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住 め ば 都
住めば都 by DOBO 今治の皆さんこんにちは! 2歳の息子と一緒に今治に戻 ってきてからはや半年が過ぎま した。20数年も今治を離れて いたら、帰って来てから慣れる までしばらく大変だと思っていま したが、戻ってみれば何のこと はない、十数年もニューヨーク にいたことが夢のように思えます。タイムズスクエアを毎 日横切って通勤してたなんて、嘘みたい!住めば都、人 間の適応能力ってすごいものです。 今治に戻ってきたのは、家業の婚礼貸衣装業を継ぐた めでした。サティの近くのことぶきやがワタクシ達の店でご ざいます。ニューヨークでは一応ジャーナリストなんぞを やっていて、貸衣装業とは全然関係のない職業だった ので、こちらへの移住に関しては随分悩みました。特にア メリカ人の夫にとっては、随分勇気がいったことと思いま す。最終的には移住という道を選び、家族皆でよちよち と歩き始めたところです。離れて暮らしていた夫も、12月 にようやく引っ越してくることになりました。 ところで、日本人女性は何故これほど花嫁衣裳にこだわ るのかと思われる方もいらっしゃるでしょう。実は私もその 一人でした。文字通り、ウエディングドレスに囲まれて育 ったわけですが、生来のひねくれ者であったがために、ド レスに興味を持ったことも、着てみたいと思ったこともあり ませんでした。でも35歳でようやく結婚した際には、観念 して花嫁衣裳をまといました。親を喜ばせたかったことも ありますし、一生結婚しないんじゃないかと親をやきもき させた罰として、衣裳ぐらいは着なきゃならんだろうという 考えもありました。 でも実際に結婚式をしてみると、時間が経つにつれ、や っておいて良かったと感じるようになりました。実際、あの 特別な日の思い出は、辛い時に随分自分を助けてくれ たような気がします。全てが上手くいかないとき、ニュー ヨークの小さなアパートで、家族や友達に囲まれている 結婚式の写真を何度救われたかしれません。なんだか こんな私も綺麗に写っていて(美容師さん、ありがとう! )、皆も本当に嬉しそうで。零細企業を営んでいくのは大 変ですが、自分が結婚式の思い出に支えられたことを思 うに付け、気持ちが奮い立ちます。一人の人間と一生を 共にするということは、ものすごく大きな決断で、勇気が いるものです。でもそんな素晴らしい決意をされたお二 人を、われわれの仕事を通じて応援したい―。そう願っ てやみません。 ところで、結婚、という言葉を使うとき、いつも思い出す シーンがあります。米国で、私の夫の友達のリハーサル ディナーに出席した時のことです。リハーサルディナーと いうのは、こちらでは最近0次会というのでしょうか、近親 者だけを集めて結婚式の前日に行うパーティーを指しま す。新郎の両親はずっと前に離婚していたので、父親は パートナーを、母親は再婚した相手をそれぞれ連れて出 席していました。自己紹介の段になり、それぞれが新郎 新婦との関係を説明する際に、やや緊張した雰囲気も ありましたが、父親のパートナーの方(男性です)が、「う ーん、僕は新郎の何に当たるのかよく分からないです! 」と言った途端、皆大爆笑。彼らのオープンさに改めて 驚くとともに、皆がお互いを受け入れ、一つの大きな家 族として結ばれる瞬間を見たような気がして、胸が熱くな りました。結婚はただの社会的な契約じゃない、人々を つないでいく、本当に美しいものなんだと、実感した瞬間 でもありました。 引っ越しのため、あと数日でニューヨークに出発です。夫 とともに始める今治での生活は順風満帆とはいかないか もしれません。でも、きっと大丈夫。結婚式の誓いでも言 いましたから。「私DOBOはビルを夫とし、その健やかな るときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富 めるときも、貧しいときも、ニューヨークでも、今治でも、こ れを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命 ある限り、真心を尽くすことを誓います。」私たち、長生き するから、覚悟してちょうだいね! i-News December '10 / January ‘11 14