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患者さん、ご遺族1000人の実際の声に基づいたがん患者さん・ご家族と

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患者さん、ご遺族1000人の実際の声に基づいたがん患者さん・ご家族と
患者さん・ご遺族の声に基づいた
がん患者・家族との
コミュニュケーションを鍛えるセミナー
本日のセミナーの目的
患者・遺族調査の結果に基づいた
“求められるコミュニケーション” を知る
事例から具体的なケアを考える
プログラムの内容
1. イントロダクション 14:00-14:05
2. レクチャー
14:05-14:20
3. 事例検討
説明、事例提示 14:20-14:30
グループワーク 14:30-15:30
(休憩10分)
グループワーク
4. まとめ
15:40-16:30
16:30-17:00
1. 患者・遺族調査の結果
2. 緩和ケアのエビデンス
1. 患者・遺族調査の結果
患者・遺族調査
<対象>
患者調査
2008年4~5月に浜松市内の8病院の外科、消化器内科、
呼吸器内科など一般の外来に受診 しているがん患者さん
(再発・遠隔転移があるもの)
遺族調査
2007年4月~2008年3月に浜松市内の7病院の一般病棟、
ホスピス、在宅で亡くなられたがん患者さんのご遺族
<方法>
アンケート調査:QOLの評価尺度を用いて評価
患者・遺族調査の結果 1
患者調査
549件の調査票を発送し、337件(61%)から回収
遺族調査
602件の調査票を発送し、432件(72%)から回収
一般病棟313名、ホスピス80名、在宅39名
患者・遺族調査の結果 2
* 40%の患者さん・ご遺族が、「身体的苦痛の緩和」、「精神的ケア」に改善が必要と考えている
患者・遺族調査 自由記述のまとめ
● 患者・家族の気持ちに寄り添って、
一緒に考えてほしい
「患者の気持ちは、本人でなければわからないと思います。一生
懸命に話しても、医師からも看護師からも『気にしすぎですよ』、
『神経質になりすぎですよ』と言われて、分かってもらえていない
気がして悲しくなりました。答えはいらないので、気持ちを聴いて
ほしかった」
「家族として難しかったのは、どう接していけばよいかということで
した。本人の言葉に、どう答えてあげればよいかが分かりません
でした。でも、先生や看護師さんが、本人だけではなく、家族もサ
ポートしてくださったおかげで、母をおだやかに看取ることができ
ました」
患者・遺族調査 自由記述のまとめ
● 生きる希望を支えてほしい
「代替療法を認めてもらえず、『やっても無駄』といわれ、
誰のための治療なのか分からなくなりました。がんに対する
治療はできなくても患者の希望になるように接してほしい」
● 患者・家族が後悔しないように、話しておきたい
やってあげたいことができるようにしてほしい
「痛がったり、苦しんだりすることはありませんでしたが、
この後どうなっていきますという説明がなかったので、
思ったより早く意識がなくなることを知らないまま過ごした
時間が悔やまれます。意識がなくなることをもう少し
早く教えてもらえたらよかったと思います」
患者・遺族調査 自由記述のまとめ
● 苦痛が最小限になるように努力してほしい
「だるさやむくみがなかなかとれませんでしたが、よくなら
なくてもいろいろな方法をみんなで考えてもらえたこと
に感謝しています」
● 医療用麻薬についての不安をやわらげてほしい
「容態が悪くなったとき、モルヒネで痛みは楽になりましたが
錯乱状態になって、きちんとお別れができませんでした。モル
ヒネのせいでないなら、はっきり教えてもらえるとよかったと
思います」
患者・遺族調査の結果のまとめ
1. 約40%の患者・遺族が緩和ケアに改善が必要と評価
2. 特に、以下の3領域の改善が必要である
生きる希望をもちながら、かつ、心のこりもない
苦痛をやわらげ、かつ、
医療用麻薬についての誤解もない
気持ちをわかってもらえたと思える
2. 緩和ケアのエビデンス
3つの項目にそった知識を整理する
生きる希望をもちながら、かつ、心のこりもない
苦痛をやわらげ、かつ、
医療用麻薬についての誤解もない
気持ちをわかってもらえたと思える
生きる希望をもちながら、かつ、心のこりもない
「何もすることがない」というかわりに「今後の達成可能な目
標を具体的にいう」
しておいた方がよいことについて早い時期に相談にのる
代替療法の相談にのる
がん患者さん・ご家族の声 p7
家族がコミュニケーションに
ついて不満と感じたOdds比
家族が「希望を支えながら
心の準備ができる」と思えたOdds比
「何もすることがない」という
3.5
今後の達成可能な目標を
具体的にいう
0.47
質問できる雰囲気である
0.34
しておいた方がよいことについて
早い時期に相談にのってくれた
3.9
代替療法の相談にのってくれた
3.1
Morita T. Ann Oncol.2004;15:1551-1557,他
生きる希望をもちながら、かつ、心のこりもない
主治医が予測した予後より、実際の予後は短い
⇒早めに相談しておく
ことが必要
E.g., 「希望も持ちながら、同
時に、悪いことも考えておき
ましょう」
がん患者さん・ご家族の声 p8
Lamont EB.Ann Intern Med 2001;134:1096-1105
苦痛をやわらげ、かつ、
医療用麻薬についての誤解もない
医療用麻薬について
医療用麻薬の使用は、患者の生命予後に影響しない
医療用麻薬の使用で、麻薬中毒(精神依存)にはならない
がん患者さん・ご家族の声 p10
Schug SA. J Pain Symptom Manage 1992; 7: 259-266
Portenoy RK. J Pain Symptom Manage 1990; 5: S46-52
苦痛をやわらげ、かつ、
医療用麻薬についての誤解もない
呼吸困難について
疼痛に対して医療用麻薬を定期的に使用している場合、呼吸
困難を緩和するために医療用麻薬を追加しても呼吸抑制は
起こしにくい
がん患者の呼吸困難は、モルヒネでやわらげることができる
患者の息苦しさと酸素飽和度は比例しない
気持ちをわかってもらえたと思える
臨床では2種類のコミュニケーションがある
1. 情報を収集し、伝えるためのコミュニケーション
→正確で迅速な情報の収集が目的
2. 援助的コミュニケーション
→情報収集が目的ではなく、コミュニケーションにより
患者の満足・安心・信頼を得ることが目的
村田久行先生 講演会資料より
援助的コミュニケーション
(サイン)→ メッセージ
満足
安心
信頼
メッセージ
①言葉(e.g., 痛い、食べれない)をメッセージ(e.g., つらい)として
受け取る
② メッセージを言語化して返す(e.g., つらいんですね)
村田久行:臨床に活かすスピリチュアルケアの実際2 . ターミナルケア12(5) . P423 .2002 より作成
援助的コミュニケーションの重要性
早くよくなって、
また仕事ができるようになりたいです
とてもつらい気持ちなんですね。
よくなりたいと思っていらっしゃるんですね
よくなるのは難しいですね。
仕事はとてもできない状態です
患者さんが『わかってもらえた』と思えることが重要
まとめ
生きる希望をもちながら、かつ、心のこりもない
「何もすることがない」というかわりに今後の達成可能な目標を具体的にいう
しておいた方がよいことについて早い時期に相談にのる
代替療法の相談にのる
苦痛をやわらげ、かつ、
医療用麻薬についての誤解もない
医療用麻薬の使用は、患者の生命予後に影響しない・麻薬中毒には
ならないことをはっきりと伝える
気持ちをわかってもらえたと思える
● 援助的コミュニケーションを意識して用いる
事例検討
タイムスケジュール
14:20-14:30
・進め方の説明
14:30 -
グループワーク
・自己紹介(ひとり10秒)
・司会・書記・発表者を決めてください
・ふせんなど使いながら
自由に話し合ってください
(休憩)
グループワーク
まとめ、デモンストレーション
*アンケートにご協力ください!
15:30-15:40
15:40-16:30
16:30-17:00
・事例提示
患者・遺族調査の自由記述をもとに
深く考えてみよう
生きる希望をもちながら、かつ、心のこりもない
苦痛をやわらげ、かつ、
医療用麻薬についての誤解もない
気持ちをわかってもらえたと思える
事例提示
Aさん、58歳、男性
・病名:肺がん、多発骨転移
・経過:200X年、肺がんと診断される
痛みがあり、MSコンチン20mg/day内服中
化学療法を受けるがPD、呼吸困難が増強している
・予後:短い月単位と考えられる
・家族:Aさん、妻、長男夫婦との4人暮らし
・病状認識
Aさん:病状が進行しているために、呼吸困難が増している。
できるだけ頑張りたい
妻:病状が進んでいると感じている。とにかく生きていてほしい
頑張ってほしい。代替療法も続けていきたい
長男:一日でも長く生きてほしい思いはあるが、限界があるこ
とも理解している
事例提示
事例1ヶ月後
Aさんは呼吸困難の増強があり、ベッド上での体動もつらく
なっている。内服も難しくなってきている。苦痛をやわらげ
るためには、鎮静も選択肢に入るような状況である
妻は、「実兄が最後にモルヒネの注射を使ったあとから話
せなくなり、1日で亡くなってしまった」と考えており、薬に対
する抵抗感がある
事例から考える具体的なケア
妻・長男・本人はどんな気持か?
妻
Aさんの病状が進行していることを理解しながらも、「生きていてほしい」「希
望をもち続けたい」という思いがある。Aさんを失うかもしれないという現実が
妻にとって脅威となっている。不安やこれまでのプロセスに対する後悔、罪
悪感などが民間療法という行動として現れている可能性がある
長男
Aさんの病状が悪化していることを分かり、母親の気持ちも理解している。長
男自身も「父親を亡くすという大きな悲しみ」(予期悲嘆)の中にある。家族に
とっての大きな困難をまえに、Aさんにとって、家族にとってどのように最後
の時間を過ごすことがよいのだろうかと考え、対処しようとしている
本人
これまで拠りどころとなってきた化学療法の継続が難しくなってきたこと、身
体的苦痛の増強が不確さ、今後への不安を増強させていると考えられる。
「先のみえない不安」と「希望をもち続けたい思い」との間でゆらぎがある
事例から考える具体的なケア
気持ちをわかってもらえたと思えるために
何をしたらいいか?
● Aさん・家族のゆらぎをあるがままに受け止めようとする
● Aさんと家族それぞれが思いを話せる場所・時間をつくる
*Aさん・家族が現状をどんなふうに認識しているか、
一番困っていること、希望をopen-ended questionでたずねる
「いちばんご心配されていること・してあげたいことは何ですか」
「何かお力になれることはありませんか」
● 説明ではなく、「気持ちを聴きメッセージを捉える」(気持ちに手当てを
する)ところに重点をおく。医療者が受け止めたメッセージを言葉にし
て返していく(共感)
「頑張ってほしい、何かしてあげたいと思われているんですね」
事例から考える具体的なケア
生きる希望をもちながら、かつ、心のこりもないために
どうかかわったらいいか?
希望を支える
*Aさんと家族の「よくなりたい・よくなってほしい」という希望を
否定せず、できること、達成可能な目標を話し合う
➟リハビリ、ステロイド、見守り、可能な代替療法
事例から考える具体的なケア
生きる希望をもちながら、かつ、心のこりもないために
どうかかわったらいいか?
こころの準備を促す
*気持ちの準備にあわせて、今後予測される状況について話す
「家族として何を希望するか、何をやってあげたいか」をきく
*もう一歩踏み込むとき “if statement(もし・・ならば)”や「先々のことを考え
たりしますか」の問いかけを用いる
「現状を改善できるように最大限の努力をしていきますが、もし、具合がよく
なかったときにこうしてあげたい、ということはありますか」
「この先、ご病気そのもののせいで、会話をすることが難しくなってくること
もあると思いますが、なにか話しておかれたいことはないですか」
コーディネーションする
*Aさん・家族がそれぞれの気持ちを分かち合い、どんなふうに過ごしていきたい
かを話し合えるようなサポートを行う
事例から考える具体的なケア
苦痛をやわらげ、かつ、医療用麻薬についての
誤解もないために、何をしたらいいか?
(1)苦痛緩和と意識とのバランスを説明する時
コミュニケーションがとれる時間を説明して、残された時間をどう過ごし
たいと考えるかを話し合う
本人と
① 本人の認識をきく
② 本人の心の準備にあわせて、予測される状況と対応できることを話す
③ 本人が「何を優先したいと考えるか」を尋ねる
「今、みんなで相談しながら工夫できることを考えています。いい方向に向くように
と思います。しかし、Aさんが感じられているように、もしかすると、今後しっかりとお
話ができる状態で、息苦しさをとることが難しくなってくることも考えられます。苦し
さをやわらげるためには、うとうとすることで、苦しさを感じないようにする方法があ
ります。この場合、ご家族などまわりの方と、しっかりとお話することが難しくなるか
もしれません。・・Aさんは、これからどんなふうに過ごしたいと思われますか」
事例から考える具体的なケア
苦痛をやわらげ、かつ、医療用麻薬についての
誤解もないために、何をしたらいいか?
(1)苦痛緩和と意識とのバランスを説明する時
家族と
① 家族の認識をきく
② コミュニケーションがとれる時間、残された時間の予測を伝える
③ 家族として「どうみてあげたいか」を尋ねる
「今、お薬やケアで最大限できる工夫を行っています。意識を保って、息苦しさ
をやわらげられる状態を目標にしていきたいと思います。しかし、今後きちん
とお話ができる状態で、息苦しさをとることが難しくなることも考えられます。苦
しさをやわらげるためには、薬を増やしたりすることで、うとうとするという選択
肢があります。また、お体の状態そのものが変化してきていて、自然に意識が
落ちていくことも考えられます。一日一日で変化をみていく状況になってきて
いると思います。しっかりとお話できる時間が限られてきていると考えられま
す。もし、そういった状況が考えられるとしたら、ご家族としてどんなふうにみ
てさしあげたいと思われますか」
事例から考える具体的なケア
苦痛をやわらげ、かつ、医療用麻薬についての誤解もない
ために、何をしたらいいか?
(2)寿命が縮まりませんか?と尋ねられた時
Aさん・家族の(今の)認識をきく
医療用麻薬について、過去の体験を具体的に聞き、誤解があ
れば誤解をとく:「そう思われるのは何かそういう体験があるのですか」
*同じ薬を注射に変えた→効果は一緒、外来では何ともなかったですね?
*同時に、低酸素、黄疸などがあった→意識障害は身体のせいで薬のせい
ではない
一般的に「医療用麻薬で寿命が縮まることはない」とはっきりと
説明する。その後、患者の状態の悪化の原因を挙げて、薬剤
のせいで悪化しているわけではないことを説明する
事例から考える具体的なケア
がん患者さん・ご家族の声 p10-11
ポイント
●
●
●
●
① 一般的に医療用麻薬は安全であることを
まず伝える
*これまで内服していた薬で副作用の出現も
なく、問題なかったことを説明する
*注射に変更しても効き目は同じであることを
説明する(注射の方が強いと思っている場合がある)
② 患者さんの状態悪化の原因をあげて、
麻薬のために状態が悪化しているわけでは
ない ことを説明する
●
●
●
●
③ 「合併症」はありうるので、話しておきたいことや
会わせておきたい人がいるかを確認する
患者・遺族調査の自由記述をもとに
深く考えてみよう
生きる希望をもちながら、かつ、心のこりもない
苦痛をやわらげ、かつ、
医療用麻薬についての誤解もない
気持ちをわかってもらえたと思える
まとめ
患者・家族の希望を否定することなく、できること、達成可能
な目標について話し合う
同時に、 if statement(もし・・ならば)などを用いて「良くなら
ないとしたら何をしていたら後悔しないか」を話し合う
医療用麻薬の使用は、患者の生命予後に影響しないことを
はっきりと説明する。過去の経験を聞き、誤解に対応する
患者・家族が伝えようとしているメッセージは何かを考えな
がら話を聴き、答えを出すのではなく、感情に手当てする
open-ended questionを使う
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