる毒 物(製剤を含む)を取り扱う者 ② 金属熱処理を行う事業を行う者であって,その業務上シアン化ナトリウム又は無機シアン化合物たる毒 物(製剤を含む)を取り扱う者 ③ 最大積載量が5000キログラム以上の自動車若しくは被牽引自動車に固定された容器を用い,又は内 容量が厚生労働省令で定める量以上の容器を大型自動車に積載して行なう毒物又は劇物の運送の事業を行 う者 ・4アルキル鉛を含有する製剤を運搬する場合の容器にあっては,200リットル,それ以外の毒物又は 劇物を運搬する場合の容器にあっては1000リットルとする ・運送する毒物又は劇物は別表第2とする。 別表第二 一 黄燐 二 四アルキル鉛を含有する製剤 三 無機シアン化合物たる毒物及びこれを含有する製剤で液体状のもの 四 弗化水素及びこれを含有する製剤 五 アクリルニトリル 六 アクロレイン 七 アンモニア及びこれを含有する製剤(アンモニア10%以下を含有するものを除く。 )で液体状のもの 八 塩化水素及びこれを含有する製剤(塩化水素10%以下を含有するものを除く。 )で液体状のもの 九 塩素 十 過酸化水素及びこれを含有する製剤(過酸化水素6%以下を含有するものを除く。 ) 十一 クロルスルホン酸 十二 クロルピクリン 十三 クロルメチル 十四 硅弗化水素酸 十五 ジメチル硫酸 十六 臭素 十七 硝酸及びこれを含有する製剤(硝酸10%以下を含有するものを除く。 )で液体状のもの 十八 水酸化カリウム及びこれを含有する製剤(水酸化カリウム5%以下を含有するものを除く。 )で液体状のもの 十九 水酸化ナトリウム及びこれを含有する製剤(水酸化ナトリウム5%以下を含有するものを除く。 )で液体状のもの 二十 ニトロベンゼン 二十一 発煙硫酸 二十二 ホルムアルデヒド及びこれを含有する製剤(ホルムアルデヒド1%以下を含有するものを除く。 )で液体状のもの 二十三 硫酸及びこれを含有する製剤(硫酸10%以下を含有するものを除く。 )で液体状のもの - 3 - ④ しろありの防除を行う事業を行う者であってその業務上砒素化合物たる毒物(製剤を含む)を取り扱う 者 ・事業者ごとに30日以内に,その事業所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない。 (2)届出の必要がない業務上取扱者(法第22条第5項) ・農家の人が,毒物劇物に該当する農薬を取り扱う場合 ・病害虫を駆除するために,毒物劇物に該当する薬品を取り扱う場合 ・実験のために学絞等で毒物劇物に該当する試薬を取り扱う場合など 毒物劇物取締法の規制の一部が適用される。 業 種 製造業 輸入業 一般販売業 農業用品目 販売業 販売業 特定品目 販売業 要届出業種 業務上 その他の 取扱者 業種 事務種別 有効期間 取扱責任者 取扱規定 5年 設置 適用 登録 都道府県知事 保健所を設置する市の市長 又は 特別区の区長 6年 設置 適用 届出 都道府県知事 永久 設置 適用 なし − − − 適用 登録 登 録 権 限 者 地方厚生局長 (都道府県知事) Ⅳ 毒物劇物の取扱い 毒物又は劇物の取扱(法第11条 法第22条第5項) (1)毒物又は劇物が盗難にあい,又は紛失することを防ぐのに必要な措置を講じなければならない。 (2)毒物若しくは劇物又は毒物若しくは劇物を含有するものであって政令で定めるものがその製造所,営業所 もしくは店舗又は研究所の外に飛散し,漏れ,漏れ出,若しくはしみ出,又はこれらの施設の地下にしみ込 むことを防ぐのに必要な措置を講じなければならない。 (毒物又は劇物を含有するものであって政令で定めるもの) ① 無機シアン化合物たる毒物を含有する液体状の物(シアン含有量が1リットルにつき1ミリグラム以下 のものを除く。) ② 塩化水素,硝酸若しくは硫酸又は水酸化カリウム若しくは水酸化ナトリウムを含有する液体状の物(水 で十倍に希釈した場合の水素イオン濃度が水素指数2.0から12.0までのものを除く。) (3)製造所,営業所若しくは店舗又は研究所の外において毒物若しくは劇物又は前項の政令で定める物を運搬 する場合には,これらの物が飛散し,漏れ,流れ出,又はしみ出ることを防ぐのに必要な措置を講じなけれ ばならない。 ○ 毒物及び劇物の保管管理について(昭和52年薬務局長通知) ・毒物劇物を貯蔵陳列する場所は,その他のものを貯蔵,陳列する場所と明確に区別された毒物劇物専用の ものとし,かぎがかけられる設備等のある堅固な設備とすること ・貯蔵陳列する場所については,盗難防止のため敷地境界線から十分離すか又は一般の人が容易に近づけな い措置を講ずること。 (4)毒物又はすべての劇物は,その容器として,飲食物の容器として通常使用される物を使用してはならない。 Ⅴ 表 示 毒物又は劇物の表示(法第12条) - 4 - (1)毒物劇物の容器及び被包に,「医薬用外」の文字及び毒物については赤字に白色をもって「毒物」の文 字,劇物については白地に赤色をもって「劇物」の文字を表示しなければならない。 (2)毒物劇物営業者は,その容器及び被包に,以下に掲げる事項を表示しなければ,毒物又は劇物を販売し, 又は授与してはならない。 ① 毒物又は劇物の名称 ② 毒物又は劇物の成分及びその含量 ③ 有機燐化合物及びこれを含有する製剤たる毒物及び劇物については,解毒剤の名称(2−ピリジルアル ドキシムメチオダイド(別名PAM)の製剤及び硫酸アトロピンの製剤) ④ 毒物又は劇物の取扱及び使用上特に必要と認めて,厚生労働省令で定める事項 ○ 毒物又は劇物の製造業者又は輸入業者が,その製造し,又は輸入した毒物又は劇物を販売し,又は授 与するときは,その氏名及び住所 ○ 製造又は輸入した塩化水素又は硫酸を含有する製剤たる劇物(住宅用の洗浄剤で液体状のものに限 る。)を販売し,又は授与するときは以下に掲げる事項 ・小児の手に届かないところに保管しなければならない旨 ・使用の際,手足や皮膚,特に眼にかからないよう注意しなければならなない旨 ・眼に入った湯合は,直ちに流水でよく洗い,医師の診断を受けるべき旨 ○ 製造又は輸入したジメチルー2・2−ジクロルビニルホスフエイト(別名DDVP)を含有する製剤 (衣料用の防虫剤に限る)を販売し,又は授与するときは以下の事項 ・小児の手に届かないところに保管しなければならない旨 ・使用直前に開封し,包装紙等は直ちに処分すべき旨 ・居間等人が常時居住する室内では使用してはならない旨 ・皮膚に触れた場合には,石けんを使ってよく洗うべき旨 ○ 毒物劇物販売業者が,毒物又は劇物の直接の容器又は直接の被包を開いて,毒物又は劇物を販売し, 又は授与するときは,その氏名及び住所並びに毒物劇物取扱責任者の氏名 (3)毒物又は劇物を貯蔵し,又は陳列する場所に,「医薬用外」の文字及び毒物については「毒物」,劇物 については,「劇物」の文字を表示しなければならない。 Ⅵ 特定用途に供される毒物劇物の販売 1 農業用劇物の着色(法第13条) 硫酸タリウムを含有する製剤たる劇物や燐化亜鉛を含有する製剤たる劇物は,あせにくい黒色で着色する方 法で着色したものでなければ,これを農業用として販売し,又は授与してはならない。 2 一般消費者の生活の用に供されると認められるものであって,塩化水素又は硫酸を含有する製剤たる劇物 (住宅用の洗浄剤で液体状のものに限る。)及びジメチル−2・2−ジクロルビニルホスフエイト(別名DD VP)を含有する製剤(衣料用の防虫剤に限る)については,その成分の含量又は容器若しくは被包について は基準に適合するものでなければ,これを販売し,又は授与してはならない。(法13条の2) Ⅶ 譲渡手続・交付の制限・情報の提供 1 譲渡の手続(法第14条) (1)毒物劇物営業者は,毒物劇物を他の毒物劇物営業者に販売し,又は授与したときは,その都度以下の事項 を書面に記載しておかなければならない。 ① 毒物又は劇物の名称及び数量 ② 販売又は授与の年月日 - 5 - ③ 譲受人の氏名,職業及び住所(法人にあっては,その名称及び主たる事務所の所在地) (2)毒物劇物営業者は,譲受人から上記事項を記載し,譲受人が押印した書類の提出を受けなければ,毒物劇 物営業者以外の者に販売し,又は授与してはならない。 (3)毒物劇物営業者は,書面の提出に代えて,譲受人の承諾を得て厚生労働省令で定めるところにより電磁方 法によることができる。 (4)毒物劇物営業者は,販売又は授与の日から5年間,書面並びに電磁的記録を保存しなければならない。 2 交付の制限(法第15条) (1)毒物劇物営業者は,毒物又は劇物を以下の者に交付してはならない。 ① 18歳末満の者 ② 心身の障害により毒物又は劇物による保健衛生上の危害の防止の措置を適正に行うことができない者と して厚生労働省令で定めるもの (精神の機能の障害により毒物又は劇物による保健衛生上の危害の防止の措置を適正に行うに当たって必 要な認知,判断および意思疎通を適切に行うことができない者とする。) ③ 麻薬,大麻,あへん又は覚せい剤の中毒者 (2)毒物劇物営業者は,厚生労働省令の定めるところにより,その交付を受ける者の氏名及び住所を確認した 後でなければ,第3条の4に規定する政令で定める物を交付してはならない。 ○ 政令で定めるもの 引火性,発火性又は爆発性のある毒物又は劇物であって政令で定めるもの ・亜塩素酸ナトリウム及びこれを含有する製剤(亜塩素酸ナトリウム30%以上を含有するものに限 る。) ・塩素酸塩類及びこれを含有する製剤(塩素酸塩類35%以上を含有するものに限る。) ・ナトリウム並びにピクリン酸 ○ 交付を受ける者の確認は,身分証明書,運転免許証,国民健康保険被保険者証等交付を受ける者の氏名及 び住所を確かめるに足りる資料の提示を受けて行うものとする。 (3)毒物劇物営業者は,帳簿を備え,(2)の確認をしたときは,その確認に関する事項を記載しなければな らない。 ① 交付した劇物の名称 ② 交付年月日 ③ 交付を受けた者の氏名及び住所 3 情報の提供(施行令第40条の9) (1)毒物劇物営業者は,毒物又は劇物を販売し,又は授与するときは,その販売し,又は授与する時までに, 譲受人に対し,当該毒物又は劇物の性状及び取扱いに関する情報を提供しなければならない。 ただし,以下の場合はこの限りでない。 ① 1回につき200ミリグラム以下の劇物を販売し,又は授与する場合 ② 塩化水素又は硫酸を含有する製剤たる劇物(住宅用の洗浄剤で液体状のものに限る。)及びジメチル −2・2−ジクロルビニルホスフエイト(別名DDVP)を含有する製剤(衣料用の防虫剤に限る)を 主として生活の用に供する一般消費者に対して販売し,又は授与する場合 ○ 情報の提供は,以下のいずれかに該当する方法により,邦文で行わなければならない。(法施行規則第 13条の9) ① 文書の交付 ② 磁気ディスクの交付その他の方法であって,当該方法により情報を提供することについて譲受人が承 諾したもの (2)毒物劇物営業者は,情報の内容に変更が生じたときは,速やかに,当該譲受人に対し,変更後の情報を提 供するよう努めなければならない。 - 6 - ○ 情報提供しなければならない内容(法施行規則第13条の10) ① 情報を提供する毒物劇物営業者の氏名及び住所及び主たる事務所の所在地(法人にあっては,その名 称及び主たる事務所の所在地) ② 毒物又は劇物の別 ③ 名称並びに成分及びその含量 ④ 応急措置 ⑤ 火災時の措置 ⑥ 漏出時の措置 ⑦ 取扱い及び保管上の注意 ⑧ 暴露の防止及び保護のための措置 ⑨ 物理的及び化学的性質 ⑩ 安定性及び反応性 ⑪ 毒性に関する情報 ⑫ 廃棄上の注意 ⑬ 輸送上の注意 Ⅷ 廃棄,運搬等取扱 1 廃棄の方法(法第15条の2) 毒物若しくは劇物又は第11条第2項に規定する政令で定める物は,廃棄の方法について政令で定める技術 上の基準に従わなければ,廃棄してはならない。 (1)第11条第2項に規定する政令で定めるもの(施行令第38条) ① 無機シアン化合物たる毒物を含有する液体状の物(シアン含有量が1リットルにつき1ミリグラム以下 のものを除く。) ② 塩化水素,硝酸若しくは硫酸又は水酸化カリウム若しくは水酸化ナトリウムを含有する液体状の物(水 で十倍に希釈した場合の水素イオン濃度が水素指数2.0から12.0までのものを除く。) (2)廃棄の方法に関する技術上の基準(施行令40条) ① 中和,加水分解,酸化,還元,希釈その他の方法により,毒物若しくは劇物又は第11条第2項に規定 する政令で定める物のいずれにも該当しない物とすること。 ② ガス体又は揮発性の毒物又は劇物は,保健衛生上危害を生ずるおそれがない湯所で,少量ずつ放出し, 又は揮発させること。 ③ 可燃性の毒物又は劇物は,保健衛生上危害を生ずるおそれがない場所で,少量ずつ燃焼させること。 ④ 前号により難い場合には,地下1メートル以上で,かつ,地下水を汚染するおそれがない地中に確実に 埋め,海面上に引き上げられ,若しくは浮き上がるおそれがない方法で海中に沈め,又は保健衛生上危害 を生ずるおそれがないその他の方法で処理すること。 ○ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律,水質汚染防止法,大気汚染防止法,下水道法,海洋汚染防止条約 等他の法令等の規制を遵守すること ○ 個々の品目について具体的な廃棄方法を決め,公表している。 「毒物及び劇物の廃棄の方法に関する基準」 2 回収等の命令(法第15条の3) (1)都道府県知事は,毒物劇物営業者等の行う毒物若しくは劇物等の廃棄の方法が政令で定める基準に適合せ ず,これを放置しては不特定又は多数の者について保健衛生上危害を生ずるおそれがあると認められるとき は,その者に対し,当該廃棄物の回収又は毒性の除去その他保健衛生上の危害を防止するために必要な措置 を講ずべきことを命ずることができる。 3 運搬等についての技術上の基準等(法第16条) - 7 - (1)保健衛生上の危害を防止するため必要があるときは,政令で,毒物又は劇物の運搬,貯蔵その他の取扱に ついて,技術上の基準を定めることができる。 (2)貯蔵,使用方温保管,容器,運搬等について基準が定められている。 ① 1回につき千キログラム以上運搬する場合には,容器又は披包の外部に,毒劇物の名称及び成分の表示が なされている ② 1回につき五千キログラム以上運搬する場合には, ・交代して運転する者又は助手の同乗(H16.10.1から「又は助手」の部分を削除) ・車両の前後に「毒」標識 ・防毒マスク,ゴム手袋等事故の際に応急の措置を講ずるために必要な保護具を2人分以上備える ・毒劇物の名称,成分及びその含量並びに事故の際に講じなければならない応急の措置の内容を記載した書 面 ○ 運搬時の容器又は被包の使用,積載の態様,運搬方法,荷送人の通知義務 ○ 運搬容器について,容器への収納方法,容器の試験等を定めた基準を定めて公表 「毒物及び劇物の運搬容器に関する基準」 (3)特定毒物の取扱 ○ 特定毒物の取扱に関する技術上の基準 ○ 特定毒物を製造又は輸入する業者は,一定の品質又は着色の基準に適合するものでなければ,販売又は 授与してはならない。 ○ 特定毒物を製造又は輸入業者又は販売業者が販売し,又は授与する場合には一定の表示をしなければな らない旨 Ⅸ 事故時の措置 事故の際の措置(法第16条の2) (1)取り扱っている毒物劇物が飛散し,漏れ,流れ出,しみ出,又は地下にしみ込んだ場合において,不特定 又は多数の者について保健衛生上の危害が生ずるおそれがあるときは,直ちに,その旨を保健所,警察署又 は消防機関に届け出るとともに,保健衛生上の危害を防止するために必要な応急の措置を講じなければなら ない。 (2)取扱いに係る毒物又は劇物が盗難にあい,又は紛失したときは,直ちに,その旨を警察署に届け出なけれ ばならない。 ○ 個々の品目について具体的な事故時の措置を定めて公表 「毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置に関する基準」 Ⅹ 特定毒物 1 特定毒物研究者(法第6条の2) (1)特定毒物研究者の許可は,その者の主たる研究所の所在地の都道府県知事が行う。 (2)毒物に関し相当の知識を持ち,かつ,学術研究上特定毒物を製造し,又は使用することを必要とする者で なければ,許可を与えてはならない。 (3)相対的欠格事項 ・心身の障害により毒物劇物取扱責任者の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定める もの ・麻薬,大麻,あへん又は覚せい剤の中毒者 ・毒物若しくは劇物又は薬事に関する罪を犯し,罰金以上の刑に処せられ,その執行を終り,又は執行を受 けることができなくなった日から起算して3年を経過していない者 - 8 - ・許可を取り消され,取消しの日から起算して2年を経過していない者 (4)特定毒物を学術研究以外の用途に供してはならない。 2 特定毒物使用者(法第16条に規定される技術上の基準で定められている。都道府県知事の指定を受け る。) (1)特定毒物を品目ごとに政令で定める用途以外の用途に供してはならない。 (2)特定毒物使用者は,その使用することができる特定毒物以外の特定毒物を譲り受け,又は所持してはなら ない。 ⅩⅠ その他 1 興奮,幻覚等の作用を有する毒物又は劇物(法第3条の3) 興奮,幻覚等の作用を有する毒物又は劇物であって政令で定めるものは,みだりに摂取し,若しくは吸入し, 又はこれらの目的で所持してはならない。 トルエン並びに酢酸エチル,トルエン又はメタノールを含有するシンナー(塗料の粘度を減少させるために 使用される有機溶剤をいう。),接着剤,塗料及び閉そく用又はシーリング用の充てん料とする。 2 発火性又は爆発性のある劇物(法第3条の4) 引火性,発火性又は爆発性のある毒物又は劇物であって政令で定めるものは,業務その他正当な理由による 場合を除いては,所持してはならない。 ・亜塩素酸ナトリウム及びこれを含有する製剤(亜塩素酸ナトリウム30%以上を含有するものに限る。) ・塩素酸塩類及びこれを含有する製剤(塩素酸塩類35%以上を含有するものに限る。) ・ナトリウム ・ピクリン酸 - 9 -