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講演要旨 - 大阪大学グローバルコラボレーションセンター
今日の目的 GLOCOL/ヒューライツ大阪 連続セミナー「紛争地の現場から日本社会に問う」 第3回「コンゴ民主共和国の紛争と日本:『つながり』から『関心』へ」 • 「個人の気づき」(ミクロレベル)と「紛争への対 応」(マクロレベル)をつなげることについて考え、 話し合う 2009年6月5日 報告者:ヴァージル・ホーキンス (大阪大学グローバルコラボレーションセンター特任助教) どうしたら どうしたらいいんだろう んだろう 電化製品 無視 ひとごと関心 遠いアフリカの アクション 消費 距離 ゴリラ アドボカシー つながり かわいそう メディア キャンペーン スズ (ハンダ) 人道支援 気づく 銅、コバルト (リチウムイオン電池) 消費者 タンタル (コンデンサ) タングステン (ICチップ) 行動 1 2 コンゴ民主共和国(DRC) 紛争の概要 自分の問題意識と今日のセミナー これまでの活動と問題意識 • DRC紛争が「無視され続けない」状態を作りたい • DRC紛争と日本とのつながりを強調し、関心を呼ぼうとして きた • しかし「無視され続ける」状態を変えうるような持続的関心・ 行動を促せていないと感じる • DRCの紛争は、地方レベル、国レベル、そして地 域レベルの紛争が重層的に絡み合っている。 • 紛争の原因もまた、非常に複雑に絡み合ってい る (地域の安全保障 鉱物ほか天然資源 そし る。(地域の安全保障、鉱物ほか天然資源、そし て民族のアイデンティティ等) そこで・・・ • ①DRC紛争の概要、②「つながり」アプローチに対する大学 生の反応、③「個人の気づき」(ミクロレベル)と「紛争への対 応」(マクロレベル)をつなげること、の3点をお話する • グループワークで、③についてどのような方法があるか考え てもらう • 周辺8カ国の軍隊が介入、紛争地帯は西ヨーロッ パと相当する面積に及んだ • 540万人の死亡者を出している。(第二次大戦後 に起きた紛争としては、世界最大の死亡者数) 3 4 1994年 ルワンダのジェノサイド 1996-1997年 第一次紛争 DRC紛争への前兆 ザイールがDRCに改名 4月、フツ族の過激派が少数民族のツチ族に対し てジェノサイド(大量虐殺)を開始(3ヶ月で約80万 人が殺される) ザイール ザイ ル Zaire ブルンジ Burundi ウガンダ Uganda 逃亡先であるザイールの難民キャンプを拠点とした フツ族による軍事活動に対して、ルワンダ政府は 制圧に乗り出す 直後、ウガンダに潜んでいたルワンダの反政府勢 力(ツチ族)が ルワンダに侵攻 ルワンダ政府を 力(ツチ族)が、ルワンダに侵攻。ルワンダ政府を 追放し、政権を掌握 ルワンダ Rwanda ジェノサイドの首謀者および加担者は、ツチ族から の報復を恐れた数百万人のフツ族一般市民と共 に、周辺国(主にザイール)に逃亡 タンザニア Tanzania 逃亡先であるザイールの難民キャンプから、フツ族 の過激派が再軍備化、新ルワンダ政府に攻撃をし かける 5 ウガンダ Uganda ザイール Zaire ルワンダ Rwanda ブルンジ Burundi アンゴラ Angola 難民キャンプを解体したルワンダ政府軍は、ザイー ルの反政府勢力と組んで ザイール首都に向けて ルの反政府勢力と組んで、ザイール首都に向けて 侵攻 反政府勢力がザイール領地内を拠点としていたア ンゴラ、ウガンダ、ブルンジ各国も、ルワンダ側に ついて参戦 ザイール敗北。(長期に渡る独裁体制はもとより、 冷戦終結による米国からの支援喪失は、広大な 国土を抱えるザイール政府を脆弱化させていた) ルワンダ等に支持された反政府勢力のリーダー、 ローラン・カビラが大統領となり、「ザイール」は「コ ンゴ民主共和国(Democratic Republic of Congo, 6 DRC)」に改名 1 チャド Chad 2003-2008年 地方レベルの紛争が続く アフリカ大戦 不安定な「平和」と選挙 カビラ政権への不満を募らせたルワンダは、DRC の反政府新勢力を組織し、ウガンダ、ブルンジと 共にDRC侵攻を開始 スーダン Sudan ウガンダ Uganda DRC 1998-2003年 第二次紛争 ルワンダ Rwanda ブルンジ Burundi アンゴラ Angola ところが、DRC 政府は周辺数カ国から直ちに軍事 支援を得る アンゴラ、ジンバブエ、ナミビア、チャド、スーダン はDRC政府側として参戦、ルワンダ政府等による DRC侵攻は引き止められる。そして不安定な膠着 状態へ 2003年、周辺国軍が撤退完了、暫定政府が設立 される。状況の安定のために国連平和維持隊が拡 大される 一方、イトゥリ州と北キヴ州を中心に地方レベルの 紛争が続いた イトゥリ州 Ituri Province イトゥリ州では、ヘマ族とレンドゥ族との間の紛争が 2003年に激化 北キヴ州 North Kivu Province 北キヴ州では、DRC政府によるツチ族対応を不満 とするローラン・ンクンダ将軍が、2004年から反政 府軍を組織、戦闘を開始 DRC 状況を監視するために、国連平和維持隊 (MONUC)が派遣される 独立後初の民主的な選挙となった2006年総選挙 を経て、現職のジョセフ・カビラ大統領(父である ローラン・カビラは2001年に暗殺された)が当選 和平交渉の結果、2002年に周辺国軍撤退および 選挙実施を含む包括的な合意に到達 ナミビア Namibia ジンバブエ Zimbabwe 7 8 人道被害 2008-2009年 反政府勢力の制圧 紛争による死亡者(540万人)の分類 敵が味方に? 2008年、ンクンダが率いる人民防衛国民会議 (CNDP)の軍事活動が激化。 南部スーダン Southern Sudan ウガンダ Uganda DRC ルワンダ Rwanda DRC政府はかつての敵であったルワンダと同盟を 結び、①共同でCNDPを解体、政府軍に取り込む こと ②未だDRCに残留するルワンダのフツ族反 こと、②未だDRCに残留するルワンダのフツ族反 政府軍(ルワンダ解放民主軍、FDLR)を制圧する ことに合意 DRC政府は、南部スーダン、かつての敵であった ウガンダとも同盟を組み、DRCに残留するウガンダ 反政府軍を制圧することにも合意 ンクンダは逮捕され、コンゴ政府とCNDPは和平合 意締結。CNDP以外の反政府勢力に対する攻勢の 結果は未だに不明。部分的に紛争が続く 9 紛争による死亡者の比較 暴力 6% 病気・飢え (非暴力) 94% 紛争では一般市民が狙われる。食糧や家財道具が奪われ、強制労働に従 事させられる。あるいは敵を支援していると思われ、攻撃されることもある。 攻撃を受けると、一般市民の多くは着のみ着のまま、森や山へと逃亡する。そ こでは食べ物、水、住居、薬や保健サービスはなく、多くの人はマラリア、下 痢、その他の病気にかかり、あるいは飢えで苦しむことになる。 レイプもまた、一般市民に恐怖を植え付け、そして人間性を貶める破壊的な 武器となる。東部のいくつかの地域では、女性の70%がレイプの被害にあって いるとされる。 10 日本がどう対応しているのか (円の面積はそれぞれの紛争の死亡者数を表す) • 政策レベル: 推定死亡者数 コンゴ民主共和国(DRC) コンゴ民主共和国 5,400,000 イラク >500,000 アフガニスタン >500,000 ボスニア 60,000 コソヴォ 10,000 イスラエル・パレスチナ 8,000 日本の1999年のコソヴォ紛争に対する緊急支援はDRC紛争に 対する緊急支援の1999年からの10年間分に相当する • メディアレベル: 2000年に読売新聞が国際面で取り上げたアフリカ関連の記事 は 国際面全記事面積 2% は、国際面全記事面積の2% • 一般人レベル: (DRC) 大阪大学1年生の知識調査(2008年)の結果:DRC紛争が世界 最大の紛争だと知っていたのは151人中0人 • 研究者レベル: イラク アフガニスタン ボスニア コソヴォ イスラエル・パレスチナ 11 DRCの情勢を中心に研究している日本の研究者は1人?国際 関係・国際政治の専門誌・教科書にDRCがほとんど登場せず 12 2 密接につながっている紛争とDRCの豊富な鉱物資源 意識を高めるための「フック」 これらの鉱物資源は日本の産業には欠かせない 無知 無関心 紛争の圧倒 的な規模の 大きさ 紛争の被害 で苦しむ 人々の悲劇 かわいい罪の ないマウンテ ンゴリラが絶 滅する スズ (ハンダ) 日本の電子機器 の原料は紛争と つながっている タンタル (コンデンサ) 意識 タングステン (ICチップ) 銅 コバルト 銅、コバルト (リチウムイオン電池) これらの鉱石が使われているのは携帯電話だけではない 関心 カメラ ゲーム機 パソコン 行動 13 14 Photos: BigStockPhoto.com 「プレイステーション紛争」? 環境を守ることが紛争に影響を? • 電子機器のコンデンサに使われているタンタル • 世界のタンタルの6割以上がコンゴ民主共和 国にあると言われている • 2000年にタンタル不足が起きる(世界中の携 帯電話の急増が一つの原因) • 同年にプレイステーション2が発売されるが、タ ンタル不足が一つの原因で、供給が需要に追 いつかない • タンタルの値段が跳ね上がり、タンタルをめぐ る紛争が激化 • 電子機器にあるハンダはこれまで主に鉛でで きていた • しかし、鉛の自然環境への悪影響が原因で鉛 フリー化が進められている • そこで代替品としてスズが使われるようになり、 その値段が跳ね上がる • コンゴ民主共和国に豊富にあるスズ鉱山をめ ぐる紛争が激化 15 遠く離れた紛争に対して 「あなたは何ができる?」 「個人の気づき」と「DRC紛争への対応」 (対象:大学1年生) 紛争地から原 料をとってい る会社からも のを買わない 携帯電話をリサイ クルする、たびた び買い替えない 選挙権がもらえ たとき、信頼でき る政治家を選ぶ フェアトレード 商品を買う 16 • 多くの人は心が動かされ、何かしたいという意思 が見える まず紛争につ いて知る – 「もっと知りたい」 – 「平和になりますように」 – 「携帯電話をリサイクルする」 携帯電話をリサイクルする」 紛争について まわりの人々に 知らせる • そのような個人の反応が社会的インパクトを持 ちうるか? – 知って終わり – 他力本願 – 「自分ができることから・・・」の落とし穴 ご飯を残さず に食べる 17 18 3 DRC紛争への対応(マクロレベル)を ボトムアップ(個人の気づき・行動)で変えるために 「自分ができることから・・・」の落とし穴 企業が意識をする • 問題を構造化(構造の中に位置づける、構造 的な問題を暴く)させず、「個人」の責任に置き 換える • 個々人の気づきや行動を否定するのではない。 個々人の気づきや行動を否定するのではない • 個々人の気づきや行動を、「構造」自体の変化 にどう結び付けられるか? 原料入手方法が変わる 多くの人が知る メディアが関心をもつ 関心が増える 報道量が増える NGOに資金が流れる 人道支援活動が増える 政府が関心をもつ この仕組みを どう活かせば いいのか? 緊急支援が増える 紛争終結に向けた外交が増える 復興支援・開発支援が増える 19 20 グループワーク つながりから関心・行動へ 19:30~19:50 (20分) • 3~4人グループに分かれ、DRC紛争への対応 を変えうるような活動あるいはアプローチを考 変 う う 活動 え、付箋・模造紙を使ってまとめる 19:50~20:10 (各グループ2分、合計20分) • グループごとの発表 20:10~20:30 (20分) • ディスカッション 21 4