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チューリッヒへ - 環境設計情報学領域

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チューリッヒへ - 環境設計情報学領域
Vol.25
チューリッヒとヴァイル・アム・ライン:スイス北部エリア
大阪大学大学院准教授
福田 知弘
1971 年兵庫県加古川市生まれ。大阪大学大学院准教授、博士(工学)
。
環境設計情報学が専門。国内外のプロジェクトに関わる。CAADRIA(Computer Aided
Architectural Design Research In Asia)学会 会長、日本建築学会 近畿支部常議員、
NPO 法人もうひとつの旅クラブ副理事長、大阪旅めがねエリアクルー。
「光都・こうべ」
照明デザイン設計競技最優秀賞受賞。著書
「VR プレゼンテーションと新しい街づくり」
「は
じめての環境デザイン学」など。
ふくだぶろーぐは、http://fukuda040416.tumblr.com/
魅力的な都市や
建築の紹介と
その3Dデジタルシティへの
挑戦
1 チューリッヒ市街地
福田知弘氏による「都市と
建築のブログ」の好評連載の第25回。
毎回、福田氏がユーモアを交えて紹介
する都市や建築。今回はスイス・チュー
リッヒの3Dデジタルシティ・モデリング
にフォーラムエイトVRサポートグループ
のスタッフがチャレンジします。どうぞお
楽しみください。
チューリッヒへ
25回目となる都市と建築のブログは
スイス北部エリアを対象として、チュー
リッヒ(スイス)とヴァイル・アム・ライン
(ドイツ)をご紹介したい。チューリッ
ヒは2010年、ヴァイル・アム・ラインは
2007年に訪問。
チューリッヒはスイス最大の都市。人
口は37.6万人。国際的な金融センター
の一つであり、アルプス観光の拠点で
マーク。左奥(南側)にチューリッヒ湖。
ある。国際サッカー連盟(FIFA)をはじ
リマト川はチューリッヒ湖から流れ出
め、多くの国際機関・国際団体の本部
し、最終的にはライン川へと繋がる。夜
がある。チューリッヒ中央駅から市内を
になるとランドマークとなる建物と橋梁
流れるリマト川を渡りケーブルカーでス
がライトアップ。暖色系の街灯たちは温
イス連邦工科大学(ETH)キャンパスよ
かみを感じさせる(写真2)。
りチューリッヒ市街を眺めてみる(写真
まちなかは公共交 通が 充実してい
1)。いくつもある教会の尖塔がランド
る。都市の骨格を形成する道路には路
2 クヴァイ橋(Quaibrücke)からの夜景
24
Up&Coming105 号 都市と建築のブログ
3 パラデプラッツ(Paradeplatz)駅
4 チューリッヒ湖からの舟運
3
4
面電車(トラム)が13系統(写真3)。
F I F A 本 部 、通 称「 F I F A ハウス
物内部にはレストランやフィットネスク
バス路線もしかり。チケットも安く、購
(Home of FIFA)」はチューリッヒ中
ラブが入る。夜間はカッコいいストラク
入するのも容易で1dayチケットが 便
心部の東に位置する。トラムで10分ほ
チャーを意識させる照明デザイン(写
利。車内では停車 駅の案内が電子掲
ど。公式パンフでBlatter会長が「Like
真6)。敷地外周部にはかつてのトロッ
示板上に次の次の次の次まで所要時
football, the Home of FIFA is open
コ軌道をそのまま活かして歩道が整備
間と共に表示されるので安心して乗車
to all.」と述べているように、サッカー
されている。特に興味深いのは、Plus5
できる。このようにチューリッヒは公共
関係者でなくても誰でも訪問できる。
の建物の両側にドイツの自動車メーカー
交 通を中心とした都市交 通 政策の成
敷 地内には斬 新なデザインの建物の
「MAN」の建物があるのだが、これら
功都市(チューリッヒ・モデル)としても
他、アフリカ、アジア、オセアニア、北ア
MANの2つの建物を結ぶ通路がPlus5
知られる。
メリカ、南アメリカ、ヨーロッパとサッ
の敷地内に今も確保されていること。
チューリッヒ湖やリマト川には観光
カー界の六大陸を特徴づける庭とサッ
昔からのお付き合いは大切だね。
船やヨットの他、水上交通も充実して
カー場がある。
おり、たっぱの低い橋梁の下を通ること
ができるように背丈の低い水上バスが
運行(写真4)。まるで大阪水上バスに
チューリッヒ西部
乗っているよう。川と岸辺とのコミュニ
チューリッヒ中央駅からトラムで10分
ケーションが盛んに行われていた。乗
のところに位置する西部地区はかつて
船料はトラム、バスと同じく1dayチケッ
の工場地帯。現在はリノベーションが進
トが利用可というのもスマートなシステ
められている。訪問時はスイスで一番高
ム。チューリッヒ湖畔には、近代建築の
い建物がこの地区に建造中であった。
巨匠、ル・コルビュジェ・ハウスが佇む
Plus5は、かつての工場を構造補強
(写真5)。
して再生させた施設。手前は広場、建
6 Plus5
ETH Honggerberg
キャンパス
スイス連 邦工科大 学(E T H)は自
然科 学と工学を対 象とした世界的に
有名な大学。卒業生には、レントゲン、
アインシュタイン、ジョン・フォン・ノイ
マン、サンティアゴ・カラトラバ、ヘル
ツォーク&ド・ムーロンらが名を連ね
る。ノーベル賞受 賞者は何と21名。
eCAADe(Education and research
5 ル・コルビュジェ・ハウス
都市と建築のブログ Up&Coming105 号
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7 ETH Honggerbergキャンパス
8 eCAADe2010カンファレンス・ディナー
7
8
ヴァイル・アム・ラインへ
トした椅子が各所に展示してあり(写
会場は、ETH Honggerbergキャンパ
ヴァイル・アム・ラインはバーゼル郊
を町ぐるみで取り組む様子が窺える。
ス(写真7)。チューリッヒ中心部から約
外にあるドイツ南西端の町。ここに、
6km離れた郊外にある。Science City
建築ファンなら一度は訪問したいヴィ
というコンセプトの元、キャンパスで24
トラ・キャンパスがある。小生はチュー
時間過ごせるように整備が進められて
リッヒとヴァイル・アム・ラインとは別の
フランク・O・ゲーリーによるヴィトラ・
いる。市内とを結ぶバスは2系統あり、
時期に訪問したのだが、チューリッヒ
デザイン・ミュージアムへ(写真10)。イ
日本の電車のように早朝5時台から深
からヴァイル・アム・ラインへは、まず
ンパクトのある外観。訪問時は、ル・コ
夜0時半過ぎまで運行している。運行
高速列車ICE(Intercity-Express)で
ルビュジェの展覧会が催されていた。
間隔は10分以内と利便性は高い。これ
1時間ほどでバーゼルへ行き、そこか
入り口には、黒板にモデュロールを描
だけ公共交 通機関が発 達しているの
らバスで国境を越えながら20分ほど。
くコルビュジェの大きな写真が。コル
で、キャンパスへは自家用車での入構
バーゼルはドイツ、フランスと国境を接
ビュジェの出身地はスイスの時計産業
が認められているものの、学生の90%
するスイス第3の都市で街の中心をラ
の町、ラ・ショー・ド・フォン。ヴァイル・ア
と教員の60%が公共交通機関を利用
イン川が流れている。
ム・ラインからは直線で80kmほど。彼
しているのだとか。
ヴィトラ・キャンパスは、世界屈指の
の肖像画はスイス通貨・10スイスフラ
また、ETHは国立大学であるが、我
家具メーカー、ヴィトラ社本社工場内
ンにも使われている。
が国の状況と比べると、非常に高質な
にある。敷地内には、安藤忠雄、フラン
コルビュジェ展を見てか
建物が整備されていると感じた。例え
ク・O・ゲーリー、ザハ・ハディッドなど、
ば、斬 新な構 造デザインや材料の使
世界を代表する建 築 家による建
用。キャンパス内にはパブリックアー
物が点在しており、建物内部
ト、オープンテラス、学生ハウスなどが
にはヴィトラ社が所有する
充実している。聞いてみると、建設費は
家具や照明器具が展示
行政が60-70%、私企業が30-40%を
されている。近年では、
負担しているそうだ。
ヘルツォーク&ド・ムー
eCAADe2010のカンファレンス・ディ
ロンのヴィトラハウス、
ナーは、キャンパス内にあるA lum ni
SANAAの工場も完成し
Loungeにて。研究仲間との久しぶりの
た。尚、ヴァイル・アム・ライ
再会は格別(写真8)。
ンのまちなかにはスケールアウ
in Computer Aided Architectural
Design in Europe)2010国際会議の
26
9
Up&Coming105 号 都市と建築のブログ
真9)、
「家具の町」というイメージ作り
ヴィトラ・建築ツアー
9 ヴァイル・アム・ラインのまちなか
10 ヴィトラ・デザイン・ミュージアム
11 オルデンバーグの彫
12 ヴィトラ・セミナー・ハウスのアプローチ
12
11
10
ら建築ツアーに申し込む。英語チーム
いコンクリートの壁に沿ってアプロー
ンドンに事務所を構えるザハ・ハディッ
とドイツ語チームに分かれてスタート。
チを歩いていると、コンクリートの壁面
ドの処女作といわれる。建築を構成す
小生が選んだ英語チームは、サングラ
に化石を想わせる模様が(写真12)。
る面が3次元的に組み合わさっている
スをかけた女性がガイドさん。彼女の
これはコンクリート型枠を設置する際
ために、歩いて近づいていくと建物の
説明はとても上手で、案内人としてもか
に、近くにある桜の葉っぱが偶然付着
見え方がどんどん変化していく(写真
なり勉強になった。
したそうだ。通常は付着した葉っぱを
14)。建物内部も同様に壁が傾いてい
ゲーリーの建 物からアプローチに
取り除いてやり直しそうなものだが、そ
る。平衡感覚がおかしくなりそうになっ
沿ってヴィトラ・セミナー・ハウスへ。
のまま残されたらしい。ガイドさんは
たのは私だけだろうか。
道中にはオルデンバーグの彫刻(写真
ANDO建築をかなりお気に入りの様子
ファイア・ステーションの屋上でヴィ
11)。ヴィトラ・セミナー・ハウスは、最
で、建物内部についても詳しく説明して
トラ・建築ツアーは終わり(写真15)。
初の海外ANDO建築。1987年より構
くれた(写真13)。
だが、旅人たちは中々離れようとせず、
想し1993年に完成。ゲーリーの「動」
バックミンスター・フラーのドームテン
ツアー当初は見知らぬ者同士が互い
の建築と対峙する、四角い「静」の建
ト、アルヴァロ・シザの工場施設を見学
に感想を言い合っている。魅力的な空
築がコンセプトなのだそうだ。建物配
してから、ヴィトラ・ファイア・ステーショ
間、時間を共に過ごすと、自然とこん
置は、計画時点で存在していた樹木を
ンへ。この建物は、ヴィトラの私設消防
な雰囲気になるのは万国共通のことだ
残すべく検討された。ANDO建築らし
署として敷地内に建設されたもの。ロ
ろう。
13 ヴィトラ・セミナー・ハウス内観
14 ヴィトラ・ファイア・ステーション
15 ヴィトラ・ファイア・ステーション屋上
15
【参考資料】
13
14
1) 三浦幹男ほか:世界のLRT,JTBパブリッシング,2008.
都市と建築のブログ Up&Coming105 号
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3D デジタルシティ・スイス by UC-win/Road
「チューリッヒ」の 3D デジタルシティ・モデリングにチャレンジ
今回はスイス(Switzerland)の首都チューリッヒ(Zurich)
市街地をVRで作成しました。チューリッヒの街に流れるリマ
ト川(Limmat River)を運行する水上バスや、チューリッヒ駅
(Zurich train station)周辺の路面電車(トラム)を再現してい
ます。また、チューリッヒ中心部の東に位置するFIFA本部の建物
と、グランド内でサッカーをする様子をMD3キャラクタでリアルに
表現しています。
VR-Cloud® 閲覧URL
http://www.forum8.co.jp/topic/toshi-blog25.htm#city
水上交通も充実しているリマト川
®
都市交通政策の成功都市としても知られるチューリッヒ
チューリッヒ駅と路面電車(トラム)
UC-win/Road
CG ムービーサービス
国際サッカー連盟FIFAの本部(FIFAハウス)
■スパコンクラウド ® 詳細 >>http://www.forum8.co.jp/product/
supercom.htm
「スパコンクラウド® CGムービーサービス」では、POV-Rayにより作成した高精細な動画ファイルを提供します。今回の3Dデジタルシ
ティ・スイス・チューリッヒのレンダリングにも使用されており、スパコンの利用により高精細な動画ファイルの提供が可能です。また、
POV-Rayを利用しているため、UC-win/Roadで出力後にスクリプトファイルをエディタ等で修正できます。
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Up&Coming105 号 都市と建築のブログ
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