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コンクリートの 基本性質とは
第 1章 コンクリートの 基本性質とは 1–1 コンクリートの基礎構成 —— 結合材にはセメントの他にアスファルト、 硫黄、 石灰も コンクリートとは、砂や砂利、水などをセメントなど結合材で結合さ せたものであり、セメントで結合させたものを「セメントコンクリー ト」といい、アスファルトで結合させたものを「アスファルトコンク リート」といいます。一般には、土木・建築の資材として広く使われて いる「セメントコンクリート」をいう場合がほとんどでしょう。結合材 としては、このほかに、石灰、硫黄、プラスチックなどもあります。 石灰コンクリートは、セメントが普及する以前に活躍したもので、古 代エジプト、古代ギリシャ、古代ローマなどで見られるものですが、日 本国内ではあまり例がありません。その唯一の例ともいえるものが大阪 大空襲で消滅した「大阪府庁舎」で、中央棟の基礎に石灰コンクリート の材料が使われていました。そして「石灰コンクリートの結合材は炭酸 化して炭酸カルシウム(CaCO3)になるだけでなく、骨材やその粉末に 含まれるガラス相や粘土鉱物と化学的に反応して水和物を生成し、緻密 化することで硬化していると考えられた」という発表がされています。 一方、硫黄コンクリートは、温泉地の浴槽や下水管、下水処理施設な どへの利用が期待されているもので、改質硫黄と石炭灰での組成です。 改質硫黄というのは、溶融状態の硫黄に添加剤を加えることで、純硫黄 に比べ強度、難燃性、耐酸化細菌性などが向上します。添加剤には、合 成樹脂の原料として広く流通しているオレフィンなどを使用し、とくに セメントコンクリートに比べて 2 倍以上の強度と、強い酸性土壌でも腐 食しない耐酸性を持つとされるものです。温泉地や青森県の公共工事な どで実証が進められており、東京都でも試験施行を行っています。 プラスチックコンクリートは、モノマー、ポリマー、液状レジンなど を用いて、物性を改善したコンクリートのことで、この一種の「レジン コンクリート」は、セメントや水を使わずに熱硬化性樹脂と、砂、砂 8 1945 年大阪大空襲で焼失した旧大阪府庁舎の基礎部分 府庁舎建物は煉瓦造り 2 階建で、建坪 416.37 坪、延坪 830 坪。外装は石灰モルタル塗り、中央棟の基 礎に石灰コンクリートが使われていた。 正面玄関屋上中央にはドームを置き、大時計を備え、内部中 央の円形ホールは吹き抜けになっていた。設計はキンドルともウォートルスとも伝えられ、図面だ け写し取って日本人が建築したという伝えもある。 1878 年(明治 7 年)から 1926 年(大正 15 年)ま で庁舎として使用され、後、 「府工業奨励館」 として使用されたが、1945 年の大阪大空襲で焼失した。 硫黄固化体の組成 粗骨材 硅砂・石炭灰 細骨材 水 改質硫黄 セメント セメントコンクリート 硫黄固体化 第 1 章 コンクリートの基本性質とは 9 結合材によるコンクリートの主な種類 石灰コンクリート 硫黄コンクリート コンクリート プラスチック コンクリート アスファルト コンクリート セメントコンクリート セメントが普及する以前に活躍したもの。 炭酸化して CaCO3 になり、化学的に反応して 水和物を徐々に生成し、緻密化することで硬化。 温泉地の浴槽や下水管、下水処理施設などへ の利用が期待されているもので、改質硫黄と 石炭灰で組成。各地で実証が進められている。 モノマー、ポリマー、液状レジンなどを用いて、 物性を改善したコンクリート。 「レジンコンク リート」は、セメントコンクリートの数倍の強 度を有する。 砂や砂利、砕石などの骨材と、石粉(フィラー) にアスファルトを加熱混合したもので、道路舗 装に代表される。 セメント、水、細骨材(砂) 、粗骨材(砂利)、 混和材料から構成されているもので、コンク リート中に占める体積では、粗骨材が最も多く、 次いで細骨材、水、セメント、混和材料の順。 コンクリートの組成 粗骨材 細骨材 セメント ペースト コンクリートとは(簡略図) セメント 水 砂 セメントペースト モルタル コンクリート 10 砂利 利、軽量骨材を使用します。樹脂と触媒による重合反応で硬化させるた め、緻密でセメントコンクリートの数倍の強度があります。また、混和 剤にポリマー(重合体)を加えたセメントコンクリート(ポリマーセメ ントコンクリート)をプラスチックコンクリートと呼ぶ場合もありま す。使用するポリマーにはスチレンブタジエンゴム(SBR)や、ポリ酢 酸ビニル(PVAC)などがあります。 アスファルトコンクリートは、通称「アスコン」と呼ばれ、砂や砂 利、砕石などの骨材と、石粉(フィラー)にアスファルトを加熱混合し たもので、主に道路舗装や、堤防護岸の防水などに利用されています。 道路舗装でアスファルトが圧倒的に多いのは、使用できるまでの時間が 短いことや、コストが安い点が最も大きい要因でしょう。とくにコスト については、コンクリート舗装の約 30 分の 1 程度とされています。 そして、コンクリートの代名詞ともいえるセメントコンクリートは、 セメント、水、細骨材(砂)、粗骨材(砂利)、混和材料から構成され、 コンクリート中に占める体積では、粗骨材が最も多く、次いで細骨材、 水、セメント、混和材料の順となりますが、強度や耐久性、施行性など によってその配合は変わってきます。セメントコンクリートを称して 「セメント」という人もいますが、セメントはコンクリートを組成する 原料であり、セメントと水をこねたものが「セメントペースト」であ り、セメントと砂、砂利、水をこねたものが「生コンクリート」で、セ メントに水と砂を加えてこねたものが「モルタル」です。つまり、コン クリートとは、セメントペースト、モルタル、そして、それに砂利を加 え、こねたものということです。コンクリートが凝固する以前の状態を 「フレッシュコンクリート」 (生コンクリート=生コン)と言います。 コンクリートの〝生命線〟は水と前述しましたが、添加する混和剤の 進化によって、最近ではコンクリートの弱点を可能な限り克服しようと するものができていますから、この混和剤の使い方もコンクリートの質 を大きく左右するものです。 第 1 章 コンクリートの基本性質とは 11 1–2 セメントは水酸基結合、 水素結合、 ファンデル ワールス結合などで凝集・接着力を現す 「セメント」といえば「コンクリート」と結び付くほど、コンクリー トの代名詞ともいえるものですが、「セメント」とは、石灰石、粘土、 珪酸原料、酸化鉄原料、石膏を主な材料としているものです。これを焼 成窯の中で約 1500℃で焼成(クリンカ)し、それを急冷して石膏を加 え粉砕して微粉状にしたものです。クリンカを構成する鉱物は、「エー ライト」「ビーライト」「アルミネート」「フェライト」──があり、通 常(ポルトランドセメント)の場合、エーライト、ビーライトが約 80%、フェライトが約 20%という比率です。鉱物にはそれぞれ特性が ありますから、その特性に応じてセメントの種類も様々です。つまり、 鉱物の配合を変えることによっても違う種類のセメントがつくられると いうことです。 セメント原料の大きな特徴は、すべてが国内で調達できるということ で、そのために大量に生産でき、運搬も容易で、かつ、安価であること でしょう。一般にセメント 1 トンを生産するためには石灰石が約 1200 キ ログラム、粘土が 240 キログラム、珪石が約 40 キログラム、鉄原料が約 30 キログラム、石膏約 30 キログラムが必要とされています。ちなみ に、 「セメント」という言葉は「糊」を意味します。 セメントの水による水和反応は、一般的に経験できる代表的な無機化 合物の水和といえるものです。 セメントは、水と接触したときから水和が始まり、徐々に硬化しま す。水とセメントが反応し、それによって微細粒子が析出してセメント 粒子間を埋めていきます。 さらに、その面積が増加し、そして固まることによって強度が出てき ます。 セメントは、カルシウム、珪素、アルミニウム、鉄などの元素で構成 12