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麻 酔 科 研 修 マ ニ ュ ア ル 初 級 編
麻酔科研修マニュ アル初級編 e. (1年目の 年目の麻酔科研修 麻酔科研修で 研修で必要な 必要な事項をまとめました 事項をまとめました) をまとめました) Ⅰ. 研修の 研修の心得 麻酔中は少なくとも、5 分に一度は、モニター(血圧、心電図、パルスオキシメータ、カプノグラム、換気量、気道内圧、体温)、尿量、麻 酔ガスの流量、気化器の濃度と残量、輸液速度と残量、手術野をざっと見回すこと。 f. 人工呼吸器に頼りきりにならないこと。麻酔中、患者さんは自分で呼吸できないということを忘れないよう。 g. 薬剤を注射器に吸う時は必ずアンプルを確認の上、希釈したらその濃度(mg/ml)を名前と共にその場で直ちにシリンジに記載すること。 添付シールもうまく活用する。エフェドリンやネオシネジンにはさらに内筒に赤線を、ニカルピンには黒線でマークしましょう。薬剤を投 A.医師 A.医師として 医師として 与する時は注射器に記載してある薬剤名と濃度を確認した上で投与すること。指を差し、声に出すくらいの慎重さが必要です。雑談を 1. 患者さんとの信頼関係を築く努力をしてください。まずはあいさつと自己紹介を忘れないように。また思いやりをもって接してください。 したり考え事をしながら薬剤を吸ったり投与していたりしていると誤投与するので注意。何も記載がない注射器の薬剤は使用しないで 麻酔については、患者さんの理解度に応じてわかりやすく丁寧に説明を行ってください。 捨てて下さい。 2. 3. 4. 患者さんの身になって診療を行ってください。自分が受けること自分の肉親が受けることを想定して、丁寧に診療をおこなってくださ h. 自分の行った診療行為は必ず麻酔記録に記載をし、手術票にも使用した薬剤や処置などをそのつど記載漏れがないようにすること。 い。点滴、ブロックなど侵襲を伴う処置は特にそうです。 i. 毒薬(エスラックス、マスキュレート、レラキシン)、揮発性吸入麻酔薬、麻薬(フェンタニル、アルチバ、モルヒネ、オピスタン)、ペンタジ 身なりを清楚にしてください(特に院内で)。麻酔科は術前には1度会う程度ですので、第一印象が重要です。 ン、レペタン、セルシン、ドルミカムの扱いには注意。毒薬、麻薬、向精神薬はアンプルを破棄せず、薬剤部に返します。麻薬に限って 周囲の医療スタッフに対して:医療は医師のみの働きで成り立っているのではありません。患者さんをケアする看護師、機器を管理す は使用しなかった残液は注射器に吸ってこれも薬剤部に返します。毒薬はその場で吸って、空バイアルはもどし、記帳します。総数 る臨床工学士などとのチームワークが必要ですので、協調してやっていきましょう。 (未使用、空)をきちんと数えること。麻薬伝票の書き方はリカバリに張ってあるので、参考にしてください。不正な使用は法に触れること になります。 B.麻酔科医 B.麻酔科医として 麻酔科医として 1. a. j. た場所に捨てること(一般ゴミではないので注意)。 一般 麻酔科医の役割は患者さんの苦痛を取り除くこと、手術のしやすい環境を提供し、患者さんの手術が少しでもうまくいくよう配慮すること ゴミを分別して決められたところに破棄すること。【手術部利用の心得】を参考にしてください。自分の使用したマスクや帽子も決められ k. 清潔の概念を徹底させること。まずは自分の手を清潔にすること。処置の際は使い捨ての手袋を使用し、マメに交換すること。一人の患 です。麻酔は治療ではなく、治療のための手段です。そのために患者さんが肉体的精神的苦痛を被ることがあってはなりません。 者に関わったら、次の患者をみる前に必ず手洗うか、またはアルコール消毒を行うこと。麻酔科医が感染の媒介になってはいけません。 b. 自分の健康管理に注意すること。翌日の勤務に差し支えるような夜更かし、飲み歩きはしないこと。そのような行為は翌日が休みの時 麻酔着の上に白衣を羽織って手術室外へ出てはいけません。 靴下、帽子、マスクも着けたまま出てはいけません。 c. 麻酔薬、麻薬、劇薬など悪用してはいけません。 d. 麻酔記録など患者さんの個人情報をむやみに持ち歩いたり、放置したりしないでください。 にすることです。疲れたら早く寝る。遅刻、麻酔中の居眠りは厳禁です。 e. 朝はカンファランスの始まる8時までに麻酔の準備を終えること。麻酔中の昼休みは原則30分です。勤務の終了はインチャージか当直 医に従ってください。 2. 麻酔業務 a. 麻酔を担当することになった患者さんには必ず術前に面会しておくこと(例外:超緊急手術)。自分自身で担当する患者さんの術前診察 顕微鏡手術(脳外、眼科、耳鼻科、形成など)では決して手術台に手を触れたり寄り掛かったりしてはいけません。その場合、三方活栓 は手術台にむやみに固定せず、手元の麻酔器に固定するようにして下さい。 m. 麻酔中は、周囲に影響するような私語は差し控えること。雑談、考え事をしながら仕事をするとい集中力に欠け、薬の吸い間違いや誤 n. 導入抜管、体位変換などの大切な時は、必ず教官を呼んでください。 o. 手術室外に出て行くときは、かならず、IC に声をかけてから出かけてください。PHS をオンにすることも忘れないよう。 p. 手術や麻酔のスケジュールはしばしば変わりますので、毎日、控え室の予定表を確認してください。 q. 患者診療上のミス、ニアミスは報告義務があります。インシデントレポートを書くことになりますので、くれぐれも間違いのないよう注意し 他人(患者さんだけでなく外科医、看護師、他の麻酔科医)との意志の疎通をしっかりと図ること。わからないこと、あいまいなことは確 認するとか、念をおすようにしてください。 f. l. 投与を起こすこともままあるので注意。 て下さい。 をし、麻酔承諾書をとるのが理想ですが、麻酔に携わっていて他の人に診てもらっている場合もあります。その場合、顔だけでもあわ せておいてください。当日早朝でもよいです。情報不充分な部分は自分で確認しておいてください。術後も必ず、一度は回診すること。 麻酔上の問題が生じた場合には、解決するまでフォローを続けること。 b. 麻酔のプラン(麻酔法、モニタリングなど)を頭に描きながら、麻酔の準備を行っておくこと。わからないことは前日までにICか担当の指 c. 早く麻酔の流れや段取りを覚えること。導入時、抜管時はあわただしいし、トラブルが発生しやすいので気を抜かないように。次に何を 導教官に聞いて下さい。麻酔導入時は少なくとも患者管理にのみ集中できるよう、段取りを予め整えておくこと。 したらよいか、先を読みながら行動することが重要です。 d. 麻酔中は自分の身の回りの整理整頓を心がけること。麻酔器や麻酔台車などの周囲が散らかっていたり、ライン、パイプ類が混線して いたりしていると、事故を起こしやすいし、急変にもすぐに対応できません。 それでは、 それでは、実りのある研修 りのある研修ができますことを 研修ができますことを祈 ができますことを祈ります。 ります。 Ⅱ. 手術室の 手術室の利用法 E. 手術部利用の 手術部利用の心得 1. A. 手術部への 手術部への入室 への入室 1. 2. 職員は5階手術部・ICU スタッフ通路を通って、手術部更衣室に入り、5階廊下下駄箱で一般靴を専用サンダルに履き変えます。スノコの 上はサンダルや外履きで上がらないこと。更衣室にて麻酔着に着がえ、靴下、帽子(研修医は青です)、マスクを正しく装着します。更衣 衣類について:麻酔科医は麻酔着を必ず着ること。手術部内のユニフォームは色で職種を識別している。 手指消毒の徹底について:5階、6階昇降時には必ず階段踊り場のウェルパスを用い手指消毒を行うか、手洗い場で消毒せっけんを用 いて手を洗うこと。また、感染症手術室から出るときも、付近の手洗い場で手洗いする。 3. 感染症への対応:梅毒、HB、HC、HIV を手術申し込み時の各科必須検査項目としているが、その他、MRSA、緑膿菌、CJ、など感染症対 衣類(衣類、帽子)の色は職種によって識別できるようにしてあるため誤らないこと。例は更衣室ドアに掲示してあります。 応しなければならないことが多い。術前回診時に報告漏れが無いか、カルテ、端末を精査すること。患者搬送、管理ではベッドチェンジ 2. 6階への階段途中に消毒薬が設置してあるので揉み手洗いすること。 ャ-、リカバリを使用しない(手術室各室で観察して、チェンジホールでストレッチャを乗り換える)。感染症手術室では、サンダルを履き 3. 患者さんや他部所の大型機材は6階患者出入口から出入りします。 替える、手袋をする、血液、分泌液の拡散を防止するなど、手術室内の清潔維持に配慮する。不用意に該当手術室に物品を持ち入れた り持ち出したりしない。 B. 患者さん 患者さんの さんの入室時刻 朝一番に開始される症例は原則として男性は 8 時 30 分であり、女性は8時 40 分です。例外として心臓手術の入室は8時 20 分。それ以外の 4. 手術部清潔区域内では、塵埃を巻上げないよう静かに歩くこと。 5. 持ち込みについて:6階へは不必要なものは携帯しない。止むを得ない場合消毒アルコ-ルで正面を清拭する。各手術室へも最小限 症例については急患症例を含め、オンコールと指示します。オンコール入室患者の入室時刻は、当日、手術部・麻酔科医・執刀医・病棟が協 を携帯すること。 議して決定されるので、記載されている予定時刻どおりにはなりません。 6. C. 手術部からの 手術部からの退室 からの退室 7. 患者さんへのマナー:患者さんに不安を与えないため、特に患者さんの前では不注意なあるいは粗野な言動を慎むこと。 1. 各自の使用した機器、特殊薬は、各自責任を持ってもとのところに戻す。また、洗浄や、消毒、滅菌が必用な場合、適宜とりおこない片付 8. 備品の使用について:その使用法を事前に熟知しておき、慎重に取り扱う。位置を変えたもの(機材庫よりなど)は本人の責任で戻してお 2. 感染性微生物の手術部外への拡散を防止するため、退室の際にも手を洗う。 3. 手術部における診療が終了し、手術部を離れる場合は、麻酔着のまま退室してはいけない。更衣室にて必ず更衣をすること。ロッカー 飲食について:清潔区域には飲食物を持ち込んではならない。必要な場合は5階ラウンジで飲食すること。その際には、食器の後片付 けやごみの処理は各自責任をもって行うこと。 く。壊した、故障を発見した場合はすぐ各科上司に相談し、放置しないこと。 けること。不明点は各科上司または手術部職員に相談し、不潔なまま放置しておかない。 4. 5. 9. ゴミの捨て方:手術室内のゴミは一般廃棄物、医療廃棄物など混在し、廃棄場所が決められている。間違えた場合、回収してくれないこと もあるので。所定の位置に捨てること。手術室内には6ヶ所のゴミ捨て場がある。 に鍵も戻す。 a. 手術台下灰色の金属ゴミバケツ: 血液、体液など感染源となる恐れのあるもの 入退室時に各自が使用したサンダルは所定の下駄箱に収納すること。ただし、患者体液が大量に付着したサンダルと手術部外で使用し b. 台車横黄色プラスチック箱: 針、ガイドワイヤ-、鋭利なもの、アンプル等人を損傷する恐れのあるもの たサンダルは、コンタミネーションを避けるために下駄箱横の函に入れること。 c. 台車上右金属トレイ: 主にアンプルなど危険物。最終的に黄色小箱に捨てる 患者さんの搬送で病室や ICU へ行く場合は、着衣・サンダルともそのままでよい。その後、戻るときは5階更衣室へ戻り、着替えをするこ d. 麻酔台車横ビニ-ル袋: 危険物、体液汚染のない紙、ビニ-ルなど と。6階患者搬送経路から手術部へ戻ってはいけない。 e. 部屋角大型トレイ上段: 輸液ボトルなどポリ点滴容器 6. 更衣の際は脱いだ麻酔衣、靴下、マスク、帽子は所定の篭、ゴミ箱へ分別廃棄する。 f. 部屋角大型トレイ下段: ガラス点滴容器 7. ロッカーは退室時カラにし、個人所有しないこと。 g. 燃えるゴミ、燃えないゴミ専用ゴミ箱: 消毒や体液で汚染されたものや危険物は捨てない D. 更衣室および 更衣室およびロッカー およびロッカーの ロッカーの使用について 使用について なお a)、b)に関しては内容物は破棄しなくてもよい。プロシール LMA やブジーは再利用するので捨てないこと。 1. 更衣室の使用時間は原則として7:00から21:00である。この間に更衣し、ロッカーを空けること。 手術部職員を含めた医療従事者のみならず、清掃職員や患者さんの不必要な受傷、感染を避けるため、ゴミは必ず所定の位置に廃棄する。 2. 浴室の使用も1)の時間内とするが、8:00から10:00までは清掃のため使用禁止。また、当日手術部利用者以外の使用を禁止する。 3. 時間外に緊急手術が行われたとき、所定時間内に手術が終了しなかったときは、手術終了後30分まで更衣室を解放する。それ以降は F. 薬剤、 薬剤、器材、 器材、機器の 機器の配置 施錠するので、手術が終了したらできるだけ早く更衣すること。 4. 重品はロッカーの中に入れないこと。 5. ロッカーの鍵は紛失しないよう十分注意すること。 6. 使用後の手術下着は所定のかごに手術下着/靴下/帽子マスクに分別して収納すること。脱ぎ捨ててはいけない。 1. 薬剤⇒ 麻酔準備室(次以外の大部分)、リカバリ(毒薬、セボフルラン、吸入薬)、 麻酔台車、保冷庫(へパリン)、保温庫(よく使用する補液製剤)、受け付け(向精神薬) 2. 麻酔科機器⇒ 麻酔科控え室(測定機器など)、麻酔科控え室(緊急気道確保カート) 大型機材室(光源、エコー、INVOS など)、リカバリ(ファイバー、DC、搬送モニタ、ネブライザ) 3. 麻酔科消耗品⇒麻酔準備室(チューブ、LMA、回路)、麻酔科控え室(特殊エアウェイ、ファストラック、ブジー) 倉庫(静脈留置針、延長チューブ、胃管、点滴セット) Ⅲ. 麻酔に 麻酔に先立って 先立って B.回診 B.回診 1.問診の 問診のポイント A. 回診前 慣れないうちは聞きたいことのポイントを考え、術前回診記録に質問事項(現症など)をあらかじめメモしておく。 1.術前回診に 術前回診に必要な 必要な書類 a. 患者さんに 患者さんにお さんにお会いしたら いしたら 術前に必要な書類は5点。a. 手術術前個別情報、b. 麻酔に関するインフォームドコンセントの説明書、c .麻酔を受ける患者さんへ(麻酔の 挨拶をし、名前を名乗り、相手の名前を確認する。「明日(あるいはそれ以降)の手術の際の麻酔の説明に伺いました」と告げる。代わりに説明 パンフレット)、d. 麻酔前指示書、e. 術前回診記録(CAP システムよりプリントアウト)です。 に来た場合には、「担当医は今、麻酔中で伺うことができませんので、私が説明を行い、担当医に申し送りたいと思います」と伝える。 a. b. 問診の 問診の各論 手術術前個別情報 予定開始時刻や術式、依頼麻酔法、担当医などが記載されています。定時手術は前週の木曜日夕方に決まります。入室時間は手術部入室法 ①既往歴 に記載した通りで、朝一番の手術以外はすべてオンコールとなりますので、指示書にはそのように記載してください。また依頼されている麻 心疾患、高血圧、糖尿病、肺疾患、喘息、心疾患、目の病気(緑内障を想定して)、アレルギー、手術の既往など麻酔に影響しそうな疾患は、確 酔法が必ずしも適切ではない場合がありますので、手術内容や患者さんの状態、希望などを総合的に判断して決めることもあります。 認の意味をこめ、一つ一つ挙げて有無を尋ねる。上記疾患や重要臓器の疾患があれば、詳細を問診する。前もって分かっている合併症や稀 b. な合併症は、あらかじめ患者に会う前によく調べること。また、あまりにコントロールが悪い全身疾患をもつ場合や、疾患の精査が十分にされ 麻酔に関するインフォームドコンセントの説明書 麻酔説明者、患者さんの氏名、麻酔担当者、指導医などの名前を記入し、予定されている麻酔法、モニタリングなど該当する箇所に丸を記入 ていない場合、追加で検査やコンサルトが必要となったり、中止とならざるを得ないこともあるので、よく調べた上、指導教官と相談する。 します。特別な事柄は、別に記入する必要があります。 例)問診の項目 c. 麻酔を受ける患者さんへ(麻酔のパンフレット) (ア) 狭心症 : 胸痛の頻度、最終発作、持続時間。普段の活動度、内服薬の有無、舌下錠の効果、今までの治療法など 麻酔の説明の際の参考として使用してください。もう作成してから 15 年近くたちますので、前投薬など現状にそぐわないところもありますが、 (イ) 高血圧 : 内服薬を服用しているか。普段の血圧、高血圧による症状、いつからかなど 大まかな流れを説明するには問題はありません。 (ウ) 糖尿病 : 治療法(内服かインスリンか)、合併症(腎、神経、目など)、無症候性MI にも注意 d. (エ) 喘息 : 最終発作、そのときの治療、普段の内服や吸入薬、頻度、いつからかなど 麻酔前指示書 おもに、術前の眠剤、経口摂取、当日の内服薬、入室時刻の指示になります。内服薬とその効能を確認し、必要なものは「コップ半分の水で内 (オ) 手術歴 : 手術をしたことがあれば、そのときの麻酔法と状況。骨折など怪我も含めて。 服させて下さい」と記載してください。内服薬については後述します。 (カ) アレルギー歴 : アレルギー物質とそれに触れた時の反応について問診。 e. 薬 : 局麻薬は過量投与、血管内誤注入によるものが多く、アナフィラキシーショックは実際には少ない。局麻の種類、そのときの状況、 術前回診記録 プリントアウトした白紙の術前回診記録に電子カルテから得た情報を手書きで記載する。患者さんに会わないとわからない事柄は、病室で確 歯科治療歴などを参考にする。 認します。 食べ物 : 卵、大豆 プロポフォールは使用不可。 さば : プロタミンの使用は注意深く行う。 2.検査データ 検査データの データの評価 テープかぶれ : 使えるものを確認する。 アルコールかぶれ:イソジンやヘキザックで代用。 a. 造影剤(ヨード) : イソジンは使用不可。 胸部レントゲン:異常陰影、気管径と走行(気管チューブや挿管法の参考に) b. 腹部レントゲン:ガス像、椎体の変形、棘間のあき具合 c. 心電図:虚血変化、リズム、レート d. 末梢血:赤血球(原因不明の急激な貧血は注意)、白血球(炎症や免疫能の評価)、血小板(10 万以下では穿刺時の出血、5 万以下で e. は、急性アルコール中毒でもない限り問題にならないことが多い。 は外科手術に差し支える。血小板輸血入手には時間がかかるので注意) (ク) 家族歴 : 悪性高熱を念頭に置き、問診する。血縁関係にある人が手術中又は後に、重篤な合併症を起こしていないか聞く 生化学:異常値は、安定しているものか、急激に悪化しているものかを評価。手術によって改善が見込めるならよいが、手術によって (ケ) 現病歴 : 麻酔と関係ありそうな手術歴や病歴は詳しくそれ以外は簡潔に。 さらに悪化が見込まれるなら要検討。 (コ) 現症 : 肝逸脱酵素、Cr、Cr クリアランス(腎障害で特に)、空腹時血糖、HbA1C(糖尿病で特に)、 f. ゴム、ゴム手袋 : ラテックスは使用不可(キゥイフルーツも注意)。 (キ) 喫煙、飲酒歴 : 何年間何本吸っていたか。吸っている人には、呼吸器系の合併症が周術期に多いことを説明し、禁煙させる。飲酒 g. 性、麻酔の種類などにより延期はケースバイケースなので、指導教官と相談する。 感染症:梅毒、HB、HC、HIV、MRSA など。1 か月を過ぎたものは無効です。 h. 風邪、発熱、上気道症状(咳、痰、)の有無について尋ねる。 現在の健康状態が最もよい状態かそれに近い状態であることを確かめる(緊急は除く)。風邪を引いている場合、手術の緊急 凝固系:PT、APTT(下参照) 硬膜外穿刺・ 硬膜外穿刺・脊髄くも 脊髄くも膜下穿刺 くも膜下穿刺の 膜下穿刺の基準(カテーテル抜去時も同じ) 基準 血小板 8 万以上、 万以上、 出血時間5 出血時間 5 分未満、 分未満、 PT70% PT70%以上、 以上、 APTT39 秒以内、 秒以内、 ACT150 秒以下 これらを満たさない場合には原則、全身麻酔とする 呼吸困難・いびきの有無 胸痛の有無 普段の生活度も参考にする。 階段を駆け上がって胸痛があるのか、家でほとんど動かなくて胸痛がないのか。 体重減少: 体重の大きな変動がないかを尋ねる。 出血傾向: 採血後の止血、歯磨き時の出血、青あざの出来易さなど具体例を挙げて聞くとよい。 2.その他 その他の診察と 診察と総合評価 3.患者さんへ 患者さんへの さんへの麻酔の 麻酔の説明のしかた 説明のしかたの のしかたの例 a. 聴診: 必要に応じて(呼吸器疾患、感冒症状、小児など)。女性患者さんには配慮が必要です。 問診終了後、麻酔の説明をします。専門用語を避け、分かりやすい言葉を使います。麻酔とは関係ない患者さんの病状について説明する必 b. 気道評価: 要はありません。 開口させ、歯間距離が何cm か?舌を前に出し Mallampati 分類、甲状軟骨頤間距離、 頭頚部可動域、下顎前歯を上顎前歯より前に引き出せるか?歯牙の状態、 c. 硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔を受ける場合 a. 前の夜から入室 から入室までの 入室までの流 までの流れ 例)「手術前夜の夕食はいつも通り、食べられます。しかし夜 9 時以降何も飲んだり食べたりしてはいけません。麻酔の前には胃の中を空にし 刺入部位を確認(棘突起、皮膚病変の有無の確認)する。(特に肥満者) d. 動脈ライン挿入予定の場合 ておきたいからです。朝は、うがいや歯磨きは大丈夫です。薬を飲むときはコップ半分程度の水なら大丈夫です。8時30分(女性は8時40分、 その他は連絡を差し上げ次第)に手術室に着くように病室をでます。手術室では、心電図や血圧計をつけた後、腕から点滴をいれます(朝1 番 Allen’s test⇒側副血行路の確認と、橈骨動脈、尺骨動脈どちらが優位かをみるためのテスト。橈骨動脈、尺骨動脈を強く圧迫し患者に のみ。オンコールは病室で入れてもらいます)。」 手を開閉してもらう。開いた状態で、尺骨動脈の圧迫を解除し、手全体の赤みが直ぐに戻れば、尺骨動脈からの血行は保たれていると b. 各麻酔の 各麻酔の説明の 説明の仕方 考えられる。 e. ASA 分類、NYHA 分類、Hugh-Johns 分類などを用い、総合評価をする。(表) ①全身麻酔 ※通常の 通常の例) ASA 術前状態分類( 術前状態分類(Physical Status) Status) 一部改変 「マスクから酸素を吸っていただきます。点滴から眠るお薬が入るとすぐ意識がなくなります。点滴を入れたところが痛むかも しれません。その後、口から、喉の奥にチューブを挿入し、麻酔中呼吸を補助します。このチューブは麻酔のガスや酸素を送るためにとても *PS1 PS1: PS1 器質的、生理的、生化学的、あるいは精神的な異常がない。手術の対象となる疾患は、局在的であって全身的障害を引き起さないもの。 大事なものですが、チューブを入れる時に、歯に入れる器具が当たって、歯がグラグラになったり、折れてしまったりすることもまれにありま 例:鼠径ヘルニアあるいは子宮線維腫などがあるが他の点では健康な患者 す。チューブは、手術が終わって麻酔からお目覚めになった時にはずしますが、その後、一時的にのどが痛かったり、声がかすれたりするこ *PS2 PS2: PS2 軽~中度の系統的な障害がある。その原因としては、外科的治療の対象となった疾患またはそれ以外の病態生理学的な原因によるもの とがあります。また、麻酔中に高熱を出す人がまれにいますが、血縁関係にある方でそのような話を聞いたことがありますか?」 例:身体活動が軽度に制限されるような心疾患、軽度糖尿病、本態性高血圧、貧血(新生児および80歳以上の老人では特に系統的な疾患がなくともこの群に入る)、極度の肥満、気管支炎 ※意識下挿管の 意識下挿管の例) *PS3 PS3: PS3 重症の系統的疾患がある。この場合系統的な障害をおこす原因は何であってもよいし、はっきりした障害の程度を決められない場合でも差し支えない。 頸椎疾患や挿管困難症例では意識下挿管が必要になります。 例: 身体活動が高度に制限されるような心疾患、重症糖尿病で血管系の病変を伴うもの、肺機能の中~高度障害、狭心症または一旦治癒した心筋梗塞のあるもの 「全身麻酔のためには喉にチューブを挿入しなければならないのですが、通常の方法では頚に負担がかかり、危険です。頚に負担をかけない *PS4 PS4: PS4 それによって生命がおびやかされつつあるような高度の系統的疾患があって、手術をしたからといってその病変を治療できるとは限らないもの ようにするために、少し意識の残った状態で内視鏡を使いながら、鼻(口)からのどにチューブを入れさせてください。軽く鎮静薬を使い、苦痛の 例: 器質的心疾患で、安静時にも心不全症状があるもの、肺、腎、内分泌疾患の進行したもの 無いようにおこないます。喉の反射を押さえるために、喉に細い針を刺して、麻酔薬を注入します。喉にチューブが入りましたら、完全に眠ること *PS5 PS5: PS5 瀕死の状態の患者で助かる可能性は少ないが手術をしなければならないもの ができます。チューブは、手術が終わって麻酔からお目覚めになった時にはずします。手術後は、一時的にのどが痛かったり、声がかすれ 例: 動脈瘤破裂で高度のショック状態に陥っている患者、脳腫瘍があって急速に脳圧が上昇している患者。広範な肺梗塞のあるもの(この種の患者では麻酔よりも蘇生が必要) たりすることがあります。また、麻酔中に高熱を出す人がまれにいますが、血縁関係にある方でそのような話を聞いたことがありますか?」 *救急手術 救急手術: 救急手術 検査や準備が不足するので、定時手術よりもやや全身状態が不 不良と評価しておいた方がよい。E という字を上記各「度」の横に併記する。 合併症→誤嚥、歯牙損傷、悪性高熱、術後肺障害(無気肺)、アナフィラキシー 合併症 心疾患患者の 心疾患患者の能力による 能力による重症度分類 による重症度分類 (New York Heart Association) 歯牙損傷について:すべての患者に歯が破損する可能性があることを説明し、絶対に折れては困るという方は指導教官に相 1度 心疾患はあるが、日常の生活活動で疲労、心悸亢進、息切れ、狭心症状などをきたさず、身体活動を制限する必要がない。 談する。グラグラの方には前もってマウスガードを作っておくとか経鼻挿管という手もある。ぐらぐらの歯でも麻酔中に破損す 2度 心疾患はあるが安静時には何も症状がない。しかしふつうの身体活動で疲労、心悸亢進、呼吸促迫、狭心症状がおきる。軽度の身体活動制限が必要 ることは避ける。 3度 日常生活活動を軽度に制限しても疲労、心悸亢進、呼吸促迫、狭心症状がおきる。中等度ないし高度の身体活動制限が必要。 4度 高度の運動制限をしても心不全や狭心症があり、安静を守らない場合症状が増悪するもの ②硬膜外麻酔 ※ 例) HughHugh-Jones の分類 「全身麻酔を始める前に、手術後の痛み止めのための細くて柔らかい管を背中から硬膜外腔というところへ入れます。横になって エビのように丸くなっていただいて、背中から針を刺しますが、まず、細い針で痛み止めをしてから行いますので、あまり心配をしないでくだ 同年齢の健康人と同様に仕事ができ、歩行、坂、階段の歩行も変わらない さい。痛い時はおっしゃって下さい。針の中から細い管を通して、そこから手術中や病室で痛み止めを入れられるようにします。針や管を入 Ⅱ度 平地では同年齢の健康人と同様に歩行できるが、坂や階段は健康人並みには上れない れている時に強い痛みやビリっとした感覚がある場合がありますのでその時は直ぐに教えて下さい。気分が悪くなったりした場合にもすぐに Ⅲ度 平地でも健康人並みには歩けないが、自分のペースでなら1キロ以上歩ける 申し出て下さい。」 Ⅳ度 休み休みでないと50mも歩けない Ⅴ度 話したり、着物を脱いだりしても息切れがする Ⅰ度 合併症→悪心、嘔吐、低血圧、一過性下肢しびれ、硬膜外膿瘍出血など 合併症 ③脊髄くも膜下麻酔 b. 当日中止するもの ※ 例) ACE 阻害薬、AⅡ 拮抗薬、抗甲状腺薬、経口糖尿病薬、インスリン(ブドウ糖を投与しながら通常よりも少い量投与することもあります) 「横向きになってエビのように丸くなって頂いて、背中から細い針で痛み止めをします。引き続き、そこから針をさして麻酔の薬を入 れて終わりです。しばらくすると、お尻、足など下半身が温かくなり、しびれてきます。だんだん感覚もなくなります。上半身には麻酔はかから c. 前もって中止するもの ないので意識は残りますが、ご希望があれば手術中眠ることもできます。呼吸が苦しくなったり、気分が悪くなったり、手がしびれるような場合 三環系抗うつ薬(病状のコントロールによって間際まで必要)、メジャートランキライザー(病状のコントロールによっては間際まで必要) がありますので、その時はすぐに申し出て下さい。万が一、効きの悪いときや途中で効果がきれた時は全身麻酔になることもあります」 抗血小板薬(塩酸チクロピジン:10-14 日前に中止、アスピリン:7-10 日前に中止、塩酸サルポグレラートなど:2-3 日前に中止) TUR のように合併症の早期発見のために鎮静を避ける場合もあるので注意。 抗凝固薬(ワーファリン:7-10 日前に中止、へパリン6時間前に中止)、抗リウマチ薬(免疫抑制剤は週間前) 合併症→ 合併症 頭痛、悪心、下肢しびれ(もともと神経障害がある場合、全麻が望ましいこともある)、 d. ステロイドの補充について 全身麻酔への移行の可能性(合併症ではないが) 食道エコーや中心静脈カテ挿入など、合併症の発生率が高いと判断される手技についても、合併症を説明し承諾を得る必要があります。 c.麻酔後 プレドニン 5mg 以下内服している場合・・・・内服のみでさらなる補充は不要 プレドニン 5mg 以上内服している場合・・・・内服に加えて導入前後に補充 小手術では・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイドロコーチゾン 25mg ※全身麻酔の 全身麻酔の例) 「手術が終わると麻酔は程なく覚めてきますがしばらくはボンヤリとしています。手術の後は痰がたまりやすく肺の合併症 中等度手術(開胸開腹)では・・・・・ハイドロコーチゾン 50-75mg が多いので、深呼吸を意識的にし、痰を自分で出すようにします。痛みがある場合は、我慢せずに言って下さい。痛み止めを使うことができま 大手術(開心術、肝切、PD)では・・ハイドロコーチゾン 100-150mg す。硬膜外麻酔は術後も使えますが、それでも痛む場合には追加もできます。声のかすれが 2-3 日たっても全くよくならない時は主治医の ショック・敗血症では・・・・・・・・・・・・ハイドロコーチゾン 50-100mg を 6-8 時間おきに投与 先生にお申し出ください。」 合併症→ 合併症 ※ 脊髄くも 脊髄くも膜下麻酔 くも膜下麻酔の 膜下麻酔の例) 声のかすれ、無気肺、悪心嘔吐 「麻酔は 1-2 時間で切れてきますが、痛いときは早めに看護師に申し出てください。急に起き上がると頭が痛 7.術前回診を 術前回診を終えたら a. 麻酔承諾書をカルテに挟み込んでください(写しは患者さんに差し上げます)。 b. 指示書に、絶飲食の指示、入室時刻、内服薬の指示を記載し、サインをします。朝一番の手術は男性が 8:30、女性が 8:40 で、それ以 くなることがありますのでゆっくりと起き上がるようにしてください。もしも翌日以降頭痛がひどい場合には頭を低くして安静にしていてください。 外はすべてオンコールです(開心術では 8:20)。絶飲食時刻は小児を除いて原則は前日21:00。精神科ECT では当日朝食まで可で 水分を多めにとるのも有効です。頑固に続く場合は主治医の先生に申し出てください」 合併症→ 頭痛(20-50代の女性に多い、高齢者は少ない) す。内服薬は水コップ半分で内服させてください。 c. 指示書をコピーし、原本を担当看護師に渡します。ただ渡すのではなく、内容を口頭で申し送りながら確認してください。コピーは持 ち帰ります。 患者さんの 患者さんの理解力 さんの理解力に 理解力に応じて、 じて、わかりやすく説明 わかりやすく説明してください 説明してください。 してください。 d. 問診や診察から得た情報を術前回診情報に記載します。内服薬は商品名ではよくわからない場合が多いので、誰にもわかるよう一般 名と、効能をメモしておいてください。 4. 承諾書 手術をうける患者さんすべてに書いて戴きます。(緊急手術では各科でとってもらいます) 最後の7ページに麻酔説明医師と患者さんのサインを記入します。 未成年は法定代理人(親など)の署名が必要です。この場合、患者さんとの関係と住所も。 意識障害などで署名不可能の場合も代理人に書いていただきます。この場合、患者さんとの関係と住所も。 記入後、原本の一枚目はカルテに挟み、2 枚目は患者さんにお渡しします。 C.術前 C.術前回診後 術前回診後の 回診後の指示 1. 当日の 当日の内服薬、 内服薬、常用薬をどうするか 常用薬をどうするか a. 継続するもの 降圧薬(ACE 阻害薬以外)、 利尿薬、冠拡張薬、抗不整脈薬、抗けいれん薬、メスチノン、チラジン、ステロイド、テオフィリン(血中濃度が高い 場合には中止)、炭酸リチウム、H2 ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬、MS コンチン(経口モルヒネ) e. 手術室に戻ったら、CAP システムを立ち上げて、その患者さんの画面を予定リストから立ち上げて、術前回診情報に入力します。 f. 終了したら、麻酔科標榜医以上の先生に指示書、回診情報を見てもらい、問題がないか、麻酔方針や準備をどうするかについて確認 をしてもらい、サインをます。 g. 麻酔上の問題点、麻酔に必要な器材(V と A ライン、硬膜外、CV など)を申し送りの紙に記載します。 Ⅳ. 麻酔の 麻酔の準備 * 麻薬の使用後 残液とバイアルは破棄せずに、シリンジに残量と患者氏名を記載して返却します。外回りの看護師に‘何をどれくらい使用して、残液がいくら A. 麻酔器・ 麻酔器・麻酔回路の 麻酔回路の準備と 準備と点検 ある’と念を押してください。麻酔終了し、患者帰室後、伝票を記載し、使用者および管理責任者(槇田教授)の印鑑とサインをします。麻薬免許 患者さんに麻酔を施行する時には、必ず1回の麻酔ごとに事前に点検を行なって下さい。全身麻酔を行なわずに、脊椎麻酔などの各種ブ ロックで管理する場合も例外ではありません。麻酔科学会にて推奨される点検法がありますが、ここでは簡略化した方法を述べます。 1. 麻酔器の電源コード、モニターの電源コードがつながっていることを確認する。 2. 中央配菅システムの配管端末器(アウトレット)にガス供給用ホース(酸素と空気のみ)と余剰ガスホースをつなぐ。この際、ホースがから のない先生は指導教官の先生にサインだけしてもらい、記載と押印をお願いします。記入例はリカバリの机にあります。間違えは、二本線で 消して訂正印を押します。 2. 全身麻酔で使う薬とその準備 まないように注意する。 耳鼻科や脳外科のように麻酔導入時と手術中とで麻酔器が移動する場合がある。この場合には、手術中に麻酔 3. ① ルーチンに準備する薬剤 器がどこに移動するかを念頭に入れて、そこに近い供給源に配管する。 a. プロポフォールマルイシ(1A:200mg/20ml): 麻酔導入時に使用します。 蛇菅、バッグ、人工鼻および呼気サンプリングチューブを接続する。 b. エスラックス(1A:50mg/5ml): 毒薬につきリカバリルームにてシリンジに吸って、空きバイアルは戻します。 使用量と残りの未使用分の本数をノートに記載します(必ず実際に数を数えてください)。 (ただし、脊椎麻酔などの各種ブロックで麻酔を行う際には、人工鼻を装着する必要はありません。) 4. 麻酔器の電源スイッチを入れる。 c. アルチバ(1V:5mg): 前述のとおり。硬膜外併用ではあまり使用しません。 5. リークテストを行なう。 d. エフェドリン(1A:40mg/1ml): 10ml のシリンジに生理食塩水を 7ml+1A40mg(1ml)を吸って、5mg/ml となるようにする。 ドレーゲル社のジュリアン、シーメンス社のキーオンでは回路を接続し、パネルの表示に従って自動的に回路のテストを行う。 人工鼻 ② a. イノバン(150mg/50ml) 笑気ガスのパイピングがされていないことなどが画面に現れ、診断を中断するが、これは無視して続行する。 b. ネオシネジンコーワ 1mg(1A:1mg/ml): 10ml のシリンジに生理食塩水を 9ml+1A1mg(1ml)を吸って、0.1mg/ml となるようにする。 それら以外の機種では、用手的にリークテストを行う。APL(ポップオフ)バルブを閉じてYピースを指で塞ぎ、酸素をフラッシュして気道 c. レラキシン(1V:200mg): 10ml のシリンジに生理食塩水を 10ml 吸ってから、1V(200mg)を希釈して、20mg/ml となるようにする。 内圧を 30 cmH2O にする。10 秒間は圧が維持されることを確認するだけでなく、少量の酸素(1L/分未満)を流した時に、圧が少しずつ 毒薬なので、エスラックスと同じように記帳してバイアルを返します。 上昇することを確認する。 6. しばしば用いられる薬剤 にサンプリングチューブを接続し、APL バルブを 30cmH2O にしてから Y コネクタを所定の場所に接続しておく。ジュリアンは診断中に d. ディプリバン キット: 全静脈麻酔(TIVA)や脊髄くも膜下麻酔での鎮静で使用します。 麻酔を導入する前に、6L/分の酸素を流した状態で患者にマスクを当て、吸気弁、呼気弁の動きを確認し、回路に陽圧がかかることを確 3. 主治医より依頼された術中使用薬剤について かめる。 7. リークが起こりやすい場所 (原因): ①回路や人工鼻などの接続 ②吸・呼気弁につけているフィルターのひび割れ ③キャニスタのパッキン ④バッグの亀裂 a. 薬剤オーダーをまず主治医が確認し、指示書にサインしてもらう。 8. 始業点検で異常があったら、指導医に報告する。 b. 次に薬剤オーダーと現物を見ながら、麻酔科医は看護師とダブルチェックする。 c. 薬剤投与時には指導教官とダブルチェックの後に投与し、薬剤オーダーにサインをする。 B. 麻酔薬の 麻酔薬の準備 1. 毒薬・ 毒薬・麻薬・ 麻薬・向精神薬の 向精神薬の扱いについて・・・注意!! について 抗生物質、マニトール、ステロイドなどを主治医からの依頼で投与します。 抗生物質など、時間をおいてから繰り返し投与する場合がありますので注意してください。 麻薬は前日にリカバリ室の掲示板にオーダーを入れておきます。急に必要になった場合には看護師(PHS63314)または看護師リーダー C. (PHS67051)にお願いします。目安として、 1.チューブの チューブの準備の 準備の手順 全身麻酔のみ・・・・・・・・アルチバ1バイアル、フェンタニル1-3アンプル 全身麻酔+硬膜外麻酔・・・・フェンタニル1-3 アンプル 脊髄くも膜下麻酔・・・・・・フェンタニル1アンプル a. 気管挿管の 気管挿管の準備 術式や年齢、性別、気管の太さや走行などから、患者さんに見合ったチューブを選択します。上気道(喉頭蓋から気管にかけて) に病変が存在するか圧排をうけている場合にはCT も確認すること。成人男性なら7.5-8.5mmID、女性なら7.0-7.5mmID です。 b. 気管チューブは清潔に扱います(特に内腔やチューブが患者さんの気道に入る部分)。 c. カフに十分に空気を入れ、穴が開いていないか確認し、しっかりと空気を抜いて虚脱させておきます。 * アルチバは1バイアル 5mg を 50ml の生食で希釈し、三方活栓と細い延長チューブを接続し、シリンジポンプに設置します。内容液を明ら d. カフの周囲にキシロカインゼリーを塗っておきます(固まると気道閉塞を起こすので内腔には入れない) 。 かにするラベルもシリンジに貼り、延長チューブの遠位にもつけておきます。シリンジには‘患者さんの氏名’と‘ 残 e. スタイレットをまっすぐに延ばして、酒精綿で拭いてから、チューブの内腔に挿入します。その前にキシロカインスプレーで潤滑 を準備します。麻薬は当院では赤のシリンジに吸うことになっています。 ml’と記載しておくと、 返却時に残液量を記載するだけになります。 しておきます。先から先端がでない程度に挿入し、気管チューブのパッケージの外側からチューブがホッケー型になるよう曲げて * フェンタニルもラベルを貼って下さい。フェンタニルは硬膜外や脊髄くも膜下穿刺時に少量静脈内投与したり、硬膜外に投与したり、術後 おきます(程よく曲げなければ、挿入する意味はありません) 。 の疼痛対策として手術終了前に投与します。 2.特殊な 特殊なチューブと チューブと注意 c. フェンタニル: 穿刺前の鎮痛として 1ml 前後、術中の硬膜外鎮痛の補助として 0.5-1ml。 a. d. 持続硬膜外鎮痛: 0.2%アナペイン 200ml(100ml×2)をクーデックの持続バルーンジェクタに充填し、術後鎮痛に使用する。 眼科、耳鼻科、脳外科、甲状腺など頚部の手術、腹臥位手術ではラセン(スパイラル)チューブを使用します。チューブが折れた時 開腹手術ではレペタン 3-4A を加えることもある。 に対応が難しい場合にはスパイラルチューブを選択するということです。折れ曲がりに強いですが、内腔がつぶれるともとに戻ら ず、換気も吸引も出来なくなるので注意してください。 b. ラリンゴマイクロでは 6.0-7.0mm 前後の細いスパイラルチューブを挿管すること。チューブは右口角に固定し、バイトブロックは c. 上気道手術でレーザーを使用する際には、通常のチューブでは燃えてしまうので、レーザーフレックス(当院では 5.5mm)を使用 一緒に固定しない(手術終了時にかませること) 。 します。カフは空気ではなく、生理食塩水で膨らませます。 3.気管チューブ 気管チューブの チューブのサイズ選択 サイズ選択 E. 脊髄くも 脊髄くも膜下麻酔 くも膜下麻酔の 膜下麻酔の準備 1. 穿刺を行う前に必ず麻酔器および回路の点検、昇圧剤(エフェドリン等)、フェンタニル1Aの用意をする。 2. モニターの電源。CAPシステムを立ち上げる。 3. CAPシステムの麻酔記録を開き、セットメニューより脊麻メニューを選択し、薬剤等を入力しておく。 4. 予め消毒された脊麻セットが準備されている。台車の上で清潔、慎重に開封する。23Gもしくは25Gのスパイナル針、25G針、カット 年齢と気管内チューブの内径、固定位置 成人 絆をトレイに準備する。局麻薬は予め注射器に吸っておいてもよいが、この場合は清潔操作に注意する。 年齢 体重(kg) 内径(mm) 口角固定位置 (cm) 新生児 -3.6 2.0-3.0 10-11 1-4 ヶ月 4-6 2.5-3.5 11-12 4-12 ヶ月 6-9 3.0-4.0 12-13 1-2 歳 9-12 3.5-4.5 12.5-13 2-3 歳 12-13 4.0-5.0 14-15.5 3-6 歳 13-20 4.5-5.5 15-17 6-10 歳 20-30 5.5-6.5 16-20 10-12 歳 30-40 6.5-7.0 12-歳 35- 7.0- 男性 7.5-9.0 21-23 女性 7.0-8.5 20-22 5. 穿刺直前にガラスシャーレに入った消毒綿球に温めておいたヒビテンアルコールを注ぐ(これは患者さん入室後)。 局麻薬(1%キシロカイン10ml、0.5%マーカインまたはテトカイン)を用意しておく。 6. 鎮静には、ディプリバン50mlのキットを用意する。 F. 動脈ライン 動脈ラインの ラインの準備 1. へパリン生食の作成: 生理食塩水500ml バッグにへパリン 2m を混注し、バッグ内の空気を完全に除去する。 2. 圧モニターキット内を空気や気泡が残らないよう、へパ生で満たす。 3. 加圧バッグにくるんで、300mmHg 以上に加圧する。加圧後は圧が抜けないよう、三方活栓をロックする。 4. 圧トランスデューサのゼロ校正と圧の測定上の注意点 a. トランスデューサの三方活栓を大気に開放し(ふたには穴があいている)、心電図モニター上で、ゼロ点校正をする。 b. トランスデューサは心臓の高さに固定すること(手術台か点滴スタンドのトランスデューサホルダー)。 ★参考 c. 圧が加わっているとへパ生が少しずつ流れてくるので、途中の三方活栓をロックする。 1) 小児では20-25cmH2O 前後の加圧でリークが生じる程度のものが理想的。それ以下でリークが著しい場合は咽頭内をガーゼでパッキ ングするか、もう1ランク太いチューブを再挿管する。判断は指導教官に任せる。 2) 逆に挿管時に声門下通過時に抵抗が感じられる場合は、無理をせず細目のものに変更する。 小児では気管の最狭窄部位は声門下の輪状軟骨レベル。内径={4+(年齢/4)}mm という簡便な覚え方がある。 D. 硬膜外麻酔の 硬膜外麻酔の準備 1. 万が一に備えて、気管チューブは準備しておく。CAP には硬膜外麻酔のセットメニューを選んでおく。当院では通常、全身麻酔に併用 することが多いので、全麻+硬麻のセットメニュー。 2. 3. 硬膜外穿刺のためのセットの展開 a. 台車の上に滅菌済みのセットを清潔に広げる。1%キシロカイン 2A を薬杯にあける。 b. 消毒は保温庫のヒビテンアルコ-ルを患者さん入室後にあける。 硬膜外麻酔で使う薬の準備 a. 0.3%アナペイン : 50ml のシリンジに 0.75%アナペイン 20ml+生理食塩水30ml を吸い、延長チューブをつける。 b. エフェドリン: 必須。心疾患ではネオシネジンやイノバンも。 G. 患者さんの 患者さんの入室 さんの入室 1. 入室前までに麻酔の準備、CAP の立ち上げとセットメニューの入力、術中使用予定の薬剤の入力は完了してください。 2. 患者さんの入室を告げる一斉アナウンスがあったら、ベッドチェンジホールで患者さんを迎えます。 3. 挨拶と患者さんのネームバンドと自己申告してもらった名前が一致していることを、担当医、看護師とともに確認します 4. 承諾書など必要書類がそろっていることが確認されたら、各部屋へ案内します(歩きの時はゆっくりと足元に注意しながら)。 5. 患者さんを手術台に寝かせます(患者さんを手術台に腰かけますので、後ろに倒れないよう介助します) 6. CAP 上で、予定リストより該当患者さんを選択し、入室処理します。 7. 心電図、血圧計(点滴や手術部位と反対側)、パルスオキシメータ(血圧計や手術部位と反対側)を装着し、血圧は 2.5 分または 5 分おきに 測定開始します。 8. 麻酔記録を開き、呼吸、体位、入室時バイタルを入力します。点滴が入っている場合には輸液の残量と部位、太さも入力しておきます。 9. 点滴を挿入します(利き腕でない側に、必要であれば局所麻酔をしてから 18G 以上を刺入。難しければ 22G でも可)。 10. 麻酔記録に点滴の刺入部、輸液内容を入力します。 Ⅴ.気管挿管の 気管挿管の実際 10. 右口角のレベルでチューブを親指と人差し指でしっかり把持し、蛇管と接続して換気を開始する。 11. 気管内に挿管されていることをカプノグラムで確認し、血圧や脈拍、不整脈のないことを確認してから絆創膏で仮固定。 A. 酸素化 12. 聴診にて左右差確認(片肺挿管になっていないことを確かめる) 。リークのないことも確認。 *100%酸素を吸入させておくと、健常成人標準体型の患者さんでは8 分近くの無呼吸に耐えることができます(SpO2=85%まで低 下するのに502 秒かかります) 。肺胞内を純酸素で満たすには(脱窒素)、3-4 分の通常呼吸か、3-4 回の深呼吸で充分です。 *麻酔開始時刻は酸素投与を開始した時点からです。F12 を押して、麻酔開始のマークを入力し、酸素の流量も入力します。 B. Rapid induction の手順 1. アルチバを併用する場合にはあらかじめ投与を開始する(タイミングや体型、年齢により3-15ml/hr) 2. 汚染防止のため手袋をはめ、気管チューブ、カフ用注射器、喉頭鏡、エアウエイ、バイトブロック、絆創膏、吸引器およびサクシ ョンチューブ、聴診器を手元にそろえる 3. 患者に合ったマスクを蛇管に装着 4. SpO2、心電図、血圧を確認 ※ 挿管時の注意 5. 酸素を6 ないし8L/min で投与し、患者さんに断ってからマスクを顔に密着させ、軽く深呼吸をしてもらう。この時、バッグが膨ら 1. 歯や上唇を損傷しないこと。特に喉頭展開時に上の歯をてこの支点のようにしてしまいがちです。 6. み、呼吸に一致してへこんだり膨らんだりすること。呼気弁吸気弁が動くことを必ず確認すること。APL バルブを閉じておくと呼 2. 抵抗のある部位を無理に進めてはならない。 気を吐き出せなくなるので注意 3. 喉頭展開が不十分ならチューブを挿入しないこと。のぞいてみて見えなかったら、指導教官にその旨を告げ、もう一度換気を行い、 方針を仰ぐ。 少し時間をおいて、SpO2 の上昇を確認 7. プロポフォール、エスラックスで麻酔導入し、意識消失(消耗反射消失)または呼吸停止を確認 4. 声帯が直視できない場合、初めから挿管が難しいとわかっている場合には、絶対に挿管してはならない 8. 気道確保(頭部後屈、下顎の挙上)し、マスクをリークのないように当てて陽圧換気開始 5.挿入時に抵抗があるようなら1ランク細いチューブに変更すること。 とにかく挿管操作はすばやくかつ丁寧に行うこと。 9. 必要に応じてセボフルランも2-5%で開始 D. 挿管後に 挿管後に行うこと 10. 十分、筋弛緩が得られたら挿管 1. 麻酔ガスの調整:直ちに酸素濃度を40%程度に下げ、セボフルラン濃度を1-1.8%にする。 アルチバは手術開始前まで、投与速度を下げる場合もある。 ※ マスク換気 マスク換気が 換気が難しい時 しい時の対応 a. 経口エアウェイを使用する b. 両手で下顎を挙上しながらマスクを密着させ、誰かにバッグ換気をお願いするか、人工呼吸器を使用する。 2. 人工呼吸器の設定:1 回換気量8ml/kg(理想体重当たり) 、換気回数を8-12 回とする。 a. 作動していることをカプノグラムと気道内圧計を見て確認する b. 呼気換気量の実測値と大きな差がないか確認する。 C. 挿管の 挿管の実際 c. 呼気換気量が少なければ、カフ漏れや回路のゆるみを考える 1. Sniffing position をとる(図:あらかじめ枕を高くしておく(下部頚椎の屈曲) 、喉頭鏡挿入時に頭部を後屈させる(環椎後頭関 d. 過換気にならないよう注意する 節の伸展) ) 。 e. 挿管に時間がかかった場合や肥満者では人工呼吸器に接続する前によく肺を膨らませる 術前評価が適切に行われ、気道の問題がなければ、これらのいずれかで解決する。 3. 胃管をそっと鼻から挿入する(鼻の手術では口から)。男性で16Fr、女性で14Fr が目安。 2. 右手親指と人差し指を交差させながら十分開口する。 3. 喉頭鏡のブレードを上歯や上唇を巻き込まないように右から挿入。 4. 舌の右側をブレードで圧排しながらさらに開口を促す。 4. 麻酔記録に導入薬、麻酔ガス、挿管、胃管などの処置を入力。 喉頭蓋を確認しながら喉頭蓋谷にブレードの先端を進めたところでブレードを斜め45 度上方に引き上げる。くれぐれも上の歯がて 5. アルチバや硬膜外麻酔併用例では特に、血圧の低下や徐脈に注意する。 この支点になっていないことに注意する。 6. タイムアウト:執刀前に術者による術式宣言があるので、 看護師とともに一緒に確認する(患者さん氏名、 診断名、 手術部位(左右))。 5. 6. 7. 声帯が十分に確認できれば、あらかじめスタイレットをはずしてもらってもよい。 声帯を十分に視野に入れたところで右手にチューブを受け取り、やや右手からそっとチューブを気管内に向けて挿入。この間声帯 から目を離さない。 8. チューブ先端が声帯を越えたところでスタイレットを引き抜きながらチューブをさらに進める(介助者に依頼してスタイレットを 抜いてもらう) 。カフが声帯を越え2 ないし3cm 進んだところでチューブを止める。 9. カフに空気を入れてもらう。通常は5ml 程度。細めのチューブではより多量が必要。 50-55cm で固定。胃内容が吸引できること。聴診だけではだめ。 Ⅵ.全身麻酔の 全身麻酔の維持と 維持とモニタリング 3. パルスオキシメータ: 低値のアラームが鳴ったら、次を確認してください。 パルス波形が表示されているか A. 維持に 維持に使用する 使用する薬剤 する薬剤 自動血圧計と同じ側に装着されていないか 1.筋弛緩薬( 筋弛緩薬(エスラックス) エスラックス)について 指に正しく装着されているか a. 換気は問題がないか 筋弛緩薬を術中に必要とする手術: もし低下が本当なら、酸素濃度を上げて指導教官に相談 開腹手術(腹腔鏡手術を含む)、開胸手術(胸腔鏡手術を含む)、顕微鏡手術、 腰椎の椎間固定術 b. 筋弛緩薬を使用してはいけない手術: 4. 呼吸モニタ: 5. 尿量: カプノグラム、気道内圧(ピーク、プラトー)、換気量(実測値)、麻酔ガス濃度 出てこない時は、濃さを見て、ミルキング(管をクランプしてしごいてみる)を行います。 誘発筋電図を測定する手術(脳腫瘍の一部、頚椎・胸椎手術、腰椎手術の一部) 血圧が普段よりも低くないか、脱水はないかを評価し、必要であればイノバン 2-3速を使用。 末梢神経刺激を行う耳下腺手術・頚部腫瘍の手術 ラシックス、ハンプは最終手段です(いずれも教官の指示で)。 重症筋無力症、ALS などの神経筋疾患 6. 体温: 直腸温をモニターします。 膀胱温は ICU 入室患者さんで、口腔温は結腸や婦人科手術でモニターします。 c. 筋弛緩薬を使用しなくてもよい手術: 体表面の手術 *投与速度: 10-25mg/hr 空調の関係で低体温がしばしば問題になりますので、積極的に保温してください。 *中止のタイミング: 手術終了の 30-60 分前 保温法:ベアハッガー、温い輸液、輸液回路保温(アニメック、レンジャー)、温水ブランケット 2.アルチバ( アルチバ(100μ 100μg/ml) g/ml) Ⅶ.抜管 *投与速度: 0.15-0.3μg/kg/min セボフルランは筋弛緩薬を併用しない場合、1MAC 以上必要(1.5-1.8%) 術後のレントゲンを撮影した場合には確認を待ちます。 その間は、 麻酔を浅くして待つか、 プロポフォールなどで麻酔を調節しています。 *中止のタイミング: 手術終了時まで(抜管の 10 分前にきれば OK) A. 抜管基準 *使用しない症例: 硬膜外併用症例、心臓手術、抜管しない見込みの症例 1. 呼びかけに反応を示すか(覚醒の確認) : 開眼、握手、深呼吸 3. アナペイン( アナペイン(0.3%) 0.3%) 2. 筋弛緩からのリバースは十分か: 握力、深呼吸(>10mL/kg) 、咳反射、TOF 100%など *開始時: 0.3%アナペインを執刀前までに 10-12ml 入るよう、調整する(15-20ml/hr) 3. 呼吸抑制はないか、呼吸パターンや酸素化に問題はないか: 呼吸回数、一回換気量、ETCO2、SpO2 *維持: 体形や穿刺部位、手術の範囲に応じて 5-10ml/hr(6-8ml/hr が多い) 4. 循環系(血圧、脈拍)が安定しているか セボフルランは 1%以上(1-1.8%)が望ましい。 ショック状態では抜いてはならない。 *中止のタイミング: 帰室時まで可。あるいは PCA に接続するまで。 4. イノバン( イノバン(0.3%) 0.3%) 覚醒に伴って血圧、脈拍が上昇している場合は指示を仰ぐ。 5. 喀痰は十分吸引できたか *適応 手術部位からの出血は多くないか a. ドレーンからの出血が多い場合には術者に報告すること。再開創の可能性があるため。 頻回にエフェドリン投与が必要になる例:胸部硬膜外を併用した開胸開腹手術、アルチバ併用の全身麻酔 b. 血圧を下げたくない症例:高齢者や虚血性心疾患、腎機能障害、高血圧 B.抜管の 抜管の手順 c. 尿量を確保したい例: 2-3ml/hr で 1. 口腔内・気管内の吸引を十分に行い(気管内は清潔操作、手袋!) 、丁寧に絆創膏をはがす。テープをはがしやすくする薬剤を使 用してもよい * 昇圧にはエフェドリンに引き続いて投与すると効果的。フラッシュはしない。 2. 吸引チューブを気管まで挿入し、カフの空気を抜いてもらう(時々抜き損なっていることがあるので注意) 。 3. 吸引をきかせながらチューブを引き抜いてくる。よく咽頭内口腔内の分泌物を引いてくること。 A.麻酔中 A.麻酔中に 麻酔中に監視する 監視するモニター するモニター 4. 酸素を与え、深呼吸を命ずる。覚醒がはっきりしていればバイトブロックをはずしてもよいが、そうでない場合には残しておく。 心電計のデータはサーバーに転送され、麻酔記録に入力されますが、麻酔器のデータは入力されない部屋もあります。気道内圧、ETCO2 5. 落ちついたら、喉頭鏡で口腔咽頭内をのぞきながら吸引する。異物の確認も忘れずに。 など必要なら手入力をお願いします。 6. 再び深呼吸。 * 中止のタイミング: できれば麻酔終了時には中止したいが、血圧維持に必要であれば、そのまま病室まで継続する 1. 自動血圧計: 2.5 分おきに測定 (A ライン挿入辞は時々でよい)。 安定していれば 5 分おき、動脈ラインが入っていれば 30-60 分 おき。 2. 心電図: 脈拍のレートのトレンド、 ST 変化、T 波 Ⅷ.脊髄くも 脊髄くも膜下麻酔 くも膜下麻酔 4. 麻酔レベルがあがらない時: 高比重液を使用したときはトレンデレンブルク体位にする。また咳を2ー3回させ、麻酔レベルを上 げることもある。それでも手術に耐える麻酔レベルに上がらないときはためらわずに穿刺し直す。 A.実際 A.実際 5. 片ぎきの時: 高比重液の場合はベットを傾ける(効かない方を下になるよう)。うまくレベルがあがらないときは穿刺し直す。 1. 不安の強い患者さんにはフェンタニル1ml程度を静注します。患者さんを側臥位とします(骨折者、妊婦では楽な方)。薬液に高 6. 呼吸抑制: 麻酔範囲が頭側に広がった場合、まず肋間筋、次に横隔膜が抑制される― 補助呼吸、酸素投与など 比重液を使うときは患側を下、等比重液を使うときは患側を上にして、首を曲げ膝を抱き抱えて、棘突起の間隔を広げるようにし 7. 脊髄神経麻痺 て、穿刺部位を決めます。 8. 髄膜炎: 抗生物質、抗痙攣剤投与 Jacoby線(両側の腸骨稜を結ぶ線=L4/5間)を基準線としてマジックでL3、L4、L5の棘突起に印をつけます。または後上腸 C.鎮静 C.鎮静と 鎮静と鎮静時の 鎮静時の呼吸モニター 呼吸モニター 骨棘を結ぶ線の上方がL5/S1になるので基準線とします。穿刺は第2腰椎以下で行います(成人でL1(新生児でL3)で脊髄 麻酔のレベルや循環動態が落ち着いたら鎮静を開始します。酸素投与も忘れずに。 は脊髄円錐として終わる)。 1. TCI対応のシリンジポンプを用い、mg/kg/hrのモードにして、体重を入力します。 消毒: 穿刺部位を含め十分広く消毒します。穴あきシーツ(または布)をかけるか、体の下に引きます。穿刺部位は棘突起間の 2. ディプリバンを3mg/kg/hr前後で投与しますが、はじめに10mgずつ1-3回ボーラス投与して血中濃度をあげておきます。少ない人で 2. 3. 2mg/kg/hr、多い人では6mg/kg/hr以上必要な場合があります。 中央部(正中法)に細い針(25G)で通常1%キシロカインで穿刺部の浸潤麻酔を行います。まず脊麻針の刺入部の皮内に膨疹を つくり、皮内、皮下、棘上靭帯、棘間靭帯を麻酔します。 4. 3. 舌根沈下をきたしやすいので、呼吸状態をよく観察しながら鎮静を行ってください。酸素マスク内の口元にカプノグラムのサンプ 穿刺針: 針は脊麻後頭痛のことを考え、できるだけ細い針(25G)を使用します。ただし針が細ければ細いほど穿刺が難しくなり リングチューブを装着してください。細い延長チューブや静脈カテをマスク内に挿入してください。カプノグラムと目視が呼吸の ます。穿刺はカット面が脊髄硬膜の縦線維に平行となるように行い、硬膜の損傷をできるだけ少なくして髄液の漏れを少なくしま モニタリングで最も重要です。気道閉塞時のSpO2の低下は、遅れがちですので注意してください。 す。黄靭帯と硬膜を通過する際に抵抗を感じるが、実際は穿刺針が細いとわかりにくいので、穿刺途中で内針を抜いて、髄液の流 4. 気道閉塞時は、枕を低くし、そっと下顎を持ち上げるようにして開通させてください。 出の有無を確認しながら針を進めます。 5. くも膜下腔に針が到達して髄液の流出をみたら、針を90度ずつ360度回転させ、どの位置でも髄液が流出することで針が正し Ⅸ.硬膜外麻酔 く、くも膜下にあることを確認します。 6. 投与する薬剤とその量: 量は、患者さんの体型、年齢、性別、手術部位、穿刺部位、投与速度などを総合的に判断して決めるの A.硬膜外麻酔 A.硬膜外麻酔の 硬膜外麻酔の実際 で、一概には言えません。 硬膜外麻酔と全身麻酔の併用が多く、術中のみならず術後疼痛管理に使用します。 高比重液(テトラカイン20mgを10%ブドウ糖液4mlで希釈)⇒ 1.5-2.5ml 等比重液(0.5%等比重マーカイン)⇒ 2-4ml 1. 穿刺部位の目安 下肢: L1-L5 会陰: L4-5 下腹部: Th10-L1 上腹部: Th8-10 胸部: Th2-7 上肢: C7-Th2 7. 薬剤投与後に酒清綿、アルコール綿球、ピンプリックなどにより麻酔範囲を調べる。おおよその皮膚分節を理解しておく。 8. 脊椎麻酔後は薬液が固定するまで(15分以内)の間は特にすばやく、迅速に対応する(特に高比重薬)。 2. 体位と消毒は脊髄くも膜下麻酔の①-③と同様。 9. 血圧低下はほぼ必発なので輸液を付加し、昇圧剤を手元に置いておき、いつでも使用できるようにしておく。 3. 正中法による針刺入;脊椎麻酔と同様に棘間靭帯まで浸潤麻酔を行い、左手の示指と中指で刺入点を固定して右手で硬膜外針をもっ て針が棘間靭帯で固定されるまで刺入する。 B.合併症 B.合併症と 合併症と処置(頻度の多い順) 処置 4. 硬膜外腔確認方法 1. 血圧低下: 交感神経のブロックによる― 昇圧剤(エフェドリン5-10mg、ネオシネジン0.1-0.2mg)で対応。 a. Hanging drop法: 穿刺針の内針を抜き生食もしくは局麻薬を内筒に盛り上げていき、ハブを左右の母指と示指ではさみ、中指 2. 悪心嘔吐: 低血圧による脳血流減少― 昇圧剤投与 は患者の背中に固定してハブを進めていく。こつは押す力が7、引く力が3ぐらいの気持ちで慎重に針を進め、黄靭帯を通過させる 腹腔内操作による迷走神経反射― 硫アト投与 3. 術後頭痛: 穿刺部位より髄液が漏れ、頭蓋内圧低下によりおこる― 安静、輸液、鎮痛剤 と硬膜外腔に入り水滴が吸い込まれる。 b. 抵抗消失法(loss of resistance): 硬膜外針を棘間靭帯まですすめ、空気もしくは生食(局麻薬)を吸引したガラス注射器を Ⅹ.麻酔の 麻酔の終了とその 終了とその後 とその後の仕事 接続してプランジャーを右手で加圧しながら左手で針を進め、硬膜外腔に刺入する。硬膜外腔に入ると抵抗が一気に消失する。 c. 触感法: bと同じだが、両手で針を進めながら間欠的にシリンジを加圧する。初心者は通常この方法で行う。 抜管後、患者さんの状態が落ち着いていれば帰室です。 5. カテーテル挿入: Tuohy針のメモリで硬膜外腔までの距離を確認しカテーテルを頭側に向けて挿入する。カテーテルは最終的に硬 A.麻酔終了時 A.麻酔終了時に 麻酔終了時に、CAPに CAPに入力する 入力する情報 する情報 膜外腔に5cm以上深く挿入しない。これ以上深く挿入するとカテーテルが硬膜外腔より出て椎間孔などに迷入する可能性がある。 1. 持続投与薬、酸素などを麻酔記録で線停止し、輸液の残量、尿量(尿は手術室のバッグに破棄しておいてください)、出血量(術 野のまわりにこぼれている血液や四角巾にしみている血液を推定でそのほかの出血に入れてください)を記載 6. テストドーズによる硬膜外麻酔の確認: 吸引を行い、血液や髄液が引けないことを確認して、さらに使用する局麻薬2mlを硬膜外 腔に投与して脊麻になっていないことを確認する。カテーテルを固定して体位を仰臥位にもどして硬膜外麻酔操作をおえる。 2. 呼吸、体位も線停止、手術終了、抜管、麻酔終了をマーク。麻酔終了は酸素投与終了時です。 B.硬膜外麻酔 B.硬膜外麻酔の 硬膜外麻酔の合併症と 合併症と予防処置 3. 最終バイタル、術後酸素の指示を入力。持続硬膜外をつける場合にはその内容も。 1. 低血圧―輸液、血管収縮剤投与。 B.移動 B.移動 2. 全脊麻―くも膜穿刺による。局麻によるテストドーズを確実に行い予防。起こったときは酸素投与、人工呼吸、血管収縮剤投与、輸 1. 麻酔記録の画面から複印刷を選んで、3‐4枚プリント 2. 病棟への帰室の連絡を看護師か受け持ち医に依頼。 3. 痙攣―局麻薬が大量に血管内に吸収されて痙攣となる。カテーテル挿入時に血液の逆流の確認で予防。セルシン静注。人工呼吸。 3. ストレッチャに酸素マスクをつなぎ、ボンベの元圧を確認し、3-6Lで投与。 4. 神経損傷―カテーテル挿入時に注意 4. ベッドからストレッチャに移動します。尿のバッグやドレーンバッグ、点滴、硬膜外カテなどを忘れないように一緒に移動させま 液を行う。 5. 硬膜を穿刺して脊髄液が出てきたとき: 脊麻後頭痛を生じる可能性がかなり高い。 刺入部位を1または2椎間上からやり直す。 す。患者さんの頭と首と肩を一直線に保った状態で移動。 この場合うまく硬膜外カテーテルを上方に挿入できても、下位の部位で硬膜を破っているため、そこから脊髄に局麻薬が進入し、 5. 酸素マスクを装着し、パルスオキシメータ(必須)や必要な搬送モニターを装着。 麻酔域が広範囲になる可能性があるので注意する。術後に硬膜外腔に自己血を注入するパッチが必要になることもある。 6. ベッドチェンジホールに移動します。患者さんがベッドチェンジホールから退出するまでは、患者さんから離れないこと。呼吸状 6. 挿入した硬膜外カテーテルから血液が引けてきたとき: 生食をカテーテルより注入しながらカテを少し引き抜き、吸引する操作を 態、意識、顔色、表情などを観察している必要があります。急に吐くこともあります。 繰り返して血液が引けなくなる部位までカテを引き抜く。この時硬膜外腔に入っているカテーテルが1~2cm以内と思われる場合は C.申 C.申し送り 穿刺をやり直しした方がよい。 担当医に麻酔中のインアウト、使用した薬剤、術中の問題点、術中術後鎮痛、術後に注意してほしいことを申し送ります(術前患者情報 用紙に記載します)。 C.術後鎮痛 C.術後鎮痛に 術後鎮痛に対する硬膜外 する硬膜外オピオイド 硬膜外オピオイド投与 オピオイド投与 術後鎮痛のために術中硬膜外に麻薬類を投与することがあります。例えばブプレノルフィン(レペタン)なら0.1-0.2mg 、モルヒネな D.最後 D.最後に 最後に 1.手書きの麻酔台帳、CAPの配信(麻酔記録、通知票、麻酔台帳入力後)、麻薬伝票の記載 ら2-4mg、フェンタニルなら0.5-1mlを局麻薬にまぜて投与します。ただし術後呼吸抑制 が起こる可能性があり、これらの薬を投与した 2.自分 自分で 自分で持ち出した器材 した器材や 器材や薬剤をすべてもとの 薬剤をすべてもとの場所 をすべてもとの場所に 場所に片付け 片付けてください。 てください。 際は主治医に申し送っておく。 3.術後回診(翌日以降)も忘れないように行って、CAP上に入力してください。 持続硬膜外の0.2%アナペイン200mlにレペタン3-4Aを混注することが多いが、術後の吐き気が増えるので、科によっては使用しない(呼 吸器外科、婦人科、整形外科、泌尿器科)。 平成21 平成21年 21年3月31日改訂 31日改訂 中沢 弘一 このマニュアル このマニュアルは マニュアルは、平成18 平成18年 18年に作成した 作成した麻酔科研修 した麻酔科研修マニュアル 麻酔科研修マニュアルを マニュアルを初期研修医向けに 初期研修医向けに改訂 けに改訂したものです 改訂したものです。 したものです。 (田中直文、 田中直文、石川晴士、 石川晴士、舛田昭夫 舛田昭夫、 昭夫、森川朋子、 森川朋子、中沢弘一担当の 中沢弘一担当の部分を 部分を抜粋し 抜粋し、加筆修正したものです 加筆修正したものです) したものです) 不明瞭な 不明瞭な点、修正すべき 修正すべき点 がありましたら、随時改訂しますのでご 随時改訂しますのでご指摘 すべき点がありましたら、 しますのでご指摘ください 指摘ください。 ください。