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宿根草と球根の

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宿根草と球根の
特性を生かして
宿根草と球根の
第11回
サルビア
月江 成人
ホルティカルチャリスト。㈱プランタス代表。地
域の景観と調和した、植物が主役の庭づくりを提
案。数年前に山間の小さな町に移住。古民家再生
と理想の庭をつくるべく日々奮闘中。兵庫県在住。
サルビア‘インディゴ・スパイヤー’
とエキナセアの組み合わせ。
主な原種と園芸品種
春から初夏にかけて
開花するサルビア
一般に流通しているサルビア
の仲間は、開花期からおよその
生育特性(27頁「サルビアの栽
培方法」参照)がわかります。
サルビア
Salvia spp.
シソ科アキギリ属
太陽が似合う夏の花壇の主役ともいえるサルビア。
オセアニア地方を除く、世界の温帯から熱帯にかけ
サルビア・クレベランディー
S. clevelandii
高さ:0.6∼1m 広がり:40∼80㎝
花色:淡青紫
カリフォルニア南部∼メキシコ西部にかけて自生する
小潅木。6月ごろ、澄んだ淡青紫色の花が葉腋ごとに
輪生し、特徴のある花のつき方をする。花と葉に強い
芳香があり、ドライフラワーにしても楽しめる。マイ
ナス7℃前後の寒さにまで耐えられる。
て900種以上が分布します。日本にもアキギリな
ど約10種のサルビアの仲間が自生しています。
古くからヨーロッパで薬用にされ、ハーブの1つ
としてよく知られているセージ(ヤクヨウサルビ
ア)も、同じサルビアの一種です。セージは、もと
もとサルビアの英名で、本属に含まれる多くの種に、
セージという名前がつけられています。
その膨大な種類ゆえ、性質、草姿、花姿も多様で
す。一年草や二年草、宿根するものから基部が木質
化して小潅木になるものまであります。草丈もわず
サルビア・ネモローサ
S. nemorosa
か十数㎝のものから2mを超えるものまであり、庭
での使い方もさまざまです。
高さ:60∼70㎝ 広がり:40∼50㎝
花色:青∼桃、白
また、種類によっては、ガクが花びら同様に美し
ヨーロッパから中央アジアにかけて自生。
すらりとした印象の長い花茎を伸ばし、
小さな花を長期間にわたって咲かせ続け ‘カラドンナ’
‘Caradonna’
る。暖地では真夏に花が止むことがある
が、花がらを摘んでおけば、また秋に開
花は濃紫色で、花茎も深紫色を帯びる。
花する。
乾燥に強い。
サルビア・アルゲンテア
S. argentea
高さ:60∼90㎝ 広がり:40∼50㎝
花色:白
地中海沿岸地方原産の二年草、または
短命な多年草。葉は銀白色の毛で覆わ
れ、たいへん美しい。2年目に花茎が
立ち上がり、純白の花を咲かせる。極
力、水はけのよい場所に植え付ける。
く色づいているものや、個性的な苞を見せる種類も
あります。基本的には太陽を好むものが多いですが、
日本のアキギリのように、明るい日陰を好むものも
あります。
丈夫で根付けばほとんど手間がかかりません。ま
た、花期が長く、多くの植物が暑さでバテてしまう
ような時にも元気よく花を咲かせ続けてくれます。
サルビア抜きの宿根草花壇は考えられないといって
も過言ではないでしょう。
2010 .
5.
はな と やさい
25
秋に開花するサルビア
サルビア・アズレア
S.azurea
初夏から晩秋にかけて
開花するサルビア
サルビア・ファリナセア
S. farinacea
高さ:1.2∼1.7m 広がり:60∼90㎝
花色:淡青
高さ:60㎝ 広がり:30㎝
花色:青
北米南東部原産。 9 月に入って暑さがやや落
ち着いてくるころに開花する。やさしい花色
と細長い葉の組み合わせは、洗練された雰囲
気を演出してくれる。梅雨ごろに一旦切り戻
さないと必ず茎が倒伏する。
北米南部∼メキシコ原産。コンパク
トな草姿で、狭い花壇でも扱いやす
い。花色やガクの色の違いにより、
いくつかの園芸品種が選抜されてい
る。一年草として扱われることもあ
るが、暖地では宿根する。元々は、
水はけのよい場所に育つことから、
排水が悪いと根傷みがする。特に、
夏季の過湿状態は避ける。
サルビア・レウカンサ
S.leucantha
高さ:1∼1.7m 広がり:0.8∼1.5m
花色:紫
ラベンダーセージの名でよく知られる。5月末
から咲き始める濃青色の花は晩秋まで楽しめる。
サルビアの中で1、
2を争うと思われるほど剛健
で花期が長く、広い花壇ではこれを1株、花壇
(タイトル写真)
後方に植えておけば楽ができる。
高さ:1∼1.5m 広がり:0.9∼1. 2m
花色:淡青
南米東部原産。「ボッグセージ」の名で知られる。完全な
日当たりよりも、半日陰から明るい日陰の方が、葉色も冴
える。夏、花数も少なくなり株が少し疲れてきたころに思
い切って切り戻せば、秋に再びきれいな状態で開花を楽し
める。
サルビア・マドレンシス
(イエロー・マジェスティー)
S.madrensis
サルビア・グァラニチカ
S.guaranitica
高さ:1∼2m 広がり:1.5∼2m
花色:黄
メキシコ西部∼中央部原産。国内では「イエロ
ー・マジェスティー」の名で流通する。鮮やか
な黄色の花を秋に咲かせる。8月上旬までに何
度かピンチすると、花数も増え、ある程度草丈
を抑えることができる。放っておけば2mにま
で伸びて見事だが、支柱が必要になる。
高さ:1.5m 広がり:0.6 ∼0.8m
花色:青
南米東部原産。
‘インディゴ・スパイヤー’と並んで、真夏
でも元気よく花を咲かせ続ける。紺碧に近い深い青色は、
いろいろな植物と合わせやすい。晩秋まで楽しめる。
サルビアの植栽イメージ
ガーデンでの使い方
春から初夏に開花するサルビア
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小∼中型サイズで、花壇で扱いやすいものが
多い。花色はパステル調のやさしい色合いの
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ものが多く、ジギタリスやセイヨウノコギリ
ソウなど、同色調の明るい花色のものとの組
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10
み合わせや、シルバーリーフとの組み合わせ
13 14
9
高さ:1∼1.5m 広がり:1∼1. 5m
花色:濃青
サルビア・ウリギノサ
S.uliginosa
メキシコ原産。アメジストセージ、メキシカ
ンブッシュセージの名でも知られる。10月ご
ろ開花。生育旺盛で、そのままではかなり大
型になる。茎、葉裏には白い綿毛が密生して
いる。‘ミッドナイト’は、がく筒も花と同じ
紫色をしていて観賞価値が高い。
8
サルビア‘インディゴ・スパイヤー’
S. ‘ Indigo Spires’
で初夏のさわやかなイメージを演出できる。
夏の暑さに弱い品種は、明るい色のコンテナ
16
に植えてもよい。
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初夏から晩秋にかけて開花するサルビア
中∼大型になるものが多く、花壇の後方に適
する。明るい色調のものが多く、エキナセア
2
7
やペンステモン‘ガーネット’など桃色系の
3
1
花や、ヘリオプシスやアキレアなど、サルビ
アの花色と対比する黄色の花との組み合わせ
など、多くある。また、バイカウツギ、ウツ
18
6
5
合わせもよい。
4
秋に開花するサルビア
大きく育つので、広い花壇では1株植えてお
〔使用している植物〕
1 サルビア・カマエドリオイデス
2 サルビア・ファリナセア‘シラス’
3 ペニセタム・ビローサム
4 サルビア・ネモローサ
5 サルビア・グァラニチカ
6 ヘリオプシス
7 クレオメ
8 ススキ園芸種
9 バーベナ・ボナリエンシス(ルリハナガサ)
ギ、ムクゲやサルスベリなどの花木との組み
10 サルビア‘インディゴ・スパイヤー’
11 ムクゲ白花品種
12 サルスベリ
13 ツルバキア
14 エキナセア
15 サルビア・ウリギノサ
16 サルビア・クレべランディー
17 アガパンサス
18 サルビア・アルゲンテア
けばかなり省力できる。桃色のキクやユウゼ
ンギクとのシックな組み合わせもよく、スス
キなどのグラスや、オミナエシ、ダリアなど
と合わせて秋らしい雰囲気を演出することも
できる。また、花壇の後方に組み込んでおけ
ば、夏の花が咲き終わった後も、途切れるこ
となく花壇を彩ることができる。
G タカノハススキ
H センニチコウ‘ストロ
ベリーフィールズ ’
オミナエシ
グラス類
コスモス
センニチコウ
ソリダゴ
ダリア
ニューサイラン
ハゲイトウの仲間
フジバカマの仲間
ヘリオプシス(ヒメ
ヒマワリ)の仲間
ヘレニウムの仲間
ユウゼンギク
ルビアと
ルドベキア
サ
A
H
A サントリナ
B アキレア
C ジギタリス
春∼初夏に開花
カールドン
サントリナ
ジギタリス
セイヨウカノコソウ
ナツシロギク
(フィーバーフュー)
ラムズイヤー
相
物
秋に開花
性
のよ い 植
初夏∼晩秋に開花
G
B
C
アンゲロニア
エキナセア
カンナ・銅葉系品種
キキョウ
グラス類(シマススキ、パニクム、
カレックス、ペニセタム‘ルブラム’
)
クレオメ
サンジャクバーベナ(ルリハナガサ)
ツルバキア・ビオラケア
ヘリオプシス(ヒメヒマワリ)の仲間
ヘレニウム
ミソハギ
ロシアンセージ
F
D ロシアンセージ
E ヘリオプシス
F ツルバキア・ビオラケア
サルビアの栽培方法
E
D
初夏から晩秋にかけて
開花するサルビア
秋に開花するサルビア
主として北米南部からメキシコを経た
多くが北米南部∼南米原産です。暑さ
南米東部の原産で、暑さに強く開花期が
に強く、生育旺盛なので夏の生長期には
地中海沿岸地方や米国西海岸など、地
長いものが多いのが特徴です。春、新芽
水を切らさないようにします。過酷な夏
中海性気候下に自生するものが多いのが
が伸び始めた時、地上部から数節の所で、
を過ごしてからの開花になるので、茎の
特徴です。ほとんどの種類で寒さに関し
1∼2回ピンチをすると花数が多くなり、
基部が落葉して見苦しくなったり、草丈
ては問題なく、むしろ日本の高温多湿の
また、草姿もよくなります。
が伸びすぎて倒伏することもあります。
夏を苦手とします。
夏が生長期ですから、水はたっぷりと
6月下旬∼7月上旬にかけて、地際で
暑くなると半休眠状態に入り生育が止
与え、また、葉色が悪くなってくるよう
一旦切り戻すと、秋にはちょうどよい高
まるので、潅水の間隔を空けたり、施肥
であれば、定期的に肥料も与えます。梅
さで花を観賞でき、支柱も必要としませ
を控えたりします。特に、この時期に生
雨明けごろ、株が咲き疲れてきた場合は、
ん。寒さにはあまり強くありませんが、
育旺盛な植物とは離します。また、レイ
3分の1∼半分に切り戻しておけば、秋
よく根が張っていれば、マイナス5℃近
ズドベッドに植えるなど、できるだけ水
にはまたきれいな状態で花を楽しむこと
くの寒さにも耐えることがあります。
はけのよい場所を選んで植え付ける方が
ができます。
特に寒さが心配される地域では、枯れ
よいでしょう。
宿根するタイプは、比較的寒さに強く
た枝の切り戻しは、春の萌芽前に行うよ
マイナス10℃の寒さに耐えることができ
うにし、腐葉土などで厚くマルチングし
ます。
て防寒するのもよいでしょう。
春から初夏に
開花するサルビア
サルビア・ファリナセアとニチニチソウの花壇。
2010 .
5.
はな と やさい
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