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2015 - in
統合報告書 2015
エーザイはWHOのリンパ系フィラリア症制圧活動を支援しています。
エーザイの価値創造のプロセスとフロー(編集方針)
エーザイの価値創造のプロセスとフローのモデル*
資本
(ストック)
の増加
IIRCフレームワークに基づく
価値創造のプロセス
企業理念
hhc(ヒューマン・ヘルスケア)
ガバナンス
ストック
ストック
ビジネスモデル
バランスト・スコアカードに
基づく価値創造のフロー
知的資本
人的資本
人的資本
学習と成長の視点
製造資本
製造資本
顧客の視点
社会・関係資本
自然資本
知的資本
社会・関係資本
内部ビジネス・
プロセスの視点
リスクと
機会
戦略と
資源配分
財務の視点
財務資本
実績
自然資本
財務資本
見直し
*伊藤和憲、
2014年、
「管理会計の視点から見た
統合報告」
『企業会計』
、
2014年5月号
4つの視点
(バランスト・スコアカードをベースに定義)
● 学習と成長の視点:企業理念であるhhc 理念の実現のために、
変革と改善を可能にする社員や組織の能力をいかに向上、持続するか
● 顧客の視点:患者様の満足のためにどのように行動すべきか
● 内部ビジネス
・プロセスの視点:ビジネスモデルのどこが秀でるべきか、
またはどこを変革すべきか
● 財務の視点:財務的に成功するため、
および企業価値を高めるためにどのように行動すべきか
エーザイでは企業理念の実現を通して、企業価値の向上をはかる
コアカードを包含した、新しい価値創造のプロセスとフローのモデル
ために、顧客、株主、地域の皆様など幅広いステークホルダーズの
を取り入れました。これはエーザイの企業理念に基づく目的と結果の
皆様との信頼関係の構築に努め、
「患者様価値」
「株主価値」
「社員価値」
連続順 図表1
とも合致したものといえます。本稿では、この価値創造
の最大化、ならびに企業の社会的責任の遂行を経営における重要課
のプロセスとフローのモデルに基づき、エーザイの持続的な価値創
題と捉え、企業活動を展開しています。
造について説明します。
企業活動により創出された価値は、
「資本」
として蓄積され、ビジネ
図表1 企業理念に基づく目的と結果の連続順
スモデルを通じて増減し、変換されます。
ここでいう資本は、財務的な資本だけでなく、組織が利用し、影響
を与えるあらゆる資源および関係を総称しています。本レポートでは、
IIRC
(International Integrated Reporting Council、国際統合報
目的
顧客の創造と維持
顧客満足
告評議会)
が2013年12月に公表したフレームワーク*1に則り、エーザ
イの資本を6つに分類
(知的資本、人的資本、製造資本、社会・関係
事業活動
資本、自然資本、財務資本)
し、解説します。
また、資本を投入して事業活動を行い、付加価値を創出し、インプッ
トした以上に資本を増加させるプロセスを、
“価値創造のプロセス”
と
結果
して本レポートでは捉えています。この考え方は、IIRCのフレームワー
売上、利益・
・
・
クに準拠しています。
一方、事業活動によりどのようにして価値が創出されるのかといった
“価値創造のフロー”については、バランスト・スコアカード*2の4つの
視点
(学習と成長の視点、顧客の視点、内部ビジネス・プロセスの視点、
財務の視点)
に基づき、最終的には財務の視点にフォーカスした形で
把握することで、投資家・株主の皆様への企業価値向上のルートを説
明する形をとっています*3、*4。
以上より、本レポートでは、IIRCのフレームワークとバランスト・ス
2
出典:嶋口充輝氏の理論に基づき作成
*1 IIRC, 2013,“The International IR Framework”
, International Integrated Reporting Council
*2 Kaplan, Robert S. and Norton, David P., 1996,“Using The Balanced Scorecard as
a Strategic Management System”
, Boston, MA:Harvard Business Review, JanuaryFebruary, 1996
*3 Jensen, Michael C., 2002,“Value Maximization, Stakeholder Theory, and The Corporate
Objective Function”
. Business Ethics Quarterly 12
(2)
*4 Porter, Michael E. and Kramer, Mark R.,“Creating Shared Value”
, Harvard Business
Review, June pp8-31
Contents
エーザイとは
グローバルブランドの育成と
2大フランチャイズの構築
特集
知的資本
エーザイの価値創造のプロセスとフロー
企業をめざして
企業理念 ヒューマン・ヘルスケア
(hhc )
エーザイの歴史
エーザイが取り扱う主な製品と開発中の化合物
トップメッセージ ステークホルダーズの皆様へ
2
4
6
8
10
グローバルブランドの育成と2大フランチャイズの構築
(認知症領域、
がん領域)
認知症フランチャイズの構築
オンコロジーフランチャイズの構築 グローバルブランド レンビマ
オンコロジーフランチャイズの構築 グローバルブランド ハラヴェン
グローバルブランド Fycompa
グローバルブランド BELVIQ
13
14
18
20
22
23
医薬品アクセス向上への取り組み
24
●
パイプラインや知的財産など知識ベースの無形資産
28
研究開発体制…28 パイプライン…30 知的財産戦略…34 人的資本
●
人財の能力や経験およびイノベーションへの意欲
35
グローバルな環境変化とグローバル・ビジネス・マトリクス体制への移行…35 グローバルなマーケティング体制…36 社員…40 労働安全衛生への取り組み…43
製造資本
●
製品の生産またはサービス提供に利用される設備
44
エーザイデマンドチェーンシステムズ…44 社会・関係資本
●
共通善を目的とし、社会やステークホルダーズと信頼関係を築く体制
46
エーザイのパートナーシップ展開…46 社会的責任への取り組み…48 自然資本
●
企業活動を支え、企業活動により影響を受ける環境資源とプロセス
50
地球環境に配慮した事業活動…50 財務資本
●
企業活動を行うために使用できる資金のプール
52
連結財務ハイライト…52 セグメント別の情報…54 財務戦略…55 中長期的なROE経営…56 株主還元…58 株式の状況…59 財務情報に関する詳細は
「決算短信」
をご参照ください。▶http://www.eisai.co.jp/ir/financial/reports/
価値創造を支える仕組み
会社概要
コーポレートガバナンスの体制…60 役員一覧…62 コンプライアンス・リスク管理…66 リスク情報…67 社会的責任に関する指標と付加価値の分配…68 会社情報…70 会社概要…70 本報告書にはGRIサステナビリティ・レポーティング・ガイドラインによる標準開示項目の情報が記載されています。
対象期間 データは2014年度
(2014年4月1日から2015年3月31日)
の実績です。一部の活動については2015年度の状況も掲載しています。
将来予想に関する記述とリスク要因
この統合報告書において提供される資料ならびに情報は、現在における予想、目標、評価、見通し、リスクを伴う想定などの不確実性に基づくものを含んでいます。従って、
様々な要因の変化により、将来予想などが実際の結果と大きく乖離する可能性があります。リスクや不確実性には、一般的な業界ならびに市場の状況、金利、通貨為替変動
といった日本および国際的な経済状況が含まれています。
エーザイグループの連結業績を大幅に変動させる、あるいは投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、次の通りです。なお、これらのリスクは、本報告書作
成日現在において判断、予想したものです。
海外展開におけるリスク、新薬開発の不確実性、他社とのアライアンスにおけるリスク、医療費抑制策、ジェネリック医薬品に関するリスク、知的財産に関するリスク、副作
用発現のリスク、法規制に関するリスク、訴訟に関するリスク、工場の閉鎖または操業停止、使用原材料の安全性および品質に関するリスク、外部への業務委託に関するリスク、
環境に関するリスク、IT セキュリティおよび情報管理に関するリスク、金融市況および為替の動向に関するリスク、内部統制の整備等に関するリスク、災害等に関するリスク。
3
企業理念 ヒューマン・ヘルスケア
(hhc )
企業をめざして
エーザイの定款には、企業理念が明記されています
エーザイは、医療の主役が患者様とそのご家族、生活者であることを明確に認識し、そのベネフィット向上を通じてビジネ
スを遂行することを企業理念に掲げています。
理念と呼んでいます。社員一人ひとりが患者様の傍らに寄り
この理念を一言に集約したものをhhc(ヒューマン・ヘルスケア)
添い、患者様の目線でものを考え、言葉にならない想いを感じ取ることが重要であると考えています。そして、すべての社員
が就業時間の1%を患者様とともに過ごすことを推奨しています。
エーザイの依って立つ基盤、実現したい姿を株主の皆様と共有して、事業運営にあたるために、2005年6月の株主総会にお
いて定款の一部変更を行い、株主の皆様のご賛同を得て企業理念を条文として設けました。
企業理念
患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する
定款 第 2 条 本会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのべネフィット向上に貢献することを企業理念と定め、
この企業理念のもとヒューマン・ヘルスケア
(hhc )
企業をめざす。
② 本会社の使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上、利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考える。
③ 本会社は、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々の活動の根幹に据え、社会的責任の遂行に努める。
④ 本会社の主要なステークホルダーズは、患者様と生活者の皆様、株主の皆様および社員である。
本会社は、以下を旨としてステークホルダーズの価値増大をはかるとともに良好な関係の発展・維持に努める。
1. 未だ満たされていない医療ニーズの充足、高品質製品の安定供給、薬剤の安全性と有効性を含む有用性情報の伝達
2. 経営情報の適時開示、企業価値の向上、積極的な株主還元
3. 安定的な雇用の確保、やりがいのある仕事の提供、能力開発機会の充実
hhc
(human health care)のマークは、
ナイチンゲールの直筆サインをもとにデザインされたものです。治療する側の発想だけでなく、
ベッドの
上にいらっしゃる人びとの視線で医療を見つめることの大切さ。みずから志し傷ついた人の看護に身を捧げた彼女の行動のあり方に、
エーザイ
の想いが込められています。
日常業務の中で具現化するhhc
エーザイでは、社員一人ひとりが企業理念を一人の想いだけでなく共通の価値観として認識し、それぞれの日常業務の中で
具現化するために、様々な活動を提案・推進しています。
「hhc イニシアティブ」による「知」の共有
患者様との共体験の場の設定
業務の一環として患者様とともに時間を過ごす体験を実践
エーザイでは、組織やプロジェクト単位でhhc の実現をめ
するため、様々な機会を提供しています。
ざし具体的な行動計画を立て、実行する一連の活動を「hhc
「現場体験研修」では、医療現場や介護施設に赴いて今日の
活動」と呼んでいます。毎年500以上のhhc 活動がグローバ
医療・介護の実態を学びます。また、新入社員研修では体に
ルに展開され、特に患者様に大きく貢献した活動を表彰する
おもりやサポーターを装着し高齢者の視点を体験する「高齢
「hhc イニシアティブ」を毎年開催しています。このイベント
には受賞者と各国グループ企業のトップマネジメントが参加
者疑似体験プログラム」を実施しています。
このほかにも、患者様団
し、お互いのベスト・プラク
体の工場見学や患者様を招
ティスを発表します。創造さ
聘した講演会などを企画し、
れた
「知」を共有することによ
社員が患者様とともに過ご
り、さらなる患者様貢献をめ
す場を設けています。
ざしていきます。
4
hhc というビジネスモデル
エーザイがめざすhhc は、事業活動に必ずしも寄与しない慈善活動を含む社会貢献活動を中心としたCSR(Corporate
Social Responsibility:企業の社会的責任)や、社会価値と経済価値を同時に実現するというCSV(Creating Shared Value)
のようなビジネスモデルとは異なります。
まず、利益創出ではなく、患者様満足の増大という社会価値創造を唯一の目的として掲げ、継続的な組織変革と企業活動を
繰り返しながら、結果として売上や利益である経済価値を創出する経営モデル。それがエーザイの考えるhhc です。
CSR:
Corporate Social Responsibility
CSV:
Creating Shared Value
hhc:
human health care
価値は
「善行」
価値はコストと比較した
経済的便益と社会的便益
価値は社会貢献という共通善
シチズンシップ、
フィランソロピー、
持続可能性
企業と地域社会が共同で
価値を創出
地域社会ニーズに合わせ
企業が共同で価値を創出
任意、あるいは外圧によって
競争に不可欠
競争にこだわりを持たない
利益の最大化とは別物
利益の最大化に不可欠
利益は目的である共通善の
結果として得られる
テーマは、外部の報告書や
個人の嗜好による
テーマは企業ごとに異なり、
内発的である
テーマは企業ごとに共有される
企業の業績やCSR予算の
制限を受ける
企業の予算全体を再編成する
企業の日常業務予算として
組み込まれている
例えば、
フェアトレードで
購入する
例えば、調達方法を変えて
品質・収穫量を向上させる
例えば、バリューチェーンに
顧客ニーズをインプット
利益創出よりも大義である経営目標を掲げて組織を変革し、経済価値と社会価値を同時追求する経営モデル(CSV)
から、
hhc は社会価値創造を唯一の目的とし、結果として経済価値を創出します。
出典:Michael E. Porter: Creating Shared Value, Harvard Business ReviewなどよりデロイトCSR/CSV作成後, エーザイ修正. 野中郁次郎一橋大学名誉教授監修.
2014年hhc イニシアティブ受賞事例
2014年のhhc イニシアティブでは、2つのがんに関す
るプロジェクトが奨励賞を受賞しました。
日本で行われた「女性の視点を活かした乳がん患者様
のサポート」プロジェクトでは、首都圏のがん領域担当
女性MR約10名が看護師の方々との対話を通じ、がん化
学療法を受ける女性患者様向けのヘアケアに関する小冊
子を作成しました。
英国では、現地社員ががん患者様や栄養士、看護師の
方々とともに、がん患者様のための料理本「Around the
Kitchen Table」を作成しました。本書は、社員ががん
患者様支援施設を訪問した際、家庭で簡単に作れるがん
患者様向けの食事の情報が少ないと知り、作成に至った
ものです。がんでは、症状の進行や治療の副作用などに
より、味覚障害や食欲減退などが起こることがあります。
本書のレシピは、がん患者様に少しでも食事を楽しんで
いただけるよう、盛り付けや風味、栄養バランスを工夫
した内容となっています。
がん患者様のための料理本
『Around the Kitchen Table』
看護師の方々との対話
5
1960
年代
世界中の患者様への貢献をめざして
エーザイの歴史
1970
年代
1980
年代
グローバルなマーケティング体制の構築
●1960年代後半~1970年代前半
東南アジアに現地法人を設立
エーザイは、2015年におかげさまで、創業74
年を迎えることができました。
私たちは、その前身である日本衛材株式会社の
設立以来、幾多の試練と難局を乗り越え、世界
の国々の多くの人々の健康福祉に貢献するとい
う創業精神のもと、患者様と想いをともにする企
業文化や企業風土を育み、革新的な新薬をお届
けできるよう挑戦し続けています。
海外進出を本格的にスタート
1969年 シンガポール、
タイ、
台湾
1970年 インドネシア
1974年 マレーシア、
フィリピン
海外進出を推し進めた活動が認められ、当時の通商産業大臣か
ら1969年度の「輸出貢献企業」の表彰を受けました。
1941年 日本衛材株式会社設立
1955年 「日本衛材株式会社」
から
グローバルブランドの創出
「エーザイ株式会社」
へ社名変更
●1980年代~1990年代前半
研究開発三極体制の構築
1982年 筑波研究所竣工
(日本)
1989年 ボストン研究所竣工
(米国)
1992年 ロンドン研究所竣工
(英国)
創業者:内藤豊次
(1889年〜1978年)
国内製薬企業の海外進出戦略が、自
筑波研究所
社製品を海外製薬企業にライセンス
アウトする形態が主流であった当時、
エーザイはあくまでも、源流である研
究から生産までを自らの手で行うこと
にこだわりました。
“研究開発ベースの
多国籍製薬企業”の実現に向けて、い
ボストン研究所
ち早く日米欧における研究開発拠点
を確立しました。このグローバルな研
究開発体制のもと、グローバルブラン
1951年に発売したチョコラブランド
第1号『チョコラA』
の広告
ドの創出に取り組んできました。
ロンドン研究所
1948年に発売した
避妊薬
『サンプーン』
の広告
がん領域への本格的参入
ロゴマークの変遷
●
1987年 筑波研究所にて自社抗がん剤の
研究開発グループが発足
1941年
(創業時)
現在のエーザイの母体となった「日本衛材株
式会社」
のマーク
グローバル企業としての先進的な取り組み
1955年
(社名変更時)
社名を、当時とても珍しかったカタカナ表記
に改称するとともに、マークも赤と青の意匠
を凝らしたデザインに刷新
●1990年代前半
理念の発動
hhc
1988年
1990年
現在
色の意味:
赤い血は動脈から、青い血は静脈から、心臓
を中心に一刻も休まずに活動しつづけていま
す。われわれの仕事はこの動きが滞らないよう
にと、健康を保ち生命を続けさせることです
内藤晴夫 代表取締役社長に就任
「世の中変ります。
あなたは変れますか」
というメッセージで
社員一人ひとりの革新を促す
「エーザイ・イノベーション宣言」
を
発信
1992年
企業理念
“ ”
hhc の制定
海外展開を進めていた当時、
“hhc”
の3文字に込め
られた想いは、海外の社員にも理解され、共感さ
れ、覚えやすい共通のコアバリューとなりました。
6
1990
2000
年代
2010
年代
年代
アリセプト、パリエットの拡大に伴う海外進出の加速
●1990年代
海外主要国で医薬品販売会社を設立
大グローバリゼーションの時代へ
●2000年代
●2010年代
2001年 スペイン
2004年 インド
2005年 イタリア、
スイス、
スウェーデン
2006年 オーストラリア、
ポルトガル
2007年 ベルギー
2009年 オーストリア
2010年 カナダ
2011年 ブラジル、
メキシコ
2013年 ロシア
欧州を中心に医薬品販売会社の
設立を加速
1995年 米国、
英国、
ドイツ
1996年 フランス、中国
1997年 韓国
●1990年代後半~2000年代
アリセプト
1997年 米国、欧州(英国)で発売
1998年 アジア(タイ)で発売
1999年 日本で発売
パリエット(米国名:アシフェックス)
1997年 日本で発売
1998年 欧州(英国)
で発売
1999年 米国、アジア
(タイ)
で発売
連結売上高、
アリセプト・パリエット売上高の推移(日本基準)
(億円)
パリエット/アシフェックス売上高
アリセプト売上高
3,025
3,617
4,317
4,666
ピークセールス
アリセプト 3,228億円(2009年度)
パリエット 1,759億円(2007年度)
2品合計 4,708億円(2009年度)
その他
5,330
中期戦略計画はやぶさ
2015年度までに世界の
トップ20カ国の医薬品市場
すべてに進出することを目標
の1つとして掲げています。
●2010年代
アリセプト、
パリエットの拡大
5,002
新興国での医薬品販売会社の
設立
6,013
6,741
7,343
7,817 8,032 7,689
6,480
新たなグローバルブランドの
時代へ
2010年 抗がん剤
「ハラヴェン」
米国で発売
*詳細は20~21ページをご覧ください。
2012年 抗てんかん剤
「Fycompa」
欧州で発売
*詳細は22ページをご覧ください。
2013年 肥満症治療剤
「BELVIQ」
米国で発売
*詳細は23ページをご覧ください。
2015年 抗がん剤
「レンビマ」
米国、日本、欧州で発売
*詳細は18~19ページをご覧ください。
5,737 6,004
アリセプト、パリエット
各国で独占販売期間終了
(2010年代)
1999年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
2006年 米国ライガンド社と抗がん剤4品目の戦略的
製品買収に関する契約締結
2007年 米国モルフォテック社の買収に関する
契約締結
2008年 米国 MGIファーマ社の買収手続き完了
●1990年代後半~2000年代
2009年 研究開発部門のグローバル新体制
「エーザイプロダクトクリエーションシステムズ
(EPCS)
」
をスタート
がん領域への取り組みを強化
2010年 米国にH3 Biomedicine Inc. 設立
コンプライアンス推進体制の強化
コーポレートガバナンスの充実
1999年
2000年
● 企業倫理担当役員の任命
● 社外の法律家を中心とする
企業行動憲章・行動指針の制定
*詳細は66ページをご覧ください。
社外取締役の選任
●
コーポレートガバナンス委員会の設置
●
取締役会の議長と代表取締役社長を分離
2004年
●
委員会設置会社に移行
●
社外取締役を過半数選任
●
社外取締役が取締役会の議長に就任
●
企業理念を定款に規定(株主総会で承認)
● コンプライアンス・ハンドブックの発刊
● コンプライアンス・カウンターの設置
執行役員制度の導入
●
2003年
コンプライアンス委員会の設置
2000年 ● ENW
(エーザイ・ネットワーク企業)
●
2005年
*詳細は60~61ページをご覧ください。
7
●2010年代
医薬品アクセス向上への
取り組みの強化
*詳細は24~27ページをご覧ください。
WHOとの合意書の調印式
<2012年1月>
エーザイが取り扱う主な製品と
開発中の化合物
医療用医薬品事業 連結売上収益に占める売上高構成比 86.7%(2014年度)
がん領域
神経領域
ハラヴェンⓇ(一般名:エリブリン)
アリセプトⓇ(一般名:ドネぺジル)
抗がん剤/微小管ダイナミクス阻害剤
アルツハイマー型、レビー小体型認知症治療剤
自社創製の抗がん剤です。クロ
イソカイメン由来のハリコンドリ
ンBの合成類縁体で、微小管の伸
長を阻害し細胞周期を停止させる
ことで抗腫瘍活性を示します。約
60カ国で乳がんに係る承認を取得
しています。
自社創製の認
知症治療剤です。
神経伝達物質ア
セチルコリンの
分解酵素を阻害
し、アルツハイ
マー型認知症の
進行を抑制しま
す。世界90カ国
以上で承認されています。2014年9月には、日本においてレビー
小体型認知症の効能・効果の追加承認を取得しました。
*詳細は20〜21ページをご覧ください。
ALOXIⓇ(一般名:パロノセトロン)
*詳細は17ページをご覧ください。
制吐剤
急性ならびに遅発性のがん化学療法に
伴う悪心・嘔吐(CINV)予防と、術後の
悪心・嘔吐(PONV)予防の両適応を持つ
セロトニン3受容体拮抗剤です。2008
年1月のMGIファーマ社買収に伴い、
エーザイが米国で販売しています。
FycompaⓇ(一般名:ペランパネル)
抗てんかん剤
自社創製のAMPA受容体
拮抗剤であり、12歳以上の
部分てんかんの併用療法の
適応で45カ国以上で承認
を取得しています。また、
2015年6月には、米国およ
び欧州において、全般てん
かんの強直間代発作に対す
る併用療法に係る適応拡大に関する承認を取得しました。
レンビマⓇ(一般名:レンバチニブ)
抗がん剤/分子標的治療薬
自社創製の新規
結合型選択的チロ
シンキナーゼ阻害
剤です。VEGFR、
FGFRおよびRETを
特異的に阻害しま
す。VEGFR2との
共結晶解析により
新たな結合様式(タ
イプV)を示すことが確認されており、素早く強力なキナーゼ阻害
作用を発揮します。
甲状腺がんに係る適応で、2015年2月に米国、5月に日本、6
月に欧州にて新発売しました。
*詳細は22ページをご覧ください。
メチコバールⓇ(一般名:メコバラミン)
末梢性神経障害治療剤
自社創製のメコバラミ
ン(生体内補酵素型ビタ
ミンB12)製剤であり、傷
ついた末梢神経を修復す
る作用があります。末梢
性神経障害治療剤として
日本やアジアで広く使わ
れています。
*詳細は18〜19ページをご覧ください。
8
その他
BELVIQⓇ(一般名:lorcaserin)
肥満症治療剤
パリエットⓇ(米国名:アシフェックスⓇ、一般名:ラベプラゾール)
Arena Pharmaceuticals, Inc. 創製の新規化
合物であり、選択的に脳内のセロトニン2C受
容体を刺激することにより摂食を抑制し、満腹
感を促進すると考えられています。米国では、
肥満症治療のための処方薬として13年ぶりに
承認され、2013年6月に発売しました。
プロトンポンプ阻害剤
自社創製のプロトンポ
ンプ阻害剤です。胃潰瘍、
十二指腸潰瘍、逆流性食
道炎、ヘリコバクター・
ピロリ除菌などの適応症
で、世界100カ国以上で
承認されています。2014年12月には、低用量アスピリン投与時
における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制の効能効果を取得し、
2015年2月に5mg錠を発売しました。
*詳細は23ページをご覧ください。
リリカⓇ(一般名:プレガバリン)
疼痛治療剤
Pfizer Inc.が開発し、
世界100カ国以上で承
認されている疼痛治療
剤です。日本において
は、ファイザー株式会社
とエーザイが共同プロ
モーションを行っており、
本剤に関連する適正使用情報を提供しています。
ヒュミラⓇ(一般名:アダリムマブ)
ヒト型抗ヒトTNFα
モノクローナル抗体
アッヴィ社が開発した関節リウマチ
をはじめとする自己免疫疾患の治療剤
です。日本では、エーザイとアッヴィ社
が共同開発および共同プロモーションを
行っています。
ルネスタⓇ(一般名:エスゾピクロン)
不眠症治療剤
Sunovion Pharmaceuticals Inc. によって創製された、非ベ
ンゾジアゼピン系のGABA A受容体作動薬です。日本では、エー
ザイがSunovion
Pharmaceuticals
Inc. より独占的開発・
販売権を獲得して開発
を進め、2012年4月に
発売しました。
開発中の化合物
E5501/AKR-501
(一般名:avatrombopag)
血小板減少症治療剤/トロンボポエチン受容体作動剤
トロンボポエチン受容体のアゴニストで、血小板増加を促進させ
る経口の新規化合物です。血小板減少を示す病状への効果を期待し
ています。
薬粧事業
開発中の化合物
連結売上収益に占める売上高構成比 3.1%
(2014年度)
BAN2401
チョコラBBシリーズ
アルツハイマー型認知症治療剤/
ヒト化抗ベータアミロイド(Aβ)プロトフィブリルモノクローナル抗体
口内炎・肌あれに効き目のあるチョコラBBプラスをは
じめ、第3類医薬品、指定第2類医薬品、指定医薬部外品、
栄養機能食品など多数のラインナップを揃えています。
Aβプロトフィブリルを除去することで、アルツハイマー型認
知症の進行を抑制することが期待される薬剤です。エーザイは、
BioArctic Neuroscience ABとのライセンス契約により、全世界に
おけるアルツハイマー型認知症を対象とした研究・開発・製造・販売
に関する権利を取得しています。
Chocola.com▶http://www.chocola.com/product/index.html
*薬粧事業の詳細は39ページをご覧ください。
診断薬事業
連結売上収益に占める売上高構成比 1.1%
(2014年度)
*詳細は16ページをご覧ください。
診断薬事業は、エーザイの100%子会社であるエーディア株式会
社が担っています。エーザイとの連携により、診断と治療に関する
製品と情報をお届けし、早期診断、早期治療、ならびに治療効果の
モニタリングに貢献することをめざしています。
E2609
アルツハイマー型認知症治療剤/BACE阻害剤
エーザイが次世代経口アルツハイマー型認知症治療剤として開発
している、自社創製のBACE阻害剤です。アミロイド前駆体タンパ
ク質のβサイト切断酵素であるBACEを阻害することで、ベータア
ミロイドの総量を減少させます。病態の進行を抑制するなどの疾患
修飾作用を期待しています。
ジェネリック医薬品事業
連結売上収益に占める売上高構成比 4.9%
(2014年度)
ジェネリック医薬品事業は、エーザイの100%子会社であるエル
メッド エーザイ株式会社が担っています。患者様にとって服用しや
すい
「付加価値型ジェネリック医薬品」を開発し、エーザイMRとの
連携の上、医療関係者の皆様へきめ細やかな情報提供活動を行って
います。
*詳細は16ページをご覧ください。
E2006(一般名:lemborexant)
不眠症治療剤/オレキシン受容体拮抗剤
自社創製の睡眠導入剤として開発しています。覚醒状態を維持す
るオレキシン受容体に拮抗することで、覚醒状態を鎮め、自然な睡
眠の誘発を期待しています。
エーザイ製品について詳細はこちらをご参照ください。
▶http://www.eisai.co.jp/products/index.html
開発中の化合物については30〜33ページもご覧ください。
9
トップメッセージ
ステークホルダーズの皆様へ
エーザイは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽
2014年度の取り組み
を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献す
〜グローバル・ビジネス・マトリクス体制の始動と
成長回帰にむけた積極投資〜
ることを企業理念としています。このヒューマ
ン・ヘルスケア(hhc)理念に則り、アンメット・
メディカル・ニーズを充足する革新的新薬を創出
製薬企業を取り巻く環境は、大きく変化しています。グ
して世界の患者様に一日でも早くお届けするこ
ローバルに進展する高齢化や新興国・開発途上国の経
とがエーザイの使命です。
済発展に伴って市場が拡大するとともに、iPS細胞などの
再生医療や遺伝子治療、先制医療などの先端的な取り
組みが進み、事業機会が拡大しています。
グローバルに拡大する事業機会を確実に捉えるため、
当社は2014年5月よりグローバル・ビジネス・マトリクス
体制を導入しました。オンコロジー
(がん)
とニューロロジー
(神経)の2領域のグローバルビジネスユニットと、日本、
アメリカス、中国、アジアおよびEMEA
(欧州、中東、ア
フリカ、ロシア、オセアニア)の5リージョンによるマトリクス
体制のもと、早期にグローバルブランドの価値最大化を
実現する体制を整備しました。
さらに、2015年度以降の成長回帰を実現するため、
2014年度は、1)グローバルブランドの育成、2)プロダク
トクリエーションの加速、3)ストラテジックマーケットの拡大、
の3つの分野に積極的に戦略投資を行いました。
10
グローバルブランドについては、自社創製の抗がん剤
日本医薬品事業においては、「アリセプト」のレビー小
「ハラヴェン」は売上収益23%増を達成しました。自社
体型認知症、ならびに「パリエット」の低用量アスピリン
創製の新規結合型選択的チロシンキナーゼ阻害剤「レン
潰瘍再発抑制の新適応による患者様貢献を拡大して
ビマ」は米国での2015年2月の発売以降、順調に患者
いきます。さらに「ハラヴェン」や2015年5月に新発売し
様貢献が拡大しています。肥満症治療剤「BELVIQ」、
た「レンビマ」などの抗がん剤および「ヒュミラ」、「ルネ
自社創製の抗てんかん剤「Fycompa」については、効
スタ」、「リリカ」の持続的拡大で成長につなげます。
率的な費用投入で最大限の効果を得る新たなマーケティ
中国事業においては、本格稼働を開始したオートノミー
ング手法を見出しました。
モデルのもとで戦略投資に対する迅速な意思決定を行
プロダクトクリエーションについては、「レンビマ」のグ
うと同時に、中規模都市や未進出エリアへのアクセス
ローバル開発・承認取得、複数の次世代アルツハイマー
を拡大し、高い成長性を維持していきます。
型認知症治療薬の開発推進をはじめとして、がん領域
アジア事業についても、主力市場である韓国、台湾、
と神経領域での開発が加速しました。
タイの2桁成長継続と次世代コアマーケット
(ベトナム、
将来の成長を担う「ストラテジックマーケット」と位置
ミャンマー、インド、インドネシア)の躍進により、高成
づけているカナダ、メキシコ、ブラジル、ロシア、オー
長の維持をめざします。
ストラリアの5カ国においては、グローバルブランドの申
ストラテジックマーケットについては、事業開始後の早い
請および発売が着実に進展しました。
段階での利益貢献をめざし、他社との提携なども視野に入
れて各国における最適なビジネスモデルを展開していきます。
さらに、積極的な研究開発投資を維持しつつ事業の
2015年度 Aspiration
The Daybreak of Growing Eisai
採算性の改善がはかられるよう、成長と投資のバランス
を重要な経営課題として捉え、生産、研究開発、販売、
〜成長回帰に向けて〜
管理のあらゆるレベルにおいて抜本的な業務・費用構
造の改革に取り組んでいきます。
2015年度 戦略意思
1. グローバルブランド 4 品目の拡大
2. 日本医薬品事業の成長確保
3. 中国/アジアにおける高い成長性の維持
4. ストラテジックマーケットにおける早期採算化
5. 成長と投資のバランスをはかる費用管理の徹底
2015年度は本業での成長回帰を果たすべく、戦略意
思として5つの重点テーマに取り組みます。
まず、
グローバルブランドの拡大を着実に果たします。
「ハ
ラヴェン」は、転移性乳がんに続き、軟部肉腫に適応を拡
大することで化学療法の基幹療法としてのポジショニング
を確立していきます。新製品「レンビマ」
については、2015
年度中にグローバル20カ国以上での発売を予定しています。
「Fycompa」については、米国および欧州における全
般てんかんの強直間代発作に対する併用療法の適応追
加により、成長加速をめざします。
「BELVIQ」
は、米国に
おいて費用対効果を強く意識し優先度の高い活動にフォー
カスしたレーザー フォーカス マーケティング ミックスを展開
し、成長継続と利益確保の両立をはかります。
11
認知症領域ならびにがん領域での革新的新薬の創出に向けて
高齢化の進展による認知症の患者様の増加とそれに
「E2609」
および
「BAN2401」
については、Biogen Inc.
伴う様々な社会コストの増加は、グローバルに取り組むべ
と共同開発・共同販促契約を締結しています。一方、
き課題としてクローズアップされています。当社は、
「ア
Biogen Inc.の抗Aβ抗体
「aducanumab」および抗タウ
リセプト」の創薬以来、認知症分野における創薬活動
抗体に対しては、共同開発・共同販促のオプション権を保有
で培った経験・知識・ノウハウを活かし、「先制医療」を担
しています。今後、本提携の価値を最大に活かし、次世代
う次世代アルツハイマー型認知症治療薬の開発に取り
アルツハイマー型認知症治療薬の早期開発をめざします。
組んでいます。
がん領域においては、遺伝子情報などを活用した新た
BACE 阻害剤「E2609」および抗ベータアミロイド
(A
な治療法が次々と誕生しているものの、未だ治療困難なが
β)
プロトフィブリル抗体「BAN2401」については、アルツ
んも多く、大きなアンメット
・メディカル・ニーズが存在していま
ハイマー型認知症の病因の一つとされているAβを標的と
す。当社は、がん領域において
「ハラヴェン」
「レンビマ」の2
し、現在フェーズⅡ試験が進行中です。開発期間の短縮
品を自社創製し、製品価値極大化に向けて適応拡大をめ
や成功確度の向上をはかるため、臨床試験ではPET
(陽
ざしています。また、
「ハラヴェン」ならびに
「レンビマ」と抗
電子放射断層撮影)を用いたAβイメージングを活用し
PD-1抗体「KEYTRUDA」
(一般名:pembrolizumab)
てターゲットとする患者様を正確に組み入れるとともに、薬
の併用療法の研究提携について、Merck & Co., Inc.,
効判定における評価力を向上させた自社開発のADコン
Kenilworth, N.J., U.S.A.と2015年3月に合意しました。
ポジットスコア(ADCOMS)を評価スケールとして使用して
さらに、2015年7月、
「レンビマ」については現在開発
います。また、早く確実に有効性・安全性に優れた至適用
中の腎細胞がんの適応に対して米国FDAよりブレイ
量を見出すため、ベイジアンアダプティブデザインと呼ばれ
クスルーセラピーの指定を受けました。
る試験デザインを導入しています。
中長期の株主価値実現に向けて
株主価値を最大化するための財務戦略としては、積
んでいます。10年以上前から、社外取締役が過半数
極投資、安定配当方針、グローバルIR戦略の3つの施
を占め、かつ社外取締役が議長を務める取締役会に
策が重要であると考えています。中長期の成長実現に
より、経営を監督しています。引き続き、経営の質
向けて、認知症領域およびがん領域での研究開発投資
を高め、株主、顧客、社員などのステークホルダー
を今後も積極的に行っていきます。また、配当について
ズのベネフィット向上に資するコーポレートガバナ
は、DOE8%レベルを維持し、今後も安定配当を行う
ンス体制の強化に取り組みます。
方針です。2014年度末においてNetDERは0.06倍、
自己資本比率は55%超にまで改善しました。自己資本
引き続き、hhc 理念とコンプライアンスのもと、持続
は6,000億円レベルと過去最高に到達し、積極投資と
的な企業価値向上をめざしステークホルダーズ各位の
安定配当を両立できる健全な財務状況を確保してい
負託に応える所存です。今後ともご支援を賜りますよう
ます。さらにグローバルIR戦略として、タイムリーかつ
お願い申し上げます。
フェアに情報を開示して投資家の皆様への説明責任を
果たし、持続的な株主価値の向上に努めてまいります。
また、エーザイでは、コーポレートガバナンスを
2015年8月
代表執行役 CEO
企業価値最大化の礎と捉え、常に最良のコーポレー
トガバナンスを追究し、その充実に継続的に取り組
12
グローバルブランドの育成と
2大フランチャイズの構築(認知症領域、がん領域)
グローバルブランドの育成
これまでグローバル事業の柱としてエーザイを支えてきたのは、アルツハイマー型認知症治療剤
「アリセプト」とプロトンポンプ
阻害剤
「パリエット/アシフェックス」
の2大ブランドです。2品の合計売上は、ピーク時の2009年度には4,708億円に到達しました。
しかし、独占販売期間が終了したことから売上収益は減少し、2014年度の2品合計売上収益は1,217億円となりました。
エーザイは、成長回帰を果たすため、新たな
グローバルブランドの育成に取り組んでいます。
抗がん剤
「ハラヴェン」
、
抗てんかん剤
「Fycompa」
、
肥満症治療剤
「BELVIQ」に加え、2015年には抗
がん剤
「レンビマ」を発売しました。2015年度は、
費用対効果を重視したマーケティングの展開に
より、グローバル4品の拡大と利益確保の両立を
果たす見込みです。
2大フランチャイズの構築
エーザイは、アンメット・メディカル・ニーズの高い認知症領域ならびにがん領域を重点領域と位置づけ、長年にわたって創薬活
動に取り組んできました。この2大フランチャイズにおいて、我々は大きな成長の機会を目前にしています。
認知症領域においては、Biogen Inc.との連携のもと、革新的な次世代アルツハイマー型認知症治療薬の開発が進展しています。
認知症患者様の増加に伴い、次世代アルツハイマー型認知症治療薬の市場は2025年に約1.5兆円、2030年に約3.2兆円へ拡大す
ると推定しています。
次世代アルツハイマー型認知症治療薬の市場予測
市場予測
2025年
2030年
抗体医薬品市場
約5,000億円
約1.2兆円
低分子医薬品市場
約1兆円
約2兆円
次世代アルツハイマー型認知症治療薬計
約1.5兆円
約3.2兆円
Decision Resources (Patient Base)、
Global Data、
The Global Impact of Dementia 2013-2050を利用したエーザイ試算(Given Success)
甲状腺がん 1st ライン+
がん領域においては、甲状腺がんの適応で
「レンビマ」
を2015年度中に20カ国以上で発売する予定です。現在、肝細胞がんや腎
細胞がんなど複数のがん腫を対象に適応拡大をめざしています。また、抗PD-1抗体
「KEYTRUDA」
(一般名:pembrolizumab)と
の併用療法の研究提携に関してMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.と2015年3月に合意し、フェーズⅠb/Ⅱ試験を7月に
開始しました。これらの適応拡大により、
「レンビマ」のピーク時のグローバルなポテンシャルセールス
(リスク調整後)は1,200億
円超に達すると推定しています。
「レンビマ」
のポテンシャルセールス
ポテンシャルセールス 800億円超*
子宮内膜がん
肝細胞がん
ポテンシャルセールス
400億円超
腎細胞がん
甲状腺がん
非小細胞肺がん
*リスク調整後
免疫チェックポイント阻害剤
との併用
13
ポテンシャルセールス
合計1,200億円超*
(社内推計)
認知症フランチャイズの構築
増加の一途をたどる認知症患者様数
2013年における認知症の患者様数は、全世界で4,400万
認知症患者様数の推移
人と推計されています。 世界の人口高齢化が進む中、認知
(百万人)
症患者様は増加の一途をたどり、2030年には1.7倍の7,600
140
万人、2050年には3.1倍の1億3,500万人に達すると予測さ
■認知症患者様数
■低・中所得国※の
認知症患者様数
105
れています。特に低・中所得国においては、先進国を上回る
スピードで患者様数が増加する見込みです。認知症への取り
3.1倍へ
拡大
1.7倍へ
拡大
76
70
組みは世界的な課題であり、アンメット・メディカル・ニーズを
充足する治療薬の早期開発が期待されています。
44
35
135
96
50
28
0
2013年
2030年
2050年
出典:The Global Impact of Dementia 2013-2050, Alzheimer's Disease
International, The global voice on dementia.2013,一部改編
※ 2013年時点の定義
先制医療の可能性/次世代アルツハイマー型認知症
(AD)
治療薬の開発
従来の認知症医療においては、患者様の記憶や臨床機能
(認知機能等)が衰退してはじめて、認知症と診断され、治療が開始さ
れる状況でした。しかし、近年では認知症の研究が進み、その前段階である軽度認知障害
(MCI)の時期、さらに前段階のプレクリ
(Aβ)ペプチドやタウ蛋白の蓄積がすでに始まっ
ニカルAD*と呼ばれる無症状期において、重要なマーカーであるベータアミロイド
ていることが分かりました。
このため、現代の認知症においては、早期の段階から治療や介入を行う
「先制医療」が重要なテーマとなってきています。エー
ザイが現在、次世代認知症治療薬として開発している薬剤は、先制医療の中で重要な役割を果たすことが期待されています。
アルツハイマー型認知症発症過程におけるバイオマーカーの変化
異常
バイオマーカーの変化
正常
Aβペプチド
タウ蛋白
Aβイメージング
スクリーニング
を活用**
脳構造の変化
記憶
薬効判定に評価力を
アップした独自の
ADコンポジットスコア
(ADCOMS)
を使用**
臨床機能
認知機能正常
プレクリニカルAD*
軽度認知障害
(MCI)
先制医療
認知症
臨床病態
出典:Jack CR, Knopman DS, Jagust WJ, Shaw LM, Aisen PS, Weiner MW, Petersen RC, Trojanowski JQ. Lancet Neurol. 2010
Jan.9(1):119-28,一部改編
* アミロイドPET陽性により検出可能で、アルツハイマー型認知症
(AD)
の病理変化あり、認知機能が正常な時期
** 詳細は16ページをご覧ください。
14
認知症フランチャイズの構築
次世代アルツハイマー型認知症治療薬の開発・商業化に向けたBiogen Inc.との提携
2014年3月、エーザイは神経変性疾患領域に強みを持つBiogen Inc.と次世代アルツハイマー型認知症治療薬に関する共同
開発、共同販促契約を締結しました。エーザイでは、この提携には3つの意義があると考えています。
❶ 神経変性疾患領域における両社のベストなノウハウと経験を結集することができる
❷ 4つの次世代アルツハイマー型認知症治療薬プロジェクトを連携して進展することができる
❸ 共同開発と商業化に向けた共同投資が可能となる
本提携により、次世代アルツハイマー型認知症治療薬の開発成功確率を向上させるとともに開発速度を高めることができる
と考えています。
進展中の4つの次世代アルツハイマー型認知症プロジェクト
Biogen Inc.との提携では、4つのプロジェクトが進行しています。
(Biogen Inc.の2プロジェクトはエーザイがオプション権を保有)
Biogen Inc.との提携による4つのプロジェクト
E2609
アミロイド前駆体
タンパク質(APP)
抗タウ抗体
(BACE阻害剤)
Biogen Inc.
βセクレターゼ(BACE)
APPのN末端側を切る
タウの高度リン酸化と
細胞内への蓄積
aducanumab
(抗Aβ抗体)
γセクレターゼ
APPのC末端側を切る
モノマー
凝集性が高い
Biogen Inc.
ベータアミロイド
(Aβ)
神経細胞の
機能障害
Aβフィブリル
不溶性凝集体
沈着して老人斑を形成
BAN2401
(抗Aβプロトフィブリル抗体)
Aβ
プロトフィブリル
老人斑
神経原
線維変化
(神経細胞死を引き起こす可能性)
神経細胞死
可溶性重合体
強い神経毒性
(神経変性過程を誘発・促進し神経細胞死を引き起こす)
認知機能の低下
● 自社創製のBACE阻害剤
「E2609」
(Biogen Inc.と共同開発)
筑波研究所が創製した化合物であり、アミロイド前駆体タンパク質のβサイト切断酵素であるBACEを阻害します。フェーズⅠ
試験では、ヒトの血漿中および脳脊髄液中のAβの顕著な減少が確認されています。現在、フェーズⅡ試験の安全性確認ステージ
(Stage A)が進行中であり、2015年度中に安全性に関するトップライン結果の取得を予定しています。その後の開発計画につ
いては、継続してBiogen Inc.と協議中です。
● 抗Aβプロトフィブリル抗体
「BAN2401」
(Biogen Inc.と共同開発)
エーザイがBioArctic Neuroscience ABと共同で創出し、開発を進めている抗Aβプロトフィブリル抗体です。Aβの凝集体
であり神経毒性が高いAβプロトフィブリルに対して、高い親和性と選択性を示しています。現在フェーズⅡ試験が進行中であり、
2015年度中にトップライン結果の取得を予定しています。その後、フェーズⅢ試験を経て、2019年度以降の承認申請をめざし
ています。
15
認知症フランチャイズの構築
● Biogen Inc.が開発中の抗Aβ抗体
「aducanumab」
(BIIB037)(エーザイがオプション権を保有)
Biogen Inc.が開発中の抗Aβ抗体です。Biogen Inc.は、
「aducanumab」のフェーズⅠb試験の中間解析結果として以下の内容
を発表しています。
『「aducanumab」投与群において、用量依存的なアミロイドプラーク(Aβの沈着)の減少、用量依存的な認知機能の低下抑制、
許容できる安全性が認められた』
また、Biogen Inc.は2015年6月より新たにフェーズⅢ試験を開始したことも発表しています。早期のアルツハイマー型
認知症患者様を対象とした18カ月間の試験を2本実施します。主要評価項目は、CDR-SBスコア(Clinical Dementia RatingSum of Boxes:臨床的認知症重症度判定尺度)です。
エーザイの「aducanumab」に対するオプション権行使条件について
エーザイは、「aducanumab」について、以下の1)または2)の時点でオプション権を行使することができます。
1)
Post-Phase II BIIB037 Option
「aducanumab」のフェーズⅠb試験およびBAN2401のフェーズⅡ試験双方の完了後
2)
Post-Phase III BIIB037 Option
「aducanumab」のフェーズⅢ試験終了後
エーザイが保有するオプション権の行使条件の詳細については、こちらのリリースをご参照ください▶ http://www.eisai.co.jp/news/news201507.html
● Biogen Inc.が開発中の抗タウ抗体(エーザイがオプション権を保有)
Biogen Inc.は、アルツハイマー型認知症の原因の一つと考えられているタウに対する抗体を開発しています。
次世代アルツハイマー型認知症治療薬開発を成功に導くためのエーザイ独自の工夫
エーザイでは、アルツハイマー型認知症治療薬開発における豊富な経験を踏まえ、
「E2609」ならびに
「BAN2401」の開発成功
確度を上げるため、様々な独自の工夫を行っています。
第1に、PET
(陽電子放射断層撮影)を用いたAβイメージングを活用し、スクリーニングの段階でAβの蓄積が見られる患者様の
みを臨床試験に登録しています。
第2に、軽度認知障害
(MCI)
〜軽度ADの臨床機能の変化や記憶の変化を感度よく捉えるため、エーザイ独自のADコンポジッ
トスコア
(ADCOMS)を開発し、患者様の診断や治療効果の判定に活用しています。ADCOMSは、認知機能を評価するスケール
「ADAS-Cog」
、
「MMSE」
、認知症の重症度を評価するスケール
「CDR」からより早期(軽度認知障害
(MCI)
〜軽度AD)に感度よく
変動する項目として組み合わせたもので、薬効判定の評価力をアップした独自のスコアです。
(注)
* Alzheimer’s Disease Compo
第3に、至適用量をより早期に決定するため、ベイジアンアダプティブデザインを用いた臨床試験を進めています。ベイジアン
アダプティブデザインに基づく臨床試験では、50例ごとに中間解析を実施し、コンピュータがもっとも安全かつ有効性の期待でき
る投与量に患者様を割り振ります。このため、より短期間で効果を検証できると期待しています。
ベイジアンアダプティブデザインのイメージ図(
「BAN2401」
の場合)
プラセボ群
患者様数の比率
実薬群1
有効性・
安全性の
高い群
実薬群2
実薬群3
実薬群4
実薬群5
各実薬群では
用法・用量が異なる 中間解析
1回目
196例
中間解析
2回目
250例
50例ごとに中間解析実施
*Alzheimer’
s Disease Composite Score
16
時間
早期AD患者様の診断と
臨床経過や治療効果の判
定を可能にする認知機能
に対する感度の高い
エーザイ独自の
ADコンポジットスコア
(ADCOMS*)
により評価
30年以上にわたって培ってきた知識・経験・ノウハウを活かした創薬活動
エーザイは、1983年に筑波研究所で探索研究を開始して以来、30年以上にわたって認知症領域で創薬活動に取り組ん
できました。認知症フランチャイズの構築に向けて、長年培ってきた知識・経験・ノウハウを活かし、エーザイ独自のアプロー
チで認知症領域の創薬研究を行っています。Biogen Inc.との提携のもとで進展している次世代アルツハイマー型認知症
治療薬のプロジェクト以外にも、周辺症状に効果がある症状改善型治療剤の開発に取り組んでいます。また、抗がん剤領
域の研究では大きく成功している遺伝学的情報から標的を見つけ創薬を行う、いわゆる
「ゲノム創薬」
によるアプローチ
についても、アカデミアなどとの連携を通じて認知症領域の創薬研究に活用しています。
「アリセプト」
を通じて構築してきた認知症フランチャイズの基盤
「アリセプト」は、自社創製の認知症治療剤であり、1997年の米国・欧州での発売、1999年の日本発売以来、アルツ
ハイマー型認知症治療剤として世界90カ国以上で承認され、患者様貢献を果たしてきました。2014年には日本において
新たにレビー小体型認知症に関する効能・効果の承認を取得しました。また、エーザイは、認知症の啓発、
「認知症を知る
e-65.net(イーローゴ・ネット)」の運営など、国内外で認知症への正しい理解、認知症の患者様やそのご家族への支援を
行ってきました。患者様が少しでも飲みやすい薬を提供するため、様々な剤形の開発も行ってきました。
さらに日本では、エーザイの社員一人ひとりが認知症をもっとよく知り、地域社会の一員としてさらなる貢献をすること
をめざして、各地の事業所において自治体の協力も得ながら、認知症サポーター養成講座を開催しています。社員自身も
認知症サポーターとなることを推進しています。
エーザイは、
「アリセプト」への取り組みを通じて認知症フランチャイズの基盤を構築してきました。今後は次世代アルツ
ハイマー型認知症治療薬の開発を通じて、認知症フランチャイズをさらに発展させていきたいと考えています。
日本におけるアリセプトの歩み
研究・承認発売状況
エーザイが行った主な啓発活動
1983
AD治療薬の創薬研究開始(筑波研究所)
1989
臨床試験開始
1997
米国・欧州新発売
2000年 介護保険法、
成年後見法施行
2004年 痴呆から認知症へ用語変更
1998
1999
日本 新発売
軽度・中等度AD適応
3mg・5mg製剤
2000
2001
アルツハイマー病研究会 開始
日本 細粒0.5% 新発売
痴ほう症をあきらめないe-65.net(イーローゴ・ネット)開始
クリニカル・カンファレンス・セミナー開始
2002
2003
2004
日本 高度AD適応追加
10mg錠・10mgD錠 新発売
2008
「まちづくり」支援活動 開始
日本 ゼリー剤 新発売
3mg・5mg・10mg製剤
2010
2011
2006年 地域包括支援センター開設
2009年 75歳以上
運転免許更新時に
認知機能検査導入
認知症を知るホームページ e-65.netとしてリニューアル
2006
2009
2005年 厚生労働省
「認知症を知り地域をつくる10カ年
キャンペーン」
開始
日本 D錠 新発売
3mg・5mg製剤
2005
2007
医療行政
新疾患啓発活動「単なるもの忘れと認知症は違います」開始
日本 D錠バラ包装 新発売
e-65.net 地域支援マップ公開
認知症に関する意識・実態調査実施
2012
2013
日本 ドライシロップ1% 新発売
D錠10mg 剤形変更
フィルムコート錠カナ印字
2014
日本 レビー小体型認知症適応追加
AD:アルツハイマー型認知症 赤字:一般向け啓発活動 青字:医療従事者向け啓発活動
17
2013年 オレンジプランスタート
認知症有病率等
調査結果発表
2015年 新オレンジ
プランスタート
オンコロジーフランチャイズ の 構 築
グローバルブランド
レンビマ
2015年に新発売した自社創製の分子標的抗がん剤
2015年度発売国数
(予定)
20
カ国
グローバルピークセールス
(予想、
リスク調整後)
1,200
億円
革新的なメカニズムと甲状腺がん治療のパラダイムシフトへの期待
「レンビマ」は、分子標的抗がん剤として3つの分子:
「レンビマ」
の由来:LENVIMA
VEGFR、FGFR、RETの活性を特異的に阻害します。が
一般名:レンバチニブ
ん細胞の増殖に関わる信号や、がん細胞に酸素や栄養を
生命・活発
Lenvatinib + vim
与える血管をつくる信号をブロックし、抗がん作用を発
揮します。
「New Horizon(水平線から昇る太陽)」
をイメージしたロゴにより、
レンビマの有効性を表現
開発においては、標的となる分子の情報をもとに対象
となるがん腫を選択し、様々ながん腫でグローバルに臨
床試験を展開しています。もっとも開発が先行していた
甲状腺がんでは、アンメット・メディカル・ニーズが高い
放射性ヨウ素抵抗性の分化型甲状腺がんの患者様を対
■「レンビマ」の作用機序
象としたフェーズⅢ試験において、レンビマ投与群では
顕著な有意差をもって無増悪生存期間(がんが進行する
ことなく患者様が生存している期間の長さ)を延長する
レンビマ
効果が示されました。
がん細胞の増殖に関わる
信号をブロック
2015年2月には米国、同年5月には日本、6月には欧
がん細胞の
増殖を抑制
州で新発売しました。
甲状腺がんは希少疾患であり、対象となる患者様数は
日米欧で8,000人強と推定されています。そのため、現
在は専門医を中心とした情報提供を展開し、
「レンビマ」
による速やかな患者様貢献をめざしています。2015年
度は、グローバル20カ国以上での発売をめざしています。
18
レンビマ
酸素や栄養をがん細胞に
与える血管をつくる
信号をブロック
血管新生の
阻害
グローバルブランド レンビマ
INTERVIEW
甲状腺がんとは
1999年の研究開始当時から一貫して、患者様の延
命と、研究の独自性・スピード感覚にこだわりを持っ
て研究を進めました。
独自に構築した血管新生評価モデルとケミストの
想いの詰まったハンドメイドの化合物ライブラリー
を駆使して薬の種を発見しました。
種を優れた新薬候補へと速やかに開花させるため
「生存期間の延長」にフォーカスし、チーム全員が化
合物の絞込みに集中しました。
その結果、短期間で私たちの最終ゴールである患
者様に延命効果をもたらす「レン
ビマ」の創製につながったと考え
ています。
甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置す
る甲状腺の組織に生じるがんの一種です。もっとも
多く見られる甲状腺がんの種類である乳頭がんと濾
胞がん(ヒュルトレ細胞がんを含む)は、分化型甲状
腺がんとして分類され、甲状腺がんのおよそ95%を
占めます。その他、未分化がん、髄様がんがあります。
分化型甲状腺がん患者様の多くは、手術および放射
性ヨウ素療法で治療できる一方、これらの治療で十
分な効果を示さない少数の患者様もいます。
咽頭隆起
(のどぼとけ)
甲状軟骨
甲状腺
レンビマチームのテーマリーダーとして
探索研究を担当し、現在は臨床開発部において
レンビマの日本・アジアでの開発をリードする
副甲状腺
鶴岡 明彦
気管
エーザイ・プロダクトクリエーション・システムズ
ジャパン/アジアクリニカルリサーチ創薬ユニット 臨床開発部
「レンビマ」のこれから−ブロックバスターとしての期待
甲状腺が ん以外でも、肝細胞が んでグローバ ルな
用メカニズムの抗がん剤との併用による相乗効果を期
フェーズⅢ試験を実施し、2016年度の承認申請をめざし
待した研究では、抗PD-1抗体「KEYTRUDA」
(一般名:
ています。また、腎細胞がんについても、フェーズⅡ試
pembrolizumab)との併用療法の研究で、Merck&Co.,
験において主要評価項目を達成しました
(2015年1月)
。
Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.と2015年3月に提携に合
臨床開発では、エーザイ単独での開発だけでなく、他
意し、フェーズⅠb/Ⅱ試験を7月に開始しました。
社とのパートナーシップも活用しています。異なる作
■「レンビマ」の開発状況
抗PD-1抗体との併用
非小細胞肺がん
子宮内膜がん
フェーズⅠb/Ⅱ試験
腎細胞がん
フェーズⅡ試験
肝細胞がん
フェーズⅢ試験
甲状腺がん
申請
承認
肝細胞がんは日米欧および中国で9万2,500人強の患
なると推定しています。今後の適応拡大と、日米欧のみ
者様が対象になると推定しています。また、肺がん、メ
ならず新興国においてもマーケティング展開することに
ラノーマ、頭頸部がん、膀胱がん、腎がん、子宮内膜が
より、グローバルピークセールス1,200億円(リスク調
んを対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用
整後)のポテンシャルを見込んでいます。
療法では、日米欧で38万7,000人強の患者様が対象に
19
オンコロジーフランチャイズ の 構 築
グローバルブランド
ハラヴェン
グローバルに患者様貢献が拡大する自社創製の抗がん剤
承認取得国数
約
2015年度売上収益見通し
60
全合成工程数
470
64
億円
カ国
工程
現代有機合成化学の最高傑作「ハラヴェン」の創製
微生物や植物由来の天然物が薬剤開発のヒントとなる
海洋生物クロイソカイメンに存在するハリコンドリンBと
例は多く知られています。海洋生物とそれらに共生する
いう希少な天然物をもとにエーザイが創製した「ハラヴェ
微生物が産生する海洋天然物も、新規医薬品のシーズと
ン」は、工業生産している物質では世界でもっとも構造
して注目されています。しかし、海洋生物から得られる
が複雑と言われています。合成には64の工程があり、原
有用物質の収率は極めて悪く、また化学組成が非常に複
料から
「ハラヴェン」が合成されるまでに2年間を要します。
雑な構造であるために工業化が難しいなどの理由で、実
特殊な反応も必要な工業化は苦難の道であり、工程完成
用化された事例はごくわずかです。
には10年近い年月がかかりました。現代有機合成化学の
最高傑作とも言われる
「ハラヴェン」を生み出した高度な有
機合成技術力は、エーザイが誇るコア技術です。
■「ハラヴェン」
の発明・発見の経緯
「ハラヴェン」
の臨床試験は2002年から開始されました。
海洋生物
「クロイソカイメン」
進行再発乳がん患者様を対象としたグローバルフェーズⅢ
試験では、世界で初めて単剤で全生存期間を有意に延長
する結果が得られました。
ハリコンドリン B
H
HO
HO
HO
H
Me
H
H
O
O
O
O
H
H
O
H
O
H
H
2010年11月には、米国にて承認を取得し、新発売し
Me
ました。その後、これまでに約60カ国で承認を取得して
O
O
H
O
O
O
H
O
O
Me
Me
O
います。
H
O
「ハラヴェン」の由来:Halaven
O
医薬品として最適化
ハラヴェン
(一般名:エリブリン)
ハリコンドリンB
MeO
OH
H2N
O
O
分子量:826
不斉炭素:19 個
全合成工程数:64 工程
生きる
Halichondrin B + Live(lave) + n
H
O
O
H
O
O
Me
O
患者
介護者
医師
H
O
有効性
安全性
忍容性
O
3つのリング
20
“Right Half”
グローバルブランド ハラヴェン
「ハラヴェン」による乳がん患者様への貢献
「ハラヴェン」
は、発売以来順調に患者様貢献を拡大して
います。
います。2014年度の売上収益は353億円
(前期比123%)
また、エーザイは患者様へ貢献するための様々な活動
となりました。2015年度は、より早期の乳がん患者様へ
を行っています。例えば、日本では、抗がん剤の副作用
の貢献拡大により、売上収益470億円をめざします。
である脱毛について、女性の視点を取り入れた患者様向
化学療法を行う際に選択される基幹薬剤として、乳がん
け冊子を作成しています。がん領域における活動で培っ
ではタキサン系、アントラサイクリン系の抗がん剤などが
た知識やネットワークをもとに、独自で調査取材してまと
現在使われています。今後は、
「ハラヴェン」
が化学療法剤
めた乳がん患者様のための生活情報を提供するサイト
「ブ
の基幹薬剤となるようにポジショニングの確立をめざして
レケアガーデン」も開設しました。2012年に米国で始まっ
た
「マグノリアプロジェクト」では、
「ハラヴェン」
売上推移
(億円)
一部の社員がボランティアとし
470
て、乳がん患者様とそのご家族に
353
栄養豊かな食事をお届けする活動
290
を実施しています。このような活
226
動により患者様の想いに触れるこ
160
とは、社員のモチベーション向上
22
2010
年度
2011
年度
2012
年度
2013
年度
にもつながっています。
2014 2015年度
年度 見通し
女性の視点を取り入れた
患者様向け冊子
アンメット・メディカル・ニーズの高い乳がん
近年、検診や早期診断の普及により、乳がんの患者様数は増加しており、毎年世界で約100万人が新たに乳がんと診
断されると考えられています。中でも早期乳がんと診断された患者様の40%が、転移性乳がんまたは局所進行性へと進
むと言われています。転移性乳がんは、乳房の腫瘍からがん細胞が体内のほかの部位に転移・成長するもっとも進行した
乳がんで、5年生存率は約20%というデータがあります。米国では、毎年約20万人が新たに進行性乳がんと診断され、
約4万人の患者様がなくなられています。患者様数は年々増加傾向にあると言われており、アンメット・メディカル・ニー
ズの高い疾患です。
「ハラヴェン」のこれから−適応拡大と新製剤開発による患者様貢献の拡大と新たな可能性
「ハラヴェン」はさらなる患者様貢献をめざして、乳が
「ハラヴェン」
は、他の抗がん剤とは異なる様式で微小管
ん以外のがん腫でも開発を進めています。2015年2月に
の伸長を阻害するユニークな作用メカニズムを持っていま
は、軟部肉腫を対象としたフェーズⅢ試験において主要
す。最近では、それ以外の新たな作用機序や、転移抑制
評価項目を達成し、2015年7月に適応拡大の申請を行い
効果を示唆する研究結果も報告されています。
エーザイは、
ました。また、作用メカニズムが異なる抗がん剤との併
天然物由来のユニークな作用と可能性を追究し、さらなる
用による相乗効果を期待した研究では、2015年3月に抗
エビデンスの創出に向けた研究を続けています。
PD-1抗体
「KEYTRUDA」
(一般名:pembrolizumab)との
エーザイでは、乳がん患者様への貢献拡大とさらなる適応症
併用療法の研究で、Merck&Co.,Inc., Kenilworth,N.J.,
の拡大への取り組みにより、長期的に
「ハラヴェン」
のグローバル
U.S.A.と提携に合意しました。
売上収益として1,000億円レベルの達成をめざしています。
軟部肉腫について
軟部肉腫は体の様々な軟部組織で発生する悪性腫瘍の総
称です。発生部位の組織が様々であることから多彩な組織
型が存在しますが、比較的頻度の高い組織型として平滑筋
肉腫、
脂肪肉腫、
悪性線維性組織球腫などが知られています。
軟部肉腫の治療は根治的な外科切除術が中心で、悪性度が
高い場合は、化学療法や放射線療法を組み合わせた治療が
なされます。進行した場合の予後は悪く、
アンメット・メディ
カル・ニーズが非常に高い疾患の一つです。
21
グローバルブランド
Fycompa
新規メカニズムを有する自社創製の抗てんかん剤
てんかん患者様への貢献が進む
「Fycompa」
承認国がグローバルに拡大
てんかんとは 〜新規作用機序の新薬に高いニーズ〜
自社創製の「Fycompa」
(一般名:ペランパネル)は、
既存の抗てんかん剤とはまったく異なる作用機序を持つ
ファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。
グルタミン酸受容体の1種であるAMPA受容体のグル
タミン酸による活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制す
る高選択的な非競合AMPA受容体拮抗剤です。
「Fycompa」は12歳以上のてんかん患者様の部分発作
に対する併用療法の適応で、2012年9月に欧州で、2014
年1月に米国でそれぞれ新発売されました。現在は、45
カ国以上で承認を取得しており、患者様貢献がグローバ
ルに拡大しています。
てんかんは、様々な精神機能・身体機能に影響を
およぼす発作が生じる疾患です。てんかん発作には、
けいれんや意識消失、ぼうっと一点を見つめる状態、
唇鳴らし、手足の痙動など、様々な症状が伴います。
年齢を問わず、一生のある時期に0.5〜2%の人が
てんかんを発症すると言われています。てんかんの
患者様数は、米国が290万人*1、欧州が600万人*2、
日本が100万人*3、世界中で約6,000万人*4と報告さ
れています。
てんかんの治療は薬物治療が中心です。しかし、既
存薬では発作を十分にコントロールできない難治性て
んかんの患者様が約30〜40%存在すると推定されて
います*5。てんかんはアンメット・メディカル・ニーズ
が高く、作用機序の異なる新薬が強く望まれています。
*1 出典:
“Epilepsy Fast Facts. Active Epilepsy. ”Centers for
米国、欧州で全般てんかん
(強直間代発作)
の新適応を取得
2015年6月には、米国および欧州において全般てんか
んの強直間代発作に対する併用療法に係る適応拡大の承
認を取得しました。
「Fycompa」
は、
今回の適応拡大により、
部分てんかん、全般てんかんを問わず強直間代発作に対
Disease Control and Prevention, accessed July 9, 2015,
http://www.cdc.gov/epilepsy/basics/fast-facts.htm
*2 出典:Faught E. Rev Neurol Dis 2004;1:S34–S43
*3 出典:大槻ら
「厚生労働科学研究費補助金
(障害者対策総合研究事
業)
総合研究報告書(平成23-25年)」
*4 出典:
“epilepsy - did you know…? Epilepsy statistics. ”
Epilepsy Society, accessed July 9, 2015, http://www.
epilepsysociety.org.uk/epilepsy-did-you-know
*5 出典:
“The Epilepsies and Seizures: Hope Through Research.
What are the epilepsies?”National Institute of Neurological
Disorders and Stroke, accessed July 9, 2015, http://
www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.
htm#230253109
する併用療法として使用可能となりました。
また、日本では2015年7月に部分てんかんおよび全般
てんかんの強直間代発作の併用療法に係る適応で新薬承
全般てんかん
(強直間代発作)
とは
認申請を行いました。
てんかんは、発作のタイプによって、てんかん全体
の約60%を占める部分てんかんと、約40%を占める
全般てんかんに大別されます。強直間代発作は、突
然の転倒による重篤なけがの恐れがあるほか、その
発作頻度は「てんかん患者の予期せぬ突然死(SUDEP:
Sudden Unexpected Death in Epilepsy)
」の重要な
危険因子の一つとされ、てんかんの中でも重篤な発作
型の一つです。
エーザイは、てんかん領域を重点疾患領域と位置づけ、
「Fycompa」をはじめ本領域に豊富な製品ラインナップを
有しており、複数の治療オプションを提供することで、て
んかん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネ
フィット向上に引き続き貢献してまいります。
■てんかんの種類とその割合
発作頻度変化率(%)
全般てんかん(強直間代発作)の併用療法に関する
フェーズⅢ試験結果
(332試験)
で証明された
「Fycompa」の高い臨床効果*
プラセボ
投与群
「Fycompa」
投与群
-38.4
-76.5
その他
4%
PGTC 以外の
全般てんかん 16%
「Fycompa」投与群で発作頻度が
投与前と比べて76.5%減少
全般てんかん
強直間代発作
(PGTC)23%
「Fycompa」投与群の30.9%が
13週間にわたり無発作状態を維持
出典:Hauser WA, et al. Epilepsia
*68th Annual American Epilepsy Society Meetingで発表
ポスター番号:2389 Jacqueline A French et al.
22
部分てんかん 57%
グローバルブランド
BELVIQ
米国食品医薬品局
(FDA)
が13年振りに承認した新規肥満症治療剤
米国において患者様支援と疾患啓発を加速
肥満症とは
「BELVIQ」は、Arena Pharmaceuticals, Inc.(以下、
米国疾病対策予防センターによると、米国の成人
の3分の2以上は肥満または過体重であるとされ、肥
満 の 割 合 は、1980年 か ら2010年 に か け て2倍 以
上(約15%から約36%)に増加しています。肥満ま
たは過体重は、糖尿病、脂質異常症、高血圧症と
いった合併症を引き起こす可能性があり、肥満また
は過体重の増加は大きな社会問題となっています。
「BELVIQ」の処方対象となるのは、肥満を判定する
*1が30以上、
指数BMI
(ボディ・マス・インデックス)
または少なくとも一つ以上の合併症(高血圧、脂質
異常症および2型糖尿病など)があり、かつBMIが27
以上の成人患者様*2です。
アリーナ社)が創製し、エーザイが2013年6月に米国で
新発売しました。選択的に脳内のセロトニン2C受容体
を刺激することにより、満腹感を亢進し、食事全体の摂
取量を減らす効果があると考えられています。
米国では、患者様支援の拡大と疾患啓発のために、
発売に合わせて情報提供サイト(http://www.belviq.
com/)を立ち上げました。
「BELVIQ」の詳細な製品情報
や患者様の経済的負担を軽減するためのプログラムに
関する情報を掲載しています。また、一般生活者を対象
にテレビや雑誌を通じ、啓発活動を行っています。保険
*1 BMI=
[体重
(kg)]
÷
[身長
(m)
の2乗]
*2 成人ではBMI25〜29.9を
「過体重」
とし、BMI30以上を
「肥満」
としています。
カバレッジの向上にも取り組んでおり、2014年度も引
き続きアクセスの改善をめざし活動した結果、カバレッ
ジを拡大することができました。
発売から3年目となる2015年度は、対象となる年齢
肥満症患者様への貢献を拡大して、「BELVIQ」の売上収
層や性別、ライフスタイルを明確にしたテレビコマー
益の成長と利益の確保をめざします。
シャルやウェブサイト等を通じて、よりターゲットを明
確にした疾患啓発活動を展開します。また、米国事業
の構造改革の実施により最適化されたMR体制のもと
「BELVIQ」
の長期的展開
で、より効率的なプロモーション
2013年11月、アリーナ社と締結した独占的商業化に
活動を行います。さらに、毎月の
関するライセンス契約を変更し、ライセンス対象地域をこ
患者様の自己負担を上限75ドルに
れまでの米州21カ国から欧州、日本、中国を含む全世界
設定した支援プログラムの提供を
に拡大することに合意しました。これらライセンス対象地
継続し、患者様負担軽減による再
域において、エーザイはアリーナ社とともに肥満症の適
処方の維持をはかります。加えて、
応での本剤の承認取得に向けた開発、申請作業を推進し、
2015年度は1日1回製剤の申請を
承認取得後にはエーザイが独占的販売権を有することと
予定しており、さらなる患者様満
足度の向上をはかっていきます。
なります。エーザイは、将来的に
「BELVIQ」
を米国だけで
毎月の患者様自己負担を上
限75ドルに軽減する新しい
セービングカード
なくグローバルに展開するための準備を進めていきます。
■肥満症の推定患者数*1
欧州*2
5,200万人
米国
中国
7,700万人
日本
2,700万人
*1 出典:Decision Resources (Obesity 2013, T2 Diabetes 2013, Addiction Disorders 2011), WHO NCD Country Profiles 2011
*2 英国、フランス、
ドイツ、スペイン、イタリア
*3 アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ベネズエラ
23
8,800万人
ラテンアメリカ*3
9,400万人
特集
医薬品アクセス向上への
取り組み
必要な医薬品を必要とする人々に
エーザイは、開発途上国・新興国の人々に貢献するため、
医薬品アクセスの改善に取り組んでいます。
リンパ系フィラリア症治療薬の供給国数と供給量
(2015年6月時点)
19 3 8,000
カ国
億
万錠
ⒸWHO/Bangladesh
開発途上国・新興国の
「将来」
に投資する
医薬品へのアクセスは、国籍や経済格差、社会地位を
将来の成長に導く長期的な投資であるとエーザイは考え
問わず、生きるために不可欠なものです。世界には、疾
ています。この考えに基づき、低コストの製品供給や官
患に対する充分な知識もなく、必要な医薬品を入手する
民パートナーシップなどのあらゆる方法を駆使し、独自
ことができない人々が約20億人*いると言われ、その多く
のビジネスモデルによる様々な取り組みを継続的に行っ
は開発途上国・新興国の貧困層の方々です。
ています。
(図1)
開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善は、
*出典:Access to Medicine Indexホームページ
そこに住む人々の健康を支え、結果としてその国全体を
24
特集 医療品アクセス向上への取り組み
リンパ系フィラリア症制圧に向けた取り組み
リンパ系フィラリア症は蚊を媒介して感染する熱帯病です。
また、
リンパ系フィラリア症を含むフィラリア症の制圧には、
開発途上国を中心に世界で約12億人が感染のリスクにさら
駆除対策の進捗状況をより正確に測定し、確実に感染が止
されていると言われていますが、適切な治療薬の使用によ
められたことを確認することが極めて重要です。
り予防・治療が可能です。
そのため、2014年、エーザイは米国のビル&メリンダ・
2010年、エーザイはリンパ系フィラリア症治療薬
「ジエ
ゲイツ財団、GlaxoSmithKlineおよびMerckと合同で、
チルカルバマジン錠
(DEC錠)
」
を製造し、2020年までに合
WHOが実施する新たなプロジェクトに対して助成を行うこ
計22億錠を世界保健機関
(WHO)
に無償で提供する共同
とに合意しました。本プロジェクトは、新規にフィラリア検出
声明文に調印しました。すでにWHOの制圧活動を通じて
の検査キットを開発し、蔓延国で普及させることで、WHO
蔓延国19カ国に3億8,000万錠のDEC錠が供給されました。
の効果的な制圧活動立案に役立てていくことをめざしてい
(2015年6月時点)
ます。
■2020年までのDEC錠供給予定国
●:既出荷国
WHO 東南アジア地域
WHO 東地中海地域
エジプト
●インド ●インドネシア ●ミャンマー ●スリランカ バングラデシュ ネパール
東ティモール ジエチルカルバマジン錠
(DEC錠)
WHO アメリカ地域
●ドミニカ共和国
●ガイアナ
ブラジル
ハイチ
連携
エーザイ本社
インド
バイザッグ工場
WHO アフリカ地域
●エリトリア ●ケニア ●マダガスカル ●ザンビア コモロ ガンビア サントメ・プリンシペ ジンバブエ WHO 西太平洋地域
●フィジー ●フランス領ポリネシア ●キリバス
●ラオス ●マレーシア ●パプアニューギニア
●サモア ●ミクロネシア ●ツバル ※WHOはリンパ系フィラリア症の制圧目標年を2020年としています。(2015年6月現在の供給予定)
■図1 医薬品アクセス向上をめざすビジネスモデル
インプット
知的資本
●新薬としての高品質な製品提供
製造資本
●インドのバイザッグ工場
●インド立地のメリットを活かした
低コスト生産体制
社会・関係資本
●WHO との提携
●官民パートナーシップへの参画
財務資本
●原価・販売管理費等の投入
●開発途上国・新興国への長期投資
事業活動(アウトプット)
●リンパ系フィラリア症治療薬
DEC錠の無償提供
●患者 様 が 購入しやすい価 格 設 定
(アフォーダブルプライシング)
や、
所得別段階的価格設定(ティアー
ドプライシング)による製品提供
(例:インドにおける
「ハラヴェン」
の
提供)
●GHIT Fundや国際的非営利団体
(D N D i、セービ ンワクチン研 究
所)、ブラジルの国立機関などとの
パートナーシップ
(P.47参照)
アウトカム
知的資本
●エーザイブランドの拡大
●顧みられない熱帯病やマラリアに対する新薬開発
社会・関係資本
●開発途上国・新興国への本格進出
●開発途上国・新興国での健康福祉や
医薬品アクセスの向上
●経済成長や中間所得者層の拡大
自然資本
●医療システムや貧困の改善による
経済活動の効率化
財務資本
●ローマージン・ハイボリューム型での
長期的な利益創出
●疾患啓発活動
●バイザッグ工場の稼働率向上での
原価低減
25
特集 医療品アクセス向上への取り組み
地球規模の健康問題に挑む研究開発
エーザイでは、WHOが定義する顧みられない熱帯病
エーザイでは、現在、NTDs・三大感染症のうち、シャー
(NTDs)や三大感染症(マラリア、結核、HIV/AIDS)に
ガス病、フィラリア症、リーシュマニア症およびマラリア、
対する医薬品研究開発にも積極的に取り組んでいます。
結核の新薬創出をめざして様々なプロジェクトが進行中
これらの疾患は多くの場合、開発途上国などの貧困層で
です。NTDs・三大感染症の研究開発活動では、その疾患
蔓延しますが、疾患による労働力の低下がまた貧困をも
研究のためのツール・技術や、疾患が蔓延している地域で
たらすという悪循環を引き起こし、国際的な保健課題と
の臨床試験の経験、治験施設とのネットワークなどが必
なっています。
要です。そのため、すべてのプロジェクトにおいて国際
研究機関等とパートナーシップを構築しています。
■NTDs・三大感染症新薬開発プロジェクトの状況
推定感染者数
シャーガス病
700万人
初期研究段階
非臨床試験段階
新規ワクチン
(E6020による免疫活性化)
新規治療薬
(最適化段階)
新規治療薬
(スクリーニング段階)
臨床試験段階
E1224フェーズⅡ試験
新規ワクチン
(E6020による免疫活性化)
DNDi Drug Discovery
Booster
(コンソーシアム)
マラリア
2億人
新規治療薬
(スクリーニング段階)
マラリア原虫ATP4阻害薬
新規ワクチン
(E6020による免疫活性化)
新規タンパク質合成阻害薬
マラリアGWT-1阻害薬
新規TLR9阻害薬
フィラリア症
1.2億人
(リンパ系フィラリア症)
リーシュマニア症
1200万人
結核
900万人
Macrofilaricide Drug
ボルバキア菌阻害剤
Accelerator
(コンソーシアム)
新規治療薬
(スクリーニング段階)
DNDi Drug Discovery
Booster
(コンソーシアム)
TB Drug Accelerator
(コンソーシアム)
2015年6月時点。プロジェクトの詳細はこちらをご参照ください。▶ http://www.eisai.co.jp/company/atm/approach/02.html
「顧みられない熱帯病に対する創薬ブースター」
への参画
エーザイは2015年5月、国際非営利団体Drugs for
製薬企業は、DNDi の研究により得られた情報をもとに
Neglected Disease initiative(DNDi )が立ち上げたコ
それぞれのライブラリーについて同時にスクリーニング
ンソーシアム
「顧みられない熱帯病に対する創薬ブース
を行います。複数の製薬企業が持つ豊富なライブラリー
ター」
(Drug Discovery Booster)への参画を表明しまし
からもっとも有力なリード化合物を絞り込むことで、研
た。本コンソーシアムは、NTDsのうちリーシュマニア症
究開発のスピードとコストの効率化をはかります。また、
とシャーガス病の新薬開発を目的としたスクリーニング
in silico スクリーニングという化合物の構造情報とコン
を参加企業が共同で行うものです。
ピュータ技術を駆使し、より精密なスクリーニングを短
スクリーニングとは、ライブラリーと呼ばれる数百万
期間で行うことをめざします。DNDi は本コンソーシアム
を超える化合物群から、新薬候補となるリード化合物を
を通じて、最終的に4つのリード化合物を特定し、うち2
特定する探索研究のプロセスです。コンソーシアム参画
つを臨床導入することを目標としています。
26
特集 医療品アクセス向上への取り組み
アフォーダビリティ
(購入しやすさ)
を追究する価格戦略
エーザイでは、開発途上国・新興国においてエーザイ製
抗がん剤
「ハラヴェン」についてティアードプライシング
品を購入しやすい価格で提供するアフォーダブルプライ
(所得別段階的価格設定)
をフィリピン、香港、インド、マ
シングを様々な方法で実践しています。例えば、
「アリセ
レーシア、タイで導入しており、患者様の所得レベルや
プト」をインドやインドネシアなどで各国の生活水準に最
保険加入状況などに応じて薬剤費用の負担が段階的に軽
適化した価格で提供するなど、開発途上国・新興国の医
減され、条件によっては全額無償になるシステムを採用
療経済状況を考慮した価格戦略を推進しています。また、
しています。
Access to Medicine Indexによる評価
エーザイはオランダを拠点とする非営利団体
「医薬品ア
から4位順位が上がりました。また、日本の製薬企業の中
クセス財団」が実施するAccess to Medicine Index
(医
では最上位を獲得しました。
薬品アクセス貢献度調査)に協力しています。本調査は2
年ごとに実施され、グローバル製薬企業を対象に開発途
上国などでの医薬品アクセスに対する取り組みを評価し、
格付けを行うものです。2014年11月発表の最新版におい
て、エーザイは対象20社のうち11位となり、前回の15位
インドネシアにおける適正使用に向けた支援
NTDsの制圧には、開発・製造された治療薬が、対象となる
地域の住民・患者様の手元に届けられ、服用されるまで、流
通や啓発活動など切れ目のない取り組みが重要となります。
WHOのリンパ系フィラリア症の制圧活動では、駆虫薬を感
染リスクのある地域で住民の方々に一斉に服薬していただく
集団投与
(MDA)
を行っています。エーザイは、WHOのMDA
が効果的に行われるよう、運営に関して現地関連当局・団体
との連携、住民への疾患啓発活動など様々な支援を行ってい
ます。インドネシアでは、現地社員が住民に駆虫薬の服薬を
呼びかけるイベントの支援を行いました。
INTERVIEW
リンパ系フィラリア症駆虫薬集団投与
(MDA)に参加して
インドネシアはリンパ系フィラリア症の蔓延国であり、その罹患者は約1万4千人、感染リス
クのある人は約9千万人いると言われています。エーザイは、2014年よりWHOを通じてイン
ドネシアのMDAで使われる駆虫薬「DEC錠」を提供しています。
私はインドネシアの東ランプンで行われたMDAの現場にも立ち会い、住民に対する啓発活動
をお手伝いしました。MDAでは実施地域に住む子供も対象となりますが、小さな子供に苦い薬
を飲ませることは容易ではありません。そのため、現地ボランティアの方と共同で、MDAに参
加した子供向けに玩具やお菓子を配布する活動を行いました。
東ランプンでMDAが始まってから3年がたちますが、
「持病があるが薬を飲んでも大丈夫
か?」
「薬はいつ飲めばいいのか?」など住人の方々からの薬に対する質問が絶えることはありま アプリリア ムスリマ イストゥアティ
PT Eisai Indonesia
せん。こうした状況を見ると、MDAにはまだまだ課題が多く、ボランティアを始めとする関係
者間での連携が重要であることを強く感じます。
MDAの視察は住民の方と触れ合い、MDAの現実を知る大変貴重な機会となりました。今後もインドネシアでリン
パ系フィラリア症が制圧されることを願い、WHOの制圧活動を支援していきたいと思います。
27
知的資本 研究開発体制
創薬研究とは
創薬研究とは文字通り薬を創り出す研究で、
「探索研究」
「開発研究」
「臨床研究」の3段階からなります。探索研究は、創薬プロセス
の上流に位置し、エーザイでは有用性の高い新規化合物の探索・創出をはじめ、最新技術による創薬研究へのアプローチや社外リソー
スを活用した基礎研究も行っています。探索研究により創出された候補化合物は、開発研究のステージへ進みます。ここでは、世界
各国における医薬品申請・承認取得へ向けて、
候補化合物の物理化学的・生物学的性質の把握と評価、
品質や安全性の保証、
大量合成・
製剤化などの工業化研究が行われます。続いて、大部分の開発研究を経た候補化合物は、臨床研究へ進み、フェーズⅠ試験からフェー
ズⅢ試験にいたる3段階の臨床試験を経て、その結果をもとに承認申請を行い、国による承認を得たものが新薬として発売されます。
創薬研究においては、各国の様々な規制のほか、GLP
(Good Laboratory Practice:医薬品の安全性に関する非臨床試験の
実施の基準)
、GMP
(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理および品質管理に関する基準)
やGCP
(Good Clinical
Practice:医薬品の臨床試験の実施の基準)
と呼ばれる国際基準があり、エーザイでは、関連するすべての規制や基準を遵守し、企
業理念であるhhc 理念に基づく高い倫理観を持って医薬品の研究開発を行っています。
創薬プロセスと研究活動
開発研究
探索研究
探索合成
リード化合物最適化
製造販売後
臨床試験
申請
非臨床研究
審査
安全性研究
薬物動態
薬効薬理研究
一般薬理
バイオマーカー
臨床
導入
フェーズⅢ試験
生物学的評価
in vitro / in vivo
薬物動態
物性
一般薬理
安全性
バイオマーカー
新薬
候補
使用成績調査
臨床研究
フェーズⅡ試験
スクリーニング
プロセス研究
製剤化研究
物性分析研究
フェーズⅠ試験
アイデア
ターゲット
*
育薬
(発売後)
原薬供給/治験薬製造
承認
相互作用試験
配合変化試験
安全性
データベース構築
探索研究~承認
適応拡大・新製剤開発研究
*発売後も薬の情報は集められ、より適正な薬の使用や様々な改良、新薬の開発へと活かしていく育薬研究が行われます。
研究開発体制
重点領域へ研究開発資源を集中的に投入
エーザイは、患者様の生命・生活の質を改善する革新的な医薬品を一日でも早く患者様にお届けしたいという想いから、その源流
となる研究開発活動を、プロダクトクリエーション(製品創出活動)と定義しています。研究開発部門であるエーザイプロダクトクリエー
ションシステムズ
(EPCS)
では、患者様の喜怒哀楽を理解し、アンメット・メディカル・ニーズを充足するために、新たな医薬品を生み
出すイノベーションの創出に取り組んでいます。
EPCSは、日進月歩で進展する遺伝子情報などのヒューマンバイオロジーに基づいた情報から、最適な疾患ターゲットとなる治療仮
説を見出すために、自社での研究に加えグローバルで最先端の研究を進める社外の研究機関とのネットワークを強化しています。こ
れらのグループと連携することで、疾患ターゲット候補を獲得する可能性と、そのバリデーション
(検証)
の確度を高めています。
エーザイは、今なお充分な治療法が確立していない疾病が多くある
「神経領域」
と
「がん領域」
を重点領域として研究開発資源を集
中的に投入し、これらの領域を中心に有用性の高い新薬を生み出す努力を続けています。
28
EPCS体制
重点領域
チーフプロダクトクリエーションオフィサー
チーフイノベーションオフィサー
重点領域 1
チーフクリニカルオフィサー
ニューロサイエンス
(神経領域)
プロダクトクリエーションユニット
(PCU)
5創薬領域
コアファンクションユニット
(CFU)
5技術機能領域
ニューロサイエンス&ジェネラルメディシン PCU
(脳・神経領域等)
ネクストジェネレーション システムズ CFU
(化合物ライブラリー、
スクリーニング)
オンコロジー PCU
(がん関連領域)
バイオマーカー&パーソナライズドメディシン CFU
(バイオマーカー)
モルフォテック PCU
(抗体)
バイオファーマシューティカル アセスメント CFU
(薬物動態、
安全性等)
カン PCU
(セルバイオロジー)
ファーマシューティカル サイエンス&テクノロジー CFU
(原薬、
製剤、
分析等)
ジャパン/アジア クリニカル リサーチ PCU
(日本・アジアにおける臨床研究)
グローバル レギュラトリー アフェアーズ CFU
(薬事)
神経変性疾患
(アルツハイマー型認知症など)
その他の神経疾患(てんかんなど)
重点領域 2
オンコロジー
(がん領域)
より少ないコストで新たなイノベーションを創出
グローバルに展開する創薬研究拠点
エーザイは、グローバルに探索研究、開発研究、臨床研究を展開しています。エーザイは世界の様々な知と想いを交流させ
ることで、革新的新薬創出に向けて邁進しています。
創薬研究拠点
欧州ナレッジセンター
探索・臨床研究
(英国)
小石川ナレッジセンター
本部機能、
臨床研究
(東京)
筑波研究所
探索・開発研究
(茨城)
H3 Biomedicine Inc.
探索研究
(米国)
アンドーバー研究所
探索・開発研究
(米国)
Eisai China Inc.
臨床研究
(中国)
エーザイ
クリニカルリサーチ
シンガポール
臨床研究
(シンガポール)
ナレッジセンターインド
開発研究
(インド)
カン研究所
探索研究
(神戸)
川島工園
開発研究
(岐阜)
鹿島事業所
開発研究
(茨城)
プロダクトクリエーションの
パフォーマンス
Eisai Inc.
臨床研究
(米国)
モルフォテック
探索・開発・臨床研究
(米国)
承認プロジェクト数/研究開発費100億円*
0.31
エーザイのプロダクトクリエーションにおける生産性は
確実に向上しています。
今後も、製品創出活動における選択と集中をさらに徹底
し、重要プロジェクトの確実な進展、次世代を担う開発
品への注力、創薬イノベーション分野への積極投資を実
現し、さらなる創薬力の強化をはかっていきます。
0.39
0.43
0.47
0.58
0.48
2005-2009 2006-2010 2007-2011 2008-2012 2009-2013 2010-2014
年度
年度
年度
年度
年度
年度
*5年間移動平均、
インプロセス研究開発費を除く、適応拡大、
剤形追加等を含む
29
知的資本 パイプライン
がん領域
エーザイの抗がん剤の研究開発は1987年、筑波研究所に研究グループが組織されたことに始まります。また、がん領域製品
をグローバルに展開する事業および技術基盤を獲得するため、2006年にライガンド社の4製品の買収、2007年にがん治療用抗
体の研究開発を専門とするモルフォテック社を買収、さらに2008年に、がん領域の事業を専門とするMGIファーマ社を買収し、
がん治療に対して多面的なアプローチを行ってきました。
抗がん剤
「ハラヴェン」は、乳がんに係る適応で、各国で順次承認を取得し、2015年7月現在で、承認取得国数は約60カ国と
なりました。2015年7月には、日本・米国・欧州にて、軟部肉腫に係る適応拡大の承認申請を行いました。
抗がん剤
「レンビマ」は、甲状腺がんに係る適応で、2015年2月に米国、3月に日本、5月に欧州で承認を取得しました。2015
年度中に20カ国以上ので新発売をめざしています。
また、
「ハラヴェン」
、
「レンビマ」においては、2015年3月に、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.と抗PD-1抗体
「KEYTRUDA」
(一般名:pembrolizumab)
との併用療法に関する研究提携契約を締結しました。
オンコロジーPCUでは新たな分子標的薬として
「E7090」を創出しました。FGF/FGFR遺伝子異常の固形がんを対象として、
2014年8月より、フェーズⅠ試験を開始しています。
一方、がん患者様の遺伝子的情報を活用した、個別化医療につながる新規抗がん剤の創出をめざす専門の研究子会社である
H3 Biomedicine Inc.を2011年、
米国に設立し、
研究を始めました。スプライシング因子SF3B1のモジュレーターと、
がんの発生・
進展に関わるドライバー遺伝子FGFR4の阻害剤などの研究が進展し、H3 Biomedicine Inc.設立後、初めての臨床試験導入が計
画されています。
主要開発品の状況
(2015年7月現在)
製品名/開発品コード
(一般名)
ハラヴェン/
E7389
(エリブリン)
概要
自社品/
導入品
クロイソカイメン由来 のハリコンドリンBの 合成類縁体で、
微小管の伸長を阻害し細胞周期を停止させることで抗腫瘍
活性を示します。米国・欧州・日本・アジアなど、約60カ国 自社品
で乳がんに係る承認
(サードライン、セカンドライン等)を取
得しています。
剤形
開発状況
フェーズ フェーズ フェーズ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
申請
乳がんサードライン
中国 ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年度予定
軟部肉腫
(効能追加)
日米欧 ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年7月
注射剤 非小細胞肺がん
(効能追加)
30
地域
日米
■■■■ ■■■■ ■■■■
欧ア
膀胱がん
(効能追加)
米欧 ■■■■ ■■■■
リポソーム製剤
(剤形追加)
欧州 ■■■■
承認
知的資 本
がん領域
主要開発品の状況
(2015年7月現在)
製品名/開発品コード
(一般名)
概要
自社品/
導入品
剤形
開発状況
地域
フェーズ フェーズ フェーズ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
申請
承認
米国 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年2月
甲状腺がん
血管内皮増殖因子受容体( V E G F R )や線維芽細胞増殖因子受
容体(FGFR)に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)
、
KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与す
る受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に対する選択的阻害活性
を有する経口投与可能な、自社創出の新規結合型チロシンキ
レンビマ/
ナーゼ阻害剤です。本剤は、VEGFR2とのX線共結晶構造解
E7080
自社品
(レンバチニブ) 析から、新たな結合様式(タイプⅤ)を有することが確認され
た薬剤であり、速度論的解析からは、標的分子に素早く結合
し強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されています。
甲状腺がんに係る適応で、米国・日本・欧州で承認を取得し
ました。その他、肝細胞がんなど、他のがん腫においても
臨床試験を実施中です。
日本 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年3月
欧州 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年5月
アジア ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■
経口剤
肝細胞がん
(効能追加)
日米
■■■■ ■■■■ ■■■■ 2016年度予定
欧中ア
子宮内膜がん
(効能追加)
米欧 ■■■■ ■■■■
メラノーマ
(効能追加)
米欧 ■■■■ ■■■■
非小細胞肺がん(サードライン・単剤)
米欧 ■■■■ ■■■■
(効能追加)
非小細胞肺がん(RET転座)
(効能追加)
腎細胞がん
(効能追加)
日米
■■■■ ■■■■
欧ア
米欧 ■■■■ ■■■■
日本 ■■■■
固形がん(抗PD-1抗体「KEYTRUDA」
(一般名:
pembrolizumab)との併用)
(Merck & Co., 米国 ■■■■ ■■■■
Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.と共同開発)
葉酸受容体α(FRA)に対するヒト化IgG1抗体です。FRAが
MORAb-003
過剰発現しているがん腫に対して抗腫瘍効果を期待してい 自社品
(ファルレツズマブ)
ます。
MORAb-004
Tumor endothelial marker 1(TEM-1)/エンドシアリンに
対するヒト化I g G1抗体です。エンドシアリンを発現してい 自社品
るがん腫に対して抗腫瘍効果を期待しています。
メソセリンに対するキメラ型I g G1抗体です。メソセリンを
MORAb-009
自社品
(amatuximab) 発現しているがん腫に対して抗腫瘍効果を期待しています。
注射剤
プラチナ感受性卵巣がん
日米
■■■■ ■■■■
欧
非小細胞肺がん
米欧 ■■■■ ■■■■
メラノーマ
米欧 ■■■■ ■■■■
注射剤 大腸がん
米欧 ■■■■ ■■■■
軟部肉腫
米欧 ■■■■ ■■■■
注射剤 中皮腫
米欧 ■■■■ ■■■■
血管内皮細胞の 接着分子であるインテグリンα2の 発現抑
自社品
制作用により血管新生を阻害します。
経口剤 大腸がん
米欧 ■■■■ ■■■■
インターロイキン2
(IL-2)の受容体結合部分とジフテリア毒素
の融合タンパク製剤であり、細胞表面上のIL-2受容体と特異
的に結合し、細胞内に移行したジフテリア毒素がタンパク
自社品
質合成を阻害します。すでに米国でC D2 (
5 I L-2受容体の構
成要素)陽性の皮膚T細胞リンパ腫治療剤として承認を取得
しています。
注射剤 メラノーマ
(効能追加)
米国 ■■■■ ■■■■
架橋化ポリビニルアルコール高分子からなる親水性の球状
微粒子であり、注入用カテーテルを 通じて目標とする血管
を選択的に塞栓するための血管塞栓用ビーズです。微細で 導入品
均一な球状の粒子であるため、血管径や腫瘍の大きさなど (Biocompatibles
の対象範囲に合わせた持続的な 塞栓効果が 期待できます。 UK Ltd.)
日本において、肝細胞がん患者様に対する肝動脈塞栓療法
を使用目的として承認を取得しています。
血管
多血性腫瘍に対する血管塞栓療法
日本 ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2014年9月
塞栓材 (効能追加)
E7090
オンコロジーPCUが創出した分子標的薬です。
経口剤 固形がん
日本 ■■■■
MORAb-066
導入品
モルフォテックPCUが導入し、開発を進めている抗体です。 (Janssen Biotech, 注射剤 固形がん
米国 ■■■■
E7046
オンコロジーPCUが創出した抗がん剤です。
米国 ■■■■
E7820
Ontak/E7272
(denileukin
diftitox)
ディーシー ビーズ
/E7040
自社品
Inc.)
自社品
経口剤 固形がん
31
神経領域
「アリセプト」は、2014年9月に日本にてレビー小体型認知症に関する効能・効果の追加承認を取得しました。
自社創製の抗てんかん剤「Fycompa」は、12歳以上の部分てんかん併用療法の適応で、45カ国以上で承認を取得しています。
2015年6月に、米国および欧州において、全般てんかんの強直間代発作に対する併用療法に係る適応拡大に関する承認を取得
しました。また、日本では、2015年7月にてんかん患者様の部分発作および強直間代発作に対する併用療法の適応で新薬承認
申請を行いました。
自社創製の睡眠導入剤「E2006」は、フェーズⅢ試験の準備中です。また、2015年2月に、抗てんかん剤「Banzel」は、1歳
から3歳までのレノックス・ガストー症候群の適応追加の承認を取得しました。
主要開発品の状況
(2015年7月現在)
製品名/開発品コード
(一般名)
概要
自社品/
導入品
剤形
開発状況
レビー小体型認知症
(効能追加)
アリセプト/
E2020
(ドネペジル)
神経伝達物質のアセチルコリンを分解する酵素であるアセチル
コリンエステラーゼを阻害することにより、脳内アセチルコリン
濃度を高め、アルツハイマー型認知症
(AD)
の認知症症状の進行
を抑制します。軽度および中等度のAD治療剤として、すでに世
自社品
界90カ国以上で承認されており、米国、日本、カナダ、中南米
やアジアの一部の国などでは高度ADの適応も承認されていま
す。2014年9月には、日本においてレビー小体型認知症の効能・
効果の追加承認を取得しました。
グルタミン酸受容体のサブタイプであるA M P A受容体への
グルタミン酸の結合を選択的に阻害します。部分てんかん
の併用療法に対して欧州、米国およびアジアなど、4 5カ国
Fycompa/
E2007
以上で承認を取得しています。また、全般てんかんの強直 自社品
(ペランパネル) 間代発作の併用療法の適応についても、米国、欧州で承認
を取得しました。
地域
フェーズ フェーズ フェーズ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
申請
承認
日本 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2014年9月
経口剤 高度アルツハイマー型認知症(効能追加) 中国 ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年2月
ダウン症候群の退行様症状(効能追加) 日本 ■■■■ ■■■■
貼付剤
パッチ製剤
(剤形追加、E2022)
(帝國製薬株式会社と共同開発)
日本 ■■■■
部分てんかん
日本 ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年7月
全般てんかん
(効能追加)
欧州 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年6月
米国 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年6月
経口剤
日本 ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年7月
経口懸濁液
(剤形追加)
米欧 ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年6月
*日本では、部分てんかんと全般てんかんの適応を同時に申請しました。
部分てんかん小児適応
(効能追加) 米欧 ■■■■ ■■■■
メコバラミン(生体内補酵素型ビタミンB12)は、末梢性神経障
害治療剤として広く使われている成分です。承認用量の5 0
E0302
自社品
(メコバラミン) 倍〜1 0 0倍量となる高用量メコバラミンを用い、筋萎縮性側
索硬化症
(ALS)
治療剤としての開発を行っています。
イノベロン/
Banzel/
E2080
(ルフィナミド)
BAN2401
新規構造のトリアゾール誘導体で、過剰電荷を帯びている脳
内ナトリウムチャネルの活動を調節します。小児から発症す
る重篤な難治性てんかんの一つであるレノックス・ガストー 導入品
レノックス・ガストー症候群の
経口剤
小児適応
(効能追加)
症候群 の 併用療法に係る適応で、日本、欧州、米国で承認 (Novartis AG))
を取得しています。ブランド名は、日本、欧州では
「イノベロン
(Inovelon)
」
、米国では
「Banzel」
です。
ベータアミロイド(Aβ)
プロトフィブリルに対するヒト化IgG1抗
体です。神経毒性を呈することが報告されているAβプロトフ
ィブリルを除去することで、アルツハイマー型認知症の進行
を抑制することを期待しています。
導入品
(BioArctic
Neuroscience
AB)
新規作用機序の睡眠導入剤です。覚醒状態を維持するオレキ
E2006
シン受容体に拮抗することで、覚醒状態を鎮め、自然な睡眠 自社品
(lemborexant)
の誘発を期待しています。
E2609
BELVIQ/
APD356
(lorcaserin)
E2027
注射剤 筋萎縮性側索硬化症
(ALS)
B A C E阻害剤です。アミロイド前駆体タンパク質のβサイト切
断酵素であるBACEを阻害することで、ベータアミロイドの総
自社品
量を低下させ、アルツハイマー型認知症の進行を抑制するこ
とを期待しています。
注射剤
アルツハイマー型認知症
(Biogen Inc.と共同開発)
経口剤 不眠症
経口剤
アルツハイマー型認知症
(Biogen Inc.と共同開発)
日本 ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年5月
米国 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年2月
米欧 ■■■■ ■■■■
日本 ■■■■
米国 ■■■■ ■■■■
米国 ■■■■ ■■■■
新規作用機序の肥満症治療剤です。選択的に脳内のセロトニ
禁煙補助
(効能追加)
ン2 C受容体を刺激することにより摂食を抑制し、満腹感を促
(Arena Pharmaceuticals, Inc.と 米国 ■■■■ ■■■■
進すると考えられています。本剤は、米国において、ボディ・
共同開発)
マス・インデックス
(BMI)
が30kg/m2以上、あるいは少なくと 導入品
も1つ以上の合併症を患うBMIが27kg/m2以上の成人患者様 (Arena
経口剤
の体重管理を目的とした食事療法と運動療法に対する補助療 Pharmaceuticals,
法として、
2012年6月に米国食品医薬品局
(FDA)
より承認され、 Inc.)
米国麻薬取締局によるスケジューリング指定を経て、2013年
肥満症
日本 ■■■■
6月に発売されました。新たに、禁煙補助の適応取得をめざし
た開発を進めています。
認知症の症状改善型治療剤です。
自社品
経口剤 アルツハイマー型認知症
32
米国 ■■■■
知的資 本
消化器・血液・免疫反応領域
プロトンポンプ阻害剤
「パリエット」は、2014年12月、日本において低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰
瘍の再発抑制に関する効能・効果を取得するとともに、新たな剤形となる5mg錠の剤形追加の承認を取得し、2015年2月に発売
しました。さらに、PPI抵抗性逆流性食道炎に対する維持療法におけるフェーズⅢ試験を日本で実施中です。上部消化管機能改
善剤
「Cidine」
は、2015年2月、中国において機能性ディスペプシアに係る適応で承認を取得しました。また、ナトリウムチャネ
ル遮断薬
「タンボコール」
は、2015年2月、日本において小児の投与に適した剤形である細粒製剤の承認を取得しました。
主要開発品の状況
(2015年7月現在)
製品名/開発品コード
(一般名)
概要
自社品/
導入品
プロトンポンプ阻害作用に基づき、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆
流性食道炎、ヘリコバクター・ピロリ除菌、ラベプラゾールを
パリエット/
含むヘリコバクター・ピロリ除菌用3剤組み合わせパック製剤
アシフェックス
などの承認を取得しています。2 0 14年12月に低用量アスピ 自社品
E3810
(ラベプラゾール) リン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制に関
する効能・効果および5 m g錠の剤形追加の承認を取得しまし
た。
剤形
開発状況
地域
フェーズ フェーズ フェーズ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
申請
承認
低用量アスピリン投与時における胃潰瘍
日本 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2014年12月
又は十二指腸潰瘍の再発抑制
および5mg錠(効能・剤形追加)
経口剤 PPI抵抗性逆流性食道炎に対する
維持療法
(効能追加)
機能性ディスペプシア(効能追加)
日本 ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2016年度予定
日本 ■■■■ ■■■■
Cidine
(cinitapride)
消化管神経叢に存在する5-HT 2および5-HT 4受容体を刺激す
ることによりアセチルコリンの遊離を増大させ、上部消化管運 導入品
動を改善します。また抗ドーパミン作用も有し、ドーパミン受 (Almirall,
容体を阻害することによりアセチルコリンの放出抑制を解除し S.A.)
上部消化管機能を改善します。
経口剤 機能性ディスペプシア
中国 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年2月
タンボコール/
(フレカイニド)
心筋のナトリウムチャネル遮断作用によって頻脈性不整脈を抑
制します。成人における頻脈性不整脈
(発作性心房細動・粗動、
自社品
心室性)および小児における頻脈性不整脈(発作性心房細動・
粗動、発作性上室性、心室性)
の適応を有しています。
経口剤 細粒製剤
(剤形追加)
日本 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 2015年2月
手術が予定されている慢性肝疾患 日米
■■■■ ■■■■ ■■■■
における血小板減少症
欧ア
トロンボポエチン受容体のアゴニストで、血小板増加を促進さ
E5501/
せる経口の新規化合物です。血小板減少を示す病状への効果 自社品
AKR-501
(avatrombopag) を期待しています。
経口剤
特発性血小板減少性紫斑病
(ITP) 米欧ア ■■■■ ■■■■ ■■■■
C型肝炎に対するインターフェロン
療法の実施および開始に支障をき 米国 ■■■■ ■■■■
たす血小板減少症
E6005
細胞内情報伝達物質サイクリックA M Pの分解酵素であるホス
ホジエステラーゼ4の働きを阻害します。アトピー性皮膚炎の 自社品
諸症状を抑える治療薬となることを期待しています。
外用剤 アトピー性皮膚炎
E6011
カンPCUが創出した、抗フラクタルカイン抗体です。
自社品
注射剤
MORAb-022
モルフォテックPCUが創出した抗体です。
自社品
注射剤 抗リウマチ剤
(抗体)
米国 ■■■■
E6007
筑波研究所が創出したインテグリン活性化阻害剤です。
自社品
経口剤 インテグリン活性化阻害
日本 ■■■■
33
自己免疫疾患/炎症性疾患
(抗フラクタルカイン抗体)
日本 ■■■■ ■■■■
日本 ■■■■ ■■■■
知的資本 知的財産戦略
知的財産の保護・強化
独自に開発した技術や製品を法的に保護し、有効活用することは、企業が持続的に成長・発展し、患者様へ安定して製品を届け
るために欠かすことのできないものです。そのためエーザイでは、
特許取得など、
知的財産に関する諸活動を戦略的に進めています。
知的財産活動
知的財産部は、国内外創薬拠点に知的財産担当者を配置し、エーザイプロダクトクリエーションシステムズ等の各グループと緊
密に連携しながら、特許、商標、意匠、著作権等の知的財産に関わる活動をグローバルに展開しています。また、特許出願や先行
技術調査等では、現場と密接に連携して活動しています。さらに、新規技術や有望化合物の導入時には、関連組織と連携し合い、
着実な権利化による保護やコンプライアンスに則した作業を重視しています。
創薬活動と知的財産戦略
エーザイの売上収益の大部分は、医師の処方に基づき患者様が服用する医療用医薬品です。これら医療用医薬品の初期創薬活
動における、遺伝子、タンパク質、スクリーニング方法等の成果を特許出願しています。創薬活動を進めた結果、見出された有望
化合物についても、発売後の医薬品が適切に保護されるよう、各プロダクトクリエーションユニットと連携して戦略的な特許出願
を行い、その権利化に注力しています。さらに、開発中および発売後の医薬品については、患者様のベネフィット向上につながる
よう、その医薬品の持つポテンシーを最大限に引き出し、新製剤、新医薬用途、新投与形態等の研究を行って、得られた成果を特
許権で保護しています。
ライセンス関連活動の事業への貢献
エーザイは、特許権そのもののライセンス料から収益を上げることよりも、事業収益を確保する手段としての特許化に重点をお
いています。
一方、医薬品アクセスが困難な地域で特異的に発生する病気の治療薬については、積極的にライセンス活動を実施しています。
特に、
顧みられない熱帯病
(NTDs)
に関して、
特許を外部に開放し、
広い範囲のパートナー機関と目標やコミットメントをともにして、
アイディアや技術、そして知を統合することで、より効率的に創薬研究を進めることにも挑戦しています。
特許
エーザイでは、創薬活動により得られた成果を守るために積極的に国内外
特許出願を行っています。一方、リソースを効果的に運用すべく、海外への
特許出願の要否や出願国については、各発明の重要性を充分に評価しながら
決定しています。
■特許出願件数
2012年度
2013年度
2014年度
109件
88件
87件
商標
エーザイは、すべての医薬品について患者様に支持される商品名を開発し、それらを商標権によって保護しています。また、マー
ケティング部門と連携して、ブランド戦略をグローバルに展開しています。
知的財産権と医薬品アクセスに関するエーザイの見解
もっと詳しく: http://www.eisai.co.jp/company/atm/approach/06.html
“顧み
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